説明

スペクトル磁気粒子画像化

本発明は、トレーサ物質のMagnetic Particle Imaging(MPI)スペクトル応答の違いに基づく、MPIによる分光学的に異なるトレーサ物質の弁別に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粒子画像化(MPI)により検出できる造影剤と、前記造影剤の使用と、MPIによる前記造影剤の検出方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
MPI(Magnetic Particle Imaging)は、検査領域における磁性粒子のスペクトル分布を決定する方法を言う。一般的に、MPI法は、磁場強度が空間的コース(spatial course)を有する磁場の発生を要し、検査エリアでは、磁場強度が低い第1の粒子領域と、磁場強度が高い第2の粒子領域とが得られるようになっている。検査エリアにおける2つの粒子領域の空間的位置を変え、粒子の磁化が局所的に変わるようにする。記録される信号は、検査エリアの磁化に依存する。検査エリアにおける磁性粒子の空間分布に関する情報を求めるため、信号を評価する。
【0003】
MPI及びかかる方法に用いる構成に関する説明は、特許文献1にさらに詳しく説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0085703A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既知のMagnetic Particle Imaging法により、オブジェクト中のトレーサ物質の局所的集中分布を可視化する画像が得られるが、異なるタイプのトレーサ物質間の弁別はできない。そのため、現在のMagnetic Particle Imagingにより身体組織にわたる1つのトレーサ物質の集中又は分布に関する情報は(通常はグレイスケール画像により)示されるが、2つ以上のトレーサ物質による異なる組織タイプ間の弁別や、異なる機能エリアの検出はできない。
【0006】
それゆえ、本発明の目的は、上記の問題や制約を解消し、MPIのコンセプトを広げ、及び/又はMPIを用いて新しい診断を可能とする手段と方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の必要性又は目的の1つ以上を実現するため、第1の態様では、本発明は、Magnetic Particle Imaging(MPI)に適した、異なるMPIスペクトル応答を示し、MPIにより可視化又は弁別できる少なくとも2つの異なるトレーサ物質を含む造影剤に関する。基礎となるコンセプトにより、異なる組織タイプ、身体の機能エリア(例えば器官)、または異なるスペクトルMPI応答を示す少なくとも2つのトレーサ物質によりコントラストされたオブジェクトの弁別又は区別ができる。換言すると、本発明の発明者は、トレーサ物質が十分異なるMPIスペクトル応答を示せば、MPI法により例えば2つの異なるトレーサ物質を同時に検出することが可能であることを発見した。
【0008】
ここで「造影剤」との用語は、少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質の組み合わせを指す。本発明による造影剤は、少なくとも2つのトレーサ物質を含む1つの成分を表しても、又はそれぞれ少なくとも1つのトレーサ物質を含む少なくとも2つの成分よりなってもよい。換言すると、造影剤は、例えば少なくとも2つのトレーサ物質を含むタブレット、サスペンション、その他のデバイスであってもよいし、それぞれが少なくとも1つのトレーサ物質を含む少なくとも2つのコンポーネント(例えば、タブレット、サスペンション、インプラント、その他のデバイスから選択されたもの)の「キット」であってもよい。後者の場合、造影剤の成分は、検査されるオブジェクト又はターゲットエリアに、2つ以上の成分の同時挿入も含む任意の順序で輸送される。
【0009】
ここで「トレーサ物質」との用語は、MPIにより検出できる任意の物質を指し、例えば、医療デバイスに用いられる粒状物質、フィルム、フォイル物質などを含む。言うまでもなく、トレーサ物質も複数の成分により構成されていてもよい。トレーサ物質との用語は、トレーサ物質を修正したものと修正していない(そのままの)ものとを含む。
【0010】
ここで「分光学的に異なる」及び「異なるMPIスペクトル応答」とは、対応するトレーサ物質をMPIで検出することができ、少なくとも2つのトレーサ物質が異なるMPIスペクトル応答を示すことを意味する。MPIスペクトル応答の違いは粒子間の可視化又は弁別に十分であるものとする。
【0011】
本発明の好ましい一実施形態では、前記少なくとも2つの異なるトレーサ物質はある形状であり、前記少なくとも2つの異なるトレーサ物質の平均粒子サイズは少なくとも10nmだけ異なる。本発明では「平均粒子サイズ」とは、主な粒子サイズをいい、レーザ回折法やレーザ散乱により決定できる。粒状トレーサ物質は、好ましくは単分散の粒子サイズ分布を有する。
【0012】
他の好ましい一実施形態では、少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質の少なくとも1つのMPIスペクトルは、その少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質の他のトレーサ物質のMPIスペクトルと比較して、ノイズレベルの3倍より大きい少なくとも3つの、又は少なくとも5つの、又は少なくとも15個の、又は少なくとも33個の追加的ハーモニクスを示す。
【0013】
他の好ましい実施形態では、少なくとも2つの異なるトレーサ物質の少なくとも1つは、医療デバイスに含まれ、これは好ましくはインプラント、カプセル、タブレット、及び医療ツールよりなるグループから選択される。
【0014】
本発明によると、前記少なくとも2つの異なるトレーサ物質の少なくとも1つは、特定の物質(例えば、器官組織)に、好ましくは特定の組織に局在又は結合していることが好ましい。
【0015】
本発明の他の一態様によるシステムは、前記少なくとも2つのトレーサ物質の少なくとも1つは、酸化鉄であり、好ましくは粒状酸化鉄である。
【0016】
本発明の他の一態様は、異なるMPIスペクトル応答を示す少なくとも2つのトレーサ物質によりコントラストされた異なる物質又はオブジェクト間の可視化又は弁別のための、本発明の造影剤の使用に関する。
【0017】
第3の態様によると、本発明は、Magnetic Particle Imaging(MPI)により少なくとも2つの異なるトレーサ物質を弁別する方法であって、前記MPIプロセスは異なるMPIスペクトル応答を示す少なくとも2つのトレーサ物質を検出することにより行う、方法である。
【0018】
本発明の方法の特に好ましい一実施形態によると、上記方法は少なくとも次のステップを有する:
(i)少なくとも2つの異なるトレーサ物質を提供するステップと;
(ii)前記トレーサ物質をオブジェクトに輸送するステップと;
(iii)前記信号Sを取得するため前記オブジェクトをスキャンするステップと;
(iv)各トレーサ物質Xのシステム関数Gxを求めるステップと;
(v)画像を再構成するステップ。
【0019】
前記ステップ(v)は、前記システム関数
(外1)

の1つの行列
(外2)

への結合と、例えば単一値分解による、この行列の
(外3)

への反転とを含む。ステップ(v)は、次式を用いて前記局所的集中分布の決定を含み、
【数1】

ここで、
(外4)

は行列であり、前記オブジェクト中に検出されたトレーサ物質Xのすべての異なる局所的集中分布
(外5)

を結合したものであり、
(外6)

は各トレーサ物質Xの局所集中分布を指す。
【0020】
他の一態様では、本発明は、処理ユニットにより実行された時、上記の方法を実行するように構成された、プログラム要素を格納したコンピュータ読み取り可能媒体に関する。
【0021】
本発明の上記その他の態様を、以下に説明する実施形態を参照して明らかにし、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】MPIに必要な一般的なステップを示す図である。
【図2】MPIによる少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質を弁別するのに必要な本発明のステップを示す図である。
【図3】2Dオブジェクトと、1つのトレーサ物質を含むオブジェクトをスキャンする一般的なMPI法により再構成した、シミュレーションされたMPI画像とを示す図であり、図3aは(プレートに複数の穴を開け、30nm磁性酸化鉄粒子で満たした)2Dオブジェクトを示し、図3bはシミュレーションされたMPI画像を示す。
【図4】2Dオブジェクトと、本発明により再構成された、シミュレーションされたMPI画像とを示す図である。図4aは、プレートに複数の穴を開けて、左側の穴には30nm磁性酸化鉄粒子を含むトレーサ物質を満たし、右側の穴には40nm磁性酸化鉄粒子を含むトレーサ物質を満たした、2Dオブジェクトを示す。図4bは、30nm磁性酸化鉄粒子(左のP)と40nm磁性酸化鉄(右のP)を可視化した、シミュレーションされたMPI画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一態様では、MPI(Magnetic Particle Imaging)に好適な少なくとも2つの異なるトレーサ物質を含む造影剤を提供する。トレーサ物質は、本発明によるMPI法により弁別できるように、異なるMPIスペクトル応答を示す。かかる造影剤により生成される信号は、分光学的に異なるトレーサ物質に関して弁別できることが分かっている。すなわち、異なるトレーサ物質について得られた信号は、MPIスペクトル応答の違いに基づき区別できる。言い換えると、本発明は、対応するトレーサ物質から得られたMPI信号の弁別できる方法又はコンセプトを提供する。少なくとも2つのトレーサ物質を含む本発明の造影剤の使用により、1回の測定でより多くの情報を求め、より選択的な情報を取得することができる。
【0024】
本発明による検出原理は、磁場強度が空間的コース(spatial course)を有する磁場の発生を含み、検査エリアでは、磁場強度が低い第1の粒子領域と、磁場強度が高い第2の粒子領域とが得られるようになっている、既知のMPI測定又は検出原理に基づく。第1の粒子領域では、磁場が弱いので、粒子の磁化は外部磁場と多かれ少なかれ異なり、すなわち飽和していない。第2の粒子領域では(すなわち、第1の部分の外の検査エリアの残りの部分では)、磁場は粒子を飽和状態に保つくらい強い。ほとんどすべての粒子の磁化がおよそ外部磁場の方向に向いている時、磁化は飽和している。そのため、磁場をさらに強くしても、第1の粒子領域では対応して磁場が大きくなるが、第2の粒子領域では、大きくなる程度が非常に小さくなる。
【0025】
第1の部分領域は好ましくは空間的にコヒーレントな領域である。これは点状領域でもよいが、線状でも面状エリアでもよい。構成によって、第1の粒子領域は、第2の粒子領域に空間的に囲まれている。
【0026】
検査エリア内の2つの部分領域の位置を変えることにより、検査エリアの(全体的な)磁化が変化する。部分領域の空間的位置の変化は、例えば、磁場を時間的に変化させることにより行える。検査エリアにおける磁化又はそれにより影響を受ける物理的パラメータを測定すると、検査エリアにおける磁性粒子の空間分布に関する情報を求めることができる。
【0027】
この目的を達成するために、例えば、検査エリアにおける磁化の時間的変化により少なくとも1つのコイルに生じる信号を受け取り、評価する。時間的に変化する磁場が第1の周波数帯域で検査エリアと粒子とに作用し、コイルにより受け取られる信号に作用する場合、第1の周波数帯域の信号より高い周波数成分を含む信号のみを評価する。粒子の磁化特性は通常は線形ではないので、これらの測定信号が生成される。
【0028】
このように、既知のMPI画像化コンセプト又はMPI手順は、一般的に、次の3つのステップを含む:
1.)オブジェクトスキャン−視野(FOV)にわたりオブジェクトで生成される信号Sの取得、
2.)リファレンススキャン−システム関数Gを取得できる、
3.)画像再構成−オブジェクト中の実際のトレーサ集中分布の導出。
【0029】
上記のステップを図1に例示した。検査するオブジェクト中のトレーサ物質の信号Sのスキャン又は測定と、対応するシステム関数Gの決定と、パラメータGとSを用いた画像再構成を含む上記のMPI法の結果により、感度の高いホットスポットグレイスケール画像が得られる。グレイスケールは、磁性トレーサ物質の局所的集中に関する数量的情報を表す。取得したMPI信号の評価は、例えばJ. Weizenecker et al(Physics in Medicine and Biology 2007, vol. 52, pages 6363-6374)により詳しく説明されている。対応する方法も、適用可能であれば、本発明の方法に適用することができる。
【0030】
本発明によると、少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質を含む本発明の造影剤を使用する方法が提供される。磁性粒子画像化により少なくとも2つの異なるトレーサ物質を可視化する本発明の方法は、MPIスペクトル応答が異なる少なくとも2つのトレーサ物質を検出することにより、実行される。本発明の方法は、少なくとも以下のステップを有する:
(i)少なくとも2つの異なるトレーサ物質を提供するステップと;
(ii)前記トレーサ物質をオブジェクトに輸送するステップと;
(iii)前記信号Sを取得するため前記オブジェクトをスキャンするステップと;
(iv)各トレーサ物質のシステム関数Gを求めるステップと;
(v)画像を再構成するステップ。
【0031】
言うまでもなく、これらのステップは、状況により決まらない限り、どんな順序で実行してもよく、1つのステップに含まれる複数のアクションを中断無く実行する必要はない。例えば、システム関数Gを求めるステップは、オブジェクトスキャンの前にいつ実行してもよく、残りのシステム関数の取得はオブジェクトスキャンの後にいつ実行してもよい。この方法により、複数の分光学的に異なるトレーサ物質の間の弁別が可能になる。より正確に言うと、本発明の方法により、少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質の局所的な集中分布を決定できる。以下、本発明の方法と本発明の造影剤とに好適な物質と、本発明に使用できる技術的詳細とパラメータとを説明する。
【0032】
ステップ(i)と(ii):
上記の通り、本発明は、分光学的に異なるトレーサ物質をMPIにより可視化又は弁別できるという発見に基づく。本発明による少なくとも2つのトレーサ物質は、本発明の造影剤の一部である。以下、ステップ(i)により提供されるトレーサ物質を説明する。ステップ(ii)によるトレーサ物質は、関心オブジェクトに輸送される。
【0033】
本発明の一実施形態は、人体やその一部などのオブジェクト又はその一部内で検出される少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質の組み合わせに関する。本発明に基づき、特定のMPI手順や診断目的などに必要に応じて、組み合わせることができる分光学的に異なるトレーサ物質を含む造影剤成分のモジュラシステムを提供することができる。
【0034】
このように、本発明の一実施形態は、少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質がその修正について異なる造影剤に関する。これにより、人体や動物の身体などの検査するオブジェクト内のトレーサ物質の分布に関する選択が可能となる。
【0035】
例えば、少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質のうちの1つ以上のトレーサ物質は、測定中、医療デバイスや人又は動物の身体の特定領域を形成し、それに限定され、又はそこに局在する。測定中、トレーサ物質はかかる医療デバイスに固定されても、測定前、測定中、及び/又は測定後にその医療デバイスから解放されてもよい。あるいは、医療デバイスがトレーサ物質によりできていてもよい。かかるデバイスからの解放は、拡散、溶解、その他のメカニズムに基づく。ここで解放は、外的刺激又は環境から独立でも、ほぼ独立でもよい。あるいは、特定の温度やpH値などの外的刺激により制御されてもよい。一実施形態では、オブジェクトが人又は動物の身体又はその一部であるとき、造影剤を構成する本発明のトレーサ物質は、デバイス、特に医療デバイスに固定されている。ここで「医療デバイス」とは、カプセル、インプラント、又は医療ツールなどの医療で用いるデバイスを指す。ここで「インプラント」とは、人又は動物の身体に移植される医療デバイスを指す。インプラントは、血管内人工器官、腔内人工器官、冠状動脈ステント、周辺ステントなどのステント、外科的、歯科、又は整形外科インプラント、インプラント可能整形外科固定エイド、整形外科人工骨又は人工関節、人工心臓又はその一部、人工心臓弁、心臓ペースメーカーケーシング又は電極、皮下及び/又は筋肉内インプラント、インプラント可能薬剤輸送デバイス、マイクロチップ、インプラント可能外科針、ネジ、びょう(nail)、クリップ、ステープル、シードインプラントなどを含むが、これに限定されない。一般的に、インプラントは、ポリマー、セラミック、又は金属の固体材料でできている。トレーサ物質の輸送又は解放を可能にするため、インプラントは多孔質面で、又は浸透性材料を用いてできていてもよい。この場合、トレーサ物質は生体中で解放するために、細孔系に含まれている。
【0036】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの分光学的に異なるトレーサ物質がコーティングされ、外側コーティングの表面が機能化されている造影剤に関する。少なくとも1つの分光学的に異なるトレーサ物質を修正することにより、その分光学的に異なるトレーサ物質を特定環境で使えるようになり、及び/又は分光学的に異なるトレーサ物質が局在する又は制約される材料に関して、特定の選択制を提供する。
【0037】
本発明の一実施形態では、造影剤は少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質を含み、これらのトレーサ物質は空間的に異なる関心位置に集まる。これにより、複数のトレーサ物質から発する信号が重ならない又は少なくともほとんど重ならないので、分光学的に異なるトレーサ物質をより容易に弁別できる。
【0038】
他の実施形態では、トレーサ物質は粒子状であり、粒子サイズは1乃至10,000nm、1乃至400nm、1乃至50nm、3乃至2000nm、3乃至500nm、10乃至2000nm、10乃至500nm、10乃至50nm、15乃至2000nm、15乃至100nm、15乃至50nm、20乃至400nm、20乃至2000nm、20乃至100nm、又は20乃至50nmの範囲にあり得る。言うまでもなく、上記の範囲は単に具体的な実施形態であり、当業者は具体的なシステムにおいて使用するため、スキャンするオブジェクトの物理的及び/又は化学的な特性などの具体的なシステムの一般的な知識を組み合わせた本発明に基づいて、他の、追加的な、又はより具体的な範囲を選択することができる。オブジェクト内で分散するトレーサ物質を含む造影剤は、例えばシステムの物理的特性により制限され得る。かかる粒子が例えば人体の血流中で分散しなければならないとき、これらの粒子の全体的なサイズは、通過しなければならない毛細血管の最小径により制限される。それゆえ、粒子が血流により人体中に分散しなければならないとき、かかる粒子の全体直径は、好ましくは2μmより小さく、より好ましくは1.5μmより小さく、さらに好ましくは1μmより小さい。
【0039】
具体的な実施形態は、磁性応答が非常に異なりトレーサ物質の弁別が容易になる分光学的に異なるトレーサ物質の組み合わせに関する。2つのトレーサ物質が「分光学的に異なる」かどうかは、a)それぞれのトレーサ物質又は物質のMPIスペクトルを取得し(AとB)、b)基本周波数の3dハーモニクスによる求めたスペクトルを規格化し、c)トレーサB(A)の場合に、ノイズレベルの約3倍より大きい追加的な複数のハーモニクスがあるか検証することにより、測定できる。好ましくは、少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質の少なくとも1つのMPIスペクトルは、その少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質の他のトレーサ物質のMPIスペクトルと比較して、ノイズレベルの3倍より大きい少なくとも3つの、又は少なくとも5つの、又は少なくとも15個の、又は少なくとも33個の追加的ハーモニクスを示す。好ましくは、対応する信号はハーモニクスの信号強度に10%の違いがある。
【0040】
本発明の他の実施形態は、対応する分光学的に異なるトレーサ物質が粒子である場合、粒子サイズの差が、少なくとも1nmの、少なくとも2nmの、少なくとも3nmの、少なくとも4nmの、少なくとも5nmの、少なくとも6nmの、少なくとも7nmの、少なくとも8nmの、少なくとも9nmの、少なくとも10nmの、少なくとも11nmの、少なくとも12nmの、少なくとも13nmの、少なくとも14nmの、少なくとも15nmの、少なくとも16nmの、少なくとも17nmの、少なくとも18nmの、少なくとも19nmの、少なくとも20nmの、少なくとも21nmの、少なくとも22nmの、少なくとも23nmの、少なくとも24nmの、少なくとも25nmの、少なくとも26nmの、少なくとも27nmの、少なくとも28nmの、少なくとも29nmの、少なくとも30nmの、少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質を含む造影剤に関する。発明者は、必要なMPIスペクトル応答の差は、サイズが異なる粒子状トレーサ物質を用いることで達成できることを見つけた。
【0041】
上記の実施形態を個別に又は組み合わせて用いて好ましい実施形態を構成することができる。
【0042】
トレーサ物質は、当業者に知られた好適な物質でできていてもよい。トレーサ物質は、磁性材料により、好ましくは、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マンガンなど、又はこれらの化学的誘導体により構成され得る。本発明により好ましいと想定される典型的な誘導体は、合金や金属酸化物であり、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、又はマンガンの合金又は酸化物、又はこれらの組み合わせである。特に好ましいのは、一般的にFeと特定される鉄の酸化物であり、例えばFeやFeなどである。また、本発明に含まれるものとして、フェライト材料やドーピングした材料があり、例えばコバルト、ニッケル、亜鉛、マンガン:Feである。好適なトレーサ物質には、市販されているResovist und Endoremがある。
【0043】
好ましくは、トレーサ物質に含まれる磁性物質は、単一磁性ドメイン及び/又はワイスゾーンを有する。
【0044】
一実施形態では、少なくとも1つの分光学的に異なるトレーサ物質は、特定の物質に局在又は製薬されているときのみ、MPIにより検出できるトレーサ物質である。 他の一実施形態では、少なくとも1つの分光学的に異なるトレーサ物質は、特定の物理的及び/又は化学的要件が満たされたときに、MPIによりよく検出できるトレーサ物質である。物理的要件の例としては温度がある。化学的要件の例としては、pH値や特定の化合物の存在がある。これにより、特定の物質の検出や、対応する要件を満たす特定の関心エリアの検出が可能になる。
【0045】
本発明で利用するトレーサ物質は、様々な方法で修正できる。これにより、トレーサ物質の特性を特定の要件に合わせることができる。例えば、コーティングにより特定の環境に対する抵抗ができる。例えば、薬学的に認められたシェルにより、人や動物の身体にトレーサ物質をそのまま使うと発生する副作用を防止できる。例えば、機能化により、修正したトレーサ物質を、人体の特定の組織などの特定の物質に局在させ、又は制約させることができる。
【0046】
一実施形態は、表面を少なくとも部分的に覆うコーティング領域を有するトレーサ物質に関する。コーティングは、コーティング中のイオン電荷や立体障害からの静電気反発を含む異なる力の組み合わせにより、粒子クラスタの形成が防止されるように、生体適合性があるもの、すなわち生分解性及び/又は生安定性のものであってもよい。結果として、トレーサ物質の生産、貯蔵、及び利用の際に、コロイド安定性を保つことができる。別の実施形態では、検出中に磁性粒子の環境に関する情報を集めることができる。特に、例えば、磁性粒子の環境が所定温度を越えると、コーティング領域が粒子から取れるように、コーティング領域を設けることができる。ここで「生体適合性」とは、対応するラベル付けされた物質が生物系に有毒な影響や有害な影響を与えないという特徴を言う。ここで「生分解性」とは、身体で使える、及び/又は腎臓で除去できる小さい単位に物質が分解する特徴を言う。生分解性有機物質の例としては、コラーゲン、セルロース、シリコン、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリオルトエステル、又はポリ無水物などのポリ(アルファエステル)などの自然の又は人工的なポリマーがある。
【0047】
一実施形態では、生分解性物質はヒドロゲルである。ヒドロゲルは、広い範囲の分解時間を有する生分解性にでき、これは例えば再生医療、細胞療法アプリケーション、薬学的活性エージェントの制御された放出などで有用である。生分解性無機物質の例としては、金属や、マグネシウムや亜鉛の少なくとも一方に基づき合金や、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛、アルミニウム、タングステン、ランタノイド(Ln)、シリコン、イットリウムのうち少なくとも1つを含む合金などがある。同様に好適なものとしては、アルカリ土類金属酸化物や水酸化物、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、又はこれらの混合物などがある。本発明の一実施形態では、生体適合製品は、無機合成物、有機合成物、又は無機合成物と有機合成物のハイブリッドなどがある。
【0048】
特定の実施形態は、薬学的特性の修正に関し、特に、薬学的に認められたシェルを用いて、そのままのトレーサ物質により生じる副作用を防止するものに関する。薬学的に認められたシェルには、例えば、合成ポリマーや共重合体、デンプンやその派生物、デキストランやその派生物、シクロデキストランやその派生物、脂肪酸、ポリサッカリド、レシチン、モノグリセリン、ジグリセリン、又はトリグリセリン又はその派生物、細胞のカプセル化、又はリポソームカプセル化がある。
【0049】
言うまでもなく、場合によっては、「コーティング」及び「薬学的に認められたシェル」との用語は交換可能である。
【0050】
特定の実施形態は、例えば検査エリア中の目標分子に又は複数の目標分子に反応する目標リガンドで機能化されたトレーサ物質に関する。トレーサ物質は、好ましくは、目標分子に制約されて回転モビリティが下がっており、少なくとも1つの目標リガンドは、好ましくは生物学的なエンティティであり、特にアミノ酸やポリペプチドや核酸であり、目標分子は好ましくは生物学的なエンティティであり、特にエンザイムや核酸や抗体である。かかる機能化を利用して、例えば、トレーサ物質の、人又は動物の身体の不安定プラークなどのプラークや特定の器官との選択的結合を実現できる。他の例として、インプラントに局在する又は結びつく機能化がある。本発明の場合、「リガンド」はある物質を10μMより小さい、好ましくは1μMより小さい、500nMより小さい、200nMより小さい、100nMより小さい、30nMより小さい、又は20nMより小さいIC50と結びつける物質である。先行技術では、リガンド(IC50又はその他のパラメータ)のある物質との結合親和性を決定する複数の方法が知られている。これらの方法には、例えば、Gazal S. et al, J. Med. Chem. 2002, 45: 1665-1671に記載されている、ELISA、表面プラズモン共鳴、及びラジオリガンド結合分析法などがあるが、これらに限定されない。他の機能化は、親水性、脂溶性、疎水性及び/又は疎油性特性などの、トレーサ物質のより一般的なパラメータに主に影響する。
【0051】
言うまでもなく、当業者にはさらに別の可能性のある修正が分かり、すべての修正を組み合わせて本発明の目的に適用できる。
【0052】
ステップ(iii)と(iv):
以下、(iii)信号Sを求めるためオブジェクトをスキャンするステップと、(iv)各トレーサ物質のシステム関数Gを取得するステップを詳しく説明する。標準的なMPI手順に関して上記した詳細と説明も参照する。分光学的に異なる磁性応答を示すトレーサ物質を弁別する方法を実行するため、又は本発明の造影剤を利用するため、上記の標準的MPI機器を用いることができる。換言すると、既知の標準的な手順により信号Sを測定又は検出できる。ここで「S」とは、視野にわたるトレーサ物質の局所的集中的分布の結果得られる信号を言う。ステップ(iii)による上記のオブジェクトスキャンは、磁性応答が異なる少なくとも2つのトレーサ物質である本発明の造影剤を含むオブジェクトをスキャンするものであるが、その外に、ステップ(iv)により、「リファレンススキャン」を実行する。本発明の方法では、上記のリファレンススキャンはステップ(iii)で利用する各トレーサ物質に対して行われる。一般的に言って、リファレンススキャンによりシステム関数Gを取得できる、上記Gをいかに求めるかは当業者には周知である。システム関数Gは、視野にわたりステップ状に動かしたトレーサ物質の点状の限定へのMPIスキャナの応答を表す。本発明では、複数のシステム関数Gxを決定する。より正確には、ステップ(iii)で用いる各トレーサ物質について、1つのシステム関数Gxを求めねばならない。それぞれのトレーサ物質に対して1つずつ、対応するリファレンススキャンを実行する。ここで「Gx」とは、特定のシステム関数を言い、ここでXは、対応する物質に関する。システム関数は、トレーサ物質Xで満たされた点状オブジェクトが視野にわたり動く結果としてスキャナで生じる(周波数領域の)信号を表すMPIスキャナシステムのデルタ応答を示す。
【0053】
ステップ(v):
本発明の方法のステップ(v)において、画像再構成を実行する。本発明の方法による画像再構成を生成するために、ステップ(iv)で求めたシステム関数Gxを、1つの行列[GA GB ・・・]にまとめる。本発明によるこの行列を、好ましくは単一値分解を用いて、反転する。次の式により、逆行列から、トレーサ物質の特定の局所集中分布を決定する又は求めることができる:
【数2】

ここで
(外7)

とは、局所的集中分布を言い、ここでXは、対応する物質に関する。ここで
(外8)

とは、すべての異なるトレーサ集中分布を結合した行列を指す。結果として得られる再構成画像はグレイスケール画像であり、又はカラー画像として表示してもよい。グレイスケール又はカラースケールは、磁性トレーサ物質の局所的集中に関する数量的情報を表す。対応する画像の例を図4に示した。
【0054】
当業者には、好適な画像の取得と、視野(FOV)、フィールド傾斜、フィールド振幅、規則化パラメータλなどの再構成パラメータを、ノイズモデルがある又は無いシミュレーションのために、どう調整するか分かる。2つの造影剤のシステム関数は、例えば、20×20mmの視野(FOV)で、100×100である。再構成に利用するハーモニクスは5000(コイル当たり2500)である。フィルタリングはシステム関数の最も高い平均強度に基づく。水平方向の好適なフィールド傾斜は2.5T/mであり得る。利用するフィールド振幅は20mTである。λは10−22乃至10−26の範囲である。
【0055】
本発明により提供される発明コンセプトにより、1つのトレーサ物質のみを用いた従来のMPI手順では実現できない測定及び診断手順が可能になる。本発明によるトレーサ物質を用いて、特に高い空間的解像度で特定の物質を検出し位置特定できるので、一実施形態では、増殖性疾患の診断に、特にかかる疾患の早期段階の診断に利用できる。増殖性疾患には、例えば腫瘍や前癌状態が含まれる。
【0056】
本発明により診断できる疾病には、リュウマチ、関節炎、炎症性大腸炎、変形性関節症、神経因性疼痛、円形脱毛症、乾癬、乾癬性関節炎、急性膵炎、同種移植の拒絶反応、アレルギー、肺のアレルギー性炎症、多発性硬化症、アルツハイマー病、クローン病、全身性エリテマトーデスよりなるグループから選択した自己免疫性疾患が含まれる。
【0057】
本発明の一実施形態は、MPIスペクトル応答における差に基づき、MPIを用いて少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質を含む被スキャンオブジェクト中の少なくとも1つの分光学的に異なるトレーサ物質の局所的集中分布を決定する方法に関する。これにより、特定のトレーサ物質の分布に関する被スキャンオブジェクトの検査が可能になる。他の実施形態は方法に関し、この方法は、少なくとも1つの分光学的に異なるトレーサ物質に関する、対応する局所的集中分布を福間なり局所的集中分布の決定を含む。
【0058】
本発明の他の実施形態では、造影剤は、オブジェクト中で分散する少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質を含み、少なくとも1つの分光学的に異なるトレーサ物質は、特定の物質に局在し、又は結合し、少なくとも1つの分光学的に異なるトレーサ物質は、その分布に基づき基準点として用いることができる。これにより、特定の物質、好ましくは特定の組織、特に病理組織を、同時にその位置を特定しながら、検出することができる。これは、例えば、不安定プラークなどのプラークに結合するトレーサ物質と、血流にのこる他のトレーサ物質とを組み合わせることにより、不安定プラークなどのプラークの位置特定に使える。上記の通り、本発明の造影剤に含まれるトレーサ物質を「アクティブ」及び「パッシブ」なターゲティングに用いることができる。すなわち、トレーサ物質を修正して、目標領域に(アクティブに)結合するようにコーティングすることができ、または修正せずにパッシブターゲティングに用いることができる。
【0059】
さらに他の実施形態では、造影剤は、少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質を含み、少なくとも1つの分光学的に異なるトレーサ物質はオブジェクト中で分散し、少なくとも1つの分光学的に異なるトレーサ物質はデバイス、特に医療デバイスに固定され、またはそのデバイスを構成する。これにより、例えば、カプセル、因プラント、又は医療ツールなどの医療デバイスの位置を特定でき、MPIにより得られた情報を非侵襲的介入に用いることができる。例えば、少なくとも1つの分光学的に異なるトレーサ物質を有するカテーテルなどのインプラントと、循環している血液などの周囲の物質に局在し又は結合する少なくとも1つの分光学的に異なるトレーサ物質とを組み合わせることにより。
【0060】
本発明の方法により、癌や循環器(CV)疾患の診断が可能になるだけでなく、カテーテル、ステント、及びその他の人工的構成物やデバイスの可視化ができる。
【0061】
本発明の別の実施形態では、処理ユニットにより実行された時、ここに記載した本発明の方法のどれかを実行するように構成された、プログラム要素を格納したコンピュータ読み取り可能媒体が提供される。本発明はさらに上記の方法及び/又はその実施形態を実行するコンピュータプログラムに関する。特に、処理ユニットにより実行された時、上記の方法を実行するように構成された、プログラム要素を格納したコンピュータ読み取り可能媒体に関する。
【0062】
「a」、「an」、「the」などの不定冠詞や定冠詞を単数名詞と共に用いたが、これは特に断らなければ、そのものが複数の場合も含む。
【0063】
ここで「comprising」との用語は、その後に列挙された手段に限定されると解釈すべきではなく、他の要素やステップを排除するものではない。
【0064】
言うまでもなく、組み合わせられないことが明らかでないかぎり、ここに説明した1つの特定の実施形態、複数の実施形態の組み合わせ、又はすべての実施形態の組み合わせを選択して特定の好ましい実施形態を実現できる。この場合、当業者は、互いに排他的な実施形態を用いることができ、特に好ましい実施形態を選択できる。さらに言うまでもなく、相異なる従属クレームに手段が記載されているからといって、その手段を組み合わせて有利に使用することができないということではない。
【0065】
また、言うまでもなく、本発明を実施形態を参照して詳しく説明したが、上記の実施形態は例示であって、限定するものではなく、本発明は開示の実施形態に限定されない。請求項に記載した発明を実施する際、本開示、及び添付した特許請求の範囲を研究して、開示した実施形態のバリエーションを、当業者は理解して実施することができるであろう。
【0066】
実施例
比較例30nm磁性酸化鉄粒子を用いて、磁性酸化鉄粒子の局所的集中分布を決定するシミュレーション研究
この画像シミュレーション研究では、1つのトレーサ物質を用いた典型的なMPI法を用いて、30nm磁性酸化鉄粒子の局所的集中分布を決定する。2次元オブジェクトと再構成されたMPI画像を図3に示す。シミュレーションパラメータは:
オブジェクト:1mm径の8つのシリンダにより各文字(「P」)を構成した。
ノイズが無いモデルでシミュレーションを実行した。
システム関数:20×20mmの視野(FOV)で100×100。
再構成に用いたハーモニクス:5000(1コイルあたり2500)
(フィルタリングはシステム関数の最も高い平均強度に基づく)
フィールド傾斜:2.5T/m(水平方向)
フィールド振幅:20mT
λ=10−25。
【0067】
実施例1:30nmと40nmの磁性酸化鉄粒子を用いて、磁性酸化鉄粒子の局所的集中分布を決定するシミュレーション研究
この画像シミュレーション研究では、2つのタイプの粒子が含まれる:直径が30nmと40nmのランジュバン関数により記載される粒子。取得したデータは本発明の方法を用いて処理された。2次元オブジェクトと再構成されたMPI画像を図4に示す。局所的集中分布とシステム関数を上記の仕様によりラベル付けする。インデックス30と40は対応する粒子のサイズを表す。次式を用いて信号Sを計算できる。
【数3】

ここで[.. ..]は位置iの方向に沿った連結を示す。システム関数については、離散的位置i=100×100を用いる。考慮するスペクトル成分の数は5000(両方の行列で同じ成分がある)である。これにより、行列
(外9)


(外10)

のサイズは10000×5000であり、1つの行列
(外11)

のサイズは20000×5000であり、
(外12)

の長さは5000である。
(外13)

(長さ20000のベクトル)の再構成は次式で行える
【数4】

ここで、逆行列はSVDを用いて行う。
シミュレーションパラメータは比較実施例と同じである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Magnetic Particle Imaging(MPI)に適した、異なるMPIスペクトル応答を示す少なくとも2つの異なるトレーサ物質を含む造影剤。
【請求項2】
前記少なくとも2つの異なるトレーサ物質の少なくとも1つが医療デバイスに含まれる、請求項1に記載の造影剤。
【請求項3】
前記医療デバイスはインプラント、カプセル、タブレット、及び医療ツールよりなるグループから選択される、請求項2に記載の造影剤。
【請求項4】
前記少なくとも2つの異なるトレーサ物質の少なくとも1つは、特定の物質に、好ましくは特定の組織に局在又は結合した、請求項1乃至5いずれか一項に記載の造影剤。
【請求項5】
前記少なくとも2つの異なるトレーサ物質はある形状であり、前記少なくとも2つの異なるトレーサ物質の平均粒子サイズは少なくとも10nmだけ異なる、請求項1乃至5いずれか一項に記載の造影剤。
【請求項6】
少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質の少なくとも1つのMPIスペクトルは、その少なくとも2つの分光学的に異なるトレーサ物質の他のトレーサ物質のMPIスペクトルと比較して、ノイズレベルの3倍より大きい少なくとも3つの、又は少なくとも5つの、又は少なくとも15個の、又は少なくとも33個の追加的ハーモニクスを示す、請求項1乃至5いずれか一項に記載の造影剤。
【請求項7】
前記少なくとも2つのトレーサ物質の少なくとも1つは、酸化鉄であり、好ましくは粒状酸化鉄である、請求項1乃至6いずれか一項に記載の造影剤。
【請求項8】
異なるMPIスペクトル応答を示す前記少なくとも2つのトレーサ物質によりコントラストされた、異なる物質又はオブジェクトの可視化、又は弁別をするための、請求項1乃至7いずれか一項に記載の造影剤の使用。
【請求項9】
Magnetic Particle Imaging(MPI)により少なくとも2つの異なるトレーサ物質を弁別する方法であって、前記MPIプロセスは異なるMPIスペクトル応答を示す少なくとも2つのトレーサ物質を利用することにより行う、方法。
【請求項10】
少なくとも、
(i)少なくとも2つの異なるトレーサ物質を提供するステップと;
(ii)前記トレーサ物質をオブジェクトに輸送するステップと;
(iii)前記信号
(外1)

を取得するため前記オブジェクトをスキャンするステップと;
(iv)各トレーサ物質Xのシステム関数
(外2)

を求めるステップと;
(v)画像を再構成するステップと
を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(v)は、前記システム関数
(外3)

の1つの行列
(外4)

への結合と、この行列の
(外5)

への反転とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(v)は、次式を用いて前記局所的集中分布の決定を含み、
【数1】

ここで、
(外6)

は行列であり、前記オブジェクト中に検出されたトレーサ物質Xのすべての異なる局所的集中分布
(外7)

を結合したものである、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも2つの異なるトレーサ物質は、請求項1乃至7いずれか一項に記載の造影剤を含む、請求項9乃至12いずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
処理ユニットにより実行された時、請求項9乃至13いずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたプログラム要素を格納したコンピュータ読み取り可能媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2013−508267(P2013−508267A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533721(P2012−533721)
【出願日】平成22年10月11日(2010.10.11)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054578
【国際公開番号】WO2011/045721
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】