説明

スポンジ製ハンガー

【課題】衣類を吊したり取り外したりする作業が容易で乾燥効果にも勝れ、吊した衣類の落下も生じにくいハンガーを提供する。
【解決手段】衣類を吊すためのハンガー本体3と、吊掛用のフック部材4とからなり、上記ハンガー本体3がスポンジ体により形成されていて、弾力的に屈伸自在であると共に、前後方向の幅Wが高さHよりも大きく形成され、かつ中央部に横孔部分5aと縦孔部分5bとからなる十字状の取付孔5を有し、上記フック部材4が、上記取付孔5に嵌合する嵌合部9を有し、この嵌合部9を上記横孔部分5aと縦孔部分5bとに選択的に嵌合させることによってフック部材4の向きが90度変更可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TシャツやYシャツ等の比較的軽量の衣類を吊して干すのに好適に使用されるスポンジ製のハンガーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯した衣類を干す際に吊すハンガーは、一般に、合成樹脂や針金などによって三角枠状に形成されている。このような三角枠状のハンガーに例えばTシャツを吊す場合には、該ハンガーをTシャツの内部に襟を通じて差し込むと共に、該ハンガーの両端をTシャツの袖に通した状態にして吊すが、該ハンガーをTシャツの内部に差し込む際に、濡れたTシャツは重くなっていて広がりにくいため、つい襟元を強く引っ張ることによって生地を伸ばしてしまい、型崩れさせ易いという問題がある。乾いたTシャツをハンガーから取り外す際にも、襟を広げるために同様の問題が生じ易い。
【0003】
また、上述した従来のハンガーは、三角枠の表裏方向の幅(厚さ)が非常に薄いため、衣類を吊したとき該衣類の前身頃と後ろ身頃とが殆ど接触した状態とり、通気性が阻害されることによって乾きが遅いという欠点もある。
更に、吊した衣服が乾くと、軽くなると同時にハンガーに対して滑りやすくなるため、該衣類が風に吹かれて揺れ動いたとき、ハンガーから地面に滑り落ちて汚れるといった問題も多く発生している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述した従来の三角枠状のハンガーが有する欠点がなく、衣類を吊したり取り外したりする作業が容易で乾燥効果にも勝れ、吊した衣類の落下も生じにくいといった利点を有するハンガーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明のスポンジ製ハンガーは、衣類を吊すための横に細長い板状のハンガー本体と、該ハンガー本体の中央部に取り付けられた吊掛用のフック部材とからなり、上記ハンガー本体は、スポンジ体により形成されていて、弾力的に屈伸自在であると共に、前後方向の幅が高さよりも大きく形成され、かつ中央部に上記フック部材を取り付けるための取付孔を有し、上記フック部材は、上記取付孔からハンガー本体の上方に延出する鉤部と、該鉤部の下端に一体に連設されて上記取付孔内に嵌合する嵌合部と、該嵌合部の下端に一体に連設されて上記ハンガー本体の下面中央部に当接し、該ハンガー本体の中央部及びその近傍での屈曲を制限する円形又は矩形の板状をしたベース部とを有し、上記取付孔内で回転させることによって吊り掛けのための向きを変更可能であることを特徴とするものである。
【0006】
本発明において好ましくは、上記取付孔が、ハンガー本体の長さ方向に延びる横孔部分と幅方向に延びる縦孔部分とが交差する十字状の孔であり、また、上記フック部材の嵌合部が長方形のブロック状をしていて、この嵌合部を上記縦孔部分と横孔部分とに選択的に嵌合させることによってフック部材の向きが90度変更可能とされていることである。
【0007】
上記ハンガー本体は、全長にわたり均一な幅と均一な高さとを有しており、また、上記ベース部が円形又は正方形をなしていて、その直径又は一辺の長さは上記ハンガー本体の幅と等しいかそれより僅かに小さく形成され、該ベース部によって上記取付孔全体が完全に覆われていることが望ましい。
本発明においては、上記ハンガー本体の長さ方向両側に寄った位置に、肩紐付きの衣類の該肩紐を係止させた状態で吊すための切欠が形成されていても良い。
【発明の効果】
【0008】
上記ハンガーにTシャツなどの衣類を吊して干す際に、スポンジ体からなるハンガー本体を2つに折り曲げた状態で襟から衣類の内部に差し込んだあと、折り曲げ状態から解放すると、該ハンガー本体が弾性力により伸長して衣類がハンガーに吊り下げられた状態になる。また、乾いた衣類をハンガーから外すときも、上記ハンガー本体を2つに折り曲げることにより、衣類は該ハンガー本体から外れてその場に落下する。従って、衣類を吊したり取り外したりする作業が非常に簡単で、片手でもその作業を容易に行うことができ、従来のように襟を強く引っ張りすぎて形崩れさせる心配もない。
また、上記ハンガー本体が板状をなしていて、前後方向の幅が高さよりも大きく形成されているため、衣類を吊したとき該衣類の前身頃と後ろ身頃との間に広い空間が形成されることになり、風通しが非常に良くなって乾き易いという利点もある。
更に、上記ハンガー本体がスポンジ体で形成されていて、摩擦抵抗が大きいため、吊した衣類が風に吹かれて揺れ動いたとしても、ハンガーから滑り落ちるというようなことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図は本発明に係るスポンジ製ハンガーの一実施形態を示すものである。このハンガー1は、TシャツやYシャツといったような比較的軽量の衣類2(図5参照)を吊して干すのに適したもので、図1〜図4に示すように、上記衣類2を掛けるための横に細長く延びる板状のハンガー本体3と、該ハンガー本体3の中央部に着脱自在かつ向きを変更可能なるように取り付けられた吊掛用のフック部材4とで構成されている。
【0010】
上記ハンガー本体3は、海綿状をしたゴム製又は合成樹脂製のスポンジ体により、上面3a及び下面3bが何れも平坦である平板の形に形成されていて、弾力的に屈伸自在であると共に、中央部に上記フック部材4を取り付けるための取付孔5を有している。このハンガー本体3は、単層のスポンジ体で形成されていても、複数層のスポンジ体を積層して相互に貼り合わせることにより形成されていても良い。複数層のスポンジ体で形成する場合、各層でスポンジ体の弾性力を違えることもできる。
【0011】
上記ハンガー本体3は、その前後方向の幅W及び上下方向の高さHが該ハンガー本体3の全長にわたりほぼ一定で、上記幅Wが高さHよりも大きく形成されており、また、該ハンガー本体3の長さL方向の両端3cは、外に向けて滑らかな凸形にカーブする弧状に形成されている。図示した例では、ハンガー本体3の幅Wが高さHの約4倍程度に形成されているが、その倍率の好ましい範囲は通常2〜5倍程度である。また、上記ハンガー本体3の好ましい一つの寸法例は、その長さLが約400mm、幅Wが約60mm、高さHが約15mmである。しかし、これ以外の寸法であっても良いことはもちろんである。
【0012】
また、上記取付孔5は、ハンガー本体3の長さL方向に延びる横孔部分5aと幅方向Wに延びる縦孔部分5bとが交差する十字状の孔であり、このような十字状をした取付孔5が、上記ハンガー本体3を高さ方向に貫通するように形成されている。上記横孔部分5aと縦孔部分5bとにおける孔幅M同士及び孔長N同士は互いに等しい。
【0013】
一方、上記フック部材4は、上記取付孔5からハンガー本体3の上方に延出する鉤部8と、該鉤部8の下端部に形成されて上記取付孔5内に嵌合する嵌合部9と、この嵌合部9の下端に一体に連設されて上記ハンガー本体3の下面3bの中央部に当接、係止する板状のベース部10とを有するもので、これらの鉤部8と嵌合部9とベース部10とが、合成樹脂で一体に形成されている。
上記鉤部8は、ハンガー1を物干し竿や物干し用ロープ等に吊り掛けるためのもので、疑問符形に湾曲しており、該鉤部8の中央部には、物干し用ロープに吊り掛けた際に該物干し用ロープが嵌合する窪み8aが形成されている。
【0014】
また、上記嵌合部9は、ベース部10の上面中央部を一方向に延びる細長い長方形のブロック状をしており、該嵌合部9の幅mは、上記取付孔5に嵌合可能なるように、上記横孔部分5a及び縦孔部分5bの孔幅Mとほぼ同じかそれより僅かに小さく形成され、該嵌合部9の長さnは、上記横孔部分5a及び縦孔部分5bの孔長Nとほぼ同じかそれより僅かに小さく形成され、該嵌合部9の高さhは、上記取付孔5の深さ即ちハンガー本体3の高さHと同程度かそれより若干大きくあるいは小さく形成されている。そして、この嵌合部9を上記縦孔部分5bと横孔部分5aとに選択的に嵌合させることにより、上記鉤部8の向き即ちフック部材4の向きを、図1に示す横向きと図5に示す縦向きとに90度変更できるようになっている。
【0015】
更に、上記ベース部10は、矩形好ましくは正方形をなしていて、その1辺の長さが上記ハンガー本体3の幅Wと等しいかそれより僅かに小さく形成されており、該ベース部10によって上記取付孔5全体が完全に覆われている。そして、このベース部10が上記ハンガー本体3の下面3bの中央部付近に当接することにより、該ハンガー本体3の中央部及びその近傍における屈曲が制限され、それによって該ハンガー本体3の弾性が高められている。
【0016】
上記構成を有するハンガー1にTシャツなどの衣類2を吊して干す場合には、先ず、上記フック部材4の向きを、図1の横向きか図4の縦向きに調整する。この調整は、該フック部材4を、その嵌合部9が取付孔5から外れる位置までハンガー本体3の下面3b側に押し下げ、その状態で該フック部材4を回転させて嵌合部9の向きを横孔部分5aか又は縦孔部分5bの向きに合わせたあと、フック部材4を引き上げて該嵌合部9を目的の孔部分に嵌合させると共に、更にフック部材4を引き上げてベース部10をハンガー本体3の下面3bに当接させることにより行う。
【0017】
次に、図5に示すように、スポンジ体からなる上記ハンガー本体3を2つに折り曲げ、その状態でこのハンガー本体3を襟から衣類2の内部に差し込んだあと、折り曲げ状態から解放する。そうすると、図6に示すように、該ハンガー本体3が弾性力により伸長して両端が袖内に挿入され、衣類2がハンガー1に吊り下げられた状態になる。従って、衣類2を吊す作業が非常に簡単で、片手でも容易に行うことができ、従来のように衣類2の襟を強く引っ張り過ぎて型崩れさせるおそれがない。
【0018】
このようにして衣類2が吊り下げられたハンガー1は、上記フック部材4の鉤部8によって物干し竿や物干し用ロープ等に吊り掛けられる。
このとき、上記ハンガー本体3は、その中央部及びその近傍が上記フック部材4の板状をしたベース部10によって比較的広い範囲で支持され、中央部付近での屈曲が制限されることによって弾性が高められているため、濡れて重くなった衣類2の重量が該ハンガー本体3に作用しても、上記ベース部10の補強効果によって該ハンガー本体3が必要以上に湾曲することがない。また、湾曲による取付孔5の広がりなどの変形も起きないため、変形した取付孔5からフック部材4が抜け出すといった不都合も生じない。
【0019】
また、上記ハンガー本体3は板状に形成されていて、前後方向の幅Wが大きいため、衣類2を吊したとき該衣類2の前身頃と後ろ身頃との間に広い空間が形成され、風通しが非常に良好になって洗濯物の乾きが早くなる。
更に、上記ハンガー本体3がスポンジ体で形成されているため、衣類2との間の摩擦抵抗が大きく、従って、吊した衣類2が風に吹かれて揺れ動いたとしても、ハンガー1から滑り落ちることがない。
【0020】
干した衣類2が乾燥すると、該衣類2をハンガー1から取り外すが、その際、図7に示すように、ハンガー本体3を2つに折り曲げることにより、衣類2は該ハンガー本体3から外れてその場に落下する。従って、上記ハンガー1を物干し竿や物干し用ロープ等に吊り掛けた状態のまま衣類2のみを取り込む場合でも、ハンガー毎取り込んだあと衣類2を該ハンガー1から取り外す場合でも、その作業が非常に容易で、片手で簡単に行うことができる。
【0021】
上記ハンガー本体3には、図2に鎖線で示すように、取付孔5に対して長さ方向両端側に寄った位置に、それぞれ係止用の切欠12を形成しておくこともできる。このような切欠12を形成しておけば、図8に示す如く、キャミソールのような肩紐2aがついた衣類2を、その肩紐2aをこの切欠12に係止させた状態で吊して干すことができる。上記切欠12は、上記ハンガー本体3の前縁と後縁との相対する位置に形成されていて、U字状をなしているが、前縁又は後縁の何れか一方だけに形成しても良く、また、その形状もU字状に限らず、コ字状であっても、V字状であっても良い。あるいは、ハンガー本体3の上面に幅方向に延設した溝であっても良い。
【0022】
なお、図示した実施例では、フック部材4のベース部10が矩形をなしているが、該ベース部10の形状は円形であっても良い。この場合、該ベース部10の直径は、上記ハンガー本体3の幅Wと等しいかそれより僅かに小さく形成される。
また、ハンガー本体3の取付孔5が横孔部分5aと縦孔部分5bとによって十字状に形成され、フック部材4にこれらの横孔部分5a又は縦孔部分5bに選択的に嵌合、係止する角形の嵌合部9が形成されているが、これらの取付孔5と嵌合部9とを何れも円形に形成し、相互間の摩擦力でフック部材4を必要な向きに係止させるように構成することも可能である。
【0023】
更に、上記ハンガー本体3には、その弾性を高めて衣類を吊したときの変形をより生じにくくするため、該ハンガー本体3の中央部分の上面又は下面あるいは上下両面に、弾性ある合成樹脂製の補助板を接着等の手段で部分的に取り付けることもできる。この補助板のハンガー本体3の長さL方向に沿った寸法は、上記フック部材4におけるベース部10の同方向寸法より長いが、その好ましい最大長さは、通常は、ハンガー本体3の長さLの大体1/3程度である。上記ハンガー本体3が複数層のスポンジ体を積層して形成されているときは、一部又は全部の層間にこのような補助板を介在させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るハンガーの斜視図である。
【図2】上記ハンガーの下面図である。
【図3】上記ハンガーをハンガー本体とフック部材とを分離させた状態で示す斜視図である。
【図4】図1のハンガーのフック部材の向きを変更した場合の斜視図である。
【図5】上記ハンガーに衣類を吊す途中の状態を示す斜視図である。
【図6】上記ハンガーに衣類を吊したときの状態を示す斜視図である。
【図7】上記ハンガーから衣類を取り外すときの状態を示す斜視図である。
【図8】本発明に係るハンガーの異なる使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ハンガー
2 衣類
2a 肩紐
3 ハンガー本体
3b 下面
4 フック部材
5 取付孔
5a 横孔部分
5b 縦孔部分
8 鉤部
9 嵌合部
10 ベース部
12 切欠
W 幅
H 高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類を吊すための横に細長い板状をしたハンガー本体と、該ハンガー本体の中央部に取り付けられた吊掛用のフック部材とからなり、
上記ハンガー本体は、スポンジ体により形成されていて、弾力的に屈伸自在であると共に、前後方向の幅が高さよりも大きく形成され、かつ中央部に上記フック部材を取り付けるための取付孔を有し、
上記フック部材は、上記取付孔からハンガー本体の上方に延出する鉤部と、該鉤部の下端に一体に連設されて上記取付孔内に嵌合する嵌合部と、該嵌合部の下端に一体に連設されて上記ハンガー本体の下面中央部に当接し、該ハンガー本体の中央部及びその近傍での屈曲を制限する円形又は矩形の板状をしたベース部とを有し、上記取付孔内で回転させることによって吊り掛けのための向きを変更可能である、
ことを特徴とするスポンジ製ハンガー。
【請求項2】
上記取付孔は、ハンガー本体の長さ方向に延びる横孔部分と幅方向に延びる縦孔部分とが交差する十字状の孔であり、また、上記フック部材の嵌合部が長方形のブロック状をしていて、この嵌合部を上記縦孔部分と横孔部分とに選択的に嵌合させることによってフック部材の向きが90度変更可能であることを特徴とする請求項1に記載のスポンジ製ハンガー。
【請求項3】
上記ハンガー本体は、全長にわたり均一な幅と均一な高さとを有しており、また、上記ベース部が円形又は正方形をなしていて、その直径又は一辺の長さは、上記ハンガー本体の幅と等しいかそれより僅かに小さく形成され、該ベース部によって上記取付孔全体が完全に覆われていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスポンジ製ハンガー。
【請求項4】
上記ハンガー本体の長さ方向両側に寄った位置に、肩紐付きの衣類の該肩紐を係止させた状態で吊すための切欠が形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のスポンジ製ハンガー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−178294(P2009−178294A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19178(P2008−19178)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000101363)アズマ工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】