説明

スペクトラムアナライザ

【課題】 測定開始時点における繁雑な調整作業や校正作業を省略でき、かつ高い測定精度を得る。
【解決手段】 入力した測定信号aの周波数を周波数変換部3で中間周波数fIに変換し、かつ掃引制御部21で中間周波数信号cの周波数fI を掃引する。そして、周波数変換部3から出力される中間周波数信号cをA/D変換器22でデジタルの中間周波数信号c1 に変換して、これ以降のデジタルの中間周波数信号c1 に対するRBWフィルタ処理24、波形記憶25、LOG変換処理50、VBWフィルタ処理52等の周波数スペクトラム波形を得るための各種の処理をデジタル部品やDPS26におけるソフトウエア手段で実施している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は被測定信号の周波数特性を測定するスペクトラムアナライザに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車電話、携帯電話等の移動通信システムで採用される信号は種々の方式で変調されている。また、通信回線を有効に使用するために、通信方式としてTDMA(時分割多元接続)方式が採用されている。このような移動通信システムで用いられる信号を搬送する搬送波の周波数は数百MHz〜数GHzと非常に高い。
【0003】一般に、このような信号に含まれる種々の周波数成分を正確に測定するためにスペクトラムアナライザが用いられる。図5は上述したような高周波の被測定信号の周波数特性を測定するスペクトラムアナライザの概略構成を示すブロック図である。
【0004】入力端子1を介して入力された高周波の被試験信号aは減衰器2で予め定められた規定レベルに調整されて、周波数変換部3へ入力される。周波数変換部3へ入力された高周波の被試験信号aは信号混合器4で局部発振器5からの局部発振信号bと混合されて、中間周波数を有する中間周波数信号に変換される。この中間周波数信号はBPF6で帯域制限された後、再度、別の信号混合器7で局部発振器8からの局部発振信号b1 と混合されて最終の中間周波数信号cとしてこの周波数変換部3から出力される。
【0005】周波数変換部3の局部発振器5の発振周波数は掃引制御部9によって、所定の周波数範囲に亘って掃引される。その結果、周波数変換部3から出力される中間周波数信号cの周波数fI も掃引動作に同期して変化する。
【0006】周波数変換部3から出力された周波数が低減された中間周波数信号cは次のRBWフィルタ10へ入力される。このRBWフィルタ10は、例えば図6に示した周波数特性を有するバンドパスフィルタで構成されており、不要な周波数成分を除き、必要な中間周波数信号のみを選択する。このバンドパスフィルタの周波数特性の通過中心周波数fC におけるピークレベルから3dB低下した時点におけるバンド幅(RBW)は、このスペクトラムアナライザにおける周波数分解能を表す。
【0007】周波数変換部3から出力される中間周波数信号cの周波数fI は掃引動作に同期して変化するので、RBWフィルタ10から1掃引期間(掃引周期)内において時間経過と共に出力される出力信号は、掃引受信して中間周波数信号cに変換された被試験信号の各周波数成分における時系列波形となる。
【0008】RBWフィルタ10からの出力信号は増幅器11でゲイン調整された後に、LOG変換器12で対数変換される。信号レベルがdB単位に変換された出力信号は次の検波器13で検波される。その結果、掃引期間内に検波された信号は、掃引された周波数における時系列波形の大きさを示す。したがって、横軸を周波数、縦軸を振幅とすれば、周波数スペクトラム波形となる。
【0009】この検波器13から出力された周波数スペクトラム波形を示す信号は次のVBWフィルタ14へ入力される。このVBWフィルタ14は例えば図7に示すスペクトラムアナライザの前面パネル19に取付けられた表示器17に最終的に表示される周波数スペクトラム波形18の高周波成分(雑音成分)を除去するLPF(ローパスフィルタ)で構成されている。
【0010】このVBWフィルタ14から出力されたアナログの周波数スペクトラム波形はピーク検出器15にて各時間軸位置におけるピーク値が検出され、包絡線検波された状態の最終的な周波数スペクトラム波形18が得られる。この最終的な周波数スペクトラム波形を示す信号は次のA/D変換器16でデジタルデータに変換される。デジタルデータに変換された周波数スペクトラム波形は前述したように前面パネル19の表示器17に表示する。
【0011】よって、図7に示すように、被測定信号aの周波数スペクトラム波形18が前面パネル19の表示器17に表示出力される。なお、掃引周波数範囲を及び表示器17上における周波数の表示範囲を変更することによって、広い周波数範囲に亘って、かつ任意の周波数範囲内の周波数スペクトラムを測定可能である。
【0012】さらに、RBWフィルタ10のバンド幅(RBW)を変更することによって、スペクトラムアナライザの周波数分解能を任意の値に変更できる。一般的には、掃引周波数範囲を広くするとバンド幅(RBW)を広くして周波数分解能を低下させる。すなわち、RBWフィルタ10のバンド幅(RBW)を掃引周波数範囲の変化に対応させて変化させている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図5に示したスペクトラムアナライザにおいても、まだ解消すべき次のような課題があった。すなわち、スペクトラムアナライザの周波数分解能を示すRBWフィルタ10のバンド幅(RBW)や通過中心周波数fC の調整、LOG変換器12における対数変換の直線性、RBWフィルタ10におけるバンド幅(RBW)の切換による振幅値のずれ、バンド幅(RBW)の掃引周波数範囲に対する同調ずれ発生に対する校正作業を実施する必要がある。
【0014】特に、従来のスペクトラムアナライザのRBWフィルタ10においては、急峻な特性を複数のフィルタを従属接続して得ていたので、より精密さが要求されている。
【0015】このように、アナログの電子部品を用いて高周波信号に対する周波数解析処理を実施するスペクトラムアナライザにおいては、実際に測定を開始する前の校正が繁雑であり、測定作業能率が大幅に低下する懸念があった。
【0016】また、たとえ測定開始前に完全に調整や校正を実施したとしても、測定開始後において、測定環境の変化に応じて、各部品の周波数特性が変動する懸念があり、高い測定精度が得られない懸念がある。
【0017】本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、周波数変換部から出力される中間周波数信号に対する処理をデジタル化することによって、測定開始時点における繁雑な調整作業や校正作業を省略でき、操作者の作業負担を大幅に軽減できると共に、たとえ測定環境が変化したとしても高い測定精度を維持できるスペクトラムアナライザを提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記課題を解消するために本発明は、入力したアナログの被測定信号の周波数を中間周波数に変換する周波数変換部と、周波数変換部における局部発振周波数を変化させて出力される中間周波数信号の周波数を掃引する掃引制御部と、周波数変換部から出力される中間周波数信号をデジタルの中間周波数信号に変換するA/D変換器と、A/D変換器から出力されたデジタルの中間周波数信号を受けて、周波数分解能を定める所定バンド幅の周波数成分を選択して出力するRBWデジタルフィルタと、RBWデジタルフィルタが出力した信号の時系列波形を記憶する波形メモリと、波形メモリに記憶された時系列波形を検波処理する検波処理手段と、検波処理手段にて検波処理された時系列波形の信号レベルを対数変換して、周波数スペクトラム波形を得るLOG変換処理手段と、LOG変換処理手段にて得られた周波数スペクトラム波形の高周波成分を除去するVBWデジタルフィルタと、VBWデジタルフィルタで高周波成分が除去された周波数スペクトラム波形を表示する表示器とを備えたスペクトラムアナライザである。
【0019】さらに、検波処理手段、LOG変換処理手段及びVBWデジタルフィルタを一つのデジタル・シグナル・プロセッサ内でソフトウエア手法を用いて実現するようにしている。
【0020】このように構成されたスペクトラムアナライザにおいては、入力された例えば高周波の被測定信号は周波数変換部において、掃引制御部で周波数が掃引制御される中間周波数信号に変換される。この周波数変換部から出力されたアナログの中間周波数信号はA/D変換器でデジタルの中間周波数信号に変換される。そして、このデジタルの中間周波数信号はRBWデジタルフィルタへ入力される。
【0021】RBWデジタルフィルタは、前述したアナログのRBWフィルタと同様に、このスペクトラムアナライザの周波数分解能に対応するバンド幅の周波数成分を通過させる機能を有している。周波数変換部から出力される中間周波数信号の周波数は掃引動作に同期して変化するので、RBWデジタルフィルタから掃引期間内において時間経過と共に出力される出力信号は掃引受信して中間周波数信号に変換された被測測定信号の各周波数における時系列波形となる。
【0022】RBWデジタルフィルタから出力された時系列波形は一旦波形メモリに記憶保持された後、デジタル・シグナル・プロセッサ(以下DSPと略記する)へ入力される。このDSPは一種の超小型高速演算モジールであり、内部に計算プログラムが書込まれている。
【0023】本発明においては、このDSP内に、検波処理手段とLOG変換処理手段とVBWデジタルフィルタを実現するための各プログラムが書込まれている。DSP内へ入力された時系列波形は検波処理手段にて検波処理されて、振幅値か求められ、LOG変換処理手段にて振幅値が対数変換される。これにより、横軸を掃引受信された周波数としたときのLOG変換処理手段の出力の振幅値を縦軸とする周波数スペクトラム波形となる。さらに、VBWデジタルフィルタにて周波数スペクトラム波形の高周波成分が除去されたのち、DSPから出力される。
【0024】DSPから出力された周波数スペクトラム波形は表示器に表示される。このように、周波数変換部から出力される中間周波数信号に対する処理をデジタル化することによって、測定開始時点における繁雑な調整作業や校正作業を省略できる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1は実施形態のスペクトラムアナライザの概略構成を示すブロック図である。図5に示す従来のスペクトラムアナライザと同一部分には同一符号が付してある。したがって、重複する部分の詳細説明は省略されている。
【0026】入力端子1を介して入力された例えば数百KHz〜数GHzの高周波のアナログの被試験信号aの信号レベルは減衰器2で規定レベルに調整されて、周波数変換部3へ入力される。周波数変換部3へ入力された高周波の被試験信号aは信号混合器4で局部発振器5からの局部発振信号bと合成されて、中間周波数を有する中間周波数信号に変換される。この中間周波数信号はBPF6で帯域制限された後、再度、信号混合器7で局部発振器8からの局部発振信号b1 と合成されて最終の中間周波数信号cとしてこの周波数変換部3から出力される。
【0027】周波数変換部3の局部発振器5の発振周波数は掃引制御部21によって、所定の周波数範囲に亘って掃引される。その結果、周波数変換部3から出力される中間周波数信号cの周波数fI も掃引動作に同期して変化する。
【0028】例えば6MHzに低減された周波数fI を有する中間周波数信号cは、次のA/D変換器22でクロック発振器23から出力される例えば30MHzのサンプリング周波数fS を有するサンプリング信号でサンプリングされて、例えば12ビット構成のデジタルの中間周波数信号c1 となる。デジタルの中間周波数信号c1 は次のRBWデジタルフィルタ24へ入力される。
【0029】RBWデジタルフィルタ24は、例えば、サンプリング周波数を変更しながらデジタルフイルタ処理を実行していく高速処理が実現可能なデシメーション・デジタルフィルタで構成されている。そして、このRBWデジタルフィルタ24は、前述したアナログのRBWフィルタ10と近似した周波数特性を有しており、図6R>6の周波数特性に示すように、予め定められた中心周波数fC を中心として、このスペクトラムアナライザの周波数分解能に対応するバンド幅(RBW)の周波数成分を通過させる機能を有している。
【0030】このバンド幅(RBW)は、掃引制御部21にて掃引周波数範囲の大きさに連動して変更される。周波数変換部3から出力されてA/D変換器22でデジタルに変換された中間周波数信号c2 の周波数fI は、RBWデジタルフィルタ24で不要成分が除かれて、時間経過と共に出力される時系列波形となる。
【0031】RBWデジタルフィルタ24から出力された時系列波形は一旦波形メモリ25に記憶保持された後、DSP26入力される。このDSP26は一種の超小型高速演算モジールで構成されている。そして、このDSP26内には、コンピュータ等の主制御部28によってHDD等の外部記憶装置29に記憶されている処理プログラムが読出されて予め書込まれる。DSP26は書込まれた処理プログラムに従って複数種類の演算処理を実行する。
【0032】このDSP26内には、図2に示すように、入出力のインタフェースの機能をはたす入力I/F34及び出力I/F35の他に、図3に示すように、CPU32がRAM33に書込まれた処理プログラムを実行することにより、機能的には、検波処理部50,LOG変換処理部51,VBWフィルタ処理部52,ピーク検出処理部53及び表示編集処理部54とが設けられている。
【0033】次に、各部50〜54の動作を順を追って説明していく。入力I/F34は波形メモリ25に記憶された1掃引期間(掃引周期)分の時系列波形を順次取込んで次の検波処理部50へ送出する。検波処理部50は入力した時系列波形の負極性成分を除去して時系列波形の振幅を示す検波波形として次のLOG変換処理部51へ送出する。
【0034】このLOG変換処理部51は、入力が予想される各データ値に対して、対数変換された値を予め記憶した変換テーブルで構成されており、順次入力される検波波形の各データ値に対応する各変換値(dB:デジベル値)を読出して出力する。したがって、このLOG変換処理部51から出力される時系列波形は、時間軸を周波数軸として、縦軸をデジベル単位で示した周波数スペクトラム波形となる。
【0035】LOG変換処理部51から出力された周波数スペクトラム波形は次のVBWフィルタ処理部52へ入力される。このVBWフィルタ処理部52は、例えば、線形デジタルフィルタの一種である無限インパルス応答フィルタ(IIRフィルタ)で構成されている。機能的には、このVBWフィルタ処理部52は、図5に示すアナログのVBWフィルタ14と同様に、周波数スペクトラム波形の高周波成分を除去するLPF(ローパスフィルタ)で構成されている。
【0036】このVBWフィルタ処理部52から出力された周波数スペクトラム波形はピーク検出処理部53へ送出される。ピーク検出処理部53は、周波数スペクトラム波形の各時間軸位置におけるピーク値を検出して、包絡線検波された状態の最終的な周波数スペクトラム波形を生成する。ピーク検出処理部53から出力された周波数スペクトラム波形は次の表示編集処理部54へ送出する。
【0037】表示編集処理部54は入力された周波数スペクトラム波形を表示器27の表示画面に表示するフオーマットにイメージ展開して出力I/F35を介して表示器27へ送出する。例えばCRT表示装置又は液晶表示器等で構成された表示器27は受領した周波数スペクトラム波形を表示出力する。
【0038】主制御部28はDSP26に対する処理プログラムを書込む機能の他に、掃引制御部21へ掃引範囲の設定指令を送出する。掃引制御部21は、主制御部28が指定した周波数範囲で周波数変換部3の局部発振信号bを掃引する。また、主制御部28はRBWデジタルフィルタ24のバンド幅(RBW)を掃引範囲に対応した値に設定する。さらに、掃引制御部21は表示器27上における周波数の表示範囲の設定を実施する。
【0039】よって、被測定信号aにおける広い周波数範囲に亘って、かつ任意の周波数範囲内の周波数スペクトラムを測定可能である。次に、主制御部28のDSP26に対する処理プログラムの設定手順を説明する。
【0040】図3はDSP26及び主制御部28の概略構成を示すブロック図である。DSP26内のシステムバス31に対して、CPU32,RAM33,入力I/F34,出力I/F35,内部アドレスデコーダ36,外部アドレスデコーダ37等が接続され、さらに、DSP26内にはバス切換器38,信号切換器39が組込まれている。
【0041】前記RAM33内には、主制御部28から書込まれた、前記検波処理部50に対応する検波処理プログラム、LOG変換処理部51に対応するLOG変換処理プログラム、ピーク検出処理部53に対応するピーク検出処理プログラム、VBWフィルタ処理部52に対応するVBWフィルタ処理プログラム及び表示編集処理部54に対応する表示編集処理プログラムが記憶されている。
【0042】主制御部28内のシステムバス41に対して、CPU42,主メモリ43,バスバッファ44,リセット回路45,外部記憶装置I/F46,アドレスデコーダ47等が接続されている。バスバッファ44は接続バス40を介してDSP26側の外部アドレスデコーダ37及びバス切換器38に接続されている。
【0043】また、主制御部28の外部記憶装置I/F46には前述した外部記憶装置29が接続されている。この外部記憶装置29にはDSP26に書込むための各種の処理プログラムが予め記憶されている。
【0044】このような構成の主制御部28及びDSP26において、外部記憶装置29に記憶された各処理プログラムをDSP26のRAM33内に書込む手順を説明する。
【0045】主制御部28のCPU42は、システムバス41を介してリセット回路45を駆動して、DSP26に対してリセット信号rを送出する。その結果、DSP26内におけるバス切換器38及び信号切換器39が作動して、図示するように、RAM33を接続バス40に接続すると共に、外部アドレスデコーダ37の書込制御信号線をRAM33へ接続し、かつCPU32の動作がリセット状態となる。
【0046】この状態においては、DSP26のRAM33は、主制御部28のCPU42のアドレス空間に入ることになる。したがって、主制御部28のCPU42は外部記憶装置29に記憶されて各処理プログラムを外部記憶装置I/F46を介して読出して、システムバス41,バスバッファ44,接続バス40を介してDSP26のRAM33に直接書込む。
【0047】主制御部28のCPU42は、必要な全ての処理プログラムのDSP26のRAM33に対する書込処理が終了すると、システムバス41を介してリセット回路45を駆動して、DSP26に対するリセット信号rを解除する。
【0048】その結果、DSP26内におけるバス切換器38及び信号切換器39が作動して、RAM33がシステムバス31に接続されると共に、内部アドレスデコーダ36の書込制御信号線がRAM33に接続され、かつCPU32が動作状態に移行する。
【0049】なお、上記説明してきた外部記憶装置29として、ICカードメモリ、FDD等も採用できる。また、この外部記憶装置29は、主制御部28内部に組込まれたROM等で構成されていてもよい。
【0050】よって、DSP26のCPU32は入力I/F34を介して波形メモリ25から入力した時系列波形の各データに対してRAM33に書込まれた各処理プログラムに従って上述した50〜54の各演算処理を順次実行して実行結果を出力I/F35を介して表示器27へ出力する。
【0051】このように構成されたスペクトラムアナライザにおいては、入力された例えば高周波のアナログの被測定信号aは周波数変換部3において掃引制御部21で周波数fI が掃引制御される中間周波数信号cに変換される。この周波数変換部3から出力されたアナログの中間周波数信号cはA/D変換器22でデジタルの中間周波数信号c1 に変換される。
【0052】そして、このデジタルの中間周波数信号c1 は、RBWデジタルフィルタ24にて、周波数分解能に対応するバンド幅(RBW)の周波数成分が抽出される。RBWデジタルフィルタ24から出力された時系列波形は一旦波形メモリ25に記憶保持された後、DSP26へ入力される。
【0053】DSP26は波形メモリ25内に記憶されている1掃引期間(掃引周期)分の時系列波に対して、ソフトアェア手法にて、検波処理,LOG変換処理,VEWフィルタ処理、ピーク検出処理及び表示編集処理を実行して、最終的に得られる周波数スペクトラム波形を表示器27に表示出力している。
【0054】このように、周波数変換部3から出力される中間周波数信号cに対する処理をデジタル化することによって、アナログ電子部品を除去している。したがって、図5に示す従来装置で各アナログ電子部品に対して実施していた定開始時点における繁雑な調整作業や校正作業を省略できるので、操作者の作業負担が大幅に簡素化され、測定作業能率を大幅に向上できる。
【0055】また、RBWデジタルフィルタ24,波形メモリ25及びDPS26は温度等の測定環境が多少変動したとしても、演算結果に誤差が混入することは非常に少ないので、従来装置に比較して測定精度を大幅に向上できる。
【0056】また、RBWデジタルフィルタ24やDSP26内にソフト的に組込まれたVBWフィルタの通過周波数帯幅や通過中心周波数fC 等は、ソフト的に簡単に変更できる。したがって、RBWデジタルフィルタ24のバンド幅(RBW)を掃引範囲に対応した値に簡単に変更できる。よって、被測定信号aにおける広い周波数範囲に亘って、かつ任意の周波数範囲内の周波数スペクトラムを測定可能である。
【0057】さらに、演算処理を専用に行うDSP26を採用することによって、デジタルデータの処理速度の高速化を図っているので、高周波の被測定信号aに対する周波数スペクトラム解析をほぼ実時間で実施できる。
【0058】また、図4に示すように、主制御部28が、外部記憶装置29から信号復調に関するシンボル同期検出部61,ビット復調部62,同期ワード検出部63,復号部64等にそれぞれ対応する各処理プログラムを読出して、DSP26のRAM33に書込んて実行させることによって、このDSP26に対してデジタル変調信号の復調処理を実行させることも可能である。
【0059】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のスペクトラムアナライザにおいては、周波数変換部から出力される中間周波数信号をA/D変換器でデジタルの中間周波数信号に変換して、これ以降の中間周波数信号に対するRBWフィルタ処理やLOG変換処理等の周波数スペクトラム波形を得るための各種の処理をデジタル部品やソフトウエアで実施している。
【0060】したがって、測定開始時点における繁雑な調整作業や校正作業を省略でき、操作者の作業負担を大幅に軽減できると共に、たとえ測定環境が変化したとしても高い測定精度を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係わるスペクトラムアナライザの概略構成を示すブロック図
【図2】 同スペクトラムアナライザに組込まれたDSP内に形成された各処理部を示す図
【図3】 同スペクトラムアナライザに組込まれたDSP及び主制御部の概略構成を示すブロック図
【図4】 デジタル変調信号に対する復調処理機能が組込まれたDSPを説明するための図
【図5】 従来のアナログ電子部品で構成されたスペクトラムアナライザの概略構成を示すブロック図
【図6】 一般的なRBWフィルタの周波数特性図
【図7】 表示器に表示された一般的な周波数スペクトラム波形を示す図
【符号の説明】
2…減衰器、3…周波数変換部、21…掃引制御部、22…A/D変換器、23…クロック発振器、24…RBWデジタルフィルタ、25…波形メモリ、26…DSP、27…表示器、28…主制御部、29…外部記憶装置、50…検波処理部、51…LOG変換処理部、52…VBWフィルタ処理部、53…ピーク検出部、54…表示編集処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 入力したアナログの被測定信号の周波数を中間周波数に変換する周波数変換部(3) と、この周波数変換部における局部発振周波数を変化させて出力される前記中間周波数信号の周波数を掃引する掃引制御部(21)と、前記周波数変換部から出力される中間周波数信号をデジタルの中間周波数信号に変換するA/D変換器(22)と、このA/D変換器から出力されたデジタルの中間周波数信号を受けて、周波数分解能を定める所定バンド幅の周波数成分を選択して出力するRBWデジタルフィルタ(24)と、このRBWデジタルフィルタが出力した信号の時系列波形を記憶する波形メモリ(25)と、この波形メモリに記憶された時系列波形を検波処理する検波処理手段(50)と、この検波処理手段にて検波処理された時系列波形の信号レベルを対数変換して、周波数スペクトラム波形を得るLOG変換処理手段(51)と、このLOG変換処理手段にて得られた周波数スペクトラム波形の高周波成分を除去するVBWデジタルフィルタ(52)と、このVBWデジタルフィルタで高周波成分が除去された周波数スペクトラム波形を表示する表示器(27)とを備えたスペクトラムアナライザであって、前記検波処理手段、前記LOG変換処理手段及び前記VBWデジタルフィルタは、一つのデジタル・シグナル・プロセッサ(26)内でソフトウエア手法を用いて実現されることを特徴とするスペクトラムアナライザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平9−257843
【公開日】平成9年(1997)10月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−72374
【出願日】平成8年(1996)3月27日
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)