説明

スポーツ用リストバンド

【課題】
陸上、サッカー、テニス、バスケット、野球などのスポーツ時において、各スポーツの運動に応じて手首関節の屈伸・内外転運動或いは前腕の回内・回外運動に適応し、上肢運動がより効率よくスムーズに行えるようサポートするスポーツ用リストバンドを提供すること。
【解決手段】
外周部及び内周部の二重をなした筒状の伸縮性を有するリストバンド本体と、前記リストバンド本体外周部の表面又は裏面に、対をなしてそれぞれ一方の端部と他方の端部との間に固定され、前記外周部の表面又は裏面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して左右対称又は併進対称に配列された2つの帯状片とからなることにより解決されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸上、サッカー、テニス、バスケット、野球などの運動時において、各運動に応じて手首関節の屈伸・内外転運動或いは前腕の回内・回外運動に適応するスポーツ用リストバンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、テニス、バスケット、野球などのスポーツにおいて、リストへの圧迫感の付与、汗取り、傷害予防等の目的でリストバンドを使用することが普及しており、また手首の運動をサポートすることを目的としたリストバンド又はサポーターについても従来技術として提案されてきた。
【0003】
例えば、特開2003−286606号公報に記載の肘用サポーターは、筒状のサポーターに伸縮阻害部を設けて筋組織を直接圧迫刺激せしめ、運動神経細胞を興奮させて、腕・手首などの運動性を高めることができるものとしており、意匠登録第1053824号公報に掲載されているリストバンドは、手首に接する部分に格子状のリブを設け、手首表面を押圧して指圧効果を発揮するものとしている。
【0004】
また、特開2002−17937号公報に記載の手首サポーターは、手首に装着される締付け部材で、押当て部材を手首関節直前凹部外周の手の甲側面に押当てるようにしたもので、手首の過剰曲げを防止することが可能としており、特開2000−197655号公報に記載のサポーターは、前腕上部を締め付けるように第一バンドを構成し、手関節部を締め付けるように第二バンドを構成したうえ、連結バンドを、第一バンドから第二バンドへかけて前腕部を斜めに螺旋状に巻く弾性体とし、装着部分の捻れ防止をソフトに効果的に発揮するものとしている。
【0005】
さらに装着部位は異なってはいるが、特許第2849538号公報に記載の関節用サポーターは、関節部において緩やかに屈曲して全形を略「く」字形とし、関節部の外側を、関節部の略半分に亘って、靴下のかかと編みにより構成するとともに、内側を、関節部の略半分に亘って、長手方向に伸縮するパール編みにより略矩形に構成することにより、肘関節又は膝関節をスムースに屈伸することができるものとしている。また、特許第2603769号公報に記載の下腿部用サポーターは、ハードな伸縮特性を持つ強面状部片とソフトな伸縮特性を有する弱面状部片から構成され、人体の体表面に圧接して着用されるテーピング機能を有するものとしている。
【0006】
しかしながら、特開2003−286606号公報に記載の肘用サポーターにおいては、樹脂またはラバーの伸縮阻害部をサポーター本体の両端の周囲に設けることによって、腕橈骨筋、尺側手根屈筋と拮抗筋の尺側手根伸筋、橈側手根屈筋と拮抗筋の長(短)橈側手根伸筋の緊張を高めるものとしているが、一般に関節運動は主動筋である一方の筋が緊張し拮抗筋となる他方の筋が弛緩することによって屈曲・伸展運動又は内転・外転運動を行うことができ、前記筋が同時に緊張した場合は手首関節が固定化されてしまうことになる。従って、手首関節等の安定化は望めたとしても柔軟性に欠けることとなってしまう。また、意匠登録第1053824号公報に掲載されているリストバンドにおいては、格子状のリブを内周側に設けることにより特定の個所を押圧するよって、その特定箇所の筋だけ伸張性が鈍くなり、手首関節の柔軟性が損なわれてしまうことになってしまう。
【0007】
また、特開2002−17937号公報に記載の手首サポーターにおいては、押当て部材を手首関節直前凹部外周の手の甲側面に押当てるようにしているため、手首の過剰曲げを防止することができたとしても前記の格子状のリブと同様に手首関節の柔軟性を損なう恐れがあり、特開2000−197655号公報に記載のサポーターにおいては、連結バンドが前腕部を斜めに螺旋状に巻くように構成されていることから、連結バンドに回転差による張力が働くと結果的に連結バンドが前腕部分を締め付けることとなり、前腕部に不快感が生じてしまうことになる。
【0008】
また、特許第2849538号公報に記載の関節用サポーターにおいては、予め略「く」字型に形成し、屈曲内側に周回方向よりも長手方向により大きく伸縮するパール編みを施していることことから、関節が伸展位から屈曲位に運動する場合は、前記構成によりスムースな動きが可能と成り得るが、屈曲位から伸展位に運動する場合は、逆に負荷が掛かってしまうことになる。同様に、特許第2603769号公報に記載の下腿部用サポーターにおいても、緊締力に優れたハードな伸縮特性を有する強面状部片が脚の後方の腓腹筋側に充当されているため、足関節を底屈させる運動についてはそのハードな伸縮特性が活かされるが、足関節を背屈させる運動についてはそのハードな伸縮特性が逆に負荷となってしまうことになり、諸運動時に足関節の運動性が損なわれる恐れが生じるものである。
【0009】
このように、従来の技術においては、ある特定の運動や肢位については効果を現すものの、本来運動を行う際には各関節が屈曲・伸展運動、内転・外転運動、などを周期的に絶えず行っており、手首関節においても屈伸・内外転運動と共に、前腕の内転・外転運動も合わさってより複雑な関節運動をなしていることが考慮されておらず、必ずしも有効なスポーツ用のリストバンド又はサポーターの提案とは成り得ていないというのが問題点であった。
【0010】
【特許文献1】特開2003−286606号公報
【特許文献2】意匠登録第1053824号公報
【特許文献3】特開2002−17937号公報
【特許文献4】特開2000−197655号
【特許文献5】特許第2849538号公報
【特許文献6】特許第2603769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、上肢の構成及び運動特性を簡単に説明すると、まず上肢は上腕、前腕及び手の部分に大別され、上腕と前腕は上腕骨と前腕の橈骨及び尺骨とで肘関節を形成し、橈骨と尺骨とで上・下橈尺関節を形成し、前腕と手の部分は橈骨の遠位と手根骨とで橈骨手根関節及び手根中央関節の手首関節を形成している。
【0012】
各関節はその関節の形成の特徴によって、それぞれ特徴をもった関節運動を行うことができ、肘関節では屈曲・伸展運動を、上・下橈尺関節では前腕の回内・回外運動を、手首関節では屈曲・伸展運動及び内転・外転運動を司っている。
【0013】
また、関節運動を可能とするために、筋がそれぞれの関節を跨いで各骨に付着し、筋の収縮によって関節運動がなされる。そして、一方向の関節運動は、その運動に対して主動的に働く主動筋とそれに協力的に働くいくつかの共同筋の働きで行われ、この一方向の運動を司る主動筋とは反対方向に働くいくつかの拮抗筋が必ず対応している。例えば、肘関節において肘を屈曲させる場合は上腕二頭筋が主動筋となり、上腕筋・腕橈骨筋・長橈側手根伸筋・円回内筋が共同筋として働き、上腕三頭筋が拮抗筋として働く。
【0014】
さらに上肢の各筋の中には、一つの関節運動にだけに係わるのではなく、その他の関節運動の共同筋や拮抗筋としての働きも兼ねている。例えば、肘関節で屈曲運動の主動筋として働く上腕二頭筋は、前腕の回外運動の共同筋として働き、肘関節で屈曲運動の共同筋として働いた長橈側手根伸筋は、手首関節の外転運動の主動筋として働く。この現象は、それらの筋が二つ以上の関節を跨いで付着していることによるもので、これらの筋を二関節筋又は多関節筋と呼ばれている。また筋の別の作用として、より遠位の関節を支持するため近位の関節を固定する固定筋や、ある筋の働きを中和するように働く中和筋がある。
【0015】
そして、スポーツなど一連の運動動作を行う時は、上記の上肢関節運動が順次或いは複合的に働いて複雑な動きを行うことができ、さらに全身の各関節間の運動連鎖による影響によって、より複雑な全身運動を行うことができるものと推測される。
【0016】
しかるに、前述のように従来のリストバンド又はサポーターにおいては、単独の関節運動しか考慮されておらず、運動をサポートするスポーツ用としては、適切を欠いているものと言わざるを得ない。
【0017】
そこで、本発明においては、各スポーツの運動の特徴、例えば把持物を把持しながら上肢運動を行うスポーツかどうかや、手首関節の屈曲・伸展運動を主に利用する上肢運動か若しくは、前腕の回内・回外運動を主に利用する上肢運動かどうか等の特徴を的確に捉え、その上で、上肢運動がより効率よくスムーズに行えるようサポートするという課題を解決しようとするものである。
【0018】
よって本発明の目的は、陸上、サッカー、テニス、バスケット、野球などのスポーツ時において、各スポーツの運動に応じて手首関節の屈伸・内外転運動或いは前腕の回内・回外運動に適応し、上肢運動がより効率よくスムーズに行えるようサポートするスポーツ用リストバンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本課題を解決するためのひとつとしては、外周部及び内周部の二重をなした筒状の伸縮性を有するリストバンド本体と、前記リストバンド本体外周部の表面又は裏面に、対をなしてそれぞれ一方の端部と他方の端部との間に固定され、前記外周部の表面又は裏面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して左右対称に配列された2つの帯状片とからなることにより解決されるものである。
【0020】
伸縮性を有した筒状のリストバンドを手首の部位に装着する場合、リストバンドは一度筒状の外方向に伸ばされてから手首の部位の径に合わせて収縮される。この時、リストバンド本体外周部には、固定された2つの帯状片によって分けられた面に、遠位部と近位部とにおいて不均等な伸縮力が与えられることになり、この伸縮力とリストバンド本体内周部の単純に内側に縮もうとする力と相俟って手首関節を一方向に向かせるように働き、前記対をなした2つの帯状片の位置を手首関節の周囲に対して調節することにより、手首関節を特定の一方向に向きやすくなるよう前記スポーツ用リストバンドは作用する。
【0021】
また別の手段として、外周部及び内周部の二重をなした筒状の伸縮性を有するリストバンド本体と、前記リストバンド本体外周部の表面又は裏面に、対をなしてそれぞれ一方の端部と他方の端部との間に固定され、前記外周部の表面又は裏面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して併進対称に配列された2つの帯状片とからなることにより課題が解決される。
【0022】
この手段によると、一度伸ばされた後、手首の部位又は前腕の部位の径に合わせて収縮されたリストバンド本体外周部には、前腕の軸に対して時計回り又は時計回りと逆回りに、前腕を捻るような伸縮力が与えられることになり、この伸縮力を持ったリストバンド本体外周部が内周部と接することによって、その伸縮力が緩和されて前腕に伝達され、前腕が回内又は回外運動を行った場合に、前記緩和された伸縮力が前記運動を助勢するようスポーツ用リストバンドは作用する。
【0023】
また別の手段として、外周部及び内周部の二重をなした筒状の伸縮性を有するリストバンド本体と、前記リストバンド本体内周部の表面又は裏面に、対をなしてそれぞれ一方の端部と他方の端部との間に固定され、前記内周部の表面又は裏面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して併進対称に配列された2つの帯状片とからなることにより課題が解決される。
【0024】
この手段によると、一度伸ばされた後、手首の部位又は前腕の部位の径に合わせて収縮されたリストバンド本体内周部には、前腕の軸に対して時計回り又は時計回りと逆回りに、前腕を捻るような伸縮力が与えられることになり、この伸縮力とリストバンド本体外周部の単純に内側に縮もうとする力と相俟って手首関節をやや捻るように働き、結果的に手首関節を外転位又は内転位の方向に向きやすくなるようスポーツ用リストバンドは作用する。
【0025】
また別の手段として、外周部及び内周部の二重をなした筒状の伸縮性を有するリストバンド本体と、前記リストバンド本体内周部の表面に、対をなしてそれぞれ一方の端部と他方の端部との間に固定され、前記内周部の表面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して併進対称に配列された2つの第1帯状片と、前記第1帯状片の表側にそれぞれ固定された2つの第2帯状片とからなることにより課題が解決される。
【0026】
この手段によると、一度伸ばされた後、前腕の径に合わせて収縮されたリストバンド本体内周部には、前腕の軸に対して時計回り又は時計回りと逆回りに、前腕を捻るような伸縮力が与えられることになり、この伸縮力が前腕を回内位又は回外位に向かせるよう働き、内側に縮もうとするリストバンド本体外周部と第2帯状片とによって、前記前腕の回内位又は回外位から反転位に向かいやすくなるようにスポーツ用リストバンドは作用する。
【0027】
さらに別の手段として、外周部及び内周部の二重をなした筒状の伸縮性を有するリストバンド本体と、前記リストバンド本体内周部の表面に、対をなして2段状にそれぞれ一方の端部と中間部との間及び中間部と他方の端部との間に固定され、前記内周部の表面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して併進対称に配列された2つの第1一方端側帯状片及び2つの第1他方端側帯状片と、前記第1一方端側帯状片及び第1他方端側帯状片の表側にそれぞれ固定された2つの第2一方端側帯状片及び2つの第2他方端側帯状片とからなることにより課題が解決される。
【0028】
この手段によると、回内位又は回外位にある前腕を、更に反転位に向かいやすくなるようにスポーツ用リストバンドは作用する。
【0029】
また、前記帯状片又は第1帯状片を、刺繍又は液状を塗布後に固形化する方法にて帯状になしたことによっても、前記記載のそれぞれの解決手段となされるものである。
【0030】
さらに別の手段として、筒状の伸縮性を有するリストバンド本体と、前記リストバンド本体の一方の端部に繋がった手袋体と、前記リストバンド本体の表又は裏面の橈側面及び尺側面に、対をなしてそれぞれ一方の端部と他方の端部との間に固定され、前記リストバンド本体の表又は裏面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して左右対称に配列された2つの帯状片とからなることにより課題が解決される。
【0031】
このようにすることによって、手首関節運動のサポートがなされると共に、冬などの寒い時の手の保温効果がプラスされる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、特定に箇所や特定の筋を圧迫することがないので、余計な力を入れる必要はなく、あくまでもリストバンド自身の伸縮力を利用しているため、手首又は前腕に違和感なくサポートすることができる。また、手首又は前腕の一方向に力が掛かることにことに対して、逆方向に運動することも考慮に入れた構成になっているので、屈曲・伸展運動の繰り返しなど周期的に変化する運動についてもスムーズに行えることができる。
【0033】
さらに、帯状片の配列に変化を持たせることによって、リストバンド本体の外周部又は内周部の面の伸縮力に変化を付けることとしているので、各スポーツでの様々な動きに対して対応ができ、手首関節の屈伸・内外転運動或いは前腕の回内・回外運動用と、それぞれの動作に合わせて効率よく上肢運動をサポートすることがでる。
【0034】
また更には、上肢運動を効率よくスムーズに行えることにより、関節の運動連鎖によって、全身運動においても柔軟性が向上し、より高度な運動パフォーマンスを行うことができるという効果を、本発明のスポーツ用リストバンドは生み出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図1〜図24を用いて本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0036】
まずは、図1〜図8を用いて実施例1について説明をする。図1及び図2はリストバンド本体を表したもので、図1は斜視図、図2は断面図を表したものである。図3は帯状片のバリエーションを表した図である。図4は本実施例のスポーツ用リストバンドを3方向から表したもので、(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。図5は断面図、図6はリストバンド本体外周部の展開図、図7は斜視図で、図8は本発明スポーツ用リストバンドをリストに装着した時の斜視図である。
【0037】
図1及び図2から理解される通り、リストバンド本体は筒状の形態をなし、外周部と内周部の2重に成形されている。このリストバンド本体をなす素材は、綿、麻、毛等の単独或いは混合した天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の単独或いは混合した合成繊維、又は前記天然繊維と合成繊維とを混合した繊維にゴム糸やスパンデックス等の弾性糸を加えて、丸編等の手法によって筒状の編地をなすことによって伸縮性を有するものである。そして、前記編地を折り返して両端を縫着の他、接着、粘着、熱圧着又は熱融着などの方法により、外周部と内周部の2重に成形することができる。この2重をなす方法は必ずしも筒状の編地を折り返して形成する必要はなく、2枚の筒状の編地を重ねて外周部と内周部の2重に構成しても良い。また2枚の編地を前記縫着などの方法によって繋げて二重の筒状となしても差し支えなく、その繋げる箇所に一対の自在係止具を取り付けても良い。
【0038】
リストバンド本体の大きさは、高さを4cm程度〜8cm程度とし、内周を10cm程度〜16cm程度とし、手首又は前腕の太さに合わせて適度な圧迫感が付与されるよう製作されれば差し支えない。またその厚さは、0.2cm程度〜1.5cm程度とし、運動に際して差し支えない程度の厚さにすれば良い。
【0039】
図3に表す帯状片は、その平面形態のバリエーションを表したものであるが、概略帯状をなし、その幅は0.5cm程度〜5cm程度とし、好ましくは1cm〜3cmが良い。また、その長さは、前記リストバンド本体の両端部間に傾斜をなして固定する時に、その両端部間の長さに合うように4cm程度〜15cm程度の間で適宜なされれば良い。
【0040】
帯状片素材は、リストバンド本体に記述した繊維等によってなされた布地、不織布、合成皮革、人工皮革、天然皮革やシリコン、ウレタン、塩化ビニルの合成樹脂、天然ゴム、合成ゴム等の運動に差し支えない程度の固体であれば良く、その厚さは、各素材によりリストバンド本体に固定し、運動に差し支えない厚さの0.5cm程度以下とすれば良い。
【0041】
そして、図4〜図6に示すように、2つ帯状体をリストバンド本体外周部の表面に、前記外周部の表面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して左右対称に配列し、前記外周部の一方の端部と他方の端部との間にそれぞれ固定することによって、スポーツ用リストバンドは完成される。
【0042】
尚、母線とは、例えば円柱における円柱面の、その面を形づくっている線のことで、逆に言うと、空間において1つの直線である母線が、1つの曲線上を動くと、柱面を描くこととなる。
【0043】
リストバンド本体外周部の母線に対してなす傾斜角は、10度程度〜40度程度の傾斜角とする。好ましくは20度程度〜30度が良い。また、リストバンド本体外周部に2つ帯状体を固定する方法は、縫着、接着、粘着、熱圧着又は熱融着等の接合方法にて固定する。
【0044】
また、前もって固形化された前記帯状片を固定する方法だけではなく、刺繍又は液状を塗布後に乾燥、熱、紫外線照射などの方法によって、リストバンド本体に固着せしめてから固形化する方法にて帯状になす方法によっても良い。
【0045】
このようになされたスポーツ用リストバンドは、図8に示すように、2つの帯状片が手首の部位の両側面に位置させ、2つの帯状片の間がすぼまっている方を手首関節の背側
にして装着し使用する。このように装着することにより、一度伸ばされた後、手首の部位の径に合わせて収縮されたリストバンド本体外周部に、背側及び腹側の遠位部と近位部とにおいて不均等な伸縮力が周方向に与えられることになり、腹側遠位部の伸びの余力は、背側遠位部に比べ大きくなる。これは2つの帯状片によって背側と腹側の伸び周長に長短が生じることによるものである。
【0046】
しかしながら、この不均等な伸縮力だけでは手首関節に特定の作用を起こさせることはできない。手首関節に特定の作用を起こさせるためには、リストバンド本体内周部の均一に内側に締め付ける働きをする伸縮力が必要となる。この均一的な内周部の伸縮力は、手首関節の動きを鈍くさせるように働きをする。そして、スポーツ時の手首関節はいずれ屈曲・伸展運動を行わなければならず、リストバンド本体内周部の伸縮力に抗することになる。この時に前記リストバンド本体外周部に背側と腹側に不均等な伸縮力が付与されていると、手首関節は自然と抗する力の低い方へと作用することになる。
【0047】
従って、本実施形態によるスポーツ用リストバンドは、手首部分に装着することによって、手首関節を背屈方向に運動させるときには、その運動を促すように働き、手首関節を掌屈方向に運動させるときには、その運動に抵抗すように働くものであり、手首関節運動に対して無理なく、且つスムーズにその運動が行えるよう、効率よく手首関節運動をサポートすることができるものである。
【0048】
そして、前記の装着方法によるスポーツ用リストバンドの手首関節への作用は、主にランニング等の走運動の腕振りに、その効果が発現される。
【0049】
また、別のスポーツの対応として、前記装着方法より約半周分回転させた位置に装着すると、手首関節の屈曲運動を利用してラケットを振るテニスにおいて、その効果が発揮されるものであり、また約1/4周分回転させた位置に装着した場合は、サッカー等の多方面に移動するスポーツにおいて、その効果が発現されるものである。
【0050】
図示はしていないが、このリストバンド本体外周部の表面に固定された2つの帯状体の他に、前記固定された帯状体に相対する外周部の裏面に、それぞれ2つの帯状体を追加して固定し、外周部の表面及び裏面に合計4つの帯状体を固定したとしても差し支えなく、前記作用がなされるものである。
【実施例2】
【0051】
次に実施例2について図9〜図11を用いて説明する。図9は本実施例のスポーツ用リストバンドを3方向から表したもので、(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。図10は断面図、図11はリストバンド本体外周部の展開図である。
【0052】
本実施例は、リストバンド本体及び帯状片の素材、形状、固定方法などは実施例1と同様であり、異なるのはリストバンド本体と帯状片の構成を図9〜図11から理解される通り、リストバンド本体外周部の裏面に、対をなしてそれぞれ一方の端部と他方の端部との間に2つの帯状片が固定され、外周部の裏面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して併進対称に配列されていることにある。
【0053】
このように構成することにより、前腕部分にさほど強くない捻るような力が常時働くことになり、上肢運動を行う際にその運動の順序において、前腕の回内若しくは回外運動が早く現れることになる。これにより、例えば野球のバッティング時の上肢運動をスムーズに行う効果があり、実際にバットのスイングの体感速度が早く感じるという効果をもたらす。
【0054】
本実施例において示した図において、帯状体のリストバンド本体外周部の母線に対して一方向の傾きで表しているが、一般的に右方向傾き又は左方向の傾きの違いは、左右対称の右手用及び左手用として使用されるものである。
【実施例3】
【0055】
次に実施例3について図12〜図14を用いて説明する。図12は本実施例のスポーツ用リストバンドを3方向から表したもので、(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。図13は断面図、図14はリストバンド本体外周部の展開図である。
【0056】
本実施例は、実施例2の発展系で、リストバンド本体外周部の表面に、対をなしてそれぞれ一方の端部と他方の端部との間に2つの帯状片が2対固定され、前記外周部の表面又は裏面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して併進対称に配列された構成となっている。
【0057】
本実施例は、少し長めの丈のスポーツ用リストバンドとして用いられ、その作用効果は実施例2と同様のものである。
【実施例4】
【0058】
次に実施例4について図15〜図17を用いて説明する。図15は本実施例のスポーツ用リストバンドを3方向から表したもので、(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。図16は断面図、図17はリストバンド本体内周部の展開図である。
【0059】
本実施例においても、リストバンド本体及び帯状片の素材、形状、固定方法などは実施例1と同様である。構成においては、リストバンド本体内周部の表面に、対をなしてそれぞれ一方の端部と他方の端部との間に2つの帯状片が固定され、前記内周部の表面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して併進対称に配列されている。
【0060】
このような形態になすことで、その作用効果は前記実施例2と同様の作用があり、前腕の回内又は回外運動を促す働きをする。内周側に帯状片が位置することで、前記実施例2よりは、前腕に対する作用が強く働くので、無意識的に素早く前腕の回内又は回外運動を行う時に効果を現す。例えば、短距離のスタート時の腕振りに対してその効果を発揮する。
【0061】
次に実施例5について図18〜図20を用いて説明する。図18は本実施例のスポーツ用リストバンドを3方向から表したもので、(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。図19は断面図、図20はリストバンド本体内周部の展開図である。
【0062】
本実施例においても、リストバンド本体及び第1帯状片の素材、形状、固定方法などは実施例1と同様である。また、第2帯状片についてもその形状などの特徴については、伸縮性を有すること以外は第1帯状片と同様とする。
【0063】
構成においては、リストバンド本体内周部の表面に、対をなしてそれぞれ一方の端部と他方の端部との間に2つの第1帯状片固定され、前記内周部の表面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して併進対称に配列され、前記第1帯状片の表側にそれぞれ2つの第2帯状片が固定されている。
【0064】
リストバンド本体に固定される2つの第1帯状片については、前記実施例3ないし実施例4と同様の働きをするが、第1帯状片の両端に伸縮性を有する第2帯状片を固定することによって、腕回りが太い人に対して有効な働きをする。
【0065】
リストバンド本体は、ある一定の径にて量産されるもので、個々の体形に必ずしもフィットするわけではなく、腕の太い人がリストバンドを装着すると、どうしても一般的な体形の人より締め付け力が強く働いてしまい、第1帯状片によってもたされる上腕に対する捻りの作用が薄らいでしまうことになる。そこで、本実施例の第1帯状片に伸縮性を有する第2帯状片を固定する構成にすることによって、リストバンド本体内周部と皮膚が密着する状態においても、第2帯状片が伸縮し、第1帯状片とのずれが生じることによって、リストバンド本体との緩衝剤としての働きをするので、強い締め付け力が前腕に働いても、
前腕の回内又は回内運動をスムーズ行えることができる。
【0066】
本実施例のスポーツ用リストバンドは、アメリカンフットボールなどのスポーツにその効果を発揮する。
【0067】
次に実施例6について図21〜図22を用いて説明する。図21は本実施例のスポーツ用リストバンドを3方向から表したもので、(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。図22はリストバンド本体内周部の展開図である。
【0068】
本実施例は、実施例5の発展系であり、リストバンド本体内周部の表面に、対をなして2段状にそれぞれ一方の端部と中間部との間及び中間部と他方の端部との間に固定され、前記内周部の表面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して併進対称に配列された2つの第1一方端側帯状片及び2つの第1他方端側帯状片と、前記第1一方端側帯状片及び第1他方端側帯状片の表側にそれぞれ固定された2つの第2一方端側帯状片及び2つの第2他方端側帯状片とからなる。
【0069】
本実施例は、長めの丈のスポーツ用リストバンドとして用いられ、第1帯状片があまり長くならないためにこのような構成にする。その作用効果は実施例5と同様のものであり、主に野球のバッティング用として効果を発揮する。
【0070】
次に実施例7について説明する。図23は本実施例のスポーツ用リストバンドの掌側平面図であり、図24は断面図である。
【0071】
図23及び図24に表されている通り、本実施例の構成は、筒状の伸縮性を有するリストバンド本体と、前記リストバンド本体の一方の端部に繋がった手袋体と、前記リストバンド本体の表又は裏面の橈側面及び尺側面に、対をなしてそれぞれ一方の端部と他方の端部との間に固定され、前記リストバンド本体の表又は裏面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して左右対称に配列された2つの帯状片とからなる。
【0072】
本実施形態の作用効果は、実施例1と同様の作用効果を現すものであり、リストバンド本体の掌側の方が甲側よりその伸びに余力を有することになることから、手首関節の背屈運動を促すように作用する。
【0073】
リストバンド本体及び帯状片は実施例1に準じるものとし、手袋体は、リストバンド本体の素材を用いるか、天然皮革、合成皮革、人工皮革などの皮革を用いるかすれば良いが、好ましくは、繊維素材でリストバンド本体の素材に合わせる方が良い。
【0074】
本実施例の作用効果は、実施例1と同じくすることから、主に寒い時の防寒用としてランニングの運動を行うときに、その効果を発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0075】
一般的に普及している従来技術のリストバンドは、安価で一般スポーツ競技者又は愛好家に広く使用されているものである。そして、前記説明の通り、本発明に係わるスポーツ用リストバンドにおいては、従来技術より製造工程が増えるものの、各スポーツの運動に即した手首及び上肢運動を、より効率よくスムーズに行えるようサポートするという効果が実現されるものであり、一つの動作に多くの時間を割いて練習するスポーツ競技者にとって、その使用価値は計りしれないほど高いものである。さらに昨今スポーツ界において自己実現を果たそうとする人々が多くなってきていることからも、本発明のような用品を多くの人々が待望しており、利用者に多大なる貢献をもたらすものと期待される。
【0076】
また、手首関節運動がスムーズに行えるようになることから、肘関節回りの特定の筋又は関節の酷使によるテニス肘など、上肢のスポーツ傷害予防にも役立つものと考えられ、広くスポーツ界の発展に貢献できるものと確信される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】リストバンド本体を斜め上方から表した斜視図である。
【図2】リストバンド本体をXY面で切断した断面を表した図である。
【図3】帯状片のバリエーションを表した図である。
【図4】本発明実施例1におけるスポーツ用リストバンドを3方向から表したもので、(A)は平面を、(B)は正面を、(C)は側面を表した図である。
【図5】図4(B)のY−Y断面を表した図である。
【図6】図4(A)のX−X切断における正面展開(外周部)を表した図である。
【図7】本発明実施例1におけるスポーツ用リストバンドを斜め上方から表した斜視図である。
【図8】本発明実施例1におけるスポーツ用リストバンドをリストに装着した姿を表した図である。
【図9】本発明実施例2におけるスポーツ用リストバンドを3方向から表したもので、(A)は平面を、(B)は正面を、(C)は側面を表した図である。
【図10】図9(B)のY−Y断面を表した図である。
【図11】図9(A)のX−X切断における正面展開(外周部)を表した図である。
【図12】本発明実施例3におけるスポーツ用リストバンドを3方向から表したもので、(A)は平面を、(B)は正面を、(C)は側面を表した図である。
【図13】図12(B)のY−Y断面を表した図である。
【図14】図12(A)のX−X切断における正面展開(外周部)を表した図である。
【図15】本発明実施例4におけるスポーツ用リストバンドを3方向から表したもので、(A)は平面を、(B)は正面を、(C)は側面を表した図である。
【図16】図15(B)のY−Y断面を表した図である。
【図17】図15(A)のX−X切断における正面展開(内周部)を表した図である。
【図18】本発明実施例5におけるスポーツ用リストバンドを3方向から表したもので、(A)は平面を、(B)は正面を、(C)は側面を表した図である。
【図19】図18(B)のY−Y断面を表した図である。
【図20】図18(A)のX−X切断における正面展開(内周部)を表した図である。
【図21】本発明実施例6におけるスポーツ用リストバンドを3方向から表したもので、(A)は平面を、(B)は正面を、(C)は側面を表した図である。
【図22】図21(A)のX−X切断における正面展開(内周部)を表した図である。
【図23】本発明実施例7におけるスポーツ用リストバンドの掌側平面図である。
【図24】図23Y−Y断面を表した図である。
【符号の説明】
【0078】
01 リストバンド本体
02 外周部
03 内周部
04 帯状片
05 母線
06 第1帯状片
07 第2帯状片
08 手袋体
10、20、30、40、50、60、70 スポーツ用リストバンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部及び内周部の二重をなした筒状の伸縮性を有するリストバンド本体と、
前記リストバンド本体外周部の表面又は裏面に、対をなしてそれぞれ一方の端部と他方の端部との間に固定され、前記外周部の表面又は裏面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して左右対称に配列された2つの帯状片と、
からなるスポーツ用リストバンド。
【請求項2】
外周部及び内周部の二重をなした筒状の伸縮性を有するリストバンド本体と、
前記リストバンド本体外周部の表面又は裏面に、対をなしてそれぞれ一方の端部と他方の端部との間に固定され、前記外周部の表面又は裏面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して併進対称に配列された2つの帯状片と、
からなるスポーツ用リストバンド。
【請求項3】
外周部及び内周部の二重をなした筒状の伸縮性を有するリストバンド本体と、
前記リストバンド本体内周部の表面又は裏面に、対をなしてそれぞれ一方の端部と他方の端部との間に固定され、前記内周部の表面又は裏面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して併進対称に配列された2つの帯状片と、
からなるスポーツ用リストバンド。
【請求項4】
外周部及び内周部の二重をなした筒状の伸縮性を有するリストバンド本体と、
前記リストバンド本体内周部の表面に、対をなしてそれぞれ一方の端部と他方の端部との間に固定され、前記内周部の表面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して併進対称に配列された2つの第1帯状片と、
前記第1帯状片の表側にそれぞれ固定された2つの第2帯状片と、
からなるスポーツ用リストバンド。
【請求項5】
外周部及び内周部の二重をなした筒状の伸縮性を有するリストバンド本体と、
前記リストバンド本体内周部の表面に、対をなして2段状にそれぞれ一方の端部と中間部との間及び中間部と他方の端部との間に固定され、前記内周部の表面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して併進対称に配列された2つの第1一方端側帯状片及び2つの第1他方端側帯状片と、
前記第1一方端側帯状片及び第1他方端側帯状片の表側にそれぞれ固定された2つの第2一方端側帯状片及び2つの第2他方端側帯状片と、
からなるスポーツ用リストバンド。
【請求項6】
前記帯状片又は第1帯状片を、刺繍又は液状を塗布後に固形化する方法にて帯状になした、ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載のスポーツ用リストバンド。
【請求項7】
筒状の伸縮性を有するリストバンド本体と、
前記リストバンド本体の一方の端部に繋がった手袋体と、
前記リストバンド本体の表又は裏面の橈側面及び尺側面に、対をなしてそれぞれ一方の端部と他方の端部との間に固定され、前記リストバンド本体の表又は裏面の母線に対して傾斜をなし、且つ前記母線に対して左右対称に配列された2つの帯状片と、
からなるスポーツ用リストバンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−348413(P2006−348413A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175033(P2005−175033)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(303052588)
【Fターム(参考)】