説明

スペクトル拡散通信装置

【課題】 装置規模が拡散系列長に依存せずに小型化且つ高速通信が可能なスペクトル拡散通信装置を提供する。
【解決手段】 送信指令の発生で送信機10から同期検出用拡散系列PN−PDを送信し、受信機20は、同期検出モードとデータ検出モードの切替え可能なスライディング相関器SL−1〜SL−Mのみで構成した相関処理部23と、相関処理部23の相関処理動作を制御する動作制御部25とを備え、同期検出モード時に、受信した拡散系列PN−PDに対して互いに位相の異なる複数の同期検出用相関係数で相関処理して相関タイミングを検出し、拡散系列PN−PDの送信期間が終了すると動作制御部25でスライディング相関器SL−1〜SL−Mをデータ検出モードに切替えて、データ用拡散系列PN―1〜PN−Mに対して相関処理して受信データを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の拡散系列を用いて高速通信を可能としたスペクトル拡散通信装置に関し、特に、装置規模が拡散系列長に依存せず、装置の小型化を可能としたスペクトル拡散通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速通信を可能とするスペクトル拡散通信装置として、例えばM−ary法を適用したものがあり、これについて簡単に説明する。
送信機側では、Kビットシリアルパラレル変換部で、送信する情報データ列を2値データK(2k=Mとする)ビット毎のパラレル信号に変換してセレクタに送る。セレクタでは、KビットのM個の組み合わせにそれぞれ対応させたM個の拡散系列(以下、PN系列と称す)の中から、入力したKビットパラレル信号に対応した1つのPN系列を選択し、送信部で、選択したPN系列を高周波の搬送波に載せてアンテナを介して受信機側に送信する。受信機側では、受信信号をベースバンド信号に変化した後、相関処理部のM個のマッチドフィルタにパラレルに入力して相関処理を行う。各マッチドフィルタは、前記M個のPN系列のいずれか1つと同じPN系列を有しており、各マッチドフィルタによる相関処理で得られるM個の相関値出力の中から最大のものを検出することで、どのPN系列が送信されたかを判定し、Kビットパラレルシリアル変換部で送信されたPN系列に対応するKビットシリアルデータに変換して情報データ列を出力する。これにより、1個のPN系列でデータ伝送する場合に比べて、データ伝送速度をK倍に向上できる。
【0003】
ここで、マッチドフィルタは、PN系列を受信し始めてから概ねPN系列の一周期程度の短時間で最大値判定が開始できる反面、PN系列の系列長に対応する数の遅延素子及び乗算器を必要とする。このため、多数のマッチドフィルタを用いる構成では装置規模が大きくなるという問題がある。
【0004】
かかる問題を解消するため、1個のマッチドフィルタと、M−1個のスライディング相関器を用いて高速通信を可能にしたスペクトル拡散通信装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
スライディング相関器は、乗算器1個、加算器1個及びレジスタ1個で構成でき、回路規模がPN系列長に依存せず、小型にできる反面、乗算器に入力するPN系列と相関係数を同期させる必要があり、その同期タイミングの検出までにマッチドフィルタに比べて長い時間を要するという問題がある。
【0006】
そこで、前記特許文献1のスペクトル拡散通信装置では、送信信号にマッチドフィルタの相関対象とするPN系列を含めることで、マッチドフィルタの相関出力に基づいてスライディング相関器の同期タイミングを検出し、そのタイミングでスライディング相関器を動作させるようにしている。即ち、同期検出はマッチドフィルタで行い、データ受信用の相関処理はスライディング相関器で行うことで、スライディング相関器の欠点を補い、従来と同等の高速通信を実現させると共に、マッチドフィルタのみで構成した場合に比べて装置規模の小型化を図るようにしている。
【特許文献1】特開平9−64845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術でも、マッチドフィルタは用いられており、マッチドフィルタの遅延素子及び乗算器の個数がPN系列の系列長に依存することを考慮すると、例えば、通信の耐ノイズ性を向上するためにPN系列の系列長を長くしようとすれば、系列長の増大に伴って装置規模が増大するという問題がある。
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、装置規模が拡散系列長に依存せずに装置の小型化が可能で、しかも、高速通信が可能なスペクトル拡散通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、請求項1の発明は、送信データ列に対応させたデータ用拡散系列を選択し、該選択したデータ用拡散系列を搬送波に載せて送信する送信機と、受信信号を相関処理して相関値出力を発生する相関処理部を備え、該相関処理部の相関値出力に基づいて受信したデータ用拡散系列を特定し、該特定データ用拡散系列に対応する受信データ列を出力する受信機とを備えて構成されるスペクトル拡散通信装置において、前記相関処理部を、スライディング相関器のみで構成し、該スライディング相関器を、前記相関処理の同期タイミングを検出する同期検出モードと、前記データ用拡散系列特定のための前記相関値出力を生成するデータ検出モードに切替え可能な構成にすると共に、前記スライディング相関器の前記同期検出モードとデータ検出モードの切替えを制御する制御部を備える構成とした。
【0009】
かかる構成では、相関処理部を、相関処理の同期タイミングを検出する同期検出モードと、データ用拡散系列特定のための相関値出力を生成するデータ検出モードに切替え可能な構成のスライディング相関器のみで構成し、制御部が、スライディング相関器を同期検出モードとデータ検出モードに切替え制御する。これにより、スライディング相関器のみで構成した相関処理部で、同期捕捉とデータ検出を行うことが可能となり、マッチドフィルタを使用せずに済むようになる。
【0010】
請求項2のように、前記送信機は、前記送信データ列の送信指令の発生により、同期検出期間では同期検出用拡散系列を選択し、同期検出期間終了後、送信データ列に対応させた前記データ用拡散系列を選択し、該選択した拡散系列を搬送波に載せて送信する構成であり、前記受信機は、送信信号を受信してベースバンド信号に変換し、前記ベースバンド信号を前記相関処理部のスライディング相関器に入力する構成であり、前記スライディング相関器は、前記同期モードでは前記同期検出用拡散系列に対応する互いに位相の異なる複数の同期検出用相関係数を用いて相関処理を行い、前記データ検出モードでは複数のデータ検出用拡散系列に対応する複数のデータ検出用相関係数を用いて相関処理を行う構成であり、前記制御部は、前記同期検出用拡散系列の送信期間では前記同期検出モードに、同期検出用拡散系列の送信期間が終了するとデータ検出モードに、前記スライディング相関器の動作モードを切換制御する構成であるようにするとよい。
【0011】
かかる構成では、送信機からデータ用拡散系列の送信前に同期検出用拡散系列を送信し、同期検出用拡散系列の送信期間では制御部によりスライディング相関器を同期検出モードに設定して、同期検出用拡散系列によるスライディング相関器の相関値出力に基づいて相関処理の同期タイミングを検出するようになる。
【0012】
請求項3のように、前記送信機は、前記送信データ列をKビットパラレル信号に変換してKビットパラレル信号の組み合わせのそれぞれに対応させた複数の前記データ用拡散系列の中から、前記変換されたKビットパラレル信号に対応する1つのデータ用拡散系列を選択して搬送波に載せて送信する構成とするとよい。
【0013】
請求項4のように、前記制御部は、同期検出モード時の前記スライディング相関器の相関値出力に基づいてデータ検出モードでの前記スライディング相関器の相関処理の前記同期タイミングを検出し、入力信号に対するデータ検出モード時のスライディング相関器の相関処理タイミングを同期制御する構成とするとよい。
かかる構成では、制御部は、送信機から送信される同期検出用拡散系列の送信期間において同期検出用拡散系列によるスライディング相関器の相関値出力に基づいて相関処理の同期タイミングを検出し、同期検出用拡散系列の送信終了後に、スライディング相関器をデータ検出モードに切替え、検出した同期タイミングによりスライディング相関器のデータ用拡散系列の相関処理を制御するようになる。
【0014】
具体的には、請求項5のように、前記送信機は、前記送信データ列をKビット毎にパラレル信号に変換するシリアルパラレル変換部と、前記複数のデータ用拡散系列を発生するデータ用拡散系列発生部と、前記同期検出用拡散系列を発生する同期検出用拡散系列発生部と、前記同期検出用及びデータ用の各拡散系列が入力し、前記送信指令の発生により同期検出用拡散系列を選択し、同期検出用拡散系列の送信期間が終了すると前記シリアルパラレル変換部から入力するKビットパラレル信号に対応する1つのデータ用拡散系列を順次選択するセレクタと、該セレクタで選択された拡散系列を搬送波に載せて送信する送信部と、を備え、前記受信機は、送信信号を受信してベースバンド信号に変換する受信部と、前記相関処理部と、前記制御部と、前記相関処理部のスライディング相関器から出力される相関値出力の中で最大の相関値出力を判定する最大値判定部と、データ検出モード時の前記最大値判定部の判定結果に基づいて受信したデータ拡散系列を特定し、該特定データ用拡散系列を対応するシリアルデータに変換して受信データ列を出力するパラレルシリアル変換部と、を備える構成とするとよい。
【0015】
請求項6のように、前記制御部は、同期検出モード時の前記最大値判定部の判定結果に基づいてデータ検出モードでの前記スライディング相関器における相関処理の前記同期タイミングを検出する構成とした。
【0016】
前記スライディング相関器は、具体的には、請求項7のように、前記同期検出用相関係数を発生する同期検出用相関係数発生部と、前記データ検出用相関係数を発生するデータ検出用相関係数発生部と、前記同期検出用相関係数及びデータ検出用相関係数のいずれか一方の相関係数と入力信号の相関演算を行う演算部と、前記制御部のモード切替指令により、前記演算部に対して、同期検出モードでは同期検出用相関係数を供給し、データ検出モードではデータ検出用相関係数を供給するよう前記両相関係数発生部を前記演算部に切替接続する係数切替部と、前記演算部の演算結果を記憶して前記相関値出力として発生する相関値記憶部とを備える構成とした。
【0017】
請求項8のように、前記相関処理部は、互いに位相の異なる複数の同期検出用相関係数をそれぞれ発生する複数の前記同期検出用相関係数発生部と、各同期検出用相関係数による相関演算結果をそれぞれ記憶する複数の相関値記憶部とを有するスライディング相関器を備える構成であり、同期検出モード時に、前記制御部により、前記同期検出用拡散系列の1周期毎に、同期検出用相関係数を切替制御し、全ての同期検出用相関係数による相関演算値を順次演算して記憶し相関値出力として発生する構成とするとよい。
【0018】
また、請求項9のように、前記相関処理部は、互いに位相の異なる複数の同期検出用相関係数をそれぞれ発生する複数の前記同期検出用相関係数発生部と、各同期検出用相関係数による相関演算結果をそれぞれ記憶する複数の相関値記憶部とを有するスライディング相関器を備える構成であり、同期検出モード時に、前記制御部により、前記スライディング相関器における前記同期検出用拡散系列の1サンプリング周期以内に全ての同期検出用相関係数の切替えが終了するよう切替制御し、全ての同期検出用相関係数による相関演算値を順次演算して記憶し相関値出力として発生する構成とするとよい。
【0019】
また、請求項10のように、前記相関処理部は、互いに異なる複数のデータ検出用相関係数をそれぞれ発生する複数のデータ検出用相関係数発生部と、各データ検出用相関係数による相関演算結果をそれぞれ記憶する複数の相関値記憶部とを有するスライディング相関器を備える構成であり、データ検出モード時に、前記制御部により、前記スライディング相関器における前記データ用拡散系列の1サンプリング周期以内に全てのデータ検出用相関係数の切替えが終了するよう切替制御し、全てのデータ検出用相関係数による相関演算値を順次演算して記憶し相関値出力として発生する構成とするとよい。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、相関処理部を、同期検出モードとデータ検出モードに切替え可能な構成のスライディング相関器のみで構成し、送信機のデータ用拡散系列送信以前にスライディング相関器を同期検出モードに設定してその時の相関値出力に基づいて、データ検出モードにおける相関処理の同期タイミングを検出し、同期検出モード終了後に、スライディング相関器をデータ検出モードに切替えて、検出した同期タイミングによりデータ用拡散系列の相関処理を行う構成としたので、スライディング相関器のみで構成した相関処理部で同期捕捉とデータ検出を行うことができる。従って、マッチドフィルタを用いないので、装置規模が拡散系列長に依存せず装置規模の小型化が可能で、しかも、従来と同等の高速通信が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本発明に係るスペクトル拡散通信装置の第1実施形態の構成図を示す。尚,以下では拡散系列としてPN系列を用いるものとして説明する。
図1において、本実施形態のスペクトル拡散通信装置は、送信機10と受信機20を備える。
【0022】
前記送信機10は、Kビットシリアルパラレル変換部11と、同期検出用拡散系列発生部12と、データ用拡散系列発生部13と、セレクタ14と、送信部15と、送信アンテナ16とを備える。
前記Kビットシリアルパラレル変換部11は、入力する送信データ列である情報データを2値データKビット毎のパラレル信号に変換して前記セレクタ14に送る。
前記同期検出用拡散系列発生部12は、同期検出用拡散系列としてPN系列であるPN−PDと、このPN−PDと同じ系列長で相互相関特性の小さいPN系列のPN−PZと、を発生して前記セレクタ14に送る。尚、PN−PZは、後述の受信機調整用部分、マーカ部分、係数切替部分等で使用するためのものである。
【0023】
前記データ用拡散系列発生部13は、Kビットのパラレル信号の組み合わせ(2k=Mとする)のそれぞれに対応させたM個のデータ用PN系列PN−1〜PN−Mを発生してセレクタ14に送る。前記M個のデータ用PN系列PN−1〜PN−Mは、同じ系列長で、相互相関特性の小さい系列とする。
【0024】
前記セレクタ14は、入力する複数のPN系列の中から条件に応じて1つを選択して送信部15に伝送する論理回路である。具体的には、情報データ送信指令の入力により、まず、図2の受信機調整用部分に該当するデータ列を構成するために所定のPN系列(例えば、PN−PD又はPN−PZ)を予め決めたパターンで順次選択して伝送し、次に、同期検出用データ部分に該当するデータ列を構成するためにPN−PDを選択して予め決めたパターンで伝送し、次に、係数切替部分に該当するデータ列を構成するために所定のPN系列(例えば、PN−PD又はPN−PZ)を予め決めたパターンで順次選択して伝送する。その後、情報データ部分として、入力するKビットパラレル信号に応じてM個のデータ用PN系列PN−1〜PN−Mの中から対応する1つのPN系列を選択して伝送する。
前記送信部15は、セレクタ14から伝送されたPN系列を高周波の搬送波に載せて送信アンテナ16を介して外部に送信する。
【0025】
前記受信機20は、受信アンテナ21と、受信部22と、相関処理部23と、最大値判定部24と、制御部としての動作制御部25と、Kビットパラレルシリアル変換部26とを備える。
前記受信部22は、受信アンテナ21を介して送信機10の高周波信号を受信して復調処理によりベースバンド信号に変換して相関処理部23に送る。
【0026】
前記相関処理部23は、同期検出用PN系列PN−PDを相関処理するための同期検出用相関係数を用いて相関処理を行う同期検出モードとデータ用PN系列PN−1〜PN−Mを相関処理するためのデータ検出用相関係数を用いて相関処理を行うデータ検出モードとに切換可能な、M個のスライディング相関器SL−1〜SL−Mのみで構成され、受信部22からパラレルに入力するベースバンド信号の相関値出力を各スライディング相関器SL−1〜SL−Mから出力する。
前記最大値判定部24は、相関処理部23から出力される相関値出力の中で最大のものを抽出する。
【0027】
前記動作制御部25は、図2の同期検出用データ部分のデータ列受信時における最大値判定部24の判定信号Msに基づいてスライディング相関器SL−1〜SL−Mの相関開始のタイミング(同期タイミング)を捕捉し、前記捕捉した同期タイミングに基づいて図2の情報データ部分のデータ列受信時の相関処理を制御するもので、係数選択部25Aと位相検出/補正部25Bとを備える。
係数選択部25Aは、位相検出/補正部25Bからの切替指令PD1の入力により各スライディング相関器SL−1〜SL−Mに対して相関係数の選択指令SC1を発生する。また、Kビットパラレルシリアル変換部26の動作を制御するための動作指令SC2をKビットパラレルシリアル変換部26へ出力する。
同期検出/補正部25Bは、前記係数選択部25Aに対して前記係数切替指令PD1を出力すると共に、同期検出モード時の最大値判定部24の判定信号Msに基づいて各スライディング相関器SL−1〜SL−Mの相関タイミング信号SR1の発生タイミングを捕捉し、データ検出モードにおける相関タイミング信号SR1の発生タイミングを制御する。また、最大値判定部24に、相関タイミング信号SR1の発生から所定時間後に最大値判定開始の動作指令SR2を出力する。
【0028】
Kビットパラレルシリアル変換部26は、動作制御部25の係数選択部25Aから発生する動作指令SC2に基づいて、例えば同期検出・補正動作時は最大値判定部24の判定信号Msに基づく変換動作を停止し、受信データ検出動作時は前記判定信号Msに基づいてKビットシリアル信号への変換動作を行い受信データを出力する。
【0029】
図3に、スライディング相関器の構成を示す。尚、スライディング相関器SL−1〜SL−Mは同一構成であるので、ここでは、スライディング相関器SL−1について説明する。
図3において、スライディング相関器SL−1は、サンプル/ホールド回路31と、乗算器32と、加算器33と、相関値記憶部としてのレジスタ34と、同期検出用係数発生部35と、データ検出用係数発生部36と、係数セレクタ37とを備える。
【0030】
スライディング相関器SL−1は、受信部22からの入力信号をクロック信号CLKに同期してサンプル/ホールド回路31でサンプルホールドし、サンプル/ホールド回路31の出力と係数セレクタ37で選択された、同期検出用係数発生部35とデータ検出用係数発生部36のいずれか一方の相関係数を乗算器32で乗算し、乗算器32の出力とレジスタ34の出力とを加算器33で加算した結果をレジスタ34に格納する。同期検出用係数発生部35とデータ検出用係数発生部36は、相関タイミング信号SR1の入力で相関係数の出力を開始する。係数セレクタ37は、係数選択部25Aの選択指令SC1に基づいて、同期検出モードでは同期検出用係数発生部35を選択し、データ検出モードではデータ検出用係数発生部36を選択する。これにより、スライディング相関器SL−1のモード切替えが行われる。前記レジスタ34は、相関タイミング信号SR1の入力によりリセットされる。ここで、前記サンプル/ホールド回路31、乗算器32、加算器33で演算部を構成する。
【0031】
次に、かかる構成の通信装置の動作を説明する。
送信機10側の動作について説明する。
送信機10では、情報データがKビットシリアルパラレル変換部11に入力し、情報データ送信指令がセレクタ14に入力すると、セレクタ14が図4のフローチャートのように動作して情報の送信が行われる。
【0032】
ステップ1(図中、S1で示し、以下同様とする)で、情報データの送信指令があるか否かを判定し、送信指令の入力によりステップ2に進む。
ステップ2では、例えばPN系列PN−PZを所定のパターンで順次選択して受信機調整用部分のデータ列を伝送する。この伝送動作が終了すると、ステップ3に進む。
ステップ3では、同期検出用PN系列PN―PDを予め定めた所定のパターンで伝送して同期検出用データ部分のデータ列を伝送する。この伝送動作が終了すると、ステップ4に進む。
【0033】
ステップ4では、例えばPN系列PN−PZを所定のパターンで順次選択して係数切替部分のデータ列を伝送する。この伝送動作が終了すると、ステップ5に進む。
ステップ5では、入力するKビットパラレル信号に応じたPN系列を、M個のデータ用PN系列PN−1〜PN−Mの中から、1つを選択して順次伝送する。
ステップ6では、データ送信が完了したか否かを判定し、送信完了と判定すれば、ステップ1に戻り、次の情報データの送信指令を待つ。尚、送信完了の判断は、例えば、情報データ終了通知の入力、或いは、Kビットパラレル信号が入力しなくなったこと等で判断することが考えられる。
【0034】
次に、受信機20側の動作を図5のフローチャートを参照しながら説明する。
受信機20は、同期検出用データ部分のデータ列の受信が完了するまではスライディング相関器SL−1〜SL−Mを同期検出モードに設定して同期検出・補正動作を実行し、係数切替部分のデータ列受信期間中にスライディング相関器SL−1〜SL−Mの係数切替えを行い、情報データ部分のデータ受信中はスライディング相関器SL−1〜SL−Mをデータ検出モードに設定してデータ受信動作を実行する。
【0035】
ステップ11では、送信信号受信前の初期設定として、各スライディング相関器SL−1〜SL−Mを同期検出モードに設定する。即ち、同期検出/補正部25Bから同期検出未完了であることを切替指令PD1により係数選択部25Aに通知し、係数選択部25Aが、同期検出用相関係数を選択すべきことを各スライディング相関器SL−1〜SL−Mへ選択指令SC1により指令する。これにより、各スライディング相関器SL−1〜SL−Mの係数セレクタ37が、同期検出用係数発生部35側に切替わり、各スライディング相関器SL−1〜SL−Mが同期検出モードに設定される。
【0036】
ステップ12では、送信信号を受信したか否かを判定し、受信したらステップ13に進む。
ステップ13では、図2の受信機調整用部分のデータ列受信中に、受信機内部の動作レベル等を受信信号が正しく受信できるように調整する。尚、説明を分かり易くするためにステップ12の処理を設けたが、ステップ12の処理を省略しても構わない。
ステップ14で、前記受信機調整用部分のデータ列終了後、同期検出用データ部分のPN−PD系列のデータ列入力により同期検出モードに設定されたスライディング相関器SL−1〜SL−Mの相関値出力を用いて後述の図6のフローチャートに示す同期検出・補正動作を実行する。
ステップ15で、同期検出用データ部分が終了したか否かを判定し、終了するまでステップ14動作を行い、判定がYESになれば、ステップ16に進む。
【0037】
ステップ16では、係数切替部分のデータ列受信中に、各スライディング相関器SL−1〜SL−Mをデータ検出モードに設定する。即ち、同期検出/補正部25Bから同期検出が完了したことを切替指令PD1により係数選択部25Aに通知し、係数選択部25Aが、データ検出用相関係数を選択すべきことを各スライディング相関器SL−1〜SL−Mへ選択指令SC1により指令する。これにより、各スライディング相関器SL−1〜SL−Mの係数セレクタ37が、データ検出用係数発生部36側に切替わり、各スライディング相関器SL−1〜SL−Mがデータ検出モードに設定される。尚、この際に、係数選択部25Aから動作指令SC2をKビットパラレルシリアル変換部26に出力して変換動作を開始すべきことを通知するようにすれば、同期検出モードではKビットパラレルシリアル変換部26で変換動作が行われず、無意味なデータ出力を防止できる。
【0038】
ステップ17では、情報データ部分のデータ列の入力によりデータ検出モードに設定されたスライディング相関器SL−1〜SL−Mの相関値出力を用いて後述する図11のフローチャートに示す受信データ検出動作を実行する。
ステップ18では、情報データ部分が完了したか否かを判定し、完了するまでステップ17の動作を繰り返し、判定がYESになれば、ステップ11に戻る。
【0039】
次に、図6のフローチャートを参照して前述した同期検出・補正動作について説明する。
ステップ21で、動作制御部25の同期検出/補正部25Bから相関タイミング信号SR1=1を発生して各スライディング相関器SL−1〜SL−Mにより同期検出用相関処理を開始する。各スライディング相関器SL−1〜SL−Mは、クロック信号CLKに同期して同期検出用係数発生部35から同期検出用相関係数を発生して相関処理動作を開始する。ここで、各スライディング相関器SL−1〜SL−Mの同期検出用係数発生部35からは、同期検出用PN系列PN−PDと同期しているときに高い相関値出力が生じる、基本の同期検出用相関係数と互いに位相が1ビットづつずれた係数が順次クロック信号CLKに同期して発生するよう設定してある。
【0040】
例えば、同期検出用PN系列PN−PDのチップ幅をΔ、系列長(チップ数)をGpとし、各スライディング相関器SL−1〜SL−Mは、周期τのクロック信号CLKにより入力信号をサンプル/ホールド回路31でサンプリングするものとし、説明を簡単にするために、ここでは下記の式が成立するものとする。
τ=Δ/2
(Δ/τ)×Gp=2×Gp=M
【0041】
同期検出用PN系列PN−PDと同期しているときに高い相関値出力が生じる、基本の同期検出用相関係数を、[C(1),C(2),・・・C(2Gp−1),C(2Gp)](:2×Gpビット)と表すとすると、各スライディング相関器SL−1〜SL−Mは、相関タイミング信号SR1=1の入力により、下記のように互いに1ビットづつずれた(時間軸上で互いにτずつ位相がずれた)相関係数を、図7に示すように先頭から順次クロック信号CLKに同期して発生し、係数セレクタ37を介して乗算器32に入力する。
SL―1:[C(1),C(2),・・・C(2Gp−1),C(2Gp)]
SL―2:[C(2),C(3),・・・C(2Gp),C(1)]
SL―3:[C(3),C(4),・・・C(1),C(2)]
・・・
SL―M:[C(2Gp),C(1),・・・C(2Gp−2),C(2Gp−1)]
【0042】
この場合、例えば、図8に示すように、図2の同期検出用データ部分のPNーPDの先頭が相関処理部23に入力した時刻と相関タイミング信号SR1=1の発生時刻がTsr=(P−1)×(Δ/2)ずれているとすると、入力された同期検出用PN系列PN―PDに同期した相関係数を発生するスライディング相関器SL−Pの相関値出力が最大となる。
【0043】
ステップ22では、同期検出/補正部25Bが、相関タイミング信号SR1=1の発生から所定時間Tp(PN−PDの一周期より若干短い時間)後にSR2=1を最大値判定部24に出力し、相関値出力の最大値判定の動作開始を指令する。図8の場合、最大値判定部24は、スライディング相関器SL−Pの出力が最大と判定し、その判定信号Msを動作制御部25の同期検出/補正部25Bに通知する。
【0044】
ステップ23では、同期検出/補正部25Bが判定結果に基づいて相関タイミング信号SR1=1の発生タイミングを補正する。スライディング相関器SL−Pの相関値出力が最大であることが分かると、スライディング相関器SL−1とスライディング相関器SL−Pの同期検出用相関係数の位相のずれは既知であるので、図8のTsrを計算することができる。図8の例ではSR1=1の発生タイミングを時間Tsr早める方向に補正することで、PN−PDの入力開始に同期させてSR1=1を発生させることができる。補正が正しく行われたか否かは、スライディング相関器SL−1の相関値出力が最大となったか否かで確認できる。
上記ステップ21〜23の動作を、図5のステップ15で、同期検出用データ部分が終了と判定されるまで繰り返す。
【0045】
ステップ15の終了判定については、例えば、同期タイミングの補正(同期タイミングの検出)が正しく行われたことを確認していることを条件に同期検出用データ部分の終了を確認して同期検出終了とすればよい。尚、同期検出終了の判定として、補正が正しく行われたことを確認して送信機10側に通知することで同期検出終了としてもよく、送信機10は、終了通知から所定時間後に情報データ部分の送信を開始し、受信機20側で前記所定時間後に相関処理動作を開始する。
【0046】
ここで、同期検出終了の判定を、図2の同期検出用データ部分のデータ列終了を検出して判定する場合の具体例として、同期検出用データ部分の最後にデータ終了マーカ部分を設け、このマーカ部分を検出して同期検出終了を判定する方法について説明する。
【0047】
例えば、同期検出用データ部分の最後に、図2に破線で示すようにデータ終了マーカ部分を設け、このデータ終了マーカ部分のデータ列を、例えば{0,0,1,0,1,0,0}と定める。この場合、図9に示すように、同期検出用データ列としてPN−PDを予め定めた所定回数送信した後、データ終了マーカ部分として上記データ列に対応するPN系列{PN−PZ,PN−PZ,PN−PD,PN−PZ,PN−PD,PN−PZ,PN−PZ}を伝送する。受信機20の最大値判定部24は、最大値と判定した相関値出力(図9中、黒丸で示す)について、PN−PDの相関値出力を論理値1、PN−PZの相関値出力を論理値0と判定するためのしきい値を有し、相関値出力の2値化結果も判定結果として同期検出/補正部25Bに通報する構成とする。これにより、受信機20がデータ終了マーカ部分のデータ列を順次受信すると、最大値判定部24は、2値化結果としてデータ列{0,0,1,0,1,0,0}を出力する。動作制御部25は、前記データ列{0,0,1,0,1,0,0}の入力を確認してデータ終了マーカ部分が受信されたと判断して同期検出用データ部分が終了したと判定する。
尚、PN系列PN−PDの相関値出力によってのみ補正を行うためには、2値化結果が論理値0であるときには補正(同期検出)を行わないようにすればよい。
【0048】
また、上記の例とは別の方法として、同期検出用PN系列のPN−PDの受信回数をカウントして所定回数受信したら同期検出用データ部分の終了と判断するようにしてもよい。
これについて図10を参照して説明する。
この場合、受信機調整用部分のデータ列としてはPN−PZの繰り返しで構成し、最大値判定部24は、前述の例と同様にしきい値を有して2値化結果も動作制御部25に通報するものとする。また、同期検出用データ部分のデータ列としては、例えばPN−PDを7回繰り返すものとする。
【0049】
この方法では、受信機調整用部分のデータ列受信中は、最大値判定部24からは論理値0が出力され、同期検出用データ部分のデータ列が受信され始めると、論理値1が出力される。この場合、図10(a)に示すように相関タイミング信号SR1=1の発生タイミングが同期検出用データ部分の最初のPN−PDの入力により補正されるとすれば、論理値1が7回カウントされる。一方、同期系用データ部分の最初のPN−PDについては、相関タイミング信号SR1=1の補正前の相関タイミングで相関処理が行われるので、その相関値出力がしきい以上とならず論理値0と判定されることがある。この場合は、図10(b)に示すように論理値1のカウント数は6回となる。従って、この方法では、同期検出用データ列の終了を判断する論理値1のカウント数を、予想される最小値(=6)に設定し、論理値1を6回カウントしたら同期検出用データ列終了と判定するようにする。
【0050】
次に、図11のフローチャートを参照して受信データ検出動作について説明する。
同期検出用データ部分が終了してから情報データ部分で受信データ検出動作を開始するまでの係数切替部分の期間は予め設定しておくので、同期検出用データ部分で補正した相関タイミング信号SR1=1の発生タイミングから情報データ部分での相関タイミング信号SR1=1の発生タイミングを、情報データ部分のPN系列の入力に同期するように定めることができる(同期捕捉)。
【0051】
尚、図10で説明した同期検出用データ部分の終了判定方法では、同図(a)の場合には、係数切替部分を情報データ部分と誤って相関タイミング信号SR1=1を発生してしまうが、係数切替部分を、論理値0に相当する低レベルの相関値出力が生じるPN系列でデータ列を構成しておけば、動作制御部25は、最大値判定部24の相関値出力の2値化結果から図10(a)の場合であることを認識でき、相関タイミング信号SR1=1の発生タイミングを、例えばPN―PDの一周期分ずらすことで情報データ部分のPN系列に対して改めて同期させることができる。
【0052】
ステップ31で、同期検出/補正部25Bから相関タイミング信号SR1=1を発生して各スライディング相関器SL−1〜SL−Mにより受信データ検出用の相関処理を開始する。また、動作指令SC2=1をKビットパラレルシリアル変換部26に送る。尚、各スライディング相関器SL−1〜SL−Mにおける相関値出力動作は、同期検出用相関処理動作と同様で発生する相関係数が異なるだけである。
【0053】
各スライディング相関器SL−1〜SL−Mの各データ検出用相関係数は、送信機10側で発生するM個のPN系列の中のいずれか1つのPN系列を相関できる係数である。例えば、データ検出用PN系列PN−1〜PN−Mの系列長(チップ数)をGとし、各スライディング相関器SL−1〜SL−Mは、周期τのクロック信号CLKにより入力信号をサンプル/ホールド回路31でサンプリングするものとして、説明を簡単にするために、τ=Δ/2が成立するものとする。PN系列PN−1〜PN−Mの各相関係数は、それぞれ対応するPN系列と同期している時に高い相関値出力が生じるよう設定されており、PN−X(ただし、X=1〜M)の相関係数を、[D−X(1),D−X(2),・・・D−X(2G−1),D−X(2G)](:2×Gビット)と表すとすると、各スライディング相関器SL−1〜SL−Mは、相関タイミング信号SR1=1の入力により、下記の係数を、図12に示すように、先頭から順次クロック信号CLKに同期して発生し、係数セレクタ37を介して乗算器32に入力する。
SL―1:[D−1(1),D−1(2),・・・D−1(2G−1),D−1(2G)]
SL―2:[D−2(1),D−2(2),・・・D−2(2G−1),D−2(2G)]
SL―3:[D−3(1),D−3(2),・・・D−3(2G−1),D−3(2G)]
・・・
SL―M:[D−M(1),D−M(2),・・・D−M(2G−1),D−M(2G)]
【0054】
ステップ32では、相関タイミング信号SR1=1の発生から所定時間後にSR2=1を最大値判定部24に出力し、相関値出力の最大値判定動作を指令する。最大値判定部24は、各相関値出力の中で最大を示すものを判定し、その判定信号MsはKビットパラレルシリアル変換部26に伝送される。
ステップ33では、Kビットパラレルシリアル変換部26でどのPN系列かを判定して対応するKビットのシリアルデータに変換して出力する。
上記ステップ31〜33の動作を、図5のステップ18で、情報データ部分が終了と判定されるまで繰り返す。
【0055】
尚、情報データ部分の期間で、相関タイミング信号SR1の同期は保持されるものとする。また、例えば特定のデータ用拡散系列について、相関処理部23、最大値判定部24及び動作制御部25の同期検出/補正部25Bにより公知のDLL(Delay Locked Loop)を構成することは容易であり、相関タイミング信号SR1の同期の長期に渡る保持に有効である。
【0056】
図5のステップ18における情報データ部分の終了判定は、例えば前述した同期検出用データ部分の場合と同様に、情報データ部分の最後にデータ終了マーカ部分を設けてマーカ部分を検出して情報データ部分終了と判定する方法を用いることができる。
【0057】
以上のように、本実施形態スペクトル拡散通信装置では、スライディング相関器を同期検出モードとデータ検出モードを選択的に切替え可能な構成としたことで、受信機20の相関処理部23にマッチドフィルタを使用することなく、スライディング相関器だけで構成することができ、装置規模が拡散系列の系列長に依存せず小型化できる。しかも、マッチドフィルタを用いた場合と同等の高速通信が可能である。
【0058】
次に、第2実施形態について説明する。
上記実施形態では、同期検出用係数発生部35で発生する相関係数の数がスライディング相関器の数と等しい場合、即ち、(Δ/τ)×Gp=Mの場合を例に説明したが、(Δ/τ)×Gp<Mの場合や(Δ/τ)×Gp>Mの場合が考えられる。
(Δ/τ)×Gp<Mの場合では、同期検出動作時に使用しないスライディング相関器が存在するが、最大値判定部24が使用しないスライディング相関器からの相関値出力を無視する設定にすればよい。
【0059】
一方、(Δ/τ)×Gp>Mの場合では、スライディング相関器を(Δ/τ)×Gp個設けることで、上述と同様にして同期検出ができる。この場合、受信データ検出動作時に使用しないスライディング相関器が存在するが、最大値判定部24が使用しないスライディング相関器からの相関値出力を無視する設定にすればよい。しかし、同期検出のためだけにスライディング相関器を増やすことは装置規模の大型化を招き望ましくない。
【0060】
第2実施形態は、(Δ/τ)×Gp>Mの場合に装置規模の大型化を招くことなく、同期検出も可能とする構成としたものである。
第2実施形態では、不足分のスライディング相関器が1つ((Δ/τ)×Gp=M+1)の場合の構成例として、スライディング相関器SL−1〜SL−Mの中の1つを、図13に示す構成のスライディング相関器とし、他のスライディング相関器SL−1〜SL−M−1は図3の構成とする。ここでは、スライディング相関器SL−Mが図13の構成であるとして説明する。
【0061】
図13のスライディング相関器SL−Mは、図3の構成に、同期検出用相関係数2を発生する同期検出用係数2発生部35Bと、同期検出用係数1発生部35Aと同期検出用係数2発生部35Bの切替えを行う第2係数セレクタ37Bと、レジスタ34の相関値出力を格納する第1及び第2レジスタ38A,38Bと、前記第1及び第2レジスタ38A,38Bの切替えを行うレジスタセレクタ39とを追加した構成である。尚、図13中、同期検出用相関係数1を発生する同期検出用係数1発生部35Aは図3の同期検出用係数発生部35に相当するものであり、第1セレクタ37Aは図3のセレクタ37に相当するものである。SWCは、動作制御部25から発生して第2係数セレクタ37B及びレジスタセレクタ39に切替動作を指令する選択指令であり、WREは、第1及び第2レジスタ38A,38Bに対する格納指令である。また、同期検出用相関係数2は、不足分の係数を示す。
【0062】
次に動作を説明する。
スライディング相関器SL−Mでは、動作制御部25の係数選択部25Aからの選択指令SC1で、同期検出用係数を選択すべく第1係数セレクタ37Aが第2係数セレクタ37B側を選択している状態で、係数選択部25Aからの選択指令SWCにより、第2係数セレクタ37Bで同期検出用係数1発生部35A側を選択すると共に、レジスタセレクタ39で第1レジスタ38Aを選択する。この状態で、相関タイミング信号SR1=1が発生すると前述と同様の同期検出用相関処理を開始し、レジスタ34に相関値出力が格納される。その後、動作制御部25の同期検出/補正部25Bからの格納指令WER=1により、レジスタ34内の相関値出力を第1レジスタ38Aに格納する。即ち、第1レジスタ38Aの出力である相関値出力1は、相関係数1に基づいた相関値出力に該当する。尚、第1レジスタ38Aのこの格納内容は、次回の同期検出用相関係数1による相関処理開始まで保持されるものとする。次に、係数選択部25Aからの選択指令SWCにより、第2係数セレクタ37Bで同期検出用係数2発生部35B側を選択すると共に、レジスタセレクタ39で第2レジスタ38Bを選択する。この状態で、相関タイミング信号SR1=1の発生により同期検出用相関処理を開始し、同期検出/補正部25Bからの格納指令WER=1により、レジスタ34内の相関値出力を第2レジスタ38Bに格納する。即ち、第2レジスタ38Bの出力である相関値出力2は、相関係数2に基づいた相関値出力であり、不足分のスライディング相関器の相関値出力に該当する。
【0063】
他のスライディング相関器SL−1〜SL−M−1では、SR1=1が入力する毎に相関係数1による相関処理を行っているので、スライディング相関器SL−Mの同期検出用相関係数2による相関処理が終了した時点で、最大値判定部24に、不足分も含めた相関係数の全ての位相についての相関値出力が入力されたことになる。そして、動作制御部25の同期検出/補正部25Bが最大値判定部24にSR2=1を出力して最大値の判定動作を指令し、判定結果に基づいて前述と同様にして相関タイミング信号SR1=1の発生タイミングを補正する。
【0064】
スライディング相関器SL−Mは、その後のデータ検出モードではレジスタセレクタ39を第1レジスタ38A側に固定し、第2係数セレクタ37Bを同期検出用係数1発生部35A側に固定して、前述したデータ検出動作を行えばよい。
【0065】
かかる構成によれば、(Δ/τ)×Gp>Mの場合でも、同期検出のためだけにスライディング相関器を増やさずに済み、データ用拡散系列の数(本実施形態ではM個)のスライディング相関器があればよく、装置規模の大型化を抑制できる。
尚、第2実施形態の構成では、最大値判定部24に対するSR2=1は、相関タイミング信号SR1=1の2回毎に発生する。この場合、前述したデータ終了マーカ部分のデータ列を動作制御部25の同期検出/補正部25Bが正しく認識できるようにするためには、例えば、データ終了マーカ部分のデータ列の各ビットを2ビットに拡張変更すればよい。即ち、データ終了マーカ部分のデータ列を{0,0,1,0,1,0,0}から{0,0,0,0,1,1,0,0,1,1,0,0,0,0}に変更すればよい。
【0066】
また、最大値判定部24でスライディング相関器SL−1の相関値出力が最大と判定され始めたら、動作制御部24が補正終了と判断して補正動作を停止してこれ以降は最大値判定指令信号SR2を相関タイミング信号SR1の1回毎に発生するよう構成してもよい。この場合には、データ終了マーカ部分のデータ列を2ビットに拡張変更する必要はない。
【0067】
次に、第3実施形態について説明する。
図13に示す構成のスライディング相関器を用いる第2実施形態の構成は、スライディング相関器の不足分に応じて同期検出用係数発生部及び相関値出力格納用レジスタ(図13の第1及び第2レジスタ)を増やせば、スライディング相関器はM個でよく装置規模が大型化するのを抑制できるが、上述の1つ不足する例で言えば、同期検出にはPN−PD2周期を要し、第1実施形態の場合に比較して同期検出に時間がかかる。
【0068】
第3実施形態は、(Δ/τ)×Gp>Mの場合でも、装置規模の大型化を招くことなく、しかも、同期検出を第1実施形態と同程度の時間にできる構成としたものである。
第3実施形態では、図14に示す構成のスライディング相関器を用いる。
図14のスライディング相関器は、例えば3個の同期検出用係数発生部35A〜35Cと、2個のデータ検出用係数発生部36A,36Bと、データ検出用係数発生部36A,36Bを切替える係数セレクタ37Cと、3つのレジスタ34A〜34Cと、これらレジスタ34A〜34Cを切替えるレジスタセレクタ39A,39Bを備える。
【0069】
次に、図14のスライディング相関器SLの動作を、同期検出モードにおける同期検出用データ部分の相関処理動作を例に説明する。
動作制御部25の同期検出/補正部25Bからの相関タイミング信号SR1=1で、スライディング相関器SLは、レジスタ34A〜34Cをリセットして相関処理を開始する。尚、係数セレクタ37Aは、係数選択部25Aの選択指令SC1により同期検出用係数発生部35A〜35C側の選択状態にある。クロック信号CLKに同期してサンプル/ホールド回路31で入力信号がサンプリングされると、動作制御部25の同期検出/補正部25Bは、係数選択指令SWC1により同期検出用係数1生成部35Aの選択を指令し、係数セレクタ37B、37Aを介して同期検出用係数1生成部35Aの相関係数が乗算器32に供給される。このとき、動作制御部25の同期検出/補正部25Bからの選択指令SWC3によりレジスタセレクタ39A,39Bがレジスタ34Aを選択している。従って、乗算器32の乗算結果は、加算器33でレジスタ34Aの出力と加算されてレジスタ34Aに格納される。これを同期検出用係数1に関する相関一動作とする。
【0070】
次に、動作制御部25の同期検出/補正部25Bは、係数選択指令SWC1により同期検出用係数2生成部35Bの選択を指令し、係数セレクタ37B,37Aを介して同期検出用係数2生成部35Bの相関係数が乗算器32に供給される。このとき、動作制御部25の同期検出/補正部25Bからの選択指令SWC3によりレジスタセレクタ39A,39Bがレジスタ34Bを選択している。従って、この場合、乗算器32の乗算結果は、加算器33でレジスタ34Bの出力と加算されてレジスタ34Bに格納される。これを同期検出用係数2に関する相関一動作とする。
【0071】
次に、同様にして、同期検出用係数3生成部35Cの相関係数が係数セレクタ37B,37Aを介して乗算器32に供給され、乗算器32の乗算結果が加算器33でレジスタ34Cの出力と加算されてレジスタ34Cに格納される。これを同期検出用係数3に関する相関一動作とする。
かかる一連の動作を、図15に示すようにサンプル/ホールド回路31の1サンプリング幅τ以内に行う。その後、クロック信号CLKにより入力信号がサンプリングされる毎に各同期検出用係数発生部34A〜34Cの係数を更新し、上述した各係数に関する相関一動作を繰り返す。
【0072】
このようにして、動作制御部25の相関タイミング信号SR1=1の発生で相関処理動作を開始してから同期検出用PN系列PN−PDの一周期で全ての相関係数による相関値出力が生成されるように構成する。そして、各レジスタ34A〜34Cの相関値出力について最大値判定を行えば、相関タイミング信号SR1=1の発生タイミングを補正できる。
【0073】
同様に、データ検出モードにおける情報データ部分についても、例えば、図14に示すように、2つのデータ検出用係数発生部36A,36Bを設けて上述の相関処理動作を行う。かかる構成とすれば、スライディング相関器をM/2個に減らすことが可能となる。
【0074】
仮に、同期検出に係る(Δ/τ)×Gp個の係数に関する各相関一動作を同期検出用PN系列の1サンプリング幅τ以内に完了でき、更に、情報データ検出に係るM個の係数に関する各相関一動作をデータ用PN系列の前記サンプリング幅τ以内に完了できるとすれば、図14のスライディング相関器に、(Δ/τ)×Gp個の同期検出用係数発生部を設け、M個のデータ検出用係数発生部を設け、同期検出用係数発生部とデータ検出用係数発生部の多い方の個数に合せてレジスタを設けることで、図14のスライディング相関器1つで相関処理部23を構成することができる。これにより、装置規模を格段に小型化することが可能となる。
【0075】
尚、上記実施形態では、データ用拡散系列とは別に同期検出用拡散系列を設ける構成としたが、データ用拡散系列のいずれか1つを同期検出用拡散系列として用いる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1実施形態を示す構成図
【図2】セレクタから出力されるデータ列の構成を示す図
【図3】第1実施形態のスライディング相関器の構成図
【図4】セレクタの動作を説明するフローチャート
【図5】受信機の動作を説明するフローチャート
【図6】同期検出・補正動作を説明するフローチャート
【図7】各スライディング相関器の同期検出用係数発生部における出力形態の説明図
【図8】相関タイミング信号の発生タイミング補正の説明図
【図9】同期検出用データ部分の終了判定方法の一例を示す説明図
【図10】同期検出用データ部分の終了判定方法の別の例を示す説明図
【図11】データ検出動作を説明するフローチャート
【図12】各スライディング相関器のデータ検出用係数発生部における出力形態の説明図
【図13】本発明の第2実施形態で用いるスライディング相関器の構成図
【図14】本発明の第3実施形態で用いるスライディング相関器の構成図
【図15】第3実施形態のスライディング相関器の動作説明図
【符号の説明】
【0077】
10 送信機
11 Kビットシリアルパラレル変換部
12 同期検出用拡散係数発生部
13 データ検出用拡散係数発生部
14 セレクタ
15 送信部
20 受信機
22 受信部
23 相関処理部
24 最大値判定部
25 動作制御部
26 Kビットパラレルシリアル変換部
31 サンプル/ホールド回路
32 乗算器
33 加算器
34,34A〜34C レジスタ
35,35A〜35C 同期検出用係数発生部
36,36A,36B データ検出用係数発生部
37,37A〜37C 係数セレクタ
38A 第1レジスタ
38B 第2レジスタ
39,39A,39B レジスタセレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信データ列に対応させたデータ用拡散系列を選択し、該選択したデータ用拡散系列を搬送波に載せて送信する送信機と、
受信信号を相関処理して相関値出力を発生する相関処理部を備え、該相関処理部の相関値出力に基づいて受信したデータ用拡散系列を特定し、該特定データ用拡散系列に対応する受信データ列を出力する受信機と、
を備えて構成されるスペクトル拡散通信装置において、
前記相関処理部を、スライディング相関器のみで構成し、該スライディング相関器を、前記相関処理の同期タイミングを検出する同期検出モードと、前記データ用拡散系列特定のための前記相関値出力を生成するデータ検出モードに切替え可能な構成にすると共に、
前記スライディング相関器の前記同期検出モードとデータ検出モードの切替えを制御する制御部を備える構成としたことを特徴とするスペクトル拡散通信装置。
【請求項2】
前記送信機は、
前記送信データ列の送信指令の発生により、同期検出期間では同期検出用拡散系列を選択し、同期検出期間終了後、送信データ列に対応させた前記データ用拡散系列を選択し、該選択した拡散系列を搬送波に載せて送信する構成であり、
前記受信機は、
送信信号を受信してベースバンド信号に変換し、前記ベースバンド信号を前記相関処理部のスライディング相関器に入力する構成であり、
前記スライディング相関器は、前記同期モードでは前記同期検出用拡散系列に対応する互いに位相の異なる複数の同期検出用相関係数を用いて相関処理を行い、前記データ検出モードでは複数のデータ検出用拡散系列に対応する複数のデータ検出用相関係数を用いて相関処理を行う構成であり、
前記制御部は、前記同期検出用拡散系列の送信期間では前記同期検出モードに、同期検出用拡散系列の送信期間が終了するとデータ検出モードに、前記スライディング相関器の動作モードを切換制御する構成である請求項1に記載のスペクトル拡散通信装置。
【請求項3】
前記送信機は、前記送信データ列をKビットパラレル信号に変換してKビットパラレル信号の組み合わせのそれぞれに対応させた複数の前記データ用拡散系列の中から、前記変換されたKビットパラレル信号に対応する1つのデータ用拡散系列を選択して搬送波に載せて送信する構成である請求項2に記載のスペクトル拡散通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、同期検出モード時の前記スライディング相関器の相関値出力に基づいてデータ検出モードでの前記スライディング相関器の相関処理の前記同期タイミングを検出し、入力信号に対するデータ検出モード時のスライディング相関器の相関処理タイミングを同期制御する構成である請求項1〜3のいずれか1つに記載のスペクトル拡散通信装置。
【請求項5】
前記送信機は、
前記送信データ列をKビット毎にパラレル信号に変換するシリアルパラレル変換部と、
前記複数のデータ用拡散系列を発生するデータ用拡散系列発生部と、
前記同期検出用拡散系列を発生する同期検出用拡散系列発生部と、
前記同期検出用及びデータ用の各拡散系列が入力し、前記送信指令の発生により同期検出用拡散系列を選択し、同期検出用拡散系列の送信期間が終了すると前記シリアルパラレル変換部から入力するKビットパラレル信号に対応する1つのデータ用拡散系列を順次選択するセレクタと、
該セレクタで選択された拡散系列を搬送波に載せて送信する送信部と、
を備え、
前記受信機は、
送信信号を受信してベースバンド信号に変換する受信部と、
前記相関処理部と、
前記制御部と、
前記相関処理部のスライディング相関器から出力される相関値出力の中で最大の相関値出力を判定する最大値判定部と、
データ検出モード時の前記最大値判定部の判定結果に基づいて受信したデータ拡散系列を特定し、該特定データ用拡散系列を対応するシリアルデータに変換して受信データ列を出力するパラレルシリアル変換部と、
を備える構成である請求項3又は4に記載のスペクトル拡散通信装置。
【請求項6】
前記制御部は、同期検出モード時の前記最大値判定部の判定結果に基づいてデータ検出モードでの前記スライディング相関器における相関処理の前記同期タイミングを検出する構成である請求項4又は5に記載のスペクトル拡散通信装置。
【請求項7】
前記スライディング相関器は、
前記同期検出用相関係数を発生する同期検出用相関係数発生部と、
前記データ検出用相関係数を発生するデータ検出用相関係数発生部と、
前記同期検出用相関係数及びデータ検出用相関係数のいずれか一方の相関係数と入力信号の相関演算を行う演算部と、
前記制御部のモード切替指令により、前記演算部に対して、同期検出モードでは同期検出用相関係数を供給し、データ検出モードではデータ検出用相関係数を供給するよう前記両相関係数発生部を前記演算部に切替接続する係数切替部と、
前記演算部の演算結果を記憶して前記相関値出力として発生する相関値記憶部と、
を備える構成である請求項2〜6のいずれか1つに記載のスペクトル拡散通信装置。
【請求項8】
前記相関処理部は、互いに位相の異なる複数の同期検出用相関係数をそれぞれ発生する複数の前記同期検出用相関係数発生部と、各同期検出用相関係数による相関演算結果をそれぞれ記憶する複数の相関値記憶部とを有するスライディング相関器を備える構成であり、
同期検出モード時に、前記制御部により、前記同期検出用拡散系列の1周期毎に、同期検出用相関係数を切替制御し、全ての同期検出用相関係数による相関演算値を順次演算して記憶し相関値出力として発生する構成とした請求項2〜7のいずれか1つに記載のスペクトル拡散通信装置。
【請求項9】
前記相関処理部は、互いに位相の異なる複数の同期検出用相関係数をそれぞれ発生する複数の前記同期検出用相関係数発生部と、各同期検出用相関係数による相関演算結果をそれぞれ記憶する複数の相関値記憶部とを有するスライディング相関器を備える構成であり、
同期検出モード時に、前記制御部により、前記スライディング相関器における前記同期検出用拡散系列の1サンプリング周期以内に全ての同期検出用相関係数の切替えが終了するよう切替制御し、全ての同期検出用相関係数による相関演算値を順次演算して記憶し相関値出力として発生する構成とした請求項2〜7のいずれか1つに記載のスペクトル拡散通信装置。
【請求項10】
前記相関処理部は、互いに異なる複数のデータ検出用相関係数をそれぞれ発生する複数のデータ検出用相関係数発生部と、各データ検出用相関係数による相関演算結果をそれぞれ記憶する複数の相関値記憶部とを有するスライディング相関器を備える構成であり、
データ検出モード時に、前記制御部により、前記スライディング相関器における前記データ用拡散系列の1サンプリング周期以内に全てのデータ検出用相関係数の切替えが終了するよう切替制御し、全てのデータ検出用相関係数による相関演算値を順次演算して記憶し相関値出力として発生する構成とした請求項2〜9のいずれか1つに記載のスペクトル拡散通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−203354(P2006−203354A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10684(P2005−10684)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】