説明

スポーツ用ブラジャー

【課題】本発明は、運動時の乳房の揺れを抑えて揺れによる胸の痛みを軽減し、かつ、着用時の圧迫感を軽減した、快適に運動することのできるスポーツ用ブラジャーを提供する。
【解決手段】左右の乳房を含む胸部を覆うフロント布部2、前記フロント布部2の上部から延びて左右の肩に掛け渡される一対のショルダー布部3、前記フロント布部2の両脇部から背面に延びて前記ショルダー布部3と接続するバック布部4、前記フロント布部2および前記バック布部4の下端に接続するアンダー部5を備えるスポーツ用ブラジャー1であって、前記フロント布部2の内側に、乳房の外周縁を上部から両横にかけて囲み、その両末端が別個にアンダー部5と接続した乳房外周縁布部6を備え、前記外周縁布部6は、前記フロント布部2よりも伸縮性の低い素材で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、激しい運動中においても、乳房の揺れを抑え、揺れによる胸の痛みを軽減することができ、しかも、着用時の圧迫感が少ないスポーツ用ブラジャーに関する。
【背景技術】
【0002】
運動時に着用されるスポーツ用ブラジャーとしては、従来様々なものが知られている。例えば、特許文献1には、内側縁から外側縁に向かって伸縮性の漸減する複数本のゴム紐を一本の円弧帯状に形成したカービングゴムを用いたスポーツ用ブラジャーが開示されている。また、特許文献2には、乳房の脇側下部領域とトップ領域とを結ぶ脇下ラインに沿って、弾性的に伸縮する脇下テープを配置したスポーツ用ブラジャーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−220005号公報
【特許文献2】特許2930932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなスポーツ用ブラジャーにおいては、以下のような問題があった。特許文献1に記載されるスポーツ用ブラジャーは、カービングゴムを用いているため、着用時の圧迫感が強く、また、吸湿性及び通気性に劣り、運動時の発汗により蒸れてしまう。特許文献2に記載されるスポーツ用ブラジャーは、乳頭上を、弾性力を有するテープが通るため、着用時に圧迫感を与え、また乳房の丸みをつぶしてしまう。
【0005】
本発明は、上記問題点を解消し、運動時の乳房の揺れを抑えて揺れによる胸の痛みを軽減し、かつ、着用時の圧迫感を軽減した、快適に運動することのできるスポーツ用ブラジャーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、左右の乳房を含む胸部を覆うフロント布部2、前記フロント布部2の上部から延びて左右の肩に掛け渡される一対のショルダー布部3、前記フロント布部2の両脇部から背面に延びて前記ショルダー布部3と接続するバック布部4、前記フロント布部2および前記バック布部4の下端に接続するアンダー部5を備えるスポーツ用ブラジャー1であって、前記フロント布部2の内側に、乳房の外周縁を上部から両横にかけて囲み、その両末端が別個にアンダー部5と接続した乳房外周縁布部6を備え、前記外周縁布部6は、前記フロント布部2よりも伸縮性の低い素材で構成されることを特徴とするスポーツ用ブラジャーが、上記の目的を達成できることを見出した。発明者は、かかる知見に基づき、さらに研究を重ねて本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記のスポーツ用ブラジャーを提供する。
項1.左右の乳房を含む胸部を覆うフロント布部2、前記フロント布部2の上部から延びて左右の肩に掛け渡される一対のショルダー布部3、前記フロント布部2の両脇部から背面に延びて前記ショルダー布部3と接続するバック布部4、前記フロント布部2および前記バック布部4の下端に接続するアンダー部5を備えるスポーツ用ブラジャー1であって、前記フロント布部2の内側に、乳房の外周縁を上部から両横にかけて囲み、その両末端が別個にアンダー部5と接続した乳房外周縁布部6を備え、前記外周縁布部6は、前記フロント布部2よりも伸縮性の低い素材で構成されることを特徴とするスポーツ用ブラジャー。
項2.前記フロント布部2の内側に、アンダー部5から乳頭を覆う高さまで、フロント布部2の両脇部間を覆う乳房遮蔽布部7を備える、項1に記載のスポーツ用ブラジャー。
項3.前記乳房外周縁布部6が、前記フロント布部2と前記ショルダー布部3との切り替え部分に接続している、項1又は2に記載のスポーツ用ブラジャー。
項4.左右の前記乳房外周縁布部6が接続している、項1〜3のいずれか1項に記載のスポーツ用ブラジャー。
項5.前記乳房外周縁布部6の全体長さが、設置箇所のフロント布部2の全体長さに対して、6〜14mm短いことを特徴とする、項1〜4のいずれか1項に記載のスポーツ用ブラジャー。
項6.前記乳房外周縁布部6が、JIS-L-1018試験による定荷重時伸び率(カットストリップ法2.5cm×20cm、9.81N)が、縦230〜270%、横65〜85%の編地で構成されることを特徴とする、項1〜5のいずれか1項に記載のスポーツ用ブラジャー。
項7.前記乳房外周縁布部6が、ラッセル編地で構成されることを特徴とする、項6に記載のスポーツ用ブラジャー。
【0008】
以下、本発明のスポーツ用ブラジャーについて詳述する。
【0009】
本発明のスポーツ用ブラジャーは、左右の乳房を含む胸部を覆うフロント布部2、前記フロント布部2の上部から延びて左右の肩に掛け渡される一対のショルダー布部3、前記フロント布部2の両脇部から背面に延びて前記ショルダー布部3と接続するバック布部4、前記フロント布部2および前記バック布部4の下端に接続するアンダー部5を備えるスポーツ用ブラジャー1であって、前記フロント布部2の内側に、乳房の外周縁を上部から両横にかけて囲み、その両末端が別個にアンダー部5と接続した乳房外周縁布部6を備え、前記外周縁布部6は、前記フロント布部2よりも伸縮性の低い素材で構成されることを特徴とするスポーツ用ブラジャーである。前記外周縁布部6として、前記フロント布部2よりも伸縮性の低い素材を用いることにより、運動時の乳房の揺れを抑える働きを持たせることができる。
【0010】
フロント布部2の素材としては、動きに応じて体に適度にフィットする編地であれば特に限定はなく、軽さや通気性等の点から、例えばフライス編地のメッシュが好適である。
【0011】
ショルダー布部3およびバック布部4の素材としては、動きやすさを向上させるため、伸縮性を有する生地であれば特に限定はないが、例えば、フライス編地やメッシュ生地が好適である。
【0012】
アンダー部5の素材としては、運動時などに着用する際に、スポーツ用ブラジャー1がずり上がらないようにフィットさせるため、伸縮性があり、体を適度に締め付ける生地あるいはゴムであれば特に限定はなく、通気性や肌触り等の点から、例えば、弾性糸を用いたフライス編地が好適である。
【0013】
乳房外周縁布部6の素材としては、運動時の乳房の揺れを抑えるため、前記フロント布部2の伸びを止める役割を果たす、前記フロント布部2よりも伸縮性の低い生地が用いられる。例えば、JIS-L-1018試験による定荷重時伸び率(カットストリップ法2.5cm×20cm、9.81N)が、縦230〜270%、横65〜85%の編地を用いることが好ましい。特に好ましくは、ラッセル編地である。
【0014】
また乳房遮蔽部7の素材としては、内層としてフロント布部2を補強して乳房を支え、さらにフロント布部から乳頭が透けて見えることを防ぐため、ある程度の強度とハリを有する透けない生地であれば特に限定はないが、肌触りと厚み等の点から、例えば、不織布が好適である。
【0015】
乳房外周縁布部6の形状は、乳房の外周縁を上部から両横にかけて囲み、その両末端が別個にアンダー部5に接続することにより、運動時の乳房の揺れを抑える働きを有する形状であれば特に限定はない。乳房外周縁布部6は、その上端部分がフロント布部2に縫着され、さらに、アンダー部5との接続部分においても縫着され、その他の部分ではフロント布部2には縫着されない状態で設置されることが好ましい。当該形状を採ることにより、乳頭のある乳房中心部を固定しないため、乳頭部分やその近辺に力をかけることなく乳房の揺れを押さえることが可能となり、着用時の圧迫感を軽減することができる。また、乳房の丸みをつぶさないため、美しいシルエットを保つことができる。
【0016】
例えば、フロント布部2とショルダー布部3との切り替え部分を頂点とし、アンダー部5を底辺とする略三角形の、他の2辺を構成する形状が挙げられる。略三角形とは、三角形乃至それに近い形状(各辺が緩やかな曲線を有する三角形状などを含む)を意味する。当該略三角形の2辺のうち脇部側の1辺は、脇部と接続してもよいが、接続しない方が好ましい。また、左右の当該略三角形は、アンダー部5において、近接する頂点同士で接続してもよい。当該略三角形の2辺の幅は、上端のフロント布部2とショルダー布部3の切り替え部分から下端のアンダー部5の間において、一定である必要はない。運動時の乳房の揺れを抑えるためにフロント布部2の伸び止めの働きを有すればよく、幅は2〜3cm程度であることが好ましい。また、当該三角形の2辺の長さは、着用時に乳房外周縁布部6が伸びた状態になり、その縮もうとする力によって乳房の揺れを抑えるような長さであればよい。すなわち、当該三角形の2辺の長さは、それぞれ設置箇所のフロント布部2の長さに対して、若干短いことが好ましく、特にそれぞれ3〜7mm程度短いことが好ましい。
【0017】
また、乳房の外周縁を逆U字状に囲み、該逆U字の両末端がそれぞれアンダー部に接続した形状を採ることもできる。当該逆U字の脇部側は、脇部と接続してもよいが、接続しない方が好ましい。また、左右の当該逆U字は、その近接する辺で互いに接続することもできる。当該逆U字の幅は、一定である必要はない。運動時の乳房の揺れを抑えるためにフロント布部2の伸び止めの働きを有すればよく、幅は2〜3cm程度であることが好ましい。また、当該逆U字の長さは、着用時に乳房外周縁布部6が伸びた状態になり、その縮もうとする力によって乳房の揺れを抑えるような長さであればよい。すなわち、当該逆U字の長さは、設置箇所のフロント布部2の周縁に対して、若干短いことが好ましく、特に6〜14mm程度短いことが好ましい。
【0018】
乳房遮蔽部7の形状は、乳頭がフロント布部から透けて見えることを防ぐ形状であれば特に限定はない。例えば、下辺はアンダー部に当接し、上辺は乳頭を覆う高さであって、フロント布部2の形状に沿った形で緩やかにカーブする形状が挙げられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のスポーツ用ブラジャーは、乳頭のある乳房中心部を直接押さえて固定するのではなく、乳房外周縁を囲む形で固定することにより、乳頭部分やその近辺に力をかけることなく乳房の揺れを押さえることが可能となり、さらに着用時の圧迫感を軽減することができる。また、乳房のふくらみをつぶさないため、乳房のシルエットを美しく保つことができる。さらに、乳房外周縁を囲む素材として、圧力の強いゴム素材ではなく、編地を用いるため、着用時の肌触りに優れ、圧迫感も少ない。
【0020】
したがって、発達途上にあるために乳房が硬く、圧迫により痛みを感じやすい女児にも、乳房が柔らかいために運動時に揺れやすい成人女性にも、どちらにも適している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のスポーツ用ブラジャーを示した図である。
【図2】本発明の試験方法における、マーカーのセット位置を示した図である。
【図3】本発明の試験方法における、乳房揺れの定義について示した図である。
【図4】表1に示す本発明の計測結果に基づき、右の乳房揺れの最大振幅値を示した図である。
【図5】表2に示す本発明の計測結果に基づき、左の乳房揺れの最大振幅値を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の効果について、試験例によって説明する。試験に用いたサンプル(スポーツ用ブラジャー)は、下記に示すA〜Dである。
【0023】
サンプル
A:図1に示す本発明品(乳房外周縁布部6:ナイロン67%、綿18%、ポリウレタン15%、乳房遮蔽部7:不織布、身生地部組成:ポリエステル75%、キュプラ20%、ポリウレタン5%)
B:フライス編により編成されたフロント布部を有する比較品(身生地部組成:綿100%)
C:フロント布部の上縁、および当該上縁から両乳頭部を通過してアンダー部に接続する線上にパワーネットを配した比較品(身生地部組成:ポリエステル95%、ポリウレタン5%)
D:アンダー部から乳房の下縁まで、さらに乳房の横縁から脇部までにかけてパワーネットを配し、乳房部分にはモールドカップが挿入された比較品(身生部組成:ポリエステル80%、ポリウレタン20%)
【0024】
試験方法
成人女性被験者が上記サンプルA〜Dを着用した状態で、それぞれのサンプルの上から、以下に定める位置に再帰反射マーカーをセットし、基準姿勢時と計測動作時(立位姿勢からの垂直跳び)について、その反射光を測定することにより、左右の乳房について当該マーカーの位置を計測した。
マーカーのセット位置は、図2に示すとおり、乳頭点をBTとし、BTと各骨格基準となる点とを結んだ線上の中点を、B1〜B4とした。また、胸骨上点と腋窩点を結んだ中点をB5とした。各マーカーの位置は、下記に示すとおりである。
【0025】
BT:バストトップ(乳頭)
B1:バスト上辺内側
B2:バスト上辺外側
B3:バスト下辺外側
B4:バスト下辺内側
B5:バスト上辺中央
【0026】
乳房揺れについては、図3に示すとおり、同じ着装条件において、基準姿勢に対する動作中の、lBTの鉛直方向相対変位であると定義した。
【0027】
計測結果
各マーカー位置における左右の乳房揺れの最大振幅値を、表1および2に示した。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
図4および5に示すとおり、左右の乳房揺れにおいて、揺れの大きい順に、サンプルB、サンプルC、サンプルD、サンプルAとなった。すなわち、本発明のスポーツ用ブラジャーは、運動時の揺れを抑える効果が高いことが確認できた。特に、バスト上辺外側(B2)とバスト下辺外側(B3)での揺れを効果的に抑えることができた。
【符号の説明】
【0031】
1 スポーツ用ブラジャー
2 フロント布部
3 ショルダー布部
4 バック布部
5 アンダー部
6 乳房外周縁布部
7 乳房遮蔽部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の乳房を含む胸部を覆うフロント布部2、前記フロント布部2の上部から延びて左右の肩に掛け渡される一対のショルダー布部3、前記フロント布部2の両脇部から背面に延びて前記ショルダー布部3と接続するバック布部4、前記フロント布部2および前記バック布部4の下端に接続するアンダー部5を備えるスポーツ用ブラジャー1であって、前記フロント布部2の内側に、乳房の外周縁を上部から両横にかけて囲み、その両末端が別個にアンダー部5と接続した乳房外周縁布部6を備え、前記外周縁布部6は、前記フロント布部2よりも伸縮性の低い素材で構成されることを特徴とするスポーツ用ブラジャー。
【請求項2】
前記フロント布部2の内側に、アンダー部5から乳頭を覆う高さまで、フロント布部2の両脇部間を覆う乳房遮蔽布部7を備える、請求項1に記載のスポーツ用ブラジャー。
【請求項3】
前記乳房外周縁布部6が、前記フロント布部2と前記ショルダー布部3との切り替え部分に接続している、請求項1又は2に記載のスポーツ用ブラジャー。
【請求項4】
左右の前記乳房外周縁布部6が接続している、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスポーツ用ブラジャー。
【請求項5】
前記乳房外周縁布部6の全体長さが、設置箇所のフロント布部2の全体長さに対して、6〜14mm短いことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のスポーツ用ブラジャー。
【請求項6】
前記乳房外周縁布部6が、JIS-L-1018試験による定荷重時伸び率(カットストリップ法2.5cm×20cm、9.81N)が、縦230〜270%、横65〜85%の編地で構成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のスポーツ用ブラジャー。
【請求項7】
前記乳房外周縁布部6が、ラッセル編地で構成されることを特徴とする、請求項6に記載のスポーツ用ブラジャー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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