説明

スペクトルアナライザおよびその周波数特性補正方法

【課題】広帯域信号を測定する際に正確な電力を測定することができるスペクトルアナライザを提供すること。
【解決手段】周波数特性補正部14は、等化器30と、等化器30の等化係数を格納する等化係数格納部31とを有し、検波部15は、周波数変換部12固有の周波数特性を補正するための補正用基準信号が周波数変換部12に入力されたことを条件として、周波数特性が補正されたディジタル信号を検波し、制御部17は、測定対象の周波数帯の中心周波数に対して、検波部15によるディジタル信号の検波結果に基づいた等化係数を等化係数格納部31に格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーパーヘテロダイン方式のスペクトルアナライザおよびその周波数特性補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスーパーヘテロダイン方式のスペクトルアナライザとしては、入力信号から測定対象の周波数帯の信号を抽出し、特定の中間周波数帯の信号に周波数変換する周波数変換部と、測定対象の周波数帯を制御する制御部と、周波数変換部によって周波数変換された信号をディジタル信号に変換するアナログディジタル変換器と、ディジタル信号の周波数特性を補正する周波数特性補正部と、周波数特性が補正された信号を検波する検波部とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来のスペクトルアナライザは、周波数が既知の正弦波信号を周波数変換部に入力したときの検波結果が、各周波数において一定になるように補正量を算出し、算出した補正量を周波数毎に周波数特性補正部に設定することにより、周波数変換部固有の周波数特性を補正するようになっている。
【0004】
従来のスペクトルアナライザは、各周波数において検出される中心周波数の電力に基づいて各周波数の補正量を算出するようになっている。これは、周波数変換部固有の周波数特性と、検波部を構成する測定フィルタの周波数特性とによって定まる検波特性が、規定の分解能帯域幅(Resolution Band Width、以下、「RBW」という)を有する正確なガウシアン特性であることを前提としている。
【0005】
ここで、正弦波信号が周波数変換部に入力されたときには、検波特性が正確なガウシアン特性でなくとも、検出される中心周波数における電力で検波特性を補正することができる。しかしながら、広帯域信号が周波数変換部に入力されたときには、以下に説明するように、検波特性が正確なガウシアン特性であるときと異なる結果が得られることがある。
【0006】
一般に、スペクトルアナライザの測定フィルタの周波数特性は、ガウシアンカーブで近似することになっている(以下、測定フィルタを「ガウシアンフィルタ」ともいう)、RBWは、ガウシアンフィルタの3dB減衰点における通過帯域幅のことをいう。なお、規格によっては、ガウシアンフィルタの6dB減衰点における通過帯域幅をRBWと呼ぶこともある。
【0007】
近年のスペクトルアナライザでガウシアンフィルタを近似できる精度は、RBW≦3MHzといわれている。3MHzより広いRBWを実現できるスペクトルアナライザもあるが、RBWが一致しても、減衰カーブがガウシアンカーブと一致せず、例えば60dB減衰点において、理想ガウシアンカーブの帯域幅(RBWの約4.5倍)よりも狭くなっている場合が多い。
【0008】
これは、スペクトルアナライザの内部回路に用いられている帯域通過フィルタ、特に、準マイクロ波帯スペクトルアナライザの入力段に使用されるYIG(Yttrium Iron Garnet)同調バンドパスフィルタ(YIG Tuned Filter、以下、「YTF」という)の特性によって制限されてしまうためである。
【0009】
また、従来のスペクトルアナライザの用途において、通常、RBWが狭い方が、より周波数分解能が高い測定ができるため、RBW>3MHzで高い精度を有するガウシアンフィルタが要求されることは、ほとんどなかった。
【0010】
しかしながら、近年、広帯域変調信号や広帯域雑音の解析に、広いRBWで高い精度のガウシアンフィルタが要求されるようになってきた。例えば、UWB(Ultra Wide Band)と呼ばれる広帯域通信において、非特許文献1には、車載レーダシステムの技術的条件が規定され、22〜29GHzでシステムから放射される尖頭電力値が0dB/50MHz以下に義務付けられている。
【0011】
これは、RBW=50MHzのガウシアンフィルタで検出したときの電力が0dB以下であることで検証することができるが、前述したように、RBW=50MHzで正確なガウシアンフィルタの特性を有するスペクトルアナライザが存在しないため、RBW=1MHzやRBW=3MHzのガウシアンフィルタで測定した電力を換算式(例えば、非特許文献2参照)を用いて、RBW=50MHz相当の電力が算出されている。
【0012】
しかしながら、換算式を用いて算出された電力は、UWBの変調方式に依存して、換算誤差が生じる可能性があるため、RBW=50MHzを直接に測定することが望まれてきている。なお、このような放射電力は、通常、スペクトルアナライザをゼロスパンモードに設定(測定周波数を固定)し、特定の中心周波数で測定される。
【0013】
RBW=50MHzのガウシアンフィルタを60dB減衰点まで精度よく近似するには、224MHzの解析帯域が必要になる。この場合には、周波数変換部の帯域幅を224MHz以上に広くする必要があり、周波数変換部の帯域幅がこれだけ広帯域になると、帯域内の周波数特性を完全に平坦にすることは難しく、通常は、数10MHz周期でリップルが生じてしまう。
【0014】
スペクトルアナライザの通過特性は、周波数変換部の通過特性と検波部の通過特性との畳み込みからなるため、上述したようなリップルが生じた場合には、検波部で精度よくガウシアン特性を実現しても、検波特性がガウシアン特性から逸脱してしまうことになる。
【0015】
すなわち、図5に示すように、RBW=3MHzのガウシアンフィルタにおいては、リップル周期に対してRBWが狭くなるため、周波数変換部の周波数特性|G(f)|は、ほぼ一定とみなすことができる。したがって、測定フィルタの周波数特性|H(f)|で検波した電力を中心周波数fにおいて補正すれば、各周波数に渡って、周波数変換部の周波数特性|G(f)|を正確に補正することができる。
【0016】
一方、RBW=50MHzのガウシアンフィルタにおいては、リップル周期に対してRBWが広くなるため、周波数変換部の周波数特性|G(f)|は、一定とみなすことができなくなる。したがって、測定フィルタの周波数特性|H(f)|で検波した電力を中心周波数fにおいて補正したとしても、各周波数に渡って、周波数変換部の周波数特性|G(f)|を正確に補正することができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平8−136593号公報(図3)
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】FFC規則(Part 15, Subpart F, Section 15.515)
【非特許文献2】ITU−R勧告 SM.1754
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
以上のように、従来のスペクトルアナライザは、広いRBWが設定された場合に、周波数変換部の周波数特性を一定に補正することができないため、広帯域信号を測定する際に正確な電力を測定することができないといった課題があった。
【0020】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、広帯域信号を測定する際に正確な電力を測定することができるスペクトルアナライザおよびその周波数特性補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のスペクトルアナライザは、入力信号から測定対象の周波数帯の信号を抽出し、特定の中間周波数帯の信号に周波数変換する周波数変換部と、前記測定対象の周波数帯の中心周波数を制御する制御部と、前記周波数変換部によって周波数変換された信号をディジタル信号に変換するアナログディジタル変換器と、前記ディジタル信号の周波数特性を補正する周波数特性補正部と、前記周波数特性が補正された信号を検波する検波部と、を備えたスペクトルアナライザにおいて、前記周波数特性補正部は、等化器と、前記等化器の等化係数を格納する等化係数格納部とを有し、前記検波部は、前記周波数変換部固有の周波数特性を補正するための補正用基準信号が前記周波数変換部に入力されたことを条件として、前記ディジタル信号を検波し、前記制御部は、前記測定対象の周波数帯の中心周波数に対して、前記検波部による前記ディジタル信号の検波結果に基づいた等化係数を前記等化係数格納部に格納するように構成されている。
【0022】
この構成により、本発明のスペクトルアナライザは、測定対象の周波数帯の中心周波数に対して、周波数変換部固有の周波数特性を等化器によって補正するため、広帯域信号を測定する際に正確な電力を測定することができる。
【0023】
なお、前記制御部は、前記等化器の周波数特性が前記周波数変換部の伝達関数の逆特性となる等化係数を前記等化係数格納部に格納するようにしてもよい。
【0024】
この構成により、本発明のスペクトルアナライザは、各測定周波数に対して、周波数変換部固有の周波数特性を一定に補正することができる。
【0025】
また、本発明のスペクトルアナライザは、前記補正用基準信号を生成する補正用基準信号生成部を備えるようにしてもよい。
【0026】
この構成により、本発明のスペクトルアナライザは、補正用基準信号を外部装置から得ることなく、周波数変換部固有の周波数特性を補正することができる。
【0027】
また、前記補正用基準信号生成部は、前記補正用基準信号としてインパルスを生成するようにしてもよい。
【0028】
この構成により、本発明のスペクトルアナライザは、インパルスを補正用基準信号として適用することができる。
【0029】
また、前記補正用基準信号生成部は、前記測定対象の周波数帯内で前記測定対象の周波数帯の中心周波数近傍の周波数を有する信号で1/RBWよりも十分短いパルス信号を変調した信号を前記補正用基準信号として生成するようにしてもよい。
【0030】
この構成により、本発明のスペクトルアナライザは、測定対象の周波数帯の中心周波数近傍の周波数を有する信号で、1/RBWよりも十分短いパルス信号を変調した信号を補正用基準信号として適用することができる。
【0031】
また、本発明の周波数特性補正方法は、入力信号から測定対象の周波数帯の信号を抽出し、特定の中間周波数帯の信号に周波数変換する周波数変換部と、前記測定対象の周波数帯の中心周波数を制御する制御部と、前記周波数変換部によって周波数変換された信号をディジタル信号に変換するアナログディジタル変換器と、前記ディジタル信号の周波数特性を補正する周波数特性補正部と、前記周波数特性が補正された信号を検波する検波部と、を備えたスペクトルアナライザの周波数特性補正方法において、前記周波数特性補正部が、等化器と、前記等化器の等化係数を格納する等化係数格納部とを有し、前記検波部が、前記周波数変換部固有の周波数特性を補正するための補正用基準信号が前記周波数変換部に入力されたことを条件として、前記ディジタル信号を検波するステップと、前記制御部が、前記測定対象の周波数帯の中心周波数に対して、前記検波部による前記ディジタル信号の検波結果に基づいた等化係数を前記等化係数格納部に格納するステップと、を有する。
【0032】
したがって、本発明の周波数特性補正方法は、測定対象の周波数帯の中心周波数に対して、周波数変換部固有の周波数特性を等化器によって補正するため、広帯域信号を測定する際に正確な電力を測定することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、広帯域信号を測定する際に正確な電力を測定することができるスペクトルアナライザおよびその周波数特性補正方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係るスペクトルアナライザのブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るスペクトルアナライザの補正係数算出動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係るスペクトルアナライザの補正係数算出動作における応答係数系列の算出処理を説明するために概念図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るスペクトルアナライザの信号解析動作を示すフローチャートである。
【図5】従来のスペクトルアナライザに広いRBWが設定された場合の周波数変換部の周波数特性と、測定フィルタの周波数特性との関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0036】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るスペクトルアナライザ1は、インパルスを生成する補正用基準信号生成部10と、スイッチ11と、高周波信号をダウンコンバートする周波数変換部12と、ダウンコンバートされたアナログの中間周波数の信号をディジタル信号に変換するアナログディジタル変換器(以下、「ADC」という。)13と、周波数変換部12の周波数特性に応じてディジタル信号を補正する周波数特性補正部14と、検波部15と、スイッチ16と、スペクトルアナライザ1の各部を制御する制御部17と、液晶ディスプレイ等よりなる表示部18と、キーボード装置やポインティングデバイスよりなる入力部19とを備えている。
【0037】
補正用基準信号生成部10は、制御部17によって制御され、測定する帯域の中心周波数(以下、単に「測定中心周波数」という)の逆数より十分に狭い幅のパルスを生成するようになっている。
【0038】
スペクトルアナライザ1は、周波数変換部12固有の周波数特性を補正するための補正係数を算出する補正係数算出モードと、被試験信号を信号解析する信号解析モードとの2つのモードをとる。
【0039】
スイッチ11は、補正用基準信号生成部10に接続された端子S1と、被試験信号が入力される入力端子Tに接続された端子S2と、周波数変換部12に接続された端子S3とを有している。
【0040】
スイッチ11は、制御部17によって制御され、スペクトルアナライザ1が補正係数算出モードをとる場合には、端子S1と端子S3とが接続され、スペクトルアナライザ1が信号解析モードをとる場合には、端子S2と端子S3とが接続されるようになっている。
【0041】
周波数変換部12は、減衰器20と、プリセレクタ21と、周波数が可変の正弦波信号を生成する発振器22と、プリセレクタ21を通過した信号に発振器22によって生成された信号をミキシングするミキサ23と、ローパスフィルタ(Low Pass Filter、以下、「LPF」という)24と、周波数が一定の正弦波信号を生成する発振器25と、ミキサ26と、LPF27と、を有する。
【0042】
プリセレクタ21は、YTFによって構成され、制御部17によって指定された帯域の信号を通過させるようになっている。また、発振器22は、制御部17によって指定された周波数の正弦波信号を生成するようになっている。
【0043】
ミキサ23は、プリセレクタ21を通過した信号と、発振器22によって生成された正弦波信号とをミキシングするようになっている。また、LPF24は、ミキサ23によるミキシング結果の高周波側の成分を除去するようになっている。
【0044】
ここで、制御部17は、プリセレクタ21に通過させる帯域を変化させる一方で、LPF24によって高周波側の成分が除去されたミキシング結果の中心周波数が一定になるように、発振器22に生成させる正弦波信号の周波数を制御するようになっている。このため、LPF24を通過した信号は、中心周波数が一定の中間周波数の信号となる。
【0045】
すなわち、発振器22、ミキサ23およびLPF24は、高周波信号を中心周波数が一定の第1中間周波数信号にダウンコンバートする第1ダウンコンバータを構成する。
【0046】
ミキサ26は、LPF24を通過した信号と、発振器25によって生成された正弦波信号とをミキシングするようになっている。また、LPF27は、ミキサ26によるミキシング結果の高周波側の成分を除去するようになっている。
【0047】
すなわち、発振器25、ミキサ26およびLPF27は、第1中間周波数信号を第2中間周波数信号にダウンコンバートする第2ダウンコンバータを構成する。
【0048】
周波数特性補正部14は、等化器30と、等化器30の等化係数を格納する等化係数格納部31とを有している。等化器30は、ディジタルフィルタによって構成され、本実施の形態においては、複数のタップよりなるFIR(Finite Impulse Response)フィルタによって構成される。
【0049】
等化係数格納部31は、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリ等の記憶媒体によって構成される。等化係数格納部31には、各中心周波数に対して、等化器30を構成するFIRフィルタの各タップの係数が格納されるようになっている。
【0050】
検波部15は、ガウシアンフィルタによって構成され、本実施の形態において、ガウシアンフィルタは、FIRフィルタによって構成される。また、本実施の形態において、検波部15を構成するガウシアンフィルタは、RBW=50MHzのガウシアンフィルタを少なくとも60dB減衰点まで近似するように構成されている。
【0051】
スイッチ16は、ADC13に接続された端子S1と、周波数特性補正部14の等化器30に接続された端子S2と、検波部15に接続された端子S3とを有している。なお、スイッチ16の各端子間は、スイッチ11の各端子間と同様に接続される。
【0052】
すなわち、スイッチ16は、制御部17によって制御され、スペクトルアナライザ1が補正係数算出モードをとる場合には、端子S1と端子S3とが接続され、スペクトルアナライザ1が信号解析モードをとる場合には、端子S2と端子S3とが接続されるようになっている。
【0053】
制御部17は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサによって構成され、入力部19等による指定に応じたスペクトルアナライザ1のモードの設定、入力部19等によって指定された測定中心周波数の設定、等化器30の等化係数の算出、等化器30の等化係数の設定、検波部15による検波結果の表示等、スペクトルアナライザ1の各部を制御するようになっている。
【0054】
以上のように構成されたスペクトルアナライザ1の動作を図面を参照して説明する。図2は、スペクトルアナライザ1の補正係数算出モードにおける補正係数算出動作を示している。
【0055】
まず、プリセレクタ21の通過帯域と、発振器22に発生させる信号の周波数とが、入力部19等によって指定された測定中心周波数に応じて、制御部17によって設定され(ステップS1)、制御部17によって制御された補正用基準信号生成部10によってインパルスが生成される(ステップS2)。
【0056】
次に、ADC13から出力されるインパルス応答系列x(k)が、制御部17に取得される(ステップS3)。ここで、k={0,1,2,・・・,M−1}とし、本実施の形態においては、M=1024とする。
【0057】
次に、制御部17によって、インパルス応答系列x(k)の離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform、「DFT」ともいう)が実行され、周波数変換部12の伝達関数G(f)が算出される(ステップS4)。ここで、G(f)の振幅特性を|G(f)|とし、群遅延特性をτ(f)とし、G(f)の逆特性G−1(f)の振幅特性を1/|G(f)|とし、群遅延特性を−τ(f)として、図3に示すように、制御部17によって|G−1(f)|と−τ(f)とに逆離散フーリエ変換(Inverse Discrete Fourier Transform、「IDFT」ともいう)が施されることにより、応答係数系列y(k)が算出される(ステップS5)。
【0058】
このように算出された応答係数系列y(k)が、等化器30の等化係数になるが、応答係数系列y(k)は、制御部17によって、必要に応じて窓関数が乗じられて切り出される(ステップS6)。なお、本実施の形態において、制御部17は、1024個の等化係数を100個に切り出す。
【0059】
次に、応答係数系列y(k)が等化係数として制御部17によって等化係数格納部31に格納され(ステップS7)、補正係数算出動作は終了する。なお、複数の中心周波数に対する等化係数を等化係数格納部31に格納する場合には、制御部17によって測定中心周波数が変更されて、補正係数算出動作が再度実行される。
【0060】
図4は、スペクトルアナライザ1の信号解析モードにおける信号解析動作を示している。
【0061】
まず、プリセレクタ21の通過帯域と、発振器22に発生させる信号の周波数とが、入力部19等によって指定された測定中心周波数に応じて、制御部17によって設定される(ステップS11)。
【0062】
また、等化係数格納部31に格納された等化係数のなかから、測定中心周波数に対応する等化係数が制御部17によって等化器30に設定される(ステップS12)。ここで、測定中心周波数に応じた等化係数が等化係数格納部31に格納されていない場合には、補正係数算出動作を実行するようにしてもよい。
【0063】
この状態で、被試験信号が入力端子Tから入力されると、被試験信号は、周波数変換部12によって周波数変換され(ステップS13)、ADC13によってディジタル信号に変換され(ステップS14)、周波数特性補正部14によって周波数特性が補正され(ステップS15)、検波部15によって検波される(ステップS16)。
【0064】
そして、検波結果が表示部18に表示され(ステップS17)、信号解析動作は終了する。なお、複数の中心周波数に対する解析を行う場合には、制御部17によって測定中心周波数が変更されて、信号解析動作が再度実行される。
【0065】
以上に説明したように、本発明の実施の形態のスペクトルアナライザ1は、測定対象の周波数帯の中心周波数に対して、周波数変換部12固有の周波数特性を等化器30によって補正するため、広帯域信号を測定する際に正確な電力を測定することができる。
【0066】
なお、本実施の形態のように、周波数特性補正部14および検波部15が共にFIRフィルタによって構成される場合には、これらの係数を畳み込むことによって、一系統のFIRフィルタによって周波数特性補正部14および検波部15を構成してもよい。
【0067】
この場合には、FIRフィルタを構成するFPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の回路に搭載するリソースを低減することができる。
【0068】
また、本実施の形態において、補正用基準信号生成部10は、インパルスを生成するものとして説明したが、本発明においては、測定対象の周波数帯内で測定対象の周波数帯の中心周波数近傍の周波数を有する信号で、1/RBWよりも十分短いパルス信号を変調した信号を補正用基準信号として生成するようにしてもよい。
【0069】
また、本発明においては、補正用基準信号生成部10をスペクトルアナライザ1から除いて、スペクトルアナライザ1が外部入力端子から補正用基準信号を入力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 スペクトルアナライザ
10 補正用基準信号生成部
11、16 スイッチ
12 周波数変換部
13 ADC
14 周波数特性補正部
15 検波部
17 制御部
18 表示部
19 入力部
20 減衰器
21 プリセレクタ
22、25 発振器
23、26 ミキサ
24、27 LPF
30 等化器
31 等化係数格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号から測定対象の周波数帯の信号を抽出し、特定の中間周波数帯の信号に周波数変換する周波数変換部と、
前記測定対象の周波数帯の中心周波数を制御する制御部と、
前記周波数変換部によって周波数変換された信号をディジタル信号に変換するアナログディジタル変換器と、
前記ディジタル信号の周波数特性を補正する周波数特性補正部と、
前記周波数特性が補正された信号を検波する検波部と、を備えたスペクトルアナライザにおいて、
前記周波数特性補正部は、等化器と、前記等化器の等化係数を格納する等化係数格納部とを有し、
前記検波部は、前記周波数変換部固有の周波数特性を補正するための補正用基準信号が前記周波数変換部に入力されたことを条件として、前記ディジタル信号を検波し、
前記制御部は、前記測定対象の周波数帯の中心周波数に対して、前記検波部による前記ディジタル信号の検波結果に基づいた等化係数を前記等化係数格納部に格納することを特徴とするスペクトルアナライザ。
【請求項2】
前記制御部は、前記等化器の周波数特性が前記周波数変換部の伝達関数の逆特性となる等化係数を前記等化係数格納部に格納することを特徴とする請求項1に記載のスペクトルアナライザ。
【請求項3】
前記補正用基準信号を生成する補正用基準信号生成部を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスペクトルアナライザ。
【請求項4】
前記補正用基準信号生成部は、前記補正用基準信号としてインパルスを生成することを特徴とする請求項3に記載のスペクトルアナライザ。
【請求項5】
前記補正用基準信号生成部は、前記測定対象の周波数帯内で前記測定対象の周波数帯の中心周波数近傍の周波数を有する信号で、1/RBWよりも十分短いパルス信号を変調した信号を前記補正用基準信号として生成することを特徴とする請求項3に記載のスペクトルアナライザ。
【請求項6】
入力信号から測定対象の周波数帯の信号を抽出し、特定の中間周波数帯の信号に周波数変換する周波数変換部と、
前記測定対象の周波数帯の中心周波数を制御する制御部と、
前記周波数変換部によって周波数変換された信号をディジタル信号に変換するアナログディジタル変換器と、
前記ディジタル信号の周波数特性を補正する周波数特性補正部と、
前記周波数特性が補正された信号を検波する検波部と、を備えたスペクトルアナライザの周波数特性補正方法において、
前記周波数特性補正部が、等化器と、前記等化器の等化係数を格納する等化係数格納部とを有し、
前記検波部が、前記周波数変換部固有の周波数特性を補正するための補正用基準信号が前記周波数変換部に入力されたことを条件として、前記ディジタル信号を検波するステップと、
前記制御部が、前記測定対象の周波数帯の中心周波数に対して、前記検波部による前記ディジタル信号の検波結果に基づいた等化係数を前記等化係数格納部に格納するステップと、を有することを特徴とする周波数特性補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−198115(P2012−198115A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62701(P2011−62701)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、電波資源拡大のための委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)