説明

スペーサ装置、およびスペーサ装置を備えた取付け構成

本発明は、突っ張り部材(18)とこれと対を成す突っ張り部材(19)を備え、ねじボルト(6)を利用して車両ルーフ(2)上に、ルーフレール、ルーフモールディング、またはこれらと同種のルーフ荷台枠(7)を取り付けるために、支持メンバ(3)とルーフ外板(4)との間の空隙(17)において双方を繋ぐようになっているスペーサ装置(5)であって、突っ張り部材(18)とこれと対を成す突っ張り部材(19)はねじ締結部(24)を介して互いに保持し合うようになっていて、そのスパン長(A)を調節するために突っ張り部材とこれと対を成す突っ張り部材の相対位置を調節可能であり、ねじボルト(6)がルーフ荷台枠(7)または支持メンバ(3)に設けられたそれと対を成すねじ切り部(16)にねじ込まれる際には、突っ張り部材(18)またはこれと対を成す突っ張り部材(19)がねじボルト(6)との回転駆動係合部(27)によって支持メンバ(3)またはルーフ外板(4)との当接位置までねじボルト(6)に引かれて変位するスペーサ装置(5)に関するものである。回転駆動係合部(27)はプラスチック駆動部材(28)を備え、摩擦抵抗によって引かれるように、プラスチック駆動部材の内部にねじボルト(6)のねじ切り部がねじ込まれる/ねじ込まれたことが企図される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突っ張り部材とこれと対を成す突っ張り部材を備え、ねじボルトを利用して車両ルーフ上に、ルーフレール、ルーフモールディング、またはこれらと同種のルーフ荷台枠を取り付けるために、支持メンバとルーフ外板との間の空隙において双方を繋ぐようになっているスペーサ装置であって、突っ張り部材とこれと対を成す突っ張り部材はねじ締結部を介して互いに保持し合うようになっていて、そのスパン長を調節するために突っ張り部材とこれと対を成す突っ張り部材の相対位置を調節可能であり、ねじボルトがルーフ荷台枠または支持メンバに設けられたそれと対を成すねじ切り部にねじ込まれる際には、突っ張り部材またはこれと対を成す突っ張り部材がねじボルトとの回転駆動係合部によって支持メンバまたはルーフ外板との当接位置までねじボルトに引かれて変位するスペーサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばルーフレール、ルーフモールディング、およびこれらと同種のルーフ荷台枠は車両の車両ルーフ上に搭載され、これらは薄板からなるルーフ外板に支持されるのではなく、スペーサ装置を介して車両のルーフの支持メンバに接続されている。この支持メンバは、ルーフ上の積載荷重が大きいときに存在する、あるいは発生する力を受け止められるようになっている。この支持メンバは、ルーフ外板のパネル下側に位置しているために外側からは見ることができず、インナライニング(ルーフライニング)で覆われているために車両の室内側からも見ることができない。ルーフ外板の下面と支持メンバの上面との間には、製造公差によって多少なりとも空隙が形成されている。したがって、ルーフ荷台枠を組み付ける際には、支持メンバとの確実な接続状態が得られると共に、ルーフ外板に圧力が加わってパネルが変形したり、厄介な反りとして認識されたりしないように保証しなければならない。
【0003】
様々なスペーサ装置が公知であるが、その組付け作業にはかなりの工数を要している。例えば、様々な長さのスペーサを使用することが可能であるものの、組付者は存在する空隙の大きさに適合したスペーサをそれぞれ選択している。さらに、ねじ締結部を介して互いに保持し合い、空隙を架橋するためにそれぞれの位置が調節されるようになっている二つの部品を備えたスペーサも知られているものの、これらの部品はルーフ荷台枠を取り付けるために設けられたねじボルトに係合され、このねじボルトの回転に伴ってこれに引き連れられて変位するようになっていて、ねじボルトに対するこの回転従動によってねじボルトがねじ込まれる際には、両部品がねじ締結部を介してねじボルトに引き連れられて変位し、空隙を架橋する位置まで達するようになっている。そして、ねじボルトに引かれるようにするために複数の板バネ部分を設けたバネ要素が設けられ、このバネ要素によって、ねじボルトの押込み、すなわちねじボルトの軸方向への変位を可能にすると共に、空隙のスパン長を調節するために上述のねじボルトに対する回転従動が可能となるような挟持圧がボルトに加えられることを保証している。複数の板バネ部分を設けたこのようなバネ要素によって、構造が複雑でかつ高価なものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、組み付けが容易でかつ簡単なスペーサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、冒頭で述べた様々な特徴に鑑みて、回転駆動係合部にプラスチック駆動部材を設け、摩擦抵抗によって引かれるように、プラスチック駆動部材の内部にねじボルトのねじ切り部がはめ込まれる/ねじ込まれるようになっている、または、はめ込まれた/ねじ込まれたことによって解決される。このようにプラスチック駆動部材として構成されることによって、プラスチック材料がねじボルトの金属と比較して相対的に柔らかいため、摩擦係合による容易な駆動もしくは引き連れが保証され、引かれる工程の完了後にはルーフ荷台枠を取り付けるためにねじボルトを問題なく更に回転させることができる。本発明に従って簡単なプラスチック駆動部材を使用することによって、本発明とは異なる原理で動作する公知のスペーサ装置においても同様に、これにプラスチック駆動部材を単純に設けることで本発明に従って使用することができる。このプラスチック駆動部材は、ねじボルトのための受入れ穴に問題なく挿入することができる。
【0006】
本発明の展開構成例によれば、このプラスチック駆動部材は、ねじボルトのための、ねじの直径よりも小さいアンダサイズ雌ねじ、アンダサイズボルト通路、および/または、ねじボルトのねじ切り部がセルフタッピング式にねじ込まれる受入れ通路を有するように構成されている。アンダサイズ雌ねじが備えられる場合には、ねじボルトを適切な摩擦抵抗だけでアンダサイズ雌ねじにねじ込むことが可能であり、それによって回転駆動係合部が実現されることとなる。また、アンダサイズボルト通路が備えられる場合には、アンダサイズボルト通路がねじボルトのねじ切り部の螺旋状に延びるねじ頂部に引っ掛かって動かなくなり、それによって同様に回転駆動を保証することができる。この構成形態では、同時に、ねじボルトが軸方向の適切な押付け力でアンダサイズボルト通路内を軸方向に変位することができるようになる。さらに、ねじボルトのねじ切り部がセルフタッピング式でねじ込まれる受入れ通路を使用することもできる。このねじボルトのねじ切り部によるねじ立てによって回転駆動を担保する摩擦係合が保証されることとなる。アンダサイズ雌ねじの場合および受入れ通路の場合では、スペーサ装置のスパン寸法の調節後にねじボルトをさらに回転させると、ねじボルトの磨砕効果によってねじ山がつぶれることがある。当然に、上述の各解決手段を任意に組み合わせることも可能である。
【0007】
本発明の別の展開構成例によれば、プラスチック駆動部材がねじボルトのための内部通路を有するドライブスリーブとして構成されている。この内部通路は、特にアンダサイズ雌ねじ、アンダサイズボルト通路、またはセルフタッピングのための受入れ通路であることがよい。
【0008】
このドライブスリーブは、突っ張り部材またはこれと対を成す突っ張り部材の内部に取り付けられている、もしくは、突っ張り部材またはこれと対を成す突っ張り部材を形成すると有利である。前者の場合には、ドライブスリーブがインサート部品となっており、後者の場合には、突っ張り部材またはこれと対を成す突っ張り部材の全体が一体に構成されていて、その際に同時にドライブスリーブを実現するようになっている。
【0009】
本発明のさらに別の展開構成例では、ドライブスリーブと突っ張り部材またはこれと対を成す突っ張り部材との間に一種の回り止めがもたらされるようになっており、この回り止めは、ドライブスリーブの非円形の外周断面形状と、これに対して適合した形状の突っ張り部材またはこれと対を成す突っ張り部材の貫通孔の内周断面形状と、から構成されている。これによって、スペーサ装置の長さを調節するために、駆動係合部によって回転状態に移行されるドライブスリーブと共に突っ張り部材またはこれと対を成す突っ張り部材が回転されることを保証している。
【0010】
また、突っ張り部材またはこれと対を成す突っ張り部材を支持メンバまたはルーフ構造に固定するために、突っ張り部材またはこれと対を成す突っ張り部材に取付け可能な/取り付けられたホルダが備えられていると有利である。この処置によって、ねじ締結部を介して互いに保持し合う部材の一方が、その位置が動かないように固定され、他方の部材が回転しても共に回転しないようになっている。また、このホルダによって、スペーサ装置が一旦取り付けられた位置から不意にずれたりしないため、組付け作業が容易になる。これは、スパン長が未調節である仮組付け段階についても当てはまることである。
【0011】
このホルダは、クリップオン式取付け部を利用して突っ張り部材またはこれと対を成す突っ張り部材に取り付けられていることが好ましい。このクリップオン式取付け部によって、ホルダは突っ張り部材またはこれと対を成す突っ張り部材に回転しないように保持される。或いはその代わりに、ホルダを突っ張り部材またはこれと対を成す突っ張り部材と一体に構成することもできる。
【0012】
本発明の別の展開構成例では、ホルダが、これを支持メンバまたはルーフ外板に取り付けるための複数の支持要素および後方把持要素を有している。このホルダは支持メンバまたはルーフ外板の通し穴の周縁領域に取り付けられるのが好ましい。それぞれの支持要素は、例えばルーフ外板の下側でこの通し穴の周縁領域に支持されるようになっており、それぞれの後方把持要素は、ルーフ外板の上側でこの通し穴の周縁領域に当接するようになっていて、それによって支持メンバまたはルーフ外板への確実な固定がこの支持と後方把持によって保証されるようになっている。これらの支持要素および/または後方把持要素は弾性材料からなるのがよく、それによって、取付け作業のために、各要素は一旦変位した後、続いて元の位置に復帰することが可能となり、支持および/または後方把持を実現することができる。
【0013】
ホルダは、突っ張り部材またはこれと対を成す突っ張り部材の周囲を把持するリングホルダとして構成されていることが好ましい。したがって、このホルダは、突っ張り部材またはこれと対を成す突っ張り部材の上方からリング状にかぶせられることになるが、その後続いてクリップオン式取付け部を利用して取り付けられることが好ましい。
【0014】
本発明の別の展開構成例では、突っ張り部材が、雌ねじが切られた外側スリーブとして構成されるようになっており、好適には、それと対を成す突っ張り部材は、雄ねじが切られた内側スリーブとして構成されるようになっている。内側スリーブの雄ねじは外側スリーブの雌ねじにねじ込まれ、それによって、スパン長を調節するための突っ張り部材とこれと対を成す突っ張り部材との間の上述したねじ締結部が実現される。
【0015】
さらに、ホルダのそれぞれの支持要素および後方把持要素が、ルーフ外板の通し穴の周縁領域にホルダを固定するように構成されていると有利である。これについては、既に上記で詳細に説明した。さらに、支持要素および/または後方把持要素が弾性材料からなることがよいことも述べた。これらは、弾性を有する保持アームから成る、あるいは弾性を有する保持アームを備えることが好ましい。
【0016】
本発明はさらに、少なくとも一つの支持メンバと一つのルーフ外板とを有する車両ルーフと、ルーフ荷台枠と、スペーサ装置、特に、ルーフレール、ルーフモールディング、またはこれと同種のルーフ荷台枠を車両ルーフに取り付けるための上述した各実施形態のうちの一つまたは複数に従ったスペーサ装置と、を有する取付け構成であって、ルーフ外板が通し穴を有し、その周縁領域にスペーサ装置を固定可能であり、さらにスペーサ装置はルーフ荷台枠に向かってこの通し穴を貫通してルーフ荷台枠と当接するようになっている取付け構成に関するものである。このスペーサ装置を通し穴に通す作業は、ルーフ外板に作用する変形力が皆無となるように、スペーサ装置の突っ張り部材またはこれと対を成す突っ張り部材のいずれか一方を利用して通し穴と接触することなく行われるようになっている。
【0017】
図面には、本発明が一つの実施形態を例にとって具体的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】スペーサ装置を備えた取付け構成の概略的な断面図である。
【図2】スペーサ装置を斜め下方から見た斜視図である。
【図3】スペーサ装置の分解構成図である。
【図4】ねじボルトと共にスペーサ装置を斜め上方から見た斜視図である。
【図5】スペーサ装置と車両のルーフ外板を上方から見た平面図である。
【図6】図5の構成を下方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、取付け構成1と車両ルーフ2の断面を示したものであり、そこには車両ルーフ2の支持メンバ3領域とルーフ外板4領域が図示されている。このルーフ外板は、車両、特に自動車の外側から見ることのできるルーフパネルであり、支持メンバ3は、車両の外側からも室内側からも見ることができず、大きな力を受け止めることができる車両ルーフ2の頑丈な構成部品である。支持メンバ3とルーフ外板4の間には、一つのねじボルト6が配設されたスペーサ装置5が位置しており、このねじボルト6を利用して車外のルーフ上にルーフ荷台枠7を保持することができるものの、ここにはこのルーフ荷台枠7のうち小さな断面のみが示されている。
【0020】
図1からは、ねじボルトが締め付けられて、その頭部8から支持メンバ3の下面9に対して張力が加えられていること、ねじボルト6によってルーフ荷台枠7に対し加えられる張力によって、スペーサ装置5の下面10が支持メンバ3の上面11に支持されていること、スペーサ装置5の上面12がルーフ荷台枠7の下面13に支持されることによって、ルーフ外板4の変形に至る可能性のある力がルーフ外板4に作用することなく、ルーフ荷台枠7が支持メンバ3にしっかりと張架されることが分かる。ねじボルト6とスペーサ装置5を通すために、ルーフ外板4は一つの通し穴14を有している。上述の張架のために、ねじボルト6のねじ切りされた軸部15が、ルーフ荷台枠7の下面13に設けられた一つのねじ切りされた穴16(それと対を成すねじ切り部)の内部にねじ込まれている。ここで、ルーフ荷台枠7は、例えばルーフモールディングとして構成されることができる。これらのことから、スペーサ装置5が、スパン長Aを有する空隙17に架け渡されていることが明らかであるものの、このスパン長Aは―製造公差に依存して―個々の車両で変動することがある、および/または車両型式が異なるとその大きさも異なるため、スペーサ装置5は組付けの際にこの差を補償できるものでなければならない。したがって、以下ではこのスペーサ装置5の構造について詳細に説明する。
【0021】
スペーサ装置5は、図1から4で示されているように、一つの突っ張り部材18とこれと対を成す一つの突っ張り部材19を有している。突っ張り部材18は雌ねじ20が切られた外側スリーブ21として構成され、それと対を成す突っ張り部材19は雄ねじ22は切られた内側スリーブ23として構成されている。突っ張り部材18とこれと対を成す突っ張り部材19は、雌ねじ20および雄ねじ22を介して互いに接続されている、すなわちこれらの両部材は互いに締結されている。外側スリーブ21からの内側スリーブ23の突出量が大きいほど、スペーサ装置5ひいてはスパン長Aは長くなる。組付けがまだ行われていない状態においては、内側スリーブ23は、スペーサ装置5の全長がスパン長Aよりも短くなる位置まで外側スリーブ21の内部にねじ込まれている。雌ねじ20と雄ねじ22は、突っ張り部材18とこれと対を成す突っ張り部材19との間のねじ締結部24を形成している。
【0022】
突っ張り部材19は一つの貫通孔25を有し、特に図2および3で示されているように、これは八角形の内周断面形状26を有しているとよい。この貫通孔25には、プラスチック駆動部材28の形態の一つの回転駆動係合部27が配置され、特に軸方向に挿入されており、このプラスチック駆動部材28はドライブスリーブ29として構成されることが好ましい。このドライブスリーブ29は内周断面形状26に適合した形状であり、したがって同様に八角形に構成されている外周断面形状30を有している。八角形に代えて、他の非円形、すなわち真円以外の断面を採用し、突っ張り部材19とプラスチック駆動部材28との間に一種の回り止め31が構成されるようにしてもよい。
【0023】
プラスチック駆動部材28は、ねじボルト6のねじ切りされた軸部15を受け入れるための一つの内側通路32を有し、この内側通路32は、図示する実施例では、アンダサイズボルト通路33として構成されており、すなわち、ねじ切りされた軸部15はこのアンダサイズボルト通路33内で遊びを全く有しておらず、それどころかむしろ、アンダサイズボルト通路33の平滑な通路壁面から、ねじボルト6をプラスチック駆動部材28に対してもはやそれ以上回転させることができなくなるほどには大きくないものの、締付けトルクが予め設定可能なある一定の値を上回ると両部品の相対回転を可能とするような径方向の力が、ねじ切りされた軸部15に加えられるようになっている。さらに、アンダサイズボルト通路33の内部でねじ切りされた軸部15を軸方向に変位させることができるものの、しかしいずれにせよ、そのためには、プラスチック駆動部材28の挟持効果のため、ねじ切りされた軸部にこれを変位させる適切な力を加える必要がある。
【0024】
ルーフ外板4への組付けの際に、スペーサ装置5をその位置が動かないように固定するために、特に回転不能であるように突っ張り部材18に着脱自在に取り付けられた一つのホルダ34が設けられている。このホルダ34はリングホルダ35として構成されている。これは一つのリング36を有しており、これが、クリップオン式取付け部37が突っ張り部材18とはまり合って係止される位置まで、突っ張り部材18の上から軸方向へ押しばめされるようになっている。このクリップオン式取付け部37は、直径上で対向する二つの係止フック38を有しており、これが突っ張り部材18の周縁部で開口した軸方向へ延びるそれぞれの切欠部39に径方向にはまり込んで係止される。この係止位置において、それと同時にリング36のリング端面40が突っ張り部材18の環状段部41に当接し、ホルダ34の突っ張り部材18に沿った軸方向への変位が不可能となる。切欠部39に係合する係止フック38によって、ホルダ34と突っ張り部材18の相対回転が防止される。ホルダ34のリング36の外筒面には、複数の支持要素42と後方把持要素43が、好ましくは一体に成形されるものの、ここでは円周上に等間隔に分散して配置された三つの支持要素42と、円周上に等間隔に分散して配置された三つの後方把持要素43が設けられると好適である。支持要素42と後方把持要素43はアーム状に構成されており、すなわちこれらは、材料、特にプラスチック材料の柔軟性によって径方向へ弾撥性を有することができるようになっている。ここで、後方把持要素43は、径方向外側を指す後方把持タブ44を有している。図5および6で示されているように、ルーフ外板4の通し穴14の内部にスペーサ装置5を固定する場合には、スペーサ装置5は、外側から、すなわち車外から、スペーサ装置の長手方向に対して実質的に斜めに延びる各支持要素42が径方向内側へ向かってしなるように通し穴14に挿入される。後方把持タブ44がルーフ外板4の上面に載置されるとすぐに、これらの支持要素42は、通し穴14の周縁部から離脱することでバネ弾性によって径方向外側へ向かって跳ね返り、それによってルーフ外板4の下面に支持されることになる。これにより、スペーサ装置5は通し穴14内にクリップオン式に固定され、その際、図5および6で示されているように、通し穴14の断面が非円形であり、スペーサ装置5も同様に非円形の構造であるため、一種の回り止めが形成されることになる。さらに、図5および6から確認できるように、突っ張り部材18の直径は通し穴14の最小直径よりも小さくなっており、図1で示されているように、ルーフ外板4と突っ張り部材18との間には接触部が全く存在しておらず、さらに、突っ張り部材18が通し穴14からさらに外側へと突出することによって取り付けられるルーフ荷台枠7が突っ張り部材18に支持され、ルーフ外板4には支持されないようになっている。
【0025】
取付け時の作動方式は以下の通りである。ルーフ荷台枠7を車両ルーフ2に組み付けるために、突っ張り部材18とこれと対を成す突っ張り部材19を互いに締結してスパン寸法を縮めた状態で、スペーサ装置5を、上記で説明したようにルーフ外板4の通し穴14に外側からクリップオン式にはめ込む。次いで、ルーフライニングがまだ組み付けられていない、または取り外された状態で、車両の内側からねじボルト6を支持メンバ3の通し孔45に通して、アンダサイズボルト通路33の内部に押し込む。その際、アンダサイズであるために適切な力が必要とされるものの、この押込みは、ねじボルト6のねじ切りされた軸部15の自由端が外側から車両ルーフ2上に載置されたルーフ荷台枠7のねじ切りされた穴16に当接するところまで、軸方向に行われるようにするとよい。この状態になったら、次に適切な工具を使用して、ねじボルト6をこのねじ切りされた穴16の内部へねじ込む。ねじボルト6のこの回転によって、ドライブスリーブ29は摩擦抵抗によってねじボルト6に引かれて変位するため、突っ張り部材19は突っ張り部材18から出て、突っ張り部材19の下面10が支持メンバ3の上面11に当接する位置まで軸方向にねじ外されることとなる。この状況において、ねじボルト6は、ねじ切りされた穴16の内部にまだ完全にはねじ込まれていない。このときにねじボルト6をさらに回転させると、プラスチック駆動部材28とねじボルトとの間の摩擦抵抗に打ち克つこととなり、ボルト6はルーフ荷台枠7が固定されるまで回転されるようになっている。その際、ルーフ荷台枠7の下面13が突っ張り部材18の上面12に支持され、それと対を成す突っ張り部材19の下面10が支持メンバ3の上面11に支持され、ねじボルト6の頭部8が支持メンバ3の下面9に当接している。ここで、ルーフ外板4の上面46はルーフ荷台枠7の下面13に対して一定の間隔Sを保持しており、この間隔Sは、後方把持タブ44がそこに挟み付けられて潰されることがないように、後方把持タブ44の厚みよりも大きくなっている。したがって、許容されない力がルーフ外板4に加わることなく、ルーフ荷台枠7は車両ルーフ2の支持メンバ3に固定して確実に接続されることとなる。
【0026】
当然に、取付け構成1は、ルーフ荷台枠7の長手方向に沿って複数個設けられることが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突っ張り部材とこれと対を成す突っ張り部材を備え、ねじボルトを利用して車両ルーフ上に、ルーフレール、ルーフモールディング、またはこれらと同種のルーフ荷台枠を取り付けるために、支持メンバとルーフ外板との間の空隙において双方を繋ぐようになっているスペーサ装置であって、前記突っ張り部材とこれと対を成す前記突っ張り部材はねじ締結部を介して互いに保持し合うようになっていて、そのスパン長を調節するために前記突っ張り部材とこれと対を成す前記突っ張り部材の相対位置を調節可能であり、前記ねじボルトが前記ルーフ荷台枠または支持メンバに設けられたそれと対を成すねじ切り部にねじ込まれる際には、前記突っ張り部材またはこれと対を成す前記突っ張り部材が該ねじボルトとの回転駆動係合部によって前記支持メンバまたは前記ルーフ外板との当接位置まで該ねじボルトに引かれて変位するスペーサ装置において、
前記回転駆動係合部(27)はプラスチック駆動部材(28)を備え、摩擦抵抗によって引かれるように、該プラスチック駆動部材の内部に前記ねじボルト(6)のねじ切り部がはめ込まれる/ねじ込まれるようになっている、または、はめ込まれた/ねじ込まれたことを特徴とするスペーサ装置。
【請求項2】
前記プラスチック駆動部材(28)は、前記ねじボルトのためのアンダサイズ雌ねじ、アンダサイズボルト通路(33)、および/または、前記ねじボルト(6)の前記ねじ切り部がセルフタッピング式にねじ込まれる受入れ通路を有することを特徴とする請求項1に記載のスペーサ装置。
【請求項3】
前記プラスチック駆動部材(28)は、前記ねじボルト(6)のための内側通路(32)を有するドライブスリーブ(29)として構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスペーサ装置。
【請求項4】
前記ドライブスリーブ(29)は、前記突っ張り部材(18)またはこれと対を成す突っ張り部材(19)の内部に取り付けられている、もしくは、前記突っ張り部材(18)またはこれと対を成す突っ張り部材(19)を形成することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項5】
ドライブスリーブ(29)と突っ張り部材(18)またはこれと対を成す突っ張り部材(19)との間に回り止め(31)を備え、該回り止め(31)は、前記ドライブスリーブ(29)の非円形の外周断面形状と、これに対して適合した形状の前記突っ張り部材(18)またはこれと対を成す突っ張り部材(19)の貫通孔(25)の内周断面形状と、から構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項6】
前記突っ張り部材(18)またはこれと対を成す突っ張り部材(19)を前記支持メンバ(3)または前記ルーフ外板(4)に固定するために、前記突っ張り部材(18)またはこれと対を成す突っ張り部材(19)に取付け可能な/取り付けられたホルダ(34)を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項7】
前記ホルダ(34)が、クリップオン式取付け部(37)を利用して前記突っ張り部材(18)またはこれと対を成す突っ張り部材(19)に取り付けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項8】
前記ホルダ(34)は、これを前記支持メンバ(3)または前記ルーフ外板(4)に取り付けるための複数の支持要素および後方把持要素(42,43)を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項9】
前記ホルダ(34)が、前記突っ張り部材(18)またはこれと対を成す突っ張り部材(19)の周囲を把持するリングホルダ(35)として構成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項10】
前記突っ張り部材(18)が、雌ねじ(20)が切られた外側スリーブ(21)として構成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項11】
前記突っ張り部材(19)が、雄ねじ(22)が切られた内側スリーブ(23)として構成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項12】
前記ホルダ(34)の前記各支持要素および後方把持要素(42,43)が、前記ルーフ外板(4)の通し穴(14)の周縁領域に該ホルダ(34)を固定するように構成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項13】
前記各支持要素および/または後方把持要素(42,43)は、弾性保持アームによって形成されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項14】
少なくとも一つの支持メンバと一つのルーフ外板とを有する車両ルーフと、ルーフ荷台枠と、スペーサ装置、特に、ルーフレール、ルーフモールディング、またはこれと同種のルーフ荷台枠を車両ルーフに取り付けるための請求項1から13のいずれか一項に記載のスペーサ装置と、を有する取付け構成であって、
前記ルーフ外板(4)は通し穴(14)を有し、その周縁領域に前記スペーサ装置(5)を固定可能であり、該スペーサ装置(5)は前記ルーフ荷台枠(7)に向かって前記通し穴(14)を貫通して該ルーフ荷台枠(7)と当接していることを特徴とする取付け構成。
【請求項15】
前記スペーサ装置(5)の突っ張り部材(18)またはこれと対を成す突っ張り部材(19)は、前記ルーフ外板(4)の前記通し穴(14)に接触しないように通されていることを特徴とする請求項14に記載の取付け構成。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−511675(P2012−511675A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539928(P2011−539928)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008539
【国際公開番号】WO2010/066363
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(511141571)
【Fターム(参考)】