説明

スペーサ粒子分散液、液晶表示素子の製造方法、及び、液晶表示素子

【課題】インクジェット装置を用いて液晶表示素子を製造するプロセスに適合し、かつ、基板上の非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を高精度に配置することを可能とするスペーサ粒子分散液を提供する。また、該スペーサ粒子分散液を用いてなる液晶表示素子の製造方法、及び、該スペーサ粒子分散液又は該液晶表示素子の製造方法を用いて製造される液晶表示素子を提供する。
【解決手段】インクジェット装置を用いて液晶表示素子の基板上に吐出され、基板上にスペーサ粒子を配置するのに用いるスペーサ粒子分散液であって、スペーサ粒子と分散媒とを含有し、前記分散媒は、2−プロパノールを1〜10重量%、水を10〜40重量%、エチレングリコールを35〜55重量%、グリセリンを10〜35重量%含有するスペーサ粒子分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット装置を用いて液晶表示素子を製造するプロセスに適合し、かつ、基板上の非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を高精度に配置することを可能とするスペーサ粒子分散液に関する。また、本発明は、該スペーサ粒子分散液を用いてなる液晶表示素子の製造方法、及び、該スペーサ粒子分散液又は該液晶表示素子の製造方法を用いて製造される液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、現在、パソコン、携帯電子機器等に広く用いられている。図1は、従来の液晶表示素子の一例を模式的に示す正面断面図である。図1に示す液晶表示素子200では、2枚の透明基板201、202が対向し合うように配置されている。
【0003】
透明基板201の内表面には、カラーフィルタ203及びカラーフィルタ203を画するブラックマトリックス204が形成されており、このカラーフィルタ203及びブラックマトリックス204上には、オーバーコート層205が形成されている。更に、このオーバーコート層205上には、透明電極206及び該透明電極206を覆うように、配向膜207が形成されている。
【0004】
透明基板202の内表面には、カラーフィルタ203と対向する位置に透明電極208が形成されており、更に、透明基板202の内表面と透明電極208とを覆うように、配向膜209が形成されている。透明電極206、208は、画素領域に配置された画素電極と、画素領域以外に配置された電極とを有する。
また、透明基板201及び202は、その外表面に偏光板210、211がそれぞれ配置されており、それぞれの外周縁近傍においてシール剤212を介して接合されている。
【0005】
更に、配向膜207、209及びシール剤202により囲まれた空間には、液晶214が封入されており、配向膜207と配向膜209との間に、スペーサ粒子213が配置されている。このスペーサ粒子213は、2枚の透明基板201及び202の間隔を規制し、適正な液晶層の厚み、即ち、セルギャップを維持するように機能している。
【0006】
従来の液晶表示素子の製造方法においては、画素電極が形成された基板上にスペーサ粒子をランダムかつ均一に散布するため、図1に示すように、画素電極上、即ち液晶表示素子の画素領域にスペーサ粒子が配置されやすかった。一般的なスペーサ粒子は、合成樹脂やガラス等からなるため、スペーサ粒子が画素電極上に配置されると、偏光が乱されて偏光性を失うという現象、いわゆる消偏現象が生じて、スペーサ粒子部分が光漏れを起こすという問題が発生することがあった。また、スペーサ粒子表面において液晶の配向が乱れることにより、光抜けが起こりコントラストや色調が低下して表示品質が悪化するという問題が発生することがあった。
更に、TFT液晶表示素子においては、基板上にTFT素子が配置されているが、このTFT素子上にスペーサ粒子が配置されたときに、基板に圧力が加わると、素子が破損することがあった。
【0007】
このようなスペーサ粒子のランダム散布に伴う問題点を解決するために、スペーサ粒子を非画素領域に配置する種々の試みがなされている。
スペーサ粒子を非画素領域、即ち特定の位置のみに配置する方法として、特許文献1には、スペーサ粒子を配置させる部分にマスクの開口部を合致させた後、マスクを通してスペーサ粒子を散布する方法が開示されている。また、特許文献2には、感光体に静電的にスペーサ粒子を吸着させた後、透明基板にスペーサ粒子を転写する方法が開示されている。更に、特許文献3には、基板上の画素電極に電圧を印加し、帯電させたスペーサ粒子を散布することで、静電的斥力によってスペーサ粒子を特定の位置に配置する液晶表示素子の製造方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に開示されている方法では、基板表面にマスクや感光体を直接接触させるために、基板表面に形成されている配向膜が損傷することがあり、液晶表示素子の画質が低下することがあった。一方、特許文献3に開示されている方法では、スペーサ粒子の配置パターンに従って電極を構成する必要があるため、任意の位置にスペーサ粒子を配置することが困難であった。
【0009】
また、特許文献4、5には、インクジェット装置からスペーサ粒子分散液を吐出してスペーサ粒子を基板上に配置する方法が開示されている。この方法では、基板上にマスクや感光体を直接接触させることがないため、基板表面に形成されている配向膜が損傷することなく、特定の位置に特定のパターンでスペーサ粒子を配置できるので有効な方法であるといえる。
【0010】
しかしながら、特許文献4に開示されている方法では、1〜10μm程度の粒子径を有するスペーサを分散媒に分散させて、スペーサ粒子分散液とした後、このスペーサ粒子分散液をインクジェット装置のノズルから吐出しているため、スペーサ粒子分散液によっては、スペーサ粒子分散液をノズルから直線的に吐出できないことがあった。また、スペーサ粒子分散液をノズルから直線的に吐出するためには、ノズルの径を大きくする必要があるが、ノズルの径を大きくした場合には、基板上に吐出されるスペーサ粒子分散液の液滴も大きくなる。液滴が大きいと、例えば、非画素領域を狙って液滴を吐出した場合でも、液滴が画素領域にも至り、画素領域にスペーサが配置されることがあった。画素領域にスペーサが配置されると、液晶表示素子のコントラストや色調が低下し、表示品質が劣化することがあった。
【0011】
また、特許文献5に開示されている方法では、スペーサ粒子分散液が、沸点が200℃以上であり、かつ、表面張力が42mN/m以上である分散媒Xを少なくとも含有し、スペーサ粒子を配置する工程において、1つのノズルから1回で吐出されるスペーサ粒子分散液中に含まれる分散媒Xの量を0.5〜15ngとすることが記載されている。特許文献5に記載されているスペーサ粒子分散液を用いれば、非画素領域にスペーサ粒子を高精度に配置することができるとされている。
しかしながら、このようなスペーサ粒子分散液は、用いるインクジェット装置によっては吐出性等が充分に満足のいくものではなく、インクジェット装置を用いて液晶表示素子を製造するプロセスに充分に適合したものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平4−198919号公報
【特許文献2】特開平6−258647号公報
【特許文献3】特開平10−339878号公報
【特許文献4】特開昭57−58124号公報
【特許文献5】特開2007−47773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、インクジェット装置を用いて液晶表示素子を製造するプロセスに適合し、かつ、基板上の非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を高精度に配置することを可能とするスペーサ粒子分散液を提供することを目的とする。また、本発明は、該スペーサ粒子分散液を用いてなる液晶表示素子の製造方法、及び、該スペーサ粒子分散液又は該液晶表示素子の製造方法を用いて製造される液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、インクジェット装置を用いて液晶表示素子の基板上に吐出され、基板上にスペーサ粒子を配置するのに用いるスペーサ粒子分散液であって、スペーサ粒子と分散媒とを含有し、上記分散媒は、2−プロパノールを1〜10重量%、水を10〜40重量%、エチレングリコールを35〜55重量%、グリセリンを10〜35重量%含有するスペーサ粒子分散液である。
以下に本発明を詳述する。
【0015】
インクジェット装置を用いてスペーサ粒子分散液を基板上に吐出して、基板上の非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を高精度に配置する場合、用いるスペーサ粒子分散液は、以下の(1)〜(3)の全てを満たすものである必要がある。
(1)スペーサ粒子分散液保存中において、スペーサ粒子分散液中でスペーサと分散液との分離が無いこと。
(2)スペーサ粒子分散液を基板上に吐出する工程において、インクジェット装置内でスペーサ粒子の沈降や付着が生じないこと、インクジェット装置のヘッド部において、インク室内で気泡が生じることがなく、インク室の接液部に対してぬれ性が高いこと、ノズル孔において液切れが良いこと、及び、吐出後に休止時間が生じた際にノズル孔が乾燥しないこと。
(3)吐出した液滴が小飛沫をほとんど発生させず、着弾時の液滴径が小さくて基板に対してぬれ広がらず、スペーサ粒子分散液を高精度に配置できること。
本発明者らは、スペーサ粒子分散液に用いる分散媒として、2−プロパノールと、水と、エチレングリコールと、グリセリンとを特定の配合量で配合することにより、上記(1)〜(3)の全てにおいて非常に優れたスペーサ粒子分散液を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
本発明のスペーサ粒子分散液は、スペーサ粒子を含有する。
上記スペーサ粒子の材料は特に限定されず、例えば、シリカ粒子等の無機系粒子であってもよいし、有機高分子等の有機系粒子であってもよい。なかでも、液晶表示素子の基板上に形成されている配向膜を傷つけない程度の適度な硬度を有し、熱膨張や熱収縮による厚みの変化に追随しやすく、更にセル内部でスペーサ粒子が移動し難いことから、有機系粒子が好ましく使用される。
【0017】
上記有機系粒子は特に限定されないが、例えば、強度等が適度な範囲であるため、単官能単量体と多官能単量体との共重合体が好ましく用いられる。
上記共重合体を構成する単官能単量体と多官能単量体との比率は特に限定されず、有機系粒子に要求される強度や硬度により適宜調整され得る。
【0018】
上記スペーサ粒子の平均粒子径は、液晶表示素子の種類により適宜変更されるため特に限定されないが、上記スペーサ粒子の平均粒子径の好ましい下限は1μm、好ましい上限は20μmである。上記スペーサ粒子の平均粒子径が1μm未満であると、スペーサ粒子が充分機能せず対向する基板同士が接触することがある。上記スペーサ粒子の平均粒子径が20μmを超えると、基板上の非画素領域等からスペーサ粒子がはみ出しやすくなる。また、粒子径が大きすぎると、対向する基板間の距離が大きくなり、近年の液晶表示素子の小型化等の要請に充分に対応できなくなる。
なお、上記スペーサ粒子の平均粒子径は、一般的な粒度分布計によって測定され、例えば、動的光散乱法、レーザー回折法、遠心沈降法、電気的検知体法等の方法により測定することができる。
【0019】
上記スペーサ粒子は、適正な液晶層の厚みを維持するためのギャップ材として用いられるため、上記スペーサ粒子には一定の強度が求められる。上記スペーサ粒子の圧縮強度を示す指標として、上記スペーサ粒子の直径が10%変位した時の圧縮弾性率(10%K値)が用いられる。適正な液晶層の厚みを維持するための、上記圧縮弾性率の好ましい下限は2000MPa、好ましい上限は15000MPaである。上記圧縮弾性率が2000MPa未満であると、液晶表示素子を組立てる際のプレス圧によってスペーサ粒子が変形し、所望とする液晶層の厚みを得ることが困難なことがある。上記圧縮弾性率が15000MPaを超えると、液晶表示素子に上記スペーサ粒子を配置するときに、基板表面に形成されている配向膜を傷つけることがある。
【0020】
上記スペーサ粒子の圧縮弾性率(10%K値)は、特表平6−503180号公報に記載の方法に準拠して求められる。例えば、微小圧縮試験器(例えば、島津製作所社製「PCT−200」等)を用い、粒子を直径50μmのダイアモンド製円柱からなる平滑圧子端面で、圧縮速度2.6mN/秒、最大試験荷重10gの条件下で基材粒子を圧縮した場合の圧縮変位(mm)を測定し、下記式により求めることができる。
K値(N/mm)=(3/21/2)・F・S−3/2・R−1/2
F:基材粒子の10%圧縮変形における荷重値(N)
S:基材粒子の10%圧縮変形における圧縮変位(mm)
R:基材粒子の半径(mm)
【0021】
上記10%K値が2000〜15000MPaとなるスペーサ粒子を得るためには、上記スペーサ粒子は、エチレン性不飽和基を有する単官能又は多官能単量体を重合させてなる樹脂からなるものであることが好ましく、この場合、構成成分として多官能単量体を少なくとも20重量%含有することがより好ましい。
【0022】
上記スペーサ粒子は、回復率の下限が20%であることが好ましい。上記回復率が20%未満であると、上記スペーサ粒子を圧縮した場合に変形しても元に戻らないため製造する液晶表示素子の相対する基板同士を固定できないことがある。上記回復率のより好ましい下限は40%である。
なお、上記回復率とは、スペーサ粒子に9.8mNの荷重を負荷した後の回復率を意味する。
【0023】
得られる液晶表示素子のコントラストを向上させるため、スペーサ粒子は着色されて用いられてもよい。着色されたスペーサ粒子としては、例えば、カーボンブラック、分散染料、酸性染料、塩基性染料、金属酸化物等により処理されたスペーサ粒子、又はスペーサ粒子の表面に有機物の膜が形成された後、高温で分解又は炭化されて着色されたスペーサ粒子等が挙げられる。
なお、スペーサ粒子を構成する材質自体が着色している場合には、スペーサ粒子を着色させずに用いてもよい。
【0024】
上記スペーサ粒子を分散媒中に分散させることにより、スペーサ粒子分散液を得ることができる。
本発明のスペーサ粒子分散液において、上記分散媒は、2−プロパノールと、水と、エチレングリコールと、グリセリンとを含有する。
【0025】
上記分散媒中における上記2−プロパノールの含有量の下限は1重量%、上限は10重量%である。上記2−プロパノールの含有量が1重量%未満であると、分散液の表面張力が大きくなり、インク導入の際に詰まり等を発生させる原因となる。上記2−プロパノールの含有量が10重量%を超えると、インクの比重が小さくなり、スペーサ粒子と分散液の分離が起こったり、インクの表面張力が小さくなり、液滴の着弾径が大きくなったりする。上記2−プロパノールの含有量の好ましい下限は3重量%、好ましい上限は8重量%である。
【0026】
上記分散媒中における上記水の含有量の下限は10重量%、上限は40重量%である。上記水の含有量が10重量%未満であると、表面張力が小さくなり、インク吐出時の着弾面積が大きくなる。上記水の含有量が40重量%を超えると、表面張力が大きくなり、インク導入の際に詰まり等を発生させる原因となる。上記水の含有量の好ましい下限は20重量%、好ましい上限は35重量%である。
【0027】
上記分散媒中における上記エチレングリコールの含有量の下限は35重量%、上限は55重量%である。上記エチレングリコールの含有量が35重量%未満であると、分散液とスペーサ粒子との比重差が大きくなり、分離が起こりやすくなる。上記エチレングリコールの含有量が55重量%を超えると、インクの粘度が高くなり、吐出時に小飛沫が発生しやすくなる。
【0028】
上記分散媒中における上記グリセリンの含有量の下限は10重量%、上限は35重量%である。上記グリセリンの含有量が10重量%未満であると、分散液とスペーサ粒子との比重差が大きくなり、分離が起こりやすくなる。また、インクが乾燥しやすくなり、休止後のノズル詰まりが起こりやすくなる。上記グリセリンの含有量が35重量%を超えると、吐出した液滴の速度にばらつきが生じたり、小飛沫が発生したりする。上記グリセリンの含有量の好ましい下限は20重量%、好ましい上限は30重量%である。
【0029】
スペーサ粒子と分散液の20℃における比重差の好ましい範囲は−0.03〜0.03g/cmである。スペーサ粒子と分散液の20℃における比重が0.03g/cmを超えて離れると、スペーサ粒子分散液中に分散されているスペーサ粒子と分散液とが経時により分離しやすくなる。
【0030】
上記スペーサ粒子分散液中のスペーサ粒子が分散液と分離するまでの好ましい下限は24時間である。上記分離までの時間が24時間以上であれば、スペーサ粒子分散液をインクジェット装置に導入した後からスペーサ粒子分散液を吐出するまでの間に、スペーサ粒子が沈降し難くなり、スペーサ粒子分散液を安定に吐出することができる。また、一旦分散した粒子分散液を安定して保存することができる。
なお、上記分離するまでの時間とは、内径φ5mmの試験管にスペーサ粒子分散液を高さ10cmとなるように導入した後、静置したときに、目視にて分散液とスペーサ粒子の分離した状態が確認されるまでの時間を意味する。
【0031】
上記スペーサ粒子分散液中のスペーサ粒子の固形分濃度は、基板上に配置されるスペーサ粒子の配置個数により適宜設定されるため特に限定されないが、好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は5重量%である。上記固形分濃度が0.01重量%未満であると、吐出された液滴中にスペーサ粒子が含まれないことがある。上記固形分濃度が5重量%を超えると、インクジェット装置のノズルが目詰まりしやすくなり、吐出された液滴中に含まれるスペーサ粒子の数が多くなりすぎて、乾燥過程でスペーサ粒子が移動し難くなる。上記固形分濃度のより好ましい下限は0.2重量%、より好ましい上限は2重量%である。
【0032】
上記スペーサ粒子は、上記スペーサ粒子分散液中に単粒子状に分散されていることが好ましい。スペーサ粒子分散液中に凝集したスペーサ粒子が存在すると、吐出精度が低下したり、インクジェット装置のノズルが目詰まりしたりすることがある。
【0033】
また、上記スペーサ粒子分散液は、接着剤を含有することが好ましい。
上記接着剤は、基板上に着弾した上記スペーサ粒子分散液が乾燥する過程において接着力を発揮し、スペーサ粒子をより強固に基板に固着させる役割を有するものである。上記スペーサ粒子分散液が上記接着剤を含有することで、乾燥時に短時間で効果的にスペーサ粒子を寄せ集めることができ、かつ、配置したスペーサ粒子を強固に基板に固着できることとなる。
上記接着剤は、上記スペーサ粒子分散液中に溶解していてもよいし、分散していてもよい。上記接着剤が分散している場合、その分散径は、スペーサ粒子の粒径の10%以下であることが好ましい。
【0034】
上記接着剤は、スペーサ粒子のギャップ保持能力を損なわないように、非常に柔軟なもの、即ち、硬化後の弾性率がスペーサ粒子に比較して低いものが好適である。
上記接着剤としては、ガラス転移点が150℃以下である熱可塑性樹脂、溶剤の気散により固化する樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、光熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂等が挙げられる。なお、上記接着剤は、なかでも、低分子量のものが好適に用いられる。また、糖、糖アルコール、ポリカプロラクトン構造を有する接着剤を用いても良い。
【0035】
上記スペーサ粒子分散液中における上記接着剤の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.001重量%、好ましい上限は10重量%である。上記接着剤の含有量が0.001重量%未満であると、接着剤を添加する効果、即ち、スペーサ粒子を固着させる効果が得られないことがある。上記接着剤の含有量が10重量%を超えると、乾燥後にスペーサ粒子が接着剤により覆い尽くされて、ギャップ精度が悪化したり、スペーサ粒子分散液の粘度が上がって吐出精度が悪化したりすることがある。上記接着剤の含有量のより好ましい下限は0.01重量%、より好ましい上限は5重量%である。
【0036】
上記スペーサ粒子分散液は、更に、スペーサ粒子の分散性を高めたり、表面張力や粘度等の物理的な特性を制御して吐出精度を高めたり、乾燥時のスペーサ粒子の移動性能を高めるために、各種の界面活性剤、粘性調整剤等がスペーサ粒子分散液に添加されていてもよい。
【0037】
インクジェット装置を用いて、本発明のスペーサ粒子分散液を基板上に吐出する工程を有する液晶表示素子の製造方法もまた、本発明の1つである。
本発明の液晶表示素子の製造方法において、インクジェット装置のノズルから、上記スペーサ粒子分散液を基板上に吐出し、基板上の非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を配置することができる。
本発明の液晶表示素子の製造方法において、上記スペーサ粒子分散液を基板上に吐出するときに用いるインクジェット装置について説明する。
【0038】
本発明の液晶表示素子の製造方法に用いられるインクジェット装置は特に限定されず、一般的な吐出方法によるインクジェット装置が用いられる。吐出方法としては、ピエゾ素子の振動によって液体を吐出するピエゾ方式、急激な加熱による液体の膨張を利用して液体を吐出するサーマル方式等が挙げられる。なかでも、スペーサ粒子分散液への熱的な影響が小さいため、ピエゾ方式が好適である。
【0039】
本発明の液晶表示素子の製造方法では、1つのノズルから1回で吐出されるスペーサ粒子分散液の量の好ましい下限は5ng、好ましい上限は35ngである。1つのノズルから1回で吐出されるスペーサ粒子分散液の量が5ng未満であると、スペーサ粒子分散液の吐出が困難となることがある。1つのノズルから1回で吐出されるスペーサ粒子分散液の量が35ngを超えると、基板に吐出されたスペーサ粒子分散液量が多すぎて乾燥に時間を要し、非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を短時間で効果的に配置することができないことがある。
【0040】
1つのノズルから1回で吐出されるスペーサ粒子分散液の量を制御する方法としては、ノズルの口径を最適化する方法や、インクジェットヘッドを制御する電気信号を最適化する方法がある。上記インクジェットヘッドを制御する電気信号を最適化する方法はピエゾ方式のインクジェット装置を用いたときに効果的である。
【0041】
上記インクジェット装置のスペーサ粒子分散液を収納しているインク室の接液部は、表面張力が31mN/m以上の親水性の材料で構成されていることが好ましい。接液部の材料としては、親水性ポリイミド等の親水性の有機材料も用いることもできるが、耐久性に優れることから、セラミックスやガラス、腐食性が少ないステンレス等の金属等の無機材料が好適に用いられる。
【0042】
通常のインクジェットヘッドでは、電圧印加部品に対する絶縁等を確保するため、接液部に樹脂等が用いられる。接液部に用いられる樹脂は、表面張力が31mN/mより低い材料からなることが多い。この場合、スペーサ粒子分散液をヘッドに導入する際に、スペーサ粒子分散液のなじみが悪く、気泡が残存し易い。気泡が残存したノズルでは、スペーサ粒子分散液を吐出できないことがある。
【0043】
インクジェット装置のノズルの口径は、スペーサ粒子の粒子径に対して7倍以上であることが好ましい。ノズルの口径が7倍未満であると、スペーサ粒子の粒子径に対してノズル径が小さすぎて吐出精度が低下したり、ノズルが閉塞し吐出できなくなったりすることがある。
また、上記インクジェット装置のノズルの口径は特に限定されないが、好ましい下限は20μmであり、好ましい上限は100μmである。上記インクジェット装置のノズルの口径が20μm未満であると、粒子径が2〜10μmのスペーサ粒子を吐出した場合に、粒子径との差が小さすぎて吐出精度が低下したり、ノズル閉塞を起こして吐出不能となったりすることがある。上記インクジェット装置のノズルの口径が100μmを超えると、吐出される液滴の径が大きくなって、基板上に吐出された液滴の径も大きくなるので、スペーサ粒子の配置精度が粗くなることがある。
【0044】
上記ノズルから吐出される液滴の径は特に限定されないが、好ましい下限は10μm、好ましい上限は80μmである。
ノズルから吐出される液滴の径を10〜80μmに制御する方法は特に限定されず、例えば、ノズルの口径を最適化する方法やインクジェット装置を制御する電気信号を最適化する方法等が挙げられる。特に、ピエゾ方式のインクジェット装置を用いる場合には、インクジェット装置を制御する電気信号を最適化する方法用いることが好ましい。
【0045】
また、基板上に吐出された液滴の着弾径は特に限定されないが、好ましい下限は30μm、好ましい上限は100μmである。基板上に吐出された液滴の着弾径を30μm未満とするためには、ノズル口径を非常に小さくする必要が生じ、スペーサ粒子によるノズル閉塞の可能性が大きくなったり、ノズル加工の精度を高めたりしなければならなくなることがある。基板上に吐出された液滴の着弾径が100μmを超えると、スペーサ粒子の配置精度が粗くなることがある。
【0046】
図2(a)、(b)に、本発明の液晶表示素子の製造方法に用いられるインクジェット装置のヘッドの一例を模式的に示す。図2(a)は、インクジェットヘッドの一例の構造を模式的に示す部分切欠斜視図である。図2(b)は、ノズル孔部分において断面構造を示す部分切欠斜視図である。
【0047】
図2(a)、(b)に示すように、ヘッド100は吸引等によって予めインクが充填されるインク室101、及び、インク室101からインクが送り込まれるインク室102を備えている。ヘッド100には、インク室102から吐出面103に至るノズル孔104が形成されている。吐出面103は、インクによる汚染を防止するため、予め撥水処理がされている。ヘッド100には、インクの粘度を調整するための温度制御手段105が設けられている。ヘッド100は、インク室101からインク室102にインクを送り込む機能を有する。ヘッド100は、インク室102に送り込まれたインクをノズル孔104から吐出する機能するピエゾ素子106を備えている。
ヘッド100には、温度制御手段105が設けられている。よって、インクの粘度が高すぎる場合には、ヒーターによりインクを加熱し、インクの粘度を低下させることができる。他方、インクの粘度が低すぎる場合には、ペルチェによりインクを冷却し、インクの粘度を上昇させることができる。
【0048】
本発明の液晶表示素子の製造方法に用いられる基板としては、例えば、通常液晶表示素子のパネル基板として使用されるガラスや樹脂板等が挙げられる。また、基板として、画素領域にカラーフィルタが設けられた基板を用いることができる。この場合、画素領域はブラックマトリックスで画されており、ブラックマトリックスが非画素領域を構成する。ブラックマトリックスは、実質的にほとんど光を通さないクロム等の金属やカーボンブラック等が分散された樹脂等からなる。
【0049】
上記基板上に配置されるスペーサ粒子の配置個数(散布密度)は、50〜350個/mmの範囲にあることが好ましい。
1つの箇所におけるスペーサ粒子の配置個数は、配置箇所によって適宜設定され得るが、一般的には1〜12個程度であることが好ましい。平均配置個数として2〜6個程度であることが好ましい。その配置個数は、スペーサ粒子の粒子径及びスペーサ粒子分散液の濃度により適宜調整され得る。
【0050】
上記スペーサ粒子分散液が基板表面に着弾した後、スペーサ粒子分散液を乾燥させることにより、スペーサ粒子を基板上の非画素領域に対応する領域に配置することができる。
上記スペーサ粒子分散液を乾燥させる方法は特に限定されず、基板が載置されたステージを加熱する方法、基板に熱風を吹き付ける方法、遠赤外線等により基板を加熱する方法、基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液を減圧乾燥により乾燥させる方法等が挙げられる。なかでも、基板に熱を与える必要がなく、基板や、基板上の配向膜、スペーサ粒子が加熱による損傷を受けないため、基板を減圧乾燥する方法が好ましい。上記スペーサ粒子分散液を乾燥させる際には、スペーサ粒子を液滴の着弾中心付近に寄せ集めるために、乾燥温度、乾燥時間、分散液中のスペーサ粒子濃度等を適当な条件に設定することが好ましい。
【0051】
基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液を減圧乾燥により乾燥させる場合には、スペーサ粒子分散液を吐出した基板を減圧装置に入れてスペーサ粒子分散液を乾燥してもよく、スペーサ粒子配置装置自体を減圧乾燥機中に設置し、スペーサ粒子分散液を乾燥してもよい。このようにすることによって、基板上のスペーサ粒子分散液の乾燥速度を調整することができる。上記減圧装置としては、基板を入れる減圧室に、その減圧室に比べ容量の大きい、予め減圧された減圧タンクが接続されているものが挙げられ、このような減圧装置を用いれば、急速かつ容易に減圧することができる。
【0052】
本発明のスペーサ粒子分散液、又は、本発明の液晶表示素子の製造方法を用いて製造される液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、インクジェット装置を用いて液晶表示素子を製造するプロセスに適合し、かつ、基板上の非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を高精度に配置することを可能とするスペーサ粒子分散液に関する。また、本発明によれば、該スペーサ粒子分散液を用いてなる液晶表示素子の製造方法、及び、該スペーサ粒子分散液又は該液晶表示素子の製造方法を用いて製造される液晶表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】従来の液晶表示素子の一例を模式的に示す正面断面図である。
【図2】(a)は、インクジェット装置のヘッドの一例の構造を模式的に示す部分切欠斜視図であり、(b)は、ノズル孔部分における断面構造を模式的に示す部分切欠斜視図である。
【図3】(a)は、実施例及び比較例で使用するカラーフィルタ基板を構成するに際して、ガラス基板の内表面に、ブラックマトリックスが設けられた状態を拡大して示す部分切欠平面図である。(b)は、実施例及び比較例で使用するカラーフィルタ基板を拡大して示す部分切欠正面断面図である。
【図4】(a)は、実施例及び比較例で使用するTFTアレイモデル基板を構成するに際して、ガラス基板の内表面に、段差が設けられた状態を拡大して示す部分切欠平面図である。(b)は、実施例及び比較例で使用するTFTアレイモデル基板を拡大して示す部分切欠正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されない。
【0056】
(実施例1〜12、比較例1〜12)
(スペーサ粒子の調製)
ジビニルベンゼン15重量部と、イソオクチルアクリレート5重量部と、重合開始剤として過酸化ベンゾイル1.3重量部とを、セパラブルフラスコ中で均一に混合した。
次に、ポリビニルアルコール(商品名「クラレポバールGL−03」、クラレ社製)の3%水溶液20重量部と、ドデシル硫酸ナトリウム0.5重量部とを、セパラブルフラスコ中に投入し充分攪拌した。しかる後、イオン交換水140重量部をさらに添加した。この溶液を攪拌しながら窒素気流下、80℃で15時間反応させた。得られた粒子を熱水及びアセトンを用いて洗浄した後、分級操作を行い、平均粒子径が4.0μm、CV値が3.0%である粒子を得た。
ジメチルスルホキシド(DMSO)20重量部と、ヒドロキシメチルメタクリレート2重量部と、N−エチルアクリルアミド18重量部との混合物中に、得られた平均粒子径が4.0μm、CV値が3.0%である粒子5重量部を投入し、ソニケータを用いて均一に分散させた。しかる後、反応系に窒素ガスを導入し、30℃で2時間撹拌を続けた。次に、1Nの硝酸水溶液で調製した0.1mol/Lの硝酸第2セリウムアンモニウム溶液10重量部を添加し、5時間反応させた。反応終了後、2μmのメンブランフィルタを用いて、粒子と反応液とを濾別した。この粒子をエタノール及びアセトンにて充分洗浄し、真空乾燥器にて減圧乾燥を行い、平均粒子径が4.0μmであるスペーサ粒子を得た。
【0057】
(スペーサ粒子分散液の調製)
得られたスペーサ粒子を所定の粒子濃度になるように必要量をとり、下記表1、2に示す組成の分散媒中にゆっくり添加し、超音波機を用いて充分撹拌し分散させた。しかる後、10μmの目開きのステンレスメッシュを用いて濾過し、凝集物を除去することによりスペーサ粒子分散液を得た。
【0058】
(基板の作製)
液晶テストパネル用の基板であるカラーフィルタ基板51と、カラーフィルタ基板51の対向基板である段差が設けられたTFTアレイモデル基板61を用意した。
【0059】
(カラーフィルタ基板)
図3(a)に、カラーフィルタ基板51に用いるブラックマトリックスが設けられたガラス基板を拡大して部分切欠平面図で示す。図3(b)に、カラーフィルタ基板51の一部を拡大して部分切欠正面断面図で示す。
実施例及び比較例に用いた表面が平滑なカラーフィルタ基板51は以下のように作製した。
図3(a)、(b)に示すように、300mm×360mmのガラス基板52の上に通常の方法により、金属クロムからなるブラックマトリックス53(幅25μm、縦間隔150μm、横間隔75μm、厚み0.2μm)を設けた。ブラックマトリックス53上及びその間に、RGBの3色からなるカラーフィルタ54画素(厚み1.5μm)を表面が平坦となるように形成した。その上にほぼ一定の厚みのオーバーコート層55及びITO透明電極56設けた。
更にITO透明電極56上に、スピンコート法によってポリイミド樹脂溶液(日産化学社製、「サンエバーSE130」)を均一に塗布した。塗布後、80℃で乾燥した後に190℃で1時間焼成し、硬化させてほぼ一定の厚みの配向膜57を形成した。
形成された配向膜の表面張力(γ)は46mN/mであった。
【0060】
(TFTアレイモデル基板)
図4(a)に、TFTアレイモデル基板に用いる段差が設けられたガラス基板を拡大して部分切欠平面図で示す。図4(b)に、TFTアレイモデル基板の一部を拡大して部分切欠正面図で示す。
実施例及び比較例に用いた段差が設けられたTFTアレイモデル基板61は以下のように作製した。
図4(a)、(b)に示すように、カラーフィルタ基板51のブラックマトリックス53に相対する位置において、300mm×360mmのガラス基板62上に、従来公知の方法により銅からなるよる段差63(幅8μm、厚み5nm)を設けた。その上に、ほぼ一定の厚みのITO透明電極64を設け、更に上述した方法でほぼ一定の厚みの配向膜65を形成した。TFTアレイモデル基板61では、段差63が形成されている部分において、配向膜65が隆起して凸部が形成されており、その凸部の高さ、すなわち、基板表面の段差は5nmであった。
配向膜65を構成するに際して、対向基板であるカラーフィルタ基板51の配向膜57と同様のポリイミド樹脂溶液を用いた。
【0061】
(インクジェット装置)
ノズルの口径が40μmであるヘッドを搭載したピエゾ方式のインクジェット装置を用意した。このヘッドのインク室の接液部を、ガラスセラミック材料により構成した。ノズルは、ノズル面がフッ素系の撥水加工が施されたものを用いた。
【0062】
(スペーサ粒子の配置)
表1、2に示すスペーサ粒子分散液をカラーフィルタ基板51又はTFTアレイモデル基板61のいずれか一方の基板にスペーサ粒子を配置する工程に移行した。なお、インクジェット装置のノズルから吐出される初期のスペーサ粒子分散液0.5mLを捨てた後に、スペーサ粒子の配置を開始した。
ヒーターで45℃に加熱されたステージ上に、カラーフィルタ基板51又はTFTアレイモデル基板61を載せた。しかる後、上述したインクジェット装置を用いて、カラーフィルタ基板51上のブラックマトリックス53部分上、又は、TFTアレイモデル基板61のブラックマトリックス53に対応する段差部分を狙って、スペーサ粒子分散液を吐出した。
吐出の際のノズルの先端面と基板表面との間隔は0.5mmとした。インクジェット装置は、ダブルパルス方式とした。
スペーサ粒子分散液を吐出した後、ヒーターで45℃に加熱されたステージ上で、基板に吐出されたスペーサ粒子分散液を乾燥し、スペーサ粒子分散液が完全に乾燥したことを目視で確認した。しかる後、残留している分散媒を除去し、150℃に加熱されたホットプレート上に基板を載置して15分間加熱し、スペーサ粒子を基板に固着させた。
【0063】
(評価用液晶表示素子の作製)
いずれか一方の基板にスペーサ粒子が配置されたカラーフィルタ基板51と、TFTアレイモデル基板61とを、周辺シール剤を用いて貼り合わせた。貼り合わせた後、シール剤を150℃で1時間加熱し、硬化させてセルギャップがスペーサ粒子の粒子径となるように空セルを作製した。しかる後、貼り合わされた2枚の基板間に真空注入法により液晶を充填し、封口剤で注入口封止して液晶表示素子を作製した。
【0064】
(評価)
下記の項目について評価を行った。結果を下記表1、2に示す。
【0065】
(1)保存中の評価
(比重)
メスシリンダー中に50mlのスペーサ分散液を計量し、重量を測定することにより、得られたスペーサ粒子分散液の20℃における比重を測定した。
【0066】
(スペーサ粒子の分散状態)
内径φ5mmの試験管にスペーサ粒子分散液を高さ10cmまで導入し、24時間静置した後に、目視にて分散液の状態を観察した。均一に分散している場合を「○」、粒子が分離し始め、透明な分散液層が観察される場合を「△」、粒子のみの堆積層が観察される場合を「×」とした。
【0067】
(2)吐出時の評価
(初期ノズルの状態)
得られたスペーサ粒子分散液をインクジェット装置のインク室内に導入した後、連続吐出を行い、各ノズルからの吐出状態を確認した。全てのノズルから問題なく吐出されている場合を「○」、ノズルの詰まり、吐出液の曲がりが3%未満であった場合を「△」、ノズルの詰まり、吐出液の曲がりが3%以上観察された場合を「×」とした。
【0068】
(ノズルの乾燥状態)
スペーサ粒子分散液をインク室内に導入後、5分間連続吐出を行った。その後装置を放置し、5時間後に連続吐出を行って、各ノズルの吐出状態を確認した。全てのノズルから問題なく吐出されている場合を「○」、ノズルの詰まり、吐出液の曲がりが3%未満であった場合を「△」、ノズルの詰まり、吐出液の曲がりが3%以上観察された場合を「×」とした。
【0069】
(3)吐出した液滴の評価
(小飛沫)
吐出した液滴を光学顕微鏡にて観察し、液滴周辺に小飛沫の有無を確認した。小飛沫が認められなかった場合を「○」、小飛沫が観察されたが3%未満であった場合を「△」、小飛沫が3%以上であった場合を「×」として評価した。
【0070】
(着弾径)
吐出した液滴を光学顕微鏡から画像データとして取り込み、着弾径の近接円を算出することにより、基板上に吐出された液滴の着弾径を測定した。着弾径が40μm以上60μm未満である場合を「○」、60μm以上70μm未満である場合を「△」、70μm以上である場合を「×」として評価した。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、インクジェット装置を用いて液晶表示素子を製造するプロセスに適合し、かつ、基板上の非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を高精度に配置することを可能とするスペーサ粒子分散液を提供することができる。また、本発明によれば、該スペーサ粒子分散液を用いてなる液晶表示素子の製造方法、及び、該スペーサ粒子分散液又は該液晶表示素子の製造方法を用いて製造される液晶表示素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
51 カラーフィルタ基板
52 透明基板
53 ブラックマトリックス
54 カラーフィルタ
55 オーバーコート層
56 ITO透明電極
57 配向膜
61 TFTアレイモデル基板
62 透明基板
63 段差
64 ITO透明電極
65 配向膜
100 ヘッド
101 インク室
102 インク室
103 吐出面
104 ノズル孔
105 温度制御手段
106 ピエゾ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット装置を用いて液晶表示素子の基板上に吐出され、基板上にスペーサ粒子を配置するのに用いるスペーサ粒子分散液であって、
スペーサ粒子と分散媒とを含有し、
前記分散媒は、2−プロパノールを1〜10重量%、水を10〜40重量%、エチレングリコールを35〜55重量%、グリセリンを10〜35重量%含有する
ことを特徴とするスペーサ粒子分散液。
【請求項2】
接着剤を含有することを特徴とする請求項1記載のスペーサ粒子分散液。
【請求項3】
インクジェット装置を用いて、請求項1又は2記載のスペーサ粒子分散液を基板上に吐出する工程を有することを特徴とする液晶表示素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載のスペーサ粒子分散液、又は、請求項3記載の液晶表示素子の製造方法を用いて製造されることを特徴とする液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−63675(P2012−63675A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209214(P2010−209214)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】