説明

スポーツ用保護具

【課題】衝撃吸収分散性能が向上したスポーツ用保護具を提供する。
【解決手段】衝撃吸収部20を備えたスポーツ用保護具(シンガード1)において、衝撃吸収部20を複数の空気袋21,22,23から構成すると共に、空気袋21,22,23間を連通する連通部24,26,27,28を備えた。複数の空気袋21,22,23から構成された衝撃吸収部20が裏面に設けられる硬質板部10を備えた。あるいは、複数の空気袋から構成された衝撃吸収部が装着される装着部をサポーターに備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、サッカーやバレーボールなどのスポーツをする時に、人体の要所に装着されるスポーツ用保護具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のスポーツ用保護具として、例えば、サッカーの競技者が脛に装着するシンガード(脛当て)と呼ばれるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このシンガードは、硬質樹脂を成形して成る硬質板部と、硬質板部の裏面側に設けられた発泡樹脂製や非発砲弾性体の衝撃吸収部とを備えている。硬質板部を設けていることで、スパイクシューズ等で蹴られたときのガードが確実になり、また、その硬質板部の裏面側に衝撃吸収部を設けていることで、蹴られたときの衝撃が緩和される。
【0003】
また、スポーツ用保護具としては、例えば、バレーボールの競技者が膝に装着するニーガードと呼ばれる膝用サポーターや、肘に装着するエルボーガードと呼ばれる肘用サポーターが知られている(例えば、特許文献1参照)。これらのサポーターは、膝や肘を覆う筒状をなす伸縮自在の布製本体部と、本体部に取り付けられた発泡樹脂製や非発砲弾性体の衝撃吸収部とを備えており、この衝撃吸収部により膝や肘への衝撃が緩和されるようになっている。
【0004】
また、上記衝撃吸収部として、吸気バルーンと排気弁を備えた扁平エアーバッグを備えたもの(特許文献2参照)や、複数の空気袋を備えたもの(特許文献3参照)もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−214841号公報
【特許文献2】実用新案登録第2596986号公報
【特許文献3】実用新案登録第3093572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、衝撃吸収部を発泡樹脂製とした場合には、装着者が競技中にかいた汗や雨水が衝撃吸収部の表面に付着するのみならず、衝撃吸収部が有する発泡セル中に溜まって内部も汚れることになる。こうなると、汗や雨水を栄養源として衝撃吸収部の表面及び内部に細菌が繁殖し、匂いの発生原因になるとともに、不衛生である。これ対し、スポーツ用保護具を清潔に維持するために、使用後に洗浄することが考えられるが、この場合には、洗浄水が発泡セル中に溜まることになって、衝撃吸収部が短時間で乾き難い。従って、スポーツ用保護具を頻繁に洗浄することができず、常に清潔な状態で使用することが難しい。また、スポーツ用保護具を使用後に拭くことも考えられるが、発泡セルの中に溜まった汗や雨水を拭き取ることは容易ではなく、清潔に保つのは難しい。
【0007】
一方、衝撃吸収部が非発泡弾性体(非発泡エラストマー)やエアーバッグ(空気袋)で構成されていれば、衝撃吸収部を拭くだけで素早くかつ簡単にきれいにでき、また、洗浄した場合にも早く乾いてすぐに使用可能な状態にできる。これにより、装着者は、常に清潔なスポーツ用保護具を使用することができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の非発泡弾性体(非発泡エラストマー)は衝撃吸収分散性能に限りがある。また、特許文献2に記載の扁平エアーバッグは一体ものであり、特許文献3に記載の複数の空気袋はそれぞれ空気袋が独立して形成されているので、衝撃吸収分散性能が単体のものに限られてしまう。
【0009】
そこで、本願発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、衝撃吸収分散性能がさらに向上したスポーツ用保護具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するために、本願発明は、衝撃吸収部を備えたスポーツ用保護具において、前記衝撃吸収部を複数の空気袋から構成すると共に、空気袋間を連通する連通部を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
そして、前記複数の空気袋から構成された衝撃吸収部が裏面に設けられる硬質板部を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
あるいは、前記複数の空気袋から構成された衝撃吸収部が装着される装着部をサポーターに備えたことを特徴とするものである。
【0013】
また、前記連通部を介して連通する任意の空気袋に、水は通さずに空気を通して内圧を大気圧に調整する通気膜を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、衝撃吸収部を複数の空気袋から構成したことにより、良好なフィット感が得られ、汗や雨の吸収がなくて清潔に保つことが容易になると共に、或る空気袋に加わる衝撃により圧縮される空気が連通部を介して他の空気袋に適度に流出することにより、衝撃が効率よく吸収分散されるので、衝撃吸収分散性能が向上する。
【0015】
また、複数の空気袋から構成された衝撃吸収部が裏面に設けられる硬質板部を備えることにより、サッカーの競技者が複数の空気袋から構成された衝撃吸収部を脛に当てて装着することで、このスポーツ用保護具をシンガードとして使用可能になる。
【0016】
さらに、複数の空気袋から構成された衝撃吸収部が装着される装着部をサポーターに備えることにより、バレーボールの競技者がこのスポーツ用保護具を膝用又は肘用サポーターとして使用可能になる。
【0017】
また、連通部を介して連通する任意の空気袋に、水は通さずに空気を通して内圧を大気圧に調整する通気膜を備えることにより、空気を補充することなく、常に空気袋の内圧が大気圧に維持されるので、メンテナンスフリーで、性能調整が不要となる。さらに、通気膜を通して、空気が出入りするため、気温の変化によって空気袋が膨張したり、潰れたりしない。また、上記のような通気膜を使用することにより、水の浸入は防ぐことができるので、水洗いも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明に係るスポーツ用保護具をシンガードに適用した一実施形態を示す正面図。
【図2】同じく、その裏面図。
【図3】同じく、その衝撃吸収性試験結果を表にして示した図。
【図4】本願発明に係るスポーツ用保護具を膝用サポーターに適用した一実施形態を示す斜視図。
【図5】同じく、その衝撃吸収部の平面図。
【図6】同じく、その斜視図。
【図7】サポーター用衝撃吸収部の他の実施形態を示す上面図。
【図8】サポーター用衝撃吸収部の他の実施形態を示す正面図。
【図9】サポーター用衝撃吸収部の他の実施形態を示す右側面図。
【図10】サポーター用衝撃吸収部の他の実施形態を示す裏面図。
【図11】サポーター用衝撃吸収部の他の実施形態を示す図10のA−A線断面図。
【図12】本願発明に係るスポーツ用保護具をシンガードに適用した他の実施形態を示す正面図。
【図13】同じく、その裏面図。
【図14】同じく、その要部構成図で、(A)は平面図、(B)はそのB−B線断面図。
【図15】同じく、そのプロテクター単体の構成図で、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は裏面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明は例示に過ぎず、本願発明やその適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
(実施形態1)
図1及び図2は、本願発明の実施形態1に係るスポーツ用保護具としてのシンガード1を示すものである。このシンガード1は、サッカーの競技者が脛当てとして使用するものであり、全体として脛の形状に沿うように湾曲した板状をなしている。なお、シンガード1の裏面を脛に当たる側の面とし、表面をその反対側の面とする。
【0021】
このシンガード1は、図1に示す表面側を構成する硬質板部10と、図2に示す裏面側を構成する衝撃吸収部20とを備えた2層構造である。硬質板部10は、例えば、ポリプロピレン、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、または反応性硬化樹脂等の樹脂材を射出成形してなるものである。この硬質板部10の硬さは、競技中にスパイクシューズで蹴られた場合や、競技者の足同士がぶつかった場合等に脛をガードできる程度の硬さである。硬質板部10は、全体として脛の上下方向に長い形状で、上述のように湾曲している。図1に示すように、硬質板部10の上下左右の各縁部は、それぞれの中央部が内側に向けて湾曲するように構成され、また、上部側が下部側に比べて幅が広くなっている。硬質板部10の表面側には対角線状に略X字状の凸部11が形成され、略X字状の凸部11の中央部に上下2つの略三角形状の通気口12,12が形成され、上下左右の段部13には段部13の形状に沿った通気口14が形成されている。
【0022】
一方、衝撃吸収部20は、ウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、軟質塩化ビニル等の柔軟性を有する樹脂で構成され、硬質板部10の裏面側に複数の空気袋21,22,23を形成するように設けられている。本実施形態では、左右の上下方向に大きめの空気袋21がそれぞれ3つずつと、中央部の上下方向に小さい空気袋22が3つ、上下端の左右に上記の中間の大きさの2つの空気袋23がそれぞれ形成されている。上端側の2つの空気袋23,23の間には、それらに連通部24を介して連通してボール用のハンドポンプで空気注入可能なボール用バルブ同様の空気注入孔25が形成されている。これらの空気袋23,23は連通部26,26を介して左右の空気袋21,21と連通している。また、左右の空気袋21は連通部27を介して中央の空気袋22と連通している。さらに、左右の一番下の空気袋21は連通部28を介して下端の左右の空気袋23と連通している。すなわち、空気注入孔25と全ての空気袋21,22,23が連通すると共に、各空気袋21,22,23が連通している。
【0023】
上記衝撃吸収部20は、硬質板部10の裏面の略全体を覆う形状で、硬質板部10に一体形成されている。衝撃吸収部20は、図1,図2に示すように、硬質板部10の裏面側から全体周縁部及び中央部の通気口12の周縁部を通って表側へ回り込み、表側全体周縁部と中央部の通気口周縁部を覆うように形成されている。従って、硬質板部10の全体周縁部と通気口12の周縁部は、全周が衝撃吸収部20により被覆された状態となっている。
【0024】
上記のように構成されたシンガード1を使用する際には、衝撃吸収部20を脛に直接当て、その上から靴下(図示せず)を履き、その靴下によりシンガード1を表側から覆って脛に保持する。このとき、空気袋21,22,23の空気圧をボール用ハンドボンプで好みのフィット感に調整できる。また、シンガード1の全体周縁部や通気口12の周縁部が衝撃吸収部20を構成する柔軟性を有する樹脂で構成されていることから、靴下に密着して滑り止めとなる。これにより、競技中にシンガード1が動いて位置ずれするのを抑制することができる。
【0025】
シンガード1の使用時に競技者が汗をかいた場合には、空気袋21,22,23間の隙間を通って排出される。また、熱気や湿気を帯びた空気も通気口12,14から外部に放出される。また、他の競技者のスパイクシューズがシンガード1に当たった場合には、複数の空気袋21,22,23から成る衝撃吸収部20が連通部24,26,27,28を介して連通しているので、衝撃が効率良く吸収分散されて緩和される。
【0026】
図3は、上記実施形態のシンガード(品名:エアシンガード)1と他のシンガードを比較した衝撃吸収性試験結果を表にして示した図である。なお、試験方法は、落下物の重量:0.25kg、落下高さ:35cmで行った。この試験結果から明らかなように、本実施形態のシンガード1は、広い内圧範囲(大気圧〜大気圧+500hpa)において、本願出願人による前記特許文献1(特開2008−214841号公報)に記載のものや、スポンジタイプ1〜3(他社製)を用いたものに比べて、優れた衝撃吸収性を示している。
【0027】
また、使用時に競技者がかいた汗や雨水は衝撃吸収部20に付着することになるが、衝撃吸収部20に発泡セルが無いため、汗や雨水が衝撃吸収部20に吸収されることはない。このため、衝撃吸収部20を拭くだけできれいにすることが可能である。また、衝撃吸収部20を洗浄した場合には、洗浄水が衝撃吸収部20の内部に吸収されないため早く乾く。
【0028】
以上説明したように、この実施形態1に係るシンガード1によれば、衝撃吸収部20が複数の空気袋21,22,23で構成されていると共に、空気袋21,22,23を連通する連通部24,26,27,28が設けられているので、衝撃吸収分散性能がさらに向上する。また、空気袋21,22,23に空気を注入するために、ボール用バルブ同様の空気注入孔25を設けているので、それらの空気圧をボール用ハンドボンプで好みのフィット感に手軽に調整できる。さらに、衝撃吸収部20を拭くだけで素早くかつ簡単にきれいにでき、また、洗浄した場合にも早く乾いてすぐに使用可能な状態にできる。これにより、競技者は、常に清潔なシンガード1を使用することができる。
【0029】
また、衝撃吸収部20を硬質板部10の表面側へ導出させるようにしたので、衝撃吸収部20と硬質板部10とを強く結合できる。これにより、スポーツ実施時に衝撃吸収部20に大きな力がかかった際や長期間使用した際に、衝撃吸収部20が硬質板部10から分離しないようにすることができる。
【0030】
また、硬質板部10の周縁部を衝撃吸収部20で被覆したので、硬質板部10の周縁部が競技者の皮膚に直接触れて傷付けることはなく、装着時の安全性も向上できる。
【0031】
また、衝撃吸収部20から硬質板部10に至る通気口12,14を形成したので、競技者が装着した状態で熱や汗を逃がすことができ、装着感を良好にすることができる。
【0032】
なお、本願発明は、シンガード1以外にも、例えば、野球用プロテクター、ヘルメット、アームガード、腰部プロテクター、脊椎プロテクター、ラグビー用のヘッドギア等に適用することが可能である。
【0033】
(実施形態2)
図4,図5,図6は、本願発明の実施形態2に係るスポーツ用保護具としての膝用サポーター30を示すものである。この膝用サポーター30は、バレーボール等の競技者がニーガードとして使用するものであり、筒状の本体部31と、本体部31に取り付けられた衝撃吸収部32とで構成されている。
【0034】
本体部31は、弾性糸を織り込んだ弾性伸縮布で構成されており、内径が拡大するように変形可能となっている。本体部31の内面には、薄い布材が衝撃吸収部32の収容部33を構成する袋状に縫い付けられている。
【0035】
衝撃吸収部32は、図5及び図6に示すように複数の略楕円形状あるいは略円形状の空気袋34が放射状に連結された構成で、空気袋34間を連通する連通部35が備えられている。また、膝の関節部の形状に沿うように湾曲したときに、一部の空気袋34が重ならないように、放射状の略1列を無くした空白部36が形成されている。また、空気袋34は放射状に配置されて空気袋34間には隙間が形成されるので、通気性が確保されて汗や熱を逃がすことが可能になる。
【0036】
この実施形態2のものにおいても、実施形態1のものと同様に、良好なフィット感が得られると共に、或る空気袋34に加わる衝撃により圧縮される空気が連通部35を介して他の空気袋34に適度に流出することにより、衝撃が効率よく吸収分散されるので、衝撃吸収分散性能がさらに向上する。また、上記膝用サポーター30の使用時に競技者がかいた汗は衝撃吸収部32に付着することになるが、衝撃吸収部32に発泡セルが無いため、吸収されることはない。また、衝撃吸収部32を洗浄した場合には、洗浄水が衝撃吸収部32の内部に吸収されないため早く乾く。
【0037】
以上説明したように、この実施形態2に係る膝用サポーター30によれば、実施形態1と同様に、衝撃吸収部32を複数の空気袋34から構成すると共に、空気袋34間を連通する連通部35を備えているので、衝撃が効率よく吸収分散されるので、衝撃吸収分散性能がさらに向上する。また、衝撃吸収部32を拭くだけで素早くかつ簡単にきれいにでき、また、洗浄した場合にも早く乾いてすぐに使用可能な状態にできる。これにより、競技者は、常に清潔な膝用サポーター30を使用することができる。
【0038】
また、衝撃吸収部32が空気袋34を放射状に連結した構成であるので、空気袋34間の隙間が通気孔として機能することになり、この隙間から汗や熱を逃がすことができる。これにより、使用感を良好にすることができる。
【0039】
また、衝撃吸収部32を膝の関節部の形状に沿うように湾曲させることが容易なので、装着時のフィット感を向上させて、より一層良好な使用感を得ることができる。
【0040】
なお、上記実施形態2では、スポーツ用保護具が膝用サポーター30である場合について説明したが、本願発明は、膝用サポーター30と同様な構造の肘用サポーターにも適用することができる。
【0041】
(実施形態3)
図7乃至図11は、サポーター用衝撃吸収部の他の実施形態を示す上面図、正面図、右側面図、裏面図、A−A線断面図である。
【0042】
本実施形態の衝撃吸収部40は、前記実施形態2よりも大きな,横長で膝に対応するように湾曲した4つの空気袋41、42、43、44が連通部45を介して縦並びに連結されている。さらに、上から2番目の最も大きな空気袋42と、その次(上から3番目)の空気袋43の各両端には、連通部46を介してサイズ調整用の小さな空気袋47が連結されている。すなわち、本実施形態3のようにサイズ調整用の空気袋47を連結すると例えばMLサイズとなり、連結されないとSサイズとなるというように、本体側の空気袋41〜44の大きさを変えることなく複数のサイズに容易に対応することができるようになっている。
【0043】
また、前記実施形態2のものには空気注入孔が設けられていないが、本実施形態3では、一番上側の空気袋41の一側端に最初の実施形態1と同様な空気注入孔48が形成されている。すなわち、実施形態1同様、空気注入孔48と全ての空気袋41〜44、47が連通すると共に、各空気袋41〜44、47が連通している。
【0044】
さらに、膝の関節部の形状に沿って湾曲しやすいように、空気袋41〜44間の連結部49は肉薄に形成されると共に、各空気袋41〜44の左右中間部位に溝部50が形成されている。また、各空気袋41〜44には、ほぼ均等に複数の通気孔51が形成されている。
【0045】
この実施形態3においても、上述した構成により、前記実施形態2のサポーターとほぼ同様な作用効果が得られると共に、前記実施形態1同様、空気袋41〜44、47に空気を注入するために、ボール用バルブ同様の空気注入孔48を設けているので、それらの空気圧をボール用ハンドボンプで好みのフィット感に手軽に調整できる。
【0046】
(実施形態4)
図12及び図13は、本願発明の実施形態4に係るスポーツ用保護具としてのシンガード1を示すものであり、前記図1及び図2の実施形態1と同一又は相当部分には同一符号を用いて、重複する説明は省略する。本実施形態4においては、前記実施形態1のシンガード1に設けられていた空気注入孔の代わりに、水は通さずに空気を通して内圧を大気圧に調整する機能を有する通気膜を備えたものである。
【0047】
具体的に説明すると、前述した実施形態1で裏面の上端側に配置された2つの空気袋23,23間に備えられていた空気注入孔25は、本実施形態4では図13に示すように設けられておらず、2つの空気袋23,23間は連通部24を介して連通している。裏面側の他の構成は、前記実施形態1と同様である。
【0048】
そして、前記実施形態1の空気注入孔25に代わって、本実施形態4では、図12に示すように、表側の硬質板部10における略X字状の凸部11の中央上部に円形のプロテクター61で覆われた通気膜62(図14参照)が設けられている。上記プロテクター61には中央部に十字状に仕切られた4つの通気孔63が形成されている。このプロテクター61は、硬質板部10の裏面側から衝撃吸収部20を構成する柔軟性を有する樹脂が硬質板部10に形成された図示しない円形孔から表側に導出されて成形された取付凹部64に取り付けられる。図15に示すように円盤状に構成されたプロテクター61の中央部には上述したように十字状に仕切られた4つ通気孔63が形成されている。図14(B)に示すように、上記プロテクター61の裏面側には、ほぼ同径のリング状の両面テープ65を介して、それらより小径の通気膜62が取り付けられ、通気膜62が取り付けられたプロテクター61が硬質板部10裏面側の衝撃吸収部20に連通する通気孔66が形成された取付凹部64に両面テープ65を介して取り付けられる。本実施形態4では、この通気膜62が取り付けられた通気孔66が裏面側の中央部の一番上の小さな空気袋22に連通するようになっている。
【0049】
上記通気膜62としては、具体的には、例えば日東電工株式会社製のふっ素樹脂多孔質フィルムが使用可能であるが、水分や塵を通さず、空気のみを通すものであれば使用可能である。また、プロテクター61は通気膜62を保護する部品であり、材質は樹脂で、硬質樹脂であればPP(ポリプロピレン)等が使用可能であるが、保護するだけなので、軟質樹脂(ポリエステル系エラストマー等)でも使用可能である。両面テープ65は、通気膜62をプロテクター61裏面に固定し、このプロテクター61を取付凹部64底面に固定するものであるが、両面テープ65を用いることにより、通気膜62の性能を損なうことなく、プロテクター61と通気膜62の固定が可能になる。なお、通気膜62の通気部分に悪影響を及ぼさないようにすれば、接着や溶着でも可能である。上記プロテクター61と両面テープ65については、上記通気膜62自体にも一応、保護膜(ポリエステル)があるため、無くても実施可能である。また、上記実施形態4では、表側の取付部位に対応して、通気膜62が取り付けられた通気孔66が裏面側の中央部の一番上の小さな空気袋22に連通するようにしたが、連通部を介して連通する任意の空気袋に対応して取り付ける可能である。
【0050】
上述の通気膜62を備えたシンガード1は、まず硬質板部10をインサートして衝撃吸収部20を構成する柔軟性を有する樹脂(エラストマー等)でブロー成型し、成形後、衝撃吸収部20の気密性を確認する。気密性が確認された成形品に対して、上述した取付凹部64の露出底部に通気孔66を形成する。そして、図14(B)に示すように、通気孔66が形成された取付凹部64にプロテクター61の裏面側にリング状の両面テープ65を介して通気膜62を貼り付け、それを通気孔66が形成された取付凹部64の底面に張り付けて完成する。
【0051】
上述したような通気膜62を備えたシンガード1は、衝撃吸収部20の空気袋21,22,23の内圧が通気膜62の作用によって常に大気圧に調整される。前記図3の衝撃吸収性試験結果によれば、前述した構成のシンガード1は、広い内圧範囲(大気圧〜大気圧+500hpa)において優れた衝撃吸収性を示している。また、上記通気膜62は、空気は通すが、水は通さないほどの微細孔から成っているので、或る空気袋に加わる衝撃により圧縮される空気は、通気膜62からはほとんで外部に流出せず、連通部を介して他の空気袋に適度に流出して、衝撃が効率よく吸収分散されるので、通気膜62によって上述した優れた衝撃吸収分散性能が損なわれることはない。
【0052】
従って、本実施形態4に係るシンガード1によれば、前記実施形態1とほぼ同様な作用効果が得られるとともに、上述したような通気膜62を設けたことにより、空気を補充することなく、常に空気袋21,22,23の内圧が大気圧に維持されるので、メンテナンスフリーで、性能調整が不要となる。また、通気膜62を通して空気が出入りするため、気温の変化によって空気袋21,22,23が膨張したり、潰れたりすることがない。すなわち、環境変化による衝撃吸収性能の変動を抑えることができる。さらに、上述したような通気膜(ふっ素樹脂多孔質フィルム)を使用することにより、水の浸入を防ぐことが可能となるので、水洗いもできる。
【0053】
なお、上記実施形態4では、通気膜62を実施形態1のシンガードに適用した場合について説明したが、他の実施形態2や3のサポーター用衝撃吸収部等に適用することも可能で、前記実施形態4と同様な作用効果が期待できる。
【符号の説明】
【0054】
1 シンガード
10 硬質板部
11 凸部
12,14 通気口
13 段部
20 衝撃吸収部
21,22,23 空気袋
24,26,27,28 連通部
25 空気注入孔
30 膝用サポーター
31 本体部
32 衝撃吸収部
33 収容部
34 空気袋
35 連通部
40 衝撃吸収部
41〜44、47 空気袋
45、46 連通部
48 空気注入孔
49 連結部
50 溝部
51 通気孔
61 プロテクター
62 通気膜
63 通気孔
64 取付凹部
65 両面テープ
66 通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃吸収部を備えたスポーツ用保護具において、
前記衝撃吸収部を複数の空気袋から構成すると共に、空気袋間を連通する連通部を備えたことを特徴とするスポーツ用保護具。
【請求項2】
前記複数の空気袋から構成された衝撃吸収部が裏面に設けられる硬質板部を備えたことを特徴とする請求項1記載のスポーツ用保護具。
【請求項3】
前記複数の空気袋から構成された衝撃吸収部が装着される装着部をサポーターに備えたことを特徴とする請求項1記載のスポーツ用保護具。
【請求項4】
前記連通部を介して連通する任意の空気袋に、水は通さずに空気を通して内圧を大気圧に調整する通気膜を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のスポーツ用保護具。




































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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