説明

スポット溶接用塗料

【課題】スポット溶接の連発にも燃えにくく、且つ作業性が良好なスポット溶接用塗料を得る。
【解決手段】エマルジョンを主成分とし、水を35〜45重量%、増粘剤を3〜8重量%含有したスポット溶接用塗料としているので、水分の含有によりスポット溶接を行うに際しての通電性を確保することができ、鉄粉を内在していないので、長期保存においても錆びが発生することがなく、エマルジョンを主成分とし増粘剤を含有しているのでチューブ式容器又はカートリッジ管に充填可能とすることで、取り扱いを向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車修理に際して行われる金属板同士のスポット溶接に使用される塗料に関し、特に、金属板同士の間に塗布されて介在するスポット溶接用塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
スポット溶接に使用されるシーラー塗料は、例えばアクリルレジンにカーボン及び鉄粉を含有させて瓶などの容器内に充填したものが使用されている。鉄粉はスポット溶接を行うに際しての通電性を確保するために用いられるものである。
このようなシーラー塗料は、鉄板同士の溶接を行うに際して、図1に示すように、アース電極(図示せず)が接続されている一方の鉄板1上に刷毛等で塗料2を塗布し硬化させた後、この鉄板1上に他方の鉄板3を載置して、他方の鉄板3の反塗布面側から所定の間隔で可動側電極ガン(図示せず)によりスポット溶接4を行うことにより両方の鉄板1,3を溶接固定するものである(スポット溶接を行う具体的な装置は、例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2001−340970
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上述のシーラー塗料は、鉄粉が含有されているので、鉄粉を均一に分散させるためには、鉄板に塗布する前に容器内で十分に攪拌する必要があり、使用に際して煩雑であった。
また、長時間放置すると、内部の鉄粉にさびが生じたり、鉄粉が沈殿して塗料が固くなるという問題点があった。
【0004】
更に、はけで塗布するような粘性(液体に近い)を有しているため、硬化するに際して厚みが形成できないため、塗布するに際して鉄板側の凹凸面に追従しにくく、凹凸を有する鉄板間において確実に密着させて介在させることが困難であるという問題点があった。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、スポット溶接の連発にも燃えにくく、且つ作業性が良好なスポット溶接用塗料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため請求項1に記載のスポット溶接用塗料は、エマルジョンを主成分とし、水を35〜45重量%、増粘剤を3〜8重量%含有したことを特徴としている。
【0007】
請求項2は、請求項1のスポット溶接用塗料において、増粘剤はセラミック粉であることを特徴としている。
【0008】
請求項3は、請求項1又は請求項2のスポット溶接用塗料において、チューブ状容器又はカートリッジ管に充填して成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスポット溶接用塗料によれば、水分を含有させているので、スポット溶接を行うに際しての通電性を確保することができる。また、鉄粉を内在していないので、長期保存においても錆びが発生することがない。
【0010】
また、エマルジョンを主成分とし増粘剤を含有しているのでチューブ式の容器若しくは内部に設置されたピストンの移動により充填物を噴出させるカートリッジ管に充填可能となり、取り扱いが容易となるとともに、粘性を有しているので凹凸に追従可能な塗料とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のスポット溶接用塗料の実施の形態の一例について説明する。
スポット溶接用塗料はチューブ状容器又はカートリッジ管に充填され、エマルジョンレジンを主成分とし、水、増粘剤を含有して構成されている。チューブ状容器は、外筒が変形可能な部材で構成され、外筒を変形させることで内部に充填された塗料を押し出す容器である。またカートリッジ管は、筒体内部に設置されたピストンを例えば外部の引き金部により動作させ、このピストンの移動により充填物を筒体先端から押し出させる容器である。
【0012】
エマルジョンは、ウレタンやアクリルのエマルジョンを使用し、35〜45重量%含有されている。エマルジョン自体は液体であるので、増粘剤を3〜8重量%含有させて混ぜ合わせることで粘度を調整してペースト状とし、チューブ状容器やカートリッジ管に充填可能としている。ここでいうペースト状とは、塗料を鉄板に塗布した場合に塗料が流れることがなく、また塗布面を押圧した場合に変形可能な硬さを有する状態という。
増粘剤としては、難燃性のセラミック粉が適している。
【0013】
水は、スポット溶接を行うに際しての通電性を確保するもので、35〜40重量%含有している。
着色のためにカーボン粉が含有されている。このカーボン粉も難燃性なので、スポット溶接用塗料に含有するのに適したものである。
また、鉄板面に塗布した場合の錆び止めとして、8〜15重量%の防錆油を含有してもよい。
【0014】
次に、スポット溶接用塗料の使用例について説明する。
先ず、溶接を行いたい一方の鉄板1上にチューブ状容器(カートリッジ管)からスポット溶接用塗料2を押し出しながら鉄板面に塗布を行う。
次に、この鉄板1上に他方の鉄板3を載置して、押さえつけることで粘度を有する塗料2が鉄板面の凹凸に沿って変形して密着させ、鉄板1,3同士の間にスポット溶接用塗料2を介在させて密着させる。
【0015】
続いて、鉄板3の反塗布面側から所定の間隔でスポット溶接4を行うことにより両方の鉄板1,3を溶接固定する。
難燃性材料が含有されているので、スポット溶接を行うに際して溶接間隔が短い場合及びスポット溶接の連発に対しても塗料部分が燃焼することを防止できる。
【実施例】
【0016】
スポット溶接用塗料の具体例について説明する。
スポット溶接用塗料(シーラー)として、下表の材料及び配合で作成したものを使用した。
このスポット溶接用塗料を介在させて鉄板同士の溶接を行ったところ、スポット溶接間隔が2mm程度に狭まっても、また、5回/分の連発に対しても塗料に燃焼が発生することがなかった。
【0017】
(表1)
ウレタンエマルジョン 43部
水 38部
カーボン粉末(難燃剤) 4部
セラミック粉末(増粘剤) 6部
防錆油 9部
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】鉄板同士のスポット溶接を行う場合のスポット溶接箇所の斜視説明図である。
【符合の説明】
【0019】
1 鉄板
2 スポット塗料
3 鉄板
4 スポット溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルジョンを主成分とし、水を35〜45重量%、増粘剤を3〜8重量%含有したことを特徴とするスポット溶接用塗料。
【請求項2】
増粘剤はセラミック粉である請求項1に記載のスポット溶接用塗料。
【請求項3】
チューブ状容器又はカートリッジ管に充填して成る請求項1又は請求項2に記載のスポット溶接用塗料。

【図1】
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【公開番号】特開2006−77101(P2006−77101A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261689(P2004−261689)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(394012980)メグロ化学工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】