説明

スポーツ用シューズのソール構造およびスポーツ用シューズ

【課題】防滑特性に優れたスポーツ用シューズのソール構造および該ソール構造を備えたスポーツ用シューズを提供する。
【解決手段】スポーツ用シューズは、ソール部の一部を構成する板状のベース部30と、該ベース部30の表面から突出し地面または床面と接する接触面34を有する複数の凸部31とを備える。凸部31は第1と第2側壁32,33を有する。第1側壁32は、ベース部30に近い側の凸部31の幅がベース部30から離れた側の凸部31の幅よりも大きくなるように傾斜する。ベース部30の表面の垂線に対する第1側壁32の傾斜角度θ1は、第2側壁33の傾斜角度よりも大きい。第1と第2側壁32,33は、装着者がシューズを装着して動作を行なった際に凸部31に加わる荷重の向きが第1側壁32から第2側壁33に向かう方向となるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ用シューズのソール構造およびスポーツ用シューズに関し、特に、防滑特性に優れたスポーツ用シューズのソール構造および該ソール構造を備えたスポーツ用シューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スポーツ用シューズの防滑特性を向上すべくソール部の底面形状に様々な工夫が施されている。たとえば、特開2004−216019号公報には、防滑特性を向上すべく、ソール部の底面に多数の横筋山を設け、この横筋山の爪先側壁面の傾斜角度θaが踵側壁面の傾斜角度θbよりも大であり、ハードコート上で摩擦係数を測定したとき、この底面の爪先方向における摩擦係数μaと踵側方向における摩擦係数μbとの比(μa/μb)が0.3以上0.9以下であるテニスシューズが記載されている。
【特許文献1】特開2004−216019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記文献に記載のテニスシューズでは、ソール部の底面に設けた横筋山の爪先側壁面と踵側壁面の傾斜角度の関係を規定しているが、あくまで各横筋山の形状にのみ着目したものである。
【0004】
しかし、本願発明者等が、独自のモデルによる有限要素法(FEM)解析を行ない防滑特性に優れたスポーツ用シューズのソール底面の形状について検討したところ、上記文献のようにソール底面の各凸部形状のみに着目しただけでは、十分な防滑特性が得られない場合があることが判明した。
【0005】
そこで、本発明は、防滑特性に優れたスポーツ用シューズのソール構造および該ソール構造を備えたスポーツ用シューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスポーツ用シューズのソール構造は、装着者の足裏に沿って延在し、スポーツ用シューズのソール部の一部を構成する板状のベース部と、該ベース部の表面から突出し地面または床面と接する接触面を有する複数の凸部とを備える。上記凸部は、第1側壁と第2側壁とを有し、第1側壁は、ベース部に近い側の凸部の幅がベース部から離れた側の凸部の幅よりも大きくなるように傾斜しており、第1側壁と、上記ベース部の表面の垂線とのなす角度である第1角度は、第2側壁と、ベース部の表面の垂線とのなす角度である第2角度よりも大きい。そして、装着者がスポーツ用シューズを装着して動作を行なった際に、上記凸部に加わる荷重の向きが第1側壁から第2側壁に向かう方向となるように第1側壁と第2側壁とを配置する。
【0007】
上記第1側壁から第2側壁に向かう方向に隣り合う接触面間の間隔を、第1側壁から第2側壁に向かう方向の接触面の幅である接触幅の大きさに応じて変化させてもよい。
【0008】
また、装着者が上記スポーツ用シューズを装着して動作を行なった際に地面または床面から接触面が受ける力である接触力の方向が荷重の向きと反対方向となるように、第1角度と、接触面間の間隔と、接触幅とを調節してもよい。
【0009】
上記第1側壁から第2側壁に向かう方向に隣り合う接触面間の間隔を、第1側壁から第2側壁に向かう方向の接触面の幅である接触幅と同じ値あるいはそれらの±0.5mmの範囲内の値としてもよい。好ましくは、接触面間の間隔と接触幅とを、ともに1mm以上3mm以下の範囲内の値とする。
【0010】
上記ベース部は、爪先側部と、踵側部と、装着者の足の第1指側に位置する内側部と、装着者の足の第5指側に位置する外側部とを有する。そして、爪先側部から踵側部に向かう縦方向に爪先側部の先端からベース部の最大長さの20%〜40%の範囲内であって、かつ内側部から外側部に向かう横方向に内側部の端部からベース部の最大幅の60%の範囲内の領域に、上記凸部を設けることが考えられる。、また、上記縦方向に爪先側部の先端からベース部の最大長さの20%〜50%の範囲内であって、かつ横方向に内側部の端部からベース部の最大幅の60%の位置から外側部に達する範囲内の領域に、凸部を設けてもよい。
【0011】
本発明に係るスポーツ用シューズは、上記のようなソール構造を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、装着者の足裏に沿うベース部に設けた凸部の側壁であってベース部表面の垂線に対する傾斜角度が相対的に大きい第1側壁から、傾斜角度が相対的に小さい第2側壁に向かう方向に荷重が作用するように第1側壁と第2側壁とを配置しているので、装着者がスポーツ用シューズを装着して動作を行なった際に上記凸部に作用する横方向の荷重を凸部で受けることができる。その結果、防滑特性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図11を用いて説明する。図1は、本実施の形態のソール構造を備えたスポーツ用シューズ1の斜視図である。本実施の形態のスポーツ用シューズ1は、バレーボールやバスケットボールのような屋内(たとえば体育館等)で行なうスポーツに有用であるが、テニスのような屋外で行なうスポーツにも使用可能である。特に、平滑な試技面(床面にコーティングを施したり、シートを敷設してもよい)上で行うスポーツに有用である。
【0014】
図1に示すように、スポーツ用シューズ1は、装着者の足の甲側を覆うアッパー部(甲被部)2と、装着者の足裏の下に配置されるソール部(底部)3とを備える。
【0015】
アッパー部2は、編物、織物、人造皮革等の各種素材あるいはこれらを組合せた素材を用いて作製可能である。ソール部3は、装着者の足裏に沿って延在し、踵部から中足部を経て爪先部まで延設される。
【0016】
図1の例では、ソール部3は、ミッドソール3aとアウトソール3bとを備える。ミッドソール3aは単層構造としてもよいが、複数の層を積層した積層構造としてもよい。また、ミッドソール3aを省略することも可能である。アウトソール3bは、ミッドソール3aの下面に取付けられるとともに、ミッドソール3aと同様に、踵部から中足部を経て爪先部まで延設される。このアウトソール3bは、底面に、地面または床面と接触する接触面を含む。
【0017】
上記ミッドソール3aおよびアウトソール3bは、たとえば軟質弾性部材を用いて作製することができる。たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂の発泡体、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂の発泡体、天然ゴムやスチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴムの一種または二種以上を添加したゴムや塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂などの合成樹脂のような軟質弾性部材でミッドソール3aやアウトソール3bを作製することができる。また、上記軟質弾性部材と硬質性部材とを組合せてミッドソール3aやアウトソール3bを作製してもよい。
【0018】
本実施の形態では、アウトソール3bの形状に特に工夫を施している。図2に、本実施の形態のアウトソール3bの構造例の部分断面図を示す。
【0019】
図2に示すように、アウトソール3bは、装着者の足裏に沿って延在する板状のベース部30と、該ベース部30の表面(下面)から突出し、地面または床面と接する接触面34を有する複数の凸部31とを備える。
【0020】
凸部31は、所定間隔をあけて配列され、それぞれ第1側壁32と、第2側壁33と、底部に接触面34とを有する。第1側壁32と第2側壁33は、凸部31の両側に配置されている。第1側壁32は、ベース部30に近い側の凸部31の幅がベース部30から離れた側の凸部31の幅よりも大きくなるようにテーパ状に傾斜している。接触面34は、地面または床面と接触することが予定されている面であり、典型的には平坦な面で構成されるが、若干の凹凸を設けたり、曲面等の平坦面以外の面で構成してもよい。
【0021】
図2に示すように、凸部31の第1側壁32の傾斜角度と第2側壁33の傾斜角度は、互いに異ならせている。より詳しくは、第1側壁32と、ベース部30の平坦な表面(下面)の垂線とのなす角度である第1角度θ1を、第2側壁33と、ベース部30の上記表面の垂線とのなす角度である第2角度よりも大きくしている。したがって、図2に示す断面では、凸部31は非対称形状を有することとなる。なお、図2の例では、第2側壁33は、ベース部30の上記表面に対し垂直(第2角度は0(ゼロ)度)であるが、上記第1角度θ1よりも小さい角度θ2でベース部30の上記表面の垂線に対し傾斜していてもよい。
【0022】
本実施の形態では、装着者がスポーツ用シューズ1を装着して動作を行なった際に、上記凸部31に加わる荷重の向き(横方向成分の向き)が第1側壁32から第2側壁33に向かう方向となるように第1側壁32と第2側壁33とを配置する。
【0023】
隣り合う凸部31間には、間隙を設ける。この間隙の幅は、図2の例では、凸部31の付根部から接触面34に向かうにつれて徐々に増大し、隣り合う凸部31の接触面34間で最も大きくなる。そして、図2の例では、隣り合う凸部31の接触面34間の間隔(以下「リブ間隔」という)Dを、接触面34の幅W(以下「接触幅」という)と同程度の大きさとしている。
【0024】
図2に示すアウトソール3bの材質としては、たとえばJIS K 6253 A45〜A85の硬さの軟質弾性材料を使用する。ここで硬さとは、温度20±2℃、相対湿度65±2%の条件下に4時間以上放置したものを、室温20℃程度の室内にてJIS K 6253規格に準拠した硬度計を用いて計測した場合のものである。望ましくは一般的なシューズとしての耐久性やグリップ性、屈曲性などのバランスを考慮し、JIS K 6253 A50〜A70の硬さを有するものがよい。
【0025】
アウトソール3bのベース部30の厚みtは、たとえば1mm〜2mm程度であり、凸部31の高さHは、たとえば1mm〜5mm程度である。
【0026】
本願発明者等は、図2に示すアウトソール3bが優れた防滑特性を有することを確認すべく、有限要素法(FEM)解析を行なったので、その結果について、図3〜図8を用いて説明する。
【0027】
図3は、上記アウトソール3bの有限要素解析用モデルを示す図である。なお、説明の便宜上、図3に示すモデルの各部には図2に示す例の対応部分と同じ参照番号を付し、図3に示すモデルの各部の説明は省略する。
【0028】
解析にはPamCrash v2006(日本イーエスアイ株式会社)を用いる。解析モデルはシューズソール部、地面に相当する部分およびシューズ上面に均等に荷重を加えるための剛体面の3つの部分から構成される。ここで解析モデルの要素サイズは0.2mmとする。シューズのソール部は8節点ソリッド要素,シューズのソール部上面の剛体面および地面は4節点シェル要素を用いる。シューズのソール部の上面と剛体の接触は、接触タイプ36(Self−impact Node−to−Segment Contact with Edge Treatment)を用い、地面と接触面34との接触は、接触タイプ34(Non−Symmetric Node−to−Segment Contact with Edge Treatment)を用いる。荷重条件としては、矢印4で示す斜め方向の荷重(X方向に+0.17633kN、Y方向に−1.0kN)を剛体面の重心位置に与える。防滑特性のパラメータは地面と接触面34との接触力とする。
【0029】
図4と図5に、図3に示すモデルの変形挙動例を示す。図4には、図3の向きと反対の向きに荷重を作用させた場合の変形挙動例を示し、図5には、図3の向きと同じ向きに荷重を作用させた場合の変形挙動例を示す。
【0030】
図4に示すように、図3の向きと反対の向きに荷重を作用させると、アウトソール3bの各凸部31が図の右側に倒れたような状態となり、接触面34と地面とが接触した際にこれらの間に作用する接触力は矢印5で示す方向に作用することとなる。つまり、図4の例では、接触面34と地面との間に作用する接触力の向きが、矢印4で示す荷重の向きと同じ向きになる。そのため、荷重を各凸部31で充分に受けることができず、良好な防滑特性は得られない。
【0031】
それに対し、図5に示すように、ベース部30の表面の垂線に対する第1側壁32の傾斜角度(テーパ角度:θ1)を第2側壁33の傾斜角度よりも大きくした場合には、第1側壁32から第2側壁33に向かう方向である矢印4で示す方向に荷重を作用させた際に、各凸部31が図の右側に倒れずにベース部30を支持した状態となる。その結果、接触力は矢印5で示すように図4の場合とは反対方向に作用することとなり、接触面34と地面との間に作用する接触力の向きが荷重の向きとは反対の向きとなる。このため、図5の例によれば良好な防滑特性が得られる。
【0032】
以上の解析結果より、装着者が図2に示す形状の部分を含むアウトソール3bを備えたスポーツ用シューズ1を装着して動作を行なった際に、上記凸部31に加わる荷重の向きが第1側壁32から第2側壁33に向かう方向となるように第1側壁32と第2側壁33とを配置することにより、良好な防滑特性が得られることがわかる。
【0033】
次に、本願発明者等は、図3に示すモデルの接触幅Wを2mm、リブ間隔Dを1.5mmに固定し、第1側壁32の傾斜角度である第1角度θ1を10度から28度まで変化させて上記接触力の値を算出したので、その結果を図6に示す。
【0034】
図6に示すように、図3に示す第1角度θ1を変化させることで、接触力の値も変化することがわかる。この図6では、縦軸に接触力の絶対値を記載しており、図6に示す各接触力は、図3に示す矢印5の方向、つまり荷重の向きと反対方向に作用する。また、第1角度θ1を0(ゼロ)度よりも大きい角度とすることで、上記接触力を荷重の向きと反対方向に作用させることができることも確認している。なお、図6における「移動量」とは、シューズソール部上面の剛体部の重心位置のX方向の移動量のことである。
【0035】
また、本願発明者等は、接触幅Wを1mm〜6mm、リブ間隔Dを0.5mm〜3mmに変化させたモデルを作成し、接触力の値がどのように変化するかについても検討した。たとえば、接触幅Wの総和が6mmになるように凸部31の個数を決めた場合、接触幅Wは1mm、1.5mm、2mm、3mm、6mmの5種類となり、リブ間隔Dは0.5mm〜3mmまで0.5mm刻みの6種類となる。この検討結果を図7と図8に示す。なお、図7と図8において、黒丸の大きさは接触力の大きさを示している。
【0036】
図7および図8に示すように、リブ間隔Dを変化させた場合も、接触力の値が変化することがわかる。また、接触幅Wを変化させた場合も、接触力の値は変化する。したがって、リブ間隔Dを接触幅Wに応じて適切に調整することで、接触力の値を所望の値とすることができ、優れた防滑特性を実現することができる。
【0037】
図7および図8に示すように、たとえば、リブ間隔Dと接触幅Wを同程度の値とした場合に、接触力の値が大きくなり、優れた防滑特性を期待できる。より詳しくは、リブ間隔Dと接触幅Wを同じ値あるいはその±0.5mmの範囲内(たとえばリブ間隔Dと接触幅Wを1.5mmとした場合には、図7において斜線を施した領域の範囲内)の値とした場合に、優れた防滑特性を期待できる。ここで、上記の「±0.5mm」という値は、シューズのソール部を実際に成形した場合に寸法がばらつき得ると考えられる値である。また、リブ間隔Dと接触幅Wを、とともに1mm以上3mm以下の範囲内の値とした場合も、優れた防滑特性を期待できる。さらに、リブ間隔Dや接触幅Wのみならず上記第1角度θ1をも適切に調整することで、容易に接触力の値を調整して防滑特性を調整することができる。
【0038】
次に、本願発明等は、独自の手法で、運動時に人の足の裏に加わる力を算出したので、その結果を図9(a)〜(c)〜図11に示す。
【0039】
図9(a)は、前方に移動中にストップした場合の力の方向を矢印で示した図であり、図9(b)は、サイドステップで右側に移動中にストップした場合の力の方向を矢印で示した図であり、図9(c)は、前方に走行中の場合の力の方向を矢印で示した図である。なお、各図において曲線で囲まれた領域は、力の大きさが同じである領域を示し、最も外側の領域内に複数の領域が存在する部分もあるが、内側の領域ほど作用する力の大きさが大きい。
【0040】
図9(a)〜(c)に示すように、各動作時の人の足の裏に加わる力の方向は様々なものであることがわかる。たとえば図9(a)では、アウトソールのベース部の内側部17から外側部18に向かう横方向の力が少なく、該ベース部の踵側部16から爪先側部15に向かう縦方向あるいは斜め方向の力が多くなる。それに対し、図9(b)では、アウトソールのベース部の内側部17から外側部18に向かう横方向の力が多く、上記ベース部の踵側部16から爪先側部15に向かう縦方向あるいは斜め方向の力が少なくなる。図9(c)では、上記ベース部の爪先側部15から踵側部16に向かう縦方向あるいは斜め方向の力が多くなる。
【0041】
本実施の形態の凸部31を設けるには、上記の各図の矢印と直交する方向に延在するようにアウトソールのベース部の底面に上述の凸部31を突設し、かつ上記矢印の方向に第1と第2側壁32,33が順次並ぶように複数の凸部31を配列すればよい。それにより、スポーツ用シューズの防滑特性を向上することができる。
【0042】
なお、上記凸部31は、アウトソールのベース部の底面の少なくとも一部に設置することで、その部分の優れた防滑効果を期待できる。特に、各動作中に大きな力が加わる箇所に各動作用の凸部31を設けることで、全ての動作に対し防滑特性の優れたスポーツ用シューズ1が得られる。
【0043】
次に、図10(a),(b)と図11とを用いて、本実施の形態のスポーツ用シューズのアウトソールのベース部の底面における上記凸部31の配置例について説明する。
【0044】
図10(a),(b)に示すように、アウトソールのベース部は、爪先側部15と、踵側部16と、装着者の足の第1指側に位置する内側部17と、装着者の足の第5指側に位置する外側部18とを有する。そして、爪先側部15から踵側部16に向かう縦方向(長さ方向)に爪先側部15の先端からベース部の最大長さの20%〜40%の範囲内であって、かつ内側部17から外側部18に向かう横方向(幅方向)に内側部17の端部からベース部の最大幅の60%の範囲内の第1領域8に、凸部31を設けることが考えられる。
【0045】
上記第1領域8は、図10(a)に示す装着者の足の骨との関係では、横方向には第1指〜第3指にわたって延在し、縦方向には第1指〜第3指の基節骨12a,12b,12cから中足骨13a,13b,13cにわたって延在する領域である。
【0046】
上記第1領域8に凸部31を設ける際には、ベース部の横方向の中心線と凸部31の長手(延在)方向とのなす角度θ3が、たとえば0(ゼロ)度〜120度となるようにベース部の底面に横方向に複数の凸部31を並設すればよい。
【0047】
また、上記縦方向にベース部の爪先側部15の先端からベース部の最大長さの20%〜50%の範囲内であって、かつ横方向にベース部の内側部18の端部からベース部の最大幅の60%の位置から、外側部18に達する範囲内の第2領域9に、凸部31を設けてもよい。
【0048】
上記第2領域9は、図10(a)に示す装着者の足の骨との関係では、横方向には第3指〜第5指にわたって延在し、縦方向には第3指の中節骨11cから基節骨12cを経て中足骨13cにわたり、また第4指の末節骨10dから中節骨11dおよび基節骨12dを経て中足骨13dにわたり、第5指の末節骨10eから中節骨11eおよび基節骨12eを経て中足骨13eにわたる領域である。
【0049】
上記第2領域9に凸部31を設ける際には、ベース部の横方向の中心線と凸部31の長手(延在)方向とのなす角度θ3が、たとえば−135度〜45度となるようにベース部の底面に横方向に複数の凸部31を並設すればよい。
【0050】
なお、上記第1と第2領域8,9の双方に所定の角度で凸部31を設けてもよいが、第1と第2領域8,9の一方に凸部31を設けてもよい。また、凸部31の形状は上記以外の任意の形状とすることができる。さらに、アウトソールのベース部において、上記第1と第2領域8,9とは異なる形状および位置の領域に、凸部31を設けてもよい。
【0051】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の1つの実施の形態におけるスポーツ用シューズの斜視図である。
【図2】本発明の1つの実施の形態におけるスポーツ用シューズのアウトソールの部分断面図である。
【図3】有限要素解析用のモデルの1例を示す図である。
【図4】有限要素解析用のモデルに反対方向から荷重を付加した場合のモデルの変形状態を示す図である。
【図5】有限要素解析用のモデルに図3に示す方向から荷重を付加した場合のモデルの変形状態を示す図である。
【図6】接触力と第1側壁の傾斜角度と移動量との関係を示す図である。
【図7】接触幅とリブ間隔と接触力の大きさとの関係を示す図である。
【図8】接触幅とリブ間隔と接触力の大きさとの関係を示す図である。
【図9】(a)は、前方に移動中にストップした場合の足裏に作用する力の方向を矢印で示した図であり、(b)は、サイドステップで右側に移動中にストップした場合の足裏に作用する力の方向を矢印で示した図であり、(c)は、前方に走行中の場合の足裏に作用する力の方向を矢印で示す図である。
【図10】(a)は、人の足および骨格を併記したアウトソールのベース部底面から見た外形図であり、(b)は、アウトソールのベース部底面から見た凸部形成箇所の一例を示す図である。
【図11】人の足の骨格にその名称を併記した図である。
【符号の説明】
【0053】
1 スポーツ用シューズ、2 アッパー部、3 ソール部、3a ミッドソール、3b アウトソール、4,5,7 矢印、6 フレックスライン、8 第1領域、9 第2領域、10d,10e 末節骨、11c,11d,11e 中節骨、12a,12b,12c,12d,12e 基節骨、13a,13b,13c,13d,13e 中足骨、15 爪先側部、16 踵側部、17 内側部、18 外側部、30 ベース部、31 凸部、32 第1側壁、33 第2側壁、34 接触面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の足裏に沿って延在し、スポーツ用シューズ(1)のソール部(3)の一部を構成する板状のベース部(30)と、
前記ベース部(30)の表面から突出し地面または床面と接する接触面(34)を有する複数の凸部(31)とを備え、
前記凸部(31)は、第1側壁(32)と第2側壁(33)とを有し、
前記第1側壁(32)は、前記ベース部(30)に近い側の前記凸部(31)の幅が前記ベース部(30)から離れた側の前記凸部(31)の幅よりも大きくなるように傾斜しており、
前記第1側壁(32)と、前記ベース部(30)の表面の垂線とのなす角度である第1角度は、前記第2側壁(33)と、前記ベース部(30)の表面の垂線とのなす角度である第2角度よりも大きく、
装着者が前記スポーツ用シューズ(1)を装着して動作を行なった際に、前記凸部(31)に加わる荷重の向きが前記第1側壁(32)から前記第2側壁(33)に向かう方向となるように前記第1側壁(32)と前記第2側壁(33)とを配置した、スポーツ用シューズのソール構造。
【請求項2】
前記第1側壁(32)から前記第2側壁(33)に向かう方向に隣り合う前記接触面(34)間の間隔(D)を、前記第1側壁(32)から前記第2側壁(33)に向かう方向の前記接触面(34)の幅である接地幅(W)の大きさに応じて変化させた、請求項1に記載のスポーツ用シューズのソール構造。
【請求項3】
装着者が前記スポーツ用シューズ(1)を装着して動作を行なった際に前記地面または床面から前記接触面(34)が受ける力である接触力の方向が前記荷重の向きと反対方向となるように、前記第1角度と、前記接触面(34)間の間隔(D)と、前記接触幅(W)とを調節した、請求項2に記載のスポーツ用シューズのソール構造。
【請求項4】
前記第1側壁(32)から前記第2側壁(33)に向かう方向に隣り合う前記接触面(34)間の間隔(D)を、前記第1側壁(32)から前記第2側壁(33)に向かう方向の前記接触面(34)の幅である接触幅(W)と同じ値あるいはそれらの±0.5mmの範囲内の値とした、請求項1から請求項3のいずれかに記載のスポーツ用シューズのソール構造。
【請求項5】
前記第1側壁(32)から前記第2側壁(33)に向かう方向に隣り合う前記接触面(34)間の間隔(D)と、前記第1側壁(32)から前記第2側壁(33)に向かう方向の前記接触面(34)の幅である接触幅(W)とを、ともに1mm以上3mm以下の範囲内の値とした、請求項1から請求項4のいずれかに記載のスポーツ用シューズのソール構造。
【請求項6】
前記ベース部(30)は、爪先側部(15)と、踵側部(16)と、装着者の足の第1指側に位置する内側部(17)と、装着者の足の第5指側に位置する外側部(18)とを有し、
前記爪先側部(15)から前記踵側部(16)に向かう縦方向に前記爪先側部(15)の先端から前記ベース部(30)の最大長さの20%〜40%の範囲内であって、かつ前記内側部(17)から前記外側部(18)に向かう横方向に前記内側部(17)の端部から前記ベース部(30)の最大幅の60%の範囲内の領域に、前記凸部(31)を設けた、請求項1から請求項5のいずれかに記載のスポーツ用シューズのソール構造。
【請求項7】
前記ベース部(30)は、爪先側部(15)と、踵側部(16)と、装着者の足の第1指側に位置する内側部(17)と、装着者の足の第5指側に位置する外側部(18)とを有し、
前記縦方向に前記爪先側部(15)の先端から前記ベース部(30)の最大長さの20%〜50%の範囲内であって、かつ前記横方向に前記内側部(17)の端部から前記ベース部(30)の最大幅の60%の位置から前記外側部(18)に達する範囲内の領域に、前記凸部(31)を設けた、請求項1から請求項6のいずれかに記載のスポーツ用シューズのソール構造。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載のソール構造を備えた、スポーツ用シューズ。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−233163(P2009−233163A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84338(P2008−84338)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】