説明

スペクトルイメージング

スペクトルプロセッサ118は、検出器信号から導出された第一のスペクトル信号であって、検出器信号に関する第一のスペクトル情報を含む第一のスペクトル信号を生成する第一の処理チャネル120と、検出器信号から導出される第二のスペクトル信号であって、検出器信号に関する第二のスペクトル情報を含む第二のスペクトル信号を生成する第二の処理チャネル120とを含む。第一及び第二のスペクトル信号は、検出器信号をスペクトル的に分解するために使用され、検出器信号は、検出された多色放射線を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトルイメージングに関するものであり、スペクトル・コンピュータ断層撮影(CT)に対して特定の応用を見い出すものである。しかし、本発明は、他の医療又は医療以外の応用にも適している。
【背景技術】
【0002】
従来の統合されたコンピュータ断層撮影(CT)スキャナは、検出器アレイに対向して回転ガントリに設けられたX線管を含んでおり、この検出器アレイは、光センサアレイに光学的に結合されるシンチレータアレイを含む。X線管は、検査領域の周りを回転し、検査領域及び検査領域に配置される被検体及び/又は対象物を通過する多色放射線を放出する。検出器アレイは、検査領域を通過した放射線を受ける。シンチレータアレイは、放射線を吸収し、放射線を示す光を生成する。この光は、光センサにより受けられ、光センサは、受けた光を示す電流信号に変換する。
【0003】
電流信号は、DC成分及びAC成分、又はDC成分に関する変動を含む。変動の大きさは、検出された放射線のエネルギーの関数であり、従ってスペクトル情報を含む。残念なことに、積分モードでは、電気信号はエネルギースペクトルにわたり積分され、積分期間について中間又は平均の強度値が生成され、AC成分により表されるスペクトル情報が失われる。積分された信号は再構成され、スキャニングされた被検体又は対象物の画像を生成するため、結果として得られる体積画像データが使用される。結果として得られる画像は、相対的な放射線濃度に対応するグレイスケール値の観点で典型的に表現される画素を含む。係る情報は、スキャニングされた被検体又は対象物の減衰特性を反映する。
【0004】
積分された信号からスペクトル情報を導出する様々な技術が提案されている。たとえば、放射線の吸収は光子エネルギーに依存する事実を利用することができる。係るように、1つの技術は、到来する放射線の方向において互いに上にあるシンチレータ画素からなる行を積み重ね、それぞれの行についてそれぞれの光センサの画素を提供することを含む。一般に、低いエネルギーの光子は、到来する放射線に近いシンチレータ画素からなる行において吸収され、高いエネルギーの光子は、到来する放射線から遠いシンチレータ画素からなる行において吸収される。
【0005】
別の例では、異なる電圧間で管電圧が切り替えられ、低い管電圧の測定からなる1つのセットと、高い管電圧の測定からなる別のセットとが供給される。更に別の例では、画像形成システムは、異なる管電圧でそれぞれが駆動される複数のX線管により構成され、従って異なる放出スペクトルについて複数の測定のセットが得られる。更に別の例では、エネルギー感度が高い光子計数検出器が使用され、所定数のエネルギーウィンドウにおけるスペクトル情報が提供される。さらに、積分された信号を光−電子及びコンプトン成分に分解するためのスペクトル分解技術が提案されている。既知のK-edgeエネルギーを有するK-edge材料による造影剤が使用される場合、スペクトル分解は、K-edge成分を提供するために拡張することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
残念なことに、上述された技術は、専用ハードウェア及び/又は複雑度を追加して技術的な障害に対処すること、及び/又は全体のシステムコストを増加することを含む。しかし、CTにおける傾向は、スペクトルイメージングがスキャニングされる被検体又は対象の要素又は材料の組成(たとえば原子番号)を示す情報を提供することができるので、より高いスペクトル解像度に向かうことである。従って、効率的で、新しく且つ費用対効果が高いスペクトルイメージング技術について未解決の必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、上述された課題及び他の課題に対処する、新しく且つ改善されたスペクトルCT技術を提供する。以下では、用語「検出器信号」は、電流信号又は電圧信号、或いは、個々の検出された粒子の衝突の結果として、検出器で生成された他の信号を示す。
【0008】
1態様によれば、本発明に係るスペクトルプロセッサは、検出器信号から導出された第一のスペクトル信号を生成する第一の処理チャネル、検出器信号から導出された第二のスペクトル信号を生成する第二の処理チャネルを含んでおり、第一のスペクトル信号は、検出器信号に関する第一のスペクトル情報を含み、第二のスペクトル信号は、検出器信号に関する第二のスペクトル情報を含み、第一及び第二のスペクトル信号は、検出器信号をスペクトル分解する為に使用され、検出器信号は、検出された多色放射線を示す。
【0009】
別の態様によれば、本発明に係る方法は、画像形成システムの検査領域を通過する多色放射線を検出し、検出された放射線のエネルギーを示す検出器信号を生成し、検出器信号から入射する放射線に関する第一のスペクトル情報を判定し、検出器信号から入射する放射線に関する第二のスペクトル情報を判定し、第一及び第二のスペクトル情報に基づいて検出器信号をスペクトル分解することを含む。
【0010】
別の態様によれば、本発明に係る画像形成システムは、検査領域を通過する多色放射線を放出する放射線源と、放射線を検出して検出された放射線を示す検出器信号を生成する検出器アレイと、検出器信号を処理するスペクトルプロセッサとを備えている。スペクトルプロセッサは、検出器信号から導出された第一のスペクトル信号を生成する第一の処理チャネルと、検出器信号から導出された第二のスペクトル信号を生成する第二の処理チャネルとを含んでおり、第一の処理チャネルは、検出器信号に関する第一のスペクトル情報を含み、第二のスペクトル信号は、検出器信号に関する第二のスペクトル情報を含む。第一及び第二のスペクトル信号は、検出器信号をスペクトル分解するために使用される。
【0011】
本発明は、様々なコンポーネントにおける形態、コンポーネントのアレンジメント、様々なステップ及びステップのアレンジメントにおける形態を取る場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付図面は、好適な実施の形態を例示するためのものであって、本発明を限定するものとして解釈されるべきものではない。
【図1】例となる画像形成システムを示す図である。
【図2】例となるスペクトルプロセッサを示す図である。
【図3】例となるスペクトル検出器を示す図である。
【図4】例となるスペクトル検出器を示す図である。
【図5】kVpスイッチを採用する例となる画像形成システムを示す図である。
【図6】例となるデュアルチューブ画像形成システムを示す図である。
【図7】例となる方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明は、変動モード(fluctuation mode)と電流積分モード(current integrating mode)の両者において検出器を同時に使用することに関する。結果として得られる出力信号は、医療、セキュリティスクリーニング、材料分析等のような様々な分野で、デュアルエネルギーイメージング(dual energy imaging)の応用について使用することができる。デュアルエネルギー情報は、検出器に入射するX線スペクトルの平均平方エネルギー及び平均エネルギーにそれぞれ比例する変動モード(AC)信号及び電流積分モード(DC)信号の異なるエネルギーの依存性によりそれぞれ提供される。AC成分とDC成分を同時に検出することで、測定されたサンプルにおける雑音の正相関(positive correlation)につながり、相関されない(連続的な)測定の場合に関して、基礎をなす材料の雑音(basis material noise)の相対的な抑圧につながる場合がある。
【0014】
図1は、コンピュータ断層撮影(CT)スキャナのような画像形成システム100を例示する。システム100は、静止ガントリ102及び回転ガントリ104を含む。回転ガントリ104は、ベアリング等を介して静止ガントリ102により回転可能にサポートされる。
【0015】
X線管のような放射線源106は、回転ガントリ104の部分に支持されており、回転ガントリと共に長手軸又はz軸110に関して検査領域108の周りを回転し、多色放射線を放出する。ソースコリメータ等は、放射線源106により放出される放射線を平行にし、検査領域108を通過する、一般的に錐体、扇型、くさび型又は他の形状の放射線ビームを生成する。
【0016】
検出器アレイ114は、検査領域108に関して放射線源106に対向する円弧のアークの範囲を定める。例示される検出器アレイ114は、光センサアレイ116に光学的に結合されるシンチレータアレイ112をもつ光センサアレイ116を含む2次元アレイである。シンチレータアレイ112は、検査領域108を通過する放射線を受け、受けた放射線を示す光を生成する。光センサアレイ116は、光を受け、受けた光に対応する電流、電圧又は他の信号をのような検出器信号を生成する。
【0017】
プロセッサ118は、検出器アレイ114からの検出器信号を処理する。例示されるプロセッサ118は、複数の処理チャネル1201,…,120Nを含み、この場合、Nは整数であり、処理チャネル120と集合的に呼ばれる。処理チャネル120は、検出器アレイ114からの同じ到来する信号を独立に処理する。以下に更に詳細に記載されるように、1つの例では、少なくとも2つの処理チャネル120は、検出器アレイ114からの検出器信号に対応する異なるエネルギー情報をそれぞれ示す、それぞれの信号を生成する。
【0018】
例示される実施の形態では、プロセッサ118は、システム100の個別の構成要素として示されている。別の実施の形態では、プロセッサ118は、検出器アレイ114の一部である。更に別の実施の形態では、プロセッサ118は、システムから離れて位置される。たとえば、プロセッサ118は、デスクトップコンピュータ、ワークステーション等のような個別のコンピュータシステムの一部である場合がある。さらに、検出器信号を処理する前に、検出器信号を増幅するために増幅器が使用される場合がある。
【0019】
再構成器122は、プロセッサ118からの信号を再構成して、体積画像データを生成する。画像生成器124は、体積画像データに基づいて画像を生成するために使用される。なお、プロセッサ118からの信号は、投影領域及び/又は画像領域においてスペクトル的に分解することができることを理解されたい。たとえば、1つの例では、スペクトル再構成、スペクトル分解又は他のスペクトルアルゴリズムは、投影領域において信号をスペクトル的に分解するために使用される。付加的に又は代替的に、従来の再構成は、それぞれの信号について実行され、結果として得られる画像に基づいて信号がスペクトル的に分解される。
【0020】
また、スキャナ100は、人間又は動物のような被検体、或いは対象物を検査領域108内に支持する長椅子又は患者支持体126を含む。支持体126は、移動可能であり、オペレータ又はシステムが、スキャニングの前、スキャニングの間及び/又はスキャニングの後に検査領域108に被検体を適切に位置合わせするのを可能にする。
【0021】
オペレータのコンソール128のようなコンピュータシステムは、スキャナ100とのユーザインタラクションを容易にする。オペレータのコンソール128により実行されるソフトウェアアプリケーションにより、ユーザは、スキャナ100の動作を設定及び/又は制御することができる。たとえば、ユーザは、オペレータのコンソール128と情報のやり取りを行い、スペクトル又は従来の画像形成プロトコルを選択することができる。
【0022】
先に簡単に述べたように、2つの処理チャネル120の少なくとも1つは、検出器アレイ114からの検出器信号に対応する異なるエネルギー情報を示す、それぞれの信号を生成する。1つの例では、2つの処理チャネル120は、統計的又は数学モデルに基づいてそれぞれの信号を生成するために構成される。
【0023】
例として、到来する電気的な検出器信号の平均の強度値及び分散は、入射するX線線量(x-ray fluence)のスペクトルの一次モーメント及び二次モーメントにそれぞれ比例する。これは、以下に式1及び2で示される。
【0024】
【数1】

ここでMIは、X線線量のスペクトルの一次モーメント
【0025】
【数2】

に対応する、X線ビームにおける光子エネルギーの平均を示す第一の測定信号であり、kIは、X線強度から信号電流への変換定数であり、Eは、X線のエネルギーである。
【0026】
【数3】

ここでMIIは、X線線量のスペクトルの二次モーメント
【0027】
【数4】

に対応する、X線ビームにおける光エネルギーの平均平方を示す第二の測定信号であり、kIIは、平方されたX線強度から信号電流への変換定数であり、Eは、X線のエネルギーである。
【0028】
2つの値MI及びMIIは、デュアルエネルギー処理の応用に良好に適する。たとえば、それらの雑音は、測定値は同じ到来する電気検出器信号に対応するので強く相関する。雑音の正相関は、基礎となる画像ノイズを減少することができる。さらに、入力スペクトルにおける高エネルギーのスペクトル領域と低エネルギーのスペクトル領域からの相対的な信号の寄与における確率的なゆらぎにより誘発される相関が存在する。先の特性及び/又は他の特性は、一次及び二次モーメントを、単一光線の測定からデュアルエネルギー情報を導出するために良好に適したものとする。
【0029】
図2は、式1及び式2に基づいて検出器アレイ114から到来する電気的な検出器信号を処理する例となるプロセッサ118を示す。プロセッサは、2つの処理チャネル120であるi番目のチャネル120iとj番目のチャネル120jを含んでおり、この場合、i番目のチャネル120iは、X線線量のスペクトルの一次モーメント又は平均のエネルギー値(式1参照)に基づいて、到来する検出器信号を処理し、j番目のチャネル120jは、X線線量のスペクトルの二次モーメント又はエネルギーの平均平方値(式2参照)に基づいて、同じ到来する検出器信号を処理する。
【0030】
シグナルルータ200は、検出器アレイ114からの電気的な検出器信号を受け、プロセッサ118のi番目のチャネル120iとj番目のチャネル120jに信号を供給する。先に述べたように、一般に、到来する電気的な検出器信号は、DC成分とAC成分とを含み、これらの成分は、検出された放射線のエネルギーに依存する信号の変動を含み、低いエネルギーの放射線は、高いエネルギーの放射線に対応する変動に関して小さい振幅を有する電気的な検出器信号の変動をもたらす。
【0031】
i番目のチャネル120iは、積分器202を含む。積分器202は、予め決定された積分期間又は時間周期のエネルギースペクトルにわたり、到来する電気的な検出器信号を積分する。積分器202は、到来する電気的な検出器信号のDC成分を表す、到来する電気的な検出器信号の平均又は中間の強度値を示す信号を出力し、平均の強度値は、第一のスペクトル情報を与える。しかし、平均処理の間、AC成分に関連するスペクトル情報(たとえば測定された平均値の周りのX線線量の相対的な変動においてエンコードされるスペクトル情報)が失われる。
【0032】
j番目のチャネル120jは、バンドパスフィルタ204、二乗回路206及び積分器208を含んでいる。フィルタ204は、到来する電気的な検出器信号をフィルタリングし、到来する電気的な検出器信号から、DC成分、上側の遮断周波数を超える周波数成分、及び下側の遮断周波数以下の低周波成分を除去する。
【0033】
限定されるものではない例では、下側の遮断周波数は、スキャナの回転及び被検体の移動から生じる変動チャネルにおける望まれない信号源を抑圧するために使用され、高エネルギーの遮断周波数は、パルス応答により信号で誘発される最高の周波数成分にできるだけ近くに設定される。付加的又は代替的に、下側の遮断周波数は、変動信号の一部として生じる雑音(たとえばショット雑音、熱の雑音等)を低減又は緩和するために設定される。一般に、検出器における粒子の確率論的な入射以外の全ての源から生じる全体の雑音レベルは、変動モードの信号が有効な情報を提供する最も低い可能なX線線量のレートを決定する。
【0034】
二乗回路206は、フィルタリングされた検出器信号の瞬間的な平方値を出力する。平均平方値は、時間変動する成分の振幅に関する統計的尺度を提供する。電流の変動の平均平方の分散は、第二のスペクトル情報を与える。積分器202は、平行されたフィルタリングされた信号を積分し、到来する電気的な検出器信号のAC成分を示す信号を出力する。
【0035】
図示されるように、2つの信号は、再構成器122に供給される。先に述べたように、1つの例では、再構成器122は、従来の再構成アルゴリズムに基づいて信号を再構成する。言い換えれば、それぞれの信号は、従来の再構成アルゴリズムを使用して再構成される。結果として得られる体積画像データは、それぞれの信号について画像を生成するために使用される。次いで、信号は、既知の技術を使用して、画像を介してスペクトル的に分解される。別の例では、再構成器122は、スペクトル再構成アルゴリズムに基づいて信号を再構成する。たとえば、再構成アルゴリズムは、信号を分解して、光電気成分及びコンプトン成分のような信号における様々な成分を取得することを含む。画像生成器124(図1参照)は、これらの成分の1以上の画像及び/又は全ての成分を含むコンポジット画像を生成するために使用される。
【0036】
本明細書で記載される実施の形態は、1以上の他のスペクトルのアプローチと共に使用することができることを理解されたい。たとえば、本明細書で記載される実施の形態は、スペクトル検出器(たとえばデュアルレイヤシステム)、kVpスイッチ、及び/又はマルチチューブシステムと組み合わせて使用することができる。本明細書で記載される実施の形態を1以上の技術及び/又は他の技術と組み合わせることで、スペクトル分離の解像度を増加することができる。
【0037】
係る適切なスペクトル検出器の例は、図3及び図4に示される。シンチレータアレイ302は、到来する放射線の方向で積み重ねられるシンチレータ画素304,306の第一及び第二のレイヤを含む。シンチレータアレイ302における到来する放射線の吸収は、エネルギーに依存し、低いエネルギーの光子は、第一のレイヤ304で吸収される前にシンチレータアレイ302を通して、平均して短い距離を伝播し、高いエネルギーの光子は、第二のレイヤ306で典型的に吸収される前に、シンチレータアレイ302を通して、平均して長い距離を伝播する。係るように、吸収の深さは、検出された放射線のエネルギーを示す。
【0038】
図3に示されるように、1つの例では、シンチレータアレイ302は、第一又は第二のシンチレータレイヤ304,306のうちの一方に同調される第一のスペクトル応答をもつ第一の感光性画素310と、第一又は第二のシンチレータレイヤ304,306の他方に同調される第二のスペクトル応答をもつ第二の感光性画素312を有する光センサアレイ308の上に光学的に結合される。このように、光センサアレイ308は、2つのスペクトル的に異なる出力を有する。本実施の形態で記載されるスペクトル処理による係る検出器を使用することで、4つのスペクトル的に個別の出力、又は感光性画素310,312の2つのスペクトル応答のそれぞれの平均エネルギー/平均平方されたエネルギーの信号のペアが提供される。
【0039】
図4では、第一及び第二のシンチレータ画素304,306は、光センサアレイ400に対して側面にそれぞれ光学的に設けられ、光センサアレイ400は、第一又は第二のシンチレータレイヤ304,306のうちの一方に同調される第一のスペクトル応答をもつ第一の感光性画素402と、第一又は第二のシンチレータレイヤ304,306の他方に同調される第二のスペクトル応答をもつ第二の感光性画素404とを含む。このように、光センサアレイ400は、2つのスペクトル的に異なる出力を有する。光反射フィルム又はコーティングは、シンチレータ画素304,306の側面に設けられ、光ダイオードアレイに光を向けるために光センサアレイ400に結合されない。同様に、本実施の形態で記載されるスペクトル処理による係る検出器を使用することで、4つのスペクトル的に異なる出力、又は感光性画素310,312の2つのスペクトル応答のそれぞれの平均エネルギー/平均平方されたエネルギーの信号のペアが提供される。
【0040】
図3及び図4の何れか又は両者により、シンチレータ画素304,306は、同じ又は異なるエミッタ材料から形成され、及び/又はシンチレータ画素304,306は、到来する放射線の方向における類似の深さ又は異なる深さのような、同じ又は異なる寸法を有することが理解される。勿論、他の実施の形態において、より多くのシンチレータレイヤ及び感光性画素を使用することができる。
【0041】
図5は、kVpスイッチングの例を示す。この例では、X線管コントローラ502は、2つ(又は2以上)の異なる電圧レベル間の管電圧を切り替える。コントローラ502は、スキャニングの間(たとえばあるビュー内、ビュー間等)、スキャニングの間、及び/又はその他において、たとえばコンソール128からのスキャニング情報に基づいて、管電圧を切り替えることができる。検出器アレイ114は、第一の管電圧に対応する第一の信号、及び第二の管電圧に対応する第二の信号を生成する。本実施の形態で記載されるスペクトル処理と共に使用されるとき、システムは、4つの異なる出力、又は2つの管電圧のそれぞれの平均エネルギー/平均平方エネルギーの信号のペアを提供する。また、図3及び図4の検出器を使用することで、システムは、8つのスペクトル的に異なる出力、又は2つの管電圧のそれぞれについて、感光性画素310,312の2つのスペクトル応答のそれぞれの平均/平均平方のペアを提供する。
【0042】
図6は、例となるマルチチューブシステム600を示す。例示のため、第一の管/検出器のペア1061/1141、第二の管/検出器のペア1062/1142である、2つの管をもつシステム600が示される。他の実施の形態では、3以上の管/検出器のペアのようなより多くの管/検出器のペアをもつシステムを構成することができる。この例では、それぞれの管1061/1062は、異なる管電圧で動作する。結果として、それぞれの検出器1141/1142は、異なるスペクトルに対応する出力を与える。本実施の形態で記載されるスペクトル処理と共に使用されるとき、システムは、4つのスペクトル的に異なる出力、又は管1061/1062のそれぞれについて平均エネルギー/平均平方エネルギーの信号のペアを提供する。それぞれの管/検出器のペアについて、スペクトル検出器及び/又はkVpスイッチングは、スペクトルの解像度を、図3及び図4のスペクトル検出器を使用して8つの異なる出力に、図5のkVpスイッチングを使用して8つの異なる出力に、スペクトル検出器及びkVpスイッチングの両者を使用して16の異なる出力にそれぞれ増加するために使用される。
【0043】
更に別の例では、スペクトル分解アルゴリズムは、光電子効果の成分及びコンプトン効果の成分のような様々な成分を分離するために使用される。適切な分解は、Roessl等による“K-edge imaging in x-ray computed tomography using multi-bin photo counting detectors”,Physics in Medicine and Biology, 2007, pages 4679-4696, vol. 52.に記載される。別の適切な分解は、2006年12月20日に提出された仮出願EP06126653.2の利益を特許請求する、2007年12月14日に提出された出願番号PCT/IB2007/055105に記載されている。後者において、分解は、造影剤を介して投与されるK-edge材料のK-edge成分を導出するために拡張される。
【0044】
本実施の形態で記載されるシステム及び方法が採用される例示的な応用は、限定されるものではないが、手荷物検査、医療応用、動物画像形成、心臓のスキャニング、材料試験、非破壊画像形成、マシンビジョン、及び材料科学を含む。さらに、応用は、1つのCTガントリ上の多数の管(及び多数の検出器)を使用したX線CTシステムに適用される。他の適切な応用は、電流積分型検出器に基づいたCTシステムにおけるK-edge画像形成をを実現する可能性を加えた高いスペクトルのパフォーマンスを通した組織分化が望まれる応用を含む。
【0045】
図7は、本発明の実施の形態に係る方法を例示する。ステップ702で、多色放射線が検出される。たとえば、放射線は、CTスキャンのような画像形成手順の間に放出及び検出された放射線に対応する。ステップ704で、検出された放射線のエネルギーを示す検出器信号が生成される。検出器信号は、電流、電圧又は他の信号である場合がある。
【0046】
ステップ706で、検出器信号から導出された第一のスペクトル信号が決定され、第一のスペクトル信号は、検出器信号に関する第一のスペクトル情報を含む。本実施の形態で記載されるように、これは、X線線量のスペクトルの平均エネルギー又は一次モーメントを決定することを含む。ステップ708で、検出器信号から導出された第二のスペクトル信号が決定され、第二のスペクトル信号は、検出器信号に関する第二のスペクトル情報を含む。
【0047】
本実施の形態で記載されるように、これは、X線線量のスペクトルの平均平方エネルギー又は二次モーメントを決定することを含む。ステップ710で、検出器信号は、第一及び第二のスペクトル信号に基づいてスペクトル的に分解される。本実施の形態で記載されるように、検出器信号は、投影領域及び/又は画像領域においてスペクトル的に分解することができる。
【0048】
プロセッサ118は、限定されるものではないが、CT、X線、C-arm、手荷物検査、及び/又は他の医療、及び医療以外の画像形成の応用を含む様々な応用で使用することができる。
【0049】
本発明は、好適な実施の形態を参照して記載された。先の詳細な説明を読んで理解することで、変更及び変形が行われる場合がある。本発明は特許請求の範囲又はその等価な概念にある限り全ての係る変更及び変形を含むように解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成システムにより検出された多色放射線を示す検出器信号を処理するスペクトルプロセッサであって、
前記検出器信号から導出される第一のスペクトル信号であって、前記検出器信号に関する第一のスペクトル情報を含む第一のスペクトル信号を生成する第一の処理チャネルと、
前記検出器信号から導出された第二のスペクトル信号であって、前記検出器信号に関する第二のスペクトル情報を含む第二のスペクトル信号を生成する第二の処理チャネルとを備え、前記第一のスペクトル信号と前記第二のスペクトル信号とは、前記検出器信号をスペクトル的に分解するために使用される、
ことを特徴とするスペクトルプロセッサ。
【請求項2】
前記第一のスペクトル信号は、前記検出器信号においてエンコードされたX線線量のスペクトルの一次モーメントに対応する、
請求項1記載のスペクトルプロセッサ。
【請求項3】
前記第二のスペクトル信号は、前記検出器信号においてエンコードされたX線線量のスペクトルの二次モーメントに対応する、
請求項1又は2記載のスペクトルプロセッサ。
【請求項4】
前記第二のスペクトル信号は、前記検出器信号のAC成分から導出される、
請求項1乃至3の何れか記載のスペクトルプロセッサ。
【請求項5】
前記第一及び第二のスペクトル信号のそれぞれを再構成し、前記第一のスペクトル信号について第一の体積画像データを生成し、前記第二のスペクトル信号について第二の体積画像データを生成する再構成手段を更に備える、
請求項1乃至3の何れか記載のスペクトルプロセッサ。
【請求項6】
前記第一の体積画像に基づいて第一の画像を生成し、前記第二の体積画像データに基づいて第二の画像を生成する画像生成手段を更に備える、
請求項5記載のスペクトルプロセッサ。
【請求項7】
前記検出器信号は、前記第一の画像と前記第二の画像とに基づいて、画像領域でスペクトル的に分解される、
請求項6記載のスペクトルプロセッサ。
【請求項8】
投影領域で前記検出器信号をスペクトル的に分解するスペクトルアルゴリズムを採用する再構成手段を更に備える、
請求項1乃至3の何れか記載のスペクトルプロセッサ。
【請求項9】
画像形成システムの検査領域を通過する多色放射線を検出するステップと、
検出された放射線のエネルギー分布を示す信号を生成するステップと、
放射線のエネルギー分布に関する第一のスペクトル情報を決定するステップと、
前記放射線のエネルギー分布に関する第二のスペクトル情報を決定するステップと、前記第二のスペクトル情報と前記第一のスペクトル情報とは異なり、
前記第一及び第二のスペクトル情報に基づいて前記検出された放射線をスペクトル的に分解するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記第一のスペクトル信号は、前記検出された放射線においてエンコードされた放射線のエネルギーの平均値に対応する、
請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記第二のスペクトル信号は、前記検出された放射線においてエンコードされた放射線のエネルギーの平均平方値に対応する、
【請求項12】
検査領域を通過する多色放射線を放出する放射線源と、
前記放射線を検出し、検出された放射線を示す検出器信号を生成する検出器アレイと、
前記検出器信号を処理するスペクトルプロセッサとを備え、
前記スペクトルプロセッサは、
前記検出器信号から導出される第一のスペクトル信号であって、前記検出器信号に関する第一のスペクトル情報を含む第一のスペクトル信号を生成する第一の処理チャネルと、
前記検出器信号から導出された第二のスペクトル信号であって、前記検出器信号に関する第二のスペクトル情報を含む第二のスペクトル信号を生成する第二の処理チャネルとを備え、前記第一のスペクトル信号と前記第二のスペクトル信号とは、前記検出器信号をスペクトル的に分解するために使用される、
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項13】
前記第一の処理チャネルは、所定の積分期間にわたり前記検出器信号を積分する第一積分器を含む、
請求項12記載の画像形成システム。
【請求項14】
前記積分回路は、前記検出器信号のDC成分を表す、
請求項13記載の画像形成システム。
【請求項15】
前記第二の処理チャネルは、
前記検出器信号の低周波成分と高周波成分をフィルタリングするバンドパスフィルタと、
フィルタリングされた検出器信号の値を二乗する二乗回路と、
二乗されたフィルタリングされた検出器信号を積分する第二積分器と、
を有する請求項12乃至14の何れか記載の画像形成システム。
【請求項16】
前記二乗されたフィルタリングされた信号は、前記検出器信号のAC成分を含む、
請求項15記載の画像形成システム。
【請求項17】
スペクトルアルゴリズムを使用して、前記第一のスペクトル信号と前記第二のスペクトル信号に基づいて、投影領域において前記検出器信号をスペクトル的に分解する再構成手段を更に備える、
請求項12乃至16の何れか記載の画像形成システム。
【請求項18】
前記第一のスペクトル信号と前記第二のスペクトル信号のそれぞれを再構成し、前記第一のスペクトル信号について第一の体積画像データを生成し、前記第二のスペクトル信号について第二の体積画像データを生成する再構成手段を更に備える、
請求項12乃至16の何れか記載の画像形成システム。
【請求項19】
前記第一の体積画像データに基づいて第一の画像を生成し、前記第二の体積画像データに基づいて第二の画像を生成する画像生成手段を更に備える、
請求項18記載の画像形成システム。
【請求項20】
前記検出器信号は、前記第一の画像と前記第二の画像に基づいて画像領域においてスペクトル的に分解される、
請求項19記載の画像形成システム。
【請求項21】
前記第一のスペクトル信号は、前記検出器信号においてエンコードされた放射線のエネルギーの平均値に対応し、前記第二のスペクトル信号は、前記検出器信号においてエンコードされた放射線のエネルギーの平均平方値に対応する、
請求項12乃至20の何れか記載の画像形成システム。
【請求項22】
前記検出器アレイは、少なくとも2つの異なるエネルギーのスペクトルに個別に応答し、それぞれ異なるエネルギースペクトルに対応する少なくとも2つの異なる出力信号を生成するスペクトル検出器を含み、
前記第一の処理チャネルと前記第二の処理チャネルは、前記少なくとも2つの出力信号のそれぞれを個別に処理する、
請求項12乃至21の何れか記載の画像形成システム。
【請求項23】
少なくとも2つの異なる電圧間で前記放射線源の電圧を切り替える制御手段を更に備え、
前記検出器アレイは、第一の放射線源の電圧に対応する第一の出力信号と、第二の放射線源の電圧に対応する第二の出力信号とを生成し、
前記第一の処理チャネルと前記第二の処理チャネルは、前記第一の出力信号と前記第二の出力信号の両者を個別に処理する、
請求項12乃至22の何れか記載の画像形成システム。
【請求項24】
少なくとも第二の放射線源と第二の検出器アレイを更に備え、
前記放射線源と前記第二の放射線源は、異なる電圧レベルで動作し、
前記検出器アレイと前記第二の検出器アレイは、対応する放射線源の電圧レベルに対応する出力信号を生成し、
前記第一の処理チャネルと前記第二の処理チャネルは、前記検出器アレイにより生成された出力信号と前記第二の検出器アレイにより生成された出力信号を個別に処理する、
請求項11乃至22の何れか記載の画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−509697(P2012−509697A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536969(P2011−536969)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/IB2009/054884
【国際公開番号】WO2010/061307
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】