説明

スポンジケーキの製造方法

【課題】焼成後従来のものよりもより大きく膨らみ、よりソフトな食感のスポンジケーキを作製できる製造方法を提供する。
【解決手段】卵、小麦粉及び砂糖を主原料とするスポンジケーキ材料を攪拌する攪拌工程と、攪拌されたスポンジケーキ生地をケーキ型に入れる型入工程と、前記ケーキ型に入れたスポンジケーキ生地を焼成して焼き上げる焼成工程とからなる製造方法である。攪拌工程が、スポンジケーキ材料を攪拌機に入れ、この攪拌機を圧力槽内に入れ、圧力槽内の圧力を0.3MPa乃至1.0MPaの圧力まで昇圧し、かかる加圧状態で攪拌機を回転させて攪拌する。攪拌状態を目視可能とする。攪拌工程終了後、加圧した圧力を徐々に減圧して常圧に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポンジケーキの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バターやマーガリンを使用しないスポンジケーキの製造方法としては、例えば、全卵3個を冷却しながら角が立つ程度に泡立て、これに砂糖60gを混ぜ、更に小麦粉60gをざっくり切るように混ぜる。
その後ケーキ型に入れて、自動オーブンで焼成して作製する。
更に先行技術として、以下の特許文献に記載の発明を挙げることができる。
【0003】
特許文献1に記載のスポンジケーキ生地の製造方法においては、起泡した卵類含有生地に液状の食用油脂を添加・混合して製造するスポンジケーキ生地の製造方法であって、乳化剤を多量に使用しなくとも、また、強い風味を有する食品原料を使用しなくとも、液状の食用油脂を添加する際、起泡した卵類含有生地の消泡が起こり難いスポンジケーキ生地を製造する方法である。
即ち、起泡した卵類含有生地に液状の食用油脂を添加、混合して製造するスポンジケーキ生地の製造方法において、液状の食用油脂を、少なくとも乳蛋白質とゲル化剤と水とで構成される複合体と混合した後、これを起泡した卵類含有生地に添加することを特徴とするものである。
【0004】
特許文献2に記載のスポンジケーキの製造方法においては、従来生地の混錬から焼成完了まで1時間程度かかっていたのを、電子レンジを使用して加熱時間を短縮し、生地の加工開始から焼成完了までを約20分程度に短縮したものである。
その方法は、卵、砂糖、薄力粉を主要素材とし、生地の水分と油分を適度に調整し、撹拌してよく空気を含みかつ粘りを押さえたスポンジケーキの生地を、耐熱樹脂製ボウルに入れて、150W〜200Wの電子レンジで約5分加熱し、短時間に簡単にスポンジケーキを製造するものである。
【0005】
特許文献3に記載の発明は、オリーブ油を使用したスポンジケーキとその製造方法を提供することを目的とするものである。
具体的には、卵に砂糖または水あめを混ぜて40〜45°Cに温めながら泡立て、気泡を包込んだ常温でやや固い殻を多数形成してメレンゲを作る第1工程と、メレンゲに小麦粉を混ぜ合わせてスポンジ生地を形成する第2工程と、スポンジ生地にオリーブ油を混ぜる第3工程と、このスポンジ生地を、オリーブ油が熱分解しないように内部温度を100°C以下で焼成してスポンジケーキを形成する第4工程とからなるものである。
【0006】
特許文献4に記載の発明は、起泡剤の添加なしで良好な起泡状態が得られ且つレーズンやアーモンド等を混入したスポンジケーキの生地の製造を、機械的手段により行えるようにしたものである。
その構成は、玉子と砂糖を混合して泡立てを行う工程と、発泡した玉子と砂糖との混合物に大気圧下で小麦粉を投入し攪拌混合する工程とからなるスポンジケーキの製造方法である。
【0007】
特許文献5に記載の発明は、内相が白く、きめが細かく、しかもボリュームの向上した口どけのよいスポンジケーキを製造することを課題とするものである。
その構成は、小麦粉中粒径30μm以下の小麦粉粒子が80重量%以上であるスポンジケーキ用小麦粉、又は、この小麦粉に澱粉または加工澱粉を添加して粗蛋白含量を4.0〜9.0%に調整した小麦粉組成物、若しくはこれらの組合せからなるスポンジケーキ用組成物からスポンジケーキを製造する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−82096号公報
【特許文献2】特開2005−87187号公報
【特許文献3】特開平10−295257号公報
【特許文献4】特開平6−319433号公報
【特許文献5】特開平6−237682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の方法においては、起泡した生地の消泡が起こり難いこと、良好な起泡状態が得られること、きめが細かく、ボリュームの向上した口どけのよいスポンジケーキが得られること等を目的とし、製造時間も短い方法を提供するものであった。
本願発明においては、上記従来の製造方法と同様に、起泡状態が良好に維持され、焼き上がり状態がふんわりし、従来のスポンジケーキと比較してより大きく膨らみ、口当たりもよりソフトなものを提供することをその課題とする。
しかも、その解決手段として、スポンジケーキ材料に何らかの添加物を加えるという方法ではなく、他の物理的な手段によってこれを実現できないかがその課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、卵、小麦粉及び砂糖を主原料とするスポンジケーキ材料を攪拌する攪拌工程と、攪拌されたスポンジケーキ生地をケーキ型に入れる型入工程と、前記ケーキ型に入れられたスポンジケーキ生地を焼成して焼き上げる焼成工程とからなるスポンジケーキの製造方法において、前記スポンジケーキ材料を攪拌する攪拌工程を、外気圧よりも高い圧力下で行なうことを特徴とするスポンジケーキの製造方法である。
【0011】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、外気圧よりも高い圧力が0.3MPa乃至1.0MPaの圧力の範囲内であることを特徴とするスポンジケーキの製造方法である。
【0012】
本発明の第3のものは、卵、小麦粉及び砂糖を主原料とするスポンジケーキ材料を攪拌する攪拌工程と、攪拌されたスポンジケーキ生地をケーキ型に入れる型入工程と、前記ケーキ型に入れられたスポンジケーキ生地を焼成して焼き上げる焼成工程とからなるスポンジケーキの製造方法において、
攪拌工程が、スポンジケーキ材料を攪拌機に入れ、この攪拌機を圧力槽内に入れ、圧力槽内の圧力を0.3MPa乃至1.0MPaの圧力まで昇圧し、かかる加圧状態で攪拌機を回転させて攪拌することを特徴とするスポンジケーキの製造方法である。
【0013】
本発明の第4のものは、上記第1乃至第3の発明のそれぞれにおいて、攪拌工程において、攪拌状態を目視可能としたことを特徴とするスポンジケーキの製造方法である。
【0014】
本発明の第5のものは、上記第1乃至第4の何れかの発明において、攪拌工程終了後、加圧した圧力を徐々に減圧して常圧に戻し、その後型入工程に移行することを特徴とするスポンジケーキの製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1のものにおいては、常圧(通常の外気圧)で攪拌し起泡させた場合と比較して、より大きい圧力下で攪拌するため、その後焼成してケーキが完成した際、より大きな起泡となり、従来のスポンジケーキと比較して倍近い大きさに膨らみ、ふんわりとした口当たりの良いソフトな食感のスポンジケーキを作製することができた。
【0016】
本発明の第2のものは、上記攪拌工程において、その外気圧よりも高い圧力を限定したものであって、この圧力が0.3MPa乃至1.0MPaの圧力の範囲内が好適であることを特定したものである。
【0017】
本発明の第3のものは、その製造方法をより具体化して、その攪拌工程をスポンジケーキ材料を攪拌機に入れ、この攪拌機を圧力槽内に入れ、この圧力槽内の圧力を0.3MPa乃至1.0MPaの圧力まで昇圧し、かかる加圧状態で攪拌機を回転させて攪拌することを限定したものである。
その効果は、上記発明と同じである。
【0018】
本発明の第4のものは、上記攪拌工程において、攪拌状態を目視可能としたことを特徴とするものであり、スポンジケーキ材料の攪拌状態を目によって確認できるようにしたものである。
攪拌工程における攪拌工程は、その攪拌時間は事前にほぼ判明しているのであるが、その際の外気温や加圧状態により、必ずしも攪拌時間が一定しないこともあり、この攪拌工程において作業者が目視によりその状態を確認できるようにしたものである。
【0019】
本発明の第5のものにおいては、昇圧して攪拌完了後、当然常圧に戻すのであるが、その外気圧と同じ常圧に戻す際に、急激に戻すのではなく、ゆっくりと常圧まで戻すようにしたものである。
このゆっくりと常圧まで減圧して戻すことによって、起泡がゆっくりと膨れ上がり、極めて良好な起泡状態を得ることができるのである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るスポンジケーキの製造方法の実施形態について説明する。
(1) まず、スポンジケーキ材料として、鶏卵(全卵)3個、小麦粉60g、砂糖60gを用意し、これらを攪拌機の攪拌槽内に共に入れる。攪拌機の種類は全く不問である。
(2) 前記攪拌機をそのまま圧力槽内に収納する。
(3) 前記圧力槽内を0.4MPaまで加圧する。
【0021】
攪拌機を圧力槽内に入れた時点では、圧力槽内は外気圧と同様である。その後、圧力槽内の圧力を約0.4MPaまで昇圧する。
この昇圧圧力は、約0.3MPaから約1.0MPaまでが好適であるが、0.3MPa以下であっても、外気圧よりも高い圧力を負荷することによって、より良好な起泡状態を得ることができる。
【0022】
つまり、本発明の特徴は、外気圧よりも高い圧力下で攪拌することによって、その効果が得られるものである。
(4) 攪拌機の電源を投入して、攪拌槽を回転させ、攪拌を開始し、起泡させる。この際、圧力槽の窓より内部を観察して攪拌状態を目視により確認する。
【0023】
圧力槽の窓から目視により攪拌状態が十分と判断できたら、攪拌槽の回転を停止する。
(5) その後、スポンジケーキ材料を各種形状のケーキ型に流し込む。
(6) 次に、このケーキ型をそのまま自動オーブンに入れて焼き上げる。
【0024】
以上により、従来よりも大きく膨らんだスポンジケーキを得ることができ、その食感も口当たりのよいソフトでふんわりしたものとなる。
本発明におていは、上記実施形態によって作製されたスポンジケーキは、同じ原材料を用いて従来の方法によって作製したものと比較すると、約2倍の大きさに膨れ上がることが確認された。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、以下種々その形態を変更して実施することができる。
スポンジケーキ材料は、鶏卵、小麦粉及び砂糖を主成分とし、必要に応じてこれに適宜添加物を選択して自由に付加することができる。
しかし、本発明においては、加圧状態で攪拌を行い、その焼成後の膨らみを極めて大きくすることができるために、起泡剤等の使用は全く不要である。
【0026】
攪拌機も特定のものに限定されることはなく、各種大きさのものを利用でき、同様に圧力槽も自由に選択することができる。
圧力槽には、内部状態を目視できる窓付きのものを使用する。
攪拌機よる攪拌時間も適宜変更することができ、圧力槽の窓から目視によって確認を行うことが望ましい。
【0027】
以上、本発明は、攪拌工程における加圧又は昇圧により、きわめて良好な起泡状態を有するスポンジケーキ生地を得て、これを焼成することによって、従来のものよりもより大きく膨らませることができ、その食感も、ふわふわでソフトなスポンジケーキを作製できる製造方法を提案することができたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵、小麦粉及び砂糖を主原料とするスポンジケーキ材料を攪拌する攪拌工程と、攪拌されたスポンジケーキ生地をケーキ型に入れる型入工程と、前記ケーキ型に入れられたスポンジケーキ生地を焼成して焼き上げる焼成工程とからなるスポンジケーキの製造方法において、
前記スポンジケーキ材料を攪拌する攪拌工程を、外気圧よりも高い圧力下で行なうことを特徴とするスポンジケーキの製造方法。
【請求項2】
外気圧よりも高い圧力が0.3MPa乃至1.0MPaの圧力の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のスポンジケーキの製造方法。
【請求項3】
卵、小麦粉及び砂糖を主原料とするスポンジケーキ材料を攪拌する攪拌工程と、攪拌されたスポンジケーキ生地をケーキ型に入れる型入工程と、前記ケーキ型に入れられたスポンジケーキ生地を焼成して焼き上げる焼成工程とからなるスポンジケーキの製造方法において、
攪拌工程が、スポンジケーキ材料を攪拌機に入れ、この攪拌機を圧力槽内に入れ、圧力槽内の圧力を0.3MPa乃至1.0MPaの圧力まで昇圧し、かかる加圧状態で攪拌機を回転させて攪拌することを特徴とするスポンジケーキの製造方法。
【請求項4】
攪拌工程において、攪拌状態を目視可能としたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のスポンジケーキの製造方法。
【請求項5】
攪拌工程終了後、加圧した圧力を徐々に減圧して常圧に戻し、その後型入工程に移行することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のスポンジケーキの製造方法。

【公開番号】特開2012−170413(P2012−170413A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36895(P2011−36895)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(303055914)
【Fターム(参考)】