説明

スポット溶接装置

【課題】板材を重ね合わせた板組の被溶接体をスポット溶接するにあたり安定した溶接品質が得られるスポット溶接装置を提供する。
【解決手段】固定側電極15と、固定側電極15と協働して被溶接部材100を挟持して加圧する可動側電極25と、副加圧付与35及び副加圧付与アーム32を備えたリンク機構を有し、副加圧アクチュエータ35によるリンク機構の作動により被溶接部材100に固定側電極15に隣接して当接して副加圧力を付与する副加圧位置及び被溶接部材から離反する退避位置に移動する副加圧部33を有する副加圧付与手段30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材を重ね合わせた板組みの被溶接部材をスポット溶接するスポット溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、重ね合わされた鋼板等の板材の接合には、一対の溶接電極間で挟み加圧力を与えながら両電極間に一定時間通電するスポット溶接が広く行われる。
【0003】
ここで、例えば、図13(a)に示すように、剛性の低い薄板101、この薄板101より剛性が高い第1厚板102、第2厚板103の3枚の板材を重ね合わせた板組の被溶接部材100をスポット溶接する場合には、可動側電極111と固定側電極112によって被溶接部材100を挟んで加圧したときに、剛性の低い薄板101と第1厚板102が上方に撓んで、薄板101と第1厚板102の間及び第1厚板102と第2厚板103との間に隙間が生じる。この場合、可動側電極111と薄板101間の接触面積は薄板101の撓みにより大きくなるのに対して、薄板101と第1厚板102間及び第1厚板102と第2厚板103間の接合部の接触面積は隙間により小さくなる。このため、可動側電極111と固定側電極112間の電流密度が薄板101側に対して第2厚板103側が高くなり、薄板101と第1厚板102間よりも第1厚板102と第2厚板103間の方が局部的な発熱量が多くなる。
【0004】
その結果、図13(a)に示すように、先ず第1厚板102と第2厚板103との接合部にナゲット105が形成され、次第にナゲット105が大きくなりやがて図13(b)に示すように薄板101と第1厚板102間が溶着される。しかし、この薄板101と第1厚板102との間の溶け込み量が小さく溶接強度が不安定で、かつ溶接品質にバラツキがある。この不具合は、特に第1厚板102及び第2厚板103が厚いほど第1厚板102と薄板101との間にナゲット105が到達しにくく顕著である。
【0005】
この対策として、例えば特許文献1に開示のスポット溶接方法は、図14に示すように、薄板101、第1厚板102、第2厚板103の3枚重ねの被溶接部材100をスポット溶接するときに、薄板101側の可動側電極125の加圧力FUを、第2厚板103側の固定側電極124の加圧力FLより小さくすることで、薄板101と第1厚板102との接合部の接触抵抗が大きくなる一方、第1厚板102と第2厚板103との接合部の接触抵抗が小さくなり、可動側電極125と固定側電極124間に通電したときに、薄板101と第1厚板102との接合部の発熱量が増加して薄板101と第1厚板102の溶接強度が高められる。
【0006】
この方法の実施に用いられるスポット溶接装置は、図15に示すように、溶接ロボット115の手首部116にスポット溶接装置120を搭載する。溶接ロボット115は、クランパ118によって保持された被溶接部材100の各打点位置にスポット溶接装置120を移動し、被溶接部材100のスポット溶接を行う。
【0007】
スポット溶接装置120は、手首部116に取り付けた支持ブラケット117に固定されたリニアガイド121によって上下動自在に支持されたベース部122を備え、このベース部122には下方に延びる固定アーム123を設け、固定アーム123の先端に固定側電極124を設ける。
【0008】
また、ベース部122の上端には、加圧アクチュエータ126が搭載され、加圧アクチュエータ126により上下動するロッド127の下端に固定側電極124と対して可動側電極125を取り付ける。支持ブラケット117の上端にサーボモータ128を搭載し、サーボモータ128の作動によりボールねじ機構を介してベース部122が上下動する。
【0009】
ここで、図示しないコントローラに予め記憶されているティーチングデータに従って、薄板101側に位置する可動側電極125による加圧力FUを固定側電極124による加圧力FLよりも小さくする(FU<FL)。
【0010】
このように可動側電極125による加圧力FUを固定側電極124による加圧力FLより小さくするために、コントローラは、先ず、サーボモータ128によりベース部122を上昇させて固定側電極124を被溶接部材100の下面に当接させると共に、加圧アクチュエータ126により可動側電極125を下降させて被溶接部材100の上面に当接させる。
【0011】
次に、サーボモータ128によりベース部122を押し上げる。このベース部122の押し上げにより、固定側電極124の加圧力FLがベース部122の押し上げ分だけ増加し、可動側電極125による加圧力FUが固定側電極124による加圧力FLより小さくなる(FU<FL)。
【0012】
その結果、可動側電極125と固定側電極124との間に通電したときに、薄板101と第1厚板102の接合部における電流密度が高くなり発熱量が第1厚板102と第2厚板103の接合部における発熱量に対して相対的に増加する。これにより、薄板101から第2厚板103に亘って偏りのない良好なナゲットが形成されて溶接強度が確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−251469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記特許文献1によると、クランパ118によって保持された被溶接部材100の第2厚板103に固定側電極124を当接させると共に可動側電極125を薄板101に当接させ、更にベース部122を押し上げて固定側電極124側の加圧力FLより可動側電極125側の加圧力FUを小さくすることで、相対的に薄板101と第1厚板102間の電流密度が高くなり、薄板101と第1厚板102との接合部における溶け込み量が増大して溶接強度が増加する。
【0015】
しかし、クランパ118により保持された被溶接部材100を固定側電極124と可動側電極125によって挟持加圧した状態でベース部122を移動して固定側電極124の加圧力FLより可動側電極125による加圧力FUを小さくするには、被溶接部材100を保持するクランパ118に大きな負荷が要求される。一方、クランパ118による被溶接部材100の保持位置と溶接位置が大きく離間した状態では、被溶接部材100が撓み変形して固定側電極124による加圧力FLと可動側電極125による加圧力FUにバラツキが生じて安定した薄板101と第1厚板102との間の接触抵抗及び第1厚板102と第2厚板103との間の接触抵抗の確保が困難であり、接合部における電流密度にバラツキが生じてスポット溶接の品質低下が懸念される。
【0016】
従って、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、板材を重ね合わせた板組みの被溶接部材をスポット溶接するにあたり、優れた溶接品質が得られるスポット溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成する請求項1に記載の発明によるスポット溶接装置は、第1溶接電極と、該第1溶接電極と対向配置されて第1溶接電極と協働して被溶接部材を挟持して加圧する第2溶接電極と、副加圧アクチュエータ及び該副加圧アクチュエータによって作動するリンク機構を有し、前記副加圧アクチュエータによるリンク機構の作動により前記被溶接部材に前記第1溶接電極に隣接して当接して該被溶接部材に副加圧力を付与する副加圧位置及び被溶接部材から離反する退避位置に移動する副加圧部を有する副加圧付与手段とを備え、前記被溶接部材に当接する第1溶接電極及び副加圧位置のおける副加圧部と前記第1溶接電極に対向して前記被溶接部材に当接する第2溶接電極とによって前記被溶接部材を挟持加圧し、該挟持加圧状態で前記第1溶接電極と第2溶接電極との間で通電してスポット溶接することを特徴とする。
【0018】
これによれば、第1溶接電極による加圧力及び副加圧部からの副加圧力が被溶接部材に付与され、第1溶接電極に対向して第2溶接電極による加圧力が付与されて第1溶接電極による加圧力が第2溶接電極による加圧力より小さくなる。これにより、剛性の異なる板材、例えば剛性が低い薄板と剛性が高い第1厚板及び第2厚板を重ねた被溶接部材を挟持加圧して第1溶接電極と第2溶接電極との間に通電したとき、相対的に薄板と第1厚板の接合部の電流密度が高くなり、被溶接部材に対する優れた溶接品質が得られる。
【0019】
一方、副加圧アクチュエータ及びリンク機構を備え、副加圧アクチュエータによるリンク機構の作動により被溶接部材に当接して被溶接部材に副加圧力を付与する副加圧部を有する副加圧付与手段は構成及び作動が簡単でかつ小型及び軽量でありスポット溶接装置の小型軽量化が得られる。
【0020】
請求項2に記載の発明は、第1溶接電極と、該第1溶接電極と対向配置されて第1溶接電極と協働して被溶接部材を挟持して加圧する第2溶接電極と、前記第1溶接電極に隣接して被溶接部材に当接する副加圧部と、副加圧アクチュエータ及び該加圧アクチュエータによって作動するリンク機構を有し、前記副加圧アクチュエータによるリンク機構の作動により前記第1溶接電極を被溶接部材に当接して該被溶接部材に加圧力を付与する固定位置と被溶接部材から離反する退避位置に移動する副加圧付与手段とを備え、前記被溶接部材に当接する固定位置における第1溶接電極及び副加圧部と前記第1溶接電極に対向して前記被溶接部材に当接する第2溶接電極とによって前記被溶接部材を挟持加圧し、該挟持加圧状態で前記第1溶接電極と第2溶接電極との間で通電してスポット溶接することを特徴とする。
【0021】
これによれば、第1溶接電極による加圧力及び副加圧部からの副加圧力が被溶接部材に付与され、第1溶接電極に対向して第2溶接電極による加圧力が付与されて第1溶接電極による加圧力が第2溶接電極による加圧力より小さくなる。これにより、剛性の異なる板材、例えば剛性が低い薄板と剛性が高い第1厚板及び第2厚板を重ねた被溶接部材を挟持加圧して第1溶接電極と第2溶接電極との間に通電したとき、相対的に薄板と第1厚板の接合部の電流密度が高くなり、被溶接部材に対する優れた溶接品質が得られる。
【0022】
一方、副加圧部と、副加圧付与アクチュエータ及び副加圧アクチュエータによって作動するリンク機構を有し、副加圧アクチュエータによるリンク機構の作動により第1溶接電極を被溶接部材に当接して被溶接部材に加圧力を付与する副加圧付与手段は、構成及び作動が簡単でかつ小型及び軽量でありスポット溶接装置の小型軽量化が得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、第1溶接電極による加圧力及び副加圧部からの副加圧力が被溶接部材に付与され、第1溶接電極に対向して第2溶接電極による加圧力が付与されて第1溶接電極による加圧力が第2溶接電極による加圧力より小さくなる。これにより、特に剛性の異なる板材を重ねた被溶接部材に対する優れた溶接品質が得られる。また、副加圧付与アクチュエータ及び副加圧アクチュエータによって作動するリンク機構を備えた副加圧付与手段は、構成及び作動が簡単でかつ小型及び軽量でありスポット溶接装置の小型軽量化が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施の形態におけるスポット溶接装置の構成図である。
【図2】副加圧部の説明図である。
【図3】模式的に示すスポット溶接装置の作動概要説明図である。
【図4】模式的に示すスポット溶接装置の作動概要説明図である。
【図5】第2実施の形態におけるスポット溶接装置の構成図である。
【図6】模式的に示すスポット溶接装置の作動概要説明図である。
【図7】第3実施の形態におけるスポット溶接装置の構成図である。
【図8】模式的に示すスポット溶接装置の作動概要説明図である。
【図9】第4実施の形態におけるスポット溶接装置の構成図である。
【図10】模式的に示すスポット溶接装置の作動概要説明図である。
【図11】第5実施の形態におけるスポット溶接装置の構成図である。
【図12】模式的に示すスポット溶接装置の作動概要説明図である。
【図13】従来のスポット溶接の概要を示す説明図である。
【図14】従来のスポット溶接の概要を示す説明図である。
【図15】従来のスポット溶接の概要を示す説明図である
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るスポット溶接装置の実施の形態を図を参照して説明する。
【0026】
(第1実施の形態)
本発明の第1実施の形態について、図1乃至図4を参照して説明する。図1はスポット溶接装置の構成図、図2は副加圧部の説明図、図3及び図4は模式的に示す作動概要説明図である。なお、このスポット溶接装置の説明にあたり、便宜上図1における上方及び下方をスポット溶接装置における上方及び下方とする。
【0027】
スポット溶接装置1の説明に先立って、被溶接部材100について説明する。被溶接部材100は、図1に示すように剛性の低い薄板101、薄板101より板厚が大きく剛性が高い第1厚板102及び第2厚板103が順に重ね合わされた3枚重ねの板組によって構成される。
【0028】
図1及び図2を参照してスポット溶接装置1の構成を説明する。
【0029】
スポット溶接装置1は、仮想線で示すように溶接ロボット90の手首部91にイコライザユニット2を介して取り付けた支持ブラケット3を有し、支持ブラケット3に固定アーム10、加圧アクチュエータ20及び溶接トランス26を搭載し、固定アーム10に副加圧付与手段30を設ける。
【0030】
固定アーム10は、支持ブラケット3に基端が結合されて下方に延在する固定アーム本体11及び固定アーム本体11の先端からL字状に折曲して延在する電極保持部12を有し、電極保持部12の先端に第1溶接電極である固定側電極15を、その頂端15aを上方に向けて装着する。
【0031】
加圧アクチュエータ20は、サーボモータ21及びボールねじ機構等によって構成された直動部22を有し、サーボモータ21の作動によって直動部22のロッド23が昇降往復動する。このロッド23の下端に可動アーム24を設け、可動アーム24の先端に固定アーム10に設けた固定側電極15と同軸上、即ち中心軸線L上に固定側電極15と対向して第2溶接電極である可動側電極25を設ける。このサーボモータ21の作動によって可動側電極25は固定側電極15から上方に離反する退避位置と、被溶接部材100を固定側電極15と協働して挟持すると共に加圧力を付与する加圧位置との間で中心軸線Lに沿って昇降移動する。この加圧力はサーボモータ21の回転トルクによって決定され、サーボモータ21の回転トルクを制御することで所期の加圧力が得られる。
【0032】
副加圧付与手段30は、固定アーム10の固定アーム本体11に回転軸31によって中央部32cが揺動自在に支持されて固定側電極15の先端15a方向に延在する副加圧部支持側部32a及び固定側電極15から離反方向に延在する駆動側部32bを備えた副加圧付与アーム32を有する。
【0033】
この副加圧部支持部32aの先端に副加圧部33を設ける。副加圧部33は図2に示すように先端が断面円弧状で上面33a及び下面33bを有するブロック状で、先端中央に固定側電極15及び可動側電極25の貫通を許容するU字溝状の電極貫通凹部33dを形成する。
【0034】
一方、固定アーム10の上部に突設されたアクチュエータ支持部13に回転軸34によって副加圧アクチュエータ35を揺動自在に支持する。副加圧アクチュエータ35は、サーボモータ36及び直動部37を有し、サーボモータ36の作動によって直動部37のロッド38が略上下往復動する。このロッド38の先端が回転軸39を介して副加圧付与アーム32の駆動側部32bに連結する。
【0035】
これにより副加圧アクチュエータ35のサーボモータ36の作動により直動部37のロッド38を上下往復動することで、ロッド38に連結された副加圧付与アーム32が回転軸31を支点として副加圧部支持部32aの先端、即ち副加圧部33が中心軸線L方向に沿って上昇及び下降するリンク機構が構成される。このサーボモータ36の作動により副加圧部33の上面33aが固定側電極15の頂端15aより下方となる第1退避位置に下降し、かつ副加圧部33の下面33bが固定側電極15と可動側電極25とで挟持された被溶接部材100から上方に離反する第2退避位置に上昇する。
【0036】
この上昇移動する副加圧部33が固定側電極15と可動側電極25とで挟持した被溶接部材100に下方から圧接する副加圧位置において、被溶接部材100に副加圧部33から副加圧力Fαを付与する。同様に、下降する副加圧部33が固定側電極15と可動側電極25で挟持した被溶接部材100に上方から圧接する副加圧位置において、被溶接部材100に副加圧部33から副加圧力Fαを付与する。これらの副加圧力Fαはサーボモータ36の回転トルクによって決定され、サーボモータ36の回転トルクを制御することで所期の副加圧力Fαが得られる。
【0037】
電源となる溶接トランス26の出力端子がバスバ及び固定アーム10等を介して固定側電極15に通電可能に接続し、他方の出力端子がバスバ及び可動アーム24等を介して可動側電極25に通電可能に接続する。
【0038】
また、図示しない溶接ロボットコントローラには、溶接ロボット90のティーチングデータが格納され、ティーチングデータには被溶接部材100の各溶接打点位置を順次スポット溶接するための作動プログラム及び各溶接打点、即ち溶接位置におけるスポット溶接装置1の位置及び姿勢が含まれる。図示しない溶接コントローラには溶接装置1の作動プログラム及び加圧アクチュエータ20、副加圧付与手段30、溶接トランス26の作動制御が含まれる。
【0039】
次に、スポット溶接装置1の作動を図3乃至図4の作動概要説明図を参照して説明する。
【0040】
図3を参照して、下から順に薄板101、第1厚板102、第2厚板103が重ね合わされた板組の被溶接部材100をスポット溶接する例を説明する。
【0041】
被溶接部材100のスポット溶接にあたり、予め設定された作動プログラムに従い加圧アクチュエータ20のサーボモータ21の作動により可動側電極25を退避位置に移動し、かつ副加圧付与手段30のサーボモータ36の作動によって副加圧付与アーム32に設けた副加圧部33を第1退避位置に移動する。
【0042】
次にロボットコントローラは、溶接ロボット90を作動して図3(a)に示すように被溶接部材100の溶接位置となる打点位置に固定側電極15の頂端15aを下方から当接してスポット溶接装置1を位置決めする。この位置決めされた状態では、固定側電極15の頂端15aが被溶接部材100の薄板101に下方から当接する一方、可動側電極25の頂端25aが第2厚板103と隙間を有して対向し、かつ副加圧部33の上面33aが薄板101と隙間を有して対向する。
【0043】
次に、この位置決めされた状態で、加圧アクチュエータ20のサーボモータ21の作動により可動側電極25を退避位置から固定側電極15に接近する加圧位置方向に移動して、図3(b)に示すように第2厚板103に上方から当接させて固定側電極15と可動側電極25とで被溶接部材100を挟持する。更にサーボモータ21を所定トルクに達するまで作動して可動側電極25を第2厚板103に圧接する。これにより加圧アクチュエータ20の加圧力が可動側電極25と固定アーム10を介して固定側電極15とに作用し、可動側電極25と固定側電極15との間で被溶接部材100の溶接部を挟持すると共に加圧する。
【0044】
一方、副加圧付与手段30ではサーボモータ36の作動により副加圧付与アーム32が回転軸31を支点として回動して副加圧部33が第1退避位置から上面33aが被溶接部材100の薄板101に下方から当接する副加圧位置まで移動して副加圧部33により薄板101に副加圧力Fαを付与する。
【0045】
この固定側電極15と可動側電極25によって被溶接部材100を挟持加圧し、副加圧部33により固定側電極15に隣接して薄板101に下方から副加圧力Fαを付与した状態では、図3(c)に示すように、可動側電極25による加圧力FUが第2厚板103に上方から付与され、固定側電極15による加圧力FLと副加圧部35による副加圧力Fαが薄板101に付与される。
【0046】
この場合、加圧アクチュエータ20による加圧力が可動側電極25に作用し、かつ可動側電極25に対向して固定アーム10を介して固定側電極15に作用する一方、副加圧付与手段30におけるサーボモータ36による加圧力が副加圧部33に作用し、第2厚板103に上方から作用する可動側電極25による加圧力FUと薄板101に下方から作用する固定側電極15による加圧力FL及び副加圧部39による副加圧力Fαの総和が等しくなる(FU=FL+Fα)。
【0047】
これにより固定側電極15から薄板101に作用する加圧力FLは、可動側電極25による加圧力FUから副加圧部33による副加圧力Fαを減じた加圧力が付与される(FL=FU−Fα)。このように薄板101側に作用する固定側電極15の加圧力FLを第2厚板103側に作用する可動側電極25の加圧力FUより小さく(FL<FU)することで、薄板101と第1厚板102の接合部における接触圧力が、第1厚板102と第2厚板103間の接触圧力より小さくなる。
【0048】
次に、可動側電極25と固定側電極15及び副加圧部33とで被溶接部材100を挟持加圧して薄板101側に位置する固定側電極15の加圧力FLを第2厚板103側に位置する可動側電極25の加圧力FUより小さくした状態で、溶接トランス26から可動側電極25と固定側電極15との間に所定時間通電して溶接する。この可動側電極25と固定側電極15との間に通電した時に、相対的に薄板101と第1厚板102間の接合部における接触抵抗が大きく電流密度が高くなり、薄板101と第1厚板102の接合部における発熱量が第1厚板102と第2厚板103の接合部における発熱量に対して相対的に増加して、薄板101から第2厚板103に亘って電流密度の偏りのない良好な溶接が行われ、溶接強度及び溶接品質が確保できる。
【0049】
この溶接が完了した後、サーボモータ36の作動で副加圧付与アーム32を回動して副加圧部33を副加圧位置から第1退避位置に移動する。更に、加圧アクチュエータ20の作動により可動側電極25を退避位置に移動させて固定側電極15と可動側電極25による被溶接部材100の挟持を開放する。しかる後、溶接ロボット90を作動して、スポット溶接装置1を被溶接部材100の打点位置から退避させ、次の被溶接部材100の打点位置に移動する。
【0050】
次に、上から順に薄板101、第1厚板102、第2厚板103が重ね合わされた被溶接部材100のスポット溶接について図4を参照して説明する。
【0051】
この被溶接部材100のスポット溶接にあたり、予め設定された作動プログラムに従いスポット溶接装置1の可動側電極25が退避位置でかつ、副加圧付与手段30の副加圧付与アーム32に設けた副加圧部33を第2退避位置に移動する。
【0052】
次にロボットコントローラは、溶接ロボット90を作動して図4(a)に示すように被溶接部材100の溶接位置となる打点位置に固定側電極15の頂端15aを下方から当接してスポット溶接装置1を位置決めする。
【0053】
次に、図4(b)に示すように、固定側電極15が第2厚板103に当接した状態で、加圧アクチュエータ20のサーボモータ21の作動により可動側電極25を退避位置から加圧位置方向に移動させて薄板101に上方から当接させる。更にサーボモータ21を所定トルクに達するまで作動して可動側電極25を薄板101に圧接させて、可動側電極25と固定側電極15との間で被溶接部材100の溶接部を挟持すると共に加圧する。
【0054】
一方、副加圧付与手段30ではサーボモータ36の作動により副加圧付与アーム32を回転させて副加圧部33が第2退避位置39−2から下面33bが被溶接部材100の薄板101に上方から当接する副加圧位置に移動して副加圧部33により薄板101に副加圧力Fαを付与する。
【0055】
これにより、図4(c)に示すように、可動側電極25による加圧力FU及び副加圧部33の副加圧力Fαを薄板101に付与し、固定側電極15による加圧力FLを第2厚板103に付与する。この薄板101側に位置する可動側電極25の加圧力FUを第2厚板103側に位置する固定側電極15の加圧力FLより小さくした状態で、可動側電極25と固定側電極15との間に所定時間通電して溶接する。この可動側電極25と固定側電極15との間に通電した時に、相対的に薄板101と第1厚板102間の接合部における電流密度が高くなり、薄板101から第2厚板103に亘って電流密度の偏りのない良好な溶接が行われて溶接強度及び溶接品質が確保できる。
【0056】
この溶接が完了した後、副加圧付与手段30のサーボモータ36の作動により副加圧付与アーム32に設けた副加圧部33を第2退避位置に移動する。更に、加圧アクチュエータ20のサーボモータ21の作動により可動側電極25を退避位置に移動して固定側電極15と可動側電極25による被溶接部材100の挟持を溶接ロボット50を作動して、スポット溶接装置1を被溶接部材100の打点位置から退避させ、次の被溶接部材100の打点位置に移動する。
【0057】
このように構成された本実施の形態によると、固定側電極15と可動側電極25によって加圧付与した被溶接部材100に副加圧付与手段30の副加圧部33から副加圧力Fαが付与され、固定側電極15と可動側電極25による加圧力FL、FUが制御されて剛性の異なる板材を重ねた被溶接部材100に対する溶接品質が向上する。
【0058】
一方、固定アーム10に配設される副加圧付与アーム32及び副加圧アクチュエータ35等によるリンク機構によって構成された副加圧付与手段30は比較的小型軽量に構成されて、スポット溶接装置1の大形化を招くことなく小型軽量化が得られ、特に固定アーム10の先端側において重量化を招くことなくスポット溶接装置1の姿勢制御が容易になり、溶接ロボット70の作動制御が簡素化され、溶接ロボット90の負荷が軽減できる。
【0059】
また、固定アーム10に副加圧付与アーム32及び副加圧アクチュエータ35等によるリンク機構によって構成される副加圧付与手段30を配置することから、既存の副加圧付与手段30を有しないスポット溶接装置と基本構成が同じであり、従来のスポット溶接装置を大きく変更することなく、固定アームを交換することで本実施の形態におけるスポット溶接装置を構成することができる。
【0060】
(第2実施の形態)
本発明の第2実施の形態について、図5及び図6を参照して説明する。図5はスポット溶接装置の構成図、図6は模式的に示す作動概要説明図である。なお、図5及び図6において図1乃至図4に対応する部位には同一符号を付することで該部の詳細な説明は省略する。
【0061】
スポット溶接装置1は、図5に仮想線で示すように溶接ロボット90の手首部91にイコライザユニット2を介して取り付けた支持ブラケット3に固定アーム10、加圧アクチュエータ20及び溶接トランス26を搭載し、固定アーム10に副加圧付与手段40を設ける。
【0062】
固定アーム10は、支持ブラケット3に基端が結合されて下方に延在する固定アーム本体11の先端にL字状に折曲して延在する電極保持部12が形成され、電極保持部12の先端に固定側電極15を、その頂端15aを上方に向けて装着する。この固定アーム10の電極保持部12には、その軸方向に延在する上側が開放された中空部12aが形成される。
【0063】
副加圧付与手段40は、固定アーム10の電極保持部12の先端に突出形成された一対の支持部12b間に、略水平方向に延在する回転軸41によって中央部42cが支持されて支持部12bの間から突出して固定側電極15の先端15a方向に延在して先端に副加圧部43が形成された副加圧支持側部42a及び中央部42cから下方に延びる駆動側部42bを有する側面視略L字状の副加圧付与アーム42を有する。副加圧部43は先端中央に固定側電極15及び可動側電極25の貫通を許容するU字状の電極貫通凹部を有する。また、駆動側部42bには上下方向に長径のスリット状の係合孔44を形成する。
【0064】
一方、固定アーム10の電極保持部12の基端に副加圧アクチュエータ45が支持される。副加圧アクチュエータ45は、電極保持部12の端部に保持される中空モータによって形成されたサーボモータ46と、サーボモータ46に隣接して配置されたボールねじナット48a及びボールねじナット48aに螺合するボールねじ軸48bを有する直動部48を備え、サーボモータ46によってボールねじナット48aを回転することでボールねじ軸48bが中空部12a内を往復動する。このボールねじ軸48bの先端に配置した駆動ピン49が副加圧付与アーム42の駆動側部42bに形成された係合孔44に係止して連結する。
【0065】
これにより副加圧アクチュエータ46のサーボモータ47の作動によるボールねじ軸48bを往復動することで、ボールねじ軸48bの連結された副加圧付与アーム42が、固定アーム10に支持された回転軸41を支点として副加圧部支持部42aの先端、即ち副加圧部43が回転軸L方向に沿って上昇及び下降するリンク機構が構成される。
【0066】
サーボモータ46の作動により副加圧部43の上面43aが固定側電極15の頂端15aより下方となる退避位置と、固定側電極15と可動側電極25とで挟持した被溶接部材100に下方から圧接する副加圧位置との間で移動し、副加圧位置において被溶接部材100に副加圧部43から副加圧力Fαを付与する。この副加圧力Fαはサーボモータ46の回転トルクによって決定され、サーボモータ46の回転トルクを制御することで所期の副加圧力Fαが得られる。
【0067】
このように構成されたスポット溶接装置1は、加圧アクチュエータ20により可動側電極25を退避位置から加圧位置方向に移動させて可動側電極25と固定側電極15との間で被溶接部材100を挟持すると共に加圧する。一方、副加圧付与手段40ではサーボモータ46の作動により副加圧付与アーム42を回転させて副加圧部43を退避位置から上面43aが被溶接部材100の薄板101に下方から当接する副加圧位置に移動し、副加圧部43により薄板101に副加圧力Fαを付与する。
【0068】
これにより、図6に示すように、固定側電極15による加圧力FL及び副加圧部43の副加圧力Fαを薄板101に付与し、可動側電極25による加圧力FUを第2厚板103に付与する。この薄板101側に位置する固定側電極15の加圧力FLが第2厚板103側に位置する可動側電極25の加圧力FUより小さくした状態で、溶接トランス26から可動側電極25と固定側電極15との間に所定時間通電して溶接する。この可動側電極25と固定側電極15との間に通電した時に、相対的に薄板101と第1厚板102間の接合部における電流密度が高くなり、薄板101から第2厚板103に亘って電流密度の偏りのない良好な溶接が行われて溶接強度及び溶接品質が確保できる。
【0069】
このように構成された本実施の形態によると、固定側電極15と可動側電極25によって加圧付与した被溶接部材100に、副加圧付与手段40の副加圧部33からの副加圧力が付与され、固定側電極15と可動側電極25による加圧力FL、FUが制御されて剛性の異なる板材を重ねた被溶接部材100に対する溶接品質が向上する。一方、固定アーム10に副加圧付与アーム42及び副加圧アクチュエータ45等によるリンク機構によって構成される副加圧付与手段40は比較的小型軽量に構成されて、スポット溶接装置1の大形化を招くことなく小型軽量化が得られ、スポット溶接装置1の姿勢制御が容易になり、溶接ロボット50の作動制御が簡素化され、溶接ロボット90の負荷が軽減できる。
【0070】
(第3実施の形態)
本発明の第3実施の形態について、図7及び図8を参照して説明する。図7はスポット溶接装置の構成図、図8は模式的に示す作動概要説明図である。なお、図7及び図8において図1乃至図4に対応する部位には同一符号を付することで該部の詳細な説明は省略する。
【0071】
スポット溶接装置1は、仮想線で示すように溶接ロボット90の手首部91にイコライザユニット2を介して取り付けた支持ブラケット3に固定アーム10、加圧アクチュエータ20及び溶接トランス26を搭載し、加圧アクチュエータ20に副加圧付与手段50を設ける。
【0072】
副加圧付与手段50は、加圧アクチュエータ20の可動アーム24に取り付けられて中心軸線Lから固定アーム10側に突出する支持部51aを有するベース51を備える。この支持部51aに回転軸52によって中央部53cが揺動自在に支持され、この中央部53cから下方に延在して先端側が可動側電極25の先端25a方向にL字状に延在して先端に副加圧部54が形成される副加圧支持側部53a及び中央部53cから略水平方向に延在する駆動側部53bを有する側面視略クランク状の副加圧付与アーム53を有する。
【0073】
副加圧部54は先端中央に固定側電極15及び可動側電極25の貫通を許容する電極貫通凹部を有する。
【0074】
一方、支持ブラケット3に副加圧アクチュエータ55を設ける。副加圧アクチュエータ55は、サーボモータ56及び直動部57を有し、サーボモータ56の作動によって直動部57のロッド58が中心軸線Lと平行に上下往復動する。この直動部57のロッド58の先端が回転軸59を介して副加圧付与アーム53の駆動側部53bに連結する。
【0075】
これにより加圧アクチュエータ20のサーボモータ21による可動アーム24の退避位置から加圧位置への移動に連動して副加圧アクチュエータ55のサーボモータ56の作動により直動部57のロッド58を上昇位置から下降位置に移動することで、仮想線で示すように可動側電極25が加圧位置に移動すると共に、ベース51及び副加圧付与アーム53が下降位置に下降する。この状態では副加圧付与アーム53の副加圧部54の下面54aは可動側電極25の頂端25aより上方に位置する退避位置に保持される。
【0076】
更に副加圧アクチュエータ55のサーボモータ56によりロッド58を上昇することで、回転軸52を支点として副加圧付与アーム53の副加圧支持側部53b及び副加圧部54が、固定側電極15と可動側電極25とで挟持した被溶接部材100に上方から圧接する副加圧位置へ回転するリンク機構が構成される。この副加圧位置において被溶接部材100に副加圧部54から副加圧力Fαを付与する。この副加圧力Fαはサーボモータ56の回転トルクによって決定され、サーボモータ56の回転トルクを制御することで所期の副加圧力Fαが得られる。
【0077】
このように構成されたスポット溶接装置1では、加圧アクチュエータ20のサーボモータ21による可動アーム24の退避位置から加圧位置への移動に連動して副加圧アクチュエータ55のサーボモータ56の作動による直動部57のロッド58を上昇位置から下降位置に移動することで可動側電極25が加圧位置に移動すると共に、ベース51及び副加圧付与アーム53が下降位置に下降する。更に副加圧付与手段50ではサーボモータ56の作動により副加圧付与アーム53を回転させて副加圧部54が退避位置54から下面54bが被溶接部材100の薄板101に上方から当接する副加圧位置に移動して副加圧部54により薄板101に副加圧力Fαを付与する。
【0078】
これにより、図8に模式的に示すように、可動側電極25による加圧力FU及び副加圧部54の副加圧力Fαが薄板101に付与され、固定側電極15による加圧力FLが第2厚板103に付与される。この薄板101側に位置する可動側電極25の加圧力FUが第2厚板103側に位置する固定側電極15の加圧力FLより小さくした状態で、溶接トランス26から可動側電極25と固定側電極15との間に所定時間通電して溶接する。これにより、薄板101から第2厚板103に亘って電流密度の偏りのない良好な溶接が行われて溶接強度及び溶接品質が確保できる。
【0079】
このように構成された本実施の形態によると、固定側電極15と可動側電極25によって被溶接部材100を加圧し、更にサーボモータ56による副加圧部54からの副加圧力が付与されて、固定側電極15と可動側電極25による加圧力FL、FUが制御されて剛性の異なる板材を重ねた被溶接部材100に対する溶接品質が向上する。一方、可動アーム20に支持された副加圧付与アーム53及び支持ブラケット3に支持された副加圧アクチュエータ55等によるリンク機構によって構成される副加圧付与手段50は比較的小型軽量に構成されて、スポット溶接装置1の大形化を招くことなく小型軽量化が得られ、スポット溶接装置1の姿勢制御が容易になり、溶接ロボット90の作動制御が簡素化され、溶接ロボット90の負荷が軽減できる。
【0080】
(第4実施の形態)
本発明の第4実施の形態について、図9及び図10を参照して説明する。図9はスポット溶接装置の構成図、図10は模式的に示す作動概要説明図である。なお、図9及び図10において図1乃至図4に対応する部位には同一符号を付することで該部の詳細な説明は省略する。
【0081】
スポット溶接装置1は、仮想線で示すように溶接ロボット90の手首部91にイコライザユニット2を介して取り付けた支持ブラケット3に固定アーム10、加圧アクチュエータ20及び溶接トランス26を搭載し、加圧アクチュエータ20に副加圧付与手段60を設ける。
【0082】
副加圧付与手段60は、加圧アクチュエータ20の可動アーム24の先端部に取り付けられて固定アーム10側に突出する支持部61aを有するベース61を備え、支持部61aに回転軸62によって中央部63cが揺動自在に支持され、この中央部63cから下方に延在して先端側が可動側電極25の先端25a方向にL字状に延在して先端に副加圧部64が形成された副加圧支持側部63a及び中央部63cから略水平方向に延在する駆動側部63bを有する側面視略クランク状の副加圧付与アーム63を有する。副加圧部64は先端中央に固定側電極15及び可動側電極25の貫通を許容するU字状の電極貫通凹部を有する。
【0083】
更に可動アーム24にベース61を介して副加圧アクチュエータ65を設ける。副加圧アクチュエータ65は、サーボモータ66及び直動部67を有し、サーボモータ66の作動によって直動部67のロッド68が上下往復動する。この直動部67のロッド68の先端が回転軸69を介して副加圧付与アーム63の駆動側部63bに連結する。
【0084】
これにより加圧アクチュエータ20のサーボモータ21により可動アーム24を退避位置から加圧位置へ移動すると、仮想線で示すように可動側電極25が加圧位置に移動すると共に、副加圧付与手段60が下降位置に下降する。この状態では副加圧付与アーム63に形成した副加圧部64の下面64aは可動側電極25の頂端25aより上方に位置する退避位置に保持される。
【0085】
更に副加圧アクチュエータ65のサーボモータ66によるロッド68の上昇により、ベース61に支持された回転軸62を支点として副加圧付与アーム63の副加圧部64が、固定側電極15と可動側電極25とで挟持した被溶接部材100に上方から圧接する副加圧位置へ回転するリンク機構が構成される。この副加圧位置において被溶接部材100に副加圧部64から副加圧力Fαを付与する。この副加圧力Fαはサーボモータ66の回転トルクによって決定され、サーボモータ66の回転トルクを制御することで所期の副加圧力Fαが得られる。
【0086】
このスポット溶接装置1は、加圧アクチュエータ20のサーボモータ21による可動アーム24の退避位置から加圧位置へ移動して可動側電極25が加圧位置に移動してベース61及び副加圧付与アーム63が下降位置に下降し、かつ副加圧付与手段60のサーボモータ66の作動により副加圧付与アーム63を回転させて副加圧部64が退避位置から下面64aが被溶接部材100の薄板101に上方から当接する副加圧位置に移動して副加圧部64により薄板101に副加圧力Fαを付与する。
【0087】
これにより、図10に示すように、可動側電極25による加圧力FU及び副加圧部64の副加圧力Fαが薄板101に付与され、固定側電極15による加圧力FLが第2厚板103に付与される。これにより、薄板101側に位置する可動側電極25の加圧力FUを第2厚板103側に位置する固定側電極15の加圧力FLより小さくした状態で、可動側電極25と固定側電極15との間に所定時間通電して溶接する。これにより、薄板101から第2厚板103に亘って電流密度の偏りのない良好な溶接が行われて溶接強度及び溶接品質が確保できる。
【0088】
一方、可動アーム24に取り付けられる副加圧付与アーム63及び副加圧アクチュエータ65等によるリンク機構によって構成される副加圧付与手段60は比較的小型軽量に構成されて、スポット溶接装置1の大形化を招くことなく小型軽量化が得られ、スポット溶接装置1の姿勢制御が容易になり、溶接ロボット90の作動制御が簡素化され、溶接ロボット90の負荷が軽減できる。
【0089】
(第5実施の形態)
本発明の第5実施の形態について、図11及び図12を参照して説明する。図11はスポット溶接装置の構成図、図12は模式的に示す作動概要説明図である。なお、図11及び図12において図1乃至図4に対応する部位には同一符号を付することで該部の詳細な説明は省略する。
【0090】
スポット溶接装置1は、仮想線で示すように溶接ロボット90の手首部91にイコライザユニット2を介して取り付けた支持ブラケット3に固定アーム10、加圧アクチュエータ20及び溶接トランス26を搭載する。
【0091】
支持ブラケット3に設けられて支持部4aが垂下すると共にアクチュエータ支持部4bが延接する固定アームブラケット4を備え、固定アーム支持ブラケット4の支持部4aにベアリング等の回転軸71を介して固定アーム10を設ける。
【0092】
副加圧付与手段70を構成する固定アーム10は、固定アーム支持ブラケット4に回転軸71を介して揺動自在に支持される基端から下方に延在する固定アーム本体11及び固定アーム本体11の先端にL字状に折曲して延在する電極保持部12が形成され、電極保持部12の先端に第1溶接電極である固定側電極15を、その頂端15aを上方に向けて装着する。
【0093】
一方、固定アームブラケット4の副加圧アクチュエータ支持部4bに回転軸72を介して副加圧アクチュエータ73が設けられる。副加圧アクチュエータ73は、サーボモータ74及び直動部75を有し、サーボモータ74の作動によって直動部75のロッド76が上下往復動する。この直動部75のロッド76の先端が回転軸77を介して固定アーム10の固定アーム本体11に突設され駆動部14に連結する。これにより副加圧アクチュエータ73のサーボモータ74の作動により固定アーム10は固定位置と仮想線で示す固定電極15が下降する退避位置との間で移動するリンク機構が構成される。
【0094】
これによりサーボモータ21の作動によって可動側電極25は固定位置における固定側電極15から上方に離反する上昇移動端の退避位置と、被溶接部材100を固定側電極15と協働して挟持すると共に加圧力を付与する加圧位置との間で中心軸線Lに沿って昇降移動する。
【0095】
固定アームブラケット4に結合される基端から下方に延在して先端にL字状に折曲して延在する副加圧付与アーム81を有し、副加圧付与アーム81の先端に副加圧部82が形成される。副加圧部81は先端中央に固定側電極15の貫通を許容するU字状の電極貫通凹部を有し、上面82aが固定位置における固定側電極15の頂端15aと対応する高さ位置に形成される。
【0096】
このスポット溶接装置1は、副加圧部82の上面82aに被溶接部材100の薄板101を当接して副加圧アクチュエータ73のサーボモータ74により固定アーム10を下降位置から固定位置に移動し、かつ加圧アクチュエータ20のサーボモータ21による可動アーム24の退避位置から加圧位置へ移動して可動側電極25と固定側電極15との間で被溶接部材100の溶接部を挟持すると共に加圧することで、図12に示すように被溶接部材100の第2厚板103に可動側電極25から加圧力FUが付与され、可動側電極25と対向して薄板101に固定側電極15から加圧力FLが付与されかつ副加圧部82から副加圧力Fαが付与される。
【0097】
このように薄板101側に位置する固定側電極15の加圧力FLが第2厚板103側に位置する可動側電極25の加圧力FUより小さくした状態で、溶接トランス26から可動側電極25と固定側電極15との間に所定時間通電して溶接する。これにより、薄板101から第2厚板103に亘って電流密度の偏りのない良好な溶接が行われて溶接強度及び溶接品質が確保できる。
【0098】
このように構成された本実施の形態によると、被溶接部材100に副加圧部82に当接し、固定アームアクチュエータ82及び加圧アクチュエータ20によって固定側電極15と可動側電極25によって被接溶接部材100に加圧力を付与するリンク機構を構成することで、副加圧部82からの副加圧力Fαが被溶接部材100に付与され、固定側電極15と可動側電極25による加圧力FL、FUが制御されて剛性の異なる板材を重ねた被溶接部材100に対する溶接品質が向上する。一方、固定アーム10及び固定アームアクチュエータ72によるリンク機構によって構成される副加圧付与手段70は比較的小型軽量に構成されて、スポット溶接装置1の大形化を招くことなく小型軽量化が得られ、特に固定アーム10の先端側において重量化を招くことなくスポット溶接装置1の姿勢制御が容易になり、溶接ロボット90の作動制御が簡素化され、溶接ロボット90の負荷が軽減できる。
【符号の説明】
【0099】
1 スポット溶接装置
10 固定アーム
15 固定側電極(第1溶接電極)
20 加圧アクチュエータ
24 可動アーム
25 可動側電極
30 副加圧付与手段
32 副加圧付与アーム(リンク機構)
33 副加圧部
35 副加圧アクチュエータ
40 副加圧付与手段
42 副加圧付与アーム(リンク機構)
43 副加圧部
46 副加圧アクチュエータ
50 副加圧付与手段
53 副加圧付与アーム(リンク機構)
54 副加圧部
55 副加圧アクチュエータ
60 副加圧付与手段
63 副加圧付与アーム(リンク機構)
64 副加圧部
65 副加圧アクチュエータ
70 副加圧付与手段
73 副加圧アクチュエータ
82 副加圧部
90 溶接ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1溶接電極と、
該第1溶接電極と対向配置されて第1溶接電極と協働して被溶接部材を挟持して加圧する第2溶接電極と、
副加圧アクチュエータ及び該副加圧アクチュエータによって作動するリンク機構を有し、前記副加圧アクチュエータによるリンク機構の作動により前記被溶接部材に前記第1溶接電極に隣接して当接して該被溶接部材に副加圧力を付与する副加圧位置及び被溶接部材から離反する退避位置に移動する副加圧部を有する副加圧付与手段とを備え、
前記被溶接部材に当接する第1溶接電極及び副加圧位置における副加圧部と前記第1溶接電極に対向して前記被溶接部材に当接する第2溶接電極とによって前記被溶接部材を挟持加圧し、該挟持加圧状態で前記第1溶接電極と第2溶接電極との間で通電してスポット溶接することを特徴とするスポット溶接装置。
【請求項2】
第1溶接電極と、
該第1溶接電極と対向配置されて第1溶接電極と協働して被溶接部材を挟持して加圧する第2溶接電極と、
前記第1溶接電極に隣接して被溶接部材に当接する副加圧部と、
副加圧アクチュエータ及び該副加圧アクチュエータによって作動するリンク機構を有し、前記副加圧アクチュエータによるリンク機構の作動により前記第1溶接電極を被溶接部材に当接して該被溶接部材に加圧力を付与する固定位置と被溶接部材から離反する退避位置に移動する副加圧付与手段とを備え、
前記被溶接部材に当接する固定位置における第1溶接電極及び副加圧部と前記第1溶接電極に対向して前記被溶接部材に当接する第2溶接電極とによって前記被溶接部材を挟持加圧し、該挟持加圧状態で前記第1溶接電極と第2溶接電極との間で通電してスポット溶接することを特徴とするスポット溶接装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−71161(P2013−71161A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212425(P2011−212425)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】