説明

スペクトロスコピー分析のための方法および装置

液体試料の気相電磁照射線スペクトルを得るための方法および装置につき開示し、この装置は入口および出口を有する分析室からなり、ここで入口および分析室は使用に際し液体試料を入口中へ毛細管作用を介し引込むと共にそこで気化させるのに適合し、気化した液体試料は入口および分析室内の気相中に残留する。この装置は、分析用の液体供給源を含有するプロセス導管および容器に装着と、オンラインスペクトルを回収するのに適するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトロスコピーの分野、より詳細には液相試料の気相スペクトルを得ることに関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油化学および精製所の各プロセスにおいて、プロセス流の組成の知識が、たとえば生成物純度またはプロセスのような特定部分(たとえば反応器もしくは蒸留カラム)の操作の効率を評価する際に必要とされる。プロセス流もしくは容器の内容物の試料をたとえばプロセスから遠隔位置する実験室への試料の移送および手動の取扱いを必要とせずに分析するオンラインにて、組成の情報が得られる。従ってオンライン分析は所望の情報を得るために必要とされる時間を短縮させることができる一方、更に試料を採取して分析の箇所まで移送する際に生じうる試料汚染の機会をも減少させる。プロセス流の組成情報を得るための公知のオンライン技術はオンラインガスクロマトグラフィーおよび近赤外(NIR)スペクトロスコピーにより例示される。たとえば米国特許第6,820,013号明細書(特許文献1)は、溶剤の混液における各成分の濃度を定量するためのNIRスペクトロスコピーの使用を記載しており;欧州特許出願公開第0859236号明細書(特許文献2)は、原油蒸留カラムに供給される原油の組成情報を得るためのNIRスペクトロスコピーの使用を記載しており、更に米国特許出願公開第2002/0067481号明細書(特許文献3)は内容物をスペクトロスコピー分析するため導管に直接装着しうる透過セルを記載している。
【0003】
NIRスペクトロスコピーは、液相もしくは気相のいずれかにおける物質につき行うことができる。しかしながら、強度に相互作用する各成分(特に水素結合を介し相互作用する各成分)からなる液体のNIRスペクトルは、NIR吸収バンドの幅広化に基づき貧弱な解析力となり、それから計算されるパラメータの精度に制限を与えうる。
【0004】
オンラインマススペクトロメータがアナリスト(1998)、第123巻、第343−348頁(非特許文献1)に従来記載されており、ここでは加熱毛細管を用いるマススペクトロメータに供給するための液体試料の気化およびヘリウムキャリヤガスの供給が記載されている。更に露国特許第336563号明細書(特許文献4)は、キャリヤガスにおける気化液体の微小濃度を、灯心が装着された液体充填毛細管により作り出す装置を記載している。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,820,013号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0859236号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0067481号明細書
【非特許文献1】アナリスト(1998)、第123巻、第343−348頁
【特許文献4】露国特許第336563号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液体試料のオンライン気相NIRスペクトルを得るための、別途のキャリヤガス供給の必要性を回避する改良手段につきニーズが残されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一面によれば、液体試料の気相電磁照射線スペクトルを得るための装置が提供され、この装置は入口および出口を有する分析室を備え、入口および分析室は使用に際し液体試料を毛細管作用を介し入口中へ引込むと共にそこで気化させ気化した液体試料を入口および分析室内の気相に維持することを特徴とする。
【0008】
本発明の利点は、液体試料の気相電磁スペクトル、たとえば赤外線/紫外線/可視もしくはNIRスペクトルを得ることができる点である。好適具体例において、本発明の装置は気化した液体試料の気相NIRスペクトルの回収に適し、これは改良されたスペクトル解像を達成することができ、これに対し対応の液相NIRスペクトル、特に2種もしくはそれ以上の強力に相互作用する各成分と比較される。組成情報をNIRスペクトルから得ることができるので、気相スペクトルの改良した解像は液体試料内の各成分の一層低い濃度をより正確に決定することができる。更に気化した液体試料のスペクトルを得ることは好ましくは液体試料より上方の蒸気スペースにおける蒸気の対応スペクトルを得ることである。何故なら、蒸気スペースの組成は必ずしもこれが誘導される液体の組成を代表しないからである。本発明の更なる利点は、液体試料の気化を確保すべく或いは装置を経由して気化液体試料を搬送すべく、キャリヤガスを使用する必要がない点である。本発明の他の利点は、たとえばポンプのような可動部分が液体試料を出口中へ移送すべくおよび液体試料を気化させるべく必要とされない点である。
【0009】
本発明の装置は、入口および出口を有する分析室を備える。分析室および入口は、使用に際し液体試料を入口にて気化させると共に入口および分析室内の気相中に維持するのに適する。入口の少なくとも1部は、使用に際し液体試料を毛細管作用を介し入口に引込むのに適する。好適具体例において、これは多孔質材料により達成され、この多孔質材料の表面積はこれを含有する入口の部分の内壁部における表面積よりも大である。従って使用に際し液体試料を毛細管作用を介し入口中へ多孔質材料の気孔もしくはチャンネルを通して引込む場合、多孔質材料の高い表面積は液体試料の効率的気化を可能にする。多孔質材料の更なる利点は、フィルタとして作用しうる点にもあり、固体粒子が入口および分析室に突入するのを防止し、さもなければこれはNIRスペクトルにマイナスの影響を及ぼすであろう。
【0010】
多孔質材料は、液体試料を毛細管作用を介し入口中へ引込むことができる。多孔質材料は更に好ましくは、液体試料の気化温度を越える温度に耐えることもできる。更に多孔質材料は、使用に際し液体試料の各成分との反応の結果、崩壊もしくは劣化しないことが好ましい。
【0011】
多孔質材料はたとえば平行チューブもしくはロッドの束、充填球体もしくは顆粒、1種もしくはそれ以上の繊維質材料、メッシュまたはたとえばモノリスのような多孔質ブロックからなる群の1種もしくはそれ以上から選択することができる。好ましくは、多孔質材料はシリカもしくはガラスのビーズもしくは繊維、スチールメッシュ、セラミックウールまたは紙から構成される。より好ましくは、多孔質材料はシリカ繊維からなり、これらは一般に高度に化学的および熱的に安定であると共に長時間にわたり毛細管作用を介し極性液体の吸収に有効である。本発明の1具体例において、分析室は1個以上の入口を含み、それぞれ従来記載されたようなものに適する。
【0012】
入口および分析室は好ましくは、液体試料を気化させると共に気化液体試料を気相に維持するべく加熱器を備える。この加熱器は入口と分析室との両者により共有される単一ヒータとすることができ、或いは入口および分析室は互いに別々の加熱器を有することもできる。加熱器は入口および分析室を液体試料の気化温度またはその温度より高い温度まで加熱することができる。本発明の1具体例においては、分析室を電気追跡加熱手段により加熱する一方、入口を加熱自在な金属ブロックにより包囲する。
【0013】
電磁照射線は分析室に突入しかつ離脱することができる。分析室は好ましくはウィンドーを有し、これらは透明であるか或いは少なくとも部分的に透明であって、電磁照射線スペクトルを得るために使用される電磁照射線の周波数に対し透明または少なくとも部分的に透明である。装置がNIRスペクトルを回収するのに適する本発明の好適具体例において、分析室は1個もしくはそれ以上のウィンドーを有し、これらはたとえば石英もしくはサファイヤのようなNIR透明材料で作成される。サファイヤがその強度および引っ掻き耐性に基づき好適である。NIR透明ウィンドーは好ましくは、操作温度にて気化液体試料に対し不活性である。本発明の1具体例において、分析室は円筒状であると共に各面にNIR透明ウィンドーを有する。
【0014】
出口は必要に応じ加熱器を有することができ、これは入口および/または分析室の加熱器とは別途にまたはそれと一緒に制御することができる。好ましくは出口の温度は分析室の温度よりも低く、これは分析室から出口への気化液体試料の流れの維持を出口における気化液体試料の冷却に基づき容易化する。より好ましくは出口は未加熱であり、これは装置が使用されているに出口内で生ずる気化液体の濃縮を可能にし、更にこれは分析室から出口への気化液体の流れを維持するのを助ける。本発明の装置は1個以上の出口を有することができる。
【0015】
入口、出口および分析室は好ましくは、操作温度にて液体試料に対し不活性である材料で作成される。適する材料はたとえばステンレス鋼、ジルコニウム、チタンもしくはハステロイ(登録商標)を包含する。
【0016】
入口は液体試料を含有する導管もしくは容器(たとえば貯蔵タンクもしくは移送経路)に装着することができる。好ましくは出口は更に、装置に突入する液体試料を導管もしくは容器に戻して材料の廃棄を回避するよう同じ導管もしくは容器に接続することもできる。装置は必要に応じこれを装着したプロセス導管もしくは容器まで分離しうる弁を有する。
【0017】
本発明の好適具体例において、装置は更に加圧ガス(好ましくはたとえば窒素、アルゴンもしくはヘリウムのような不活性ガス)のための入口を備えることもできる。これは出口から分析室への装置を使用している際の逆流の可能性を減少させることができる。
【0018】
本発明は液体試料の気相電磁照射線スペクトルの回収方法に使用することができる。すなわち、本発明の第二面によれば液体試料の気相電磁照射線スペクトルを得る方法が提供され、この方法は;
(a)液体試料を、入口および出口を有する分析室からなる装置の入口に供給し、ここで液体試料を毛細管作用を介し入口に引込むと共にそこで気化させ、この気化した液体試料を分析室まで移送し;
(b)電磁照射線の1つもしくはそれ以上の周波数を分析室に指向させ;
(c)分析室における気化した液体試料により伝達および/または放出される電磁照射線の1つもしくはそれ以上の周波数を検出器により検出し;
(d)気化した液体試料を分析室から試料出口まで移送し;
(e)工程(c)にて検出器により受信された電磁照射線の1つもしくはそれ以上の周波数から気化液体試料の吸収特性を計算する
工程を特徴とする。
【0019】
本発明の方法は、好ましくは上記したような装置を用いる。装置の入口は分析すべき液体試料の供給源、たとえば液体試料を含有するプロセス導管もしくは容器に接続される。必要に応じおよび好適には、出口も液体試料の供給源に接続されて分析された液体試料の廃棄の必要性を減少させる。必要に応じ装置は更に弁を備えて、これを使用しない場合に液体試料の供給源から分離する。
【0020】
液体試料を気化させると共に気相に維持するため、入口および分析室は両者とも液体試料の気化温度より高いまたはその温度に維持され、或いは気化液体試料の露点より高い温度に維持される。これは好ましくは入口および分析室を加熱して達成される。これらは両者とも単一の共有ヒータを用いて加熱しうるが、必要に応じ入口および分析室は別途に制御されるヒータにより独立して加熱される。好適には分析室および入口はそれぞれ50〜600℃の範囲、好ましくは100〜300℃の範囲の温度に維持される。
【0021】
この方法は、大気圧にて或いは大気圧よりも高い圧力にて或いは液体試料の性質もしくは液体試料を含有する導管もしくは容器の条件に応じ、スペクトロスコピー分析に先立って操作することができる。本発明の1具体例において、装置は液体試料の供給源よりも高い圧力に維持され、これは出口から装置の分析室への液体試料の逆流の機会を減少させる。
【0022】
液体試料は毛細管作用を介し入口に流入し、ここで蒸発される。気化した液体試料は分析室まで移動し、ここに1つもしくはそれ以上の電磁照射線の周波数を指向させる。分析室に流入した後、そこに指向された電磁照射線は気化液体試料と相互作用すると共に、放出および/または伝達された電磁照射線は分析室を離れて検出器により検出される。
【0023】
検出器により電磁照射線の1つもしくはそれ以上の周波数で検出した気化液体試料の吸収特性を計算する。これは典型的にはスペクトロメータにより行われる。分散もしくはインターフェロメトリック技術を使用して電磁スペクトルを集めることができる。インターフェロメトリー技術(たとえばフーリエ・トランスフォーム・スペクトロスコピーまたはファブレイ−ペロット・インターフェロメトリー)が好適である。何故なら、スペクトルが改善シグナルと騒音の比を得ると共に有することが極めて迅速であるからである。
【0024】
本発明の方法の好適具体例においては電磁照射線の1つもしくはそれ以上の周波数は近赤外(NIR)範囲にあり、典型的には4000cm−1〜10000cm−1にある。16cm−1の解像力、たとえば8cm−1もしくはそれ以下、または4cm−1もしくはそれ以下が好適である。何故なら、このスペクトル領域で生ずると共に典型的には狭いピーク幅を有する回転微細構造を使用しうるからである。これは、スペクトルから計算される成分−濃度の精度および検出限度を改善する。本発明の好適具体例において、解像は2cm−1もしくはそれ以下である。
【0025】
NIR照射線の使用が有利である。何故なら、これは光学繊維を介し伝達してNIR源および検出器を装置の残部から遠隔位置せしうるからである。NIRスペクトルは更に、これらを使用して気化液体試料の組成を定量的に得ることができるので使用される。気化液体試料における各成分の濃度は、たとえばNIRスペクトルの該当するピーク領域の比較により或いはNIRスペクトルと公知基準のデータベースとを比較することにより測定することができ、これには多変数統計分析技術、たとえば部分最小平方回帰を行うべくプログラムされたコンピュータを用いる。
【0026】
液体試料内の各成分の検出限界は一般に、得られたNIRスペクトルのシグナル対ノイズ比を増大させて改善される。すなわち平均スペクトルを得ることができる走査の回数を増大させれば一般にシグナル対ノイズ比を増大させ、更にスペクトル解像を改善するのに役立つ。本発明の1具体例において、調整可能なダイオードレーザを用いてスペクトルの単一ピークにわたり連続的に走査し、そこから成分濃度を得ることができ、これは必要とされるスペクトルの幅を狭めると共に走査時間を短縮させる。
【0027】
気化した液体試料は分析室から出口に流入する。出口を必要に応じ加熱する。好ましくは出口は分析室の温度よりも低い温度に維持される。この種の具体例において、蒸気はこれが出口に流入する際に冷却されて、内部の圧力を低下させると共に分析室から出口への気化液体試料の流れを容易化させる。より好ましくは出口は未加熱であり、これは出口内での気化液体試料の凝縮を可能にし、更に分析室から出口への気化液体試料の流れの維持を容易化させる。
【0028】
好ましくは出口をプロセス導管もしくは容器、より好ましくは装置の入口に接続される同じプロセス導管もしくは容器に接続して、分析された液体試料の損失もしくは廃棄を減少させる。
【0029】
本発明の液体試料は、薬品もしくは製油所プロセスのプロセス流もしくは貯蔵容器から採取される液相試料とすることができる。本発明の方法は、互いに(たとえば水素結合を介し)強力に相互作用する各成分を含む液体試料につき特に有用である。好ましくは液体試料は水を含む。更に好ましくは液体試料は水およびカルボン酸、特に好ましくは水および酢酸を含む。
【0030】
本発明の方法を使用して液体試料における1種の強力相互作用する成分の低濃度を正確に測定することができ、これは主としてこれと強力に相互作用する1種の他の成分を含む。
【0031】
好ましくは低濃度成分は水である。更に一層好ましくは液体試料は低濃度の水(たとえば1重量%未満の水)を含有する主として酢酸である。
【0032】
使用される電磁照射線の周波数は液体試料の各成分に依存する。酢酸/水混合物に関する好適周波数範囲はたとえば7500〜5000cm‐1の範囲である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、限定はしないが図面を参照する実施例により本発明を例示する。
【0034】
図1は本発明による装置の略図である。
【0035】
図2は本発明による装置を介し本発明の方法における液体試料および気化液体試料により採用される通路の略図である。
【0036】
図3aおよび3bは、本発明の装置により本発明の方法で得られた精製酢酸生成物流の水分含有量と時間との関係を示すグラフである。
【0037】
図4aおよび4bは、それぞれ対応のガス−および液相スペクトルを同じスペクトル解像力にて集めた気相および液相における水および酢酸のNIRスペクトルである。
【0038】
本発明による装置を図1に示す。入口1は直径12mmかつ長さ12.7cmのステンレス鋼パイプおよびシリカ繊維2の束を有する。入口の周囲には加熱しうるアルミニウムブロック3が存在する。分析室4は長さ20cmの長いステンレス鋼パイプ5よりなり、これにはサファイヤウィンドー6および7を有する端部を設ける。分析室は追跡加熱素子8により包囲されると共に、包囲する層のセラミックウールラギング9を有する。熱伝対(図示せず)を使用して、ガラス繊維の束および分析室の温度をそれぞれ測定すると共に各加熱装置を制御する。出口10はアンラグであると共に未加熱である。スペクトロメータ11にてフォトダイオードから放出されるNIR照射線は繊維光学ケーブルを介し分析室4まで修正レンズ13およびサファイヤウィンドー6を介して伝達される。伝達されたNIR照射線はサファイヤウィンドー7を介し分析室から出ると共に、スペクトロメータ11におけるNIR検出器まで繊維光学ケーブル15および修正レンズ14を介して転送される。
【0039】
図2は、本発明による方法に際し液体試料により採用される可能な通路を示す(本発明による装置を用いる)。太線矢印は液相試料の通路に相当し、破線矢印は気化試料の通路に対応する。ヒータ、ラギング、スペクトロメータおよび繊維光学ケーブルおよびレンズは明瞭にすべく省略されている。
【0040】
分析22のための液体を含有する導管もしくは容器21から採取された液体試料は開口弁23を介して流動し、ここで入口1におけるガラス繊維の束2と接触するか或いはバイバス導管24を通過して前進する。ガラス繊維2の束に接触する液体試料は毛細管作用により加熱入口1に引込まれ、ここで気化される。気化した液体試料25は加熱分析室4に流入し、ここでNIR照射線(図示せず)により照射される。まだ気相に存在する気化した液体試料は分析室を通過すると共に、未加熱かつアンラグ出口10に流入し、ここで凝縮される。凝縮した気化液体試料24は出口弁27を通過すると共に、最初に採取された導管もしくは容器21中へ戻される。加熱ガス28の供給源を入口29を介して分析室4に供給して分析室、入口および出口を導管もしくは容器21における液体22よりも高い圧力に維持する。
【実施例】
【0041】
図1および2に例示した装置を用いて、メタノールカルボニル化パイロットプラントにより生成されたイリジウム−触媒法に基づく精製酢酸生成物流の水含有量をオンラインで得た[サンレー・アンド・ワトソン、キャタリシス・ツデー58(2000年)、第293〜307頁に記載]。このプロセスは反応器とフラッシュ分離帯域と精製帯域とからなり、組み合わせ軽質端部/乾燥カラムと重質端部カラムとで構成される。この実施例において、パイロットプラントの重質端部カラムから抽出された精製酢酸生成物流は約67g/minの流速および1.4barg(240kPa)の圧力を有した。入口および分析室は両者とも独立して180℃まで加熱した。酢酸を分析室中へ0.3〜1.0g/minの速度で引込み、その結果0.2〜0.7cm/sの速度にて気化酢酸の流速を与えた。窒素を加圧ガスとして使用した。
【0042】
10000cm−1〜4000cm−の周波数を有するNIR照射線を石英ハロゲンランプ(ボーメンMB160FTIRスペクトロメータ)により生成させ、このランプには熱伝対冷却InAs検出器を装着した。シリカ繊維光学ケーブルを使用してNIR照射線を分析室へおよび分析室から指向させた。データを2cm−1の解像力にて集めた。パーソナル・コンピュータを用いて、NIRスペクトルと公知基準のベータベースとの部分最小平方回帰分析を用いる比較により気化試料の水濃度を計算した。
【0043】
酢酸生成物流の水含有量を約67時間にわたり監視した。水含有量(重量%)対時間とのプロット(NIRスペクトルから計算)を図3aおよび3bにする。図3aから見られるように、測定値の精度は約±25ppmであり、これは約100ppmの最小検出限界に相当する。これは対応する約1000ppmである液相NIRスペクトルから得られる限界よりも低く、対応の液相スペクトルと比較した気相NIRスペクトルの改良ピーク強度および解像から生ずる(それぞれ水および酢酸につき図4aおよび4bに示す)。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による装置の略図である。
【図2】本発明による装置を介し本発明の方法における液体試料および気化液体試料により採用される通路の略図である。
【図3a】本発明の装置により本発明の方法で得られた精製酢酸生成物流の水分含有量と時間との関係を示すグラフである。
【図3b】本発明の装置により本発明の方法で得られた精製酢酸生成物流の水分含有量と時間との関係を示すグラフである。
【図4a】それぞれ対応のガス−および液相スペクトルを同じスペクトル解像力にて集めた気相および液相における水のNIRスペクトルである。
【図4b】それぞれ対応のガス−および液相スペクトルを同じスペクトル解像力にて集めた気相および液相における酢酸のNIRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料の気相電磁照射線スペクトルを得るための装置(この装置は入口および出口を有する分析室を含む)において、入口および分析室は使用に際し液体試料を毛細管作用を介し入口中へ引込むのに適すると共に、気化した液体試料を入口および分析室内の気相中に維持することを特徴とする。
【請求項2】
電磁照射線が近赤外線に近い請求項1に記載の装置。
【請求項3】
入口の少なくとも1部が、入口の部分(多孔質物質を含有する)の内壁部の表面積よりも大きい表面積を有する多孔質材料を含有する請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
多孔質材料が並行チューブもしくはロッドの束、充填球体もしくは顆粒、1種もしくはそれ以上の繊維質材料、メッシュまたはたとえばモノリスのような多孔質ブロックからなる請求項3に記載の装置。
【請求項5】
多孔質材料がシリカもしくはガラスの繊維、スチールメッシュ、セラミックウールもしくは紙からなる1種もしくはそれ以上の群を含む請求項4に記載の装置。
【請求項6】
多孔質材料がシリカ繊維からなる請求項5に記載の装置。
【請求項7】
入口および分析室が加熱される請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
出口が未加熱である請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
分析室が、電磁照射線の周波数に対し透明である1個もしくはそれ以上の窓を含み、これらを電磁照射線スペクトルを得るために使用する請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
分析室の窓がサファイヤもしくは石英で作成される請求項9に記載の装置。
【請求項11】
分析室の窓がサファイヤで作成される請求項10に記載の装置。
【請求項12】
追加的に加圧ガスのための入口を備える請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
液体試料の気相電磁照射線スペクトルを得るための方法において;
(a)液体試料を、入口および出口を有する分析室からなる装置の入口に供給し、ここで液体試料を毛細管作用を介し入口に引込むと共にそこで気化させ、この気化した液体試料を分析室まで移送し;
(b)電磁照射線の1つもしくはそれ以上の周波数を分析室に指向させ;
(c)分析室における気化した液体試料により伝達および/または放出される電磁照射線の1つもしくはそれ以上の周波数を検出器により検出し;
(d)気化した液体試料を分析室から試料出口まで移送し;
(e)工程(c)にて検出器により受信された電磁照射線の1つもしくはそれ以上の周波数から気化液体試料の吸収特性を計算する
工程からなることを特徴とする気相電磁照射線スペクトルを得る方法。
【請求項14】
入口および出口を有する分析室からなる装置が、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
電磁照射線が近赤外線である請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
装置を、液体試料を含有するプロセス導管もしくは容器に装着する請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
液体試料が、水素結合を介し相互作用する各成分を含む請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
液体試料が、1重量%未満の水を含有する主として酢酸を含む請求項13〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
近赤外スペクトルを、フーリエ・トランスフォーム・スペクトロスコピーまたはファブレイ−ペロット・インターフェロメトリーにより得る請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
入口および分析室を互いに100〜300℃の温度まで加熱する請求項13〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
不活性ガスを、出口から分析室までの逆流を防止するのに充分な圧力にて装置に供給する請求項13〜20のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2009−516841(P2009−516841A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541806(P2008−541806)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004295
【国際公開番号】WO2007/060398
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(591001798)ビーピー ケミカルズ リミテッド  (66)
【氏名又は名称原語表記】BP CHEMICALS LIMITED
【Fターム(参考)】