説明

スポイラ構造

【課題】ブロー成形により形成されるブロー本体部とインサート脚部とを強固に結合させることが可能なスポイラ構造を提供する。
【解決手段】脚部12と羽根部11とを有するスポイラ10において、ブロー成形され羽根部11を構成する中空のブロー本体部18と、ブロー成形とは別の工程で予め成形され、脚部12を構成するカップ状のインサート脚部16とを備え、ブロー本体部18は、インサート脚部16の開口側を羽根部11側に向けてインサート脚部16を型内に設置してからブロー成形されることにより、インサート脚部16の内面に溶着されるように構成されると共に、インサート脚部16は、その周壁部16aが底面から離れるに従って外側に拡がるように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポイラ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のトランクリッド上には、高速走行時の安定性を向上させるため、スポイラを設置する構造が知られている。従来、スポイラは、重量軽減や意匠上の理由からブロー成形により製作される場合がある。ここで、ブロー成形とは、パリソン(ブロー材)と呼ばれる加熱されて軟化した円筒形状の樹脂を、成形したい形状に形を取った金型内に収めた上で、このパリソン内に圧縮空気を吹き込んで金型形状に膨張させて中空の樹脂製品を形成する成形方法である。
【0003】
しかし、スポイラ全体をブロー成形により製作するとスポイラの本体部分である羽根の部分を支える脚部に当たる部分の肉厚が薄くなってしまい、十分な強度を確保できなくなってしまう。このため、あらかじめブロー本体部とは別に脚部のみをインサート用のインサート脚部として製作しておき、ブロー成形時には、スポイラの金型内に上部が開口部となっているインサート脚部を設置し、このインサート脚部の上部の開口部に蓋をした上で、ブロー本体部をブロー成形することで、ブロー本体部と蓋とが溶着されて、インサート脚部とブロー本体部とが結合される。さらに、インサート脚部の上縁部を鉤状の鉤部とすることで、この鉤部をブロー本体部の樹脂が回り込んだ状態で硬化させられて、インサート脚部とブロー本体部とが結合される。このようなスポイラ構造の一例が下記特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】実公平6−34222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した上記特許文献1に開示される従来のスポイラ構造では、ブロー本体部とインサート脚部との溶着範囲はブロー本体部と蓋の接触面のみであり、ブロー成形時の温度もそれほど高温でないことから完全に溶着しているわけではないため、トランクリッドを閉めたときなどの衝撃で溶着部が剥離する虞がある。また、インサート脚部の上縁部の鉤部にブロー本体部の樹脂が回り込んだ状態で硬化している(上記特許文献1の図3,4参照)ため、ブロー本体部とインサート脚部との接続部の鉤部の下部に薄肉の脆弱部ができ、この脆弱部が衝撃により破損する虞がある。
【0006】
以上のことから、本発明は、ブロー成形により形成されるブロー本体部とインサート脚部とを強固に結合させることが可能なスポイラ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための第1の発明(請求項1に対応)に係るスポイラ構造は、
脚部と羽根部とを有するスポイラにおいて、
ブロー成形され前記羽根部を構成する中空のブロー本体部と、
前記ブロー成形とは別の工程で予め成形され、前記脚部を構成するカップ状のインサート脚部と
を備え、
前記ブロー本体部は、前記インサート脚部の開口側を前記羽根部側に向けて前記インサート脚部を型内に設置してから前記ブロー成形されることにより、前記インサート脚部の内面に溶着されるように構成されると共に、
前記インサート脚部は、その周壁部が底面から離れるに従って外側に拡がるように形成されている
ことを特徴とする。
【0008】
上記の課題を解決するための第2の発明(請求項2に対応)に係るスポイラ構造は、第1の発明に係るスポイラ構造において、
前記周壁部の上縁部では、前記ブロー本体部の下面と、前記周壁部の外面が連続する面を形成することを特徴とする
【0009】
上記の課題を解決するための第3の発明(請求項3に対応)に係るスポイラ構造は、第1の発明又は第2の発明に係るスポイラ構造において、
前記周壁部の上縁部には、略水平方向に延設される水平部を有することを特徴とする。
【0010】
上記の課題を解決するための第4の発明(請求項4に対応)に係るスポイラ構造は、第3の発明のいずれかに係るスポイラ構造において、
前記水平部の外端縁部は下部よりも上部の方が突出した逆テーパ状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記の課題を解決するための第5の発明(請求項5に対応)に係るスポイラ構造は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかに係るスポイラ構造において、
前記インサート脚部の底面に開孔部を形成し、該開孔部の周縁部は下部よりも上部の方が突出した逆テーパ状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、脚部と羽根部とを有するスポイラにおいて、ブロー成形され羽根部を構成する中空のブロー本体部と、ブロー成形とは別の工程で予め成形され、脚部を構成するカップ状のインサート脚部とを備え、ブロー本体部は、インサート脚部の開口側を羽根部側に向けてインサート脚部を型内に設置してからブロー成形されることにより、インサート脚部の内面に溶着されるように構成されると共に、インサート脚部は、その周壁部が底面から離れるに従って外側に拡がるように形成されているため、インサート脚部とブロー本体部との溶着面積を大きく確保して、インサート脚部とブロー本体部との結合力を高め、トランクリッドを閉めたときなどの衝撃で溶着部が剥離することを防ぐ。さらに、インサート脚部の周壁部が傾斜面となっているため、ブロー本体部の板厚の急激な減少を防ぎ、インサート脚部内部のブロー本体部の強度の低下を防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本願発明に係るスポイラ構造の一実施形態について、図1から図4を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態に係るスポイラ構造の図2にA−Aで示す断面での断面図、図2は本発明の一実施形態に係るスポイラ構造におけるスポイラ全体の斜視図、図3は本発明の一実施形態に係るスポイラ構造における脚部を下方から見た平面図、図4は本発明の一実施形態に係るスポイラ構造における図2にB−Bで示す断面でのブロー成形の様子を示した断面図である。なお、各図中において、Frは車両前方、Inは車幅方向内側、Upは車両上方を示す。
【0014】
以下、本願発明の一実施形態に係るスポイラ構造について説明する。図2に示すように、自動車の高速走行時の安定性を向上させるスポイラ10は、自動車の後部のトランクリッド上に設置される。スポイラ10は、走行時に風圧を受けてダウンフォースを生じる車幅方向に延在する羽根部11と、この羽根部11を支持してトランクリッド上に固定する脚部12とにより形成される。
【0015】
図4に示すように、本実施形態に係るスポイラ10の羽根部11は、ブロー成形によりブロー材17(円筒状樹脂)を上下の金型13,14の形状に膨らませることにより形成される。スポイラ10の脚部12は、ブロー成形によりブロー材17で形成されるスポイラ10の羽根部11と同時に連続的に形成されるブロー材脚部15と、羽根部11とは別に製作しておいた上部が開口面となっているカップ状のインサート脚部16とにより形成されている。
【0016】
このインサート脚部16は、樹脂材料を型成形するなどしてあらかじめ製作しておく。なお、本実施形態において、ブロー材17により形成される羽根部11及びブロー材脚部15がブロー本体部18(図4中に一点鎖線で示す)である。また、ブロー成形の具体的な方法については従来と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0017】
図1に示すように、ブロー材脚部15は、ブロー本体部18をブロー成形する際に、インサート脚部16の内面の全面にブロー材17(図4参照)が密着してブロー成形時の保有熱により溶着されている。インサート脚部16の周壁部16aは、上方に向けて開いて傾斜している。
【0018】
このように、周壁部16aが傾斜したインサート脚部16の内面の全面にブロー材17を溶着させることで、インサート脚部16とブロー材脚部15との溶着面積を大きく確保することができる。さらに、インサート脚部16の周壁部16aが傾斜面となっているため、ブロー材脚部15の板厚の急激な減少を防ぐことができる。
【0019】
インサート脚部16の車幅方向内側の上縁部16b及びインサート脚部16の車幅方向外側の上縁部16cは、ブロー本体部18の羽根部11の下面と、周壁部16aの外面が連続する面を形成する。このため、インサート脚部16とブロー本体部18との接続部18aに薄肉の脆弱部ができることを防ぐことができる。
【0020】
また、インサート脚部16の車幅方向内側の上縁部16bの端面は、端面下部20aよりも端面上部20bの方が車幅方向内側に突出する逆テーパ状(車幅方向内側逆テーパ19a)に形成されている。インサート脚部16の車幅方向外側の上縁部16cは、端面下部20aよりも端面上部20bの方が車幅方向外側に突出する逆テーパ状(車幅方向外側逆テーパ19b)に形成されている。車幅方向内側逆テーパ19a及び車幅方向外側逆テーパ19bには、ブロー本体部18のブロー材17(図4参照)が隙間なく回り込んでいる。
【0021】
インサート脚部16を下方から見た場合、図3に示すように、インサート脚部16の上縁部の周縁全体は、周縁下部20aよりも周縁上部20bの方が突出した逆テーパ状(インサート脚部上縁部逆テーパ19)に形成されている。すなわち、車幅方向内側逆テーパ19a及び車幅方向外側逆テーパ19bは共に、インサート脚部上縁部逆テーパ19の一部である。
【0022】
図1に示すように、インサート脚部16の車幅方向内側の上縁部16b及びインサート脚部の車幅方向外側の上縁部16cは、羽根部11の下面まで延びている。すなわち、周壁部16aの上縁部16b、16cには、略水平方向に延設される水平部を有している。このように、インサート脚部16の車幅方向内側の上縁部16b及びインサート脚部16の車幅方向外側の上縁部16cが、羽根部11の下面に延在しているため、インサート脚部16とブロー本体部18との溶着面を羽根部11の下面まで拡大することができる。
【0023】
図1に示すように、インサート脚部16の下面には、開孔部21が形成されている。開孔部21の周縁は、周縁下部22aよりも周縁上部22bの方が内側に突出する逆テーパ状(開口部逆テーパ23)に形成されている。開口部逆テーパ23には、ブロー本体部18のブロー材17(図4参照)が隙間なく回り込んでいる。この部分を下方から見た場合、図3に示すように、開孔部21は円形になっており、開孔部21の周縁全体には周縁下部22aよりも周縁上部22bの方が内側に突出した開孔部逆テーパ23が形成されている。
【0024】
図1に示すように、インサート脚部16の下面には、スポイラ10をトランクリッドの所定の位置に取り付けるための位置決めピン24が設置されている。図3に示すように、インサート脚部16の下面には、位置決めピン24を設置する位置決めピン設置孔25が形成されている。
【0025】
また、インサート脚部16の下面には、トランクリッドにスポイラ10を固定するためのボルトを設置するボルト設置孔26が形成されている。また、インサート脚部16の下面には、ブロー成形時にインサート脚部16内に残った空気を排出する空気排出孔27が形成されている。
【0026】
以上のように、本実施形態に係るスポイラ構造によれば、脚部12と羽根部11とを有するスポイラ10において、ブロー成形され羽根部11を構成する中空のブロー本体部18と、ブロー成形とは別の工程で予め成形され、脚部12を構成するカップ状のインサート脚部16とを備え、ブロー本体部18は、インサート脚部16の開口側を羽根部11側に向けてインサート脚部16を型内に設置してからブロー成形されることにより、インサート脚部16の内面に溶着されるように構成されると共に、インサート脚部16は、その周壁部16aが底面から離れるに従って外側に拡がるように形成されているため、インサート脚部とブロー本体部18との溶着面積を大きく確保して、インサート脚部16とブロー本体部18との結合力を高め、トランクリッドを閉めたときなどの衝撃で溶着部が剥離することを防ぐ。さらに、インサート脚部16の周壁部16aが傾斜面となっているため、ブロー本体部18の板厚の急激な減少を防ぎ、インサート脚部16内部のブロー本体部18の強度の低下を防止する。
【0027】
また、インサート脚部16とブロー本体部18との接続部分のブロー本体部18aの肉厚を確保することができため、従来のインサート脚部の上縁部に鉤部を設ける構造(上記特許文献1の図3,4参照)に比べ、インサート脚部16とブロー本体部18との接続部のブロー本体部18aの肉厚を確保することができるため、インサート脚部16とブロー本体部18との結合部の強度が向上する。
【0028】
また、車幅方向内側逆テーパ19a及び車幅方向外側逆テーパ19bには、ブロー本体部18のブロー材17(図4参照)が隙間なく回り込んでいるため、インサート脚部16とブロー本体部18との結合強度が向上する。
【0029】
また、開口部逆テーパ23には、ブロー本体部18のブロー材17(図4参照)が隙間なく回り込んでいるため、インサート脚部16とブロー本体部18との結合強度が向上する。
【0030】
また、インサート脚部16の車幅方向内側の上縁部16b及びインサート脚部16の車幅方向外側の上縁部16cが、羽根部11の下面に延在している、すなわち、周壁部16aの上縁部16b、16cには、略水平方向に延設される水平部を有しているため、インサート脚部16とブロー本体部18との溶着面を羽根部11の下面まで拡大することができ、インサート脚部16とブロー本体部18との結合強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係るスポイラ構造の図2にA−Aで示す断面での断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るスポイラ構造におけるスポイラ全体の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るスポイラ構造における脚部を下方から見た平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るスポイラ構造における図2にB−Bで示す断面でのブロー成形の様子を示した断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 スポイラ
11 羽根部
12 脚部
16 インサート脚部
16a インサート脚部周壁部
18 ブロー本体部
19 インサート脚部上縁部逆テーパ
21 開孔部
23 開口部逆テーパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部と羽根部とを有するスポイラにおいて、
ブロー成形され前記羽根部を構成する中空のブロー本体部と、
前記ブロー成形とは別の工程で予め成形され、前記脚部を構成するカップ状のインサート脚部と
を備え、
前記ブロー本体部は、前記インサート脚部の開口側を前記羽根部側に向けて前記インサート脚部を型内に設置してから前記ブロー成形されることにより、前記インサート脚部の内面に溶着されるように構成されると共に、
前記インサート脚部は、その周壁部が底面から離れるに従って外側に拡がるように形成されている
ことを特徴とするスポイラ構造。
【請求項2】
前記周壁部の上縁部では、
前記ブロー本体部の下面と、前記周壁部の外面が連続する面を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載のスポイラ構造。
【請求項3】
前記周壁部の上縁部には、
略水平方向に延設される水平部を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスポイラ構造。
【請求項4】
前記水平部の外端縁部は下部よりも上部の方が突出した逆テーパ状に形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載のスポイラ構造。
【請求項5】
前記インサート脚部の底面に開孔部を形成し、該開孔部の周縁部は下部よりも上部の方が突出した逆テーパ状に形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のスポイラ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−155679(P2008−155679A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343882(P2006−343882)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(390040958)みのる化成株式会社 (36)
【Fターム(参考)】