説明

スマネンおよびその製造方法

スマネンおよびその誘導体ならびにそれらの製造方法を提供する。
下記スキームに示す通り、まず、ノルボルナジエン(下記式(86))からベンゾトリス(ノルボルナジエン)(下記式(87)を合成する。そして、その化合物のメタセシス反応によりヘキサヒドロスマネン(下記式(88))を合成し、さらにそれを脱水素してスマネン(下記式(84))を得る。このようにして、スマネンを穏和な条件下で大量合成することが可能である。また、ベンジル位がNまたはOの化合物も同様にして得ることが可能であり、そして、それらをさらに化学修飾して様々な誘導体を得ることができる。これらスマネンおよびその誘導体は、電子材料、各種フラーレン類およびヘテロフラーレン類の合成原料等に最適である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、スマネンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
60(下記式(82))やC70をはじめとする各種フラーレンおよびカーボンナノチューブと呼ばれる一群の炭素同族体(以下、これらを総称して「フラーレン類」と呼ぶことがある)は、その特異的な物性から次世代材料として注目されている。フラーレン類は、C60やC70以外にも種々の構造のものが知られており、それぞれが固有の物性を有している。それらを化学修飾することにより、さらに多様な機能を付加しようとする研究も全世界的に活発に行なわれている。

しかし、現状では、フラーレン類の製造方法はいわゆるアーク放電法等に限定されており、C60およびC70は比較的容易に得られるが、その他のフラーレン類はごく微量しか生産することができず、入手が非常に困難である。したがって、フラーレン類を化学修飾して種々の構造の高機能材料を製造しようとしても、出発原料の種類の貧困さが問題となる。
上記の事情に鑑み、フラーレン類を化学的に合成しようとする試みが世界各地で盛んに行なわれているが、この研究はようやく端緒についたばかりであり、いまだ誰も成功していない。しかしながら、有機合成化学の手法によれば、前記アーク放電法等と異なり生成物の分子構造を自由自在に制御できるため、研究が進めば、従来は入手困難であったフラーレン類も自由に得られることが期待できる。さらに、既存のフラーレン類に限定されず、新規なフラーレン類およびその誘導体についても合成できれば、新規材料の設計に大きな風穴を開けることになると考えられる。例えば、フラーレン類の炭素原子の一部をヘテロ原子で置き換えたヘテロフラーレン類は、理論研究によりその挙動が注目されている(例えば、”M.Riad Manaa,David W.Sprehn,and Heather A.Ichord,J.Am.Chem.Soc.,2002,124,p.13990−13991.”参照)が、C59N(”Science,1995,269,p.1554.”参照)等のごく一部の化合物を除いていまだ製造されておらず、その有機化学的合成法の確立が期待される。
現在は、C60の部分的構造である非平面共役系炭素骨格を含む化合物を合成すべく研究が進められている。しかし、今のところ、コランニュレン(Corannulene)と呼ばれる化合物(下記式(83))およびその誘導体が1966年に合成されたことが報告されているのみであり、さらに、まだ実験室レベルでの合成しか行われていない。

コランニュレンは、前記C60の部分的構造を含む化合物としては世界ではじめて合成された化合物であり、その学術的意義は大きい。さらに、1999年には、フラスコ内の穏やかな条件下においてコランニュレンを比較的大量に合成できるルートも報告されている(Andrzej Sygula and Peter W.Rabideau,J.Am.Chem.Soc.,2000,122,p.6323−6324.)。しかしながら、コランニュレンは、フラーレン類の合成原料等として用いるには問題点がある。なぜならば、その骨格の炭素原子が全てベンゼン核に取り込まれているため反応性がさほど高くないからである。そのため、コランニュレン誘導体も、現時点ではごく限られた構造のものが合成されているだけであり、そこからさらにC60等の化合物に導くには困難が予想される。
【発明の開示】
したがって、本発明は、フラーレン類やヘテロフラーレン類の合成原料等に使用できる化合物およびその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は、下記一般式(1)で表される新規化合物、その互変異性体および立体異性体、ならびにそれらの塩を提供する。

ただし、式中、A〜Aはそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、直鎖もしくは分枝アルキル基、または芳香族炭化水素基であり、A〜A上にベンジル位水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
前記A〜A上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、電子供与基または電子求引基であるか、または、同一のA(rは1から6までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するAとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
〜Xはそれぞれ同一であるかまたは異なり、メチレン基(下記式(2))、ビニリデン基(下記式(3))、カルボニル基(下記式(4))、チオカルボニル基(下記式(5))、イミノメチレン基(下記式(6))、イミノ基(下記式(7))、または酸素原子(下記式(8))、であり、X〜X上に水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、

前記X〜X上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、電子供与基または電子求引基であるか、または、同一のX(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するXとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
図1は、スマネンのUV−VISスペクトル図であり、使用溶媒はCHAである。
図2は、スマネンのUV−VISスペクトル図であり、使用溶媒はTHFである。
図3は、スマネンのUV−VISスペクトル図であり、使用溶媒はCHCNである。
図4は、スマネンのUV−VISスペクトル図であり、使用溶媒はCHClである。
図5は、図1〜4の全てのスペクトル図を1つにまとめて示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。
コランニュレンの他にもう一つ注目されてきた化学構造として、スマネン(Sumanene)と呼ばれる構造(下記式(84))がある。コランニュレンがC60のC対称部分骨格を含むのに対し、スマネンはC60のC対称部分骨格を含む。そして、スマネンは、コランニュレンと異なり、ベンジル位炭素を3ヶ所に含んでいることが大きな特徴である。

一般に、ベンジル位炭素を含む化合物は合成原料として価値が高い。なぜならば、ベンジル位炭素は非常に活性が高く、カチオン種、アニオン種、カルベンなど様々な活性種を発生させることができ、その活性種を足がかりにさらなる結合生成反応への応用が可能だからである。したがって、スマネンはコランニュレンよりもはるかに反応性が高く、例えば、ベンジル位の酸化反応などにより様々な官能基を直接導入し、多種多様な誘導体を合成できると考えられる。そして、さらにそれら誘導体を原料としてフラーレン類のみならず様々な化合物を合成できることが期待される。
また、ベンジル位炭素を含むことは、合成原料として有利なだけでなく、前記活性種自体にも大きな利用価値がある。例えば、スマネンのベンジルアニオン種はシクロペンタジエニルアニオンと同様の構造を含むことから、金属包摂能等を有すると考えられる。したがって、それ自体に大きな産業上の利用可能性があるだけでなく、金属内包型フラーレン化合物のモデル研究用化合物としての発展等も期待できる。
このように、スマネンは、学術的にも絶大な価値を有し、そして産業上利用価値も多大なものが見込まれることから、多くの研究者がその合成に取り組んできた。しかし、その分子ひずみが大きいためか、合成に成功したとの報告はいまだにない。スマネンについて述べた文献は少なくないが、いずれも理論計算等を行なうに止まっている(例えば、”U.Deva Priyakumar and G.Narahari Sastry,J.Phys.Chem.A,2001,105,p.4488−4494.”および”U.Deva Priyakumar and G.Narahari Sastry,Tetrahedron Letters,2001,42,p.1379−1381.”参照)。
なお、スマネンのベンジル位炭素を硫黄原子に置き換えた化合物(下記式(85))が合成されている(Koichi Imamura,Kazuo Takimiya,Yoshio Aso and Tetsuo Otsubo,Chem.Commun.,1999,p.1859−1860.)。これ自体興味深い化合物ではあるが、合成するには、今のところ真空中で1000℃という厳しい条件が必要であり、大量生産して産業ベースに載せることは難しい状況である。また、そもそもスマネンとは物性が大いに異なる。例えば、前記硫黄原子の反応性はベンジル位炭素のように自由自在ではなく、オキソ基等を付加できるに止まると思われる。このように、スマネンの化学構造および有用性は予想されてはいるものの、合成に成功した例は今までになかった。

本発明者らは、スマネンの合成に世界で初めて成功した。そして、前記一般式(1)で表される本発明の化合物(すなわち、スマネンおよびその誘導体)とその製造方法とを確立した。
前記一般式(1)で表される化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩の製造方法は特に限定されず、どのような方法により製造しても良いが、以下に説明する本発明の製造方法により製造することが好ましい。この製造方法によれば、有機合成化学の手法を用いてスマネンおよびその誘導体を困難なく得ることができる。例えば母体化合物のスマネンについては、下記スキーム1に示すように、安価で容易に入手可能なノルボルナジエン(下記式(86))から、フラスコ内において、穏和な条件下、わずか3ステップで合成することも可能である。

以下、前記本発明の製造方法についてさらに具体的に説明する。すなわち、まず、下記式(76)で表される化合物を準備する。この化合物およびその塩は、本発明者らの発明に係る新規化合物であり、さらに酸化(脱水素)反応を経由してスマネンおよびその誘導体に変換することができる。

ただし、式中、R〜Rはそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、直鎖もしくは分枝アルキル基、または芳香族炭化水素基であり、好ましくは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、フェニル基、またはナフチル基である。X11、X21およびX31はそれぞれ同一であるかまたは異なり、メチレン基、イミノ基または酸素原子であり、イミノ基の場合は、その水素原子は保護基により置換されていても良い。以下、この化合物の製造方法について説明する。
前記式(76)で表される化合物およびその塩の製造方法は特に限定されないが、下記式(77)で表される化合物のメタセシス反応を含む製造方法がより好ましい。この製造方法は本発明者らの発明に係る新規な製造方法である。メタセシス反応はよく知られている反応であるが、本発明者らはそれを下記式(77)で表される化合物に適用することを見出した。この方法を発明したことにより、スマネンおよびその誘導体を困難なく得ることができるようになった。

ただし、式中、R〜R、X11、X21およびX31はそれぞれ前記式(76)と同じである。
前記メタセシス反応の条件は特に限定されず、従来のメタセシス反応と同様に行なうことができるが、触媒を用いて行なうことが好ましい。前記触媒は特に限定されず、いわゆるメタセシス触媒として通常用いられているものを使用することができ、単独で使用しても良いし二種類以上併用しても良い。また、前記触媒は、例えば、ルテニウム、アルミニウム、チタン、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される少なくとも一つの元素を含むことがより好ましい。このようなメタセシス触媒、特にルテニウムやモリブデンを含む触媒は多数開発されている。本発明に使用する前記触媒としては、具体的には、例えば、(PCyRuCl=CHPhすなわちビス(トリシクロヘキシルホスフィノ)ベンジリデンルテニウム(II)クロリド、Al(C−TiCl、Al(C−MoCl、およびAl(C−WClからなる群から選択される少なくとも一つを含むことが特に好ましいが、これらに限定されるものではない。前記触媒の使用量も特に限定されず、反応効率やコスト等を考慮して適宜調整すれば良いが、例えば、いわゆる化学量論量以下が好ましい。前記触媒の適切な使用量は、触媒の種類や反応スケール等によって変化し、一定ではないが、フラスコレベルの反応では、前記式(77)で表される化合物に対し、例えば5mol%程度である。なお、一般に、触媒反応では、反応スケールが大きくなれば、相対的に触媒使用量を減らせる(すなわち、基質量に対する触媒使用量の比率を小さくできる)傾向がある。
また、前記メタセシス反応は、前記式(77)の化合物と反応するもう一種類のオレフィンを用いて行なうことが反応効率や収率の観点から好ましい。この場合のオレフィンは特に限定されないが、反応効率、コスト、扱いやすさ等の観点から、例えばエチレンがより好ましい。
前記もう一種類のオレフィン、例えばエチレンを用いる場合の操作および反応原理は、例えば以下のように説明される。すなわち、まず、前記式(77)の化合物とエチレンとをメタセシス反応により化合させ、前記式(77)の化合物におけるオレフィン結合部分を開環させる。そして、その反応生成物をさらにメタセシス反応させて閉環させることにより、前記式(76)で表される化合物を生成させる。この閉環反応により再びエチレンが生成し、最終的に系中から除かれる。このようにすると、前記式(76)で表される化合物をさらに効率よく得ることができる。
前記メタセシス反応におけるその他の使用物質や反応条件は特に限定されず、従来のメタセシス反応等を参考にして適宜設定すれば良い。溶媒は、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素や、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化物や、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒や、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等の高極性溶媒が使用可能であり、これら溶媒は単独で用いても二種類以上併用しても良い。反応温度および反応時間も特に限定されず、前記式(77)中におけるR〜R、X11、X21およびX31の構造や反応スケール等により適宜設定すれば良い。また、反応生成物の分離や精製の方法も特に限定されず、カラムクロマトグラフィーやGPC等の公知の手段を適宜用いて行なうことができる。
以上のようにして、前記式(77)の化合物から前記式(76)の化合物を製造することができる。前記式(77)で表される化合物の製造方法も特に限定されないが、下記式(78)〜(80)で表される化合物をハロゲン化し、さらにWurtz型カップリングにより環化させることを含む製造方法が好ましい。

ただし、式(78)〜(80)中、R〜R、X11、X21およびX31はそれぞれ前記式(77)と同じである。
Wurtz型カップリングとは、ハロゲン化物同士のカップリング反応として知られており、本発明者らは、この反応を前記式(77)の化合物の製造に用いることを見出した。前記ハロゲンとしては、例えばフッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられ、これらの中で臭素がより好ましい。反応は、例えば金属ナトリウム、金属リチウム等のアルカリ金属や触媒等の存在下で行なわれ、前記触媒としては、例えば、銅触媒、ニッケル触媒、パラジウム触媒等があげられ、これらの中で銅触媒がより好ましい。また、ハロゲン化物は、単離状態で準備し、それをカップリングさせても良いが、反応系中でハロゲン化物を生成させ、同一の反応系中で(単離することなく)カップリングさせても良い。本発明では、前記Wurtz型カップリングの具体的な操作や反応条件は特に限定されないが、例えば以下の通りである。すなわち、まず、前記式(78)〜(80)の化合物(以下、単に「ジエン」と呼ぶことがある)と、カリウムt−ブトキシド、n−ブチルリチウムヘキサン溶液、1,2−ジブロモエタン、ヨウ化銅(I)、および溶媒としてのTHFを準備し、これら全ての反応物質および溶媒と、反応容器とを十分に乾燥させる。ジエンおよび溶媒以外の物質の使用量は特に限定されないが、副反応等を抑制するために全て同じ化学等量ずつ用いることがより好ましい。次に、前記反応容器内を不活性ガス置換し、t−BuOKおよびTHFを加えて溶解させる。その後、反応系温度をマイナス78℃まで下げ、ジエンを加え、さらにn−BuLiのヘキサン溶液を2時間かけ滴下する。滴下終了後、反応系の温度をマイナス40℃まで昇温し、さらに30分攪拌する。そして、前記系の温度をマイナス78℃に再び下げた後、1,2−ジブロモエタンを加え、その後再びマイナス40℃に昇温し、1時間半攪拌する。次に、再び前記系の温度をマイナス78℃に戻した後、ヨウ化銅(I)を加える。そして、マイナス78℃で4時間攪拌後、冷却を停止し、徐々に室温まで戻しながらさらに7時間攪拌する。その後、定法によりワークアップして、前記式(77)で表される目的化合物を得る。
この反応における使用物質、反応温度および反応時間等は前記には限定されず、従来のWurtz型カップリング反応等を参考にして適宜設定することができる。また、前記式(78)〜(80)において、前記X〜X31のうちいずれかがイミノ基である場合は、その水素原子は、副反応等を抑制するため保護基により置換されていることがより好ましい。保護基としては特に限定されず、公知の保護基を適宜用いることができるが、例えば、Greene and Wuts著”Protective Groups in Organic Synthesis”第2版(2nd Edition)に記載の保護基等があげられ、具体的には、t−ブトキシカルボニル基(Boc)、アセチル基(Ac)、ベンジルオキシカルボニル基(Z)、ベンジル基(Bz)等がある。
なお、前記式(77)の化合物はsyn体であるが、通常、その異性体であるanti体との混合物として得られる。これらはGPC等の一般に用いられている手段により分離することができる。さらに、前記X11〜Xの全てが同一ではない場合、目的とする前記式(77)の化合物以外に多数の副生成物が得られるが、これらも、カラムクロマトグラフィーやGPC等の手段により分離することができる。
また、前記式(77)の化合物の製造方法は、前記Wurtz型カップリング法には限定されず、公知の方法で合成することもできる。これら公知の方法としては、例えば、”Giuseppe Borsato,Ottorino De Lucchi,Fabrizio Fabris,Luca Groppo,Vittorio Lucchini,and Alfonso Zambon,J.Org.Chem.,2002,67,p.7894−7897.”に記載されたハロゲン化物と有機金属試薬とのクロスカップリング法や、”Harold Hart,Abdollah Bashir−Hashemi,Jihmei Luo and Mary Ann Meador,Tetrahedron,1986,42,p.1641−1654.”,”Harold Hart,Chung−yin Lai,Godson Chukuemeka Nwokogu and Shamouil Shamouilian,Tetrahedron,1987,43,p.5203−5224.”および”Francisco Raymo,Franz H.Kohnke and Francesca Cardullo,Tetrahedron,1992,48,p.6827−6838.”等に記載の合成法等がある。しかし、前記Wurtz型カップリング法を用いれば、例えば前述の通り、前記式(78)〜(80)で表される化合物をハロゲン化した後、前記ハロゲン化と同一の反応系中で(単離することなく)環化を行なうこともできる。このようにすれば、前記式(77)の化合物を、前記式(78)〜(80)の化合物から1ステップで簡便に合成できるため好ましく、前記X11〜X31の全てがメチレン基である場合には特に有効である。
そして、前記式(77)の化合物が得られたら、前記の通り、この化合物のメタセシス反応により前記式(76)の化合物を得る。
なお、前記式(77)の化合物から前記式(76)の化合物を得る方法として、前記メタセシス反応以外に、例えば以下のような製造方法もある。すなわち、まず、前記式(77)で表される化合物をオゾン分解して、下記式(77’)で表される化合物を得る。このオゾン分解の条件は特に限定されず、公知のオゾン分解反応等を参考にして適宜設定することができる。

ただし、式中、R〜Rはそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、直鎖もしくは分枝アルキル基、または芳香族炭化水素基であり、X11、X21およびX31はそれぞれ同一であるかまたは異なり、メチレン基、イミノ基または酸素原子であり、イミノ基の場合は、その水素原子は保護基により置換されていても良い。
オゾン分解とは、炭素−炭素不飽和結合を持つ化合物をオゾン化し、それをさらに分解してカルボニル化合物を得る反応として知られている。オゾン化物(オゾニド)を分解してカルボニル反応を得る方法としては、例えば、水により分解する方法および還元剤を用いる方法があり、より具体的には、例えば、酢酸存在下Zn−HOにより還元する方法、白金触媒やパラジウム触媒等の存在下で水素を用いて接触還元する方法、ラネーニッケルを用いて還元する方法等があげられる。オゾン分解について記述している文献は多数あるが、例えば、”P.S.Bailely,Chem.Rev.,1958,58,p.925.”および”R.W.Murray,Acc.Chem.Res.,1968,1,p.313.”等があげられる。
なお、前記式(77’)で表される化合物およびその塩は本発明に係る新規化合物であり、前記式(77)で表される化合物のオゾン分解を含む製造方法により製造されることが好ましいが、この製造方法に限定されずどのような方法により製造しても良い。
そして、前記式(77’)で表される化合物が得られたら、その分子内カップリング反応により前記式(76)で表される化合物を得る。この分子内カップリング反応の条件は特に限定されず、公知の反応を参考にするなどして適宜設定することができる。前記分子内カップリング反応は、遷移金属元素を用いた還元的カップリング反応が好ましく、前記遷移金属元素がチタンを含むことがより好ましい。なお、低原子価チタンを用いたカルボニル化合物の還元的カップリングはMcMurry反応として知られている。前記低原子価チタンは、例えばTiClやTiCl(DME)1.5錯体(DMEはジメトキシエタンを表す)を反応系中で還元して発生させる方法がよく用いられており、この場合の還元剤としては、例えばZn(Cu)やCK(カリウムグラファイト)等が用いられる。McMurry反応について述べた文献も多数あるが、例えば、”J.E.McMurry,Acc.Chem.Res.,1974,7,p.281.”,”J.E.McMurry,Acc.Chem.Res.,1983,16,p.405.”,”J.E.McMurry and K.L.Kees,J.Org.Chem.,1977,42,p.2655.”および”D.L.J.Clive et al.,J.Am.Chem.Soc.,1988,110,p.6914.”等があげられる。
以上のようにして前記化学式(76)で表される化合物が準備できたら、それを酸化して下記式(81)で表される化合物を製造する。

ただし、式中、R〜R、X11、X21およびX31はそれぞれ前記式(76)と同じである。
前記酸化反応の条件は特に限定されず、従来の脱水素反応と同様の条件で行なうことができる。例えば、DDQやクロラニル等の酸化剤を用いても良いが、工業的には触媒を用いることが好ましい。前記触媒は特に限定されず、脱水素反応に通常用いられるものを使用することができるが、例えば、Pd−C(パラジウムカーボン)、白金、ロジウム、金属硫黄および金属セレン等が使用可能である。また、これら触媒は単独で用いても良いが、二種類以上併用しても良い。
その他の使用物質や反応条件も特に限定されず、従来の脱水素反応を参考にするなどして適宜設定することができる。前記DDQ等の酸化剤やPd−C等の触媒を用いる場合、反応溶媒は、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素や、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒が使用可能であり、これら溶媒は単独で用いても二種類以上併用しても良い。この場合の反応温度および反応時間も特に限定されず、反応物質の種類等により適宜選択すればよい。
そして、前記式(81)で表される化合物が得られたら、X11〜X上の水素原子およびR〜R上のベンジル位水素原子を必要に応じ置換して、前記式(1)で表される本発明の化合物を得ることができる。X11〜X31のうちいずれかがイミノ基であって、その水素原子が保護基により置換されている場合は、イミノ基を必要に応じ脱保護してからあらためて置換しても良い。脱保護の方法は特に限定されず、前記保護基の種類等に応じて公知の方法を適宜使用すれば良い。
前記X11〜X31上の水素原子を置換する方法も特に限定されず、類似の化学構造を有するジフェニルメタン、フルオレンおよびカルバゾール等の置換反応と同様の方法で様々な置換基を導入することが可能である。例えば、X11〜X31のいずれかがメチレン基である場合、そのメチレン基をアルキル化するためには、前記メチレン基の水素をブチルリチウム等により脱離させてカルボアニオンを生成させ、さらにヨウ化アルキル等を加える等の方法を用いることができる。また、アルコキシ化するためには、ベンジル位のアルコキシ化に通常用いられる方法、例えばハロゲン化の後アルコーリシス反応させる方法等を使用することができる。さらに、R〜R上にベンジル位水素原子が存在する場合、その水素原子を置換する方法も特に限定されず、一般的なベンジル位置換反応と同様に行なうことができる。例えば、アルキル基やアルコキシ基で置換するには上述と同様の方法等を用いることが可能である。
以上のようにすれば、前記式(1)で表される本発明の化合物を、有機合成化学的手法により困難なく得ることができる。しかし、本発明の化合物の製造方法はこれに限定されず、どのような方法により製造しても良い。
前記式(1)で表される本発明の化合物は、電子材料、各種フラーレン類およびヘテロフラーレン類の原料等の用途に適する。特に、前記X〜Xのいずれかがヘテロ原子を含んでいれば、ヘテロフラーレン類の合成原料として適すると考えられる。
さらに、前記式(1)で表される化合物の分子から誘導される基が、二個以上、共有結合および架橋鎖の少なくとも一方により連結されている構造を有する化合物(以下、単に「架橋体」と呼ぶことがある)も、本発明の化合物に含まれる。ただし、前記二個以上の基の構造は互いに同一でも異なっていても良い。前記架橋鎖は特に限定されず、例えば、アルキレン基でも、ポリエンでも、エステル結合やエーテル結合等を含む架橋鎖等であっても良い。これらの中で、例えばアルキレン基が好ましく、メチレン基または炭素数2〜10のポリメチレン基がより好ましい。そして、前記二個以上の基が、それぞれ少なくとも一つのベンジル位炭素を含み、前記共有結合または架橋鎖との結合部位が前記ベンジル位炭素であることが好ましい。
このような架橋体の製造方法も特に限定されず、目的とする架橋体の構造等に応じて公知の方法を適宜用いることができるが、一例として以下のような方法がある。すなわち、まず、スマネン(前記式(84)の化合物)のベンジル位を一箇所、モノハロゲン化し、ハロゲン化アルキレン、例えば1,4−ジブロモブタンとカップリング反応させる。この方法は特に限定されないが、例えば、前記スマネンのモノハロゲン化物に金属Mgを加えてGrignard試薬とした後、1,4−ジブロモブタンを加えてカップリングさせる方法がある。このようにすると、スマネンのベンジル位同士がテトラメチレン基で連結された化合物が得られる。さらに、必要に応じ、残りのベンジル位に前記の方法等で置換基を導入して目的の架橋体を得る。
なお、前記式(1)で表される化合物およびその架橋体に互変異性体、立体異性体、光学異性体等の異性体が存在する場合は、それら異性体も本発明の化合物に含まれる。さらに、前記式(1)の化合物およびその他本発明に係る化合物が塩を形成し得る場合は、その塩も本発明の化合物に含まれる。前記塩は特に限定されず、例えば酸付加塩でも塩基付加塩でも良く、さらに、前記酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でも良く、前記塩基付加塩を形成する塩基は無機塩基でも有機塩基でも良い。前記無機酸としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸および、ヨウ化水素酸等があげられる。前記有機酸も特に限定されないが、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸等があげられる。前記無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウム等があげられる。前記有機塩基も特に限定されないが、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等があげられる。
前記本発明の化合物の塩の製造方法も特に限定されず、例えば、本発明の化合物に、前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる等の方法で製造することができる。
前記式(1)において、A〜A、および前記X〜X上の置換基が下記の条件を満たすことが好ましい。
(A〜A、および前記X〜X上の置換基の条件)
〜Aはそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、直鎖もしくは分枝アルキル基、または芳香族炭化水素基であり、A〜A上にベンジル位水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
前記A〜A上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、飽和もしくは不飽和炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換されたアルキル基、アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基、またはアルコキシカルボニル基であるか、または、同一のA(rは1から6までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するAとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
前記X〜X上の置換基は互いに同一であるかまたは異なり、
その結合するX(aは1から3までのいずれかの整数)がメチレン基またはビニリデン基である場合は、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)飽和もしくは不飽和炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換されたアルキル基、アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基、またはアルコキシカルボニル基であるか、または、同一のX(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するXとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
その結合するXがイミノメチレン基またはイミノ基である場合は、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、飽和もしくは不飽和炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、1個以上のハロゲンで置換されたアルキル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基、またはアルコキシカルボニル基である。
また、前記式(1)において、A〜A、および前記X〜X上の置換基が下記の条件を満たすことがより好ましい。
(A〜A、および前記X〜X上の置換基の条件)
〜Aはそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、フェニル基、またはナフチル基であり、A〜A上にベンジル位水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
前記A〜A上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、置換基を有するか有しない飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝炭化水素鎖、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基であるか、または、同一のA(rは1から6までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するAとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
前記X〜X上の置換基は互いに同一であるかまたは異なり、
その結合するX(aは1から3までのいずれかの整数)がメチレン基またはビニリデン基である場合は、ハロゲン、置換基を有するか有しない飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝炭化水素鎖、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基であるか、または、同一のX(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するXとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
その結合するXがイミノメチレン基またはイミノ基である場合は、ハロゲン、置換基を有するか有しない飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝炭化水素鎖、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基である。
そして、前記式(1)において、A〜A、および前記X〜X上の置換基が下記の条件を満たすことがさらに好ましい。
(A〜A、および前記X〜X上の置換基の条件)
〜Aはそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、フェニル基、またはナフチル基であり、A〜A上にベンジル位水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
前記A〜A上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、炭素数1〜3000(特に好ましくは1〜300、最適には1〜30)の直鎖状炭化水素基(ただし、主鎖中の結合はそれぞれ飽和結合でも不飽和結合でも良く、主鎖上の水素原子は任意にハロゲン、またはメチル基で置換されていても良い)、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、下記式(9)〜(75)のいずれかの化合物から任意の1個の水素を除いた構造を有する環状置換基(ただし、上記環状置換基は、1個または複数の置換基でさらに置換されていても良く、それらの置換基は互いに同一であるかまたは異なり、前記置換基は、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、またはアミノ基である)、




ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基であるか、または、同一のA(rは1から6までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するAとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
前記X〜X上の置換基は互いに同一であるかまたは異なり、
その結合するX(aは1から3までのいずれかの整数)がメチレン基またはビニリデン基である場合は、ハロゲン、炭素数1〜3000(特に好ましくは1〜300、最適には1〜30)の直鎖状炭化水素基(ただし、主鎖中の結合はそれぞれ飽和結合でも不飽和結合でも良く、主鎖上の水素原子は任意にハロゲン、またはメチル基で置換されていても良い)、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、前記式(9)〜(75)のいずれかの化合物から任意の1個の水素を除いた構造を有する環状置換基(ただし、上記環状置換基は、1個または複数の置換基でさらに置換されていても良く、それらの置換基は互いに同一であるかまたは異なり、前記置換基は、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、またはアミノ基である)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基であるか、または、同一のX(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するXとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
その結合するXがイミノメチレン基またはイミノ基である場合は、ハロゲン、炭素数1〜3000(特に好ましくは1〜300、最適には1〜30)の直鎖状炭化水素基(ただし、主鎖中の結合はそれぞれ飽和結合でも不飽和結合でも良く、主鎖上の水素原子は任意にハロゲン、またはメチル基で置換されていても良い)、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、前記式(9)〜(75)のいずれかの化合物から任意の1個の水素を除いた構造を有する環状置換基(ただし、上記環状置換基は、1個または複数の置換基でさらに置換されていても良く、それらの置換基は互いに同一であるかまたは異なり、前記置換基は、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、またはアミノ基である)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基である。
なお、本発明で「ハロゲン」とは、任意のハロゲン元素を指すが、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。また、アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基等があげられ、アルキル基をその構造中に含む基(例えば、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基等)についても同様である。不飽和炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、プロパルギル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基および2−ブテニル基等があげられる。アルカノイル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基およびイソバレリル基等があげられ、アルカノイル基をその構造中に含む基(アルカノイルオキシ基、アルカノイルアミノ基等)についても同様である。また、炭素数1のアルカノイル基とはホルミル基を指すものとし、アルカノイル基をその構造中に含む基についても同様とする。
前記共役系高分子鎖またはオリゴマー鎖は、ポリフェニレン、オリゴフェニレン、ポリフェニレンビニレン、オリゴフェニレンビニレン、ポリエン、オリゴビニレン、ポリアセチレン、オリゴアセチレン、ポリピロール、オリゴピロール、ポリチオフェン、オリゴチオフェン、ポリアニリンおよびオリゴアニリン(ただし、これらは1個以上の置換基で置換されていても良いし、置換されていなくても良い)からなる群から選択される少なくとも一つであることがさらに好ましく、この場合の置換基は、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つであることが特に好ましい。また、前記共役系高分子鎖またはオリゴマー鎖は、その式量が30〜30000の範囲であることがさらに好ましい。前記式量は、特に好ましくは50〜5000、最適には50〜1000である。
また、前記式(1)において、前記同一のA(rは1から6までのいずれかの整数)または同一のX(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士が共有結合により結合され、それらの結合するAまたはXとともに炭素環またはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成する場合、前記環の構成原子数が3〜20であり、前記置換基が、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
また、前記式(1)において、前記X〜X上の置換基のうち少なくとも一つが、その結合するXおよびさらにそのXが結合するベンゼン核と一体となって共役系を形成していれば、電子材料等の用途にさらに好ましく使用することができる。このような化合物は多数存在するが、例えば下記式(89)〜(91)で表される化合物等がある。ただし式(89)〜(91)の化合物は例示に過ぎず、これらに限定されるものではない。

前記式(1)において、前記X〜X上の置換基が存在しない(すなわち、前記X〜X上の水素原子のいずれもが前記置換基により置換されていない)化合物は、例えばその他の誘導体の合成原料等に使用することができる。
〜Aについては、全て水素原子であることが、合成原料等に使用しやすく好ましい場合があるが、A〜Aがアルキル基や芳香族炭化水素基を含んでいても、対応する誘導体の合成等に好ましく使用することができる。
また、前記式(1)において、X〜Xは、例えば、メチレン基、ビニリデン基、イミノ基および酸素原子からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましく、X〜Xの全てがメチレン基であることがより好ましい。特に、A〜Aの全てが水素原子であり、かつ、X〜Xの全てがメチレン基であり、そのいずれもが置換されていない化合物、すなわち母体化合物のスマネンは、各種誘導体の合成原料等として利用しやすい。
さらに、本発明の錯体は、前記式(1)で表される本発明の化合物またはその架橋体と金属元素との錯形成構造を含む錯体であり、前記式(1)の化合物またはその架橋体は、その互変異性体または立体異性体であっても良い。本発明の錯体またはその塩は、例えば、光増感剤、触媒等の用途に好ましく使用することができるが、これらの用途には限定されない。触媒として用いる場合は重合触媒がより好ましい。前記金属元素は、単一の金属元素でも二種類以上の金属元素を含んでいても良いが、遷移金属元素を含むことが好ましく、この遷移金属が、イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、W(タングステン)、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)およびオスミウム(Os)からなる群から選択される少なくとも一つを含むことがより好ましい。
本発明の光増感剤および触媒は、前記本発明の錯体またはその塩を含むことにより、そして、本発明の電子材料は、本発明の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体またはそれらの塩を含むことにより、それぞれ優れた性能を示す。
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。
(測定条件等)
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、Varian社製のMercury300(商品名)という機器(H測定時300MHz)を用いて測定した。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。内部標準0ppmには、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、q、mおよびbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)および広幅線(broad)を表す。高分解能質量分析(HRMS)は、JEOL社製JMS−DX−303(商品名)を用い、電子衝撃法または化学的イオン化法により測定した。紫外可視吸収スペクトルおよび発光スペクトル(UV−VIS)は、株式会社日立製作所製U−3500(商品名)を用いて測定した。測定値(波長)はnmで表している。赤外線吸収スペクトル(IR)は、日本分光株式会社製FT/IR 480 plus(商品名)を用い、KBr法により測定した。測定値(波数)はcm−1で表しており、略号mおよびwは、それぞれ、mediumおよびweakを表す。融点は、株式会社柳本製作所製Yanagimoto MicroPoint Apparatus(商品名)を用いて測定した。カラムクロマトグラフィー分離には、シリカゲル(商品名Wakogel CF−200、和光純薬工業株式会社)を用いた。薄層クロマトグラフィー(TLC)用のプレートは、和光純薬工業株式会社製Wakogel BF−5(商品名)を用いた。GPCは、日本分析工業株式会社製LC−908(商品名)を用いて行なった。全ての化学物質は、試薬級である。ノルボルナジエンは、東京化成工業株式会社から購入した(500mL、16000円)。n−BuLiのヘキサン溶液は関東化学株式会社から、(PCyRuCl=CHPhはAldrich社から、エチレンは大阪酸素工業株式会社から、t−BuOK、1,2−ジブロモエタン、ヨウ化銅(I)、トルエンおよびDDQは和光純薬工業株式会社からそれぞれ購入した。
(スマネンの合成)
前記スキーム1に従い、スマネンを合成した。前記スキーム1を下に再掲する。

以下、具体的な操作および手順等について説明する。
[ステップa:syn−ベンゾトリス(ノルボルナジエン)(前記式(87))の合成]
まず、1Lの3口フラスコを真空加熱乾燥した後アルゴン置換し、その中に、t−BuOK(120mmol,13.5g)および脱水THFを180mL加えて攪拌した。次に、反応系の温度をマイナス78℃まで下げた後、攪拌を続けながら前記式(86)で表される化合物であるノルボルナジエン(2,5−norbornadiene,240mmol,22.1g)を加え、続いてn−BuLiのヘキサン溶液(濃度1.56mol/L、n−BuLi 120mmol相当量)を2時間かけ滴下した。滴下終了後、反応系の温度をマイナス40℃まで昇温し、さらに30分攪拌した。そして、前記系の温度をマイナス78℃に再び下げた後、1,2−ジブロモエタン(60mmol,11.3g)を加え、その後再びマイナス40℃に昇温し、1時間半攪拌した。次に、再び前記系の温度をマイナス78℃に戻した後、ヨウ化銅(I)(120mmol,22.9g)を加えた。そして、マイナス78℃で4時間攪拌後、冷却を停止し、徐々に室温まで戻しながらさらに7時間攪拌した。その後、飽和塩化アンモニウム水溶液を用いて反応を停止し、セライト濾過した。その濾液をエーテルで抽出し、残った水層をさらにエーテルで十分抽出した後、合わせた有機層を水で洗浄し、MgSOで乾燥した。そして、減圧下溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=4:1)により分離し、syn−ベンゾトリス(ノルボルナジエン)(syn−benzotris(norbornadiene)、)とanti−ベンゾトリス(ノルボルナジエン)(anti−benzotris(norbornadiene))のジアステレオマー混合物を得た。さらに、その混合物をGPCにより分離し、目的物であるsyn−ベンゾトリス(ノルボルナジエン)(収量108mg、単離収率2%)と、anti−ベンゾトリス(ノルボルナジエン)(収量270mg、単離収率5%)とを得た。以下に、これらの化合物の物性値を示す。
syn−ベンゾトリス(ノルボルナジエン):HRMS:270.1403、融点:195℃(dec)、H−NMR(300MHz,CDCl):δ=6.57(t,J=1.8Hz,6H),3.90−3.87(m,6H),2.22(dt,J=7.2,1.5Hz,3H),2.08(dt,J=7.2,1.5Hz,3H);13C−NMR(75MHz,CDCl):141.59,137.66,66.73,17.44ppm.
anti−ベンゾトリス(ノルボルナジエン):H−NMR(300MHz,CDCl):δ=6.68(t,J=1.8Hz,2H),6.65(dd,J=5.4,3.0Hz,2H),6.59(dd,J=5.4,3.0Hz,2H),3.90−3.87(m,2H),3.87−3.85(m,4H),2.05(dt,J=7.2 1.5Hz,4H),2.00(dt,J=7.2,1.5Hz,4H)
[ステップb:ヘキサヒドロスマネン(前記式(88))の合成]
まず、200mL3口フラスコを真空加熱乾燥後アルゴン置換し、その中に、syn−ベンゾトリス(ノルボルナジエン)(0.074mmol,20mg)をトルエン100mLに溶かした溶液を加えた。次に、系の温度をマイナス78℃に下げ、エチレンガスをバブリングして充分導入し、前記系内をエチレン雰囲気下とした。その後、前記系の温度を室温に戻し、(PCyRuCl=CHPh(0.0037mmol,3mg,5mol%)を加え、エチレン雰囲気を維持したまま室温で24時間攪拌した。さらに、前記系内をアルゴン雰囲気下にし48時間加熱環流した後、反応混合物をシリカゲルによりろ過した。その濾液を減圧下溶媒留去し、得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=5:1)により単離し、さらに最終的にGPCにより精製し、目的化合物であるヘキサヒドロスマネン(hexahydrosumanene)を得た(収量4mg、単離収率20%)。以下に、この化合物の物性値を示す。
HRMS:Found:m/z=270.1412,Calcd for C2118:M=270.1408、融点:180℃(dec)、H−NMR(300MHz,CDCl):δ=5.69(s,6H),3.81(dd,6H,J=9.9 and 7.2Hz),2.78(dt,3H,J=11.4 and 7.2Hz),1.01(dt,3H,J=9.9 and 11.4Hz);13C−NMR(75MHz,CDCl):141.91,129.28,43.66,40.35ppm.、IR(KBr):ν=3010(m),2919(m),2814(m),1595(w),1445(w),1260(w)cm−1、UV−VIS(CHCl):最大吸収波長(Absorption λmax)=240nm,最大発光波長(Emission λmax)=331nm(励起波長(Excitation λ)=240nm)
[ステップc:スマネン(前記式(84))の合成]
まず、10mLの2口フラスコを真空加熱乾燥した後アルゴン置換した。次に、その中に、ヘキサヒドロスマネン(0.011mmol,3mg)をトルエン2mLに溶かした溶液をシリンジで加え、さらにDDQ(0.0385mmol,9mg)を加えたのち、110℃で20時間加熱した。反応終了後、溶媒を減圧下留去し、残渣を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン)により分離し、目的化合物のスマネンを得た(収量2mg、単離収率67%)。以下に、この化合物の物性値を示す。また、図1〜5にこの化合物のUV−VIS吸収スペクトル図を示す。使用溶媒は、図1ではシクロヘキシルアミン(CHA)、図2ではテトラヒドロフラン(THF)、図3ではアセトニトリル(CHCN)、図4ではジクロロメタン(CHCl)であり、溶液の濃度はいずれも1.0×10−4Mである。また、図5は、図1〜4の全てのスペクトル図を1つにまとめて示した図である。
HRMS:Found:m/z=264.0923,Calcd for C2112:M=264.0939、融点115℃、H−NMR(300MHz,CDCl):δ=7.01(s,6H),4.71(d,J=19.5Hz,3H),3.42(d,J=19.5Hz,3H);13C−NMR(75MHz,CDCl):148.78,148.60,123.15,41.77ppm.、IR(KBr):ν=2950(m),2922(m),1653(m),1558(m)cm−1、UV−VIS(シクロヘキシルアミン(CHA)、1.0×10−4M):最大吸収波長(Absorption λmax)=279nm(logε=4.56)、UV−VIS(テトラヒドロフラン(THF)、1.0×10−4M):最大吸収波長(Absorption λmax)=278nm(logε=4.62)、UV−VIS(アセトニトリル(CHCN)、1.0×10−4M):最大吸収波長(Absorption λmax)=276nm(logε=4.25)、UV−VIS(CHCl):最大吸収波長(Absorption λmax)=278nm(logε=4.52)、最大発光波長(Emission λmax)=376nm(励起波長(Excitation λ)=278nm)
なお、温度可変H−NMR(300MHz,d10−p−xylene)を25℃〜140℃まで測定したところ、臨界温度Tcは140℃以上であり、反転エネルギーΔGは、前記Tcとケミカルシフト値とカップリング定数Jとから19.4kcal/mol以上と計算された。
以上の通り、本発明の製造方法により、安価で容易に入手可能なノルボルナジエンからわずか3段階でスマネンを合成することができた。また、全てのステップが極めで穏やかな条件であり、例えばDDQに変えて脱水素触媒を用いる等の工夫により、容易に工業プロセス化、大量合成が可能である。
【産業上の利用の可能性】
以上説明した通り、本発明により、スマネンおよびその誘導体ならびにそれらの製造方法を提供することができる。本発明の製造方法によれば、スマネンを穏和な条件下で大量合成することが可能である。そして、本発明のスマネンおよびその誘導体を合成原料として、従来は入手困難であったフラーレン類や、未知のフラーレン類およびヘテロフラーレン類等も合成でき、新規材料の設計に大きな風穴を開けることになると期待できる。さらに、本発明の化合物は、合成原料として価値が高いのみならず、それ自体が、電子材料等の工業用材料や金属内包型フラーレン化合物のモデル化合物等の基礎研究用材料として大きな価値を有する。すなわち、本発明の化合物は、現在フラーレン類やカーボンナノチューブの応用として期待されている電子材料分野のほとんどに応用可能であり、基礎技術および応用技術の両面で広範な活用が期待される。さらに、例えば、本発明の化合物と遷移金属等とを錯形成させることにより光増感剤や重合触媒等への応用も期待され、その産業上利用価値は多大である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。

ただし、式中、A〜Aはそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、直鎖もしくは分枝アルキル基、または芳香族炭化水素基であり、A〜A上にベンジル位水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
前記A〜A上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、電子供与基または電子求引基であるか、または、同一のA(rは1から6までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するAとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
〜Xはそれぞれ同一であるかまたは異なり、メチレン基(下記式(2))、ビニリデン基(下記式(3))、カルボニル基(下記式(4))、チオカルボニル基(下記式(5))、イミノメチレン基(下記式(6))、イミノ基(下記式(7))、または酸素原子(下記式(8))、であり、X〜X上に水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、

前記X〜X上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、電子供与基または電子求引基であるか、または、同一のX(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するXとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良い。
【請求項2】
前記式(1)において、A〜A、および前記X〜X上の置換基が下記の条件を満たす請求の範囲1記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
(A〜A、および前記X〜X上の置換基の条件)
〜Aはそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、直鎖もしくは分枝アルキル基、または芳香族炭化水素基であり、A〜A上にベンジル位水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
前記A〜A上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、飽和もしくは不飽和炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換されたアルキル基、アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基、またはアルコキシカルボニル基であるか、または、同一のA(rは1から6までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するAとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
前記X〜X上の置換基は互いに同一であるかまたは異なり、
その結合するX(aは1から3までのいずれかの整数)がメチレン基またはビニリデン基である場合は、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)飽和もしくは不飽和炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換されたアルキル基、アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基、またはアルコキシカルボニル基であるか、または、同一のX(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するXとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
その結合するXがイミノメチレン基またはイミノ基である場合は、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、飽和もしくは不飽和炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、1個以上のハロゲンで置換されたアルキル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基、またはアルコキシカルボニル基である。
【請求項3】
前記式(1)において、A〜A、および前記X〜X上の置換基が下記の条件を満たす請求の範囲1記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
(A〜A、および前記X〜X上の置換基の条件)
〜Aはそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、フェニル基またはナフチル基であり、A〜A上にベンジル位水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
前記A〜A上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、置換基を有するか有しない飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝炭化水素鎖、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基であるか、または、同一のA(rは1から6までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するAとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
前記X〜X上の置換基は互いに同一であるかまたは異なり、
その結合するX(aは1から3までのいずれかの整数)がメチレン基またはビニリデン基である場合は、ハロゲン、置換基を有するか有しない飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝炭化水素鎖、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基であるか、または、同一のX(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するXとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
その結合するXがイミノメチレン基またはイミノ基である場合は、ハロゲン、置換基を有するか有しない飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝炭化水素鎖、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基である。
【請求項4】
前記式(1)において、A〜A、および前記X〜X上の置換基が下記の条件を満たす請求の範囲1記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
(A〜A、および前記X〜X上の置換基の条件)
〜Aはそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、フェニル基またはナフチル基であり、A〜A上にベンジル位水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
前記A〜A上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、炭素数1〜3000の直鎖状炭化水素基(ただし、主鎖中の結合はそれぞれ飽和結合でも不飽和結合でも良く、主鎖上の水素原子は任意にハロゲン、またはメチル基で置換されていても良い)、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、下記式(9)〜(75)のいずれかの化合物から任意の1個の水素を除いた構造を有する環状置換基(ただし、上記環状置換基は、1個または複数の置換基でさらに置換されていても良く、それらの置換基は互いに同一であるかまたは異なり、前記置換基は、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、またはアミノ基である)、




ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基であるか、または、同一のA(rは1から6までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するAとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
前記X〜X上の置換基は互いに同一であるかまたは異なり、
その結合するX(aは1から3までのいずれかの整数)がメチレン基またはビニリデン基である場合は、ハロゲン、炭素数1〜3000の直鎖状炭化水素基(ただし、主鎖中の結合はそれぞれ飽和結合でも不飽和結合でも良く、主鎖上の水素原子は任意にハロゲン、またはメチル基で置換されていても良い)、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、前記式(9)〜(75)のいずれかの化合物から任意の1個の水素を除いた構造を有する環状置換基(ただし、上記環状置換基は、1個または複数の置換基でさらに置換されていても良く、それらの置換基は互いに同一であるかまたは異なり、前記置換基は、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、またはアミノ基である)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基であるか、または、同一のX(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するXとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
その結合するXがイミノメチレン基またはイミノ基である場合は、ハロゲン、炭素数1〜3000の直鎖状炭化水素基(ただし、主鎖中の結合はそれぞれ飽和結合でも不飽和結合でも良く、主鎖上の水素原子は任意にハロゲン、またはメチル基で置換されていても良い)、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、前記式(9)〜(75)のいずれかの化合物から任意の1個の水素を除いた構造を有する環状置換基(ただし、上記環状置換基は、1個または複数の置換基でさらに置換されていても良く、それらの置換基は互いに同一であるかまたは異なり、前記置換基は、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、またはアミノ基である)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基である。
【請求項5】
前記共役系高分子鎖またはオリゴマー鎖が、ポリフェニレン、オリゴフェニレン、ポリフェニレンビニレン、オリゴフェニレンビニレン、ポリエン、オリゴビニレン、ポリアセチレン、オリゴアセチレン、ポリピロール、オリゴピロール、ポリチオフェン、オリゴチオフェン、ポリアニリンおよびオリゴアニリン(ただし、これらは1個以上の置換基で置換されていても良いし、置換されていなくても良い)からなる群から選択される少なくとも一つである請求の範囲3または4記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【請求項6】
前記置換基が、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つである請求の範囲5記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【請求項7】
前記共役系高分子鎖またはオリゴマー鎖の式量が30〜30000の範囲である請求の範囲3または4記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【請求項8】
前記式(1)において、前記同一のA(rは1から6までのいずれかの整数)または同一のX(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士が共有結合により結合され、それらの結合するAまたはXとともに炭素環またはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成する場合、前記環の構成原子数が3〜20であり、前記置換基が、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つである請求の範囲1記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【請求項9】
前記式(1)において、前記X〜X上の置換基のうち少なくとも一つが、その結合するXおよびさらにそのXが結合するベンゼン核と一体となって共役系を形成する請求の範囲1記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【請求項10】
前記式(1)において、A〜Aの全てが水素原子である請求の範囲1記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【請求項11】
前記式(1)において、前記X〜X上の置換基が存在しない(すなわち、前記X〜X上の水素原子のいずれもが前記置換基により置換されていない)請求の範囲1記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【請求項12】
前記式(1)において、X〜Xが、メチレン基、ビニリデン基、イミノ基および酸素原子からなる群から選択される少なくとも一つである請求の範囲1記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【請求項13】
前記式(1)において、X〜Xの全てがメチレン基である請求の範囲1記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【請求項14】
請求の範囲1記載の化合物の分子から誘導される基が、二個以上、共有結合および架橋鎖の少なくとも一方により連結されている構造を有する化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。ただし、前記二個以上の基の構造は互いに同一でも異なっていても良い。
【請求項15】
前記架橋鎖が、メチレン基または炭素数2〜10のポリメチレン基であり、さらに、前記二個以上の基が、それぞれ少なくとも一つのベンジル位炭素を含み、前記共有結合または架橋鎖との結合部位が前記ベンジル位炭素である請求の範囲14記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩。
【請求項16】
請求の範囲1もしくは14記載の化合物またはその互変異性体もしくは立体異性体と金属元素との錯形成構造を含む錯体またはその塩。
【請求項17】
前記金属元素が遷移金属元素を含む請求の範囲16記載の錯体またはその塩。
【請求項18】
前記遷移金属元素が、イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、W(タングステン)、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)およびオスミウム(Os)からなる群から選択される少なくとも一つを含む請求の範囲17記載の錯体またはその塩。
【請求項19】
下記式(76)で表される化合物またはその塩。

ただし、式中、R〜Rはそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、直鎖もしくは分枝アルキル基、または芳香族炭化水素基であり、X11、X21およびX31はそれぞれ同一であるかまたは異なり、メチレン基、イミノ基または酸素原子であり、イミノ基の場合は、その水素原子は保護基により置換されていても良い。
【請求項20】
〜Rがそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、フェニル基、またはナフチル基である請求の範囲19記載の化合物またはその塩。
【請求項21】
下記式(77)で表される化合物のメタセシス反応を含む、請求の範囲19記載の化合物またはその塩の製造方法。

ただし、式中、R〜R、X11、X21およびX31はそれぞれ前記式(76)と同じである。
【請求項22】
前記メタセシス反応が、触媒を用いて行われる請求の範囲21記載の製造方法。
【請求項23】
前記触媒が、ルテニウム、アルミニウム、チタン、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む請求の範囲22記載の製造方法。
【請求項24】
前記触媒が、(PCyRuCl=CHPh、Al(C−TiCl、Al(C−MoCl、およびAl(C−WClからなる群から選択される少なくとも一つを含む請求の範囲22記載の製造方法。
【請求項25】
前記メタセシス反応が、前記式(77)の化合物と反応するもう一種類のオレフィンを用いて行われる請求の範囲21記載の製造方法。
【請求項26】
前記オレフィンがエチレンである請求の範囲25記載の製造方法。
【請求項27】
下記式(77’)で表される化合物またはその塩。

ただし、式中、R〜Rはそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、直鎖もしくは分枝アルキル基、または芳香族炭化水素基であり、X11、X21およびX31はそれぞれ同一であるかまたは異なり、メチレン基、イミノ基または酸素原子であり、イミノ基の場合は、その水素原子は保護基により置換されていても良い。
【請求項28】
前記式(77)で表される化合物のオゾン分解を含む、請求の範囲27記載の化合物またはその塩の製造方法。ただし、前記式(77)で表される化合物については請求の範囲21に記載の通りである。
【請求項29】
請求の範囲27記載の化合物の分子内カップリング反応を含む、請求の範囲19記載の化合物またはその塩の製造方法。
【請求項30】
前記分子内カップリング反応が、遷移金属元素を用いた還元的カップリング反応である、請求の範囲29記載の製造方法。
【請求項31】
前記遷移金属元素がチタンを含む請求の範囲30記載の製造方法。
【請求項32】
下記式(78)〜(80)で表される化合物をハロゲン化し、さらにWurtz型カップリングにより環化させることを含む、前記式(77)で表される化合物の製造方法。ただし、前記式(77)で表される化合物については請求の範囲21に記載の通りである。

式(78)〜(80)中、R〜R、X11、X21およびX31はそれぞれ前記式(77)と同じである。
【請求項33】
アルカリ金属、銅触媒、ニッケル触媒およびパラジウム触媒からなる群から選択される少なくとも一つの存在下で前記Wurtz型カップリングによる環化を行なう、請求の範囲32記載の製造方法。
【請求項34】
前記式(78)〜(80)で表される化合物をハロゲン化した後、前記ハロゲン化と同一の反応系中で前記Wurtz型カップリングによる環化を行なう、請求の範囲32記載の製造方法。
【請求項35】
カリウムt−ブトキシド、n−ブチルリチウムヘキサン溶液、1,2−ジブロモエタン、ヨウ化銅(I)、およびTHFを用いて前記式(78)〜(80)で表される化合物のハロゲン化およびWurtz型カップリングによる環化を行なう、請求の範囲32記載の製造方法。
【請求項36】
請求の範囲32記載の製造方法により前記式(77)で表される化合物を製造することを含む、請求の範囲21または29記載の製造方法。
【請求項37】
請求の範囲19記載の化合物を酸化して下記式(81)で表される化合物を製造することを含む、請求の範囲1もしくは14記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩、または請求の範囲16記載の錯体もしくはその塩の製造方法。

ただし、式中、R〜R、X11、X21およびX31はそれぞれ前記式(76)と同じである。
【請求項38】
請求の範囲1または14記載の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体またはそれらの塩を含む電子材料。
【請求項39】
請求の範囲16記載の錯体またはその塩を含む光増感剤。
【請求項40】
請求の範囲16記載の錯体またはその塩を含む触媒。

【国際公開番号】WO2004/067446
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504702(P2005−504702)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000678
【国際出願日】平成16年1月27日(2004.1.27)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】