説明

スペクトルCTのための検出器アレイ

放射線検出器は、低エネルギーの放射線イベントを可視光に変換し、高エネルギー放射線を透過するように、X線源(14)に対向して備えられている上部シンチレータ(30)の二次元アレイを有する。下部シンチレータ(30)の二次元アレイは、透過された高エネルギー放射線を可視光に変換するように、X線源(14)から遠位側に上部シンチレータ(30)に隣接して備えられている。上部及び下部光検出器(38,38)は、上部及び下部シンチレータ(30,30)の内側(60)においてそれぞれのシンチレータ(30,30)に光学的に結合されている。光学要素(100)は、上部シンチレータ(30)から光を収集して、対応する上部光検出器(38)に導くように、上部シンチレータ(30)に光学的に結合されている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像システムの使用に関する。この出願の主題は、スペクトルコンピュータ断層撮影(CT)スキャナにおける特定のアプリケーションを探すことであり、特定の参考文献により説明する。しかしながら、本発明においては、医療用及び非医療用検査のためのDF及びRF撮像、X線透視、X線撮影及び他の撮像システムと組み合わせて用いることを探す。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影(CT)は、典型的には、検査領域を透過するX線のファンビーム、ウェッジビーム又はコーンビームを生成するX線源を用いる。検査領域において配置される被検体は透過するX線の一部と相互作用し、そして吸収する。検出器要素のアレイを有する二次元放射線検出器がX線源と対向して備えられている。放射線検出器は、透過X線の強度を測定するシンチレータ層及び下地光検出層を有する。デュアルエネルギーCTシステムにおいては、シンチレーション結晶、例えば、フッ化カルシウム(CaF)及びヨウ化ナトリウム(NaI)は、2つのそれぞれの光電子増倍管の各々に結合されている。それら2つのシンチレータは隣り合わせて置かれることが可能であり、又は、米国特許第4,247,774号明細書に記載されているように、それらのシンチレータは、X線の一部が両方のシンチレータを透過するように部分的に重なり合わされるように形成されることが可能である。低エネルギーのX線は上部のCaFシンチレータに吸収され、シンチレーションをもたらす一方、高エネルギーのX線は、NaIにおいてシンチレーションをもたらすように透過する。そのシンチレーションは、対応する光電子増倍管において電流をもたらす。
【0003】
典型的には、X線源及び放射線検出器は、ガントリが被検体の投影ビューの角度範囲を得るために回転されるように、回転するガントリの反対側に備えられる。一部の構成においては、X線源は回転するガントリに備えられる一方、放射線検出器は静止ガントリに備えられる。どちらの構成においても、投影ビューは、被検体又は選択された被検体の一部の三次元画像表現を生成するように、フィルタリング逆投影又は他の再構成方法を用いて電子信号から再構成されるものである。
【0004】
デュアルエネルギーCTシステムにおいては、高X線エネルギー及び低X線エネルギーに対応する電子信号は同時に収集され、本質的に登録される別個の画像に再構成される。デュアルエネルギースライスデータはまた、ビームハードニング補正を与えるように用いられることが可能である。
【0005】
一部の現在用いられているCT検出器は、ガドリニウム酸硫化物(GOS)層を用いている。特定のCT検出器においては、低エネルギーのX線を検知する上部層は、典型的には、50keV以下のエネルギーを有するX線光子のかなりの量を吸収する一方、90keV以上のエネルギーを有するX線光子のかなりの量を透過する。それらの基準は、約0.1mmより薄いGOSの上部層と適合されることが可能である。典型的には、各々の光検出器のアクティブな領域は、対応するシンチレーション層の厚さと適合するように形成される。光検出器の光収集効率は、光検出器のアクティブな領域に正比例するため、光検出器の0.1mmの高くアクティブな領域は、不適切な低光収集効率をもたらす。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては、上記の及び他の課題を克服する改善された方法及び装置について検討されている。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一特徴にしたがって、放射線検出器について開示している。上部シンチレータは、放射線を受け入れ、低エネルギーの放射線を光に変換し、そして高エネルギーの放射線を透過するように、X線源に対向して備えられている。第1光検出器は、上部シンチレータからの光を受け入れ、その光を電気信号に変換するように、上部シンチレータに光学的に結合されている。光学要素が、上部シンチレータから光を収集し、その光を第1光検出器に導くように、上部シンチレータ及び第1光検出器に光学的に結合されている。下部シンチレータは、上部シンチレータを透過した高エネルギーの放射線を光に変換するように、X線源から遠位側にある上部シンチレータに隣接して備えられている。第2光検出器は、下部シンチレータからの光を受け入れ、そしてその光を電気信号に変換するように、下部シンチレータと光学的に結合されている。
【0008】
本発明の他の特徴にしたがって、放射線検出器の製造方法について開示している。上部及び下部シンチレータは、上部及び下部光検出器の光検知面に備えられている。光学要素が上部シンチレータに結合されている。その光学要素及び上部シンチレータは下部光検出器に光学的に結合されている。下部シンチレータは下部光検出器に光学的に結合されている。
【0009】
本発明の一有利点は、コストパフォーマンスの高い放射線検出器を与えることにある。
【0010】
他の有利点は、スペクトルCTについて高光検出効率を与えることにある。
【0011】
他の有利点は、X線スペクトル応答が温度により実質的に変化しないX線検出器を与えることである。
【0012】
他の有利点は、薄いシンチレータについて実質的に改善された光収集効率を有することである。
【0013】
多くの付加有利点及び利点については、以下の好適な実施形態についての詳細説明を読むことにより当業者に明らかになるであろう。
【0014】
本発明は、種々の構成要素及び構成要素の構成、並びに種々の処理操作及び処理操作の構成の形をとることが可能である。図は単に好適な実施形態を例示するためのものであり、本発明を制限することが意図されているのではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1を参照するに、コンピュータ断層撮影(CT)装置又はCTセンサ10はガントリ12を有する。X線源14及び放射線源コリメータ16は、被検体支持部20に配置された患者のような被検体(図示せず)を有する検査領域18に方向付けられる、ファン形状、コーン形状、ウェッジ形状又は他の形状のX線ビームを協働して生成する。被検体支持部20はZ方向に直線的に移動可能であり、回転ガントリ22におけるX線源14はZ軸の周りを回転する。
【0016】
好適には、回転ガントリ22は、検査領域18の周りでX線源14及びコリメータ16の一般に螺旋状の軌道をもたらすように被検体支持部20の直線状の調整と同時に回転する。しかしながら、他の撮影モード、例えば、軸方向の画像を取得する、X線源14の一般に円形の軌道をもたらすように被検体支持部20を静止したままにするときに、ガントリ22が回転する単独又は複数スライス撮影モードをまた、用いることが可能である。軸方向の画像が取得された後、被検体支持部は、Z方向に所定距離だけ任意にステップ移動し、軸方向画像の取得が、Z方向に沿って断続的なステップでボリュームデータを取得するように繰り返される。
【0017】
放射線検出器又は検出器アレイ24が、X線源14の向かい側にガントリ22において備えられている。放射線検出器24は、シンチレータ又は結晶28のシンチレーションアレイ26を有する。シンチレーションアレイ26はレイヤー30において備えられ、X線ビームのファン角と好適に適合する選択された角度範囲に亘っている。放射線シンチレーションアレイ26はまた、nxm、例えば、16x16、32x32、16x32等のマトリクスのシンチレータを構成するように、Z方向に沿って広がっている。シンチレーションアレイ26のレイヤー30は、Z方向に対して一般に垂直な方向に積層されている。放射線検出器24は、ガントリ22が回転するにつれて、一連の投影ビューを取得する。X線源の回転中に放射線検出器の連続的なシフト位置にX線が連続的に照射されるように、回転ガントリを取り囲む静止部分に放射線検出器24を備えることがまた、検討されている。散乱防止グリッド32が、シンチレーションアレイ26の放射線受け入れ面に備えられている。そのグリッド32は、放射線を通過するようにする開口34を有する。光検出器又は他の光検出器38のアレイは、検出要素又はディクセル(dixel)を構成するようにシンチレータアレイ26におけるシンチレータ28の各々に光学的に結合されている。
【0018】
再構成処理器42は、画像メモリ44に記憶されている被検体又は被検体の選択された一部の三次元画像表現を生成するように、フィルタリング逆投影、n−PI再構成方法又は他の再構成方法を用いて、取得された投影データを再構成する。画像再構成は、オペレータが見るためのユーザインターフェース48又は他のディスプレイ装置、プリント装置等に表示される人間が視認することができる画像を生成するように、ビデオ処理器46によりレンダリングされる又は操作される。
【0019】
ユーザインターフェース48は、オペレータがCT撮影セッションを初期化し、実行し、そして制御することが可能であるように、CTスキャナ12と人間のオペレータが対話することができるように付加的にプログラムされる。ユーザインターフェース48は、病院又は診療所情報ネットワークのような通信ネットワークと任意に接続され、そのネットワークを介して、画像再構成が医療関係者に送信され、患者の情報のデータベースにアクセスすることができる等が行われる。
【0020】
図2を参照するに、シンチレーションアレイ26は、下部又は下方シンチレーションレイヤー30及び上部又は上方シンチレーションレイヤー30を有するダブルデッカー(double decker)アレイを有し、それらのレイヤーはレイヤー58により分離されている。光検出器38の光検出アレイ36、例えば、シリコン光検出器、アモルファスシリコン、CCD(Charge−Coupled Device)、CMOS又は他の半導体光検出器は、シンチレーションアレイ26と光学的に通信可能である。更に具体的には、光検出器は、アクティブな領域のアレイを有する光感応レイヤーと、好適には、チップ50に集積して形成されたアナログ第2レイヤーとを有する。
【0021】
検査領域18を透過したX線は、方向Uに沿って上部シンチレーションレイヤー30に衝突する。X線源14に最も近い上部シンチレーションレイヤー30は、検査領域18を透過した最軟又は最短エネルギーX線ビームを光に変換する。X線源から最も遠い下部シンチレーションレイヤー30は、最硬X線を受け入れる。各々のレイヤー30のディクセルからの光信号は、光検出器アレイ36の対応する光検出器により検出される。上部シンチレーションレイヤー30は、実質的に全ての50keV又はそれ以下のX線光子を光に変換し、実質的に全ての90keV又はそれ以上のX線光子を下部シンチレーションレイヤー30に透過するように選択され、サイズ決めされる。
【0022】
光検出器アレイ36は、各々のダブルデッカーアレイ26の内側60において方向Uに沿って鉛直方向に配列されている。光検出器38に隣接する上部及び下部シンチレーションレイヤー30、30は、光検出器アレイ36に光を通信するように光学的に結合されている。光学接着剤のエポキシセメントが光学的結合を達成するように用いられることが可能である。反応性コーティングが分離レイヤー58として機能することが可能である。
【0023】
図2を継続して参照し、更に図3を参照するに、光検出器アレイ36は、好適には、上部及び下部光検出器アレイ82、84、即ち、鉛直方向のチップ50の両方の部分を有する二次元アレイである。各々のシリコンチップ50は、それぞれ上部及び下部光検出器38、38の対を有する。各々の上部光検出器38のアクティブ領域94は、上部シンチレーションレイヤー30に対向して備えられ、それに結合されている一方、各々の下部光検出器38のアクティブ領域96は、下部シンチレーションレイヤー30に対向して備えられ、それに結合されている。シリコンチップ50は、好適には、シンチレーションアレイ26の隣接列間のZ方向において互いに平行に取り付けられている。各々のチップ及びチップが支えられているシンチレータは直線状タイル98を構成する。それらのチップはX線非感応性ゾーンを構成している。それ故、それらのゾーンの各々は、好適には、薄く、0.1乃至0.15mmである。
【0024】
一実施形態においては、上部及び下部光検出器38、38はバックコンタクト型フォトダイオードであり、シンチレーションにより生成される放射線に感応するそれぞれのアクティブ領域94、96を有することが可能である。前面光検出器、例えば、前面に好適に備えられている電気的コンタクトを有するフォトダイオード又はCCD(Charge−Coupled Device)は、光を検出し、その光を、下部シンチレータの下方のコネクタに前記チップの前面における導体が通す電気信号に変換する。背面照明により光を変換する他の検出器がまた、検討されている。
【0025】
例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)(図示せず)のようなエレクトロニクスは、光検出器アレイ36を動作させるために電気駆動出力を生成し、光検出器アレイ36により生成され、光検出器アレイ36により生成された検出器信号を受信する。ASICは、光検出器の電流のディジタルデータへの変換をもたらす、選択された検出器信号の処理を実行する。
【0026】
各々のレイヤー30のディクセルからの信号は重み付けされ、スペクトル的に重み付けされた画像データを形成するように結合される。その重み付けは、ディクセルレイヤーの1つ又はそれ以上のゼロ化を有することが可能である。ディクセル間で異なる相対重み付けを選択することにより、エネルギースペクトルの選択された部分、即ち、選択されたX線エネルギー吸収領域をエンファシスする及びデエンファシスする画像データが生成される。重み付けを適切に選択することにより、組織をエンファシスするように特定の選択されたX線エネルギー吸収領域のCT画像が再構成される一方、他の選択された組織は、入れ換えられる又はその再構成画像において消去される。例えば、乳房の組織におけるカルシウム及び増影剤におけるヨウ素は、それぞれの吸収線のどちらかの側をエンファシスするように重み付けされた個々のディクセルからの画像又は信号で置き換えることによりエンファシスされることが可能である。2つのレイヤーが示されているが、エネルギー識別の更なるレベルを与えるように複数のレイヤーが与えられることが可能であることが理解される必要がある。
【0027】
一実施形態において図2を継続して参照するに、上部及び下部シンチレーションレイヤー30、30は同じシンチレーション材料から作られている。上部シンチレーションレイヤー30は、低エネルギーX線を検知するように下部シンチレーションレイヤー30に比較して薄く、高エネルギーX線を透過する。例えば、上部シンチレーションレイヤー30は、50keV以下のエネルギーのX線を吸収し、90keV以上のエネルギーのX線の75%又はそれ以上を透過する。一実施形態においいては、GOSが、上部及び下部シンチレーションレイヤー30、30の両方を形成するように用いられる。そのような検出器においては、吸収及び透過基準は、約0.5mm以下の厚さのGOSの上部シンチレーションレイヤー30及び約1.3mm乃至2.0mmの厚さの下部シンチレーションレイヤー30と適合されることが可能である。典型的には、光検出器アクティブ領域94、96は、上部及び下部シンチレーションレイヤー30、30のそれぞれの厚さに適合するように作られる。
【0028】
光検出器のアクティブ領域に光学的に結合された透明で、非散乱性の塗膜シンチレータを有する検出器の光収集効率LCol−effは、光検出器のアクティブ領域Aに正比例し、略次式のように表され、
Col−eff=(A(1−RSi))/((A(1−R)+(A+A)(1−RSi))
ここで、A、Aは光検出器の“アクティブ”及び“デッド”領域であり、RSiはシンチレータ発光強度の波長における光検出器の拡散反射率であり、A、Rは、シンチレータ結晶の塗膜領域の面積及び拡散反射率である。
【0029】
例えば、約95%の反射率のコーティングを有する断面積1mmx1mmのシンチレータについては、シンチレーションレイヤーの厚さが約1.5mmに等しい場合、光収集効率LCol−effは約75%に等しい。同じシンチレータについてのシンチレーションレイヤーの厚さが約0.25mmに減少されるとき、発光光の非常に僅かな量が光検出器のアクティブ領域を照射するために、光収集効率LCol−effは約15%に減少される。
【0030】
PMMA(Perspex(登録商標))、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、ポリカーボネート(Lexan)、エポキシ樹脂等の透明で、低Zプラスチック製導光材料の矩形ブロック又はプリズム100が、そのアレイにおける各々の上部シンチレータ30要素の上部表面62に光学的に結合されている。代替として又は付加的に、そのシンチレータの下部表面がその透明なプリズムに光学的に結合される。上部シンチレータ30の上部表面64、上部及び下部シンチレーションレイヤー30、30の側部表面70、72並びにプリズムIDOの上部表面112は塗膜されている、又は光反射性コーティング又は層80で覆われている。その反射性コーティング80は、一体としてプリズム及びシンチレータを覆っている。上部シンチレーションレイヤー30により発光される光は、そのシンチレータレイヤーを通って一部が、そしてプリズムを通って一部が上部光検出器に搬送される。シンチレータとプリズム100との間には反射性コーティングは存在しない。上部光検出器38のアクティブ領域94の高さは、上部シンチレータ30及びプリズム又はブロック100の高さの和に実質的に等しく、高さh1に等しく、それは、関連上部シンチレーションレイヤー30の厚さ又は高さh2より実質的に大きい。光検出器のそのように大きいアクティブ領域は光収集効率の増加をもたらす。一実施形態においては、上部シンチレーションレイヤー30の高さh2は約0.10mmに等しく、プリズム100の高さh3は約0.90mmに等しく、そして上部光検出器アクティブ領域94の高さh1は約1.00mmに等しい。上部光検出器38の光収集効率LCol−effは、約0.95mmに等しい高さh4の下方光検出器アクティブ領域96により収集された光を失うことなく、4倍に増加する。図示している実施形態における下部シンチレーションレイヤー30の高さh5は約1mmに等しい。
【0031】
好適には、ブロック又はプリズム100の高さは、上部及び下部光検出器38、38のアクティブ領域を等しくするように選択される。
【0032】
好適には、光学的結合材料、例えば、光学的結合セメント102は、上部及び下部シンチレーションレイヤー30、30と光検出器アレイ36との間の光学的結合を改善するように、内側60と光検出器との間に備えられている。
【0033】
下部シンチレーションレイヤー30及び上部シンチレーションレイヤー30の両方は、ここでは、同じシンチレーション材料から成ることが可能であるため、単一構成要素のサプライチェーンのみを確立して維持することができるため、製造コストを低減することができる。ここでは、各々のディクセルにおけるシンチレータの対が等しいX線応答温度係数を有するために、画像品質もまた、改善される。これは、長い撮像中に、検出器アレイを準備しているときに、スペクトル応答を再構成する必要性を低減する。
【0034】
図4を参照するに、下部シンチレーションレイヤー30は、ガドリニウム酸硫化物(GdS,Pr,Ce又は“GOS”)のような高密度で高Zの材料を有する一方、上部シンチレーションレイヤー30は、好適には、テルル(Te)がドープされたセレン化亜鉛(ZnSe)のような低Zの材料か又は高Zの材料のどちらかを有する。この実施形態においては、セレン化亜鉛シンチレータレイヤーは約1.5mmの厚さであり、プリズムは、用いられる場合には、約0.5mm又はそれより薄い厚さである。代替として、上部レイヤー30は、ビーム中の軟X線のみが吸収されるように、少ないX線吸収を与えるイットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)又は他の類似する材料を有する。イットリウム−アルミニウム−ガーネットの場合、シンチレータレイヤーは約1.0mmの厚さであり、プリズムは約0.5mm又はそれ以下の厚さである。代替として、シンチレータの組み合わせは、YAGのレイヤー0.5mm、GOSのレイヤー0.05mm及びプリズム0.5mmのようにして用いられることが可能である。他の代替としては、プリズムはシンチレータであり、例えば、GOS0.05mmを有するZnSeのレイヤー0.75mmであることが可能である。多くの他のシンチレータ及び組み合わせを検討することができる。
【0035】
図5を参照するに、シンチレーションアレイ26は、上部及び下部シンチレーションレイヤー30、30の間に備えられている中間のシンチレーションレイヤー30,30,...,30を有する。好適には、下部シンチレーションレイヤー30のみが一般に厚い一方、下部シンチレーションレイヤー30の上方の各々のレイヤーは、好適には、相対的に薄く、それぞれの中間レイヤーに入射するX線スペクトルの小さい範囲にのみ応答する。X線スペクトルの残りの部分は、下方の中間レイヤーの前方に透過する。各々の中間シンチレーションレイヤー30,30,...,30は、対応する中間光検出器38,38,...,38に光学的に結合されている。各々の中間シンチレーションレイヤー30,30,...,30から対応する中間光検出器38,38,...,38に光を導くように上記の方法で光学プリズム100,100,...,100を用いることにより下部シンチレーションレイヤー30以外の全ての光学的高さを増加させることは特に有利である。典型的には、レイヤーnにおいて用いられるプリズムの高さは、プリズム及びそれぞれのシンチレーションレイヤーの高さの和がシンチレータ30、30の幅wに略等しいように選択され、それ故、全塗膜領域に対する光検出器アクティブ領域の比が許容可能であることを確実にする。
【0036】
図6A及び6Bを参照するに、格子32は、足又はストリップ110を有し、それらの各々は、好適には、各々の対応するシリコンチップ50の厚さと重なり合う。このように、格子32はシリコンチップ50をX線放射から保護する。例えば、シリコンチップが約0.125mmの厚さである場合、足110は約0.140mmの厚さであることが可能である。
【0037】
本発明について、上記で、好適な実施形態に関して説明している。明らかに、上記の詳細説明を読んで理解することにより、当業者にとって、修正及び変形が可能であることが分かる。本発明においては、そのような修正及び変形が、同時提出の特許請求の範囲又はそれと同等の範囲内にあるとき、それら全てを包含するように意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】撮影システムの模式図である。
【図2】放射線検出器の一部の模式図である。
【図3】放射線検出器の一部の模式的平面図である。
【図4】放射線検出器の代替の実施形態の一部の模式図である。
【図5】複数のシンチレータのレイヤーを有する放射線検出器の一部の模式図である。
【図6A】格子を有する放射線検出器の模式的側面図である。
【図6B】格子の模式的平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を受け入れるようにX線源に対向して備えられ、低エネルギーの放射線を光に変換し、高エネルギーの放射線を透過する上部シンチレータ;
前記上部シンチレータからの前記光を受け入れて電気信号に変換するように、前記上部シンチレータに光学的に結合されている第1光検出器;
前記上部シンチレータから前記光を収集して前記第1光検出器に導くように、前記上部シンチレータ及び前記第1光検出器に光学的に結合されている光学要素;
前記透過された高エネルギー放射線を光に変換するように遠位側に備えられている下部シンチレータ;並びに
前記下部シンチレータからの前記光を受け入れて電気信号に変換するように、前記下部シンチレータと光学的に結合されている第2光検出器;
を有する放射線検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線検出器であって、前記第1及び第2光検出器は、層状化された前記上部及び下部シンチレータの内側において鉛直方向に隣接して備えられている、放射線検出器。
【請求項3】
請求項1に記載の放射線検出器であって、前記上部シンチレータはある厚さを有し、前記第1光検出器は、前記上部シンチレータの前記厚さより実質的に大きい高さのアクティブ領域を有する、放射線検出器。
【請求項4】
請求項1に記載の放射線検出器であって、前記上部及び下部シンチレータはガドリニウム酸硫化物を有する、放射線検出器。
【請求項5】
請求項4に記載の放射線検出器であって、上部シンチレータの厚さは約0.1mmに等しく、前記第1光検出器のアクティブ領域の高さは少なくとも0.65mmである、放射線検出器。
【請求項6】
請求項1に記載の放射線検出器であって、前記光学要素は透明な低Z材料である、放射線検出器。
【請求項7】
請求項1に記載の放射線検出器であって、前記光学要素は:
PMMA;
エポキシ;
ポリエチレンテレフタレート;
ポリカーボネート;
ポリスチレン;
YAG;及び
ZnSe;
の少なくとも1つを有する、放射線検出器。
【請求項8】
請求項1に記載の放射線検出器であって:
前記上部シンチレータと接していない前記光学要素の表面と、前記上部及び下部光検出器の光感応性領域に隣接する表面を除く前記上部及び下部シンチレータの全ての側部とに形成された反射性コーティング;
を更に有する、放射線検出器。
【請求項9】
請求項1に記載の放射線検出器であって、前記上部シンチレータは、セレン化亜鉛及びイットリウム−アルミニウム−ガーネットのうちの一を有し、前記下部シンチレータはガドリニウム酸硫化物を有する、放射線検出器。
【請求項10】
請求項1に記載の放射線検出器であって:
前記上部シンチレータと前記下部シンチレータとの間に連続的な層として備えられている1つ又はそれ以上の中間シンチレータであって、各々の連続的な中間シンチレータは、前記X線源に近接して備えられているシンチレータにより透過された放射線を受け入れ、低エネルギーの放射線を光に変換し、高エネルギーの放射線を透過する、中間シンチレータ;
を更に有する、放射線検出器。
【請求項11】
請求項10に記載の放射線検出器であって:
それぞれの中間シンチレータからの光を受け入れて電気信号に変換するように、前記それぞれの中間シンチレータと各々、光学的に結合されている中間光検出器;並びに
前記それぞれの中間シンチレータからの光を収集して、前記それぞれの中間光検出器に導くように、前記それぞれの中間シンチレータ及び前記中間光検出器と各々、光学的に結合されている中間光学要素;
を更に有する、放射線検出器。
【請求項12】
請求項1に記載の放射線検出器のアレイを有するコンピュータ断層撮影スキャナ。
【請求項13】
X線源;及び
請求項1に記載の放射線検出器の二次元アレイ;
を有するX線撮影システム。
【請求項14】
上部及び下部光検出器の光感応面において上部及び下部シンチレータを作る段階;
前記上部シンチレータに光学要素を結合する段階;
前記上部光検出器に前記光学要素及び前記上部シンチレータを光学的に結合する段階;並びに
前記下部光検出器に前記下部シンチレータを光学的に結合する段階;
を有する、放射線検出器を製造する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記上部シンチレータは約0.10mmに等しい厚さを有し、前記上部光検出器は少なくとも0.65mmに等しい高さの光感応面を有する、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記上部及び下部シンチレータは同じシンチレーション材料を有する、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記上部及び下部シンチレータはガドリニウム酸硫化物(GOS)を有する、方法。
【請求項18】
請求項14に記載の方法であって、前記上部シンチレータはある厚さを有し、各々の上部光検出器の光感応性面は、前記上部シンチレータの前記厚さより実質的に大きい高さを有する、方法。
【請求項19】
請求項14に記載の方法であって、前記上部シンチレータに前記光学要素を光学的に結合する段階は、上部及び下部シンチレータの少なくとも一において前記光学要素を光学的に結合させる段階を有する、方法。
【請求項20】
請求項14に記載の方法であって:
前記上部光検出器に結合されている前記上部シンチレータ及び前記光学要素の面を除いて、反射性コーティングで一体として前記上部シンチレータ及び前記光学要素を覆う段階;
を更に有する、方法。
【請求項21】
請求項14に記載の方法であって、前記下部シンチレータはGOSを有し、前記上部シンチレータは:
GOS;
CdWO4;
ZnSe;及び
YAG;
のうち少なくとも1つを有する、方法。
【請求項22】
請求項14に記載の方法により製造される放射線検出器。
【請求項23】
互いに隣接して備えられている複数のタイルを有する放射線検出器であって、各々のタイルは:
低エネルギーのX線を可視光に変換し、高エネルギーのX線を透過するために、X線源に対向している薄いシンチレータの上部アレイ;
前記透過された高エネルギーのX線を可視光に変換するために、前記X線源に対向して、前記上部アレイに隣接して備えられている、厚いシンチレータの下部アレイ;
前記上部シンチレータにより発せられる可視光を検知するために、各々が関連上部シンチレータに光学的に結合されている、各々の光検出器が関連アクティブ領域を有する、光検出器の上部アレイであって、各々の上部光検出器のアクティブ領域が前記関連上部シンチレータに比べて大きい鉛直方向の寸法を有する、光検出器の上部アレイ;
前記下部シンチレータにより発せられる可視光を検知するために、各々が前記下部シンチレータに光学的に結合されている関連アクティブ領域を有する、光検出器の下部アレイ;並びに
前記上部光検出器の前記アクティブ領域の光収集効率が高くなるように、前記上部シンチレータにより発せられる光を収集して、前記上部光検出器のアクティブ領域に前記収集した光を方向付けるために、前記上部光検出器の対応する一の前記アクティブ領域に光学的に結合され、各々の前記上部シンチレータに隣接して備えられている光学要素;
を有する、放射線検出器。









【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate


【公表番号】特表2008−538966(P2008−538966A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508353(P2008−508353)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051062
【国際公開番号】WO2006/114715
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】