説明

スペクトルフィルタの形成

レンズは、第1波長帯域において、立体画像の3Dビューイングに適合した第1画像を視聴者の一方の眼に通す、ロールコーティングされた複数の層を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトルフィルタの形成に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に三次元(3D)投影と呼ばれる、立体投影は、わずかに異なる画像を視聴者の各眼に提示し、視聴者の脳が2つの画像を1つの光景に組み合わせた場合に、奥行きの錯覚を与える。
【0003】
偏光に基づいた3D投影システムでは、2つのプロジェクタが使用され(各眼に対して1つ)、偏光フィルタは、各プロジェクタからの光を他方に対して直交に偏光するために使用される。視聴者が、対応する偏光フィルタを有する眼鏡を装着することによって、各眼は、対応するプロジェクタからの投影された光のみを受光する。
【0004】
アナグリフ式投影では、2つの画像の一方は、可視スペクルの赤色端に、もう一方は、青色端にそれぞれ色シフトされる。視聴者が、赤色および青色フィルタ(各眼に対して1つ)を有する眼鏡を装着することによって、各眼は、対応する色にシフトされた画像のみを受容する。視聴者の脳は、奥行きの錯覚とともに、2つの画像を減色された単一画像に組み合わせる。そのようなシステムは、色シフトされた2つのオーバーレイ画像を用いてプリントすることができる静止画像を用いて、さらに動作する。
【0005】
第3手法は、各眼に対して交代画像を投影するとともに、たとえば、LCDシャッターを有する眼鏡は、現在投影されている画像に対して反対の眼の視野を能動的にブロックする。
【特許文献1】米国特許第6,283,597号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、一態様において、レンズは、第1波長帯域において、立体画像の3Dビューイングに適合した第1画像を視聴者の一方の眼に通す、ロールコーティングされた(roll-coated)複数の層を具備している。
【0007】
実施構成は、以下の1つまたは複数の特徴を有することができる。前記レンズは、ロールコーティング過程において、基板に付着された層を具備し、前記層の組み合わせにより、第1波長帯域において光を透過し、かつ第2波長帯域において光を透過しない、光学特性および厚みを有している。前記層の光学特性および厚みは、前記層の組み合わせにより、第3および第4波長帯域において光を透過し、かつ第5および第6波長帯域において光を透過しないものである。第2レンズは、ロールコーティングされた層を有し、前記レンズは、第2波長帯域において、立体画像の3Dビューイングに適した第1画像に対して相補的である第2画像を、視聴者の第2眼に通す、ロールコーティングされた複数の層を具備している。第1波長帯域は、435nm付近の波長帯域を有している。第2波長帯域は、475nm付近の波長帯域を有している。第3波長帯域は、510nm付近の波長帯域を有し、第4波長帯域は、610nm付近の波長帯域を有し、第5波長帯域は、550nm付近の波長帯域を有し、かつ第6波長帯域は、660nm付近の波長帯域を有している。
【0008】
前記レンズは、湾曲した基板シートと、湾曲に沿った点において、シートに対してほぼ均一で正常の厚みを有する、ロールコーティングされた層とを具備している。湾曲は、レンズが人の顔の近くに配置された場合、1つの面において、レンズの表面に沿った点が視聴者の眼から比較的均一な距離にあるというものである。湾曲は、レンズが人の顔の近くに配置された場合、薄膜と眼の中心との間の距離に比較的等しくなるような、曲率半径を有している。曲率半径は、約1/2から4インチの間である。
【0009】
一般に、一態様において、眼鏡は、2つのレンズを保持するフレームを具備している。第1レンズは、第1波長帯域において光を透過し、かつ第2波長帯域セットにおいて光を反射する、ロールコーティングされたフィルタを具備している。第2レンズは、第2波長帯域セットの一部において光を透過し、かつ第1波長セットの一部において光を反射する、ロールコーティングされたフィルタを具備している。
【0010】
一般に、一態様において、立体画像を見るための眼鏡は、立体画像の3Dビューイングに適合した第1画像を視聴者の一方の眼に通す、ロールコーティングされた光学層を有する第1レンズを具備している。第2レンズは、立体画像の3Dビューイングに対して、第1画像を補足する第2画像を視聴者の第2眼に通す、ロールコーティングされた光学層を具備している。
【0011】
一般に、一態様において、3Dフレームまたはビデオプレゼンテーションを見るための眼鏡は、支持構造と、1組の湾曲したレンズとを具備している。各レンズは、レンズの表面に対して実質一定で正常の厚みを有している。視聴者が、2つの重ならない光波長帯域において投影されたプレゼンテーション画像をレンズを通して見た場合に、3Dの印象を受けるように、前記層は、前記画像をフィルタリングするように構成され、各レンズは、約1/2から4インチの間の曲率半径を有している。
【0012】
一般に、一態様において、第1レンズは、第1波長セットを有する光を透過するように選択された材料の、ロールコーティングされた層を具備するとともに、第2レンズは、第2波長セットを有する光を透過するように選択された材料の、ロールコーティングされた層を具備している。
【0013】
一般に、一態様において、1つのレンズは、第1波長において、立体画像の3Dビューイングに適合した第1画像を視聴者の一方の眼に通す。
【0014】
実施構成は、以下の1つまたは複数の特徴を有することができる。第2レンズは、第2波長において、立体画像の3Dビューイングに対して第1画像を補足する第2画像を視聴者の第2眼に通す。前記レンズは、基板シートと、応力を有する層とを具備しており、レンズの湾曲は、応力によるものである。第1および第2レンズは、視聴者が装着している間ドーム状のスクリーンへの投影を見る場合に、ドーム上の点からの光が、レンズ表面に対して垂直に近い入射角度で各レンズを通るように、配置されている。
【0015】
一般に、一態様において、異なる光学特性を有する少なくとも第1および第2材料の交代層は、基板上にロールコーティングされている。少なくとも第1および第2材料の交代層は、第2基板上にロールコーティングされている。前記層の厚みは、第1基板上の層が、波長の第1セットを有する光を透過し、かつ第2波長セットを有する光を透過しないとともに、第2基板上の層が、第2波長セットを有する光を透過し、かつ第1波長セットを有する光を透過しないような組み合わせで選択されている。コーティングされた各第1および第2基板の一部は、切除されるとともに、前記一部を配置するように構成されたフレームに、前記一部は組み合わされている。前記一部は、フレームが装着者の頭部に装着された場合、装着者の各眼の近くに位置する。
【0016】
実施構成は、以下の1つまたは複数の特徴を有することができる。第1材料は、二酸化ケイ素(SiO2)である。第2材料は、五酸化ニオブ(Nb2O5)、二酸化チタン(TiO2)、または五酸化タンタル(Ta2O5)である。少なくとも1つの層の特性は、層の組み合わせが応力を有し、前記応力は基板に湾曲を生じさせるように、選択されている。第1部分を、コーティングされた第1基板から切り取って、第1レンズを形成し、第2部分を、コーティングされた第2基板から切り取って、第2レンズを形成するとともに、第1および第2レンズを配置して、眼鏡を形成する。
【発明の効果】
【0017】
単一の過程で、大量の眼鏡に対して、かつ1品目当たり低コストで、レンズを製造する効果を有するという利点がある。レンズは、装着者の全視野において、適切なフィルタに対して湾曲させることができる。
【0018】
他の特徴および利点は、本明細書の記載および添付の特許請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、プロジェクタのブロック図である。
【0020】
図2A−Gおよび6は、スペクトルのグラフである。
【0021】
図3は、ロールコーティング装置のブロック図である。
【0022】
図4は、薄膜の構成を記載した表である。
【0023】
図5Aは、装着者の頭部に装着された眼鏡の水平断面図である。
【0024】
図5Bおよび5Fは、装着者の頭部に装着された眼鏡の透視図である。
【0025】
図5Cおよび5Dは、レンズおよび眼の水平断面図である。
【0026】
図5Eは、装着者の頭部に装着された眼鏡の側断面図である。
【0027】
図6は、右眼に対する画像の、左眼のレンズへの推定クロストークを示している。
【0028】
図7は、レンズおよび眼の透視図である。
【0029】
典型的なデジタル投影システム、たとえば図1のシステム100において、フルカラー画像は、視聴者が見る場合に、単一のフルカラー画像に分離するように、同時にまたは連続で投影される3つの単色成分画像を生成することによって、作られる。単一の画像装置102は、拡散スペクトル(白色)光源108から投影された光106の経路に赤色、緑色、および青色フィルタを回転させて、有色光106Cを生成するカラーホイール104から受けた光を使用して、入力ビデオストリーム103に基づいた成分画像を生成する。幾つかの実施例において、光源は、電球116、反射体118、および均一化装置120を具備している。均一化装置120、たとえばライトパイプは、カラーホイール104に到達する光が、輝度と色において均一であることを確実する。画像装置102は、DLPライトバルブのような反射素子、またはLCDパネル(投影システム100の配置に対して適切に変化させた)のような透過装置であることが可能である。
【0030】
次に、フィルタリングおよび画像化された光106Iは、視聴者114が見えるように、レンズ110によって投影スクリーン112に焦点が合わされる。画像源102およびカラーホイール104が、ライトパイプにおいて、複数の成分画像および色の間で切り替わる間、視聴者114は、単一のフルカラー画像を知覚する。たとえば、毎秒30フレーム(fps)でフルカラー画像を生成するために、画像装置は、少なくとも毎秒90個の単色フレームを生成する必要がある。実際のレートは、光源材料のフレームレートと、ホイール104における色セグメントの数と、ホイールが回転する速度とに依存する。たとえば、幾つかのプロジェクタは、4つ以上のセグメントを具備するとともに、セグメントの数に従って、必要最小限よりも2、4、または8倍の速度でホイールを回転させる。幾つかの実施例では、3つの分離した色の光源が使用される、または、3つの画像装置が使用される(各色に対して1つ)。これらの各手法は、たとえば、3色全ての成分を同時に投影するように、様々な方法において他の手法と組み合わせることが可能である。
【0031】
3D投影のタイプは、たとえば米国特許第6,283,597号明細書に、記載されている。各眼に対して画像を偏光する、または完全に異なる色にそれぞれシフトさせるというよりもむしろ、左眼および右眼の各画像の赤色、緑色、および青色の各成分は、各眼に対して異なる、狭い色帯域に制約される。そのため、フィルタは、適切な画像のみが各眼に到達されるとともに、なおも各眼の画像が3色全てから成るように、使用することができる。図2Aおよび2Dは、一般的に使用される2種類の光源に対して、フィルタリングされた色帯域の例示的なセットを示している。キセノンランプは、映画上映で一般的に使用されるのに対して、UHP(ウルトラ・ハイ・パフォーマンス)水銀ランプは、家庭用プロジェクタで一般的に使用されている。左眼に対する画像は、プロジェクタ内部で、図2Bおよび2Eにそれぞれ示されている、帯域202L,204L,206Lにフィルタリングされるのに対して、右眼に対する画像は、プロジェクタ内部で、図2Cおよび図2Fにそれぞれ示されている、帯域202R,204R,206Rにフィルタリングされる。各グラフにおいて、強度値は、フィルタリングされていない光の潜在強度を表す100に対して、正規化されている。光源に依存しないフィルタの透過率は、図2Gに示されている。視聴者の眼鏡内のフィルタは、各眼に対して適切な帯域を透過するのに対して、他方の眼に対して使用される帯域を遮断する。良好な画像分離のため、左眼および右眼に対する帯域は、重ならないようにするべきである。これは、両帯域が、ピーク強度の約5%より上側、たとえば図2Gの点213よりも上側で、共通の波長を有さないことを意味している。
【0032】
このタイプの投影に対して、図1に示されているものと類似の投影システムを使用することが可能である。3色を有するカラーフィルタホイール104の代わりに、それは、6つの帯域202L,204L,206L,202R,204R,206Rに対応する、6色を有している。代替として、各色を2つの適切な帯域に分離するように第2フィルタ、またはフィルタセットを用いることによって、なおも3色ホイールを使用することができる。そのようなシステムにおいて、画像源は毎フレーム6枚の画像、すなわち、各眼に対して赤色、青色、および緑色の成分を生成する。視聴者114は、対応する画像に対して使用される3つの帯域が各眼で見えるようにするフィルタを具備する眼鏡116を装着する。そのようなシステムは、偏光された光を使用するシステムよりも広い視野角にわたって、フルカラー立体画像を生成するのに利点を有している。
【0033】
そのようなプロジェクタは、基礎出願と同じ日に提出され、発明の名称を“Two-Dimensional and Three-Dimensional Projecting”とするBarret Lippeyの、引用により本明細書に組み込まれる同時係属出願において、記載されている。
【0034】
上述のとおり、3色3D投影を見るため、視聴者は、対応する画像に対して使用され、かつ他方の眼に対して指向された相補的な画像に対して使用されない3色帯域を各眼で見えるようにするフィルタを具備するレンズを具備する眼鏡を装着する。そのようなレンズを生成する1つの方法は、明確な単位として各レンズを生成するバッチコーティング(batch-coating)過程を使用することである。
【0035】
ロールコーティングは、薄く、柔軟な基板上に、複合光フィルタを安価で形成することができる。ロールコーティング過程は、基板上に一連の異なる材料の薄い層をコーティングするステップを具備している。バッチ過程は、典型的に、柔軟でないガラスまたはプラスチックの小さい各部分上をコーティングするのに対して、ロールコーティング過程は、コーティングチェンバーを連続的に通過する、柔軟なプラスチック繊維のロール上に薄膜を蒸着することができる。使用できる基板材料の1つは、その強度、低ガス放出性、耐高温性、および低コストから、PET(ポリエチレンテレフタラート)である。PET基板は、厚さ約0.005〜0.015”にすることができる。基板の幅は、典型的に約1〜6フィートである。他に可能な基板材料は、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル(polymethyl methacrylate)、および透明ポリイミドを含んでいる。これら高分子材料の薄いロールは、応力破損(stress failure)を受けずに、約1”の半径で湾曲させるのに十分柔軟である。
【0036】
図3に示されているように、前記基板として使用されるプラスチックフィルムの大きなロール300は、前記装置の一端に取り付けられる。基板302は、真空封止304を通して、低圧力に保たれているコーティングチェンバー306に供給される。搬送機構308が、コーティングチェンバー306を通して基板302を移動させることにより、光学材料の薄い層は、基板302上にスパッタまたは蒸着されるとともに、スパッタターゲットまたは蒸着ターゲット312を具備する連続的な蒸着領域310の前部を通過する。基板302は、蒸着の間、大きなドラム314によって伸ばされることにより、平らに保たれるとともに、蒸着の熱は、ドラムを通して除去される。次に、基板は、他方の真空封止304を通過し、他方のロール316上に巻かれる。新しいロール300は、先に使い終わるロールの端上に繋ぎ合わせることができる。前記装置は、保守が必要になるまで停止せずに稼動するように構成してもよい。典型的な保守は、スパッタターゲットまたは蒸着ターゲット312の交換と、シールド318の洗浄と、使い古した装置の交換とを含んでいる。複合コーティングのため、基板302は、前記装置を何度も通過する必要がある。蒸着領域を通る基板の後方および前方への動作は、プラスチックフィルム搬送機構308がそれを可能にする場合に、利用することができる。
【0037】
前記ロールは、それぞれ数百ポンドの重さであり、何千フィートもの長さであることが可能である。ロールコーティングは、真空を損なうことなく持続的に行うことができる、または基板が取り付けられる度に長時間ポンプダウンを必要とするため、ロールコーティングの処理能力は、バッチ処理よりも非常に高いとともに、ロールコーティングに伴うコストも非常に低くすることができる。ロールコーティング過程の後、各部分は、基板から切り取られるとともに、眼鏡に組み合わされる。各部分は、それ自体がレンズとして使用され、眼鏡のフレームによって適切な位置に保持される、またはより大量のガラスまたはプラスチックのレンズ上にラミネートされる。
【0038】
前記光学材料の各層は、特定の光学特性(たとえば、高い屈折率と低い屈折率との交代層)を有し、層の組み合わせは、特定の利用に対して構成されたフィルタリング特性を生じるように構成されている。3D眼鏡に適した3つの帯域フィルタの場合、その目的は、図2Bおよび2Cに示されているように、各眼に対する帯域の高い透過と、反対の眼に対して使用される帯域を有する他の光に対する強い遮断とを有することである。図2Bは、左眼に対して使用される3つの帯域202L,204L,206Lにおける透過率を示し、図2Cは、右眼に対して使用される3つの帯域202R,204R,206Rにおける透過率を示している。帯域を表すピークの急峻な両側は、相補的な帯域からの光のブリージング(クロストークと呼ばれる問題)を低減することが好ましい。
【0039】
前記3つの帯域のフィルタの構成例を、図4に示す。表400は、列402に材料と、列404,406にそれらの厚みとを列挙している。左眼に対して、列404に列挙された厚みの推定スペクトル性能は、図2Bの基である。列406および図2Cに示されているように、右眼に対応するフィルタを作るため、全層の薄膜の厚みを約8%増加させることによって、薄膜のスペクトル曲線は、より長い波長にシフトすることができる。波長のシフト量は、薄膜の厚みの増加量に等しいため、その量は、シフトされた帯域202R,204R,206Rが、元の帯域に重ならないように十分離れて、各通過帯域202L,204L,206Lをシフトさせるように選択されるべきである。良好な性能のため、通過帯域202Lなどにおける平均透過は、たとえば、約80%以上にするべきであるとともに、遮断帯域における平均透過は、通過帯域の外側の波長に対して、約0.5%以下にするべきであるということが、分かっている。帯域端の傾斜、たとえば図2Gの点209と点211との間の端207は、各帯域の中心波長の約1%にするべきであり、有効な光の20%および80%が、各通過帯域に対して透過される。傾斜によって、波長帯域の中心幅の割合として、通過帯域と阻止帯域との間の遷移帯域の端点を離間することを意味する。各帯域の波長の許容範囲(波長帯域の中心波長は、許容範囲によって変化し得る)は、帯域の公称中心波長のいずれかの側に関して、約2%未満であるべきである。
【0040】
この過程によって作られたフィルタは、視聴者に装着される眼鏡において使用されるとともに、そのプロジェクタ内のフィルタとして、使用することができ、たとえば光が0度でなく幾らかの角度でフィルタ上に入射する場合、プロジェクタの形状に対して適切に調整されている。
【0041】
幾つかの実施例において、ロールコーティング過程で使用される基板は、プラスチックの薄く柔軟なシートであり、眼鏡に対して使用されるフィルタは、図5Aに示されているように、円筒状に容易に湾曲させることができる。いったん形成されたら、フィルタは、眼鏡500のフレーム510に従って所望された形状に保つことができる。代替として、それらは、所望の形状を有するガラスまたはプラスチックのレンズ上に、ラミネートすることができる。この柔軟性は、バッチコーティング過程に勝る利点をもたらし、コーティング過程の間、表面は平らに保たれるため、湾曲した表面全体を均一にコーティングすることができる。スパッタ法または蒸着法を使用するロールコーティングは、蒸着される材料を供給源から基板に直線で移動させる指向性のコーティング過程である。これは、適切なマスキングおよび過程制御により、平らな表面への均一なコーティングを可能にする。厚みは、上述の帯域に関する許容範囲を満たすため、均一に約±2%以内であるべきである。他のコーティング方法、たとえば化学気相蒸着法は、スプラッタ法または蒸着法に比べて高価な傾向があり、無指向であるため、大きく湾曲した表面をコーティングすることができる。ロールコーティングは、柔軟な基板を用いて行うため、湾曲したレンズを生成するのに使用される安価な指向性のコーティング過程を可能にする。
【0042】
湾曲レンズ502は、前記眼鏡116内に配置されているため、眼504の中心からその全長に沿って均一な距離Dを保っている。これは、図5Cおよび5Dに示されているように、眼鏡の左または右端を通して見るように眼球が回転することによる、入射角度(AOI)505(入射光と、レンズ506からの垂線507との間で測定される)の変化によって、透過した波長がシフトするのを防ぐのに役立つ。入射光508a,508b,508cは、入射する方向を問わず比較的小さいAOIで、眼に向かってレンズ502を通過する。たとえばレンズ506を具備する比較的平らな眼鏡において、両側からレンズ506に入射する光508a,508cのAOI505は、大きく(視聴者が、眼球を両側に回転させる、または単純に周辺視野を通して見るとしても)、真っすぐにレンズ506に入射する光508a,508cのAOI505は小さい。これは、図6に示されているように、フィルタを通過できる周波数を変化させ、視聴者の視野端において、ゴーストの発生および3D効果の劣化を生じさせる。幾つかの実施例において、レンズ502の湾曲は、完全な円筒状ではなく、可変な半径を有する湾曲であってもよい。レンズと眼の中心との間の距離は、従来の平らなレンズ、またはわずかに湾曲したレンズに比べて、比較的均一であるべきである。一般に、各レンズは、眼の中心に対して中心がある湾曲を有するべきであり、曲率半径は、レンズから眼の中心への距離とほぼ等しく、たとえば、眼に非常に近いレンズでは1/2インチ、または眼からより離して配置されたレンズでは4インチ程度である。わずかに湾曲した従来のレンズは、典型的に半径約12インチの湾曲を有している。
【0043】
グラフ600は、2つの異なる角度で平らなレンズを通過する光によって、生じるクロストークを示している。線602は、右眼に対して0°で投影されたわずかな光が、眼鏡において左眼のフィルタによって通過できることを示している。しかし、線604は、30°のAOIで、青色光および緑色光の大きいピークが、特定の波長で透過されることを示している。図2Bに示されている、左眼の帯域202L,204Lに対するこれらのピークの波長と比較すると、この角度において、左眼は右眼に対して指向された光を受光することが分かる。湾曲したレンズによって、眼に到達する全ての光は、どの方向から入射するかに関わらず小さいAOIでレンズを通過し、このクロストークを防ぐ。
【0044】
前記ロールコーティング過程で使用される薄い柔軟なシートでさえも、一度で2方向に湾曲させるのは容易ではないため、そのようなレンズは、図5A−Cおよび7に示されているように一般に水平面において湾曲されている。そのような場合、上/下方向は、なおも幾らかの波長シフトを有している。この選択は、一般に垂直な眼球運動(矢印702,704)範囲は、水平角度(矢印706,708)よりも非常に小さいことによるものである。投影の性質が、たとえば想定以上に垂直に眼を動かせる場合、図5Eおよび5Dに示されているように、レンズは、垂直方向に湾曲することができる。
【0045】
幾つかの実施例において、スパッタ薄膜は、完成したフィルタにおいて、作り付けの湾曲に対して寄与する圧縮応力を有している。それは、基板を平面から曲げるのに対して、比較的小さい応力である。基板の厚みとその材料とに応じて、作り付けの湾曲は、眼球運動の全ての水平角度に対して小さいAOIを保つように、適切な湾曲に調節することができる。代替として、作り付けの湾曲は、基板を所望の形状ごとに合わせることができるため、追加が必要なさらなる湾曲は、基板が最初に平らである場合程の応力がかからない。フィルタと眼の中心との間の距離が1”である場合、フィルムの曲率半径も同様に1”にするべきである。この適切な半径は、典型的な応力値と、厚さ約0.008”のポリカーボネート基板とによって蒸着されるスパッタ薄膜により実現することができる。同じ厚みのPET基板と、同じスパッタ薄膜とによるフィルタは、基板材料がより硬いため、約3”の適切な半径を有している。しかし、この材料は、薄膜を劣化せずに、半径1”に曲げることができる。スペクトルシフトの実験的な低減は、1”の半径に曲げられたPET基板に基づいた眼鏡の形成することによって、水平な眼球角度の大きな範囲に対して、確認された。たとえば、より快適にフィットするように、または処方された眼鏡の上にフィットするように幾つかの画像品質を犠牲にして、他の湾曲を使用してもよい。
【0046】
ロールコーティングによって可能な湾曲レンズは、ドーム状のスクリーン、または円筒状のスクリーンの劇場において、特に有効である。たとえば、ドーム状のスクリーンは、平らなスクリーンによりも眼球運動を必要とする傾向があるとともに、ロールコーティングされた薄膜は、両眼間のクロストークによるゴーストを低減する眼鏡の湾曲を容易にする。ドーム状のスクリーンは、前面に加えて左右からオブジェクトを視聴者に提示するとともに、湾曲レンズは、視聴者の周辺視野における画像に対しても、奥行きの錯覚を保つことを可能にする。
【0047】
他の実施例も、添付の特許請求の範囲内である。たとえば、フィルタは、装着者の既存の眼鏡に取り付けるように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】プロジェクタのブロック図である。
【図2A】スペクトルのグラフである。
【図2B】スペクトルのグラフである。
【図2C】スペクトルのグラフである。
【図2D】スペクトルのグラフである。
【図2E】スペクトルのグラフである。
【図2F】スペクトルのグラフである。
【図2G】スペクトルのグラフである。
【図3】ロールコーティング装置のブロック図である。
【図4】薄膜の構成を記載した表である。
【図5A】装着者の頭部に装着された眼鏡の水平断面図である。
【図5B】装着者の頭部に装着された眼鏡の透視図である。
【図5C】レンズおよび眼の水平断面図である。
【図5D】レンズおよび眼の水平断面図である。
【図5E】装着者の頭部に装着された眼鏡の側断面図である。
【図5F】装着者の頭部に装着された眼鏡の透視図である。
【図6】右眼に対する画像の、左眼のレンズへの推定クロストークを示している。
【図7】レンズおよび眼の透視図である。
【符号の説明】
【0049】
500 眼鏡
502 湾曲レンズ
504 眼
505 入射角度
508a,508b,508c 入射光
510 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長帯域において、立体画像の3Dビューイングに適合した第1画像を視聴者の一方の眼に通す、ロールコーティングされた複数の層を有するレンズを具備することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記レンズは、ロールコーティング過程で基板に付着された層を具備し、
前記層の組み合わせは、第1波長帯域において光を透過し、かつ第2波長帯域において光を透過しない光学特性および厚みを有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記層の光学特性および厚みは、前記層の組み合わせが、第3および第4波長帯域において光を透過し、かつ第5および第6波長帯域において光を透過しないことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2波長帯域において、立体画像の3Dビューイングに適した第1画像に対して相補的である第2画像を視聴者の第2眼に通す、ロールコーティングされた層を有する第2レンズをさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1波長帯域は、435nm付近の波長帯域を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1波長帯域は、435nm付近の波長帯域を有するとともに、
前記第2波長帯域は、475nm付近の波長帯域を有することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記第1波長帯域は、435nm付近の波長帯域を有し、
前記第2波長帯域は、475nm付近の波長帯域を有し、
前記第3波長帯域は、510nm付近の波長帯域を有し、
前記第4波長帯域は、610nm付近の波長帯域を有し、
前記第5波長帯域は、550nm付近の波長帯域を有するとともに、
前記第6波長帯域は、660nm付近の波長帯域を有することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記レンズは、
湾曲を有する基板シートと、
前記湾曲に沿った点において、シートに対してほぼ均一で正常な厚みを有するロールコーティングされた層と
を具備し、
前記湾曲は、前記レンズが人の顔の近くに配置された場合、レンズ表面に沿った点が、1つの平面において、視聴者の眼から比較的均一な距離にあることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記レンズは、
湾曲を有する基板シートと、
前記湾曲に沿った点において、シートに対してほぼ均一で正常な厚みを有するロールコーティングされた層と
を具備し、
前記湾曲は、前記レンズが人の顔の近くに配置された場合、薄膜と眼の中心との間の距離にほぼ等しい曲率半径を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記曲率半径は、約1/2から4インチの間であることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
2つのレンズを保持するフレームと、
第1波長帯域セットにおいて光を通し、かつ第2波長帯域セットにおいて光を反射するロールコーティングされたフィルタを具備する第1レンズと、
第2波長帯域セットの一部において光を通し、かつ第1波長セットの一部において光を反射する第2レンズと
を具備することを特徴とする眼鏡。
【請求項12】
立体画像を見るための眼鏡を具備し、
前記眼鏡は、
立体画像の3Dビューイングに適合した第1画像を、視聴者の一方の眼に通すロールコーティングされた光学層を具備する第1レンズと、
立体画像の3Dビューイングに適した第1画像に対して相補的である第2画像を、視聴者のもう一方の眼に通すロールコーティングされた光学層を具備する第2レンズと
を具備することを特徴とする装置。
【請求項13】
3Dフレームまたはビデオプレゼンテーションを見るための眼鏡であって、
支持体と、
1組の湾曲レンズと
を具備し、
前記各レンズは、レンズの表面に対して実質的に一定で正常の厚みを有する層を具備するとともに、約1/2から4インチの間の曲率半径を有し、
前記層は、視聴者が、2つの重ならない光波長帯域において投影されたプレゼンテーション画像を、前記レンズを通して見た場合に、視聴者が3Dの印象を受けるように、前記画像をフィルタリングするように構成されることを特徴とする眼鏡。
【請求項14】
第1波長セットを有する光を透過するように選択された材料のロールコーティングされた層を具備する第1レンズと、
第2波長セットを有する光を透過するように選択された材料のロールコーティングされた層を具備する第2レンズと
を具備することを特徴とする装置。
【請求項15】
第1波長において、立体画像の3Dビューイングに適合した第1画像を、視聴者の一方の眼に通すレンズを具備する装置であって、
前記レンズは、前記装置が視聴者の顔の近くに配置された場合、レンズ表面に沿った点が、少なくとも1つの平面で、視聴者の眼から比較的均一な距離にある湾曲を有することを特徴とする装置。
【請求項16】
第2波長において、立体画像の3Dビューイングに適した第1画像に対して相補的である第2画像を、視聴者の第2眼に通す第2レンズをさらに具備し、
前記第2レンズは、前記装置が視聴者の顔の近くに配置された場合、レンズ表面に沿った点が、視聴者の第2眼から比較的均一な距離にある湾曲を有することを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記レンズは、基板シートと、応力を有する層とを具備し、
前記応力は、前記レンズの湾曲を生じさせることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項18】
第1波長帯域において、立体画像の3Dビューイングに適合した第1画像を、視聴者の一方の眼に通すレンズを具備し、
前記レンズは、前記装置が視聴者の顔の近くに配置された場合、薄膜と眼の中心との間の距離にほぼ等しい半径を有する湾曲を具備することを特徴とする装置。
【請求項19】
第2波長において、立体画像の3Dビューイングに適した前記第1画像に対して相補的である第2画像を、視聴者の第2眼に通す第2レンズをさらに具備し、
前記第2レンズは、前記装置が視聴者の顔の近くに配置された場合、薄膜と第2眼との間の距離に等しい半径を有する湾曲を具備することを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記レンズは、基板シートと、応力を有する層とを具備し、
前記応力は、前記レンズの湾曲を生じさせることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記曲率半径は、約1/2から4インチの間であることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記第1および第2レンズは、視聴者が装着している間にドーム状のスクリーンへの投影を見る場合、ドーム上の点からの光は、レンズ表面に対して垂直に近い入射角度で各レンズを通るように配置されることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項23】
第1基板上に異なる光学特性を有する少なくとも第1および第2材料の交代層をロールコーティングするステップと、
第2基板上に異なる光学特性を有する少なくとも前記第1および前記第2材料の交代層をロールコーティングするステップと、
前記コーティングされた各第1および第2基板の一部を切除するステップと、
前記一部を配置するように構成されたフレームに前記一部を組み合わせるステップと
を具備し、
前記層の厚みは、第1基板上の層が、第1波長セットを有する光を透過し、かつ第2波長セットを有する光を透過しないとともに、第2基板上の層が、第2波長セットを有する光を透過し、第1波長セットを有する光を透過しないような組み合わせで選択され、
前記一部は、前記フレームが装着者の頭部に装着された場合、装着者の各眼の近くに位置することを特徴とする方法。
【請求項24】
前記第1材料は、二酸化ケイ素(SiO2)であることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2材料は、五酸化ニオブ(Nb2O5)、二酸化チタン(TiO2)、または五酸化タンタル(Ta2O5)であることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの層の特性は、前記層の組み合わせが応力を有するように選択され、
前記応力は、前記基板に湾曲を生じさせることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記湾曲は、前記基板が人の眼の付近に配置された場合、前記基板は、少なくとも1つの平面において、眼から均一の距離を保つように、選択されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記湾曲は、前記基板が人の眼の付近に配置された場合、曲率半径が薄膜と眼の中心との間の距離に等しいように、選択されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記コーティングされた第1基板から第1部分を切り取り、第1レンズを形成するステップと、
前記コーティングされた第2基板から第2部分を切り取り、第2レンズを形成するステップと、
前記第1および第2レンズを配置し、眼鏡を形成するステップと
をさらに具備することを特徴とする請求項23の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−532747(P2009−532747A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504443(P2009−504443)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/065937
【国際公開番号】WO2007/118114
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(591009509)ボーズ・コーポレーション (121)
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
【Fターム(参考)】