説明

スポット溶接装置

【課題】板材を重ね合わせた板組の被溶接体をスポット溶接するにあたり安定した溶接品質が得られるスポット溶接装置を提供する。
【解決手段】固定側電極19と、この固定側電極19と協働して被溶接部材100を挟持して加圧する可動側電極29と、固定側電極19に隣接して被溶接部材100に当接して副加圧力を付与する副加圧部39と、可動側電極29と副加圧部材39を連動するラックアンドピニオン機構の可動伝達手段34とを備え、固定側電極19及び副加圧部39と固定側電極19に対向して被溶接部材100に当接する可動側電極19とによって被溶接部材100を挟持加圧し、固定側電極19と可動側電極29との間で通電してスポット溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材を重ね合わせた板組みの被溶接部材をスポット溶接するスポット溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、重ね合わされた鋼板等の板材の接合には、一対の溶接電極間で挟み加圧力を与えながら両電極間に一定時間通電するスポット溶接が広く行われる。
【0003】
ここで、例えば、図9(a)に示すように、剛性の低い薄板101、この薄板101より剛性が高い第1厚板102、第2厚板103の3枚の板材を重ね合わせた板組の被溶接部材100をスポット溶接する場合には、可動側電極111と固定側電極112によって被溶接部材100を挟んで加圧したときに、剛性の低い薄板101と第1厚板102が上方に撓んで、薄板101と第1厚板102の間及び第1厚板102と第2厚板103との間に隙間が生じる。この場合、可動側電極111と薄板101間の接触面積は薄板101の撓みにより大きくなるのに対して、薄板101と第1厚板102間及び第1厚板102と第2厚板103間の接合部の接触面積は隙間により小さくなる。このため、可動側電極111と固定側電極112間の電流密度が薄板101側に対して第2厚板103側が高くなり、薄板101と第1厚板102間よりも第1厚板102と第2厚板103間の方が局部的な発熱量が多くなる。
【0004】
その結果、図9(a)に示すように、先ず第1厚板102と第2厚板103との接合部にナゲット105が形成され、次第にナゲット105が大きくなりやがて図9(b)に示すように薄板101と第1厚板102間が溶着される。しかし、この薄板101と第1厚板102との間の溶け込み量が小さく溶接強度が不安定で、かつ溶接品質にバラツキがある。この不具合は、特に第1厚板102及び第2厚板103が厚いほど第1厚板102と薄板101との間にナゲット105が到達しにくく顕著である。
【0005】
この対策として、例えば特許文献1に開示のスポット溶接方法は、図10に示すように、薄板101、第1厚板102、第2厚板103の3枚重ねの被溶接部材100をスポット溶接するときに、薄板101側の可動側電極125の加圧力FUを、第2厚板103側の固定側電極124の加圧力FLより小さくすることで、薄板101と第1厚板102との接合部の接触抵抗が大きくなる一方、第1厚板102と第2厚板103との接合部の接触抵抗が小さくなり、可動側電極125と固定側電極124間に通電したときに、薄板101と第1厚板102との接合部の発熱量が増加して薄板101と第1厚板102の溶接強度が高められる。
【0006】
この方法の実施に用いられるスポット溶接装置は、図11に示すように、溶接ロボット115の手首部116にスポット溶接装置120を搭載する。溶接ロボット115は、クランパ118によって保持された被溶接部材100の各打点位置にスポット溶接装置120を移動し、被溶接部材100のスポット溶接を行う。
【0007】
スポット溶接装置120は、手首部116に取り付けた支持ブラケット117に固定されたリニアガイド121によって上下動自在に支持されたベース部122を備え、このベース部122には下方に延びる固定アーム123を設け、固定アーム123の先端に固定側電極124を設ける。
【0008】
また、ベース部122の上端には、加圧アクチュエータ126が搭載され、加圧アクチュエータ126により上下動するロッド127の下端に固定側電極124と対して可動側電極125を取り付ける。支持ブラケット117の上端にサーボモータ128を搭載し、サーボモータ128の作動によりボールねじ機構を介してベース部122が上下動する。
【0009】
ここで、図示しないコントローラに予め記憶されているティーチングデータに従って、薄板101側に位置する可動側電極125による加圧力FUを固定側電極124による加圧力FLよりも小さくする(FU<FL)。
【0010】
このように可動側電極125による加圧力FUを固定側電極124による加圧力FLより小さくするために、コントローラは、先ず、サーボモータ128によりベース部122を上昇させて固定側電極124を被溶接部材100の下面に当接させると共に、加圧アクチュエータ126により可動側電極125を下降させて被溶接部材100の上面に当接させる。
【0011】
次に、サーボモータ128によりベース部122を押し上げる。このベース部122の押し上げにより、固定側電極124の加圧力FLがベース部122の押し上げ分だけ増加し、可動側電極125による加圧力FUが固定側電極124による加圧力FLより小さくなる(FU<FL)。
【0012】
その結果、可動側電極125と固定側電極124との間に通電したときに、薄板101と第1厚板102の接合部における電流密度が高くなり発熱量が第1厚板102と第2厚板103の接合部における発熱量に対して相対的に増加する。これにより、薄板101から第2厚板103に亘って偏りのない良好なナゲットが形成されて溶接強度が確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−251469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記特許文献1によると、クランパ118によって保持された被溶接部材100の第2厚板103に固定側電極124を当接させると共に可動側電極125を薄板101に当接させ、更にベース部122を押し上げて固定側電極124側の加圧力FLより可動側電極125側の加圧力FUを小さくすることで、相対的に薄板101と第1厚板102間の電流密度が高くなり、薄板101と第1厚板102との接合部における発熱量が確保でき、溶け込み量が増大して溶接強度が増加する。
【0015】
しかし、クランパ118により保持された被溶接部材100を固定側電極124と可動側電極125によって挟持加圧した状態でベース部122を移動して固定側電極124の加圧力FLより可動側電極125による加圧力FUを小さくするには、被溶接部材100を保持するクランパ118に大きな負荷が要求される。一方、クランパ118による被溶接部材100の保持位置と溶接位置が大きく離間した状態では、被溶接部材100が撓み変形して固定側電極124による加圧力FLと可動側電極125による加圧力FUにバラツキが生じて安定した薄板101と第1厚板102との間の接触抵抗及び第1厚板102と第2厚板103との間の接触抵抗の確保が困難であり、接合部における電流密度にバラツキが生じてスポット溶接の品質低下が懸念される。
【0016】
従って、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、板材を重ね合わせた板組みの被溶接部材をスポット溶接するにあたり、優れた溶接品質が得られるスポット溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成する請求項1に記載の発明によるスポット溶接装置は、加圧位置と退避位置とに移動する第1溶接電極と、該加圧位置における該第1溶接電極と対向配置されて第1溶接電極と協働して被溶接部材を挟持して加圧する第2溶接電極と、前記第2溶接電極に隣接して被溶接部材に当接して被溶接部材に副加圧力を付与する副加圧位置と退避位置に移動する副加圧部と、前記第1溶接電極の退避位置から加圧位置及び加圧位置から退避位置への移動に連動して前記副加圧部材を退避位置から副加圧位置及び副加圧位置から退避位置へ移動せしめる可動伝達手段とを備え、前記被溶接部材に当接する加圧位置における第1溶接電極及び副加圧位置における副加圧部と前記第1溶接電極に対向して前記被溶接部材に当接する第2溶接電極とによって前記被溶接部材を挟持加圧し、該挟持加圧状態で前記第1溶接電極と第2溶接電極との間で通電してスポット溶接することを特徴とする。
【0018】
これによれば、第2溶接電極による加圧力及び副加圧部からの副加圧力が被溶接部材に付与され、第2溶接電極に対向して第1溶接電極による加圧力が付与されて第2溶接電極による加圧力が第1溶接電極による加圧力より小さくなる。これにより、剛性の異なる板材、例えば剛性が低い薄板と剛性が高い第1厚板及び第2厚板を重ねた被溶接部材を挟持加圧して第1溶接電極と第2溶接電極との間に通電したとき、相対的に薄板と第1厚板の接合部の電流密度が高くなり、被溶接部材に対する優れた溶接品質が得られる。
【0019】
一方、第1溶接電極の退避位置から加圧位置及び加圧位置から退避位置への移動に連動して副加圧部材を退避位置から副加圧位置及び副加圧位置から退避位置へ移動せしめる可動伝達手段を備えることで、第1溶接電極及び副加圧部材の確実な連動が確保できると共に、副加圧部材を作動せしめるアクチュエータの省略が得られ、スポット溶接装置の小型軽量化が得られる。
【0020】
請求項2に記載の発明は、加圧位置と退避位置とに移動する第1溶接電極と、該加圧位置における該第1溶接電極と対向配置されて第1溶接電極と協働して被溶接部材を挟持して加圧する加圧位置と退避位置とに移動する第2溶接電極と、前記第2溶接電極に隣接して被溶接部材に当接して被溶接部材に副加圧力を付与する副加圧部と、前記第1溶接電極の退避位置から加圧位置及び加圧位置から退避位置への移動に連動して第2溶接電極を退避位置から加圧位置及び加圧位置から退避位置へ移動せしめる可動伝達手段とを備え、前記被溶接部材に当接する加圧位置における第1溶接電極及び副加圧部と加圧位置における前記第2溶接電極とによって前記被溶接部材を挟持加圧し、該挟持加圧状態で前記第1溶接電極と第2溶接電極との間で通電してスポット溶接することを特徴とする。
【0021】
これによれば、第2溶接電極による加圧力及び副加圧部からの副加圧力が被溶接部材に付与され、第2溶接電極に対向して第1溶接電極による加圧力が付与されて第2溶接電極による加圧力が第1溶接電極による加圧力より小さくなる。これにより、剛性の異なる板材を重ねた被溶接部材を挟持加圧して第1溶接電極と第2溶接電極との間の通電により被溶接部材に対する優れた溶接品質が得られる。
【0022】
一方、第1溶接電極の退避位置から加圧位置及び加圧位置から退避位置への移動に連動して第1溶接電極を退避位置から加圧位置及び加圧位置から退避位置へ移動せしめる可動伝達手段を備えることで、第1溶接電極及び第2溶接電極の確実な連動が確保できると共に、第2溶接電極を作動せしめるアクチュエータの省略が得られ、スポット溶接装置の小型軽量化が得られる。
【0023】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のスポット溶接装置において、可動伝達手段は、ラックアンドピニオン機構であることを特徴とする。これによると、可動伝達手段を簡単な構成で確実な作動が得られるラックアンドピニオン機構によって構成できる。
【0024】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2のスポット溶接装置において、可動伝達手段は、リンク機構であることを特徴とする。これによると、可動伝達手段を簡単な構成で確実な作動が得られるリンク機構によって構成できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、第2溶接電極による加圧力及び副加圧部からの副加圧力が被溶接部材に付与され、第2溶接電極に対向して第1溶接電極による加圧力が付与されて第2溶接電極による加圧力が第1溶接電極による加圧力より小さくなる。これにより、剛性の異なる板材を重ねた被溶接部材を挟持加圧して第1溶接電極と第2溶接電極との間に通電したとき、被溶接部材に対する優れた溶接品質が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施の形態におけるスポット溶接装置の構成図である。
【図2】模式的に示すスポット溶接装置の作動概要説明図である。
【図3】第2実施の形態におけるスポット溶接装置の構成図である。
【図4】模式的に示すスポット溶接装置の作動概要説明図である。
【図5】第3実施の形態におけるスポット溶接装置の構成図である。
【図6】模式的に示すスポット溶接装置の作動概要説明図である。
【図7】第4実施の形態におけるスポット溶接装置の構成図である。
【図8】模式的に示すスポット溶接装置の作動概要説明図である。
【図9】従来のスポット溶接の概要を示す説明図である。
【図10】従来のスポット溶接の概要を示す説明図である。
【図11】従来のスポット溶接の概要を示す説明図である
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るスポット溶接装置の実施の形態を図を参照して説明する。
【0028】
(第1実施の形態)
本発明の第1実施の形態について、図1及び図2を参照して説明する。図1はスポット溶接装置の構成図、図2は模式的に示す作動概要説明図である。なお、このスポット溶接装置の説明にあたり、便宜上図1における上方及び下方をスポット溶接装置における上方及び下方とする。
【0029】
スポット溶接装置1の説明に先立って、被溶接部材100について説明する。被溶接部材100は、図2に示すように剛性の低い薄板101、薄板101より板厚が大きく剛性が高い第1厚板102及び第2厚板103が順に重ね合わされた3枚重ねの板組によって構成される。
【0030】
図1を参照してスポット溶接装置1の構成を説明する。スポット溶接装置1は、仮想線で示すように溶接ロボット80の手首部81にイコライザユニット2を介して取り付けた支持ブラケット3を有し、支持ブラケット3に固定アーム10、加圧アクチュエータ20、副加圧付与手段30及び溶接トランス8を設ける。
【0031】
支持ブラケット3にガイドレール4a及びスライダ4b等によって構成された上下方向に延在するリニアガイド4が配置される。このリニアガイド4のスライダ4bに固定アーム10の基端部10aが結合する。固定アーム10はスライダ4bに結合支持された基端部10aから下方に延在する固定アーム本体11及び固定アーム本体11の先端からL字状に折曲する電極保持部12を有し、電極保持部12の先端に固定側電極19を、その頂端19aを上方に向けて装着する。
【0032】
一方、支持ブラケット3に副加圧アクチュエータ13を設ける。副加圧アクチュエータ13は、サーボモータ14及びボールねじ機構等によって構成された直動部15を有し、サーボモータ14の作動によって直動部15のロッド16が昇降往復動する。このロッド16の先端が固定アーム10の基端部10aに連結する。
【0033】
この副加圧アクチュエータ13のサーボモータ14の作動によってリニアガイド4に基端部10aが固定支持された固定アーム10が下降移動端の退避位置と上昇移動端の加圧位置との間で移動する。この固定アーム10の移動に伴って固定アーム10に取り付けられた固定側電極19が退避位置と加圧位置にとの間で中心軸線Lに沿って移動する。
【0034】
加圧アクチュエータ20は、サーボモータ21及びボールねじ機構等によって構成された直動部22を有し、サーボモータ21の作動によって直動部22のロッド23が昇降往復動する。この直動部22のロッド23の下端に可動アーム24を設け、可動アーム24の先端に固定アーム10に設けた固定側電極19と同軸上、即ち中心軸線L上に固定電極l9と対向して可動側電極29を設ける。
【0035】
このサーボモータ21の作動によって可動側電極29は固定側電極19から上方に離反する退避位置と、加圧位置における固定側電極19と協働して被溶接部材100を挟持すると共に加圧力を付与する加圧位置との間で中心軸線Lに沿って昇降移動する。
【0036】
副加圧付与手段30は、固定アーム10の固定アーム本体11と可動アーム24との間において支持ブラケット3に配置されたガイドレール5a及びスライダ5b等によって構成されたリニアガイド5によって昇降自在に支持された副加圧アーム31を有する。副加圧アーム31は、リニアガイド5のスライダ5bに基端部31aが支持され、基端部31aから下方に延在する副加圧アーム本体32及び副加圧アーム本体32の先端から中心軸線L方向に折曲して延在する副加圧部支持部33を有し、この副加圧部支持部33の先端に副加圧部支持部33と一体或いは別途形成された副加圧部39を備える。副加圧部39は先端が断面円弧状で上面39a及び下面39bを有するブロック状で、先端中央に固定側電極19及び可動側電極29の貫通を許容するU字溝状の電極貫通凹部を形成する。
【0037】
可動アーム24と副加圧アーム31との間に可動アーム24の移動に連動して副加圧アーム31を作動させる可動伝達手段34を設ける。可動伝達手段34は、可動アーム24に設けられた駆動側ラック35と、この駆動側ラック35と対向して副加圧アーム本体32に設けられた従動側ラック36とを有し、支持ブラケット3に回転軸37を介して回転自在に支持されると共に駆動側ラック35及び従動側ラック36に歯合するピニオン38を有する確実な作動が確保できるラックアンドピニオン機構によって構成する。
【0038】
これにより、加圧アクチュエータ20のサーボモータ21の作動による可動側電極29の退避位置から加圧位置への下降移動に連動して、駆動側ラック35、ピニオン38、従動側ラック36等によって構成されたラックアンドピニオン機構の可動伝達手段34を介して副加圧アーム31及び副加圧部39が退避位置から副加圧位置に上昇移動する。同様に可動側電極29の加圧位置から退避位置への上昇移動に連動して副加圧アーム31及び副加圧部39が副加圧位置から退避位置に移動する。
【0039】
電源となる溶接トランス8の出力端子がバスバ及び固定アーム10等を介して固定側電極19に通電可能に接続し、他方の出力端子がバスバ及び可動アーム24等を介して可動側電極29に通電可能に接続する。
【0040】
また、図示しない溶接ロボットコントローラには、溶接ロボット80のティーチングデータが格納され、ティーチングデータには被溶接部材100の各溶接打点位置を順次スポット溶接するための作動プログラム及び各溶接打点、即ち溶接位置におけるスポット溶接装置1の位置及び姿勢が含まれる。図示しない溶接コントローラには溶接装置1の作動プログラム及び加圧アクチュエータ20、副加圧付与手段30、溶接トランス8の作動制御が含まれる。
【0041】
このように構成されたスポット溶接装置1は、図1に示すように固定電極19、可動側電極29及び副加圧部39を共に退避位置に保持した状態で、溶接ロボット80を作動して被溶接部材100の溶接位置となる打点位置に、例えば副加圧部39の上面39aを下方から当接して位置決めする。この位置決めされた状態では、副加圧部39の上面39aは被溶接部材100の薄板101に下方から当接する一方、固定側電極19の頂端19aが薄板101と隙間を有して対向し、かつ可動側電極29の頂端29aが第2厚板103と隙間を有して対向する。
【0042】
この位置決めされた状態で加圧アクチュエータ20のサーボモータ21の作動により可動アーム24等を介して可動側電極29、及び可動伝達手段34、副加圧アーム31等を介して副加圧部39をそれぞれ退避位置から加圧位置及び副加圧位置に移動して可動側電極29と副加圧部39とで挟持して加圧する。一方、副加圧アクチュエータ13のサーボモータ14の作動により固定アーム10に設けた固定側電極19を加圧位置に移動して被溶接部材100に当接すると共に加圧位置の可動側電極29とで被溶接部材100の溶接位置を挟持して加圧する。
【0043】
この固定側電極19と可動側電極29によって被溶接部材100を挟持加圧し、可動側電極29と副加圧部39で被溶接部材100を挟持加圧した状態では、図2に模式的に示すように可動側電極29による加圧力FUが第2厚板103に上方から付与され、固定側電極19による加圧力FLと副加圧部39による副加圧力Fαが下方から薄板101に付与される。
【0044】
この場合、加圧アクチュエータ20のよる加圧力が可動アーム24を介して可動側電極29及び可動伝達手段34、副加圧アーム31等を介して副加圧部39に作用し、かつ副加圧アクチュエータ13及び固定アーム10を介して固定側電極19に作用すると共に、副加圧アクチュエータ13による加圧力が固定側電極19に作用し、第2厚板103に上方から作用する可動電極29による加圧力FUと薄板101に下方から作用する固定側電極19による加圧力FL及び副加圧部39による副加圧力Fαの総和が等しくなる(FU=FL+Fα)。
【0045】
これにより固定側電極19から薄板101に作用する加圧力FLは、可動側電極29による加圧力FUから副加圧部39による副加圧力Fαを減じた加圧力が付与される(FL=FU−Fα)。このように薄板101側に作用する固定側電極19の加圧力FLを第2厚板103側に作用する可動側電極29の加圧力FUより小さく(FL<FU)することで、薄板101と第1厚板102の接合部における接触圧力が、第1厚板102と第2厚板103間の接触圧力より小さくなる。
【0046】
この可動側電極29と固定側電極19及び副加圧部39とで被溶接部材100を挟持加圧して薄板101側に位置する固定側電極19の加圧力FLを第2厚板103側に位置する可動側電極29の加圧力FUより小さくした状態で、溶接トランス8から可動側電極29と固定側電極19との間に所定時間通電して溶接する。この可動側電極29と固定側電極19との間に通電した時に、相対的に薄板101と第1厚板102間の接合部における接触抵抗が大きく電流密度が高くなり、薄板101と第1厚板102の接合部における発熱量が第1厚板102と第2厚板103の接合部における発熱量に対して相対的に増加して、薄板101から第2厚板103に亘って電流密度の偏りのない良好な溶接が行われ、溶接強度及び溶接品質が確保できる。
【0047】
このように構成された本実施の形態によると、固定側電極19と可動側電極29によって加圧付与した被溶接部材100に副加圧部39から副加圧力Fαが付与され、固定側電極19と可動側電極29による加圧力FL、FUが制御されて剛性の異なる板材を重ねた被溶接部材100に対する溶接品質が向上する。
【0048】
また、可動側電極29の退避位置から加圧位置及び加圧位置から退避位置への移動に連動して副加圧部材39を退避位置から副加圧位置及び副加圧位置から退避位置へ移動せしめるラックアンドピニオン機構の可動伝達手段34を備えることで、可動側電極29及び副加圧部材39の確実な連動が確保できると共に、副加圧部材39を作動せしめるアクチュエータの省略が得られ、スポット溶接装置1の小型軽量化が得られる。更にスポット溶接装置1の軽量小型化に伴ってスポット溶接装置1の姿勢制御が容易になり、溶接ロボット80の作動制御が簡素化され、溶接ロボット80の負荷が軽減できる。
【0049】
(第2実施の形態)
本発明の第2実施の形態について、図3及び図4を参照して説明する。図3はスポット溶接装置の構成図、図4は模式的に示す作動概要説明図である。なお、図3及び図4において図1及び図2に対応する部位には同一符号を付することで該部の詳細な説明は省略する。
【0050】
スポット溶接装置1は、溶接ロボット80の手首部81にイコライザユニット2を介して取り付けた支持ブラケット3を有し、支持ブラケット3に固定アーム10、加圧アクチュエータ20及び、副加圧付与手段40及び溶接トランス8を設ける。これら加圧アクチュエータ20及び固定アーム10は第1実施の形態と同様に構成される。
【0051】
副加圧付与手段40は、固定アーム10の固定アーム本体11と可動アーム24との間において支持ブラケット3に配置されたガイドレール6a及びスライダ6b等によって構成されたリニアガイド6によって昇降自在に支持された副加圧アーム41を有する。副加圧アーム41は、リニアガイド6のスライダ6bに基端部41aが支持され、基端部41aから下方に延在する副加圧アーム本体42及び副加圧アーム本体42の先端から中心軸線L方向に折曲して先端に副加圧部材39を有する副加圧部支持部43を有する。
【0052】
固定アーム10と副加圧アーム41との間に固定アーム10の移動に連動して副加圧アーム41を作動させる可動伝達手段44を設ける。可動伝達手段44は、固定アーム10の固定アーム本体11に設けられた駆動側ラック45と、この駆動側ラック45と対向して副加圧アーム本体42に設けられた従動側ラック46とを有し、支持ブラケット3に回転軸47を介して回転自在に支持されると共に駆動側ラック45及び従動側ラック46に歯合するピニオン48を有するラックアンドピニオン機構によって構成される。
【0053】
これにより、副加圧アクチュエータ13のサーボモータ14の作動による固定側電極19の退避位置から加圧位置への上昇移動に連動して、駆動側ラック45、ピニオン48、従動側ラック45等によって構成された確実な作動が得られるラックアンドピニオン機構の可動伝達手段44を介して副加圧アーム41及び副加圧部39が退避位置から副加圧位置に下降移動する。同様に固定側電極19の加圧位置から退避位置への下降移動に連動して副加圧アーム41及び副加圧部39が副加圧位置から退避位置に上昇移動する。
【0054】
このようスポット溶接装置1では、図3に示すように固定側電極19、副加圧部39及び可動側電極29が退避位置に保持した状態で、被溶接部材100の溶接位置となる打点位置に、例えば副加圧部39の下面39bを上方から当接して位置決めする。
【0055】
この位置決めされた状態で、副加圧アクチュエータ13のサーボモータ14の作動により固定側電極109及び副加圧部39をそれぞれ退避位置から加圧位置及び副加圧位置に移動して固定側電極19と副加圧部39とで挟持すると共に加圧する。一方、加圧アクチュエータ20のサーボモータ21の作動により可動アーム24に設けた可動側電極29を加圧位置に移動して被溶接部材100に当接すると共に加圧位置の固定側電極19とで被溶接部材100の溶接位置を挟持すると共に加圧する。
【0056】
この場合、図4に示すように、第2厚板103に下方から作用する固定側電極19による加圧力FLと薄板101に上方から作用する可動側電極29による加圧力FU及び副加圧部39による副加圧力Fαの総和が等しくなる(FL=FU+Fα)。
【0057】
これにより可動側電極29から薄板101に作用する加圧力FUは、固定側電極19による加圧力FLから副加圧部39による副加圧力Fαを減じた加圧力が付与される(FU=FL−Fα)。このように薄板101側に作用する可動側電極29の加圧力FUを第2厚板103側に作用する固定側電極19の加圧力FLより小さくなる(FU<FL)。
【0058】
このように、固定側電極19と可動側電極29及び副加圧部39とで被溶接部材100を挟持加圧して薄板101側に位置する可動側電極29の加圧力FUを第2厚板103側に位置する固定側電極19の加圧力FLより小さくした状態で、溶接トランス8から可動側電極29と固定側電極19との間に所定時間通電して溶接する。この可動側電極29と固定側電極19との間に通電したときに、相対的に薄板101と第1厚板102間の接合部における電流密度が高くなり、薄板101から第2厚板103に亘って電流密度の偏りのない良好な溶接が行われ、溶接強度及び溶接品質が確保できる。
【0059】
このように構成された本実施の形態によると、固定側電極19と可動側電極29によって加圧付与した被溶接部材100に副加圧部39から副加圧力Fαが付与され、固定側電極19と可動側電極29による加圧力FL、FUが制御されて剛性の異なる板材を重ねた被溶接部材100に対する溶接品質が向上する。
【0060】
また、固定側電極19の退避位置から加圧位置及び加圧位置から退避位置への移動に連動して副加圧部材39を退避位置から副加圧位置及び副加圧位置から退避位置へ移動せしめるラックアンドピニオン機構の可動伝達手段44を備えることで、固定側電極19及び副加圧部材39の確実な連動が確保できると共に、副加圧部材39を作動せしめるアクチュエータの省略が得られ、スポット溶接装置1の小型軽量化が得られる。更にスポット溶接装置1の軽量小型化に伴ってスポット溶接装置1の姿勢制御が容易になり、溶接ロボット80の作動制御が簡素化され、溶接ロボット80の負荷が軽減できる。
【0061】
(第3実施の形態)
本発明の第3実施の形態について、図5及び図6を参照して説明する。図5はスポット溶接装置の構成図、図6は模式的に示す作動概要説明図である。なお、図5及び図6において図1及び図2に対応する部位には同一符号を付することで該部の詳細な説明は省略する。
【0062】
スポット溶接装置1は、仮想線で示すように溶接ロボット80の手首部81にイコライザユニット2を介して取り付けた支持ブラケット3を有し、支持ブラケット3に固定アーム10、加圧アクチュエータ20、副加圧付与手段50及び溶接トランス8を設ける。
【0063】
支持ブラケット3にリニアガイド7を設け、リニアガイド7によって固定アーム10の基端部10aを上下移動自在に支持する。固定アーム10は基端部10aから下方に延在する固定アーム本体11及び固定アーム本体11の先端からL字状に折曲する電極保持部12を有し、電極保持部12の先端に固定側電極19を装着する。
【0064】
可動アーム24と固定アーム10との間に副加圧付与手段50を設ける。副加圧付与手段50は、固定アーム10の固定アーム本体11と可動アーム24との間において支持ブラケット3に基端部51aが支持される副加圧アーム51を有する。副加圧アーム51は、基端部51aから下方に延在する副加圧アーム本体52及び副加圧アーム本体52の先端から中心軸線L方向に折曲する副加圧部支持部53を有し、副加圧部支持部53の先端に副加圧部39を備える。
【0065】
加圧アクチュエータ20に設けられる可動アーム24と固定アーム10の基端部10aとの間に可動アーム24の移動に連動して固定アーム10を作動させる可動伝達手段54を設ける。可動伝達手段54は、可動アーム24に設けられた駆動側ラック55と、この駆動側ラック55と対向して固定アーム10の基端部10aに設けられた従動側ラック56とを有し、支持ブラケット3に回転軸57を介して回転自在に支持されると共に駆動側ラック55及び従動側ラック56に歯合するピニオン58を有するラックアンドピニオン機構を構成する。
【0066】
これにより、加圧アクチュエータ20のサーボモータ21の作動による可動側電極29の退避位置から加圧位置への下降移動に連動して、駆動側ラック55、ピニオン58、従動側ラック56等によって構成されたラックアンドピニオン機構の可動伝達手段54を介して固定アーム10及び固定側電極19が退避位置から加圧位置に上昇移動する。同様に可動側電極29の加圧位置から退避位置への上昇移動に連動して固定アーム10及び固定側電極19が加圧位置から退避位置に移動する。
【0067】
このようスポット溶接装置1では、図5に示すように固定側電極19、副加圧部39及び可動側電極29が退避位置に保持した状態で、被溶接部材100の溶接位置となる打点位置に、例えば副加圧部39の上面39aを下方から当接して位置決めする。この位置決めされた状態で加圧アクチュエータ20のサーボモータ21の作動により可動アーム24を介して可動側電極29及び可動伝達手段54や固定アーム10固定側電極19をそれぞれ退避位置から加圧位置に移動して可動側電極29と固定側電極19とで挟持すると共に加圧する。
【0068】
この固定側電極15と可動側電極29によって被溶接部材100を挟持加圧に伴って、可動側電極29からの反力が加圧アクチュエータ20を支持する支持ブラケット3を介して副加圧付与アーム51に伝達され、副加圧部33が被加圧部材100に圧接して副加圧力Fαを付与する。
【0069】
この場合、図6に示すように加圧アクチュエータ20のよる加圧力が固定側電極19及び副加圧部33から薄板101に作用し、固定側電極19に対向して可動側電極29から第2厚板103に作用し、第2厚板103に上方から作用する可動電極25による加圧力FUと薄板101に下方から作用する固定側電極19による加圧力FL及び副加圧部39による副加圧力Fαの総和が等しくなる(FU=FL+Fα)。これにより薄板101側に作用する固定側電極19の加圧力FLが第2厚板103側に作用する可動側電極29の加圧力FUより小さくなる(FL<FU)。
【0070】
この固定側電極19と可動側電極29及び副加圧部39とで被溶接部材100を挟持加圧して薄板101側に位置する固定側電極19の加圧力FLを第2厚板103側に位置する可動側電極29の加圧力FUより小さくした状態で、溶接トランス8から可動側電極29と固定側電極19との間に所定時間通電して溶接する。この可動側電極29と固定側電極19との間に通電したときに、相対的に薄板101と第1厚板102間の接合部における電流密度が高くなり、薄板101から第2厚板103に亘って電流密度の偏りのない良好な溶接が行われ、溶接強度及び溶接品質が確保できる。
【0071】
このように構成された本実施の形態によると、固定側電極19と可動側電極29によって加圧付与した被溶接部材100に副加圧部39から副加圧力Fαが付与され、固定側電極19と可動側電極29による加圧力FL、FUが制御されて剛性の異なる板材を重ねた被溶接部材100に対する溶接品質が向上する。
【0072】
また、可動側電極29の移動に連動して固定側電極19を移動せしめるラックアンドピニオン機構の可動伝達手段54を備えることで、可動側電極29と固定側電極19の確実な連動が確保できると共に、固定側電極19を作動せしめるアクチュエータの省略が得られ、スポット溶接装置1の小型軽量化が得られる。スポット装置1の小型軽量化に伴って、スポット溶接装置1の姿勢制御が容易になり、溶接ロボット80の作動制御が簡素化され、溶接ロボット80の負荷が軽減できる。
【0073】
(第4実施の形態)
本発明の第4実施の形態について、図7及び図8を参照して説明する。図7はスポット溶接装置の構成図、図8は模式的に示す作動概要説明図である。なお、図7及び図8において図1及び図2に対応する部位には同一符号を付することで該部の詳細な説明は省略する。
【0074】
スポット溶接装置1は、溶接ロボット80の手首部81にイコライザユニット2を介して取り付けた支持ブラケット3を有し、支持ブラケット3に固定アーム10、加圧アクチュエータ20、副加圧付与手段60及び溶接トランス8を設ける。
【0075】
支持ブラケット3にリニアガイド7を介して固定アーム10の基端部10aを上下移動自在に支持する。固定アーム10は基端部10aから下方に延在する固定アーム本体11及び固定アーム本体11の先端からL字状に折曲する電極保持部12を有し、電極保持部12の先端に固定側電極19を装着する。
【0076】
可動アーム23と固定アーム10との間に副加圧付与手段60が設けられる。副加圧付与手段60は、固定アーム10の固定アーム本体11と可動アーム24との間において支持ブラケット3に基端部61aが支持される副加圧アーム61を有する。副加圧アーム61は、基端部61aから下方に延在する副加圧アーム本体62及び副加圧アーム本体62の先端から中心軸線L方向に折曲する副加圧部支持部63を有し、この副加圧部支持部63の先端に副加圧部39を備える。
【0077】
加圧アクチュエータ20に設けられる可動アーム24と固定アーム10の基端部10aとの間に可動アーム24の移動に連動して固定アーム10作動させる可動伝達手段64を設ける。可動伝達手段64は、支持ブラケット3に回転軸65を介して中央部が回転自在に支持されて可動アーム23側及び固定アーム本体11側に延在する駆動側アーム67及び従動側アーム68を有する連動アーム66を備え、駆動側アーム67及び従動側アーム68にはそれぞれ長孔の係合孔67a及び係合孔68aを形成する。一方、可動アーム24に係合孔67aに頂部が移動可能に係止する駆動軸71を配置し、固定アーム本体11に係合孔68aに頂部が移動可能に係止する従動軸72を有する。
【0078】
これにより、加圧アクチュエータ20のサーボモータ21の作動による可動側電極29の退避位置から加圧位置への下降移動に連動して、駆動軸71、連動アーム66、従動軸72等によって作動が確実なリンク機構の可動伝達手段64を介して固定アーム10及び固定側電極19が退避位置から加圧位置に上昇移動する。同様に可動側電極29の加圧位置から退避位置への上昇移動に連動して固定アーム10及び固定側電極19が加圧位置から退避位置に下降移動する。
【0079】
このようスポット溶接装置1では、図6に示すように固定側電極19、副加圧部39及び可動側電極29が退避位置に保持した状態で、被溶接部材100の溶接位置となる打点位置に、例えば副加圧部39の上面39aを下方から当接して位置決めする。
【0080】
この位置決めされた状態で、加圧アクチュエータ20のサーボモータ21の作動により可動アーム24を介して可動側電極29を退避位置から加圧位置に移動すると共に、可動伝達手段64及び固定アーム10を介して固定側電極19を退避位置から加圧位置に移動して可動側電極29と固定側電極19とで被溶接部材100を挟持すると共に加圧する。
【0081】
この固定側電極15と可動側電極29によって被溶接部材100を挟持加圧に伴って、可動側電極29への被溶接部材100側からの反力が加圧アクチュエータ20及び加圧アクチュエータ20を支持する支持ブラケット3を介して副加圧付与アーム61に伝達され、副加圧部33が被加圧部材100に圧接して副加圧力Fαを付与する。
【0082】
この場合、図8に示すように加圧アクチュエータ20のよる加圧力が固定側電極19及び副加圧部33から薄板101に作用し、固定側電極19に対向して可動側電極29から第2厚板103に作用し、第2厚板103に上方から作用する可動電極25による加圧力FUと薄板101に下方から作用する固定側電極19による加圧力FL及び副加圧部39による副加圧力Fαの総和が等しくなる(FU=FL+Fα)。
【0083】
これにより薄板101側に作用する固定側電極19の加圧力FLを第2厚板103側に作用する可動側電極29の加圧力FUより小さくなる(FL<FU)。この固定側電極19と可動側電極29及び副加圧部39とで被溶接部材100を挟持加圧して薄板101側に位置する固定側電極19の加圧力FLを第2厚板103側に位置する可動側電極29の加圧力FUより小さくした状態で、溶接トランス8から可動側電極29と固定側電極19との間に所定時間通電して溶接する。この可動側電極29と固定側電極19との間に通電した時に、相対的に薄板101と第1厚板102間の接合部における電流密度が高くなり、薄板101から第2厚板103に亘って電流密度の偏りのない良好な溶接が行われ、溶接強度及び溶接品質が確保できる。
【0084】
このように構成された本実施の形態によると、固定側電極19と可動側電極29によって加圧付与した被溶接部材100に副加圧部39から副加圧力Fαが付与され、固定側電極19と可動側電極29による加圧力FL、FUが制御されて剛性の異なる板材を重ねた被溶接部材100に対する溶接品質が向上する。
【0085】
また、可動側電極29の移動に連動して固定側電極19を移動せしめるリンク機構の可動伝達手段64を備えることで、可動側電極29と固定側電極19の確実な連動が確保できると共に、固定側電極19を作動せしめるアクチュエータの省略が得られ、スポット溶接装置1の小型軽量化が得られる。スポット装置1の小型軽量化に伴って、スポット溶接装置1の姿勢制御が容易になり、溶接ロボット80の作動制御が簡素化され、溶接ロボット80の負荷が軽減できる。
【0086】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、第1実施の形態及び第2実施の形態では可動伝達手段34、44をラックアンドピニオン機構によって構成したが、第4実施の形態の可動伝達手段64のようにリンク機構によって構成することもできる。
【符号の説明】
【0087】
1 スポット溶接装置
10 固定アーム
13 副加圧アクチュエータ
19 固定側電極(第1溶接電極、第2溶接電極)
20 加圧アクチュエータ
24 可動アーム
29 可動側電極(第1溶接電極、第2溶接電極)
30 副加圧付与手段
31 副加圧アーム
39 副加圧部
34 可動伝達手段
40 副加圧付与手段
41 副加圧アーム
44 可動伝達手段
50 副加圧付与手段
51 副加圧アーム
52 副加圧アーム本体
53 副加圧部支持部
54 可動伝達手段
60 副加圧付与手段
61 副加圧アーム
64 可動伝達手段
80 溶接ロボット
100 被溶接部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧位置と退避位置とに移動する第1溶接電極と、
該加圧位置における該第1溶接電極と対向配置されて第1溶接電極と協働して被溶接部材を挟持して加圧する第2溶接電極と、
前記第2溶接電極に隣接して被溶接部材に当接して被溶接部材に副加圧力を付与する副加圧位置と退避位置に移動する副加圧部と、
前記第1溶接電極の退避位置から加圧位置及び加圧位置から退避位置への移動に連動して前記副加圧部材を退避位置から副加圧位置及び副加圧位置から退避位置へ移動せしめる可動伝達手段とを備え、
前記被溶接部材に当接する加圧位置における第1溶接電極及び副加圧位置における副加圧部と前記第1溶接電極に対向して前記被溶接部材に当接する第2溶接電極とによって前記被溶接部材を挟持加圧し、該挟持加圧状態で前記第1溶接電極と第2溶接電極との間で通電してスポット溶接することを特徴とするスポット溶接装置。
【請求項2】
加圧位置と退避位置とに移動する第1溶接電極と、
該加圧位置における該第1溶接電極と対向配置されて第1溶接電極と協働して被溶接部材を挟持して加圧する加圧位置と退避位置とに移動する第2溶接電極と、
前記第2溶接電極に隣接して被溶接部材に当接して被溶接部材に副加圧力を付与する副加圧部と、
前記第1溶接電極の退避位置から加圧位置及び加圧位置から退避位置への移動に連動して第2溶接電極を退避位置から加圧位置及び加圧位置から退避位置へ移動せしめる可動伝達手段とを備え、
前記被溶接部材に当接する加圧位置における第1溶接電極及び副加圧部と加圧位置における前記第2溶接電極とによって前記被溶接部材を挟持加圧し、該挟持加圧状態で前記第1溶接電極と第2溶接電極との間で通電してスポット溶接することを特徴とするスポット溶接装置。
【請求項3】
前記可動伝達手段は、ラックアンドピニオン機構であることを特徴とする請求項1または2に記載のスポット溶接装置。
【請求項4】
前記可動伝達手段は、リンク機構であることを特徴とする請求項1または2に記載のスポット溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−71159(P2013−71159A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212282(P2011−212282)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】