スペクトル解析方法,スペクトル解析装置
【課題】 スペクトルの半値幅を用いずに,スペクトルの面積に基づいて被解析層の厚さを解析することにより,解析処理の迅速化,解析処理にかかる時間の短縮化,解析精度の向上を図ること。
【解決手段】 単層或いは複数層からなる試料にイオンビームが照射されることによって上記試料で散乱した散乱粒子のエネルギースペクトルに基づいて,上記試料の深さ方向の組成分布の解析を行うよう構成されており,被解析層に相当するエネルギースペクトルが単独で出現するときの散乱角度(特定散乱角度)へ散乱した散乱粒子のエネルギーを実測し,この実測により得られた実測エネルギースペクトルに単独で出現する上記被解析層の単独エネルギースペクトルを抽出し,そして抽出された上記単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積に基づいて上記被解析層の厚さを算出する。
【解決手段】 単層或いは複数層からなる試料にイオンビームが照射されることによって上記試料で散乱した散乱粒子のエネルギースペクトルに基づいて,上記試料の深さ方向の組成分布の解析を行うよう構成されており,被解析層に相当するエネルギースペクトルが単独で出現するときの散乱角度(特定散乱角度)へ散乱した散乱粒子のエネルギーを実測し,この実測により得られた実測エネルギースペクトルに単独で出現する上記被解析層の単独エネルギースペクトルを抽出し,そして抽出された上記単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積に基づいて上記被解析層の厚さを算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ラザフォード後方散乱分光法等におけるスペクトル解析技術に関し,特に,単層或いは複数層からなる試料で散乱した散乱粒子のエネルギースペクトルを測定することにより上記試料の深さ方向の組成分布の解析を高精度に行うスペクトル解析方法及びスペクトル解析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,半導体技術や結晶性薄膜技術等の分野では,単層或いは複数層からなる膜構造の半導体デバイス等の試料を分析する手法として,周知のラザフォード後方散乱分光法(以下,RBS法,RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や反跳粒子検出法(以下,ERD法,ERD:Elastic Recoil Detection)等に代表される種々の試料分析方法が用いられている。
上記RBS法を用いて,深さ方向の組成分布が未知の試料の濃度解析を行う具体的な手法としては,特許文献1に記載のフィッティング法がある。このフィッティング法は,試料の深さ方向の組成分布に関する予め仮定された仮定分布を変化させつつ理論エネルギースペクトル(以下,理論スペクトルという)を計算し,この計算された理論スペクトルと,上記RBS法を利用したRBS分析装置により実測されたエネルギースペクトル(以下,実測スペクトルという)とを比較し,両者が一致するような上記仮定分布を試行錯誤的に探索することによって試料の深さ方向の組成分布を決定する手法である。なお,かかる手法は,組成分布が未知の試料に限られず,既知の試料における特定層の層厚解析にも適用される。
しかしながら,上記フィッティング法では,解析実施者等の知見や経験或いは技能に基づいて感覚的に,上記理論スペクトルと上記実測スペクトルとが一致する仮定分布の探索が行われるため,解析自体に人的能力が介入する。そのため,個人差により,解析速度,解析時間,解析精度にばらつきが生じることになる。
【0003】
ところで,近年,上記フィッティング法を用いることなく,試料の深さ方向の組成分布を効果的に解析することのできる高分解能試料分析装置が開発され,特許文献2,3及び非特許文献1等の多くの文献に掲載されている。
ここで,図1及び図2を用いて上記高分解能試料分析装置の一例である高分解能RBS分析装置(以下,HRBS分析装置という)Aの構成及び機能の概略について簡単に説明する。ここに,図1はHRBS分析装置Aの概略構成を示す全体図,図2はHRBS分析装置Aの各構成要素を模式的に示した模式図である。
図1及び図2に示すように,上記HRBS分析装置Aは,イオンビーム発生装置Xと,ウィーンフィルタY及びスリット7(図2)と,四重極レンズ11と,分析対象である試料2を配置する真空容器3と,上記試料2の表面から散乱する散乱イオン(散乱粒子の一例)のエネルギースペクトルを測定する電磁石スペクトロメータZとを具備して概略構成される。尚,図1中の21は試料の載置位置を変更して試料へのイオンビームの入射方向を変化させるゴニオメータ,22は上記真空容器3内に試料を出し入れするトランスファーロッドである。
上記イオンビーム発生装置Xは,ボンベ15より供給されるガス(例えば,ヘリウムガス)を用いてイオン源12によって生成された軽イオンを,コッククロフト型高電圧回路14から供給される高電圧により加速管13内で一定エネルギーに加速した後に照射する。上記ウィーンフィルタY及び上記スリット7は,上記イオンビーム発生装置Xにより加速され照射されるイオンビーム1から特定のイオン種のみ(例えばヘリウム一価イオン)を抽出する。ここで,上記ウィーンフィルタYは,通過するイオンに対して,磁極17,コイル18,及びリターンヨーク19で発生する磁場による偏向作用(イオンの運動量に比例)と,平行電極20で発生する電場による偏向作用(イオンのエネルギーに比例)とが,互いに反対方向に働くように構成されたフィルタであり,上記イオンビーム1のうち特定のイオン種(例えばヘリウム一価イオン)のみを直進させると共に,それ以外のイオン種(例えばヘリウム二価イオン,水素原子イオン等)の軌道を曲げる特性を有するものである。上述した上記ウィーンフィルタYの特性により,分析に利用される特定のイオン種以外のイオン種は,該ウィーンフィルタYのイオンビーム入射方向下流に設けられ,直進するイオンのみが通過できるように設定された上記スリット7を通過できずに除去される。このようにして特定のイオン種のみが抽出された上記イオンビーム1が,上記スリット7のイオンビーム入射方向下流に設けられた上記四重極レンズ11により集束され,所定のビームスポットにより上記試料2表面に照射される。上記試料2表面に照射された上記イオンビーム1は上記試料2表面で散乱され,その散乱イオンのうち,一部の散乱イオンが電磁石スペクトロメータZに入射される。ここで,該電磁石スペクトロメータZは,通過する散乱イオンを,コイル4,リターンヨーク5,及び磁極6で発生する磁場により,その散乱イオンのエネルギーに応じて偏向した後に検出素子8に対して導くものである。上記検出素子8はシリコン或いはゲルマニウム等の半導体を利用したエネルギー敏感型のイオン検出器であり,複数のチャネルを有する。この検出素子8において上記複数のチャネルに散乱イオンが飛び込んだ位置(磁場による偏向量)が検出されると,その検出信号が図示しないコンピュータ(又はシミュレータ装置)に送信され,そこで散乱イオンのカウント数が計数される。このように検出された位置及び計数されたカウント値は,上記コンピュータにおいて上記試料2の表面や内部から散乱する散乱イオンのエネルギースペクトルの算出(測定)に供される。
【0004】
次に,図3を用いて,測定された散乱イオンのエネルギースペクトルに基づいて試料の厚さ等の組成分布を解析する従来の解析手法の基本原理について説明する。なお,図3では,試料2は表面から質量M1の重元素Pからなる層21と,質量M2の軽元素Qからなる層22とが積層された二層構造の薄膜とする。ここに,図中の23(斜線部分)は試料を保持するシリコン基板を示す。
イオンビーム発生装置Xから試料2に向けて出射されたイオン30(以下「入射イオン」という)が試料2に照射して試料2内の成分原子(組成元素)とが衝突した場合,この衝突はほとんど弾性散乱とみなすことができる。したがって,例えば,図3に示すように,エネルギーE0,質量mの入射イオン30が試料2の層21の表面にある元素Pと衝突し,散乱角(検出角)φの方向へ弾性散乱して跳ね返されると,この跳ね返された散乱イオン30sの持つエネルギーEsは,運動量保存の原則から次式(1)で与えられる。
【数1】
ここで,Kはkinematic factor(以下「Kファクター」と称す。)と呼ばれ,入射イオン30の衝突時におけるエネルギーロスの割合を示す係数である。なお,このKファクターは入射イオン30の質量mと衝突元素Pの質量M1との関数で表され,散乱イオン30sのエネルギーEsから衝突した元素の質量を測定できる。
一方,試料2の層21の表面からΔtだけ深いところで入射イオン30が衝突して散乱した場合は,入射イオン30が衝突元素にたどりつくまでの間,及び弾性衝突して跳ね返された後に試料表面から飛び出すまでの間に電子雲(元素の原子核を周遊する自由電子群)によってエネルギーが減衰する。したがって,Δtだけ深いところで跳ね返った散乱イオン30fのエネルギーEfと前記試料2の表面で散乱した散乱イオン30SのエネルギーEsとは,次式(3)の関係を有する。
【数2】
また,このΔEはイオンが試料中を通過した距離に線形に比例することが知られており,入射イオン30のエネルギーの減衰係数(阻止係数ともいう)をε,試料中の元素の元素数密度をNとすると,上式(3)のΔEは次式のように表すことができる。なお,上記阻止係数εはエネルギーEと試料の電荷Zとの関数である。また,上記阻止係数ε及び上記元素数密度Nは,試料2を構成する層21,22の元素や組成構造が判明しておれば既定の物理量として扱うことができる。
【数3】
ここで,図3に示す試料2にある一定のエネルギーを持つイオンを照射させたときに得られるエネルギースペクトルの一例を図4に示す。図4中のSp21は試料2中の層21の実測スペクトルを示し,Sp22は層22の実測スペクトルを示す。
このように測定された実測スペクトルSp21,Sp22においては,当該各スペクトルSp21,Sp22の幅がエネルギーの減衰量ΔEを表すことになる。しかしながら,図4に示すように,実測スペクトルはガウス分布をしているため,実測スペクトルの幅を容易に特定することはできない。そのため,従来は,実測スペクトルの収量(検出器に飛び込んだ散乱イオンのカウント数)の最大値の半分の値におけるスペクトル幅(いわゆる半値幅),即ち,図中の両矢印Yで幅をエネルギーの減衰量ΔEとみなして,被解析層の厚さを求めていた。
【特許文献1】特開2004−191222号公報
【特許文献2】特開2004−20459号公報
【特許文献3】特開2003−344319号公報
【非特許文献1】森芳一,外3名,“高分解能RBS分析装置”,[online],2002年9月1日,R&D/神戸製鋼技報,第52巻,第2号(通巻第201号),薄膜技術特集,p.53−56,株式会社神戸製鋼所 コミュニケーションセンター,[平成16年9月6日検索],インターネット<http://www.kobelco.co.jp/technology-review/vol52#2.htm>又は<http://www.kobelco.co.jp/technology-review/pdf/52#2/053-056.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,被解析試料や被解析層が比較的厚い場合や,入射エネルギーが強大である場合,或いは長時間の測定を行う場合は,十分な量の散乱イオンをカウントすることができるため,上述した従来の解析手法を用いても,上記半値幅をエネルギーの減衰量ΔEとみなすことで被解析試料の厚さや試料の組成を精度高く算出,分析することができるが,被解析試料や被解析層が極薄膜の場合や,入射エネルギーが小さい場合,或いは長時間の測定が許されない場合は,上記HRBS装置Aでは,精度の高い解析を行うに足りる十分なカウント値(スペクトル)を得ることができない。そのため,このような場合に,上記半値幅を基準に層厚や組成分布を求める従来の解析手法を用いたとしても,解析結果に誤差やばらつきが生じるという問題が生じる。このような問題が生じるがために,被解析試料や被解析層が極薄膜である場合には,その厚さや組成の分析を行うには,依然として前記したフィッティング法に頼らざるを得なかった。
また,多層構造の薄膜の場合は,散乱角度にもよるが,実測されるスペクトルは,各層に対応する層スペクトルが重なった状態,即ち,各層に対応するスペクトルが単独で現れない状態の重層スペクトルとして測定されるため,上記従来の解析手法では,被解析層のスペクトルを容易に抽出することができず,結果的に,被解析層の実測スペクトルから層厚や組成の分析を容易に行うことができないという問題がある。これは,上記フィッティング法による解析の場合も同様に起こり得る問題である。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,スペクトルの半値幅ではなく,スペクトルの面積に基づいて被解析層の厚さを解析することにより,解析処理の迅速化,解析処理にかかる時間の短縮化,解析精度の向上を図ることが可能なスペクトル解析方法及びスペクトル解析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明のスペクトル解析方法及びスペクトル解析装置は,単層或いは複数層からなる試料にイオンビームが照射されることによって上記試料で散乱した散乱粒子のエネルギースペクトルに基づいて,上記試料の深さ方向の組成分布の解析を行うよう構成されており,即ち,被解析層に相当するエネルギースペクトルが単独で出現するときの特定散乱角度へ散乱した散乱粒子のエネルギーを実測し,この実測により得られた実測エネルギースペクトルに単独で出現する上記被解析層の単独エネルギースペクトルを抽出し,そして抽出された上記単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積に基づいて上記被解析層の厚さを算出するよう構成されている。
実測スペクトルは,試料内の元素個々について,該試料に含まれる原子数(元素数)を反映しており,そのため,スペクトル面積は試料の深さ方向に分布している元素数を表していると言える。したがって,従来のように半値幅ではなく,上記スペクトル面積に基づいて層厚の解析を行うほうが解析精度という点ではより有効である。また,カウント数(計測収量)が少ない薄膜層や薄膜試料であっても,精度の高い解析を実現することが可能となる。また,人の能力が介入するフィッティング法に頼る必要が無くなり,コンピュータ(シミュレータ装置)によるシミュレーションによって被解析層の厚さが算出されるため,解析処理全般における処理能力が向上され得る。
【0007】
ところで,測定される実測スペクトルは,その散乱角度により異なる様相を呈することが知られている。また,少なくとも試料の深さ方向についての組成分布(既定分布に相当)が予め判明していれば,上記既定分布に応じた各散乱角度の理論スペクトルをシミュレーションにより算出可能であることも周知である。
したがって,本発明では,上記特定散乱角度は,上記試料の深さ方向についての予め設定された既定分布に基づいて,上記散乱粒子の所定の散乱角度に対応した理論エネルギースペクトルをシミュレーションにより取得し,その後,取得した理論エネルギースペクトル内に被解析層に相当するエネルギースペクトルが単独で出現するときの散乱角度を探索することにより取得されたものであることが好ましい。
シミュレーションにより上記既定分布に対応する複数の散乱角度の理論スペクトルから,単独スペクトルが出現する散乱角度(特定散乱角度という)を見つけ出すことは容易である。したがって,想定される試料の組成分布(既定分布)に対応する特定散乱角度を予め探索しておくことにより,新たな試料の解析を行うたびに上記特定散乱角度を探索する手間を省力することが可能となる。
【0008】
上記被解析層が複数の元素からなるものである場合は,当該被解析層から複数のスペクトルが測定される。従って,この場合は,複数元素からなる被解析層のそれぞれの元素の単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたそれぞれのスペクトル面積に基づいて上記被解析層の厚さを算出することが好ましい。このように,複数のスペクトルに基づき層厚が算出されるため,解析精度が向上され得る。
また,上記単独スペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積と,予め取得された基準スペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積とを比較することにより上記被解析層の厚さを算出するものであってもよい。なお,上記基準スペクトルとしては,深さ方向の組成分布及び層厚が既知の基準試料を基にシミュレーション或いは実測により予め取得された上記被解析層のエネルギースペクトルであることが考えられる。
このように正確な基準スペクトルと比較して,その結果算出された層厚であれば,高い信頼性を備えていることが期待できる。
また,上記単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積と,予め取得された上記基準エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積との差分に基づいて上記被解析層の厚さを算出するものであれば,被解析層における層厚を相対評価することができる。
更にまた,上記スペクトル面積が,上記理論スペクトル,上記実測スペクトル,上記単独スペクトル等の所定のエネルギースペクトルにおける散乱粒子のカウント総数に相当するものであってもかまわない。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように,本発明は,被解析層に相当するエネルギースペクトルが単独で出現するときの特定散乱角度へ散乱した散乱粒子のエネルギーを実測し,この実測により得られた実測エネルギースペクトルに単独で出現する上記被解析層の単独エネルギースペクトルを抽出し,そして抽出された上記単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積に基づいて上記被解析層の厚さを算出するものであるため,従来のように半値幅で層厚の解析を行うのではなく,上記スペクトル面積に基づいて層厚解析を行うため,高精度の解析を実現することが可能となる。また,カウント数(計測収量)が少ない薄膜層や薄膜試料であっても,スペクトル面積で層厚が算出されるため,精度の高い解析が行われる。また,人の能力が介入するフィッティング法に頼る必要が無くなり,コンピュータ(シミュレータ装置)によるシミュレーションによって被解析層の厚さが算出されるため,解析全般における処理能力が向上され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施の形態に係るスペクトル解析方法が適用されるHRBS分析装置Aの概略構成を示す全体図,図2は上記HRBS分析装置Aの各構成要素を模式的に示した模式図,図3はエネルギースペクトルに基づいて試料の厚さ等の組成分布を解析する手法の基本原理を説明する図,図4は図3に示す試料2にイオンビームを照射させたときに得られるエネルギースペクトルの一例を示すスペクトル図,図5は上記スペクトル解析方法の手順の一例を説明するフローチャート,図6は本発明の実施の形態に係るスペクトル解析装置の一例であるシミュレータ装置60の概略構成を示すブロック図,図7はシミュレーションにより得られた理論スペクトルを示すスペクトル図,図8は上記HRBS分析装置Aで実測された試料2の実測スペクトルを示すスペクトル図,図9はシミュレーションにより得られた試料の元素プロファイルを示す図,図10は多層構造の試料のスペクトルの一例を示すスペクトル図,図11は所定の酸化化合物から取得されたスペクトルの一例を示すスペクトル図,図12の(a)は基準スペクトルSp111と上記単独スペクトルSp52とを重ね合わせたスペクトル図,(b)は基準スペクトルSp111と上記単独スペクトルSp52との差分スペクトルSp112を示すスペクトル図である。
【0011】
本発明の実施の形態に係るスペクトル解析方法は,図1及び図2を用いて先に説明したHRBS装置Aに適用されるものであり,上記HRBS装置Aで測定された実測スペクトルに基づいて単層或いは複数層からなる試料2の深さ方向の組成分布を解析する手法に関する。なお,上記HRBS装置Aは,上記試料2にイオンビームが照射されることによって上記試料2で散乱した散乱イオン(散乱粒子)のエネルギースペクトルを測定する試料分析装置の単なる一例に過ぎず,イオンをプローブとする分析装置,例えば反跳イオンのエネルギースペクトルに基づいて試料の組成分析を行うERD分析装置や,表面スパッタを基本とする二次イオン質量分析装置等にも本発明のスペクトル解析方法を適用することが可能である。
【0012】
ここで,図5のフローチャートを用いて本発明の実施の形態に係るスペクトル解析方法により試料の被解析層の厚さを測定(算出)する手順の一例を説明する。このスペクトル解析方法は,当該フローチャートの手順に従うことにより達成される。なお,ここでは,解析対象となる試料2を,図7に示すように,表層に重元素Pからなる層51,中層に軽元素Qからなる層52,下層に重元素Pからなる層53の三層の薄膜層がシリコン基板54上に積層された三層構造の薄膜とし,この中層に位置する層52を被解析層とする。図中のS1,S2…は処理手順(ステップ)番号を示す。
まず,上記試料2の深さ方向についての予め設定された既定分布に基づいて,上記散乱イオン(散乱粒子)の所定の散乱角度に対応した理論スペクトルを図7のブロック図に示されるよう構成されたシミュレータ装置60(スペクトル解析装置の一例)においてシミュレーションすることにより取得する(S1:理論スペクトル取得工程)。上記既定分布とは,上記試料2の深さ方向についての組成分布(元素分布)のことをいう。即ち,この実施の形態では,上記試料2の組成分布(層51,52,53)のことを指す。このような既定分布が上記シミュレータ装置60に予め設定登録されているため,上記シミュレータ装置60では,この既定分布に基づいて,散乱角度として設定し得る全ての角度に対応する理論スペクトルのシミュレーションが実行される。なお,上記シミュレータ装置60における処理能力を上げるために,所定角度毎(例えば10°毎)にシミュレーションを行ってもよい。
【0013】
上記シミュレータ装置60は本スペクトル解析方法を実現することのできるスペクトル解析装置の一例であって,検出素子8に入射した散乱イオンの実測スペクトルを取得し,或いは入力されたデータ等に基づきシミュレーションにより理論スペクトルを取得することのできるものである。このシミュレータ装置60は,図6のブロック図に示すように,検出素子8に入射(到達)した散乱イオンの位置を検出する複数のチャネル(Ach,Bch等)と,該チャネルにより検出された散乱イオンの検出信号を増幅するアンプ61と,上記アンプ61により増幅された検出信号をデジタル化するA/D変換器62と,デジタル化された上記検出信号と前記数式(1)〜(4)に基づき演算処理を実行する演算制御部63とを備えて構成されている。また,上記演算制御部63にはキーボードやマウス等の入力装置64が接続されており,この入力装置64の操作により,上記演算制御部63における演算処理に用いられるデータ(情報)やコマンド(命令)が入力(設定)される。尚,上記演算制御部63により演算結果(実測されたスペクトルやシミュレーションされたスペクトル等)は,外部接続されたプリンタやCRT等の外部出力機器(不図示)に出力される。
上記演算制御部63は,CPU63−1(中央処理装置)やRAM63−2,EEPROM63−3等を備えて構成されている。このEEPROM63−3には上記入力装置64から入力された演算処理に用いられる種々のデータ或いはコマンド,又は演算結果,上述した数式に基づく演算プログラム等が記憶されており,上記CPU63−1によりこれらのデータ,コマンド,演算プログラムが読み出され,上記RAM63−2において上記演算プログラムに基づく演算処理が実行される。
【0014】
上記シミュレータ装置60によるシミュレーションにより得られた理論スペクトルの一例を図7に示す。このように取得された理論スペクトルは上記シミュレータ装置60に接続されたディスプレイ等に表示出力される。なお,この実施の形態では,説明を簡略化するために3つの散乱角度に対応した理論スペクトルを取得する例について説明するが,もちろんこれに限定されることはない。ここに,図7(a)は散乱角φ50°(入射角θ:65°)の時の理論スペクトル,(b)は散乱角φ95°(入射角θ:42.5°)の時の理論スペクトル,(c)は散乱角φ110°(入射角θ:35°)の時の理論スペクトルを示し,図中のSp51,Sp52,Sp53はそれぞれ層51,被解析層52,層53に対応する層毎のスペクトルを示す。
【0015】
上記ステップS1で理論スペクトル(図7(a),(b),(c)に示す理論スペクトル)が取得されると,続いて,取得された理論スペクトル内に被解析層52に相当するスペクトルが単独で出現するときの散乱角度(特定散乱角度に相当)を探索する(S2:散乱角度探索工程)。即ち,図7に示す各理論スペクトル内にスペクトルSp52が単独で現れる場合の散乱角度を見つけ出す処理を行う。このステップS2の手順は,上記シミュレータ装置60によるシミュレーションにより自動的に探索処理を実行させることも考えられるが,この実施の形態では,ディスプレイ等に表示された複数の理論スペクトルから人により最も適した理論スペクトルが探索され,その後,前記入力装置64からのキー入力やマウス操作がなされることで選択された一の理論スペクトルに対応する散乱角度が特定散乱角度に決定される。
ここで,スペクトルSp52が図7(b),(c)に示すように単独で出現している場合は(S3のYes側),散乱角95°或いは110°を上記特定散乱角度として決定する。なお,この2つの散乱角度のうち,いずれを特定散乱角度としてもよいが,高い解析精度を得るためには,カウント数や散乱イオンのエネルギーの大きいスペクトルを形成するときの散乱角度φを特定散乱角度とすることが望ましい。したがって,本実施の形態では,特定散乱角度として,図7(b)の理論スペクトルを形成する散乱角95°を特定散乱角度と決定する。このように決定された特定散乱角度95°に関する情報は上記シミュレータ装置60のEEPROM63−3等に記憶される。
一方,スペクトルSp52が単独で出現している理論スペクトルが見つからない場合は,その後,処理は終了する(S3のNo側)。もちろん,散乱角度を変更して,ステップS1からの手順に従って再度特定散乱角度を探索してもかまわない。
【0016】
次に,上記HRBS装置Aにおいて散乱角度が95°となるように電磁石スペクトロメータZやゴニオメータ21等を移動,操作して,散乱角の設定を行い,その後,設定後の散乱角95°の方向へ散乱する散乱イオンのエネルギーを実測して実測スペクトルを取得する(S4:実測スペクトル取得工程)。即ち,被解析層52に相当するスペクトルが単独で出現するときの特定散乱角度95°へ散乱した散乱粒子のエネルギーの実測スペクトルを取得する。なお,前記したように,検出素子8からの検出信号に基づいて実測スペクトルを演算する前記演算制御部63が実測スペクトル取得手段に相当する。
上記のように取得された散乱角度95°に対応する実測スペクトルを図8に示す。なお,図8に示す実測スペクトルとシミュレーションにより得られた図7(b)の理論スペクトルとは若干そのスペクトル波形が異なるが,この相違は試料2の各層51,52,53の厚さ等に起因するものである。
【0017】
続いて,上記シミュレータ装置60(図6)によって,上記ステップS4で取得された実測スペクトル内に単独で出現する上記被解析層52のスペクトル(以下,単独スペクトルという)を抽出する処理が実行される(S5:単独スペクトル抽出工程)。例えば,上記シミュレータ装置60により得られた実測スペクトルが複数表示されたディスプレイ等から人が実行した前記入力装置64からのキー入力やマウス操作入力に応じて一の単独スペクトルを選択する処理が実行される。なお,かかる処理は前記演算制御部63により実行され,このときの前記演算制御部63が単独スペクトル抽出手段に相当する。
その後,抽出された上記単独スペクトルSp52の波形で囲まれたスペクトル面積(図8の斜線部分)が前記演算制御部63により周知の積分演算処理等によって算出され(S6),この算出されたスペクトル面積に基づいて上記被解析層52の厚さがシミュレーションにより算出される(S7)(S6,S7:層厚算出工程)。このようにシミュレーションにより上記被解析層52の厚さを算出する処理を行う前記演算制御部63が層厚算出手段に相当する。なお,本実施の形態では,上記スペクトル面積を算出する例について説明するが,他の例として,例えば,上記単独スペクトルSp52における散乱イオンのカウント総数を求めて,この求められたカウント総数を基に上記被解析層52の厚さを算出する形態であってもよい。
ここで,上記ステップS7における算出例としては,例えば,上記単独スペクトルSp52の波形で囲まれたスペクトル面積と,予め取得された基準エネルギースペクトル(以下,基準スペクトルという)の波形で囲まれたスペクトル面積とを比較することにより上記被解析層52の厚さを算出することが考えられる。ここに,上記基準スペクトルは,上記試料2と同じ組成分布を有する試料(即ち,組成分布が既知の試料)であって,各層の層厚が既知の基準試料を基にシミュレーション或いは実測により予め取得された上記被解析層52のスペクトルをいう。このように正確な基準スペクトルとの比較により算出された層厚であれば,算出値の信頼性が高い。なお,この場合,上記基準スペクトルと上記単独スペクトルSp52とは,その測定時における入射イオンの入射量や測定時間等が異なるためそのままでは比較対象とすることができない。そのため,例えば,シリコン基板54のスペクトルやそのカウント値を基準にして上記単独スペクトルSp52を上記基準スペクトルに合わせこむ周知の校正処理を上記単独スペクトルSp52のスペクトル面積を算出する前に行う必要がある。
なお,上記ステップS7における具体的なシミュレーション処理は,シミュレータ装置に予め記憶された前記式(1)〜(4)や,阻止係数ε,入射イオンのエネルギー等の既知のデータ等を用いて行われる処理であって,半値幅に基づいて層厚を算出する従来のシミュレーション処理と処理自体に相違は無いため,ここでの詳細な説明は省略する。
【0018】
上述の説明では上記被解析層52の厚さを求める手法について述べてきたが,上記試料2を構成する層51,53を被解析層として同手法により層厚を求めることができることはいうまでもない。なお,このようにして算出された上記試料2の各層の層厚を反映した元素プロファイルを図9に示す。
このように,従来は実測スペクトルの半値幅(図4の量矢印Y)に基づいて被解析層の厚さがシミュレーションにより算出されていたが,本発明によればスペクトル面積に基づき被解析層の厚さがシミュレーションにより算出されるため,カウント数(計測収量)が少ない薄膜層や薄膜試料であっても,フィッティング法によらず高精度に被解析層の厚さを算出することができ,解析全般における処理能力が向上する。
【実施例1】
【0019】
上述の実施の形態では,三層構造の試料2を解析対象としたスペクトル解析方法について説明したが,実際には,多数層から構成された薄膜試料に対して解析がなされる。したがって,図7の理論スペクトルのように被解析層の単独スペクトルが現れないことも多々ある。この場合,上述の説明では,単独スペクトルを抽出することができないとしてステップS3において処理を終了させていた。しかしながら,例えば,図10のスペクトル図に示すように,被解析層の単独スペクトルSp91aに相当するスペクトルSp91bがシミュレーションにより得られた理論スペクトルに現れている場合は,このときの散乱角度を前記した特定散乱角度として実測スペクトルを取得し,その後,このスペクトルSp91aを抽出することにより,層厚さを求めることが可能である。このときの上記ステップS5における抽出処理は,例えば,実測スペクトルの波形の急峻度が一定値以上であるかどうかにより当該波形の編曲点,即ち,図示するポイント92,93を検出することにより上記スペクトルSp91bを抽出するなどの種々の手法が考えられる。
【実施例2】
【0020】
また,上述の実施の形態では,単一元素からなる薄膜層で構成された試料2を解析対象としたスペクトル解析方法について説明したが,実際には,被解析層が複数の元素からなる化合物(酸化化合物,硫化化合物,フッ素化合物等)である場合も考えられる。このような化合物からは,該化合物に含まれる複数の元素に対応するスペクトルが得られる。ここで,ある軽元素の酸化化合物から取得されたスペクトルを図11に示す。なお,図中のSp101が軽元素に相当するスペクトルであり,Sp102が酸素に相当するスペクトルである。この場合は,上記いずれのスペクトルの面積を用いても化合物からなる被解析層の層厚さを求めることができるが,解析精度を高めるために,スペクトルSp101及びSp102それぞれの波形で囲まれたそれぞれのスペクトル面積に基づいて上記被解析層の層厚さを算出してもかまわない。
【実施例3】
【0021】
上述の実施の形態では,ステップS7(図5参照)において,上記単独スペクトルSp52及び上記基準スペクトルの各々のスペクトル面積を比較することにより上記被解析層52の厚さを算出する旨を述べた。この比較の一例として,上記単独スペクトルSp52のスペクトル面積と上記基準スペクトルのスペクトル面積との差分をとり,この差分に基づいて上記被解析層1の厚さを算出することが考えられる。ここに,図12(a)に基準スペクトルSp111と上記単独スペクトルSp52とを重ね合わせたスペクトルを示し,(b)に基準スペクトルSp111と上記単独スペクトルSp52との差分スペクトルSp112を示す。
図12(b)に示される差分スペクトルSp112のスペクトル面積は,即ち,被解析層52の層厚と前記基準試料における該被解析層に対応する層の層厚との差を表す。したがって,上記差分スペクトルSp112のスペクトル面積を求め,その値の正或いは負を判断することにより,上記被解析層52が基準厚さより厚いか薄いかを的確に判定することが可能となる。また,以下の式(5)に基づき算出された差分厚さが所定の許容範囲内に属するか否かで,試料の製造精度を検証することも可能となる。
【数4】
なお,上式(5)中のΔtは差分厚さ,S0は基準スペクトルSp112のスペクトル面積,S1は単独スペクトルSp52のスペクトル面積,Tは基準厚さを示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係るスペクトル解析方法が適用されるHRBS分析装置Aの概略構成を示す全体図。
【図2】上記HRBS分析装置Aの各構成要素を模式的に示した模式図。
【図3】エネルギースペクトルに基づいて試料の厚さ等の組成分布を解析する手法の基本原理を説明する図。
【図4】図3に示す試料2にイオンビームを照射させたときに得られるエネルギースペクトルの一例を示すスペクトル図。
【図5】上記スペクトル解析方法の手順の一例を説明するフローチャート。
【図6】本発明の実施の形態に係るスペクトル解析装置の一例であるシミュレータ装置60の概略構成を示すブロック図。
【図7】シミュレーションにより得られた理論スペクトルを示すスペクトル図。
【図8】上記HRBS分析装置Aで実測された試料2の実測スペクトルを示すスペクトル図。
【図9】シミュレーションにより得られた試料の元素プロファイルを示す図。
【図10】多層構造の試料のスペクトルの一例を示すスペクトル図。
【図11】所定の酸化化合物から取得されたスペクトルの一例を示すスペクトル図。
【図12】(a)は基準スペクトルSp111と上記単独スペクトルSp52とを重ね合わせたスペクトル図,(b)は基準スペクトルSp111と上記単独スペクトルSp52との差分スペクトルSp112を示すスペクトル図。
【符号の説明】
【0023】
A…HRBS分析装置
X…イオンビーム発生装置
Y…ウィーンフィルタ
Z…電磁石スペクトロメータ
2…試料
3…真空容器
7…スリット
8…検出素子
11…四重極レンズ
21…ゴニオメータ
22…トランスファーロッド
【技術分野】
【0001】
本発明は,ラザフォード後方散乱分光法等におけるスペクトル解析技術に関し,特に,単層或いは複数層からなる試料で散乱した散乱粒子のエネルギースペクトルを測定することにより上記試料の深さ方向の組成分布の解析を高精度に行うスペクトル解析方法及びスペクトル解析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,半導体技術や結晶性薄膜技術等の分野では,単層或いは複数層からなる膜構造の半導体デバイス等の試料を分析する手法として,周知のラザフォード後方散乱分光法(以下,RBS法,RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や反跳粒子検出法(以下,ERD法,ERD:Elastic Recoil Detection)等に代表される種々の試料分析方法が用いられている。
上記RBS法を用いて,深さ方向の組成分布が未知の試料の濃度解析を行う具体的な手法としては,特許文献1に記載のフィッティング法がある。このフィッティング法は,試料の深さ方向の組成分布に関する予め仮定された仮定分布を変化させつつ理論エネルギースペクトル(以下,理論スペクトルという)を計算し,この計算された理論スペクトルと,上記RBS法を利用したRBS分析装置により実測されたエネルギースペクトル(以下,実測スペクトルという)とを比較し,両者が一致するような上記仮定分布を試行錯誤的に探索することによって試料の深さ方向の組成分布を決定する手法である。なお,かかる手法は,組成分布が未知の試料に限られず,既知の試料における特定層の層厚解析にも適用される。
しかしながら,上記フィッティング法では,解析実施者等の知見や経験或いは技能に基づいて感覚的に,上記理論スペクトルと上記実測スペクトルとが一致する仮定分布の探索が行われるため,解析自体に人的能力が介入する。そのため,個人差により,解析速度,解析時間,解析精度にばらつきが生じることになる。
【0003】
ところで,近年,上記フィッティング法を用いることなく,試料の深さ方向の組成分布を効果的に解析することのできる高分解能試料分析装置が開発され,特許文献2,3及び非特許文献1等の多くの文献に掲載されている。
ここで,図1及び図2を用いて上記高分解能試料分析装置の一例である高分解能RBS分析装置(以下,HRBS分析装置という)Aの構成及び機能の概略について簡単に説明する。ここに,図1はHRBS分析装置Aの概略構成を示す全体図,図2はHRBS分析装置Aの各構成要素を模式的に示した模式図である。
図1及び図2に示すように,上記HRBS分析装置Aは,イオンビーム発生装置Xと,ウィーンフィルタY及びスリット7(図2)と,四重極レンズ11と,分析対象である試料2を配置する真空容器3と,上記試料2の表面から散乱する散乱イオン(散乱粒子の一例)のエネルギースペクトルを測定する電磁石スペクトロメータZとを具備して概略構成される。尚,図1中の21は試料の載置位置を変更して試料へのイオンビームの入射方向を変化させるゴニオメータ,22は上記真空容器3内に試料を出し入れするトランスファーロッドである。
上記イオンビーム発生装置Xは,ボンベ15より供給されるガス(例えば,ヘリウムガス)を用いてイオン源12によって生成された軽イオンを,コッククロフト型高電圧回路14から供給される高電圧により加速管13内で一定エネルギーに加速した後に照射する。上記ウィーンフィルタY及び上記スリット7は,上記イオンビーム発生装置Xにより加速され照射されるイオンビーム1から特定のイオン種のみ(例えばヘリウム一価イオン)を抽出する。ここで,上記ウィーンフィルタYは,通過するイオンに対して,磁極17,コイル18,及びリターンヨーク19で発生する磁場による偏向作用(イオンの運動量に比例)と,平行電極20で発生する電場による偏向作用(イオンのエネルギーに比例)とが,互いに反対方向に働くように構成されたフィルタであり,上記イオンビーム1のうち特定のイオン種(例えばヘリウム一価イオン)のみを直進させると共に,それ以外のイオン種(例えばヘリウム二価イオン,水素原子イオン等)の軌道を曲げる特性を有するものである。上述した上記ウィーンフィルタYの特性により,分析に利用される特定のイオン種以外のイオン種は,該ウィーンフィルタYのイオンビーム入射方向下流に設けられ,直進するイオンのみが通過できるように設定された上記スリット7を通過できずに除去される。このようにして特定のイオン種のみが抽出された上記イオンビーム1が,上記スリット7のイオンビーム入射方向下流に設けられた上記四重極レンズ11により集束され,所定のビームスポットにより上記試料2表面に照射される。上記試料2表面に照射された上記イオンビーム1は上記試料2表面で散乱され,その散乱イオンのうち,一部の散乱イオンが電磁石スペクトロメータZに入射される。ここで,該電磁石スペクトロメータZは,通過する散乱イオンを,コイル4,リターンヨーク5,及び磁極6で発生する磁場により,その散乱イオンのエネルギーに応じて偏向した後に検出素子8に対して導くものである。上記検出素子8はシリコン或いはゲルマニウム等の半導体を利用したエネルギー敏感型のイオン検出器であり,複数のチャネルを有する。この検出素子8において上記複数のチャネルに散乱イオンが飛び込んだ位置(磁場による偏向量)が検出されると,その検出信号が図示しないコンピュータ(又はシミュレータ装置)に送信され,そこで散乱イオンのカウント数が計数される。このように検出された位置及び計数されたカウント値は,上記コンピュータにおいて上記試料2の表面や内部から散乱する散乱イオンのエネルギースペクトルの算出(測定)に供される。
【0004】
次に,図3を用いて,測定された散乱イオンのエネルギースペクトルに基づいて試料の厚さ等の組成分布を解析する従来の解析手法の基本原理について説明する。なお,図3では,試料2は表面から質量M1の重元素Pからなる層21と,質量M2の軽元素Qからなる層22とが積層された二層構造の薄膜とする。ここに,図中の23(斜線部分)は試料を保持するシリコン基板を示す。
イオンビーム発生装置Xから試料2に向けて出射されたイオン30(以下「入射イオン」という)が試料2に照射して試料2内の成分原子(組成元素)とが衝突した場合,この衝突はほとんど弾性散乱とみなすことができる。したがって,例えば,図3に示すように,エネルギーE0,質量mの入射イオン30が試料2の層21の表面にある元素Pと衝突し,散乱角(検出角)φの方向へ弾性散乱して跳ね返されると,この跳ね返された散乱イオン30sの持つエネルギーEsは,運動量保存の原則から次式(1)で与えられる。
【数1】
ここで,Kはkinematic factor(以下「Kファクター」と称す。)と呼ばれ,入射イオン30の衝突時におけるエネルギーロスの割合を示す係数である。なお,このKファクターは入射イオン30の質量mと衝突元素Pの質量M1との関数で表され,散乱イオン30sのエネルギーEsから衝突した元素の質量を測定できる。
一方,試料2の層21の表面からΔtだけ深いところで入射イオン30が衝突して散乱した場合は,入射イオン30が衝突元素にたどりつくまでの間,及び弾性衝突して跳ね返された後に試料表面から飛び出すまでの間に電子雲(元素の原子核を周遊する自由電子群)によってエネルギーが減衰する。したがって,Δtだけ深いところで跳ね返った散乱イオン30fのエネルギーEfと前記試料2の表面で散乱した散乱イオン30SのエネルギーEsとは,次式(3)の関係を有する。
【数2】
また,このΔEはイオンが試料中を通過した距離に線形に比例することが知られており,入射イオン30のエネルギーの減衰係数(阻止係数ともいう)をε,試料中の元素の元素数密度をNとすると,上式(3)のΔEは次式のように表すことができる。なお,上記阻止係数εはエネルギーEと試料の電荷Zとの関数である。また,上記阻止係数ε及び上記元素数密度Nは,試料2を構成する層21,22の元素や組成構造が判明しておれば既定の物理量として扱うことができる。
【数3】
ここで,図3に示す試料2にある一定のエネルギーを持つイオンを照射させたときに得られるエネルギースペクトルの一例を図4に示す。図4中のSp21は試料2中の層21の実測スペクトルを示し,Sp22は層22の実測スペクトルを示す。
このように測定された実測スペクトルSp21,Sp22においては,当該各スペクトルSp21,Sp22の幅がエネルギーの減衰量ΔEを表すことになる。しかしながら,図4に示すように,実測スペクトルはガウス分布をしているため,実測スペクトルの幅を容易に特定することはできない。そのため,従来は,実測スペクトルの収量(検出器に飛び込んだ散乱イオンのカウント数)の最大値の半分の値におけるスペクトル幅(いわゆる半値幅),即ち,図中の両矢印Yで幅をエネルギーの減衰量ΔEとみなして,被解析層の厚さを求めていた。
【特許文献1】特開2004−191222号公報
【特許文献2】特開2004−20459号公報
【特許文献3】特開2003−344319号公報
【非特許文献1】森芳一,外3名,“高分解能RBS分析装置”,[online],2002年9月1日,R&D/神戸製鋼技報,第52巻,第2号(通巻第201号),薄膜技術特集,p.53−56,株式会社神戸製鋼所 コミュニケーションセンター,[平成16年9月6日検索],インターネット<http://www.kobelco.co.jp/technology-review/vol52#2.htm>又は<http://www.kobelco.co.jp/technology-review/pdf/52#2/053-056.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,被解析試料や被解析層が比較的厚い場合や,入射エネルギーが強大である場合,或いは長時間の測定を行う場合は,十分な量の散乱イオンをカウントすることができるため,上述した従来の解析手法を用いても,上記半値幅をエネルギーの減衰量ΔEとみなすことで被解析試料の厚さや試料の組成を精度高く算出,分析することができるが,被解析試料や被解析層が極薄膜の場合や,入射エネルギーが小さい場合,或いは長時間の測定が許されない場合は,上記HRBS装置Aでは,精度の高い解析を行うに足りる十分なカウント値(スペクトル)を得ることができない。そのため,このような場合に,上記半値幅を基準に層厚や組成分布を求める従来の解析手法を用いたとしても,解析結果に誤差やばらつきが生じるという問題が生じる。このような問題が生じるがために,被解析試料や被解析層が極薄膜である場合には,その厚さや組成の分析を行うには,依然として前記したフィッティング法に頼らざるを得なかった。
また,多層構造の薄膜の場合は,散乱角度にもよるが,実測されるスペクトルは,各層に対応する層スペクトルが重なった状態,即ち,各層に対応するスペクトルが単独で現れない状態の重層スペクトルとして測定されるため,上記従来の解析手法では,被解析層のスペクトルを容易に抽出することができず,結果的に,被解析層の実測スペクトルから層厚や組成の分析を容易に行うことができないという問題がある。これは,上記フィッティング法による解析の場合も同様に起こり得る問題である。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,スペクトルの半値幅ではなく,スペクトルの面積に基づいて被解析層の厚さを解析することにより,解析処理の迅速化,解析処理にかかる時間の短縮化,解析精度の向上を図ることが可能なスペクトル解析方法及びスペクトル解析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明のスペクトル解析方法及びスペクトル解析装置は,単層或いは複数層からなる試料にイオンビームが照射されることによって上記試料で散乱した散乱粒子のエネルギースペクトルに基づいて,上記試料の深さ方向の組成分布の解析を行うよう構成されており,即ち,被解析層に相当するエネルギースペクトルが単独で出現するときの特定散乱角度へ散乱した散乱粒子のエネルギーを実測し,この実測により得られた実測エネルギースペクトルに単独で出現する上記被解析層の単独エネルギースペクトルを抽出し,そして抽出された上記単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積に基づいて上記被解析層の厚さを算出するよう構成されている。
実測スペクトルは,試料内の元素個々について,該試料に含まれる原子数(元素数)を反映しており,そのため,スペクトル面積は試料の深さ方向に分布している元素数を表していると言える。したがって,従来のように半値幅ではなく,上記スペクトル面積に基づいて層厚の解析を行うほうが解析精度という点ではより有効である。また,カウント数(計測収量)が少ない薄膜層や薄膜試料であっても,精度の高い解析を実現することが可能となる。また,人の能力が介入するフィッティング法に頼る必要が無くなり,コンピュータ(シミュレータ装置)によるシミュレーションによって被解析層の厚さが算出されるため,解析処理全般における処理能力が向上され得る。
【0007】
ところで,測定される実測スペクトルは,その散乱角度により異なる様相を呈することが知られている。また,少なくとも試料の深さ方向についての組成分布(既定分布に相当)が予め判明していれば,上記既定分布に応じた各散乱角度の理論スペクトルをシミュレーションにより算出可能であることも周知である。
したがって,本発明では,上記特定散乱角度は,上記試料の深さ方向についての予め設定された既定分布に基づいて,上記散乱粒子の所定の散乱角度に対応した理論エネルギースペクトルをシミュレーションにより取得し,その後,取得した理論エネルギースペクトル内に被解析層に相当するエネルギースペクトルが単独で出現するときの散乱角度を探索することにより取得されたものであることが好ましい。
シミュレーションにより上記既定分布に対応する複数の散乱角度の理論スペクトルから,単独スペクトルが出現する散乱角度(特定散乱角度という)を見つけ出すことは容易である。したがって,想定される試料の組成分布(既定分布)に対応する特定散乱角度を予め探索しておくことにより,新たな試料の解析を行うたびに上記特定散乱角度を探索する手間を省力することが可能となる。
【0008】
上記被解析層が複数の元素からなるものである場合は,当該被解析層から複数のスペクトルが測定される。従って,この場合は,複数元素からなる被解析層のそれぞれの元素の単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたそれぞれのスペクトル面積に基づいて上記被解析層の厚さを算出することが好ましい。このように,複数のスペクトルに基づき層厚が算出されるため,解析精度が向上され得る。
また,上記単独スペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積と,予め取得された基準スペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積とを比較することにより上記被解析層の厚さを算出するものであってもよい。なお,上記基準スペクトルとしては,深さ方向の組成分布及び層厚が既知の基準試料を基にシミュレーション或いは実測により予め取得された上記被解析層のエネルギースペクトルであることが考えられる。
このように正確な基準スペクトルと比較して,その結果算出された層厚であれば,高い信頼性を備えていることが期待できる。
また,上記単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積と,予め取得された上記基準エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積との差分に基づいて上記被解析層の厚さを算出するものであれば,被解析層における層厚を相対評価することができる。
更にまた,上記スペクトル面積が,上記理論スペクトル,上記実測スペクトル,上記単独スペクトル等の所定のエネルギースペクトルにおける散乱粒子のカウント総数に相当するものであってもかまわない。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように,本発明は,被解析層に相当するエネルギースペクトルが単独で出現するときの特定散乱角度へ散乱した散乱粒子のエネルギーを実測し,この実測により得られた実測エネルギースペクトルに単独で出現する上記被解析層の単独エネルギースペクトルを抽出し,そして抽出された上記単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積に基づいて上記被解析層の厚さを算出するものであるため,従来のように半値幅で層厚の解析を行うのではなく,上記スペクトル面積に基づいて層厚解析を行うため,高精度の解析を実現することが可能となる。また,カウント数(計測収量)が少ない薄膜層や薄膜試料であっても,スペクトル面積で層厚が算出されるため,精度の高い解析が行われる。また,人の能力が介入するフィッティング法に頼る必要が無くなり,コンピュータ(シミュレータ装置)によるシミュレーションによって被解析層の厚さが算出されるため,解析全般における処理能力が向上され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施の形態に係るスペクトル解析方法が適用されるHRBS分析装置Aの概略構成を示す全体図,図2は上記HRBS分析装置Aの各構成要素を模式的に示した模式図,図3はエネルギースペクトルに基づいて試料の厚さ等の組成分布を解析する手法の基本原理を説明する図,図4は図3に示す試料2にイオンビームを照射させたときに得られるエネルギースペクトルの一例を示すスペクトル図,図5は上記スペクトル解析方法の手順の一例を説明するフローチャート,図6は本発明の実施の形態に係るスペクトル解析装置の一例であるシミュレータ装置60の概略構成を示すブロック図,図7はシミュレーションにより得られた理論スペクトルを示すスペクトル図,図8は上記HRBS分析装置Aで実測された試料2の実測スペクトルを示すスペクトル図,図9はシミュレーションにより得られた試料の元素プロファイルを示す図,図10は多層構造の試料のスペクトルの一例を示すスペクトル図,図11は所定の酸化化合物から取得されたスペクトルの一例を示すスペクトル図,図12の(a)は基準スペクトルSp111と上記単独スペクトルSp52とを重ね合わせたスペクトル図,(b)は基準スペクトルSp111と上記単独スペクトルSp52との差分スペクトルSp112を示すスペクトル図である。
【0011】
本発明の実施の形態に係るスペクトル解析方法は,図1及び図2を用いて先に説明したHRBS装置Aに適用されるものであり,上記HRBS装置Aで測定された実測スペクトルに基づいて単層或いは複数層からなる試料2の深さ方向の組成分布を解析する手法に関する。なお,上記HRBS装置Aは,上記試料2にイオンビームが照射されることによって上記試料2で散乱した散乱イオン(散乱粒子)のエネルギースペクトルを測定する試料分析装置の単なる一例に過ぎず,イオンをプローブとする分析装置,例えば反跳イオンのエネルギースペクトルに基づいて試料の組成分析を行うERD分析装置や,表面スパッタを基本とする二次イオン質量分析装置等にも本発明のスペクトル解析方法を適用することが可能である。
【0012】
ここで,図5のフローチャートを用いて本発明の実施の形態に係るスペクトル解析方法により試料の被解析層の厚さを測定(算出)する手順の一例を説明する。このスペクトル解析方法は,当該フローチャートの手順に従うことにより達成される。なお,ここでは,解析対象となる試料2を,図7に示すように,表層に重元素Pからなる層51,中層に軽元素Qからなる層52,下層に重元素Pからなる層53の三層の薄膜層がシリコン基板54上に積層された三層構造の薄膜とし,この中層に位置する層52を被解析層とする。図中のS1,S2…は処理手順(ステップ)番号を示す。
まず,上記試料2の深さ方向についての予め設定された既定分布に基づいて,上記散乱イオン(散乱粒子)の所定の散乱角度に対応した理論スペクトルを図7のブロック図に示されるよう構成されたシミュレータ装置60(スペクトル解析装置の一例)においてシミュレーションすることにより取得する(S1:理論スペクトル取得工程)。上記既定分布とは,上記試料2の深さ方向についての組成分布(元素分布)のことをいう。即ち,この実施の形態では,上記試料2の組成分布(層51,52,53)のことを指す。このような既定分布が上記シミュレータ装置60に予め設定登録されているため,上記シミュレータ装置60では,この既定分布に基づいて,散乱角度として設定し得る全ての角度に対応する理論スペクトルのシミュレーションが実行される。なお,上記シミュレータ装置60における処理能力を上げるために,所定角度毎(例えば10°毎)にシミュレーションを行ってもよい。
【0013】
上記シミュレータ装置60は本スペクトル解析方法を実現することのできるスペクトル解析装置の一例であって,検出素子8に入射した散乱イオンの実測スペクトルを取得し,或いは入力されたデータ等に基づきシミュレーションにより理論スペクトルを取得することのできるものである。このシミュレータ装置60は,図6のブロック図に示すように,検出素子8に入射(到達)した散乱イオンの位置を検出する複数のチャネル(Ach,Bch等)と,該チャネルにより検出された散乱イオンの検出信号を増幅するアンプ61と,上記アンプ61により増幅された検出信号をデジタル化するA/D変換器62と,デジタル化された上記検出信号と前記数式(1)〜(4)に基づき演算処理を実行する演算制御部63とを備えて構成されている。また,上記演算制御部63にはキーボードやマウス等の入力装置64が接続されており,この入力装置64の操作により,上記演算制御部63における演算処理に用いられるデータ(情報)やコマンド(命令)が入力(設定)される。尚,上記演算制御部63により演算結果(実測されたスペクトルやシミュレーションされたスペクトル等)は,外部接続されたプリンタやCRT等の外部出力機器(不図示)に出力される。
上記演算制御部63は,CPU63−1(中央処理装置)やRAM63−2,EEPROM63−3等を備えて構成されている。このEEPROM63−3には上記入力装置64から入力された演算処理に用いられる種々のデータ或いはコマンド,又は演算結果,上述した数式に基づく演算プログラム等が記憶されており,上記CPU63−1によりこれらのデータ,コマンド,演算プログラムが読み出され,上記RAM63−2において上記演算プログラムに基づく演算処理が実行される。
【0014】
上記シミュレータ装置60によるシミュレーションにより得られた理論スペクトルの一例を図7に示す。このように取得された理論スペクトルは上記シミュレータ装置60に接続されたディスプレイ等に表示出力される。なお,この実施の形態では,説明を簡略化するために3つの散乱角度に対応した理論スペクトルを取得する例について説明するが,もちろんこれに限定されることはない。ここに,図7(a)は散乱角φ50°(入射角θ:65°)の時の理論スペクトル,(b)は散乱角φ95°(入射角θ:42.5°)の時の理論スペクトル,(c)は散乱角φ110°(入射角θ:35°)の時の理論スペクトルを示し,図中のSp51,Sp52,Sp53はそれぞれ層51,被解析層52,層53に対応する層毎のスペクトルを示す。
【0015】
上記ステップS1で理論スペクトル(図7(a),(b),(c)に示す理論スペクトル)が取得されると,続いて,取得された理論スペクトル内に被解析層52に相当するスペクトルが単独で出現するときの散乱角度(特定散乱角度に相当)を探索する(S2:散乱角度探索工程)。即ち,図7に示す各理論スペクトル内にスペクトルSp52が単独で現れる場合の散乱角度を見つけ出す処理を行う。このステップS2の手順は,上記シミュレータ装置60によるシミュレーションにより自動的に探索処理を実行させることも考えられるが,この実施の形態では,ディスプレイ等に表示された複数の理論スペクトルから人により最も適した理論スペクトルが探索され,その後,前記入力装置64からのキー入力やマウス操作がなされることで選択された一の理論スペクトルに対応する散乱角度が特定散乱角度に決定される。
ここで,スペクトルSp52が図7(b),(c)に示すように単独で出現している場合は(S3のYes側),散乱角95°或いは110°を上記特定散乱角度として決定する。なお,この2つの散乱角度のうち,いずれを特定散乱角度としてもよいが,高い解析精度を得るためには,カウント数や散乱イオンのエネルギーの大きいスペクトルを形成するときの散乱角度φを特定散乱角度とすることが望ましい。したがって,本実施の形態では,特定散乱角度として,図7(b)の理論スペクトルを形成する散乱角95°を特定散乱角度と決定する。このように決定された特定散乱角度95°に関する情報は上記シミュレータ装置60のEEPROM63−3等に記憶される。
一方,スペクトルSp52が単独で出現している理論スペクトルが見つからない場合は,その後,処理は終了する(S3のNo側)。もちろん,散乱角度を変更して,ステップS1からの手順に従って再度特定散乱角度を探索してもかまわない。
【0016】
次に,上記HRBS装置Aにおいて散乱角度が95°となるように電磁石スペクトロメータZやゴニオメータ21等を移動,操作して,散乱角の設定を行い,その後,設定後の散乱角95°の方向へ散乱する散乱イオンのエネルギーを実測して実測スペクトルを取得する(S4:実測スペクトル取得工程)。即ち,被解析層52に相当するスペクトルが単独で出現するときの特定散乱角度95°へ散乱した散乱粒子のエネルギーの実測スペクトルを取得する。なお,前記したように,検出素子8からの検出信号に基づいて実測スペクトルを演算する前記演算制御部63が実測スペクトル取得手段に相当する。
上記のように取得された散乱角度95°に対応する実測スペクトルを図8に示す。なお,図8に示す実測スペクトルとシミュレーションにより得られた図7(b)の理論スペクトルとは若干そのスペクトル波形が異なるが,この相違は試料2の各層51,52,53の厚さ等に起因するものである。
【0017】
続いて,上記シミュレータ装置60(図6)によって,上記ステップS4で取得された実測スペクトル内に単独で出現する上記被解析層52のスペクトル(以下,単独スペクトルという)を抽出する処理が実行される(S5:単独スペクトル抽出工程)。例えば,上記シミュレータ装置60により得られた実測スペクトルが複数表示されたディスプレイ等から人が実行した前記入力装置64からのキー入力やマウス操作入力に応じて一の単独スペクトルを選択する処理が実行される。なお,かかる処理は前記演算制御部63により実行され,このときの前記演算制御部63が単独スペクトル抽出手段に相当する。
その後,抽出された上記単独スペクトルSp52の波形で囲まれたスペクトル面積(図8の斜線部分)が前記演算制御部63により周知の積分演算処理等によって算出され(S6),この算出されたスペクトル面積に基づいて上記被解析層52の厚さがシミュレーションにより算出される(S7)(S6,S7:層厚算出工程)。このようにシミュレーションにより上記被解析層52の厚さを算出する処理を行う前記演算制御部63が層厚算出手段に相当する。なお,本実施の形態では,上記スペクトル面積を算出する例について説明するが,他の例として,例えば,上記単独スペクトルSp52における散乱イオンのカウント総数を求めて,この求められたカウント総数を基に上記被解析層52の厚さを算出する形態であってもよい。
ここで,上記ステップS7における算出例としては,例えば,上記単独スペクトルSp52の波形で囲まれたスペクトル面積と,予め取得された基準エネルギースペクトル(以下,基準スペクトルという)の波形で囲まれたスペクトル面積とを比較することにより上記被解析層52の厚さを算出することが考えられる。ここに,上記基準スペクトルは,上記試料2と同じ組成分布を有する試料(即ち,組成分布が既知の試料)であって,各層の層厚が既知の基準試料を基にシミュレーション或いは実測により予め取得された上記被解析層52のスペクトルをいう。このように正確な基準スペクトルとの比較により算出された層厚であれば,算出値の信頼性が高い。なお,この場合,上記基準スペクトルと上記単独スペクトルSp52とは,その測定時における入射イオンの入射量や測定時間等が異なるためそのままでは比較対象とすることができない。そのため,例えば,シリコン基板54のスペクトルやそのカウント値を基準にして上記単独スペクトルSp52を上記基準スペクトルに合わせこむ周知の校正処理を上記単独スペクトルSp52のスペクトル面積を算出する前に行う必要がある。
なお,上記ステップS7における具体的なシミュレーション処理は,シミュレータ装置に予め記憶された前記式(1)〜(4)や,阻止係数ε,入射イオンのエネルギー等の既知のデータ等を用いて行われる処理であって,半値幅に基づいて層厚を算出する従来のシミュレーション処理と処理自体に相違は無いため,ここでの詳細な説明は省略する。
【0018】
上述の説明では上記被解析層52の厚さを求める手法について述べてきたが,上記試料2を構成する層51,53を被解析層として同手法により層厚を求めることができることはいうまでもない。なお,このようにして算出された上記試料2の各層の層厚を反映した元素プロファイルを図9に示す。
このように,従来は実測スペクトルの半値幅(図4の量矢印Y)に基づいて被解析層の厚さがシミュレーションにより算出されていたが,本発明によればスペクトル面積に基づき被解析層の厚さがシミュレーションにより算出されるため,カウント数(計測収量)が少ない薄膜層や薄膜試料であっても,フィッティング法によらず高精度に被解析層の厚さを算出することができ,解析全般における処理能力が向上する。
【実施例1】
【0019】
上述の実施の形態では,三層構造の試料2を解析対象としたスペクトル解析方法について説明したが,実際には,多数層から構成された薄膜試料に対して解析がなされる。したがって,図7の理論スペクトルのように被解析層の単独スペクトルが現れないことも多々ある。この場合,上述の説明では,単独スペクトルを抽出することができないとしてステップS3において処理を終了させていた。しかしながら,例えば,図10のスペクトル図に示すように,被解析層の単独スペクトルSp91aに相当するスペクトルSp91bがシミュレーションにより得られた理論スペクトルに現れている場合は,このときの散乱角度を前記した特定散乱角度として実測スペクトルを取得し,その後,このスペクトルSp91aを抽出することにより,層厚さを求めることが可能である。このときの上記ステップS5における抽出処理は,例えば,実測スペクトルの波形の急峻度が一定値以上であるかどうかにより当該波形の編曲点,即ち,図示するポイント92,93を検出することにより上記スペクトルSp91bを抽出するなどの種々の手法が考えられる。
【実施例2】
【0020】
また,上述の実施の形態では,単一元素からなる薄膜層で構成された試料2を解析対象としたスペクトル解析方法について説明したが,実際には,被解析層が複数の元素からなる化合物(酸化化合物,硫化化合物,フッ素化合物等)である場合も考えられる。このような化合物からは,該化合物に含まれる複数の元素に対応するスペクトルが得られる。ここで,ある軽元素の酸化化合物から取得されたスペクトルを図11に示す。なお,図中のSp101が軽元素に相当するスペクトルであり,Sp102が酸素に相当するスペクトルである。この場合は,上記いずれのスペクトルの面積を用いても化合物からなる被解析層の層厚さを求めることができるが,解析精度を高めるために,スペクトルSp101及びSp102それぞれの波形で囲まれたそれぞれのスペクトル面積に基づいて上記被解析層の層厚さを算出してもかまわない。
【実施例3】
【0021】
上述の実施の形態では,ステップS7(図5参照)において,上記単独スペクトルSp52及び上記基準スペクトルの各々のスペクトル面積を比較することにより上記被解析層52の厚さを算出する旨を述べた。この比較の一例として,上記単独スペクトルSp52のスペクトル面積と上記基準スペクトルのスペクトル面積との差分をとり,この差分に基づいて上記被解析層1の厚さを算出することが考えられる。ここに,図12(a)に基準スペクトルSp111と上記単独スペクトルSp52とを重ね合わせたスペクトルを示し,(b)に基準スペクトルSp111と上記単独スペクトルSp52との差分スペクトルSp112を示す。
図12(b)に示される差分スペクトルSp112のスペクトル面積は,即ち,被解析層52の層厚と前記基準試料における該被解析層に対応する層の層厚との差を表す。したがって,上記差分スペクトルSp112のスペクトル面積を求め,その値の正或いは負を判断することにより,上記被解析層52が基準厚さより厚いか薄いかを的確に判定することが可能となる。また,以下の式(5)に基づき算出された差分厚さが所定の許容範囲内に属するか否かで,試料の製造精度を検証することも可能となる。
【数4】
なお,上式(5)中のΔtは差分厚さ,S0は基準スペクトルSp112のスペクトル面積,S1は単独スペクトルSp52のスペクトル面積,Tは基準厚さを示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係るスペクトル解析方法が適用されるHRBS分析装置Aの概略構成を示す全体図。
【図2】上記HRBS分析装置Aの各構成要素を模式的に示した模式図。
【図3】エネルギースペクトルに基づいて試料の厚さ等の組成分布を解析する手法の基本原理を説明する図。
【図4】図3に示す試料2にイオンビームを照射させたときに得られるエネルギースペクトルの一例を示すスペクトル図。
【図5】上記スペクトル解析方法の手順の一例を説明するフローチャート。
【図6】本発明の実施の形態に係るスペクトル解析装置の一例であるシミュレータ装置60の概略構成を示すブロック図。
【図7】シミュレーションにより得られた理論スペクトルを示すスペクトル図。
【図8】上記HRBS分析装置Aで実測された試料2の実測スペクトルを示すスペクトル図。
【図9】シミュレーションにより得られた試料の元素プロファイルを示す図。
【図10】多層構造の試料のスペクトルの一例を示すスペクトル図。
【図11】所定の酸化化合物から取得されたスペクトルの一例を示すスペクトル図。
【図12】(a)は基準スペクトルSp111と上記単独スペクトルSp52とを重ね合わせたスペクトル図,(b)は基準スペクトルSp111と上記単独スペクトルSp52との差分スペクトルSp112を示すスペクトル図。
【符号の説明】
【0023】
A…HRBS分析装置
X…イオンビーム発生装置
Y…ウィーンフィルタ
Z…電磁石スペクトロメータ
2…試料
3…真空容器
7…スリット
8…検出素子
11…四重極レンズ
21…ゴニオメータ
22…トランスファーロッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層或いは複数層からなる試料にイオンビームが照射されることによって上記試料で散乱した散乱粒子のエネルギースペクトルに基づいて,上記試料の深さ方向の組成分布を解析するスペクトル解析方法であって,
被解析層に相当するエネルギースペクトルが単独で出現するときの特定散乱角度へ散乱した散乱粒子のエネルギーを実測して実測エネルギースペクトルを取得する実測スペクトル取得工程と,
上記実測スペクトル取得工程により取得された実測エネルギースペクトルに単独で出現する上記被解析層の単独エネルギースペクトルを抽出する単独スペクトル抽出工程と,
上記単独スペクトル抽出工程により抽出された上記単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積に基づいて上記被解析層の厚さを算出する層厚算出工程と,
を備えてなることを特徴とするスペクトル解析方法。
【請求項2】
上記特定散乱角度が,
上記試料の深さ方向についての予め設定された既定分布に基づいて,上記散乱粒子の所定の散乱角度に対応した理論エネルギースペクトルをシミュレーションにより取得する理論スペクトル取得工程と,
上記理論スペクトル取得工程により取得された理論エネルギースペクトル内に被解析層に相当するエネルギースペクトルが単独で出現するときの散乱角度を探索する散乱角度探索工程と,により探索されたものである請求項1に記載のスペクトル解析方法。
【請求項3】
上記層厚算出工程が,複数元素からなる被解析層のそれぞれの元素の単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたそれぞれのスペクトル面積に基づいて上記被解析層の厚さを算出するものである請求項1又は2に記載のスペクトル解析方法。
【請求項4】
上記層厚算出工程,上記単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積と,予め取得された基準エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積とを比較することにより上記被解析層の厚さを算出するものである請求項1〜3のいずれかに記載のスペクトル解析方法。
【請求項5】
上記基準エネルギースペクトルは,深さ方向の組成分布及び層厚が既知の基準試料を基にシミュレーション或いは実測により予め取得された上記被解析層のエネルギースペクトルである請求項4に記載のスペクトル解析方法。
【請求項6】
上記層厚算出工程が,上記単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積と,予め取得された上記基準エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積との差分に基づいて上記被解析層の厚さを算出するものである請求項1〜5のいずれかに記載のスペクトル解析方法。
【請求項7】
上記スペクトル面積が,所定のエネルギースペクトルにおける散乱粒子のカウント総数に相当するものである請求項項1〜6のいずれかに記載のスペクトル解析方法。
【請求項8】
単層或いは複数層からなる試料にイオンビームが照射されることによって上記試料で散乱した散乱粒子のエネルギースペクトルに基づいて,上記試料の深さ方向の組成分布を解析するスペクトル解析装置であって,
被解析層に相当するエネルギースペクトルが単独で出現するときの特定散乱角度へ散乱した散乱粒子のエネルギーを実測して実測エネルギースペクトルを取得する実測スペクトル取得手段と,
上記実測スペクトル取得手段により取得された実測エネルギースペクトルに単独で出現する上記被解析層の単独エネルギースペクトルを抽出する単独スペクトル抽出手段と,
上記単独スペクトル抽出手段により抽出された上記単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積に基づいて上記被解析層の厚さを算出する層厚算出手段と,
を具備してなることを特徴とするスペクトル解析装置。
【請求項1】
単層或いは複数層からなる試料にイオンビームが照射されることによって上記試料で散乱した散乱粒子のエネルギースペクトルに基づいて,上記試料の深さ方向の組成分布を解析するスペクトル解析方法であって,
被解析層に相当するエネルギースペクトルが単独で出現するときの特定散乱角度へ散乱した散乱粒子のエネルギーを実測して実測エネルギースペクトルを取得する実測スペクトル取得工程と,
上記実測スペクトル取得工程により取得された実測エネルギースペクトルに単独で出現する上記被解析層の単独エネルギースペクトルを抽出する単独スペクトル抽出工程と,
上記単独スペクトル抽出工程により抽出された上記単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積に基づいて上記被解析層の厚さを算出する層厚算出工程と,
を備えてなることを特徴とするスペクトル解析方法。
【請求項2】
上記特定散乱角度が,
上記試料の深さ方向についての予め設定された既定分布に基づいて,上記散乱粒子の所定の散乱角度に対応した理論エネルギースペクトルをシミュレーションにより取得する理論スペクトル取得工程と,
上記理論スペクトル取得工程により取得された理論エネルギースペクトル内に被解析層に相当するエネルギースペクトルが単独で出現するときの散乱角度を探索する散乱角度探索工程と,により探索されたものである請求項1に記載のスペクトル解析方法。
【請求項3】
上記層厚算出工程が,複数元素からなる被解析層のそれぞれの元素の単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたそれぞれのスペクトル面積に基づいて上記被解析層の厚さを算出するものである請求項1又は2に記載のスペクトル解析方法。
【請求項4】
上記層厚算出工程,上記単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積と,予め取得された基準エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積とを比較することにより上記被解析層の厚さを算出するものである請求項1〜3のいずれかに記載のスペクトル解析方法。
【請求項5】
上記基準エネルギースペクトルは,深さ方向の組成分布及び層厚が既知の基準試料を基にシミュレーション或いは実測により予め取得された上記被解析層のエネルギースペクトルである請求項4に記載のスペクトル解析方法。
【請求項6】
上記層厚算出工程が,上記単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積と,予め取得された上記基準エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積との差分に基づいて上記被解析層の厚さを算出するものである請求項1〜5のいずれかに記載のスペクトル解析方法。
【請求項7】
上記スペクトル面積が,所定のエネルギースペクトルにおける散乱粒子のカウント総数に相当するものである請求項項1〜6のいずれかに記載のスペクトル解析方法。
【請求項8】
単層或いは複数層からなる試料にイオンビームが照射されることによって上記試料で散乱した散乱粒子のエネルギースペクトルに基づいて,上記試料の深さ方向の組成分布を解析するスペクトル解析装置であって,
被解析層に相当するエネルギースペクトルが単独で出現するときの特定散乱角度へ散乱した散乱粒子のエネルギーを実測して実測エネルギースペクトルを取得する実測スペクトル取得手段と,
上記実測スペクトル取得手段により取得された実測エネルギースペクトルに単独で出現する上記被解析層の単独エネルギースペクトルを抽出する単独スペクトル抽出手段と,
上記単独スペクトル抽出手段により抽出された上記単独エネルギースペクトルの波形で囲まれたスペクトル面積に基づいて上記被解析層の厚さを算出する層厚算出手段と,
を具備してなることを特徴とするスペクトル解析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−98292(P2006−98292A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286495(P2004−286495)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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