スポット溶接部の破断解析方法、破断解析コンピュータープログラム、破断解析装置。
【課題】スポット溶接部の破断解析を行うにおいて、多数存在するスポット溶接部の中から、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部を精度良く抽出する。
【解決手段】バー要素の端点を母材ごとに取得する工程と、取得したバー要素の中から一のバー要素に注目し、この注目バー要素の周囲にある他のバー要素を抽出する工程と、前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する工程と、前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する工程と、前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う工程と、を含むようにする。
【解決手段】バー要素の端点を母材ごとに取得する工程と、取得したバー要素の中から一のバー要素に注目し、この注目バー要素の周囲にある他のバー要素を抽出する工程と、前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する工程と、前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する工程と、前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う工程と、を含むようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突シミュレーションなどでスポット溶接部の破断を解析する方法、破断解析コンピュータープログラム、破断解析装置に関し、特に、自動車の車体といったような多数のスポット溶接部を有する解析対象物の破断を解析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車業界では、衝突時の乗員への傷害を低減しうる車体構造とするために、構造部材により衝撃エネルギーを吸収させることを検討している。自動車のフルラップ衝突やオフセット衝突での衝撃エネルギーを吸収させる主要な構造部材は、フロントサイドメンバーである。フロントサイドメンバーは、プレス成形等で部材成形後、スポット溶接により部材を閉断面化している。通常、このフロントサイドメンバーを座屈させることで、衝撃エネルギーを吸収させるようにしている。衝撃エネルギーの吸収を向上させるためには、座屈形態を安定化させ、途中で折れ曲りや破断をさせないことが重要である。
【0003】
構造部材の座屈形態を安定化させるためには、スポット溶接間隔,ナゲット径,溶接条件を最適化する必要がある。そのため、これらスポット溶接間隔,ナゲット径,溶接条件からスポット溶接部の破断限界を推定し、座屈形態が安定化する最適条件を見出す方法が検討されている(例えば、特許文献1−3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−148053号公報
【特許文献2】特開2005−315854号公報
【特許文献3】特開2007−304005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1−3に開示されている破断解析方法では、スポット溶接部の性質や負荷状態に応じて、荷重型破断、モーメント型破断、ナゲット内破断のいずれの破断モードが発生するかを判別できないので、衝突シミュレーションにおける解析精度が必ずしも高いとは言えなかった。
【0006】
そのため、本願の出願人によって、荷重型破断、モーメント型破断、ナゲット内破断のいずれの破断モードが発生するかを判別可能な、改善された破断解析方法が検討されている(特願2010−088271)。この破断解析方法は、コンピューターを用い、スポット溶接される鋼板のそれぞれの板厚t、引張強さTS、伸びEl、化学成分、溶接部のナゲット径d、隣接する溶接部、エッジ又は稜線との距離で決まるスポット溶接の有効幅B、断面高さHに基づいて、荷重型破断、モーメント型破断、ナゲット内破断のそれぞれの破断モードの破断限界を求め、スポット溶接部の状態量が前記いずれかの破断モードの破断限界に達したときに該破断モードで破断したと評価する。
【0007】
上述の改善された破断解析方法は、衝突シミュレーションにおける解析精度が高いという長所がある反面、全てのスポット溶接部に対して鋼材それぞれの板厚t、有効幅B等の必要情報を入力しなければならず、準備設定に時間がかかるという問題点があった。自動車の車体には、通常、数千点にも及ぶスポット溶接部が存在するため、これら全てのスポット溶接部に対して必要情報を入力するには長時間を要する。
【0008】
特に、上述の改善された破断解析方法は、溶接する鋼材が2枚であることを前提する解析アルゴリズムが構築されているので、そのままでは3枚以上の鋼材を重ねて溶接したスポット溶接部の破断解析を精度良く行えない。すなわち、3枚重ねのモデルをそのまま解析することのできる実用化可能なソフトは、未だ具現化されていないのが実情である。そのため、車体のスポット溶接部の中から、3枚の鋼材を重ねて溶接したスポット溶接部を探し出し、解析前の準備設定の段階で、見掛け上、2枚重ねとなるように入力情報を調整していた。例えば、鋼材A,B,Cを3枚重ねて溶接したスポット溶接部において鋼材Aと鋼材Bの接続部分に注目したときには、鋼材Aの板厚の値と、鋼材BとCの板厚を足した値を入力することによって、見掛け上、2枚重ねの溶接となるようにしていた。係る準備設定の作業には、多大な労力が必要となる。
【0009】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたものであり、スポット溶接部の破断解析を行うにおいて、多数存在するスポット溶接部の中から、鋼材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部を精度良く抽出できる準備設定のアルゴリズムを備えたスポット溶接部の破断解析方法、破断解析コンピュータープログラム、破断解析装置を提供することにある。
【0010】
また本発明の他の目的は、抽出したスポット溶接部の有効幅Bを適切に設定して、より精度の高い破断解析を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)バー要素の端点を母材ごとに取得する工程と、取得したバー要素の中から一のバー要素に注目し、この注目バー要素の周囲にある他のバー要素を抽出する工程と、前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する工程と、前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する工程と、前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う工程と、を含むことを特徴とするスポット溶接部の破断解析方法。
(2)前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在しなかった場合において、注目バー要素の周囲にある他のバー要素のうち、要素間距離が最も短いものを対象バー要素に選定する工程と、さらに対象バー要素と注目スポットが同じ母材を溶接しているか否かを判定する工程と、前記判定の結果、同じ母材を溶接している場合には、注目バー要素の両端点と対象バー要素の両端点を比較し、注目バー要素と対象バー要素が両端点を共有しているか否かを判定する工程と、前記判定の結果、注目バー要素と対象バー要素が両端点を共有していない場合には、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する工程と、前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う工程と、を含むことを特徴とする前記(1)に記載のスポット溶接部の破断解析方法。
(3)前記選定した対象バー要素と注目バー要素が同じ母材を溶接しているか否か判定した結果、異なる母材を溶接している場合には、母材を2枚重ねて溶接したスポット溶接部が2組有ると判定する工程と、を含むことを特徴とする前記(2)に記載のスポット溶接部の破断解析方法。
(4)前記注目バー要素の両端点と対象バー要素の両端点を比較した結果、注目バー要素と対象バー要素が両端点を共有している場合には、2つのスポット溶接部で共通する2枚の母材を重ねて溶接していると判定する工程と、を含むことを特徴とする前記(2)に記載のスポット溶接部の破断解析方法。
(5)前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在しなかった場合において、前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素との距離が母材の板厚以下のものがあるか否かを判定する工程と、前記判定の結果、バー要素間の距離が母材の板厚以下であると判定したときには前記対象バー要素を選定する工程を実行し、板厚以上であると判定したときには別のバー要素を注目バー要素に変更する工程と、を含むことを特徴とする前記(2)〜(4)のいずれかに記載のスポット溶接部の破断解析方法。
(6)前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部の破断解析を行うにおいて、前記注目バー要素に最も近いバー要素までの距離を抽出して、スポット間距離の情報を取得する工程と、前記注目バー要素の端点に最も近い距離にある母材のエッジを検索し、エッジ間距離の情報を取得する工程と、前記注目バー要素の端点に最も近い距離にある母材の稜線を検索し、稜線間距離の情報を取得する工程と、前記スポット間距離、エッジ間距離を2倍した距離、稜線間距離を2倍した距離のうち、最も短い距離を有効幅Bに設定して破断解析を行うことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のスポット溶接部の破断解析方法。
(7)バー要素の端点を母材ごとに取得する工程と、取得したバー要素の中から一のバー要素に注目し、この注目バー要素の周囲にある他のバー要素を抽出する工程と、前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する工程と、前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する工程と、前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う工程と、を含む破断解析処理をコンピューターに実行させることを特徴とするスポット溶接部の破断解析コンピュータープログラム。
(8)バー要素の端点を母材ごとに取得する手段と、取得したバー要素の中から一のバー要素に注目し、この注目バー要素の周囲にある他のバー要素を抽出する手段と、前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する手段と、前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する手段と、前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う手段と、を備えたことを特徴とするスポット溶接部の破断解析装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バー要素の端点を母材ごとに取得し、注目バー要素の周囲にある他のバー要素の中に注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する。そして検索した結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合に、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定するアルゴリズムを採用したことによって、多数のスポット溶接部の中から、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部を、精度良く抽出することが可能となる。その結果、衝突シミュレーションにおける解析精度が向上する。
【0013】
さらに、本発明によれば、母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部が抽出されると、スポット間距離、エッジ間距離、稜線間距離の情報を取得し、スポット間距離、エッジ間距離の2倍、稜線間距離の2倍のうち、最も短い距離を有効幅Bに設定して破断解析を行うことにより、より精度の高い破断解析を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】スポット溶接部の破断解析のモデルを模式的に示した図である。
【図2】スポット溶接部の破断解析の異なる形態のモデルを示した図である。
【図3】解析対象物の一例として、モデル化された車体を示す。
【図4】モデル化された解析対象物の母材のデータベースを示す。
【図5】モデル化された解析対象物のシェル要素のデータベースを示す。
【図6】モデル化された解析対象物の節点・端点のデータベースを示す。
【図7】モデル化された解析対象物のバー要素のデータベースを示す。
【図8】モデル化された解析対象物(一部)の模式図を示す。
【図9】本発明の好ましい実施形態に従う3枚重ねの溶接部を抽出する手順を示すフローチャートである。
【図10】スポット溶接の有効幅Bになる得る3つの要素について説明した図である。
【図11】本発明の好ましい実施形態に従う有効幅Bの設定手順を示すフローチャートである。
【図12】上記破断解析を実行可能なコンピューターシステムのブロック図である。
【図13】本発明の効果を確認するために行った実施例の解析モデル・条件を示す。
【図14】上記実施例の解析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態に従うスポット溶接部の破断解析方法について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、以下に説明する実施形態によって本発明の技術的範囲は何ら限定解釈されることはない。
【0016】
(3枚重ねのスポット溶接部の抽出手順)
まず、スポット溶接部の破断解析モデルについて説明する。破断解析は、通常、有限要素法を用いてコンピューター上で行われる。そのため、スポット溶接部は、バー要素(ビーム要素と称されることもある)、シェル要素、ソリッド要素等を用いてモデル化され、ベクトル状態量として要素に負荷される荷重やモーメントの値を取得して破断解析を行う。
【0017】
例えば母材として鋼材Aと鋼材Bの2枚の板材を重ねて溶接したスポット溶接部の場合、図1に模式的に示すように、鋼材Aと鋼材Bの接続部位がバー要素aと端点A,Bで構成されているとしてモデル化する。一方、鋼材Aと鋼材Bは、シェル要素によってモデル化する。そして破断解析を実行する際には、コンピューターを用いてモデル化されたバー要素aと端点A,Bに働く応力やせん断力などを演算し、破断基準値を超えるか否かを判定する。そのための必要情報として、上述の改善された破断解析方法(特願2010−088271)では、スポット溶接される鋼板それぞれの板厚t、引張強さTS、伸びEl、化学成分、溶接部のナゲット径d、隣接する溶接部、エッジ又は稜線との距離で決まる有効幅B、断面高さHをコンピューターに入力している。
【0018】
一方、鋼材A、鋼材B及び鋼材Cの3枚の板材を重ねて溶接したスポット溶接部の場合、鋼材Aと鋼材B、鋼材Bと鋼材Cを、2枚重ねのときと同様にバー要素と端点でモデル化する。その結果、図1に模式的に示すように、鋼材Aと鋼材Bを接続するバー要素aと、鋼材Bと鋼材Cを接続するバー要素bを有し、鋼材B上にある端点Bをバー要素aとバー要素bが共有した構成にモデル化される。しかし、上述の改善された破断解析方法では、この3枚重ねのモデルをそのまま解析することができないため、見掛け上、2枚重ねのモデルに調整して解析を行う。具体的には、鋼材Aと鋼材Bを接続するバー要素aに注目した場合、鋼材Bと鋼材Cを1つの要素とみなし、鋼材Aの板厚の値と、鋼材Bと鋼材Cの板厚を足した値をそれぞれ入力する。一方、鋼材Cと鋼材Bを接続するバー要素bに注目した場合には、鋼材Aと鋼材Bを1つの要素とみなし、鋼材Cの板厚の値と、鋼材Aと鋼材Bの板厚を足した値をそれぞれ入力する。係る調整が必要なため、解析対象物に多数存在するスポット溶接部の中から、3枚重ねの溶接部をコンピューター上で精度良く抽出するためのアルゴリズムを構築する必要がある。
【0019】
但し、3枚重ね及び2枚重ねのスポット溶接部をコンピューターでモデル化した場合、一例として、図2に示されるような形態になる。モデル(a)は、3枚重ねのスポット溶接に正確にモデル化された例であるが、モデル(c)は、バー要素aの鋼材B上の端点の座標と、バー要素bの鋼材B上の端点の座標が一致していないことに因り、実際には3枚重ねの溶接であるにも関わらず、異なる2枚重ねの溶接のようにモデル化された例である。3枚重ねの溶接は、モデリングするソフト上或いは人為上の理由により、このような形態にモデル化されることがある。一方、モデル(b)は、3枚重ねのスポット溶接と、2枚重ねの溶接が隣接している形態のモデルである。これらの中から、モデル(a)、モデル(b)、モデル(c)の3枚重ねのスポット溶接部を精度良く抽出する必要があるが、モデル(b)と(c)については2枚重ねであると誤認する場合がある。本実施形態では、後述する図8に示すフローチャートに従って3枚重ねのスポット溶接部を抽出するが、その際、モデル(a)のみならずモデル(b)とモデル(c)の抽出漏れがないようにしている。
【0020】
また、モデル(d)は、2枚重ねのスポット溶接が正確にモデル化された例である。モデル(e)は、モデル(c)の形態に似ているが、中間の鋼材が2枚有り、バー要素aとバー要素bが別々の鋼材を2枚重ね溶接している形態のモデルである。モデル(f)は、2つの隣接するバー要素a,dが共通する鋼材を2枚重ね溶接している形態のモデルである。モデル(e)と(f)は、2枚重ねであるにも関わらず、3枚重ねであると誤認する場合がある形態である。そこで、本実施形態では、後述する図8に示すフローチャートに従って、モデル(e),(f)のような2枚重ねのモデルを、3枚重ね溶接と誤認しないようにしている。
【0021】
例えば解析対象物が自動車の車体の場合、例えば図3に模式的に示すように、設計CADにおいて車体がシェル要素にモデル化され、モデル化された各シェル要素の情報がメモリ等の記憶部に格納されている。シェル要素の情報には、各シェルが属する母材の識別番号(母材番号)、及び、各シェルの節点の座標(x,y,z)が含まれる。また、各スポット溶接部の情報として、モデル化された各バー要素の情報がメモリ等の記憶部に格納されている。バー要素の情報には、バー要素が属する母材の識別番号(母材番号)、及び、各バー要素に付された識別番号(要素番号)に対応付けた端点の座標(x,y,z)、バー要素の代表点が含まれる。
【0022】
図4〜図7は、モデル化された各要素情報を格納するデータベースの一例を示す。さらに、モデル化された対象物(一部)の模式図を図8に示す。
図4は、母材のデータベースである。このデータベースには、各母材に割り付けた識別番号(母材番号)、母材の断面情報番号の情報が含まれる。更に、各断面情報番号に対応つけて断面情報のデータベースが形成されている。断面情報には、母材の板厚tが含まれる。なお、本実施形態では特に使用しないが、板厚t以外の情報として、ELFORM:要素タイプ、SHRF:せん断面積係数、NIP:断面内板厚方向積分点数、PROPT:プリント出力オプション、QR/IRID:要素積分方法、ICOMP:材料軸角度定義フラグ、SETYP:2次元ソリッド要素タイプ、NLOC:3次元シェル要素参照面位置、MAREA:非構造部の単位面積あたりの質量、IDOF:板厚フィールドの連続/不連続フラグ、EDGSET:節点セットの情報も、このデータベースに格納することができる。
【0023】
図5は、シェル要素のデータベースである。このデータベースには、各シェル要素に割り付けた識別番号(要素番号)、各シェル要素が属する母材番号、各シェル要素の節点の識別番号(節点番号)の情報が含まれる。図5は、母材を四角形のメッシュにしたシェル要素のデータベースの例であり、従って、一つのシェル要素が4つの節点(n1〜n4)を有している。母材を三角形のメッシュにした場合には、一つのシェル要素が3つの節点(n1〜n3)を有することになる。節点(n1〜n4)の座標(x,y,z)の情報は、図6に示すように、節点番号に対応付けて、節点・端点のデータベースに格納されている。
【0024】
図7は、バー要素のデータベースである。このデータベースには、各バー要素に割り付けた識別番号(要素番号)、各バー要素が属する母材番号、各バー要素の両端点(n1,n2)の識別番号(端点番号)の情報が含まれる。両端点(n1,n2)の座標(x,y,z)の情報は、図6に示すように、端点番号に対応付けて節点・端点のデータベースに格納されている。バー要素のデータベースには、さらに代表点の情報が含まれている。バー要素の代表点は、例えばバー要素の長さ方向の中央点であり、両端点の座標(x,y,z)の情報から演算により算出される座標とすることができる。図7では、バー要素の識別番号(要素番号)に対応付けた代表点の識別番号(代表点番号)を格納しており、代表点番号に対応する座標(x,y,z)の情報は、節点・端点のデータベースのような別のデータベース(不図示)に格納する。
【0025】
続いて、図9のフローチャートを参照しながら、3枚重ね溶接を抽出する手順について説明する。まず、図9のステップS100に示すように、解析対象物に存在するバー要素の端点の情報を母材毎に取得する。前述のデータベースの例では、バー要素のデータベース(図7)から共通する母材番号を有するすべての端点番号を抽出する。
【0026】
次に、図9のステップS101に示すように、取得したバー要素の中から一のバー要素に注目し、この注目バー要素の周囲にある他のバー要素を抽出する。周囲にあるバー要素の抽出は、例えばデータベースに格納されているバー要素の代表点や端点の座標に基づいて行う。例えば図2のモデル(a),(c)の場合には、バー要素aに注目して、その周囲にある他のバー要素を検索すると、バー要素bが抽出される。モデル(b)の場合にはバー要素bとバー要素cが抽出される。また、モデル(e),(f)の場合には、バー要素dが抽出されるが、モデル(d)については他のバー要素は抽出されない。
【0027】
次に、図9のステップS102に示すように、抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する。同一の端点を共有しているか否かの判定は、例えば端点番号を比較することによって行う。異なる要素番号のバー要素が、同じ端点番号の端点を有する場合には、これらのバー要素は同一の端点を共有する。図2のモデル(a),(b)の場合、バー要素aとバー要素bが鋼材B上で端点を共有しているので、該当するバー要素が存在する。一方、他のモデル(c)〜(f)には該当するバー要素が存在しない。
【0028】
そして当該ステップにおいて、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合には、これらバー要素に対応するスポット溶接が、母材を3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する。すなわち、当該ステップにおいて、解析対象物の多数のスポット溶接部の中から、図2のモデル(a)や(b)の形態を有する3枚重ねのスポット溶接部を抽出することができる。
【0029】
次に、図9のステップS103に示すように、ステップS102で抽出した他のバー要素の中に、注目バー要素との距離(要素間距離)が母材の板厚以下のものがあるか否かを判定する。要素間距離の判定は、例えば各バー要素に割り付けられている代表点同士の距離と、板厚とを比較することによって行う。代表点の情報は、バー要素のデータベースから読み出し、板厚の情報は、母材情報のデータベースから読み出す。このステップにおいて、板厚以下の距離にあるバー要素が存在しなかった場合、3枚重ねのスポット溶接ではないと判定する。そして、注目するバー要素を別のバー要素を変更し、変更後の注目バー要素に対してステップS101からの処理を再び行う。このステップを通じて、図2のモデル(c),(e)、(f)以外の形態を、抽出対象から除外することができる。なお、板厚以下であるか否かの判定に代えて、ナゲット径以下であるか否かの判定とすることもできる。
【0030】
次に、図9のステップS104に示すように、ステップS103において要素間距離が板厚以下であると判定されたバー要素が複数ある場合には、その中から要素間距離が最も短いバー要素を検索し、該当するバー要素を対象バー要素として選定する。勿論、要素間距離が板厚以下であると判定されたバー要素が一つの場合は、そのバー要素が対象バー要素に選定される。
【0031】
次に、図9のステップS105に示すように、ステップS104において選定された対象バー要素が、注目バー要素と同じ母材を溶接しているか否かを判定する。同じ母材を溶接しているか否かの判定は、例えば対象バー要素と注目バー要素が属する母材番号を比較することによって判定する。そして、注目バー要素と対象バー要素が異なる母材を溶接していた場合には、当該ステップにおいて、注目バー要素が2枚重ねのスポット溶接部であると判定する。すなわち、図2のモデル(e)のような形態を、3枚重ねであると誤認することを防止できる。
【0032】
次に、図9のステップS106に示すように、ステップS105において同じ母材を溶接していると判定された対象バー要素の両端点と、注目バー要素の両端点とが共有であるか否かを判定する。対象バー要素と注目バー要素が両端点を共有しているか否かの判定は、例えば端点番号を比較することによって行う。対象バー要素と注目バー要素が両端点を共有していた場合、注目バー要素が2枚重ねのスポット溶接部であると判定する。すなわち、図2のモデル(e)のような、2つのバー要素が近接している形態を、3枚重ねであると誤認することを防止できる。一方、対象バー要素と注目バー要素が両端点を共有していなかった場合、注目バー要素と対象バー要素による3枚重ねのスポット溶接部であると判定する。すなわち、図2のモデル(c)のような形態を、2枚重ねであると誤認することを防止できる。
【0033】
上述のステップS100〜S106を通じて3枚重ねのスポット溶接部が抽出されると、前述の通り、見掛け上、2枚重ねのモデルに調整して破断解析を行う。解析破断は、例えば上述の改善された破断解析方法に従い、スポット溶接される鋼板それぞれの板厚t、引張強さTS、伸びEl、化学成分、溶接部のナゲット径d、隣接する溶接部、エッジ又は稜線との距離で決まる有効幅B、断面高さHに基づいて、荷重型破断、モーメント型破断、ナゲット内破断のそれぞれの破断モードの破断限界を求め、スポット溶接部の状態量が前記いずれかの破断モードの破断限界に達したときに該破断モードで破断したと評価する。その際、有効幅Bを適切に設定することによって解析精度を向上させることが好ましい。以下、有効幅Bについて説明する。
【0034】
スポット溶接の有効幅Bとなり得る要素としては、図10(a)〜(c)の3つがある。第1に、同一の母材上に複数のスポット溶接部が存在する場合には、図10(a)に模式的に示すように、注目しているスポット溶接部に最も近いスポット溶接部までの距離(スポット間距離)L1が有効幅Bの候補となり得る。シェル要素にモデル化した場合は、同一シェル要素上に存在する最も近いバー要素までの距離が、スポット間距離L1となる。
【0035】
第2に、図10(b)に模式的に示すように、注目しているスポット溶接部によって溶接された部品(鋼材AとBの溶接部品)の最も近いエッジまでの距離(エッジ間距離)L2を2倍にした値(=L2×2)が、有効幅Bの候補となり得る。スポット溶接部から最短のエッジ間距離L2を2倍にすることにより、スポット溶接部が部品上の偏った位置にあった場合にも、有効幅Bを適切な値に設定することができる。なお、エッジとは、1つのシェル要素だけに属した2つの節点で構成される線分を意味する。
【0036】
第3に、図10(c)に模式的に示すように、注目しているスポット溶接部と、このスポット溶接部が溶接している部品上で最も近い稜線までの距離(稜線間距離)L3を2倍にした値(=L3×2)が、有効幅Bの候補となり得る。ここでも、スポット溶接部から稜線間距離L3を2倍にすることにより、スポット溶接部が部品上の偏った位置にあった場合にも、有効幅Bを適切な値に設定することができる。なお、ここでいう稜線とは、2つのシェル要素に共通で、且つシェルの法線ベクトル同士のなす角θが閾値(10度)以上ある辺(2つの節点で構成される線分)を意味する。
【0037】
本実施形態に従う破断解析では、有効幅Bとなり得る上述の3つ候補値を抽出し、それらの候補の一つを有効幅Bに決定する。その手順について、図11のフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
(有効幅Bの設定手順)
まず、図11のステップS200に示すように、注目シェル要素の線分について、隣接するシェル要素が存在するかを検索する。そして、図11のステップS201において隣接するシェル要素の存在の有無を判定する。隣接するシェル要素が存在しなかった場合、ステップS202において、この注目シェル要素の線分を母材のエッジとしてコンピューターのデータベース(DB)に格納する。
【0039】
前述の図4〜図7のデータベースの例では、シェル要素のデータベースから情報を読み出し、注目したシェル要素が有する4つの節点番号のうち、節点番号が2つ同じシェル要素が有るか否かを判定する。節点番号が2つ同じシェル要素が有った場合には、隣接するシェル要素が存在すると判定する。節点番号が2つ同じシェル要素が見つからない場合は、隣接するシェル要素は存在しないと判定する。また節点番号が1つだけ同じ場合、両者は対角位置にあるので隣接するシェル要素は存在しないと判定する。
【0040】
一方、ステップS201の判定において隣接するシェル要素が存在していた場合には、図11のステップS203に示すように、注目シェル要素と隣接シェル要素の法線ベクトルが成す角度θを算出し、さらにステップS204において角度θが閾値(10度)以上であるか否かを判定する。判定の結果が閾値(10度)以上であった場合にのみ、ステップS205に示すように、注目シェル要素と隣接シェル要素をつないでいる線分を母材の稜線(正確には母材の稜線の一部)としてデータベース(DB)に格納する。なお、閾値は10度が好ましいが、必ずしも10度でなくともよく、10度〜15度の範囲内で任意に設定することができる。10度未満の場合、母材の曲面を稜線と誤認する場合があり、抽出の精度が低下する場合がある。一方、15度を超えると稜線の抽出漏れがある場合がある。
【0041】
上述のステップS200〜S205までの処理は、解析対象物の全てのシェルについて行い、図11のステップS206において全てのシェルについての処理が完了したと判定した場合に、次のステップS207に進行する。
【0042】
続いて、図11のステップS207に示すように、注目バー要素について隣接バー要素を検索し、共通する母材上に隣接バー要素が存在している場合には、その中の最短距離にあるバー要素までの距離を、スポット間距離L1とする。バー要素間の距離は、例えば各バー要素の、共通する母材上にある端点同士の距離である。この距離は、母材の面上に沿った行程距離とするのが望ましいが、3次元空間での絶対距離としてもよい。当該ステップにおいては、一つのバー要素についてスポット間距離L11の情報を取得すると、次の注目バー要素についてスポット間距離L12の情報を取得し、これを繰り返すことによって全てのバー要素についてスポット間距離L11,L12,・・・,L1nの情報を取得する。
【0043】
次に、図11のステップS208に示すように、注目バー要素について、上述のデータベース(DB)に登録されているエッジまでの距離情報を読み出し、その中から最短のエッジまでの距離を、エッジ間距離L2とする。エッジ間距離L2は、例えば注目バー要素の端点とエッジと判定されたシェル要素の線分までの距離である。この距離は、シェル要素の面上に沿った行程距離とするのが望ましいが、3次元空間での絶対距離としてもよい。当該ステップにおいても、一つのバー要素についてエッジ間距離L21の情報を取得すると、次の注目バー要素についてエッジ間距離L22の情報を取得し、これを繰り返すことによって全てのバー要素についてエッジ間距離L21,L22,・・・,L2nの情報を取得する。
【0044】
次に、図11のステップS209に示すように、注目バー要素について、上述のデータベース(DB)に登録されている稜線までの距離情報を読み出し、その中から最短の稜線までの距離を、稜線間距離L3とする。稜線間距離L3は、例えば注目バー要素の端点と稜線と判定されたシェル要素の線分までの距離である。この距離は、シェル要素の面上に沿った行程距離とするのが望ましいが、3次元空間での絶対距離としてもよい。当該ステップにおいても、一つのバー要素について稜線間距離L31の情報を取得すると、次の注目バー要素について稜線間距離L32の情報を取得し、これを繰り返すことによって全てのバー要素について稜線間距離L31,L32,・・・,L3nの情報を取得する。
【0045】
次に、図11のステップS210に示すように、各バー要素について、ステップS207にて取得したスポット間距離L1の値と、ステップS208にて取得したエッジ間距離L2を2倍した値と、ステップS209にて取得した稜線間距離L3を2倍した値とを比較し、その中で最も短い値(距離)を選択する。そして、この選択した距離を、当該バー要素でモデル化されたスポット溶接部の有効幅Bに設定する。なお、スポット間距離L1の値、エッジ間距離L2を2倍した値、稜線間距離L3を2倍した値の全部又は2つが同じ値であっても、最も小さい値であればその値を有効幅Bに設定すればよい。
【0046】
続いて、破断解析の手順について説明する。以下の説明は、本願の出願人によって改善された破断解析方法(特願2010−088271)を一例に挙げているが、必ずしもこの破断解析方法に限定はされない。破断解析は、準備設定作業としてコンピューターに入力情報を読み込ませる。この入力情報には、図3の手順に従ってコンピューターが抽出した3枚重ねの溶接部の情報と、図11の手順に従ってコンピューターが設定した有効幅Bの情報が含まれる。
【0047】
鋼板A,Bをスポット溶接する場合の入力項目を表1に示す。破断モードによって判定に用いられる入力項目は異なるが、ここに挙げたすべての入力項目を用いることで、すべての破断モードに対する評価を行うことができるため、最も早く限界値に達した破断モードを知ることが可能となる。
【0048】
【表1】
次に、荷重型破断、モーメント型破断、ナゲット内破断のそれぞれの破断モードに応じて表1の○印に示す入力項目を使用して破断限界(クライテリア)を算出する。なお、それぞれの破断モードにおける破断限界(クライテリア)の算定方法は、特に限定されないが、例えば下記の方法を用いることが好ましい。
【0049】
まず、荷重型破断の場合は、スポット溶接部を有する試験片のせん断引張試験又は十字形引張試験を行い、ナゲット径d(mm)と前記試験片の幅W(mm)との比d/Wと、(1)式による応力集中係数αの関係を予め求め、任意の引張強さを有する材料を対象として(2)式によりせん断引張試験によるスポット溶接部の破断限界荷重Fs(N)を算定する方法が好ましい。
【0050】
α=TS・W・t/F ・・・(1)
ここで、TS:引張強さ(MPa)、t:試験片の厚さ(mm)、F:破断限界張力(N)
Fs=TS・W・t/α ・・・(2)
また、モーメント型破断の場合は、スポット溶接部を有するフランジ引張試験を行い、スポット溶接部の端部に加えた曲げモーメントM(N・m)と、試験材の板厚、板幅、強度特性から理論的に求まる全塑性モーメントMp(N・m)から、(3)式によるモーメント効率γを予め求め、このモーメント効率γと、任意の板厚、板幅、強度特性を有する材料に対する全塑性モーメントMp´から(4)式によるフランジ引張試験によるスポット溶接部の破断限界モーメントMlim(N・m)を算定する方法が好ましい。
【0051】
γ=Mp/M・・・(3)
Mlim=Mp´/γ ・・・(4)
また、ナゲット内破断の場合は、例えば、下記(5)式により、スポット溶接部の破断限界荷重Fs(N)を算定する方法が好ましい。
【0052】
Fs=e×Π(d/2)2×(f×Ceq+g)・・・ (5)
ここで、d:ナゲット径(mm)、Ceq:ナゲット部炭素当量の厚み方向の重み付き平均、e,f,g:係数
そして、各時刻ごとにスポット溶接要素の荷重・モーメント出力に基づくモードごとの状態変数を計算する。
【0053】
次に、破断モードごとに前述の限界値と状態変数を比較する。そして、いずれかのモードの状態変数が限界値に達している場合、以後、破断発生済みと判定し、その後の溶接要素の相対変位(ひずみ)に応じて許容荷重値を低下させる。全プロセスの力学計算終了後、破断詳細情報を出力する。
【0054】
上述の実施形態によれば、バー要素の端点を母材ごとに取得し、注目バー要素の周囲にある他のバー要素の中に注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する。そして検索した結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合に、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定するアルゴリズムを採用したことによって、多数のスポット溶接部の中から、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部を、精度良く抽出することが可能となる。図9及び図11のアルゴリズムを遂行するプログラムを構築し、実際に3枚重ね溶接の抽出及び有効幅Bの設定を行ったところ、スポット溶接部の総数が5000点あるモデルにおいても、数分で設定作業が完了したことを確認している。従来の人手による作業では1点あたり10分要していたので、スポット溶接部の総数が5000点あるモデルにおいては、のべ35日間を要し、実質的に不可能である。
【0055】
さらに、上述の実施形態によれば、母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部が抽出されると、スポット間距離、エッジ間距離×2、稜線間距離×2の情報を取得し、そのうち最も距離の短いものを有効幅Bに設定して破断解析を行うことにより、より精度の高い破断解析を行うことが可能である。
【0056】
最後に、上述の破断解析を実行可能なコンピューターシステムの一例について、図12のブロック図を参照しながら説明する。同図において、1200はコンピューターPCである。PC1200は、CPU1201を備え、ROM1202又はハードディスク(HD)1211に記憶された、或いはフレキシブルディスクドライブ(FD)1212により供給されるデバイス制御ソフトウェアを実行し、システムバス1204に接続される各デバイスを総括的に制御する。前記PC1200のCPU1201、ROM1202又はハードディスク(HD)1211に記憶されたプログラムにより、本実施形態の処理を行う各機能手段が構成される。
【0057】
1203はRAMで、CPU1201の主メモリ、ワークエリア等として機能する。1205はキーボードコントローラ(KBC)であり、キーボード(KB)1209から入力される信号をシステム本体内に入力する制御を行う。1206は表示コントローラ(CRTC)であり、表示装置(CRT)1210上の表示制御を行う。1207はディスクコントローラ(DKC)で、ブートプログラム(起動プログラム:パソコンのハードやソフトの実行(動作)を開始するプログラム)、複数のアプリケーション、編集ファイル、ユーザファイルそしてネットワーク管理プログラム等を記憶するハードディスク(HD)1211、及びフレキシブルディスク(FD)1212とのアクセスを制御する。
【0058】
1208はネットワークインターフェースカード(NIC)で、LAN1220を介して、ネットワークプリンタ、他のネットワーク機器、或いは他のPCと双方向のデータのやり取りを行う。
【0059】
上述した実施形態の機能は、コンピューターがコンピュータープログラムを実行することによっても実現される。また、コンピュータープログラムをコンピューターに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体又はかかるプログラムを伝送するインターネット等の伝送媒体も本発明の実施形態として適用することができる。また、前記のプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。前記のコンピュータープログラム、記録媒体、伝送媒体及びコンピュータプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性メモリ、ROM等を用いることができる。
【実施例】
【0060】
続いて、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
本実施例では、図13に示すように、3枚重ね溶接によって形成された構造部材の破断解析を行った。詳しい解析モデル・条件については同図に示す。実施例1は、3枚重ね溶接を考慮し、さらに有効幅Bを自動算定して破断解析を行った。実施例2は、3枚重ね溶接を考慮したが、有効幅Bについては破断解析プログラムのデフォルト値(40mm)を用いた。比較例1は、3枚重ね溶接を考慮せず、さらに有効幅Bに破断解析プログラムのデフォルト値(40mm)を用いた。
【0061】
3枚重ね溶接の考慮は、図9のフローチャートに従う処理を実行可能なプログラムがインストールされたコンピューターを用いて3枚重ね溶接の抽出を行い、すべてのスポット溶接部の位置を破断解析プログラムに認識させることによって行った。さらに、認識されたスポット溶接部の破断解析を実行する際に、見掛け上、2枚重ねの溶接となるように板厚を調整した。すなわち、3枚の鋼材(A,B,C)の鋼材Aと鋼材Bの接続部分の破断解析は、鋼材Aの板厚の値と、鋼材BとCの板厚を足した値で実行し、鋼材Cと鋼材Bの接続部分の破断解析は、鋼材Cの板厚の値と、鋼材AとBの板厚を足した値で実行した。
有効幅Bの自動算定は、図11のフローチャートに従う処理を実行可能なプログラムがインストールされたコンピューターを用いて、スポット間距離、エッジ間距離×2、稜線間距離×2の情報を取得し、そのうち最も短い距離をスポット溶接の有効幅Bに設定するようにした。
【0062】
図14は、実施例1,2及び比較例1の破断解析の結果を示す。なお、図14は、破断個所を確認し易いように、図13(a)から図13(b)への変形が20%進行したときの状態を示している。図14(a)に示される通り、3枚重ねを考慮し、さらに有効幅Bを自動算定して破断解析を行った実施例1は、10点在るスポット溶接部のうち6点で破断が発生している。一方、3枚重ね溶接については考慮したが有効幅Bにデフォルト値を用いた実施例2は、図14(b)に示される通り、実施例1よりも1点少ない5点で破断する結果となっている。これに対し、3枚重ね溶接を考慮せず、有効幅Bにデフォルト値を用いた比較例1の場合は、実際には6点で破断するのに3点で破断する結果となっており、誤差が大きい。
【0063】
以上の結果によれば、図9に示すフローチャートに従って3枚重ね溶接を考慮し、さらに図11に示すフローチャートに従って有効幅Bを自動算定すれば、解析に要する作業時間を大幅に短縮できるのに加えて、衝突シミュレーションにおける解析精度を向上できる効果がある。この効果は、解析対象物の溶接部の数が数百点、数千点に増えることによって、より顕在化する。
【符号の説明】
【0064】
1200 コンピューターPC
1201 CPU
1202 ROM
1203 RAM
1209 キーボード(KB)
1210 表示装置(CRT)
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突シミュレーションなどでスポット溶接部の破断を解析する方法、破断解析コンピュータープログラム、破断解析装置に関し、特に、自動車の車体といったような多数のスポット溶接部を有する解析対象物の破断を解析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車業界では、衝突時の乗員への傷害を低減しうる車体構造とするために、構造部材により衝撃エネルギーを吸収させることを検討している。自動車のフルラップ衝突やオフセット衝突での衝撃エネルギーを吸収させる主要な構造部材は、フロントサイドメンバーである。フロントサイドメンバーは、プレス成形等で部材成形後、スポット溶接により部材を閉断面化している。通常、このフロントサイドメンバーを座屈させることで、衝撃エネルギーを吸収させるようにしている。衝撃エネルギーの吸収を向上させるためには、座屈形態を安定化させ、途中で折れ曲りや破断をさせないことが重要である。
【0003】
構造部材の座屈形態を安定化させるためには、スポット溶接間隔,ナゲット径,溶接条件を最適化する必要がある。そのため、これらスポット溶接間隔,ナゲット径,溶接条件からスポット溶接部の破断限界を推定し、座屈形態が安定化する最適条件を見出す方法が検討されている(例えば、特許文献1−3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−148053号公報
【特許文献2】特開2005−315854号公報
【特許文献3】特開2007−304005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1−3に開示されている破断解析方法では、スポット溶接部の性質や負荷状態に応じて、荷重型破断、モーメント型破断、ナゲット内破断のいずれの破断モードが発生するかを判別できないので、衝突シミュレーションにおける解析精度が必ずしも高いとは言えなかった。
【0006】
そのため、本願の出願人によって、荷重型破断、モーメント型破断、ナゲット内破断のいずれの破断モードが発生するかを判別可能な、改善された破断解析方法が検討されている(特願2010−088271)。この破断解析方法は、コンピューターを用い、スポット溶接される鋼板のそれぞれの板厚t、引張強さTS、伸びEl、化学成分、溶接部のナゲット径d、隣接する溶接部、エッジ又は稜線との距離で決まるスポット溶接の有効幅B、断面高さHに基づいて、荷重型破断、モーメント型破断、ナゲット内破断のそれぞれの破断モードの破断限界を求め、スポット溶接部の状態量が前記いずれかの破断モードの破断限界に達したときに該破断モードで破断したと評価する。
【0007】
上述の改善された破断解析方法は、衝突シミュレーションにおける解析精度が高いという長所がある反面、全てのスポット溶接部に対して鋼材それぞれの板厚t、有効幅B等の必要情報を入力しなければならず、準備設定に時間がかかるという問題点があった。自動車の車体には、通常、数千点にも及ぶスポット溶接部が存在するため、これら全てのスポット溶接部に対して必要情報を入力するには長時間を要する。
【0008】
特に、上述の改善された破断解析方法は、溶接する鋼材が2枚であることを前提する解析アルゴリズムが構築されているので、そのままでは3枚以上の鋼材を重ねて溶接したスポット溶接部の破断解析を精度良く行えない。すなわち、3枚重ねのモデルをそのまま解析することのできる実用化可能なソフトは、未だ具現化されていないのが実情である。そのため、車体のスポット溶接部の中から、3枚の鋼材を重ねて溶接したスポット溶接部を探し出し、解析前の準備設定の段階で、見掛け上、2枚重ねとなるように入力情報を調整していた。例えば、鋼材A,B,Cを3枚重ねて溶接したスポット溶接部において鋼材Aと鋼材Bの接続部分に注目したときには、鋼材Aの板厚の値と、鋼材BとCの板厚を足した値を入力することによって、見掛け上、2枚重ねの溶接となるようにしていた。係る準備設定の作業には、多大な労力が必要となる。
【0009】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたものであり、スポット溶接部の破断解析を行うにおいて、多数存在するスポット溶接部の中から、鋼材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部を精度良く抽出できる準備設定のアルゴリズムを備えたスポット溶接部の破断解析方法、破断解析コンピュータープログラム、破断解析装置を提供することにある。
【0010】
また本発明の他の目的は、抽出したスポット溶接部の有効幅Bを適切に設定して、より精度の高い破断解析を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)バー要素の端点を母材ごとに取得する工程と、取得したバー要素の中から一のバー要素に注目し、この注目バー要素の周囲にある他のバー要素を抽出する工程と、前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する工程と、前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する工程と、前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う工程と、を含むことを特徴とするスポット溶接部の破断解析方法。
(2)前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在しなかった場合において、注目バー要素の周囲にある他のバー要素のうち、要素間距離が最も短いものを対象バー要素に選定する工程と、さらに対象バー要素と注目スポットが同じ母材を溶接しているか否かを判定する工程と、前記判定の結果、同じ母材を溶接している場合には、注目バー要素の両端点と対象バー要素の両端点を比較し、注目バー要素と対象バー要素が両端点を共有しているか否かを判定する工程と、前記判定の結果、注目バー要素と対象バー要素が両端点を共有していない場合には、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する工程と、前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う工程と、を含むことを特徴とする前記(1)に記載のスポット溶接部の破断解析方法。
(3)前記選定した対象バー要素と注目バー要素が同じ母材を溶接しているか否か判定した結果、異なる母材を溶接している場合には、母材を2枚重ねて溶接したスポット溶接部が2組有ると判定する工程と、を含むことを特徴とする前記(2)に記載のスポット溶接部の破断解析方法。
(4)前記注目バー要素の両端点と対象バー要素の両端点を比較した結果、注目バー要素と対象バー要素が両端点を共有している場合には、2つのスポット溶接部で共通する2枚の母材を重ねて溶接していると判定する工程と、を含むことを特徴とする前記(2)に記載のスポット溶接部の破断解析方法。
(5)前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在しなかった場合において、前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素との距離が母材の板厚以下のものがあるか否かを判定する工程と、前記判定の結果、バー要素間の距離が母材の板厚以下であると判定したときには前記対象バー要素を選定する工程を実行し、板厚以上であると判定したときには別のバー要素を注目バー要素に変更する工程と、を含むことを特徴とする前記(2)〜(4)のいずれかに記載のスポット溶接部の破断解析方法。
(6)前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部の破断解析を行うにおいて、前記注目バー要素に最も近いバー要素までの距離を抽出して、スポット間距離の情報を取得する工程と、前記注目バー要素の端点に最も近い距離にある母材のエッジを検索し、エッジ間距離の情報を取得する工程と、前記注目バー要素の端点に最も近い距離にある母材の稜線を検索し、稜線間距離の情報を取得する工程と、前記スポット間距離、エッジ間距離を2倍した距離、稜線間距離を2倍した距離のうち、最も短い距離を有効幅Bに設定して破断解析を行うことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のスポット溶接部の破断解析方法。
(7)バー要素の端点を母材ごとに取得する工程と、取得したバー要素の中から一のバー要素に注目し、この注目バー要素の周囲にある他のバー要素を抽出する工程と、前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する工程と、前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する工程と、前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う工程と、を含む破断解析処理をコンピューターに実行させることを特徴とするスポット溶接部の破断解析コンピュータープログラム。
(8)バー要素の端点を母材ごとに取得する手段と、取得したバー要素の中から一のバー要素に注目し、この注目バー要素の周囲にある他のバー要素を抽出する手段と、前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する手段と、前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する手段と、前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う手段と、を備えたことを特徴とするスポット溶接部の破断解析装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バー要素の端点を母材ごとに取得し、注目バー要素の周囲にある他のバー要素の中に注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する。そして検索した結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合に、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定するアルゴリズムを採用したことによって、多数のスポット溶接部の中から、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部を、精度良く抽出することが可能となる。その結果、衝突シミュレーションにおける解析精度が向上する。
【0013】
さらに、本発明によれば、母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部が抽出されると、スポット間距離、エッジ間距離、稜線間距離の情報を取得し、スポット間距離、エッジ間距離の2倍、稜線間距離の2倍のうち、最も短い距離を有効幅Bに設定して破断解析を行うことにより、より精度の高い破断解析を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】スポット溶接部の破断解析のモデルを模式的に示した図である。
【図2】スポット溶接部の破断解析の異なる形態のモデルを示した図である。
【図3】解析対象物の一例として、モデル化された車体を示す。
【図4】モデル化された解析対象物の母材のデータベースを示す。
【図5】モデル化された解析対象物のシェル要素のデータベースを示す。
【図6】モデル化された解析対象物の節点・端点のデータベースを示す。
【図7】モデル化された解析対象物のバー要素のデータベースを示す。
【図8】モデル化された解析対象物(一部)の模式図を示す。
【図9】本発明の好ましい実施形態に従う3枚重ねの溶接部を抽出する手順を示すフローチャートである。
【図10】スポット溶接の有効幅Bになる得る3つの要素について説明した図である。
【図11】本発明の好ましい実施形態に従う有効幅Bの設定手順を示すフローチャートである。
【図12】上記破断解析を実行可能なコンピューターシステムのブロック図である。
【図13】本発明の効果を確認するために行った実施例の解析モデル・条件を示す。
【図14】上記実施例の解析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態に従うスポット溶接部の破断解析方法について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、以下に説明する実施形態によって本発明の技術的範囲は何ら限定解釈されることはない。
【0016】
(3枚重ねのスポット溶接部の抽出手順)
まず、スポット溶接部の破断解析モデルについて説明する。破断解析は、通常、有限要素法を用いてコンピューター上で行われる。そのため、スポット溶接部は、バー要素(ビーム要素と称されることもある)、シェル要素、ソリッド要素等を用いてモデル化され、ベクトル状態量として要素に負荷される荷重やモーメントの値を取得して破断解析を行う。
【0017】
例えば母材として鋼材Aと鋼材Bの2枚の板材を重ねて溶接したスポット溶接部の場合、図1に模式的に示すように、鋼材Aと鋼材Bの接続部位がバー要素aと端点A,Bで構成されているとしてモデル化する。一方、鋼材Aと鋼材Bは、シェル要素によってモデル化する。そして破断解析を実行する際には、コンピューターを用いてモデル化されたバー要素aと端点A,Bに働く応力やせん断力などを演算し、破断基準値を超えるか否かを判定する。そのための必要情報として、上述の改善された破断解析方法(特願2010−088271)では、スポット溶接される鋼板それぞれの板厚t、引張強さTS、伸びEl、化学成分、溶接部のナゲット径d、隣接する溶接部、エッジ又は稜線との距離で決まる有効幅B、断面高さHをコンピューターに入力している。
【0018】
一方、鋼材A、鋼材B及び鋼材Cの3枚の板材を重ねて溶接したスポット溶接部の場合、鋼材Aと鋼材B、鋼材Bと鋼材Cを、2枚重ねのときと同様にバー要素と端点でモデル化する。その結果、図1に模式的に示すように、鋼材Aと鋼材Bを接続するバー要素aと、鋼材Bと鋼材Cを接続するバー要素bを有し、鋼材B上にある端点Bをバー要素aとバー要素bが共有した構成にモデル化される。しかし、上述の改善された破断解析方法では、この3枚重ねのモデルをそのまま解析することができないため、見掛け上、2枚重ねのモデルに調整して解析を行う。具体的には、鋼材Aと鋼材Bを接続するバー要素aに注目した場合、鋼材Bと鋼材Cを1つの要素とみなし、鋼材Aの板厚の値と、鋼材Bと鋼材Cの板厚を足した値をそれぞれ入力する。一方、鋼材Cと鋼材Bを接続するバー要素bに注目した場合には、鋼材Aと鋼材Bを1つの要素とみなし、鋼材Cの板厚の値と、鋼材Aと鋼材Bの板厚を足した値をそれぞれ入力する。係る調整が必要なため、解析対象物に多数存在するスポット溶接部の中から、3枚重ねの溶接部をコンピューター上で精度良く抽出するためのアルゴリズムを構築する必要がある。
【0019】
但し、3枚重ね及び2枚重ねのスポット溶接部をコンピューターでモデル化した場合、一例として、図2に示されるような形態になる。モデル(a)は、3枚重ねのスポット溶接に正確にモデル化された例であるが、モデル(c)は、バー要素aの鋼材B上の端点の座標と、バー要素bの鋼材B上の端点の座標が一致していないことに因り、実際には3枚重ねの溶接であるにも関わらず、異なる2枚重ねの溶接のようにモデル化された例である。3枚重ねの溶接は、モデリングするソフト上或いは人為上の理由により、このような形態にモデル化されることがある。一方、モデル(b)は、3枚重ねのスポット溶接と、2枚重ねの溶接が隣接している形態のモデルである。これらの中から、モデル(a)、モデル(b)、モデル(c)の3枚重ねのスポット溶接部を精度良く抽出する必要があるが、モデル(b)と(c)については2枚重ねであると誤認する場合がある。本実施形態では、後述する図8に示すフローチャートに従って3枚重ねのスポット溶接部を抽出するが、その際、モデル(a)のみならずモデル(b)とモデル(c)の抽出漏れがないようにしている。
【0020】
また、モデル(d)は、2枚重ねのスポット溶接が正確にモデル化された例である。モデル(e)は、モデル(c)の形態に似ているが、中間の鋼材が2枚有り、バー要素aとバー要素bが別々の鋼材を2枚重ね溶接している形態のモデルである。モデル(f)は、2つの隣接するバー要素a,dが共通する鋼材を2枚重ね溶接している形態のモデルである。モデル(e)と(f)は、2枚重ねであるにも関わらず、3枚重ねであると誤認する場合がある形態である。そこで、本実施形態では、後述する図8に示すフローチャートに従って、モデル(e),(f)のような2枚重ねのモデルを、3枚重ね溶接と誤認しないようにしている。
【0021】
例えば解析対象物が自動車の車体の場合、例えば図3に模式的に示すように、設計CADにおいて車体がシェル要素にモデル化され、モデル化された各シェル要素の情報がメモリ等の記憶部に格納されている。シェル要素の情報には、各シェルが属する母材の識別番号(母材番号)、及び、各シェルの節点の座標(x,y,z)が含まれる。また、各スポット溶接部の情報として、モデル化された各バー要素の情報がメモリ等の記憶部に格納されている。バー要素の情報には、バー要素が属する母材の識別番号(母材番号)、及び、各バー要素に付された識別番号(要素番号)に対応付けた端点の座標(x,y,z)、バー要素の代表点が含まれる。
【0022】
図4〜図7は、モデル化された各要素情報を格納するデータベースの一例を示す。さらに、モデル化された対象物(一部)の模式図を図8に示す。
図4は、母材のデータベースである。このデータベースには、各母材に割り付けた識別番号(母材番号)、母材の断面情報番号の情報が含まれる。更に、各断面情報番号に対応つけて断面情報のデータベースが形成されている。断面情報には、母材の板厚tが含まれる。なお、本実施形態では特に使用しないが、板厚t以外の情報として、ELFORM:要素タイプ、SHRF:せん断面積係数、NIP:断面内板厚方向積分点数、PROPT:プリント出力オプション、QR/IRID:要素積分方法、ICOMP:材料軸角度定義フラグ、SETYP:2次元ソリッド要素タイプ、NLOC:3次元シェル要素参照面位置、MAREA:非構造部の単位面積あたりの質量、IDOF:板厚フィールドの連続/不連続フラグ、EDGSET:節点セットの情報も、このデータベースに格納することができる。
【0023】
図5は、シェル要素のデータベースである。このデータベースには、各シェル要素に割り付けた識別番号(要素番号)、各シェル要素が属する母材番号、各シェル要素の節点の識別番号(節点番号)の情報が含まれる。図5は、母材を四角形のメッシュにしたシェル要素のデータベースの例であり、従って、一つのシェル要素が4つの節点(n1〜n4)を有している。母材を三角形のメッシュにした場合には、一つのシェル要素が3つの節点(n1〜n3)を有することになる。節点(n1〜n4)の座標(x,y,z)の情報は、図6に示すように、節点番号に対応付けて、節点・端点のデータベースに格納されている。
【0024】
図7は、バー要素のデータベースである。このデータベースには、各バー要素に割り付けた識別番号(要素番号)、各バー要素が属する母材番号、各バー要素の両端点(n1,n2)の識別番号(端点番号)の情報が含まれる。両端点(n1,n2)の座標(x,y,z)の情報は、図6に示すように、端点番号に対応付けて節点・端点のデータベースに格納されている。バー要素のデータベースには、さらに代表点の情報が含まれている。バー要素の代表点は、例えばバー要素の長さ方向の中央点であり、両端点の座標(x,y,z)の情報から演算により算出される座標とすることができる。図7では、バー要素の識別番号(要素番号)に対応付けた代表点の識別番号(代表点番号)を格納しており、代表点番号に対応する座標(x,y,z)の情報は、節点・端点のデータベースのような別のデータベース(不図示)に格納する。
【0025】
続いて、図9のフローチャートを参照しながら、3枚重ね溶接を抽出する手順について説明する。まず、図9のステップS100に示すように、解析対象物に存在するバー要素の端点の情報を母材毎に取得する。前述のデータベースの例では、バー要素のデータベース(図7)から共通する母材番号を有するすべての端点番号を抽出する。
【0026】
次に、図9のステップS101に示すように、取得したバー要素の中から一のバー要素に注目し、この注目バー要素の周囲にある他のバー要素を抽出する。周囲にあるバー要素の抽出は、例えばデータベースに格納されているバー要素の代表点や端点の座標に基づいて行う。例えば図2のモデル(a),(c)の場合には、バー要素aに注目して、その周囲にある他のバー要素を検索すると、バー要素bが抽出される。モデル(b)の場合にはバー要素bとバー要素cが抽出される。また、モデル(e),(f)の場合には、バー要素dが抽出されるが、モデル(d)については他のバー要素は抽出されない。
【0027】
次に、図9のステップS102に示すように、抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する。同一の端点を共有しているか否かの判定は、例えば端点番号を比較することによって行う。異なる要素番号のバー要素が、同じ端点番号の端点を有する場合には、これらのバー要素は同一の端点を共有する。図2のモデル(a),(b)の場合、バー要素aとバー要素bが鋼材B上で端点を共有しているので、該当するバー要素が存在する。一方、他のモデル(c)〜(f)には該当するバー要素が存在しない。
【0028】
そして当該ステップにおいて、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合には、これらバー要素に対応するスポット溶接が、母材を3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する。すなわち、当該ステップにおいて、解析対象物の多数のスポット溶接部の中から、図2のモデル(a)や(b)の形態を有する3枚重ねのスポット溶接部を抽出することができる。
【0029】
次に、図9のステップS103に示すように、ステップS102で抽出した他のバー要素の中に、注目バー要素との距離(要素間距離)が母材の板厚以下のものがあるか否かを判定する。要素間距離の判定は、例えば各バー要素に割り付けられている代表点同士の距離と、板厚とを比較することによって行う。代表点の情報は、バー要素のデータベースから読み出し、板厚の情報は、母材情報のデータベースから読み出す。このステップにおいて、板厚以下の距離にあるバー要素が存在しなかった場合、3枚重ねのスポット溶接ではないと判定する。そして、注目するバー要素を別のバー要素を変更し、変更後の注目バー要素に対してステップS101からの処理を再び行う。このステップを通じて、図2のモデル(c),(e)、(f)以外の形態を、抽出対象から除外することができる。なお、板厚以下であるか否かの判定に代えて、ナゲット径以下であるか否かの判定とすることもできる。
【0030】
次に、図9のステップS104に示すように、ステップS103において要素間距離が板厚以下であると判定されたバー要素が複数ある場合には、その中から要素間距離が最も短いバー要素を検索し、該当するバー要素を対象バー要素として選定する。勿論、要素間距離が板厚以下であると判定されたバー要素が一つの場合は、そのバー要素が対象バー要素に選定される。
【0031】
次に、図9のステップS105に示すように、ステップS104において選定された対象バー要素が、注目バー要素と同じ母材を溶接しているか否かを判定する。同じ母材を溶接しているか否かの判定は、例えば対象バー要素と注目バー要素が属する母材番号を比較することによって判定する。そして、注目バー要素と対象バー要素が異なる母材を溶接していた場合には、当該ステップにおいて、注目バー要素が2枚重ねのスポット溶接部であると判定する。すなわち、図2のモデル(e)のような形態を、3枚重ねであると誤認することを防止できる。
【0032】
次に、図9のステップS106に示すように、ステップS105において同じ母材を溶接していると判定された対象バー要素の両端点と、注目バー要素の両端点とが共有であるか否かを判定する。対象バー要素と注目バー要素が両端点を共有しているか否かの判定は、例えば端点番号を比較することによって行う。対象バー要素と注目バー要素が両端点を共有していた場合、注目バー要素が2枚重ねのスポット溶接部であると判定する。すなわち、図2のモデル(e)のような、2つのバー要素が近接している形態を、3枚重ねであると誤認することを防止できる。一方、対象バー要素と注目バー要素が両端点を共有していなかった場合、注目バー要素と対象バー要素による3枚重ねのスポット溶接部であると判定する。すなわち、図2のモデル(c)のような形態を、2枚重ねであると誤認することを防止できる。
【0033】
上述のステップS100〜S106を通じて3枚重ねのスポット溶接部が抽出されると、前述の通り、見掛け上、2枚重ねのモデルに調整して破断解析を行う。解析破断は、例えば上述の改善された破断解析方法に従い、スポット溶接される鋼板それぞれの板厚t、引張強さTS、伸びEl、化学成分、溶接部のナゲット径d、隣接する溶接部、エッジ又は稜線との距離で決まる有効幅B、断面高さHに基づいて、荷重型破断、モーメント型破断、ナゲット内破断のそれぞれの破断モードの破断限界を求め、スポット溶接部の状態量が前記いずれかの破断モードの破断限界に達したときに該破断モードで破断したと評価する。その際、有効幅Bを適切に設定することによって解析精度を向上させることが好ましい。以下、有効幅Bについて説明する。
【0034】
スポット溶接の有効幅Bとなり得る要素としては、図10(a)〜(c)の3つがある。第1に、同一の母材上に複数のスポット溶接部が存在する場合には、図10(a)に模式的に示すように、注目しているスポット溶接部に最も近いスポット溶接部までの距離(スポット間距離)L1が有効幅Bの候補となり得る。シェル要素にモデル化した場合は、同一シェル要素上に存在する最も近いバー要素までの距離が、スポット間距離L1となる。
【0035】
第2に、図10(b)に模式的に示すように、注目しているスポット溶接部によって溶接された部品(鋼材AとBの溶接部品)の最も近いエッジまでの距離(エッジ間距離)L2を2倍にした値(=L2×2)が、有効幅Bの候補となり得る。スポット溶接部から最短のエッジ間距離L2を2倍にすることにより、スポット溶接部が部品上の偏った位置にあった場合にも、有効幅Bを適切な値に設定することができる。なお、エッジとは、1つのシェル要素だけに属した2つの節点で構成される線分を意味する。
【0036】
第3に、図10(c)に模式的に示すように、注目しているスポット溶接部と、このスポット溶接部が溶接している部品上で最も近い稜線までの距離(稜線間距離)L3を2倍にした値(=L3×2)が、有効幅Bの候補となり得る。ここでも、スポット溶接部から稜線間距離L3を2倍にすることにより、スポット溶接部が部品上の偏った位置にあった場合にも、有効幅Bを適切な値に設定することができる。なお、ここでいう稜線とは、2つのシェル要素に共通で、且つシェルの法線ベクトル同士のなす角θが閾値(10度)以上ある辺(2つの節点で構成される線分)を意味する。
【0037】
本実施形態に従う破断解析では、有効幅Bとなり得る上述の3つ候補値を抽出し、それらの候補の一つを有効幅Bに決定する。その手順について、図11のフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
(有効幅Bの設定手順)
まず、図11のステップS200に示すように、注目シェル要素の線分について、隣接するシェル要素が存在するかを検索する。そして、図11のステップS201において隣接するシェル要素の存在の有無を判定する。隣接するシェル要素が存在しなかった場合、ステップS202において、この注目シェル要素の線分を母材のエッジとしてコンピューターのデータベース(DB)に格納する。
【0039】
前述の図4〜図7のデータベースの例では、シェル要素のデータベースから情報を読み出し、注目したシェル要素が有する4つの節点番号のうち、節点番号が2つ同じシェル要素が有るか否かを判定する。節点番号が2つ同じシェル要素が有った場合には、隣接するシェル要素が存在すると判定する。節点番号が2つ同じシェル要素が見つからない場合は、隣接するシェル要素は存在しないと判定する。また節点番号が1つだけ同じ場合、両者は対角位置にあるので隣接するシェル要素は存在しないと判定する。
【0040】
一方、ステップS201の判定において隣接するシェル要素が存在していた場合には、図11のステップS203に示すように、注目シェル要素と隣接シェル要素の法線ベクトルが成す角度θを算出し、さらにステップS204において角度θが閾値(10度)以上であるか否かを判定する。判定の結果が閾値(10度)以上であった場合にのみ、ステップS205に示すように、注目シェル要素と隣接シェル要素をつないでいる線分を母材の稜線(正確には母材の稜線の一部)としてデータベース(DB)に格納する。なお、閾値は10度が好ましいが、必ずしも10度でなくともよく、10度〜15度の範囲内で任意に設定することができる。10度未満の場合、母材の曲面を稜線と誤認する場合があり、抽出の精度が低下する場合がある。一方、15度を超えると稜線の抽出漏れがある場合がある。
【0041】
上述のステップS200〜S205までの処理は、解析対象物の全てのシェルについて行い、図11のステップS206において全てのシェルについての処理が完了したと判定した場合に、次のステップS207に進行する。
【0042】
続いて、図11のステップS207に示すように、注目バー要素について隣接バー要素を検索し、共通する母材上に隣接バー要素が存在している場合には、その中の最短距離にあるバー要素までの距離を、スポット間距離L1とする。バー要素間の距離は、例えば各バー要素の、共通する母材上にある端点同士の距離である。この距離は、母材の面上に沿った行程距離とするのが望ましいが、3次元空間での絶対距離としてもよい。当該ステップにおいては、一つのバー要素についてスポット間距離L11の情報を取得すると、次の注目バー要素についてスポット間距離L12の情報を取得し、これを繰り返すことによって全てのバー要素についてスポット間距離L11,L12,・・・,L1nの情報を取得する。
【0043】
次に、図11のステップS208に示すように、注目バー要素について、上述のデータベース(DB)に登録されているエッジまでの距離情報を読み出し、その中から最短のエッジまでの距離を、エッジ間距離L2とする。エッジ間距離L2は、例えば注目バー要素の端点とエッジと判定されたシェル要素の線分までの距離である。この距離は、シェル要素の面上に沿った行程距離とするのが望ましいが、3次元空間での絶対距離としてもよい。当該ステップにおいても、一つのバー要素についてエッジ間距離L21の情報を取得すると、次の注目バー要素についてエッジ間距離L22の情報を取得し、これを繰り返すことによって全てのバー要素についてエッジ間距離L21,L22,・・・,L2nの情報を取得する。
【0044】
次に、図11のステップS209に示すように、注目バー要素について、上述のデータベース(DB)に登録されている稜線までの距離情報を読み出し、その中から最短の稜線までの距離を、稜線間距離L3とする。稜線間距離L3は、例えば注目バー要素の端点と稜線と判定されたシェル要素の線分までの距離である。この距離は、シェル要素の面上に沿った行程距離とするのが望ましいが、3次元空間での絶対距離としてもよい。当該ステップにおいても、一つのバー要素について稜線間距離L31の情報を取得すると、次の注目バー要素について稜線間距離L32の情報を取得し、これを繰り返すことによって全てのバー要素について稜線間距離L31,L32,・・・,L3nの情報を取得する。
【0045】
次に、図11のステップS210に示すように、各バー要素について、ステップS207にて取得したスポット間距離L1の値と、ステップS208にて取得したエッジ間距離L2を2倍した値と、ステップS209にて取得した稜線間距離L3を2倍した値とを比較し、その中で最も短い値(距離)を選択する。そして、この選択した距離を、当該バー要素でモデル化されたスポット溶接部の有効幅Bに設定する。なお、スポット間距離L1の値、エッジ間距離L2を2倍した値、稜線間距離L3を2倍した値の全部又は2つが同じ値であっても、最も小さい値であればその値を有効幅Bに設定すればよい。
【0046】
続いて、破断解析の手順について説明する。以下の説明は、本願の出願人によって改善された破断解析方法(特願2010−088271)を一例に挙げているが、必ずしもこの破断解析方法に限定はされない。破断解析は、準備設定作業としてコンピューターに入力情報を読み込ませる。この入力情報には、図3の手順に従ってコンピューターが抽出した3枚重ねの溶接部の情報と、図11の手順に従ってコンピューターが設定した有効幅Bの情報が含まれる。
【0047】
鋼板A,Bをスポット溶接する場合の入力項目を表1に示す。破断モードによって判定に用いられる入力項目は異なるが、ここに挙げたすべての入力項目を用いることで、すべての破断モードに対する評価を行うことができるため、最も早く限界値に達した破断モードを知ることが可能となる。
【0048】
【表1】
次に、荷重型破断、モーメント型破断、ナゲット内破断のそれぞれの破断モードに応じて表1の○印に示す入力項目を使用して破断限界(クライテリア)を算出する。なお、それぞれの破断モードにおける破断限界(クライテリア)の算定方法は、特に限定されないが、例えば下記の方法を用いることが好ましい。
【0049】
まず、荷重型破断の場合は、スポット溶接部を有する試験片のせん断引張試験又は十字形引張試験を行い、ナゲット径d(mm)と前記試験片の幅W(mm)との比d/Wと、(1)式による応力集中係数αの関係を予め求め、任意の引張強さを有する材料を対象として(2)式によりせん断引張試験によるスポット溶接部の破断限界荷重Fs(N)を算定する方法が好ましい。
【0050】
α=TS・W・t/F ・・・(1)
ここで、TS:引張強さ(MPa)、t:試験片の厚さ(mm)、F:破断限界張力(N)
Fs=TS・W・t/α ・・・(2)
また、モーメント型破断の場合は、スポット溶接部を有するフランジ引張試験を行い、スポット溶接部の端部に加えた曲げモーメントM(N・m)と、試験材の板厚、板幅、強度特性から理論的に求まる全塑性モーメントMp(N・m)から、(3)式によるモーメント効率γを予め求め、このモーメント効率γと、任意の板厚、板幅、強度特性を有する材料に対する全塑性モーメントMp´から(4)式によるフランジ引張試験によるスポット溶接部の破断限界モーメントMlim(N・m)を算定する方法が好ましい。
【0051】
γ=Mp/M・・・(3)
Mlim=Mp´/γ ・・・(4)
また、ナゲット内破断の場合は、例えば、下記(5)式により、スポット溶接部の破断限界荷重Fs(N)を算定する方法が好ましい。
【0052】
Fs=e×Π(d/2)2×(f×Ceq+g)・・・ (5)
ここで、d:ナゲット径(mm)、Ceq:ナゲット部炭素当量の厚み方向の重み付き平均、e,f,g:係数
そして、各時刻ごとにスポット溶接要素の荷重・モーメント出力に基づくモードごとの状態変数を計算する。
【0053】
次に、破断モードごとに前述の限界値と状態変数を比較する。そして、いずれかのモードの状態変数が限界値に達している場合、以後、破断発生済みと判定し、その後の溶接要素の相対変位(ひずみ)に応じて許容荷重値を低下させる。全プロセスの力学計算終了後、破断詳細情報を出力する。
【0054】
上述の実施形態によれば、バー要素の端点を母材ごとに取得し、注目バー要素の周囲にある他のバー要素の中に注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する。そして検索した結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合に、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定するアルゴリズムを採用したことによって、多数のスポット溶接部の中から、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部を、精度良く抽出することが可能となる。図9及び図11のアルゴリズムを遂行するプログラムを構築し、実際に3枚重ね溶接の抽出及び有効幅Bの設定を行ったところ、スポット溶接部の総数が5000点あるモデルにおいても、数分で設定作業が完了したことを確認している。従来の人手による作業では1点あたり10分要していたので、スポット溶接部の総数が5000点あるモデルにおいては、のべ35日間を要し、実質的に不可能である。
【0055】
さらに、上述の実施形態によれば、母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部が抽出されると、スポット間距離、エッジ間距離×2、稜線間距離×2の情報を取得し、そのうち最も距離の短いものを有効幅Bに設定して破断解析を行うことにより、より精度の高い破断解析を行うことが可能である。
【0056】
最後に、上述の破断解析を実行可能なコンピューターシステムの一例について、図12のブロック図を参照しながら説明する。同図において、1200はコンピューターPCである。PC1200は、CPU1201を備え、ROM1202又はハードディスク(HD)1211に記憶された、或いはフレキシブルディスクドライブ(FD)1212により供給されるデバイス制御ソフトウェアを実行し、システムバス1204に接続される各デバイスを総括的に制御する。前記PC1200のCPU1201、ROM1202又はハードディスク(HD)1211に記憶されたプログラムにより、本実施形態の処理を行う各機能手段が構成される。
【0057】
1203はRAMで、CPU1201の主メモリ、ワークエリア等として機能する。1205はキーボードコントローラ(KBC)であり、キーボード(KB)1209から入力される信号をシステム本体内に入力する制御を行う。1206は表示コントローラ(CRTC)であり、表示装置(CRT)1210上の表示制御を行う。1207はディスクコントローラ(DKC)で、ブートプログラム(起動プログラム:パソコンのハードやソフトの実行(動作)を開始するプログラム)、複数のアプリケーション、編集ファイル、ユーザファイルそしてネットワーク管理プログラム等を記憶するハードディスク(HD)1211、及びフレキシブルディスク(FD)1212とのアクセスを制御する。
【0058】
1208はネットワークインターフェースカード(NIC)で、LAN1220を介して、ネットワークプリンタ、他のネットワーク機器、或いは他のPCと双方向のデータのやり取りを行う。
【0059】
上述した実施形態の機能は、コンピューターがコンピュータープログラムを実行することによっても実現される。また、コンピュータープログラムをコンピューターに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体又はかかるプログラムを伝送するインターネット等の伝送媒体も本発明の実施形態として適用することができる。また、前記のプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。前記のコンピュータープログラム、記録媒体、伝送媒体及びコンピュータプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性メモリ、ROM等を用いることができる。
【実施例】
【0060】
続いて、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
本実施例では、図13に示すように、3枚重ね溶接によって形成された構造部材の破断解析を行った。詳しい解析モデル・条件については同図に示す。実施例1は、3枚重ね溶接を考慮し、さらに有効幅Bを自動算定して破断解析を行った。実施例2は、3枚重ね溶接を考慮したが、有効幅Bについては破断解析プログラムのデフォルト値(40mm)を用いた。比較例1は、3枚重ね溶接を考慮せず、さらに有効幅Bに破断解析プログラムのデフォルト値(40mm)を用いた。
【0061】
3枚重ね溶接の考慮は、図9のフローチャートに従う処理を実行可能なプログラムがインストールされたコンピューターを用いて3枚重ね溶接の抽出を行い、すべてのスポット溶接部の位置を破断解析プログラムに認識させることによって行った。さらに、認識されたスポット溶接部の破断解析を実行する際に、見掛け上、2枚重ねの溶接となるように板厚を調整した。すなわち、3枚の鋼材(A,B,C)の鋼材Aと鋼材Bの接続部分の破断解析は、鋼材Aの板厚の値と、鋼材BとCの板厚を足した値で実行し、鋼材Cと鋼材Bの接続部分の破断解析は、鋼材Cの板厚の値と、鋼材AとBの板厚を足した値で実行した。
有効幅Bの自動算定は、図11のフローチャートに従う処理を実行可能なプログラムがインストールされたコンピューターを用いて、スポット間距離、エッジ間距離×2、稜線間距離×2の情報を取得し、そのうち最も短い距離をスポット溶接の有効幅Bに設定するようにした。
【0062】
図14は、実施例1,2及び比較例1の破断解析の結果を示す。なお、図14は、破断個所を確認し易いように、図13(a)から図13(b)への変形が20%進行したときの状態を示している。図14(a)に示される通り、3枚重ねを考慮し、さらに有効幅Bを自動算定して破断解析を行った実施例1は、10点在るスポット溶接部のうち6点で破断が発生している。一方、3枚重ね溶接については考慮したが有効幅Bにデフォルト値を用いた実施例2は、図14(b)に示される通り、実施例1よりも1点少ない5点で破断する結果となっている。これに対し、3枚重ね溶接を考慮せず、有効幅Bにデフォルト値を用いた比較例1の場合は、実際には6点で破断するのに3点で破断する結果となっており、誤差が大きい。
【0063】
以上の結果によれば、図9に示すフローチャートに従って3枚重ね溶接を考慮し、さらに図11に示すフローチャートに従って有効幅Bを自動算定すれば、解析に要する作業時間を大幅に短縮できるのに加えて、衝突シミュレーションにおける解析精度を向上できる効果がある。この効果は、解析対象物の溶接部の数が数百点、数千点に増えることによって、より顕在化する。
【符号の説明】
【0064】
1200 コンピューターPC
1201 CPU
1202 ROM
1203 RAM
1209 キーボード(KB)
1210 表示装置(CRT)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バー要素の端点を母材ごとに取得する工程と、
取得したバー要素の中から一のバー要素に注目し、この注目バー要素の周囲にある他のバー要素を抽出する工程と、
前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する工程と、
前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する工程と、
前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う工程と、
を含むことを特徴とするスポット溶接部の破断解析方法。
【請求項2】
前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在しなかった場合において、
注目バー要素の周囲にある他のバー要素のうち、要素間距離が最も短いものを対象バー要素に選定する工程と、
さらに対象バー要素と注目スポットが同じ母材を溶接しているか否かを判定する工程と、
前記判定の結果、同じ母材を溶接している場合には、注目バー要素の両端点と対象バー要素の両端点を比較し、注目バー要素と対象バー要素が両端点を共有しているか否かを判定する工程と、
前記判定の結果、注目バー要素と対象バー要素が両端点を共有していない場合には、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する工程と、
前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のスポット溶接部の破断解析方法。
【請求項3】
前記選定した対象バー要素と注目バー要素が同じ母材を溶接しているか否か判定した結果、異なる母材を溶接している場合には、母材を2枚重ねて溶接したスポット溶接部が2組有ると判定する工程と、を含むことを特徴とする請求項2に記載のスポット溶接部の破断解析方法。
【請求項4】
前記注目バー要素の両端点と対象バー要素の両端点を比較した結果、注目バー要素と対象バー要素が両端点を共有している場合には、2つのスポット溶接部で共通する2枚の母材を重ねて溶接していると判定する工程と、を含むことを特徴とする請求項2に記載のスポット溶接部の破断解析方法。
【請求項5】
前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在しなかった場合において、
前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素との距離が母材の板厚以下のものがあるか否かを判定する工程と、
前記判定の結果、バー要素間の距離が母材の板厚以下であると判定したときには前記対象バー要素を選定する工程を実行し、板厚以上であると判定したときには別のバー要素を注目バー要素に変更する工程と、を含むことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のスポット溶接部の破断解析方法。
【請求項6】
前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部の破断解析を行うにおいて、
前記注目バー要素に最も近いバー要素までの距離を抽出して、スポット間距離の情報を取得する工程と、
前記注目バー要素の端点に最も近い距離にある母材のエッジを検索し、エッジ間距離の情報を取得する工程と、
前記注目バー要素の端点に最も近い距離にある母材の稜線を検索し、稜線間距離の情報を取得する工程と、
前記スポット間距離、エッジ間距離を2倍した距離、稜線間距離を2倍した距離のうち、最も短い距離をスポット溶接の有効幅Bに設定して破断解析を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスポット溶接部の破断解析方法。
【請求項7】
バー要素の端点を母材ごとに取得する工程と、取得したバー要素の中から一のバー要素に注目し、この注目バー要素の周囲にある他のバー要素を抽出する工程と、前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する工程と、前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する工程と、前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う工程と、を含む破断解析処理をコンピューターに実行させることを特徴とするスポット溶接部の破断解析コンピュータープログラム。
【請求項8】
バー要素の端点を母材ごとに取得する手段と、取得したバー要素の中から一のバー要素に注目し、この注目バー要素の周囲にある他のバー要素を抽出する手段と、前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する手段と、前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する手段と、前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う手段と、を備えたことを特徴とするスポット溶接部の破断解析装置。
【請求項1】
バー要素の端点を母材ごとに取得する工程と、
取得したバー要素の中から一のバー要素に注目し、この注目バー要素の周囲にある他のバー要素を抽出する工程と、
前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する工程と、
前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する工程と、
前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う工程と、
を含むことを特徴とするスポット溶接部の破断解析方法。
【請求項2】
前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在しなかった場合において、
注目バー要素の周囲にある他のバー要素のうち、要素間距離が最も短いものを対象バー要素に選定する工程と、
さらに対象バー要素と注目スポットが同じ母材を溶接しているか否かを判定する工程と、
前記判定の結果、同じ母材を溶接している場合には、注目バー要素の両端点と対象バー要素の両端点を比較し、注目バー要素と対象バー要素が両端点を共有しているか否かを判定する工程と、
前記判定の結果、注目バー要素と対象バー要素が両端点を共有していない場合には、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する工程と、
前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のスポット溶接部の破断解析方法。
【請求項3】
前記選定した対象バー要素と注目バー要素が同じ母材を溶接しているか否か判定した結果、異なる母材を溶接している場合には、母材を2枚重ねて溶接したスポット溶接部が2組有ると判定する工程と、を含むことを特徴とする請求項2に記載のスポット溶接部の破断解析方法。
【請求項4】
前記注目バー要素の両端点と対象バー要素の両端点を比較した結果、注目バー要素と対象バー要素が両端点を共有している場合には、2つのスポット溶接部で共通する2枚の母材を重ねて溶接していると判定する工程と、を含むことを特徴とする請求項2に記載のスポット溶接部の破断解析方法。
【請求項5】
前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在しなかった場合において、
前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素との距離が母材の板厚以下のものがあるか否かを判定する工程と、
前記判定の結果、バー要素間の距離が母材の板厚以下であると判定したときには前記対象バー要素を選定する工程を実行し、板厚以上であると判定したときには別のバー要素を注目バー要素に変更する工程と、を含むことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のスポット溶接部の破断解析方法。
【請求項6】
前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部の破断解析を行うにおいて、
前記注目バー要素に最も近いバー要素までの距離を抽出して、スポット間距離の情報を取得する工程と、
前記注目バー要素の端点に最も近い距離にある母材のエッジを検索し、エッジ間距離の情報を取得する工程と、
前記注目バー要素の端点に最も近い距離にある母材の稜線を検索し、稜線間距離の情報を取得する工程と、
前記スポット間距離、エッジ間距離を2倍した距離、稜線間距離を2倍した距離のうち、最も短い距離をスポット溶接の有効幅Bに設定して破断解析を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスポット溶接部の破断解析方法。
【請求項7】
バー要素の端点を母材ごとに取得する工程と、取得したバー要素の中から一のバー要素に注目し、この注目バー要素の周囲にある他のバー要素を抽出する工程と、前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する工程と、前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する工程と、前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う工程と、を含む破断解析処理をコンピューターに実行させることを特徴とするスポット溶接部の破断解析コンピュータープログラム。
【請求項8】
バー要素の端点を母材ごとに取得する手段と、取得したバー要素の中から一のバー要素に注目し、この注目バー要素の周囲にある他のバー要素を抽出する手段と、前記抽出された他のバー要素の中に、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在するか否かを検索する手段と、前記検索の結果、注目バー要素と同一の端点を共有するバー要素が存在した場合、母材を少なくとも3枚重ねて溶接したスポット溶接部であると判定する手段と、前記母材を少なくとも3枚重ねて溶接していると判定したスポット溶接部についての破断解析を行う手段と、を備えたことを特徴とするスポット溶接部の破断解析装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図8】
【図13】
【図14】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図8】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−83563(P2013−83563A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223974(P2011−223974)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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