説明

スペクトラム拡散通信装置

【課題】 スペクトラム拡散通信装置を短期間で開発する。
【解決手段】 複数ビットのI,Qを夫々保持するデータレジスタと、1ビットのI,Qを夫々保持するコードレジスタと、データレジスタとコードレジスタの出力を複素乗算する複素乗算器と、からなるタップM個と、M個のタップ出力を加算する加算器と、加算器出力を格納する出力レジスタと、からなる同一構成の信号合成手段をN+1個(NはM以下)備え、1個の信号合成手段に他の信号合成手段の出力を入力する2段構成とする。
初段の信号合成手段には、データレジスタに送信電力ゲインを入力し、コードレジスタのにシンボルデータをチャネライゼーション・コードで拡散したデータを入力する。各初段の信号合成手段には、同一のスクランブリング・コードを用いるチャネルを纏めて割当て、後段の信号合成手段のコードレジスタにはそのスクランブリング・コードを入力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信や無線LAN等のようなスペクトラム拡散に用いられるスペクトラム拡散通信装置に係り、特に、簡単且つ小規模な構成が可能な、スペクトラム拡散通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に移動体通信又は無線LAN(Local Area Network)等に用いられるスペクトラム拡散(Spread Spectrum:SS)通信システムでは、送信側で送信データに対して狭帯域変調(1次変調)を行い、更に拡散変調(2次変調)を行う、2段階の変調を行ってデータを送信し、受信側では、受信データに対して逆拡散を行って1次変調に戻してから、通常の検波回路でベースバンド信号の再生を行うようになっている。
【0003】
送信データの拡散方法について、以下に説明する。送信データは連続するシンボルデータの各ペアがまずシリアル−パラレル変換され、それぞれ同相成分、直交成分とに分類される。ここで同相成分をTi、直交成分をTq、拡散符号の同相成分をCi、直交成分をCqとすると、拡散することで得られる拡散信号Dは
D=(Ti+jTq)×(Ci+jCq) (式1)
=(Ti×Ci−Tq×Cq)+j(Ti×Cq+Tq×Ci) (式2)
と表される。(式2)より、拡散信号の同相成分Diと直交成分Dqはそれぞれ
Di=Ti×Ci−Tq×Cq (式3)
Dq=Ti×Cq+Tq×Ci (式4)
と表される。
【0004】
上述した送信データの拡散方法を実現する拡散装置の構成及び動作について、図3を用いて説明する。図3は従来のスペクトラム拡散通信用拡散回路のブロック図である。送信データであるシンボルデータ1(I,Q)が、拡散器3Aに入力される。コード生成器32Aからは、各Ch(チャネル)用のChannelization Codeと共通Scrambling Code(I,Q)とを乗算(排他的OR演算)した拡散コードが出力され、複素乗算器33Aにて(式3)及び(式4)の演算が行わる。また、複素乗算器34Aにて各Ch用の送信ゲインが乗算されて、拡散器3Aの出力となる。各Chの拡散器3B〜Nも同様の処理を行い、加算器35にて加算し、多重された拡散信号として出力される。多重された拡散信号はその後、各Ch共通にD/A変換、直交変調、周波数変換及び増幅されアンテナから送信される。
【0005】
また、送信用に複数のチャネル信号を重み付け加算する合成器と、受信用の逆拡散器とを、共通に使用できる同一構成とすることで、開発期間を短縮したものが知られる(例えば、特許文献1参照。)。
また、QAM(直交振幅変調)信号を高効率で電力増幅するために、QPSK(直交位相変調)の状態で増幅したあとで合成するものが知られる(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−234674号公報
【特許文献2】特開平09−200278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1の技術では、回路モジュールの一部の構成を送信と受信で共通化できるものの、タップ数を受信用のマッチトフィルタに要求される数にあわせると、送信用のCh数に比べ必要以上に大きい値(例えば512)に固定され、柔軟性に欠くという問題があった。また例えば収容能力の異なる携帯電話基地局を開発する場合に、夫々の収容能力に適合した回路モジュールを個別に設計、検証すると開発効率が悪く、収容能力の大きいほうにあわせるとオーバースペックのためコスト高になるという問題があった。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、異なる仕様に対しても、簡単且つ小規模な構成のまま短期間で開発可能なスペクトラム拡散通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスペクトラム拡散通信装置は、夫々複数ビットからなるI,Qを夫々保持するデータレジスタと、夫々1ビットからなるI,Qを夫々保持するコードレジスタと、前記データレジスタと前記コードレジスタの出力を複素乗算する複素乗算器と、からなるタップM個(Mは2以上の自然数)と、前記M個のタップの出力を加算する加算器と、前記加算器の出力を格納する出力レジスタと、から構成される同一構成の信号合成手段(合成拡散信号発生回路)をN+1個(NはM以下の自然数)有し、前記N個の信号合成手段の夫々には、夫々の前記データレジスタのI、Qどちらか一方に送信電力ゲインを入力し、夫々の前記コードレジスタのI、Q夫々にシンボルデータをチャネライゼーション・コードで拡散したデータを入力し、前記1個の信号合成手段には、夫々の前記データレジスタのI,Qに前記N個の信号合成手段の出力を入力し、夫々の前記コードレジスタには同じタップのデータレジスタに入力を与えた信号合成手段で処理されたチャネルに共通なスクランブリング・コードを入力し、前記N+1個の信号合成手段が、複数のチャネルの拡散信号を合成することを特徴とする。
【0010】
また、前記N個の信号合成手段のうち少なくとも1つにおいて、複数の前記コードレジスタに、I、Q夫々が複数ビットからなるシンボルデータをチャネライゼーション・コードで拡散したデータの各ビットを夫々入力し、対応する複数の前記データレジスタに、前記各ビットに対応する重みを与える2のべき数の比を有する送信電力ゲインを入力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、合成拡散信号発生回路を2段構成にすることで、複数Chの拡散処理を一度に処理することが可能である。また、同一モジュールを使用して、拡散データと送信ゲインの乗算処理部と、Scrambling Code拡散処理部の両機能部に適用することが可能であり開発効率の向上につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の最良の形態を要約すると、複数ビットのI,Qを夫々保持するデータレジスタと、1ビットのI,Qを夫々保持するコードレジスタと、データレジスタとコードレジスタの出力を複素乗算する複素乗算器と、からなるタップM個と、M個のタップ出力を加算する加算器と、加算器出力を格納する出力レジスタと、からなる同一構成の信号合成手段をN+1個(NはM以下)備え、1個の信号合成手段に他の信号合成手段の出力を入力する2段構成とする。
初段の信号合成手段には、データレジスタに送信電力ゲインを入力し、コードレジスタのにシンボルデータをチャネライゼーション・コードで拡散したデータを入力する。各初段の信号合成手段には、同一のスクランブリング・コードを用いるチャネルを纏めて割当て、後段の信号合成手段のコードレジスタにはそのスクランブリング・コードを入力する。
【0013】
以下実施例を通じて、図面を参照しながら説明するが、各実施例で説明する機能実現手段は、当該機能を実現する手段であれば、どのような回路又は装置であっても構わず、また機能の一部又は全部をソフトウェアで実現することも可能である。更に、機能実現手段を複数の回路によって実現してもよく、複数の機能実現手段を共通の回路で実現してもよい。
また各実施例の任意の組み合わせ、特許文献1のような従来技術との組み合わせも本発明に含まれうる。
【実施例1】
【0014】
図1は本実施例の合成拡散信号発生回路の構成図である。合成係数レジスタ11、コードレジスタ12、複素乗算器13それぞれ1つずつのセットを1タップとすると、4タップ構成の合成拡散信号発生回路1を例示してある。
4個の合成係数レジスタ11A〜Dはそれぞれ、RiとRqのデータを8bitずつ計16bit格納する。また4個のコードレジスタ12A〜Dはそれぞれ、CiとCqのコードを1bitずつ計2bit格納する。
【0015】
複素乗算器13Aは、前記合成係数レジスタ11Aと前記コードレジスタ12Aからの入力を複素乗算する。すなわち、合成係数レジスタ11AのデータをRi+jRq、コードレジスタ12AのコードをCi+jCqとすると、複素乗算器13Aの出力Dは、
D=(Ri+jRq)×(Ci+jCq) (式5)
=(Ri×Ci−Rq×Cq)+j(Ri×Cq+Rq×Ci) (式6)
と表される。出力Dの実部、虚部はそれぞれ、
Di=Ri×Ci−Rq×Cq (式7)
Dq=Ri×Cq+Rq×Ci (式8)
と表される。但し、上記計算式の中でコード1bitは、”0”の時は”1”として、”1”の時は”−1”として計算される。上記式6乃至8における×演算は、符号反転に過ぎず、負数の内部表現形式として例えば符号ビットと絶対値の組み合わせによるsigned intを用いる場合、Ri、Rqそれぞれの符号ビットとCi、CqのExORにより実現できる。コードと複素乗算器13B〜Dにおいても同様に、それぞれに対応する合成係数レジスタ11B〜Dとコードレジスタ12B〜Dを用いて演算された結果を出力する。
【0016】
最後に加算器14が、前記複素乗算器13A〜Dの出力Di,Dqそれぞれを4個分加算し、Ai:11bit,Aq:11bitとして出力する。
上記で説明した複素相関器の各レジスタのbit数は、必ずしも図示するようなbit幅である必要は無く、実現しようとする機能を達成できるbit幅、もしくはbit幅を可変できる合成拡散信号発生回路として構成する。
【0017】
次に、上述の合成拡散信号発生回路1を用いた拡散装置について図2を用いて説明する。図2は16Ch分のデータを拡散し出力する拡散装置の構成図である。図示してはいないが、予め制御部にて処理するChをScrambling Code毎に振り分ける。図2の場合、4Ch毎に1つのScrambling Codeを設定することが可能で、合成拡散信号発生回路1Aにて処理されるCh1〜4(Symbol Data1〜4)に対応する共通Scrambling Codeは、Scrambling Code生成器(Scr.Code生成器)2Aに設定される。同様に合成拡散信号発生回路1B〜Dに対応する共通Scrambling Codeは、Scrambling Code生成器2B〜Dにそれぞれ設定される。それにより4Ch×4Scrambling Code=16Ch分の拡散処理が可能になる。1つのScrambling Codeに対して3Ch分以下(4Chに満たない)の場合でも、空きChに対しては設定されるGainを0に設定することで問題なく処理することができる。
【0018】
合成拡散信号発生回路1Aのコードレジスタ12A〜Dには、Channelization Code生成器4a〜dより出力される各ChのChannelization Codeと、各ChのSymbol Dataを乗算器5A〜Dにて乗算(ExOR)したものを設定する。各Symbol DataはQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)にて一次変調されているものとする。合成係数レジスタ11A〜Dには各Chの送信電力Gain(有効語調5bit/8bit)をそれぞれ設定する。設定はRi側に設定値を入力、Rq側には0を入力する。このように設定することで、複素乗算器13A〜Dにて行われる前記導出式(式7)及び(式8)の演算結果のRqの項が0になり、コードレジスタ12A〜D設定値に対しRi設定値がそのまま乗算されることとなる。
セットされた合成係数レジスタ11A〜Dとコードレジスタ12A〜Dはそれぞれ対応する複素乗算器13A〜Dにて導出式(式7)及び(式8)の演算が行われ、更に累加算器14で4Ch分の同相成分と直交成分をそれぞれ加算した値を、Ai及びAqとして出力(7bit/11bit)する。
他の合成拡散信号発生回路1B〜Dも同様に各Chの[Channelization Code] ExOR [Symbol Data]をコードレジスタ12A〜Dの入力、各Chの送信電力Gainを合成係数レジスタ11A〜Dに入力し、それぞれAi及びAqとして出力(7bit/11bit)する。
【0019】
次に各合成拡散信号発生回路1A〜Dの出力(下位8bit)を、合成拡散信号発生回路1Eの合成係数レジスタ11Aに入力する。合成拡散信号発生回路1Eのコードレジスタ12Aには、合成拡散信号発生回路1Aで処理された4Chに共通なScrambling Codeを、Scrambling Code生成器2Aより入力する。同様に各合成拡散信号発生回路1B〜Dの出力を、合成拡散信号発生回路1Eの合成係数レジスタ11B〜Dに入力する。合成拡散信号発生回路1Eのコードレジスタ12B〜Dには、合成拡散信号発生回路1B〜Dで処理されている4Ch毎に共通なScrambling Codeを、Scrambling Code生成器2B〜Dより入力する。設定された合成係数レジスタ11A〜Dとコードレジスタ12A〜Dはそれぞれ対応する複素乗算器13A〜Dにて導出式(式7)及び(式8)の演算が行われ、更に累加算器14で4セット(16Ch)分の同相成分と直交成分をそれぞれ加算した値を、拡散データI_Out及びQ_Outとして出力(11bit)する。
【0020】
各Scrambling Code生成器2A〜Dの生成するScrambling Codeとして、その基地局のPrimary Scrambling Code、Secondary Scrambling Codeの他、コンプレスモードにおけるScrambling Code Changeにより異なるScrambling Codeをとる可能性があるが、通常その数は多くなく、Scrambling Code生成器2A〜Dが同一のScrambling Codeとなることもある。各Scrambling Code生成器2A〜DやChannelization Code生成器4a〜pはリアルタイムでこれらのCodeを個別に生成する必要はなく、取り得る可能性のあるCodeを予め全て共通のメモリに展開しておき、必要に応じて選択するようにしてもよい。
【0021】
本実施例では、合成拡散信号発生回路のタップ数と合成拡散信号発生回路1Eに入力される合成拡散信号発生回路1A〜1Dの数とを等しく設定したが、タップ数よりも合成拡散信号発生回路数を減らしてもよく、それにより要求されるCh数に柔軟に応じることができる。また合成拡散信号発生回路は2段構成に限らず3段以上の多段構成にすることもありうる。
本実施例によれば、合成拡散信号発生回路という再利用性の高い汎用機能ブロックを組み合わせて拡散装置を構成したことで、送信出力Gainを設定するために複素乗算器を用いている点などで個別設計に比べ規模が若干増大するように思われるが、設計資産の再利用率が高まるので、規模増大を抑えつつ開発工数を大幅に削減できる。
【実施例2】
【0022】
本実施例では、実施例1がW−CDMA携帯電話方式におけるHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)に適用できることを説明する。HSDPAでは基地局からの送信に、伝送路状態が悪い時は低速なQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)が用いられ、伝送路状態が良い時は高速な16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)が用いられるので、両方の変調方式に対応する必要がある。
【0023】
各変調方式について更に説明すると、QPSKではSymbol Dataのデータストリームを、先頭を右とするとデータを2bitごとに区切った、
…I|Q I|Q I|Q I|Q I|…
…0|0 0|1 1|0 1|1 0|…
という内部形式で扱う。そして、ビットシフトによりIとQの2相により分け、各ビットを0→−1、1→1にプロットすることで2ビットを1シンボルとしてマッピングを行っている。図4にシンボル間距離が8aのQPSKシンボルマッピングを示す。図中の横軸は直交位相変調方式の同相成分I、縦軸は直交成分Qである。
【0024】
16QAMではSymbol Dataのデータストリームを4bitごとに区切った、
…I|Q2 I2 Q I|Q2 I2 Q I|…
…0|0 0 1 1|0 1 1 0|…
という内部形式で扱う。そして、図4、図5に示すようにI,Q及びI2、Q2ごとにI2、Q2の振幅がI,Qの振幅の2分の1になるようなQPSKシンボルマッピングを行う。その後、各シンボルの同相成分I、I2、直交成分Q、Q2ごとに加算してベクトル合成することで、図6のように16QAMシンボルマッピングが完成する。図6中、○で示すものはI,Qのみによるマッピングであり、この各々の○について図5に示すI2、Q2によるマッピングを施す。
【0025】
本実施例では、16QAMを用いる場合、Symbol Dataのデータストリームを2ビットシフトなどによりI,QとI2、Q2とに切り分けて2つのQPSKシンボル形式にし、夫々を共通のChannelization Codeと乗算した上で例えばコードレジスタ12A、12Bに入力する。また合成係数レジスタ11A、11Bには送信電力Gainとして、例えばQPSKで同様の送信電力を得る振幅の2/√5、1/√5の振幅をそれぞれ設定する。
また、64QAMを用いる場合、同様に振幅比が4:2:1のQPSK信号を生成して合成すればよく、それ以上の多値変調についても同様である。図7にQPSK,16QAM,64QAMに対応したシンボルマッピング処理のフローチャートを示す。
【0026】
本実施例によれば、QPSK用の任意の複数チャネルを用いて16QAMのような多値変調についても同一の回路モジュールで拡散装置を実現することができ、伝送路状態に応じた変調方式の変更にも容易に対応できる。またQPSK用と16QAM用とを別個の回路モジュールで構成する場合に比べ、ハードウェアの利用効率を極めて高くすることができる。
【実施例3】
【0027】
図8には、本実施例に係るスペクトラム拡散通信用の拡散装置に設けられた複素相関器の構成例を示してある。
本例の複素相関器は、合成拡散信号発生回路41と、出力レジスタ42と、共通Scrambling Codeレジスタ43と、複素乗算器44と、出力レジスタ45を有している。
合成拡散信号発生回路41は、4個の合成係数レジスタ51A〜Dと、4個のコードレジスタ52A〜Dと、2個のスイッチ53A、Bと、1個の複素乗算器54と、1個の加算器55と、1個の遅延レジスタ56を備えている。
【0028】
本例の合成拡散信号発生回路41としては、合成係数レジスタ51及びコードレジスタ52それぞれ1つずつのセットを1タップとすると、4タップ時の例について示してある。
4タップの合成係数レジスタ51A〜Dには、それぞれ、RiとRqのデータが8bitずつ計16bit格納されている。また、4タップのコードレジスタ52A〜Dには、それぞれ、CiとCqのコードが1bitずつ計2bit格納されている。
本例では、合成係数レジスタ51A〜Dからの出力をスイッチ53Aにて順番に切り換えて共通の複素乗算器54へ入力する。同様に、コードレジスタ52A〜Dからの出力をスイッチ53Bにて順番に切り換えて共通の複素乗算器54へ入力する。
【0029】
ここで、合成係数レジスタ51A〜Dには各Chの送信電力Gainをそれぞれ設定する。設定としては、Ri側に設定値を入力し、Rq側には0を入力する。コードレジスタ52A〜Dには、あらかじめシンボルデータI,QとChannelization Codeとを乗算(EOR)したものを設定する。このように設定することで、複素乗算器54にて行われる前記導出式(式7)及び(式8)の演算結果のRqの項が0になり、コードレジスタ52A〜Dの設定値に対してRiの設定値がそのまま乗算されることとなる。但し、前記計算式の中でコード1bitは、“0”の時は1として、“1”の時は−1として計算される。
【0030】
複素乗算器54にて演算された結果は、A〜Dの順番に時分割に出力され、加算器55に入力される。そして、加算器55と遅延レジスタ56によって4Ch分の同相成分と直交成分をそれぞれ加算した値を、出力レジスタ42へAi:11bit,Aq:11bitとして出力する。加算器55及び遅延レジスタ56による累加算の際には、まず遅延レジスタ56をレジスタクリア信号によってクリアしてから、時分割に入力される4Ch分のデータを累積加算し、そして、その結果を出力レジスタ42へ出力した後に、再びレジスタクリア信号にて遅延レジスタ56をクリアして累加算するという一連の動作を繰り返す。
出力レジスタ42からの出力データAi,Aqは、複素乗算器44にて共通Scrambling Codeで拡散され、その結果が出力レジスタ45へ出力データBi,Bqとして出力される。複素乗算器44には、レジスタ43に記憶された共通Scrambling CodeのI,Q成分が入力される。
【0031】
以上のように、本実施例に係る複素相関器では、I,Qそれぞれ多ビットの合成係数レジスタ51A〜Dを複数持ち、前記複数の合成係数レジスタ51A〜Dの入力を時分割に切り換えるスイッチ53Aを持ち、I,Qそれぞれ1ビットのコードレジスタ52A〜Dを複数持ち、前記複数のコードレジスタ52A〜Dの入力を時分割に切り換えるスイッチ53Bを持ち、前記二つのスイッチ53A、Bからの出力を入力として複素乗算する複素乗算器54を持ち、前記複素乗算器54の出力を累加算する加算器55及び遅延レジスタ56を持ち、更に、出力を格納する出力レジスタ42などを持つ。
【0032】
本実施例に係る拡散装置では、上記のような複素相関器において、前記I,Qそれぞれ多ビットの合成係数レジスタ(データレジスタ)51A〜DのI側に送信電力Gainを入力するとともにQ側に0を入力し、前記I,Qそれぞれ1ビットのコードレジスタ52A〜DにシンボルデータをChannelization Codeで拡散(EOR)したデータを入力し、前記複数の合成係数レジスタ51A〜Dやコードレジスタ52A〜Dに複数チャネルの設定をそれぞれ行い、前記複素乗算器54などから得られる演算結果を共通Scrambling Codeで複素相関演算して、拡散出力を得る。
【0033】
従って、本実施例では、4Ch分のデータを拡散して出力するに際して、合成拡散信号発生回路41の複素乗算器54を時分割で使用することにより、回路規模の低減が可能となる。
例えば、スペクトラム拡散通信システムの送信機で用いられるスペクトラム拡散通信用の相関回路や、変復調回路や、送信装置において、簡単且つ小規模な構成を可能とすることができる。
【0034】
なお、本実施例に係る合成拡散信号発生回路41では、例えば、図10に示される合成拡散信号発生回路81と同様な処理を実行することができる。
図10には、スペクトラム拡散通信用の拡散装置の構成例を示してある。
本例の拡散装置では、次のような構成及び動作により、送信データの拡散方法を実現する。
本例では、4Ch分のデータを拡散して出力する。4タップの合成係数レジスタ51A〜Dや4タップのコードレジスタ52A〜Dやそれぞれの設定値については、図8に示されるものと同様である。
【0035】
本例では、A〜Dのそれぞれについて、セットされた合成係数レジスタ51A〜Dの値とコードレジスタ52A〜Dの値に対して、対応する複素乗算器91A〜Dにて導出式(式7)及び(式8)の演算が行われる。そして、加算器92で4Ch分の同相成分と直交成分をそれぞれ加算した値を、出力レジスタ42へAi:11bit,Aq:11bitとして出力する。
この出力データAi,Aqは、複素乗算器44にて共通Scrambling Codeで拡散され、出力レジスタ45へ出力データBi,Bqとして出力される。
【実施例4】
【0036】
図9には、本実施例に係るスペクトラム拡散通信用の拡散装置に設けられた複素相関器の構成例を示してある。
本例の複素相関器は、合成拡散信号発生回路61と、出力レジスタ62を有している。
合成拡散信号発生回路61は、4個の合成係数レジスタ71A〜Dと、4個のコードレジスタ72A〜Dと、2個のスイッチ73A、Bと、1個の複素乗算器74と、1個の加算器75と、1個の遅延レジスタ76を備えている。本例の合成拡散信号発生回路61は、図8に示される合成拡散信号発生回路41と同様な構成を有しており同様な動作を行う。
【0037】
ここで、各合成係数レジスタ71A〜Dには、あらかじめ各Chの送信電力Gainをそれぞれ共通Scrambling Codeに乗算したものを設定する。また、各コードレジスタ72A〜Dには、あらかじめシンボルデータI,QとChannelization Codeを乗算(EOR)したものを設定する。セットされた合成係数レジスタ71A〜Dの値とコードレジスタ72A〜Dの値についてはそれぞれ複素乗算器74にて導出式(式7)及び(式8)の演算が行われる。更に、加算器75及び遅延レジスタ76から成る累加算器で4Ch分の同相成分と直交成分をそれぞれ累加算した値を、出力レジスタ62へAi:11bit,Aq:11bitとして出力して拡散データとする。但し、前記計算式の中でコード1bitは、“0”の時は1として、“1”の時は−1として計算される。
【0038】
以上のように、本実施例に係る拡散装置では、複素相関器において、I,Qそれぞれ多ビットの合成係数レジスタ(データレジスタ)71A〜Dに送信電力GainとScrambling Codeを乗算したものを入力し、前記I,Qそれぞれ1ビットのコードレジスタ72A〜DにシンボルデータをChannelization Codeで拡散したデータを入力し、前記複数の合成係数レジスタ71A〜D及びコードレジスタ72A〜Dに複数チャネルの設定をそれぞれ行い、これにより、拡散出力を得る。
【0039】
従って、本実施例では、4Ch分のデータを拡散して出力するに際して、合成拡散信号発生回路61の複素乗算器74を時分割で使用することにより、回路規模の低減が可能となる。
例えば、スペクトラム拡散通信システムの送信機で用いられるスペクトラム拡散通信用の相関回路や、変復調回路や、送信装置において、簡単且つ小規模な構成を可能とすることができる。
【0040】
なお、本実施例に係る合成拡散信号発生回路61では、例えば、図11に示される合成拡散信号発生回路101と同様な処理を実行することができる。
図11には、スペクトラム拡散通信用の拡散装置の構成例を示してある。
本例の拡散装置では、次のような構成及び動作により、送信データの拡散方法を実現する。
本例では、4Ch分のデータを拡散して出力する。4タップの合成係数レジスタ71A〜Dや4タップのコードレジスタ72A〜Dやそれぞれの設定値については、図9に示されるものと同様である。
【0041】
本例では、A〜Dのそれぞれについて、セットされた合成係数レジスタ71A〜Dの値とコードレジスタ72A〜Dの値に対して、対応する複素乗算器111A〜Dにて導出式(式7)及び(式8)の演算が行われる。そして、加算器112で4Ch分の同相成分と直交成分をそれぞれ加算した値を、出力レジスタ62へAi:11bit,Aq:11bitとして出力して拡散データとする。
【実施例5】
【0042】
本実施例では、図9に示されるような構成において、次のような設定をする。
すなわち、各合成係数レジスタ71A〜Dには、あらかじめ各Chの送信電力GainとChannelization Codeを乗算して更に当該乗算結果を共通Scrambling Codeに乗算したものを設定する。また、各コードレジスタ72A〜Dには、あらかじめシンボルデータI,Qを設定する。このような設定によっても、上記した実施例4と同様の処理が可能である。
【0043】
以上のように、本実施例に係る拡散装置では、複素相関器において、I,Qそれぞれ多ビットの合成係数レジスタ(データレジスタ)71A〜Dに送信電力GainとChannelization Codeを乗算して更にScrambling Codeを乗算したものを入力し、前記I,Qそれぞれ1ビットのコードレジスタ72A〜Dにシンボルデータを入力し、前記複数の合成係数レジスタ71A〜D及びコードレジスタ72A〜Dに複数チャネルの設定をそれぞれ行い、これにより、拡散出力を得る。
【0044】
なお、上記の各実施例で説明した複素相関器の各レジスタのビット数としては、必ずしも例示したビット幅である必要はなく、例えば、実現しようとする機能を達成することができるビット幅を有する合成拡散信号発生回路や、若しくは、ビット幅を可変することができる合成拡散信号発生回路を構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1及び2の合成拡散信号発生回路の構成図である。
【図2】実施例1及び2の拡散装置の構成図である。
【図3】従来の拡散装置の構成図である。
【図4】実施例2のI、Qシンボルマッピング図である。
【図5】実施例2のI2、Q2シンボルマッピング図である。
【図6】実施例2の16QAMシンボルマッピング図である。
【図7】実施例2のシンボルマッピング処理のフローチャートである。
【図8】実施例3の合成拡散信号発生回路の構成図である。
【図9】実施例4及び5の合成拡散信号発生回路の構成図である。
【図10】合成拡散信号発生回路の構成図である。
【図11】合成拡散信号発生回路の構成図である。
【符号の説明】
【0046】
1A〜1E、41、61、81、101:合成拡散信号発生回路
11A〜11D、51A〜51D、71A〜71D:合成係数レジスタ
12A〜12D、52A〜52D、72A〜72D:コードレジスタ
13A〜13D、44、54、74、91A〜91D、111A〜111D:複素乗算器
14、55、75、92、112:加算器
2A〜2D:Scrambling Code生成器
3:拡散器(従来)
4a〜4p:Channelization Code生成器
5a〜5p:複素乗算器
42、43、45、56、62、76:レジスタ
53A、53B、73A、73B:スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
夫々複数ビットからなるI,Qを夫々保持するデータレジスタと、夫々1ビットからなるI,Qを夫々保持するコードレジスタと、前記データレジスタと前記コードレジスタの出力を複素乗算する複素乗算器と、からなるタップM個(Mは2以上の自然数)と、
前記M個のタップの出力を加算する加算器と、
前記加算器の出力を格納する出力レジスタと、から構成される同一構成の信号合成手段をN+1個(NはM以下の自然数)有し、
前記N個の信号合成手段の夫々には、夫々の前記データレジスタのI、Qどちらか一方に送信電力ゲインを入力し、夫々の前記コードレジスタのI、Q夫々にシンボルデータをチャネライゼーション・コードで拡散したデータを入力し、
前記1個の信号合成手段には、夫々の前記データレジスタのI,Qに前記N個の信号合成手段の出力を入力し、夫々の前記コードレジスタには同じタップのデータレジスタに入力を与えた信号合成手段で処理されたチャネルに共通なスクランブリング・コードを入力し、
前記N+1個の信号合成手段が、複数のチャネルの拡散信号を合成することを特徴とするスペクトラム拡散通信装置。
【請求項2】
前記N個の信号合成手段のうち少なくとも1つにおいて、
複数の前記コードレジスタに、I、Q夫々が複数ビットからなるシンボルデータをチャネライゼーション・コードで拡散したデータの各ビットを夫々入力し、
対応する複数の前記データレジスタに、前記各ビットに対応する重みを与える2のべき数の比を有する送信電力ゲインを入力することを特徴とする請求項1記載のスペクトラム拡散通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−14290(P2006−14290A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150525(P2005−150525)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】