説明

スペーサ粒子分散液の吐出方法

【課題】高粘度で表面張力の高いスペーサ粒子分散液であっても、液滴を安定して正確に吐出することができるスペーサ粒子分散液の吐出方法を提供する。
【解決手段】インクジェット装置によりスペーサ粒子分散液を吐出する方法であって、前記インクジェット装置のインクジェットヘッド駆動部に、図1で示される波形の駆動電圧を印加する工程を有し、図1における区間bが0.1〜1.5μsecであり、区間aと区間bと区間cとの比a:b:cが2〜10:1:2〜10であり、かつ、駆動電圧が10〜60Vであるスペーサ粒子分散液の吐出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘度で表面張力の高いスペーサ粒子分散液であっても、液滴を安定して正確に吐出することができるスペーサ粒子分散液の吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、現在、パソコン、携帯電子機器等に広く用いられている。この液晶表示装置は、一般に、カラーフィルタ、ブラックマトリクス、線状透明電極、及び、配向膜等が形成された2枚の基板に液晶を挟持させてなる構造を有する。ここで、2枚の基板の間隔を規制し、適正な液晶層の厚さを維持しているのがスペーサ粒子である。
【0003】
スペーサ粒子を基板上に配置する方法として、特許文献1には、インクジェット装置を用いて、スペーサ粒子を基板上に配置する方法が開示されている。この方法では、基板表面に形成されている配向膜が損傷することなく、特定の位置に特定のパターンでスペーサ粒子を配置できる。
【0004】
インクジェット装置を用いてスペーサ粒子を基板上に配置する方法では、スペーサ粒子と該スペーサ粒子を分散させる分散溶媒とを含有するスペーサ粒子分散液をインクジェット装置内に充填し、ノズルからスペーサ粒子分散液の液滴を基板に向けて吐出する。しかしながら、通常のインクジェットプリンタ等に用いられるインクに含まれる顔料は、粒子径がせいぜい1μm程度のものであり、1〜20μm程度の粒子径を有するスペーサ粒子を分散させたスペーサ粒子分散液は、飛翔液滴の速度が安定しなかったり、小飛沫が発生しやすかったりするため、目的の箇所にスペーサ粒子を安定して配置させることが困難であった。また、スペーサ粒子の沈降を抑制するために、スペーサ粒子を除く液状部分の比重をスペーサ粒子の比重に近づけると、得られるスペーサ粒子分散液が高粘度で表面張力の高いものとなり、特に、この高粘度で表面張力の高いスペーサ粒子分散液において、飛翔液滴の速度のばらつきや小飛沫の発生が問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−58124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高粘度で表面張力の高いスペーサ粒子分散液であっても、液滴を安定して正確に吐出することができるスペーサ粒子分散液の吐出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インクジェット装置によりスペーサ粒子分散液を吐出する方法であって、上記インクジェット装置のインクジェットヘッド駆動部に、図1で示される波形の駆動電圧を印加する工程を有し、図1における区間bが0.1〜1.5μsecであり、区間aと区間bと区間cとの比a:b:cが2〜10:1:2〜10であり、かつ、駆動電圧が10〜60Vであるスペーサ粒子分散液の吐出方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者は、インクジェット装置のインクジェットヘッド駆動部に印加される駆動電圧を、特定の波形に制御することより、高粘度で表面張力の高いスペーサ粒子分散液であっても、飛翔液滴の速度のばらつきがなく、小飛沫もほとんど発生させずに安定して正確に液滴を吐出することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明のスペーサ粒子分散液の吐出方法では、インクジェット装置のインクジェットヘッド駆動部に、図1で示される波形の駆動電圧を印加する。
区間aは主液滴の吐出を制御するための区間であり、区間cは主液滴の末尾の小飛沫の発生を制御するための区間である。
【0010】
本発明のスペーサ粒子分散液の吐出方法において、図1における区間bの下限は0.1μsec、上限は1.5μsecである。上記区間bが0.1μsec未満であると、主液滴の末尾に小飛沫が多く発生し、好ましい飛翔状態が得られない。また、上記区間bが1.5μsecを超えると、主液滴の先頭に吐出速度の速い小飛沫が多く発生し、好ましい飛翔状態が得られない。上記区間bの好ましい下限は0.2μsec、好ましい上限は1.2μsecであり、より好ましい下限は0.5μsec、より好ましい上限は1.0μsecである。
【0011】
本発明のスペーサ粒子分散液の吐出方法において、図1における区間aと区間bと区間cとの比a:b:cは、2〜10:1:2〜10である。
上記区間a及び/又は区間cが、区間bの2倍未満の時間であると、主液滴の前後に小飛沫が多く発生する。上記区間a及び/又は区間cが、区間bの10倍を超える時間であると、主液滴の前後に小飛沫が多く発生したり、液滴が吐出されなかったりする。上記区間aと区間bと区間cとの比a:b:cは、2〜8:1:2〜8であることが好ましく、3〜6:1:3〜6であることがより好ましい。
【0012】
本発明のスペーサ粒子分散液の吐出方法において、インクジェット装置のインクジェットヘッド駆動部に、印加する駆動電圧の下限は10V、上限は60Vである。上記駆動電圧が10V未満であると、液滴が吐出されなかったり、吐出されたとしても極端に吐出速度が遅くなったりする。上記駆動電圧が60Vを超えると、小飛沫が多く発生する。上記駆動電圧の好ましい下限は20V、好ましい上限は50Vであり、より好ましい下限は25V、より好ましい上限は45Vである。
【0013】
本発明のスペーサ粒子分散液の吐出方法を用いれば、高粘度のスペーサ粒子分散液であっても、安定して正確に液滴を吐出することができる。
具体的には、本発明のスペーサ粒子分散液の吐出方法を用いれば、E型粘度計により20℃、60rpmの条件で測定した粘度が10mPa・s以上であるスペーサ粒子分散液を好適に吐出することができる。また、上記粘度の好ましい上限は30mPa・sである。
【0014】
また、本発明のスペーサ粒子分散液の吐出方法を用いれば、表面張力が高いスペーサ粒子分散液であっても、安定して正確に液滴を吐出することができる。
具体的には、本発明のスペーサ粒子分散液の吐出方法を用いれば、表面張力が30mN/m以上であるスペーサ粒子分散液を好適に吐出することができる。また、上記表面張力の好ましい上限は60mN/mである。
なお、本明細書において、上記表面張力は、白金板を使用するウイルヘルミー法にて測定された値である。
【0015】
本発明のスペーサ粒子分散液の吐出方法において吐出されるスペーサ粒子分散液は特に限定されないが、例えば、スペーサ粒子と水とアルコール系溶媒とを含有するものが好ましい。
【0016】
上記スペーサ粒子は特に限定されず、シリカ粒子等の無機系粒子であってもよいし、有機高分子等からなる有機系粒子であってもよい。なかでも、液晶表示装置の基板上に形成された配向膜を傷つけない適度の硬度を有し、熱膨張や熱収縮による厚みの変化に追随しやすく、かつ、セル内部でのスペーサ粒子の移動が比較的少ないことから、有機系粒子が好適である。
【0017】
上記有機系粒子は特に限定されないが、強度等を適切な範囲に調整することができることから、単官能単量体と多官能単量体との共重合体が好適である。
上記単官能単量体は特に限定されず、例えば、スチレン誘導体、塩化ビニル、ビニルエステル類、不飽和ニトリル類、(メタ)アクリル酸エステル誘導体等が挙げられる。
上記スチレン誘導体は特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。
上記ビニルエステル類は特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
上記不飽和ニトリル類は特に限定されず、例えば、アクリロニトリル等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステル誘導体は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら単官能単量体は単独で用いてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
【0018】
上記多官能単量体は特に限定されず、例えば、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート及びその異性体、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びその誘導体、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート等の2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−水添ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシポリプロポキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら多官能単量体は単独で用いてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0019】
また、上記単官能単量体又は多官能単量体は、親水基を有するものであってもよい。
上記親水基は特に限定されず、例えば、水酸基、カルボキシル基、スルホニル基、ホスホフォニル基、アミノ基、アミド基、エーテル基、チオール基、チオエーテル基等が挙げられる。
上記親水基として水酸基を有する単量体は特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、グリセリンモノアリルエーテル等が挙げられる。
上記親水基としてカルボキシル基を有する単量体は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸等のアクリル酸類やこれらアクリル酸類のα−又はβ−アルキル誘導体、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸やこれら不飽和ジカルボン酸のモノ2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル誘導体等が挙げられる。
上記親水基としてスルホニル基を有する単量体は特に限定されず、例えば、t−ブチルアクリルアミドスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
上記親水基としてホスフォニル基を有する単量体は特に限定されず、例えば、ビニルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記親水基としてアミノ基を有する単量体は特に限定されず、例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
上記親水基としてアミド基を有する単量体は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン等が挙げられる。
上記親水基としてエーテル基を有する単量体は特に限定されず、例えば、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記親水基として水酸基とエーテル基とをともに有する単量体は特に限定されず、例えば、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
上記有機系粒子を製造する方法は特に限定されず、例えば、懸濁重合法、シード重合法、分散重合法等の各種重合法が挙げられる。
上記懸濁重合法は、得られる粒子の粒子径分布が比較的広く多分散の粒子が得られるため、スペーサ粒子として利用する場合には分級操作を行って、所望の粒子径や粒子径分布を有する多品種の粒子を得る際に好適に用いられる。一方、シード重合、分散重合は、分級工程を経ることなく単分散粒子が得られるので、特定の粒子径の粒子を大量に製造する際に好適である。
【0021】
上記懸濁重合法、シード重合法、分散重合法等において用いられる重合開始剤は特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。
【0022】
上記スペーサ粒子の粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は1μm、好ましい上限は20μmである。上記スペーサ粒子の粒子径が1μm未満であると、対向する基板同士が接触してスペーサ粒子として充分機能しないことがある。上記スペーサ粒子の粒子径が20μmを超えると、スペーサ粒子を配置すべき基板上の遮光領域等からはみ出しやすくなったり、対向する基板間の距離が大きくなったりすることがある。
【0023】
上記スペーサ粒子は、粒子の直径が10%変位した時の圧縮弾性率(10%K値)の好ましい上限が2000MPa、好ましい下限が15000MPaである。上記10%K値が2000MPa未満であると、液晶表示素子に用いる場合、液晶表示素子を組立てる際のプレス圧により、スペーサ粒子が変形して適切なギャップが得られないことがある。上記10%K値が15000MPaを超えると、液晶表示素子に組み込んだ際に、基板上の配向膜を傷つけて表示異常が発生することがある。
なお、上記10%K値は、例えば、微小圧縮試験器(PCT−200、島津製作所社製)を用い、ダイヤモンド製の直径50μmの円柱の平滑端面で、粒子を10%歪ませるために必要な加重から求めることができる。
【0024】
上記スペーサ粒子は、スペーサ粒子分散液中において単粒子状に分散されていることが好ましい。分散液中に凝集物が存在すると、吐出精度が低下するばかりでなく、凝集が著しい場合はインクジェット装置のノズルに閉塞を起こす場合がある。
【0025】
上記スペーサ粒子分散液において、上記スペーサ粒子の濃度の好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は8重量%である。上記スペーサ粒子の濃度が0.01重量%未満であると、吐出された液滴中にスペーサ粒子を含まないことがある。上記スペーサ粒子の濃度が8重量%を超えると、インクジェット装置のノズルが閉塞してしまったり、着弾した液滴中に含まれるスペーサ粒子の数が多くなりすぎて乾燥過程でスペーサ粒子の移動(集中)が起こりにくくなったりすることがある。上記スペーサ粒子の濃度のより好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は6重量%である。
【0026】
上記アルコール系溶媒は特に限定されないが、水溶性又は親水性の溶媒が好ましい。インクジェット装置には、アルコール系溶媒用のノズルが用いられることがある。アルコール系溶媒用のノズルが用いられる場合には、溶媒として疎水性の強い溶媒を用いると、ノズルを構成する部材中に溶媒が侵入したり、部材を接着している接着剤の一部が溶媒に溶解したりすることがある。よって、アルコール系溶媒用のノズルが用いられる場合には、上記スペーサ粒子分散液中には、水溶性又は親水性の溶媒が含まれていることが好ましい。また、上記アルコール系溶媒は、1種からなるものであってもよいし、2種以上のアルコール系溶媒を含有する混合溶媒であってもよい。
【0027】
上記アルコール系溶媒としては、具体的には例えば、モノアルコール類、エチレングリコールの多量体、プロピレングリコールの多量体、低級モノアルキルエーテル類、低級ジアルキルエーテル類、グリコール類のモノアセテート、アルキルエステル類、ジオール類、ジオール類のエーテル誘導体、ジオール類のアセテート誘導体、多価アルコール類、多価アルコール類のエーテル誘導体、アセテート誘導体、エステル類、糖アルコール類、糖類、ジメチルスルホキシド、チオジグリコール、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、スルフォラン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、α−テルピネオール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビス−β−ヒドロキシエチルスルフォン、ビス−β−ヒドロキシエチルウレア、N,N−ジエチルエタノールアミン、アビエチノール、ジアセトンアルコール、尿素等が挙げられる。
【0028】
上記モノアルコール類は特に限定されず、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ヘキサノール、1−メトキシ−2−プロパノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等が挙げられる。
上記エチレングリコールの多量体は特に限定されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等が挙げられる。
上記プロピレングリコールの多量体は特に限定されず、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
上記低級モノアルキルエーテル類は特に限定されず、例えば、グリコール(上記エチレングリコールやプロピレングリコールを指す)類のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノイソプロピルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等が挙げられる。
上記低級ジアルキルエーテル類は特に限定されず、例えば、グリコール類のジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル等が挙げられる。
上記アルキルエステル類は特に限定されず、例えば、ジアセテート等が挙げられる。
上記ジオール類は特に限定されず、例えば、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−ヘキセン−2,5−ジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
上記多価アルコール類は特に限定されず、例えば、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
上記エステル類は特に限定されず、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル等が挙げられる。
上記糖アルコール類は特に限定されず、例えば、D−トレイトール、L−トレイトール、エリトリトール、D−アラビトール、L−アラビトール、リビトール、キシリトール、アロズルシトール、ズルシトール、D−タリトール、L−タリトール、D−イジトール、L−イジトール、D−マンニトール、L−マンニトール、D−イジトール、D−ソルビトール、L−ソルビトール、myo−イノシトール、マルチトール等が挙げられる。
上記糖類は特に限定されず、単糖類としては、例えば、D−トレオース、L−トレオース、D−エリトロース、L−エリトロース、D−アラビノース、L−アラビノース、D−リボース、L−リボース、D−キシロース、L−キシロース、D−リキソース、L−リキソース、D−アロース、L−アロース、D−アルトロース、L−アルトロース、D−グルコース、L−グルコース、D−マンノース、L−マンノース、D−グロース、L−グロース、D−イドース、L−イドース、D−ガラクトース、L−ガラクトース、D−タロース、L−タロース、D−フルクトース、L−フルクトース等が挙げられ、二糖類としては、例えば、マルトース、イソマルトース、セルビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、イソトレハロース、ゲンチオビオース、メリビオース、ツラノース、ソホロース、イソサッカロース等が挙げられ、三糖類以上の多糖類としては、例えば、グルカン、フルクタン、マンナン、キシラン、ガラクツロナン、マンヌロナン、N−アセチルグルコサミン重合体等のホモグリカン、ジヘテログリカン、トリヘテログリカン等が挙げられる。
これらの水溶性又は親水性の溶媒は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
本発明のスペーサ粒子分散液の吐出方法を用いれば、上記アルコール系溶媒として、エチレングリコール、グリセリン、糖アルコール類等を含有するような高粘度で表面張力の高いスペーサ粒子分散液であっても、液滴を安定して正確に吐出することができる。
【0029】
上記スペーサ粒子分散液は、本発明の目的を阻害しない範囲において、スペーサ粒子の分散を改良したり、スペーサ粒子の移動性を改良したりする目的で各種の界面活性剤、粘性調整剤等を含有してもよい。
【0030】
上記スペーサ粒子分散液は、スペーサ粒子を除く不揮発成分の含有量が少ないこと、具体的には1μmよりも小さい粒径を有する不揮発成分の含有割合が上記スペーサ粒子分散液全体に対して、0.001重量%未満であることが好ましい。0.001重量%を超えると、液晶表示素子に用いた場合、液晶や配向膜が汚染されて、液晶表示装置のコントラスト等の表示品質が悪くなることがある。
上記不揮発成分には、例えば、大気中のゴミ、スペーサ粒子を分散させるのに用いたアルコール系溶媒中に含まれていた不純物、スペーサ粒子の粉砕物、金属イオン等のイオン性化合物等が含まれ、スペーサ粒子分散液中における保形性を有さない固形分や非球形の微粒子を含むものとする。
【0031】
上記スペーサ粒子分散液中の不揮発成分を少なくする方法としては、例えば、まずスペーサ粒子の粒子径よりも大きい濾過径を有するフィルターで上記スペーサ粒子分散液を濾過して大きなゴミを除いた後、上記スペーサ粒子分散液を遠心してスペーサ粒子を沈殿させた後、上澄み液を捨てて、更に濾取したスペーサ粒子を1μmの濾過径を有するフィルターで濾過した溶媒を加えてスペーサ粒子を分散させる方法や、スペーサ粒子の粒子径よりも小さい濾過径を有するフィルターでスペーサ粒子を濾取し、濾取したスペーサ粒子を1μmの濾過径を有するフィルターで濾過した溶媒に分散させる方法や、層状珪酸塩等のイオン吸着性固体を用いる方法等が挙げられる。これらの方法は、繰り返して行われてもよい。
【0032】
上記スペーサ粒子分散液は、スペーサ粒子の比重と、スペーサ粒子を除く液状部分の比重との差が0.5以下であることが好ましい。上記比重の差が0.5を超えると、上記スペーサ粒子分散液中でスペーサ粒子が沈降し、吐出した上記スペーサ粒子分散液中のスペーサ粒子の数が不均一になることがある。
【0033】
上記スペーサ粒子分散液は、基板に対する後退接触角(θr)が5度以上であることが好ましい。後退接触角が5度以上あれば、基板に着弾した上記スペーサ粒子分散液の液滴が乾燥するときに、その中心に向かって縮小していくとともに、その液滴中に1個以上含まれるスペーサ粒子がその液滴中心に寄り集まることが可能となる。上記後退接触角(θr)が5度未満であると、基板上で液滴の着弾した箇所の中心(着弾中心)を中心として液滴が乾燥し、その液滴径が縮小するとともに、スペーサ粒子がその中心に集まり難くなることがある。
なお、本明細書において上記後退接触角(θr)とは、基板上に置かれた上記スペーサ粒子分散液の液滴が、基板上に置かれてから乾燥するまでの過程で、基板上に最初に置かれた際の着弾径より小さくなりだした時(液滴が縮みだした時)に示す接触角、又は、液滴の揮発成分の内80〜95重量%が揮発した際に示す接触角をいう。
【0034】
また、上記後退接触角は、いわゆる接触角(液滴を基板に置いた際の初期接触角で通常はこれを接触角と呼ぶことがほとんどである)に比べ小さくなる傾向がある。これは、初期の接触角は、上記スペーサ粒子分散液を構成するアルコール系溶媒に接触していない基板表面上での液滴の基板に対する接触角であるのに対し、後退接触角は上記スペーサ粒子分散液を構成するアルコール系溶媒に接触した後の基板表面上での液滴の基板に対する接触角であるためと考えられる。即ち、後退接触角が初期接触角に対して著しく低い場合は、それらのアルコール系溶媒によって配向膜が損傷を受けていることを示しており、これらのアルコール系溶媒を使用することが配向膜汚染に対して好ましくないことを示すと考えられる。
【0035】
上記スペーサ粒子分散液は、スペーサ粒子分散液と基板面との初期接触角θの好ましい下限が10度、好ましい上限が110度である。上記初期接触角θが10度未満であると、基板上に吐出された上記スペーサ粒子分散液液滴が、基板上に濡れ拡がった状態となりスペーサ粒子の配置間隔を狭くできないことがある。上記初期接触角θが110度を超えると、少しの振動で液滴が基板上を動き回り易く、結果として配置精度が悪化したり、スペーサ粒子と基板との密着性が悪くなったりすることがある。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、高粘度で表面張力の高いスペーサ粒子分散液であっても、液滴を安定して正確に吐出することができるスペーサ粒子分散液の吐出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】インクジェットヘッド駆動部に印加する駆動電圧の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0039】
(実施例1)
イソプロパノール15重量部と、水5重量部と、エチレングリコール80重量部とを混合し、更に、スペーサ粒子(積水化学工業社製、「ミクロパール」、粒子径4μm)を含有量が1重量%となるように分散させてスペーサ粒子分散液を調製した。得られたスペーサ粒子分散液の表面張力は35.7mN/mであり、E型粘度計により20℃、60rpmの条件で測定した粘度は14.1mPa・sであった。
インク液滴を吐出する複数個のノズルを有するオリフィスプレートとノズルに対応したインク加圧室を形成するチャンバープレートと、インク加圧室の一部を形成する振動板と、振動板に固着された複数個の振動子を有するインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドの振動子に印加する駆動電圧を発生するインクジェット駆動部とを備えた液滴吐出装置を用い、図1の区間a、b、c、及び、駆動電圧を表1に示す値に制御して、得られたスペーサ粒子分散液をインクジェットヘッドより吐出した。
【0040】
(実施例2)
イソプロパノール10重量部と、水30重量部と、エチレングリコール60重量部とを混合し、更に、スペーサ粒子(積水化学工業社製、「ミクロパール」、粒子径4μm)を含有量が1重量%となるように分散させたスペーサ粒子分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、得られたスペーサ粒子分散液をインクジェットヘッドより吐出した。
得られたスペーサ粒子分散液の表面張力は35.9mN/mであり、実施例1と同様にして測定した粘度は15.5mPa・sであった。
【0041】
(実施例3)
イソプロパノール5重量部と、水30重量部と、エチレングリコール25重量部と、グリセリン40重量部とを混合し、更に、スペーサ粒子(積水化学工業社製、「ミクロパール」、粒子径4μm)を含有量が1重量%となるように分散させたスペーサ粒子分散液を用い、図1の区間a、b、c、及び、駆動電圧を表1に示す値に制御したこと以外は実施例1と同様にして、得られたスペーサ粒子分散液をインクジェットヘッドより吐出した。
得られたスペーサ粒子分散液の表面張力は36.8mN/mであり、実施例1と同様にして測定した粘度は14.3mPa・sであった。
【0042】
(実施例4)
イソプロパノール15重量部と、水20重量部と、エチレングリコール25重量部と、グリセリン40重量部とを混合し、更に、スペーサ粒子(積水化学工業社製、「ミクロパール」、粒子径4μm)を含有量が1重量%となるように分散させたスペーサ粒子分散液を用い、図1の区間a、b、c、及び、駆動電圧を表1に示す値に制御したこと以外は実施例1と同様にして、得られたスペーサ粒子分散液をインクジェットヘッドより吐出した。
得られたスペーサ粒子分散液の表面張力は33.5mN/mであり、実施例1と同様にして測定した粘度は12.5mPa・sであった。
【0043】
(実施例5〜9、比較例1〜10)
図1の区間a、b、c、及び、駆動電圧を表1に示す値に制御したこと以外は実施例1と同様にして、スペーサ粒子分散液をインクジェットヘッドより吐出した。
なお、比較例1並びに比較例2では区間b及び区間cを設けていない。
【0044】
<評価>
実施例及び比較例について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0045】
(1)液滴速度安定性
インクジェットヘッドからのインク吐出状態をストロボ撮影にて観察し、同じノズルから吐出される液滴の吐出速度のばらつきを測定し、以下の基準で評価した。
○:液滴吐出速度のばらつきが0.5m/sec未満
×:液滴吐出速度のばらつきが0.5m/sec以上
【0046】
(2)小飛沫発生率
インクジェットヘッドからのインク吐出状態をストロボ撮影にて観察し、主液滴以外に発生する小飛沫の発生状況を以下の基準で評価した。
○:主液滴以外の小飛沫が殆ど無い(数個以下)
×:主液滴以下の小飛沫が多い(10個以上)
【0047】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、高粘度で表面張力の高いスペーサ粒子分散液であっても、液滴を安定して正確に吐出することができるスペーサ粒子分散液の吐出方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット装置によりスペーサ粒子分散液を吐出する方法であって、
前記インクジェット装置のインクジェットヘッド駆動部に、図1で示される波形の駆動電圧を印加する工程を有し、
図1における区間bが0.1〜1.5μsecであり、
区間a:b:cが2〜10:1:2〜10であり、かつ、
駆動電圧が10〜60Vである
ことを特徴とするスペーサ粒子分散液の吐出方法。
【請求項2】
スペーサ粒子分散液は、スペーサ粒子と水とアルコール系溶媒とを含有するものであることを特徴とする請求項1記載のスペーサ粒子分散液の吐出方法。
【請求項3】
スペーサ粒子分散液は、E型粘度計により20℃、60rpmの条件で測定した粘度が10mPa・s以上であり、かつ、表面張力が30mN/m以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のスペーサ粒子分散液の吐出方法。


【図1】
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【公開番号】特開2011−25136(P2011−25136A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172189(P2009−172189)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】