説明

スマートな非経口送達システム

【課題】スマートな非経口送達システムの提供。
【解決手段】本発明は、非経口的な流体の送達と患者との間での流体移送事象を評価するための方法およびシステムを提供する。この流体移送事象の評価は、要望に応じて、予測的、リアルタイム及び/又は歴史的であってよく、また、様々な異なる様式をとることができる。一つの実施形態において、本発明のスマート型治療学システムは、非経口的流体移送装置から患者への流体(例えば有益な物質を含む流体)の非経口的投与の最も信頼のおける自動的な特異的識別および検出を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
米国特許法第119条(e)にしたがって、本願は、2006年7月7日に出願された米国仮特許出願第60/819,750号、2007年7月27日に出願された米国仮特許出願第60/891,883号、2007年5月29日に出願された米国仮特許出願第60/940,631号、および2006年7月27日に出願された米国仮特許出願第60/946,706号の優先権を主張する。この米国仮特許出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(序論)
有益な物質および流体の非経口的な投与(即ち、消化管を通じる方法以外の仕方での投与、例えば静脈内注射もしくは筋肉内注射、または吸入などによる投与)は、1つの確立された臨床的実践手段である。有益な物質の非経口的投与は、適切に投与されたときには、例えば使用説明書に従って投与されたときには、多くの患者にとって効果的な治療法である。しかし、何件かの研究が、平均して約10%の患者は注射可能な薬剤を不適切に投与されていることを示している。例えば、かなりの割合の重大な間違いが静脈内(IV)用薬剤の投与にかかわるものである。
【0003】
静脈内に送達された薬剤に対する患者の応答は、胃腸系がバイパスされるため、急速である。従って、もし間違いが為された場合には、補正する時間がほとんどない。大部分の非常に重要な薬剤は静脈内に送達される。適正な投与は、しばしば、指定された時間に特定の投与経路を通じて正確な用量の薬剤を患者に送達するために何人もの個人が関与するプロセスである。間違いが生じる危険性、更には、その間違いの発生が1つまたはそれ以上の有害な影響を患者にもたらし得る望ましくない可能性が存在することを理解するのは難しくない。
【0004】
静脈内投与にかかわる間違いは、薬剤を処方するプロセス、書き写すプロセス、調剤するプロセスおよび投与するプロセスなどのプロセス全体を通じ、いつでも引き起こされる可能性がある。例えば、処方することにかかわる間違いは、処方が読みにくいため、不完全なため、もしくは誤った患者のチャートに記入されたため、または小数点の位置が誤っているかもしくは不適切なため、または容認されていない処方略語が使用されているため、または不適切な薬剤が選択されているため、または患者のアレルギーが正しく確認されていないためなどの理由で起こり得る。書き写しにかかわる間違いは、薬剤投与記録簿(MAR)に処方が書き写されなかったため、完全に書き終えられなかったため、または不正確に書き写されたためなどの理由で起こり得る。また、時々、患者のアレルギーが書き写されていなかったり、書き写しが読みにくかったりする場合もある。調剤することにかかわる間違いは、用量、または薬剤もしくは患者の識別に関して起こり得る。投与にかかわる間違いは、患者のケアの過程でいつでも起こる可能性があり、また、患者もしくは薬剤の識別、または薬剤投与の時間、用量もしくは経路に関するものであり得る。ある調査が、静脈内投与にかかわる間違いのうちの60−80%は人間に起因するものである、と指摘していることは注目に値する。
【0005】
従って、間違いを生じる可能性を減らすための1つの方法は、薬剤の処方、書き写し、調剤および投与のプロセスをできるだけ多く自動化することである、ということになる。
【0006】
薬剤の処方、書き写し、調剤および投与プロセスを自動化する部分には情報技術を利用することができよう。例えば、間違いを生じる可能性は、ポンプをプログラムするために使用される注入データを相互参照することにより減らすことができ、また、ポンプの操作を可能にする前に、そのポンプにプログラムされているデータを再調査することにより、更には、プログラムされたデータが変更されているかどうかを検出することにより減らすことができる。
【0007】
上で説明されている間違いを減らすことを目的として幾つかのシステムが開発されている。そのようなシステムの例が特許文献1;特許文献2および特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,781,442号明細書
【特許文献2】米国特許第5,317,506号明細書
【特許文献3】米国特許第6,985,870号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらのシステムおよび他のシステムが現在存在しているにもかかわらず、改善されたシステムの必要性が依然として存在する。例えば、何ら人間の介入を必要とすることなく、ある用量決定と適切にマッチングされている患者の予測的な最も信頼のおける確認をもたらす非経口的投与システムを開発することができたとすれば、当技術分野における重大な進歩であろう。また、繰り返しになるが、何ら人間の介入を必要とすることなく、正しく有益な物質および量が投与されたかどうか、ならびにその薬剤が適切な時間に投与されたかどうかについての最も信頼のおける記録簿を提供するシステムの開発にも興味が持たれよう。これらのメリットは、本発明のスマートな(smart)非経口送達により得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(要旨)
ここで開述されている本発明のシステムおよび使用方法は、流体送達装置と患者との間での流体移送事象の正確な評価を初めて提供する。この評価は予測的であってよく、例えばその評価が将来の流体移送事象または予定されている流体移送事象、即ち、まだ起こっていない事象についての事前の知識を与えることであってよい。例えば、本発明のシステムおよび方法の実施形態により可能に成されたこの評価は、患者が非経口用流体送達装置からの将来の流体送達事象に適切にマッチングされているという予測的知識を提供する。また、この評価は歴史的であってもよく、例えばその評価が既に起こった流体移送事象についての知識を与えることであってもよい。更に、本発明のスマート型治療学システムは、非経口的流体移送装置から患者への流体(例えば有益な物質を含む流体)の非経口的投与の最も信頼のおける自動的な特異的識別および検出を提供する。更に別の実施形態においては、この評価はリアルタイムであり、例えばその評価は現在起こっている流体移送事象についての知識を与えることなどである。
【0011】
非経口的流体移送事象の特定の予測的、リアルタイム及び/又は歴史的な識別および検出は、インテリジェント型の流体送達システムを用いて達成される。本発明の実施形態はインテリジェント型流体送達システムを含み、そのインテリジェント型流体送達システムは、患者付随型識別装置および非経口用流体送達装置(例えば、以降の個所でもっと詳しく検討されているような注射器、静脈内投与装置、吸入器および透析装置など)を含む。この送達装置および識別装置は、通信媒体として患者の身体を利用してそれらの装置の間で流体移送シグナルを伝達することができるように構成されている。流体移送シグナルの通信媒体として患者の身体を利用することにより、その送達装置と患者との間における流体の予測的及び/又は現実的流体移送事象についての予測的、リアルタイム及び/又は歴史的な最も信頼のおける知識が自動的に得られる。知識が自動的に得られることから、その知識を得るために人間の介入を必要としない。もっと正確に言えば、何ら人間の介入を伴うことなく、本システムは、上述の知識を得て、例えばその知識を含むデータをユーザーに出力することにより及び/又はそのデータを適切な記録媒体、例えばコンピュータで読み取り可能な媒体などに記録することにより、使用しようとしているユーザーにその知識を提供する。その上、流体送達事象についてのこの知識は最も信頼のおけるものであり、例えば、繰り返しになるが、何ら人間の介入または人間による確認を必要とすることなく、その知識が興味対象の特定の患者および特定の流体送達装置についてのものであることを確実に知ることができる。
【0012】
この流体移送シグナルの内容は数多くのファクターに依存して広範囲にわたり様々に変わるものと考えられ、そのようなファクターは、これらに限定するものではないが:流体移送シグナルの方向(例えば、そのシグナルが患者付随型識別装置から流体送達装置へ及び/又は流体送達装置から患者付随型識別装置へ移動するのかどうか);そのシステムの構成、例えば、患者付随型識別装置が単純な患者識別情報を送信するのか、またはもっと複雑な患者情報、例えば健康歴情報、1つもしくはそれ以上の生理学的パラメーターなどを送信するのかどうか;そのシステムに付加的な構成要素、例えば病院情報システム、信号遅延装置などが存在するかどうか;そのシステムの目的が予測的及び/又は歴史的投与データなどを提供することであるかどうか;などを含む。
【0013】
上で指摘されているように、特定の実施形態においては、その流体移送シグナルは予測的適用において用いられるものである。本発明の予測的適用は、ある意図された流体移送事象がある与えられた患者にとって正しいものであることを自動的に確かめるために本システムが使用されるような形態での適用である。例えば、予測的適用は、流体移送シグナルが、流体送達装置と患者との間に流体的な接続が確立されており、且つ、その装置が患者へ流体を移送する準備が整っているという情報を提供するような形態での適用である。更に別の実施形態においては、その流体移送シグナルは歴史的適用において用いられるものである。本明細書で開述されているとおりの歴史的適用は遡及的適用を含み、例えば、流体移送事象が起こった後に、例えばその患者に対する正確な薬歴を決定する際などにその知識が用いられる場合を含む。例えば、そのような適用の実施形態における流体移送シグナルは、流体がその装置から患者へ非経口的に移送されたという実際の知識を提供するものである。尚も別の実施形態においては、その流体移送シグナルはリアルタイム適用において用いられるものであり、例えば流体が送達装置と患者との間で移送されているときにその知識が用いられるような場合がこれに該当する。
【0014】
本発明の実施形態は、流体が送達装置から患者へ送達されるときにのみ流体移送シグナルを伝達し、且つ、送達装置が実際に患者と接触していて流体が患者へ移送されるときにだけその伝達が起こり得るような仕方で流体移送シグナルを伝達するように構成された送達装置を含む。
【0015】
上で概説されているように、本流体移送シグナルの内容は大きく異なり得る。予測的適用に関して言えば、流体移送シグナルは、単純な識別データを提供することもあるし、またはもっと複雑なデータ、例えば患者の病歴、処方情報などを提供することもある。歴史的適用の場合には、流体移送シグナルは、定性的であって、例えば移送が行われたかどうかについての単なるイエスもしくはノーの指示を提供することもあるし、または定量的であって、例えば移送された流体の量などの流体移送についてのもっと詳しい情報を提供することもある。
【0016】
次に、本発明のシステムの上述の実施形態および付加的な実施形態について、以下でもっと詳しく説明する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
患者と非経口的流体移送装置との間での流体移送事象を評価する方法であって、該方法が:
該非経口的流体移送装置と上記患者との間での流体移送接続を確立するステップ;および
該患者の身体をシグナル伝導性媒体として使用して、該非経口的流体移送装置と患者付随型識別装置との間で流体移送シグナルを伝達するステップ;および
該伝達された流体移送シグナルを検出して、該流体移送事象を評価するステップ;
を含む、方法。
(項目2)
流体移送シグナルが前記患者付随型識別装置から前記非経口用流体送達装置へ伝達される、項目1記載の方法。
(項目3)
流体移送シグナルが前記非経口用流体送達装置から前記患者付随型識別装置へ伝達される、項目1記載の方法。
(項目4)
流体移送シグナルが前記患者付随型識別装置から前記非経口用流体送達装置へ、および該非経口用流体送達装置から該患者付随型識別装置へ伝達される、項目1記載の方法。
(項目5)
前記流体移送シグナルが将来の流体移送事象についての予測的情報を含む、項目1記載の方法。
(項目6)
前記予測的情報が前記流体移送事象についての定性的情報を含む、項目5記載の方法。
(項目7)
前記定性的情報が前記流体移送事象において移送される流体についての識別情報を含む、項目6記載の方法。
(項目8)
前記定性的情報が上記流体移送事象において移送される流体についての品質管理情報を含む、項目7記載の方法。
(項目9)
前記予測的情報が前記流体移送事象についての定量的情報を含む、項目5記載の方法。
(項目10)
前記定量的情報が前記流体移送事象についての用量情報を含む、項目9記載の方法。
(項目11)
前記流体移送シグナルが過去の流体移送事象についての遡及的情報を含む、項目1記載の方法。
(項目12)
前記遡及的情報が前記流体移送事象についての定性的情報を含む、項目11記載の方法。
(項目13)
前記定性的情報が前記流体移送事象において移送された流体についての識別情報を含む、項目12記載の方法。
(項目14)
前記遡及的情報が前記流体移送事象についての定量的情報を含む、項目11記載の方法。
(項目15)
前記定量的情報が前記流体移送事象についての用量情報を含む、項目14記載の方法。
(項目16)
前記流体移送シグナルが前記流体移送事象についてのリアルタイム情報を提供する、項目1記載の方法。
(項目17)
前記リアルタイム情報が、患者が該患者へ移送されている流体にどのように応答しているかについての情報を含む、項目16記載の方法。
(項目18)
前記リアルタイム情報が、前記流体移送事象が妨げられているかどうかについての情報を含む、項目17記載の方法。
(項目19)
前記流体移送シグナルが、伝導性媒体として前記患者を利用して、前記装置と前記患者付随型識別装置との間で伝導的に伝達される、項目1記載の方法。
(項目20)
前記方法が、更に、前記患者付随型識別装置と前記非経口用流体送達装置との間で非伝導的に通信するステップを含む、項目19記載の方法。
(項目21)
前記方法が、更に、前記患者付随型識別装置および前記流体送達装置のうちの少なくとも1つから外部処理システムへシグナルを伝達するステップを含む、項目1記載の方法。
(項目22)
前記外部処理システムが病院情報システムである、項目21記載の方法。
(項目23)
前記外部処理システムがホームヘルスケア情報システムである、項目21記載の方法。
(項目24)
前記流体移送事象が前記非経口用流体送達装置から前記患者へ流体を移送することを含む、項目1記載の方法。
(項目25)
前記流体が薬理学的に活性な物質を含む、項目24記載の方法。
(項目26)
前記流体が液体である、項目25記載の方法。
(項目27)
前記液体が気体である、項目25記載の方法。
(項目28)
前記方法が、更に、前記患者から前記非経口用流体送達装置へ流体を移送するステップを含む、項目24記載の方法。
(項目29)
前記流体が血液を含む、項目28記載の方法。
(項目30)
前記流体が透析液を含む、項目28記載の方法。
(項目31)
前記非経口用流体送達装置が注射器を含む、項目1記載の方法。
(項目32)
前記非経口用流体送達装置が静脈内投与装置を含む、項目1記載の方法。
(項目33)
前記静脈内投与装置が流体送達ポンプを含む、項目32記載の方法。
(項目34)
前記静脈内流体送達装置が流体収容バッグを含む、項目32記載の方法。
(項目35)
前記静脈内流体送達が点滴バッグを含む、項目32記載の方法。
(項目36)
前記非経口用流体送達装置が吸入器を含む、項目1記載の方法。
(項目37)
前記非経口用流体送達装置が透析装置を含む、項目1記載の方法。
(項目38)
前記患者付随型識別装置が前記患者に植え込まれる、項目1記載の方法。
(項目39)
前記患者付随型識別装置が前記患者に一時的に配置される、項目1記載の方法。
(項目40)
前記システムが流体移送事象におけるエラーの検出時にエラーシグナルを提供するように構成されており、該方法が、前記エラーシグナルに関して該システムを監視するステップを含む、項目1記載の方法。
(項目41)
(a)非経口用流体送達装置;および
(b)患者に付随させるように構成された患者付随型識別装置;
を含むシステムであって、該システムが:
該患者の身体をシグナル伝達媒体として使用し、続いて、該非経口用流体送達装置と該患者との間に流体移送接続を確立して、該非経口用流体送達装置と該患者付随型識別装置との間で流体移送シグナルを伝達し;そして
該伝達された流体移送シグナルを検出して、流体移送事象を評価する;
ように構成されているシステム。
(項目42)
前記非経口用流体送達装置が流体移送シグナルを前記患者付随型識別装置へ伝達するための送信エレメントを含んでおり、また、該患者付随型識別装置が該非経口用流体送達装置から流体移送シグナルを受信するための受信機エレメントを含んでいる、項目41記載のシステム。
(項目43)
前記患者付随型識別装置が流体移送シグナルを前記非経口用流体送達装置へ伝達するための送信エレメントを含んでおり、また、該非経口用流体送達装置が該患者付随型識別装置から流体移送シグナルを受信するための受信機エレメントを含んでいる、項目41記載のシステム。
(項目44)
前記非経口用流体送達装置および前記患者付随型識別装置のそれぞれが流体移送シグナルを伝達するための送信機エレメントと伝達された流体移送シグナルを受信するための受信機エレメントとの両方を含んでいる、項目41記載のシステム。
(項目45)
前記システムが、前記患者を伝導性媒体として用いて、前記非経口用流体送達装置と前記患者付随型識別装置との間で前記流体移送シグナルを伝導的に伝達するように構成されている、項目41記載のシステム。
(項目46)
前記システムが、更に、前記患者付随型識別装置と前記非経口用流体送達装置との間で非伝導的に通信するように構成されている、項目45記載のシステム。
(項目47)
前記システムが、更に、外部処理システムを含んでいる、項目41記載のシステム。
(項目48)
前記外部処理システムが病院情報システムである、項目47記載のシステム。
(項目49)
前記外部処理システムがホームヘルスケア情報システムである、項目47記載のシステム。
(項目50)
前記非経口用流体送達装置が液体を前記患者へ移送するように構成されている、項目41記載のシステム。
(項目51)
前記非経口用流体送達装置が注射器を含んでいる、項目50記載のシステム。
(項目52)
前記非経口用流体送達装置が静脈内投与装置を含んでいる、項目51記載のシステム。
(項目53)
前記静脈内投与装置が流体送達ポンプを含んでいる、項目52記載のシステム。
(項目54)
前記静脈内流体送達装置が流体収容バッグを含んでいる、項目52記載の方法。
(項目55)
前記静脈内流体送達が点滴バッグを含んでいる、項目52記載の方法。
(項目56)
前記非経口用流体送達装置が、更に、前記患者から液体を移送するように構成されている、項目50記載のシステム。
(項目57)
前記非経口用流体送達装置が透析装置を含んでいる、項目56記載の方法。
(項目58)
前記非経口用流体送達装置が前記患者へ気体を移送するように構成されている、項目41記載のシステム。
(項目59)
前記非経口用流体送達装置が吸入器を含んでいる、項目58記載のシステム。
(項目60)
前記非経口用流体送達装置が少なくとも2つの別個の構成要素を含んでいる、項目41記載のシステム。
(項目61)
前記少なくとも2つの別個の構成要素のそれぞれが通信エレメントを含んでおり、該通信エレメントが:シグナルの受信およびシグナルの受信のうちの少なくとも1つを実行するように構成されている、項目60記載のシステム。
(項目62)
前記患者付随型識別装置が前記患者に植え込まれるように構成されている、項目41記載のシステム。
(項目63)
前記患者付随型識別装置が前記患者に一時的に配置されるように構成されている、項目41記載のシステム。
(項目64)
前記システムが、流体移送事象におけるエラーを検出するように構成されている、項目41記載のシステム。
(項目65)
前記システムが、将来の流体移送事象におけるエラーを予測的に検出するように構成されている、項目64記載のシステム。
(項目66)
前記システムが、流体移送事象中にエラーを検出するように構成されている、項目64記載のシステム。
(項目67)
前記システムが、流体移送事象におけるエラーを遡及的に検出するように構成されている、項目64記載のシステム。
(項目68)
前記システムが、流体移送事象におけるエラーの検出時にエラーシグナルを提供するように構成されている、項目64記載のシステム。
(項目69)
前記システムが前記流体移送事象を予測的に評価するように構成されている、項目41記載のシステム。
(項目70)
前記システムが、前記非経口用流体送達装置と前記患者との間で機能的な流体的連通が確立されているかどうかを決定するように構成されている、項目69記載のシステム。
(項目71)
前記システムが、将来の流体移送事象が前記患者に対して指示されたものであることを確認するように構成されている、項目70記載のシステム。
(項目72)
前記システムが、前記流体移送事象が前記患者に対して指示されたものであることを該システムが確認した後にのみ前記流体移送事象を実行するように、前記流体送達装置を起動するために構成されている、項目71記載のシステム。
(項目73)
非経口用流体送達装置であって、患者の身体をシグナル伝導媒体として用いて、該非経口的流体移送装置と患者付随型識別装置との間で流体移送シグナルを伝達するように構成されている、非経口用流体送達装置。
(項目74)
前記装置が流体移送シグナルを伝達するための送信機エレメントを含んでいる、項目73記載の非経口用流体送達装置。
(項目75)
前記装置が流体移送シグナルを受信するための受信機エレメントを含んでいる、項目73記載の非経口用流体送達装置。
(項目76)
前記装置が送信機エレメントと受信機エレメントとの両方を含んでいる、項目73記載の非経口用流体送達装置。
(項目77)
前記非経口用流体送達装置が注射器を含んでいる、項目73記載の非経口用流体送達装置。
(項目78)
前記非経口用流体送達装置が静脈内投与装置を含んでいる、項目73記載の非経口用流体送達装置。
(項目79)
前記静脈内投与装置が流体送達ポンプを含んでいる、項目78記載の非経口用流体送達装置。
(項目80)
前記静脈内流体送達装置が流体収容バッグを含んでいる、項目78記載の非経口用流体送達装置。
(項目81)
前記静脈内流体送達が点滴バッグを含んでいる、項目78記載の非経口用流体送達装置。
(項目82)
当該非経口用流体送達装置が透析装置を含んでいる、項目73記載の非経口用流体送達装置。
(項目83)
当該非経口用流体送達装置が吸入器を含んでいる、項目73記載の非経口用流体送達装置。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、バイアルから抽出される有益な物質のタイプを信号伝達するスマート型治療学筋肉内注射システムを例示している。
【図2】図2は、事前充填型注射器から放出される有益な物質のタイプを信号伝達するスマート型治療学システムを例示している。
【図3】(記載なし)
【図4】図4から図7Dまでは、IVから放出される有益な物質のタイプを信号伝達するスマート型治療学システムにおける静脈内投与システムの様々な実施形態を例示している。
【図5A】図4から図7Dまでは、IVから放出される有益な物質のタイプを信号伝達するスマート型治療学システムにおける静脈内投与システムの様々な実施形態を例示している。
【図5B】図4から図7Dまでは、IVから放出される有益な物質のタイプを信号伝達するスマート型治療学システムにおける静脈内投与システムの様々な実施形態を例示している。
【図6】図4から図7Dまでは、IVから放出される有益な物質のタイプを信号伝達するスマート型治療学システムにおける静脈内投与システムの様々な実施形態を例示している。
【図7A】図4から図7Dまでは、IVから放出される有益な物質のタイプを信号伝達するスマート型治療学システムにおける静脈内投与システムの様々な実施形態を例示している。
【図7B】図4から図7Dまでは、IVから放出される有益な物質のタイプを信号伝達するスマート型治療学システムにおける静脈内投与システムの様々な実施形態を例示している。
【図7C】図4から図7Dまでは、IVから放出される有益な物質のタイプを信号伝達するスマート型治療学システムにおける静脈内投与システムの様々な実施形態を例示している。
【図7D】図4から図7Dまでは、IVから放出される有益な物質のタイプを信号伝達するスマート型治療学システムにおける静脈内投与システムの様々な実施形態を例示している。
【図8】図8は、本発明のスマート型治療学システムの1つの実施形態を備えることができる透析装置を例示している。
【図9A】図9A−9Kは、本発明の1つの実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図9B】図9A−9Kは、本発明の1つの実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図9C】図9A−9Kは、本発明の1つの実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図9D】図9A−9Kは、本発明の1つの実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図9E】図9A−9Kは、本発明の1つの実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図9F】図9A−9Kは、本発明の1つの実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図9G】図9A−9Kは、本発明の1つの実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図9H】図9A−9Kは、本発明の1つの実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図9I】図9A−9Kは、本発明の1つの実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図9J】図9A−9Kは、本発明の1つの実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図9K】図9A−9Kは、本発明の1つの実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図10A】図10A−10Iは、本発明の別の実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図10B】図10A−10Iは、本発明の別の実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図10C】図10A−10Iは、本発明の別の実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図10D】図10A−10Iは、本発明の別の実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図10E】図10A−10Iは、本発明の別の実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図10F】図10A−10Iは、本発明の別の実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図10G】図10A−10Iは、本発明の別の実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図10H】図10A−10Iは、本発明の別の実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図10I】図10A−10Iは、本発明の別の実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図11A】図11A−11Fは、本発明の尚も別の実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図11B】図11A−11Fは、本発明の尚も別の実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図11C】図11A−11Fは、本発明の尚も別の実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図11D】図11A−11Fは、本発明の尚も別の実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図11E】図11A−11Fは、本発明の尚も別の実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図11F】図11A−11Fは、本発明の尚も別の実施形態によるIVバッグ送信回路を描いている。
【図12A】図12A−12Fは本IVバッグシステムでの受信回路を描いている。
【図12B】図12A−12Fは本IVバッグシステムでの受信回路を描いている。
【図12C】図12A−12Fは本IVバッグシステムでの受信回路を描いている。
【図12D】図12A−12Fは本IVバッグシステムでの受信回路を描いている。
【図12E】図12A−12Fは本IVバッグシステムでの受信回路を描いている。
【図12F】図12A−12Fは本IVバッグシステムでの受信回路を描いている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細な説明)
上で要約されているように、本発明は、非経口用流体送達装置と患者との間での流体移送事象を評価するための方法およびシステムを提供する。この流体移送事象の評価は、要望に応じて、予測的、リアルタイム及び/又は歴史的であってよく、また、様々な異なる様式をとることができる。例えば、流体移送事象の予測的評価は、ある与えられた移送事象がある与えられた患者に適切にマッチングされているかどうかの決定が下される状況を含み、更に、その決定に基づくその後のアクション、例えば、適切なマッチングが決定された場合の送達装置から患者への流体移送の開始、または適切なマッチングが決定されなかった場合のアラームの鳴動及び/又は流体移送の制止なども含むことができる。流体移送事象のリアルタイム評価は、ある与えられた流体移送事象を、一旦開始した後に、例えば患者から受信された生理学的パラメーターに基づいて、継続すべきかどうかについての決定を下す状況、更には、何時投与されたかを含め、実際に何の流体が患者に投与されたのかなどの決定を下す状況を含む。歴史的評価は、既に行われた実際の流体移送事象に関する知識が例えば真の患者薬歴の作成において用いられるような状況を含む。
【0019】
本発明の様々な態様を更に説明するに当たり、最初に、本発明のシステムおよび方法の一般的な態様についてもっと詳しく検討し、その後、特定の実施形態の観点から本発明を説明する。
【0020】
本発明のシステムおよび方法についての一般的な説明
本発明の種々の態様は、流体移送事象の真に正確で自動化された評価を初めて提供する、インテリジェント型の非経口的流体送達システムを含み、その評価は、予測的、リアルタイムまたは遡及的のいずれであってもよい。本システムは、インテリジェント型であり、そこでは、評価するのに何ら人間の介入を必要としない。その上、本システムは、総じて、処理機能を含み、その処理機能は、1つまたはそれ以上の入力(例えば、流体移送シグナルの形態における入力)を受信し、その1つまたは複数の入力を処理してある与えられた流体移送事象について評価を下すことができるように構成されている。
【0021】
本発明のシステムの種々の実施形態は、非経口用流体送達装置と患者付随型識別装置とを含んでいる。その非経口用流体送達装置および患者付随型識別装置は、通信媒体として患者の身体を利用して、流体移送シグナルをこれら2つの構成要素間で伝達することができるように構成されている。流体移送シグナルの伝導媒体として身体を用いるため、先ず、流体送達装置と患者との間での流体的連通が確立される。患者の身体が通信媒体として使用されるため、非経口用流体送達装置と患者との間で伝えられるシグナルは、(例えば、患者付随型識別装置から送達装置の方向へ及び/又は送達装置から患者付随型識別装置の方向へ)身体を通じて移動し、その身体を伝導媒体として必要とする。特定の実施形態においては、その流体移送シグナルは、その患者を伝導性媒体として利用し、流体送達装置と患者付随型識別装置との間を伝導的に伝達される。
【0022】
身体が伝導媒体として必要とされ、また、流体送達装置と患者との間での流体移送接続の確立を必要とするため、(患者付随型識別装置、非経口用流体送達装置または例えば以下でもっと詳しく検討されているような本システムの別の構成要素のいずれかにおける)シグナルの受信は正確な知識を提供し、この知識に基づいて流体移送事象の評価を行うことができる。その後、この正確な知識は、その適用形態に依存して様々な異なる仕方で更に使用することができ、ここで、そのような適用形態は予測的適用を含み、また、リアルタイム適用および歴史的適用も含む。予測的適用の例は、流体移送シグナルが流体送達装置と患者との間での想定されている流体送達事象または将来の流体送達事象についての1つもしくはそれ以上の様相、例えばある流体のタイプ及び/又は用量がその患者にとって適切であるかどうかなどを事前に決定するために用いられる適用形態である。本発明の方法およびシステムの歴史的または遡及的適用の例は、流体移送シグナルが非経口用流体送達装置を介して患者に既に送達されている1つまたは複数の流体の正確な履歴を得るために用いられる適用形態を含む。
【0023】
患者付随型識別装置
上で要約されているように、本発明のシステムの1つの構成要素は患者付随型識別装置である。この患者付随型識別装置は、(例えば一時的または植え込み式のいずれかで)患者に付随させるべく構成されており、送信機能および受信機能のうちの少なくとも1つを実行する通信エレメントを含んでいる装置である。この患者付随型識別装置は、少なくとも患者についての識別情報を提供するものである。この識別装置は、単に患者についての識別情報を送信すべく構成されている様式(この場合、その患者付随型識別装置は送信エレメントのみを含んでいればよい)から、その識別装置が流体移送事象についての情報を受信し(例えば、その患者付随型識別装置が受信機エレメントを含んでいる場合)、その情報を内部的に処理して、ある仕方でその流体移送事象を評価することができるようなもっと複雑な様式までを含め、様々な異なる仕方で構成することができる。そのようなものとして、特定の実施形態においては、それらの識別装置は、単に患者についての識別情報を流体送達装置へ送信すべく構成されている。そのような実施形態においては、それらの識別装置は、流体移送シグナルを伝達することができるように成された非経口用流体送達装置からの信号を受信することができるように構成されたシグナル受信機である。興味ある患者付随型識別装置は、これらに限定するものではないが:2006年4月28日に出願された「Pharma−Informatics Systems」と題するPCT/US2006/16370号;ならびに、2007年2月1日に出願された「Signal Receivers for Pharma−Informatics Systems」と題する米国仮出願第60/887,780号;に記載されているものを含み、これらの特許文献の開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0024】
特定の実施形態においては、その患者付随型識別装置は、生きている被検者に、その生きた被検者の運動に実質的に影響を及ぼさない仕方で安定して付随させることができるようなサイズに成されたものである。そのようなものとして、その患者付随型識別装置は、ヒト被検者などの被検者に使用されたときに、その被検者に対して、その被検者の運動能力に何ら相違をもたらさないような寸法を有している。そのようなものとして、その患者付随型識別装置は、それのサイズが被検者の物理的運動能力を阻害しないような寸法に成されている。特定の実施形態においては、その患者付随型識別装置は小さなサイズを有しており、この場合、特定の実施形態においては、そのシグナル受信機は約5cmもしくはそれ未満の空間体積を占め、例えば、約1cmもしくはそれ未満を含め、約3cmもしくはそれ未満などの空間体積を有している。
【0025】
興味ある患者付随型識別装置は、外部に取り付けるタイプの装置と植え込み可能なタイプの装置との両方を含む。外部に取り付けるタイプの実施形態においては、それらの患者付随型識別装置はエクスビボであり、これは、使用期間中、受信機が身体の外側に存在することを意味する。識別装置(例えばシグナルの送信機及び/又は受信機)が外部に取り付けるタイプである場合、それらの識別装置はあらゆる都合のよい仕方で構成されてよく、この場合、特定の実施形態においては、それらの識別装置は望ましい皮膚の位置に付随させることができるように構成されている。そのようなものとして、特定の実施形態においては、それらの外部に取り付けるタイプのシグナル受信機は被検者の局所的な皮膚の位置と接触させることができるように構成されている。興味ある構成は、これらに限定するものではないが:パッチ、リストバンド、ベルト;などを含む。例えば、外部に装着され、且つ、適切な受信用電極を備えた腕時計またはベルトを本発明の1つの実施形態によるシグナル受信機として使用することができる。これらの患者付随型識別装置は更なる通信パスを提供することもでき、その通信パスを介して患者または保健医療従事者が収集されたデータを抽出することができる。例えば、植え込みされたコレクターが通常の(例えば405MHzの医療機器用周波数帯域で作動する)RF回路を含んでいてよく、医療従事者は、例えば当技術分野において公知の如きwandなどのデータ検索装置を用いて、そのRF回路と通信することができる。患者付随型識別装置が外部構成要素を含んでいる場合、その構成要素は、例えば音声及び/又は視覚フィードバック(そのような例は、音響式アラーム、LEDs、ディスプレースクリーンなどを含む)を提供するための出力装置を有していてよい。また、その外部構成要素はインターフェースポートも含んでいてよく、その構成要素は、このインターフェースポートを介して、そこに保存されているデータを読み出すためにコンピュータと接続することができる。更なる実施例によれば、その外部構成要素は身体の外部に装着される装具によって位置付けることができ、また、異なる場所で皮膚に取り付けられる1つまたはそれ以上の電極を有していてよい。この本発明の構成概念は持ち運び可能な装置、例えば腕時計と結合させることができ、その腕時計は、手首に分散される1個または2個の電極を有している。ビープ音を発する補聴器、ネックレス、ベルト、シューズ(PZT−パワード)、メガネまたはイヤリングなど、そのような受信用電極システムを配置および創出することができる多くの場所が存在する。これらの外部に取り付けるタイプの実施形態においては、患者付随型識別装置の一部、例えば電極は、本システムを使用している間、患者の身体を含む通信ライン、例えば伝導性の通信ラインをその識別装置と流体送達装置との間で確立することができる容易な仕方で、皮膚に接触している。
【0026】
特定の実施形態においては、その外部に取り付けるタイプの患者付随型識別装置は、適用されたときに皮膚と接触する電極を伴ったバンドエイドスタイルのパッチを形成すべくそれらの電極と統合されている小型の電極を含んでいる。この構成は更にバッテリーを含んでいてよい。このBANDAIDTMスタイルのパッチは、被検者の望ましい標的皮膚部位に、例えば胸部、背中、胴体の側面などに位置付けることができるように構成されていてよい。これらの実施形態においては、そのパッチの回路は、被検者の内部の装置からの信号、例えば創薬情報科学可能化薬剤組成物の識別装置からの信号を受信し、その後、この情報を外部処理装置、例えばPDA、スマートフォンなどへ伝達することができるように構成されていてよい。本システムで使用することができるように容易に適合化され得るBANDAIDTMスタイルの装置は、これらに限定するものではないが:米国特許第6,315,719号などに記載されている装置;を含み、これらの特許文献の開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0027】
特定の実施形態においては、その患者付随型識別装置(例えば、シグナルの送信機及び/又は受信機)は、植え込み可能な構成要素である。植え込み可能という用語は、そのシグナル受信機が、例えば半恒久的または恒久的に患者に植え込むことができるように設計即ち構成されていることを意味する。これらの実施形態においては、そのシグナル受信機は、使用期間中、生体内に存在する。また、植え込み可能であるということは、その患者付随型識別装置が、身体の内部で見られる高い塩濃度環境および高湿度環境を含めた生理学的環境中に2日間もしくはそれ以上、例えば約1週間もしくはそれ以上の期間、約4週間もしくはそれ以上の期間、約6ヵ月間もしくはそれ以上の期間、約1年間もしくはそれ以上の期間、例えば約5年間もしくはそれ以上の期間存在しているときでも機能性を維持することができるように構成されていることを意味する。特定の実施形態においては、それらの植え込み可能な回路は、約1年間から約80年間までの範囲の期間もしくはそれ以上の期間、例えば、約10年間から約50年間までの範囲の期間もしくはそれ以上の期間を含め、約5年間から約70年間もしくはそれ以上の間、生理学的部位に植え込まれたときに機能性を維持することができるように構成されている。
【0028】
植え込み可能なタイプの実施形態の場合、それらの識別装置はあらゆる都合のよい形態を有していてよく、そのような形態は、これらに限定するものではないが:カプセル状、円盤状;などを含む。我々が小さなサイズを達成し得る1つの方法は、恐らく、充電式バッテリーを含めることによるものである。これは生命維持装置ではなく、検出及び/又は情報伝達装置であるため、本装置の実施形態は2週間の自然寿命を有しており、また、患者のベッドにおけるコイルから自動的に再充電し、従って、本装置は常に再充電状態であり得る。その患者付随型識別装置は、数多くの異なる場所、例えば腹部、腰部のくびれ、肩(例えば、植え込み可能なパルス発生器が配置される場合)などに配置することができるように構成されていてよい。
【0029】
伝導媒体として患者の身体を利用して識別装置と流体送達装置との間でのシグナルの伝達に関与することができるように構成されていることに加え、その患者付随型識別装置は、更に、1つまたはそれ以上の別個の生理学的パラメーターを検知することができる能力を含んでいてよい。生理学的パラメーターを検知する能力という用語は、これらに限定するものではないが、例えば:心拍数、呼吸数、温度、圧力、流体の化学組成、例えば血液中の被分析物の検出、流体の状態、血流速度、加速度計運動データ、IEGM(心内電位図)データ;などの生理学的パラメーターまたはバイオマーカーを検出する能力を意味する。その患者付随型識別装置が生理学的パラメーターまたはバイオマーカーを検知する能力を有している場合、そのシグナル受信機が検出し得る別個のパラメーターまたはバイオマーカーの個数は様々であり、例えば1個もしくはそれ以上、2個もしくはそれ以上、3個もしくはそれ以上、4個もしくはそれ以上、5個もしくはそれ以上、10個もしくはそれ以上などであり得る。「バイオマーカー」という用語は、特定の疾患状態の存在および重症度に関係した解剖学的、生理学的、生化学的または分子的なパラメーターを表す。バイオマーカーは、理学的な検査、臨床分析および医学的画像診断を含め、様々な方法で検出することができ、また測定することができる。特定の実施形態に依存して、そのシグナル受信機は、シグナル受信用エレメントを用いて、例えばシグナルの受信および検出用途での受信機の電極を用いて、これらの検出機能のうちの1つもしくはそれ以上の機能を果たしてよく、またはそのシグナル受信機は、そのシグナル受信用エレメントとは異なる1つもしくはそれ以上の別個の検出エレメントを含んでいてもよい。そのシグナル受信機に存在し得る(または、少なくともそのシグナル受信機にカップリングされた状態で存在し得る)それらの別個の検出エレメントの個数は様々であってよく、1個もしくはそれ以上、2個もしくはそれ以上、3個もしくはそれ以上、4個もしくはそれ以上、5個もしくはそれ以上、10個もしくはそれ以上などであってよい。
【0030】
この患者付随型識別装置はあらゆる都合のよい電源を有していてよく、その電源は一次電池もしくは充電式バッテリーのどちらでも可能であり、または、誘導的にコイルへもたらされる送信により電力供給されるものであってもよく、更には、患者に付随する部位(例えば、局所的または内部)および想定される動作条件が与えられた識別装置にとって適切であり得ることを条件として、光電的な電源もしくは他の電源であってもよい。
【0031】
非経口用流体送達装置
非経口用流体送達装置は、消化管以外の経路、例えば肺を通じる経路、筋肉内注射または静脈内送達などの経路により、ある量の流体(例えば気体または液体)を患者に送達する装置である。本発明を開述する目的上、経肺投与は、肺への進入が口及び/又は鼻の通路を介するものであるとしても、送達が肺を介するものであるため、非経口的投与であると見なされる。そのようなものとして、流体送達装置は、注射器、静脈内システム、注入ポンプ、透析システム、人工呼吸器、麻酔器、噴霧器/吸入器などを含む。本送達装置は、流体を患者へ移送する際にシグナルを受信器へ伝達する流体移送シグナル発生器、例えば集積回路の形態または他の適切な構造の流体移送シグナル発生器を含むであろう。特定の状況においては、その非経口用流体送達装置は、本装置から患者へ一方向の流体移送をもたらすものである。そのような装置の例は注射器、静脈内送達装置および吸入器などである。特定の状況においては、その非経口用流体送達装置は、患者からの流体の除去および患者への流体の送達をもたらす。そのような装置の1つの例は透析装置である。
【0032】
患者へ移送され得る1つのタイプの流体は液体である。その液体は、組成が大いに異なる様々なものであってよく、また、薬剤学的に許容可能な液体賦形剤中において、1つもしくはそれ以上の別個の有益な物質、例えば1つもしくはそれ以上の薬剤を含んでいてよく、またはそれ自体が有益な物質であってもよく、例えばその液体が血漿増量剤である場合などがこれに該当する。
【0033】
液体の非経口的な送達では、本送達装置は様々であってよい。興味ある1つのタイプの装置は注射器または類似の構造物、例えばその液体を筋肉内に注入することができるように構成されている構造物などである。また、静脈内投与装置にも興味が持たれ、そのような静脈内投与装置は、液体貯蔵エレメント、例えば流体容器もしくはIVバッグなど、ならびに流体計量ユニットもしくはポンプおよび点滴バッグなどを含むことができる。本発明のシステムによりモニタリングされ得る別のタイプの流体移送事象は、流体、例えば血液および透析液などが患者から外部の装置へ移送され、次いで、典型的にはその装置内であるタイプの処理が行われた後、その装置からその流体が移送されて患者へ戻される場合である。これらの状況において用途を見出す非経口用流体送達装置の1つの例は透析用の機械であり、そこでは、そのような装置は非経口的透析装置または血液透析装置などであってよい。興味ある別のタイプの流体は気体である。様々な異なる有益な物質がエアロゾル化された様式(例えば、あるタイプのガス)で患者へ送達され、この場合、そのような送達を行うことができるように構成されている装置は、一般的に、吸入器と呼ばれている。そのようなものとして、本発明の非経口的送達装置のそれらの実施形態は吸入器である。
【0034】
ある与えられた流体送達装置は、単一の構成要素を含んでいてもよいし、または2つもしくはそれ以上の本質的に異なる構成要素、例えば注射器およびバイアル、流体収容バッグおよびIVポンプなどを含んでいてもよく、それらの構成要素は、使用期間中、相互に動作可能なように接続されており、また、上で検討されているように、その装置と患者付随型識別装置との間で流体移送シグナルを受け渡しする能力を共同的に含んでいる。そのようなものとして、本システムの様々な構成要素は、本システムのある与えられた実施形態で必要とされる場合、または望ましい場合には、更に、通信エレメント、例えば送信機及び/又は受信機なども含んでいてよい。そのような構成要素は、望ましい場合には、更に、電源も含んでいてよく、この場合、患者付随型識別装置との関連において上で述べられているものを含め、あらゆる都合のよい電源が存在していてよい。
【0035】
流体送達装置の実施形態は、創薬情報科学可能化構成要素と考えられるもの、例えば創薬情報科学可能化流体容器などを含むことができる。創薬情報科学可能化流体容器という用語は、例えば本流体送達装置を介して患者へ移送されることとなるある体積の流体を含んでいる流体容器、例えばバッグおよびバイアルなどを意味し、ここで、その容器は、その容器の内容物に関する識別情報を提供する何らかの識別装置とも関係付けられている。その識別情報の性状は、例えばその流体の名前およびその流体中に存在する薬剤の名前などの簡単なものから、例えばその容器中に存在する投薬量、その容器中に存在する流体の履歴およびその容器中に存在する流体の質(例えば、その流体が劣化していないかどうかもしくは損なわれていないかどうか)などのもっと複雑なものまで、大いに変わり得る。また、その識別装置の性状も、例えばバーコードまたは他の機械読み取り式識別装置などの受動的なインターロゲイタブルエレメントから、例えば情報を送信することができ、且つ、電源を含んでいる構成要素などのもっと能動的な構成要素まで、様々に変わり得る。以下で説明されている如く、センサーもその医療用容器に付随させることができる。
【0036】
ある与えられたシステムが2つまたはそれ以上の異なる流体容器を含んでいる場合、そのシステムは多重システムとして構成することができる。これらの多重システムの実施形態は、ある与えられた流体および患者についてのある与えられた流体移送シグナルを適切にマッチングさせることができるように、または相互に適切に関連付けることができるように、その多重システムの多数の構成要素の様々な送信シグナル間におけるクロストークおよび混信を充分に低減または排除することができるように構成される。例えば、第1のIVバッグについて発生されたシグナルは第2のバッグについて発生されたシグナルと異なっていてよく、ここで、それらの異なるシグナルは数多くの異なる方法で提供することができ、例えば適切な時間ベースの通信プロトコルを用いる方法およびそれらのシグナルに異なる周波数を持たせる方法などにより提供することができる。興味あるシグナルプロトコルは、2006年4月28日に出願されたPCT/US2006/016370号に記載されているものであり、この特許文献の開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。ある与えられた流体送達システムに複数の異なる流体容器が存在する特定の実施形態においては、付加的な識別機能をもたらすべく、それらの異なる流体にカラーコーディングが施されていてよく、その場合、正しい薬剤が正しい患者へ送達されていることの更なる確認を得るべく、このカラーコーディングを検出し、患者付随型識別装置へ(例えば、流体移送シグナルの一部として)伝達することができる。
【0037】
特定の実施形態においては、ある与えられた流体送達システムは、万が一、そのシステムが、リアルタイム適用中に生じ得る場合の如く、例えば送達中の生理学的検出により、患者がその薬理学的物質に対して有害に反応していると特定した場合に備え、薬理学的物質とその物質に対するある量の「解毒剤」との両方を含んでいてよい。そのような実施形態においては、何ら人間の介入を伴うことなく、そのシステムにより自動的に指示されたとおりに、その物質の送達が自動的に停止され、且つ、解毒剤の送達が自動的に開始されてよい。
【0038】
付加的なシステム構成要素
以下で詳述されているように、特定の実施形態は、患者付随型識別装置及び/又は流体送達装置が、更に、付加的な外部構成要素へシグナルを伝達し及び/又は付加的な外部構成要素からシグナルを受け取ることを特徴とする。その外部構成要素は、特定の実施形態では、外部処理構成要素であり、例えばデータを受け取り、指定された数学的演算及び/又は論理演算を実行し、これらの演算の結果を出力するように設計されている外部処理構成要素などである。興味ある外部構成要素の例は、これに限定するものではないが:ヘルスケアプロバイダーネットワーク(例えば、病院情報システム(HIS);ホームヘルスケア情報システムなど);を含む。従って、本発明のシステムは、更に、外部プロセッサー構成要素、例えば病院情報システム(HIS)または例えば処方薬、治療計画、健康歴および投薬ガイドラインなどの様々な様相の患者特定データを含む類似のシステムなどを含んでいてよい。このデータは、電子薬物療法記憶装置、例えばPyxisシステムなどから得られる情報も含むことができる。
【0039】
本システムは更に様々なセンサーを含んでいてよい。種々の生理学的センサーが患者に付随されていてよく、また、それらのセンサーは患者付随型識別装置の一部であってもよいし、または患者付随型識別装置の一部でなくてもよい。興味ある生理学的センサーは、これらに限定するものではないが、患者付随型識別装置との関連において上でもっと充分に説明されている如く:心拍数センサー、呼吸センサーおよび温度センサー;などを含む。
【0040】
また、種々のセンサーが本流体送達システムの様々な構成要素に付随されていてもよい。それらのセンサーは、例えばそこに含まれているカラーコーディングされた液体を検出するため、流体の透明度を検出するため、またはその流体中における1つもしくはそれ以上の被分析物の存在を検出するためなどの目的で流体容器に付随させることができる。また、センサーは、例えば細菌感染の証拠の代わりとなるもの、例えば濁度などを検出することを目的として、本システムの配管系構成要素に存在していてもよい。
【0041】
流体移送シグナル
上で検討されているように、本システムは、患者付随型識別装置と流体送達装置との間で流体移送シグナルを受け渡すことができるように構成されており、ここで、そのシグナルは、患者の身体をシグナル伝導媒体として使用することにより、これら2つの構成要素間で受け渡しされる。そのシグナルの物理的性状は様々であってよく、例えば、この場合、興味あるシグナルの物理的タイプは、電気的、磁気的、光学的、熱的および音響的シグナルなどを含む。流体移送シグナルが患者の身体を伝導媒体として利用することによってそれら2つの構成要素間で受け渡しされるため、その流体移送シグナルの伝達に先立ち、その非経口用流体送達装置と患者との間で流体的な連通が確立される。
【0042】
その流体移送シグナルの内容は本発明の方法およびシステムが用いられる特定の適用形態に依存して様々であってよく、ここで、その内容は、特定の適用形態のタイプに依存して、例えばその適用形態のタイプが予測的適用であるのか、リアルタイム適用であるのか、もしくは歴史的適用であるのかに依存して、ならびに方向に依存して、例えば患者付随型識別装置への方向であるのか及び/又は患者付随型識別装置からの方向であるのかなどに依存して、簡単なものから複雑なものまで広範囲にわたって様々であってよい。ある与えられた流体移送シグナルは、ある流体移送事象について、その流体移送事象が将来の流体移送事象であるかどうか、即ち、その流体移送事象がまだ行われていないかどうかの予測的情報を提供する。また、ある与えられた流体移送シグナルは、ある流体移送事象について、その流体移送事象が現在行われている流体移送事象であるかどうか、即ち、その流体移送事象が現在起こっているかどうかのリアルタイム情報を提供する。更に、ある与えられた流体移送シグナルは、ある流体移送事象について、その流体移送事象が過去の流体移送事象であるかどうか、即ち、その流体移送事象が既に行われたかどうかの遡及的情報を提供する。
【0043】
特定の実施形態においては、流体移送シグナルの内容は、流体送達装置(それの本質的に異なる構成要素を含め)と患者との間で流体的な接続が確立されているという情報である。特定の実施形態においては、その流体移送シグナルの内容は、流体送達装置(それの本質的に異なる構成要素を含め)と患者との間で前もって確立された流体的な接続が遮断されているという情報である。流体的な接続が確立されているという情報の指示に加え、その流体移送シグナルは付加的な内容を含んでいてよく、例えば、この場合、興味ある付加的な内容は、これらに限定するものではないが:患者に関する特定の内容、流体に関する特定の内容および送達装置に関する特定の内容;などを含む。
【0044】
患者に関する興味ある特定の内容は、これらに限定するものではないが:1つもしくはそれ以上の検出された生理学的パラメーターを含め、患者の本人証明(例えば、名前、独特な識別手段)、患者についての一般的な情報、例えば性別、年齢および人種など、患者の健康歴、患者の健康状態;を含み、これらの内容は、健康状態を指示するマーカー、例えばウエルネスマーカーまたはインデックスなどに組み合わされていてもよいし、または組み合わされていなくてもよい。
【0045】
流体に関する興味ある特定の内容は、これらに限定するものではないが:流体の識別手段、流体の内容物、流体中に含まれている1つもしくはそれ以上の薬理学的物質の識別手段、流体中に含まれているそのような物質の濃度、流体の履歴、例えば、どこで製造されたか、どのように保管されていたか、その流体の質、例えば損なわれているか否か;などを含む。また、流体容器に関する特定の内容にも興味が持たれ、その内容は、これらに限定するものではないが:その容器のソース/履歴、その容器の識別手段、例えば一般的(例えばバッグなどのタイプ)または特異的(例えばシリアル番号);などを含む。
【0046】
装置に関する興味ある特定の内容は、これらに限定するものではないが:その装置の状態(例えばオン状態であるのか、またはオフ状態であるのか)、その装置の設定状態、例えば流量など、その装置のソース/履歴;などを含む。
【0047】
特定の実施形態においては、その流体移送シグナルは、非経口用流体送達装置と患者との間で実際の流体移送事象が行われたという移送情報を含む。そのような実施形態においては、流体移送シグナルは、流体が非経口的送達装置と患者との間で移送されたかどうかについての情報を提供する。その流体移送シグナルは、その装置から患者へ流体が非経口的に移送されたという実際の知識を与えるものである。
【0048】
本発明の種々の実施形態は、流体が送達装置から患者へ送達されるときにのみ流体移送シグナルを伝達し、且つ、その装置が実際に患者と接触していて、流体が患者へ移送されるときにのみそのシグナルの伝達が起こり得るように構成されている送達装置を含む。そのようなものとして、本システムは、パッケージが開かれたときにシグナルの発生をもたらす他のシステム、または流体の実際の投与に対して他のプロキシタイプのシグナルの発生をもたらす他のシステムとははっきりと区別される。その代りに、本発明のシステムは、例えば装置が患者に触れていて、流体がその装置から患者に入ったときにシグナルを伝達するだけで、患者への流体の送達が実際に起こったという知識を与えるシグナルを提供する。その流体移送シグナルはあらゆる都合のよいプロトコルを用いて非経口用流体送達装置と患者付随型識別装置との間で伝達することができるが、特定の実施形態においては、装置が患者と接触しているときにのみ伝達が生じることを確実化するプロトコルが用いられる。興味あるそのような1つのプロトコルは伝導性の伝達であり、例えば、その場合には、身体がそのシグナルの伝達をもたらすための流体送達装置と患者付随型識別装置との間での伝導性媒体として用いられる。従って、ある与えられた流体移送シグナルは定性的または定量的な情報を含んでいてよい。定性的な情報は特定の数値または単位と結び付けられていない情報であり、これらに限定するものではないが:識別情報、流体についての品質管理情報(例えば、使用期限および保管条件など)、患者についての情報、例えば患者の応答状態など、何かが存在しているか否かについての情報;などを含む。定量的な情報は数値または単位を含む情報であり、これに限定するものではないが、投薬量情報などを含む。
【0049】
システム構成要素間の通信
上で検討されているように、患者付随型識別装置と流体送達装置との間での流体移送シグナルの通信は伝導性媒体として患者の身体を使用する。1つもしくはそれ以上の付加的な別の通信ラインが本システムの様々な構成要素間で確立されていてよく、例えば患者付随型識別装置と病院情報システムなどの外部構成要素との間、注入ポンプと流体容器との間などの流体送達装置の構成要素間、流体送達装置と病院情報システムとの間などで確立されていてよい。これらの付加的な通信ラインは、要望に応じて、有線通信ラインであってもよいし、無線通信ラインであってもよく、伝統的な物理的接続、例えば導線および光ファイバーなどを使用することができ、または無線通信プロトコル、例えばRFIDなどを使用することができる。これらの付加的な通信ラインは、異なる装置構成要素間で情報及び/又は電力を伝達するために用いられてよい。例えば、流体送達システムの本質的に異なる複数の構成要素が、1つのエレメントから別のエレメントへの電力の無線伝達により電力供給される通信構成要素を含んでいてよい。これらの付加的な通信ラインは、特定の実施形態においては、非伝導性の通信ラインである。
【0050】
予測的適用
上で指示されているように、本システムの幾つかの特定の適用形態は予測的な適用形態であり、そこでは、本システムはある流体移送事象(例えば、患者へのある用量の流体の送達)を評価すべく予測的に使用され、この場合、その流体移送事象はまだ実際には起こっていない。そのような適用形態は、ある与えられた用量の流体が適切に患者とマッチングされていることを確かめるためのチェック手段として本システムが使用される状況を含む。この単純なチェックに加え、本システムは、送達されることとなる投薬量が適切であることを確かめることもできる。本システムは、患者と対象となっている流体移送事象との間で適切なマッチングが検出された場合に、例えば流体送達装置を作動させることにより、例えばポンプなどを作動させることにより、その流体移送事象が自動的に起こり得るように構成することができる。本システムは、代替的に、患者とある与えられた流体移送事象との間で適切なマッチングが検出されなかった場合に、例えばその流体送達装置を不活動化することなどにより、その流体移送事象を無効にし得るように構成することができる。望ましい場合、本発明のシステムは、非経口的投与事象における間違いを検出したときにエラーシグナルを提供することができるように構成されている。その検出されるエラーは広範囲にわたって様々であり、そのようなエラーの例は、患者付随型識別装置がその患者に投与されるべきではない薬剤の知識を有していて、且つ、そのような薬剤であることの確認情報が受信機へ伝達される状況を含む。更に、本システムは、当技術分野において「要注意薬」として公知の薬剤を投与する際に厳格な管理を提供することができるように構成されており、そのような場合には、本システムは、予め定められた用量範囲内においてのみそのような薬剤の投与を可能化し、そのような範囲から逸脱しているときにはエラーシグナルを与えるように構成されている。従って、本システムは、「要注意薬」として当技術分野において公知の薬剤を用いる用途を見出す。種々のクラス/カテゴリーのそのような薬剤は:アドレナリン作動薬、IV(例えばエピネフリン);アドレナリン拮抗薬、IV(例えばプロプラノロール);麻酔薬、全身、吸入およびIV(例えばプロポフォール);心筋保護液;化学療法薬、非経口および経口;デキストロース、高張、20%またはそれ以上;透析液、腹膜および血液透析;硬膜外またはくも膜下用の薬剤;糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤(例えばエプチフィバチド);血糖降下薬、経口;変力薬、IV(例えばジゴキシン、ミルリノン);リポソーム形態の薬剤(例えばリポソーム型アンホテリシンB);穏やかな鎮静薬、IV(例えばミダゾラム);穏やかな鎮静薬、経口、子供用(例えば抱水クロラール);麻薬/アヘン製剤、IVおよび経口(液体濃縮物;即時放出型および持続放出型調合物を含む);神経筋遮断薬(例えばスクシニルコリン);放射線造影剤、IV;血栓溶解剤/線維素溶解薬、IV(例えばテネクテプラーゼ);および完全非経口栄養液;である。具体的な「要注意薬」は:アミオダロン、IV;コルチシン注射薬;ヘパリン、低分子量、注射;ヘパリン、非分画、IV;インスリン、皮下およびIV;リドカイン、IV;硫酸マグネシウム注射薬;メトトレキサート;ネシリチド;注射用ニトロプルシドナトリウム;注射用塩化カリウム濃縮液;リン酸カリウム注射薬;塩化ナトリウム注射薬、高張(0.9%より高い濃度);およびワルファリン;を含む。また、そのシグナルも、音響アラームおよび医師へ送られるアラームシグナルなどを含め、広範囲にわたり様々であってよい。そのような実施形態は、本システムをエラーシグナルの発生に関して監視する方法を含む。
【0051】
そのような適用形態においては、都合よくは、患者に関する特定の情報と流体移送事象に関する特定の情報とをマッチングさせるため、例えばその流体移送事象を生じさせることが許されるか否かを決定するため、およびエラーシグナルを発生させるか否かを決定するためなどの目的で、プロセッサーが用いられる。このプロセッサーの配置場所は、要望に応じて、本システムの種々の構成要素内で様々な場所に配置することができる。そのようなものとして、特定の実施形態においては、そのプロセッサーは患者付随型識別装置に配置されていてよい。特定の他の実施形態においては、そのプロセッサーは流体送達装置に配置されていてよい。尚も別の実施形態においては、そのプロセッサーは病院情報システムに配置されていてよい。
【0052】
リアルタイム適用
上で指示されているように、本システムの特定の適用形態はリアルタイム適用であり、そこでは、本システムが流体移送事象(例えば、患者へのある用量の流体の送達)を評価するために用いられ、この場合、その流体移送事象は実際に起こっており、即ち、進行中である。例を挙げれば、本システムは、例えば患者の生理学的パラメーターをモニタリングすることにより、その流体の送達中の有害反応に関して患者を監視するために使用することができる。本システムは、もしモニタリングされた生理学的パラメーターが予め定められた許容範囲から逸脱している場合に、例えば上で説明されている如く、エラー信号を発生させることができるように、及び/又は措置を講じることができるように、例えばその薬剤の送達を停止し、解毒剤を投与するなどの措置を講じることができるように構成されていてよい。
【0053】
歴史的適用
また、歴史的適用での本システムおよび方法の使用にも興味が持たれ、そのようなケースでは、本システムは、患者と流体送達装置との間で実際に生じた流体移送事象の真の正しい記録を得るために用いられる。歴史的適用は、ある流体移送事象が実際に生じたことについての知識を含んだ情報を使用するあらゆる適用形態を表す。望ましい場合、本発明のシステムは、ある非経口的投与事象における間違いを検出したときにエラーシグナルを提供することができるように構成されている。そのような適用形態の1つの例は、ある与えられた流体移送事象の間に、その流体の移送が妨げられている場合である。本システムは、そのような妨害を指示するシグナルを発生させることができるように構成されていてよく、そのシグナルの発生はアラームなどとして具現化することができよう。検出される間違いは広範囲にわたって様々であってよく、そのような間違いの例は、受信機がその患者に投与されるべきではない薬剤についての知識を有していて、ある薬剤の識別信号がその受信機へ伝達されているような状況を含む。検出され得る投与間違いの他の例は、受信機が、例えば患者の生理学的パラメーターをモニタリングすることにより、有害反応の発生を検出することができるような状況を含む。また、そのシグナルも広範囲にわたって様々であってよく、そのようなシグナルは音響アラームおよび医師へ送られるアラームシグナルなどを含む。そのような実施形態は、本システムをエラーシグナルの発生に関して監視する方法を含む。
【0054】
流体移送事象の真の正確な記録は、健康管理医または他の個人にある与えられた患者の正確な治療記録を提供することにおいても用途を見出す。そのようなものとして、歴史的適用は、ある個人の更なる治療においてその流体移送事象データを使用することを含み、例えば将来の治療計画を作成すること及び/又は現在の治療計画に変更を加えることにおけるその流体移送事象データの使用を含む。
【0055】
興味ある付加的な歴史的適用形態は、請求明細書を作成する目的でその流体移送事象データを使用することを含み、これにより、例えば、患者が実際に受けた医療及び/又はサービスなどに対して正確に費用請求されていることを確認することができる。
【0056】
本方法およびシステムの具体的な例証的実施形態
以上では本発明の種々の態様を概括的な言葉を用いて説明してきたが、次に、特定の実施形態との関連で更なる詳細を提供する。
【0057】
本スマート型治療学システムの種々の実施形態は、チップとともに有益な物質を含むことができる。そのチップは、患者に投与されるべき有益な物質のタイプについての情報を含むことができる。保持容器、例えばバイアルからその有益な物質を抽出したときに、そのバイアルから注射器内のチップへシグナルを送ることができる。その送信されたシグナルは前述のバイアルから抽出された有益な物質のタイプを指示することができる。患者に注入する際、その情報を、注射器から、患者内に、患者上にまたは患者の近くに配置された情報管理データベースへ、例えば患者付随型識別装置へ送ることができる。また、そのシステムは、患者が受けている何らかの治療法、例えば透析治療などについて受信機へ情報伝達することもできる。この場合、その透析装置を用いて、または現行の透析装置に付け加えられるアドオン型のモジュールを用いて、実行されている透析についてのデータ、ならびに透析中に患者から出ていく血液および患者に入ってゆく血液のパラメーターについてのデータを収集および伝達することができる。伝達されたシグナルの検出およびデコーディングに成功すると、その受信機は、アラートを作動させ、看護婦もしくは他の担当者及び/又は患者に、施された投薬または治療についての情報を受信機が成功裏に受信したことを知らせることができる。
【0058】
本発明の1つの実施形態において、図1はあるスマート型治療学システムを表しており、この場合のスマート型治療学システムは注射器1(非経口的送達装置)である。注射器1は、注射針2、流体収容構成要素8およびプランジャー6を含んでいる。関連技術分野において見られるように、注射器は、例えば血液感染性の汚染などのため、通常は一度使用した後に投棄される。注射器1内にチップ3が示されており、このチップは、シグナルを伝達または送信することができる送信能力を有している。通常はバイアル5に入っている薬剤も1回のみ使用されることが多い。しばしば、薬剤のバイアルは注射器とは別に出荷される。治療する際には、注射器1にバイアル5からの薬剤を充填し、患者に注入することができる。
【0059】
特定の実施形態においては、注射器1がバイアル5に入ったときに、バイアル5内のチップ7が、その薬剤の名称またはその薬剤をエンコードしている番号を送信し始める。注射器1内のチップ3は、流体が注射器1内に入ってきたときに、バイアル5により送信されたシグナルを「傾聴」し始める。注射器1内に配置されているチップ3は、その送信されてきたシグナルを記録することができる。
【0060】
本発明の1つの実施形態においては、(本装置から流体が患者へ移送されるなどして)薬剤が患者に注入されたときに、注射器1内のチップ3が、注射器1を通じて、そのエンコードされた番号を送信する。例えば、この送信型の実施形態は、そのエンコードされた番号を患者に伝達する2つの伝導体を伴った同軸送信機であってよい。そのエンコードされた番号を患者内に、患者上にまたは患者の周囲に配置された受信機で受け取ることができる。そのエンコードされた番号は定性的流体移送シグナルの一例である。
【0061】
本発明の1つの付加的な実施形態においては、その送信型の実施形態は、また、チップ3に取り付けられた1つまたはそれ以上の導線を伴って注射器1に埋め込まれたコイルであってもよい。また、電源がそこにコイルを有していてもよい。注射器1に入ってくる流体が注射器1内の電源を起動させることができる。その起動された電源はその電源上のコイルを励起することができる。電源上のコイルは、本質的にRFIDインターフェースとして作用するチップ3に取り付けられたコイルと電気的に導通することができる。電源の起動は電気的導通に限定されるものではなく、他の技術、例えば近接伝導などにより果たすこともできよう。このようにして、流体の実際の注入に依存する流体移送シグナルが伝達される。
【0062】
本発明の1つの付加的な実施形態においては、注射器1内の送信ユニットと患者に配置された受信ユニットとの間での多重モードの通信が可能である。例えば、注射器1内の送信ユニットと患者に配置された受信ユニットとの間での通信は、伝導パターン、RFタイプのコイルシステムまたはアンテナシステムを通じて果たすことができる。
【0063】
バイアル5内の有益な物質のタイプを識別するために利用することができる方法は幾つかある。本発明の1つの実施形態においては、その有益な物質は、注射器1内に引き入れられるときの有益な物質のインピーダンス、インダクタンスまたはキャパシタンスの変化を検出することにより識別することができる。この変化をチップ7内でエンコードし、チップ3に転送することができる。チップ3がそのエンコードされたシグナルを受信すると、注射器1における送信実施形態は、患者内、患者上または患者の周囲に配置された受信ユニットへ送信し始める。
【0064】
本発明の1つの実施形態においては、注射器1はチップ3を含むことができ、且つ、それぞれのチップ3は同一であってよい。例えば、注射器1内のチップ3は、書き込み可能な受信ユニットを含んでいるだけであってよい。注射器1内のチップ3は、バイアル5内のチップ7からのエンコードされたシグナルを受信し、保存する。注射器1内のチップ3は、そのエンコードされたシグナルを注射器1内の送信ユニットへ伝える。その送信されたシグナルが身体内、身体上または身体の周囲の受信機によって受け取られる。本明細書で使用する場合、「チップ」という用語は処理エレメントを意味し、例えば集積回路(IC)であってよい。
【0065】
その一方で、バイアル5内のチップ7は独特であってよい。例えば、それぞれのチップが、バイアルの内容物に依存して、エンコードされた異なるシグナルを送信してよい。
【0066】
本スマート型パターナル送達システムの別の実施形態においては、そのエンコードされたデータが患者内、患者上または患者の周囲に保存される。患者内、患者上または患者の周囲に受信ユニットを有することにより、その受信コンピュータを情報管理システムのハブとすることができる。
【0067】
従って、他の受信ユニットは何ら必要ではない。例えば、本発明のスマート型非経口受信システムは、送信および受信チップを含有した何らかの注射器およびバイアル、ならびに患者に付随された、例えば患者内、患者上または患者の周囲に配置された受信ユニット(例えば患者付随型識別装置)からなっていてよい。種々の先行発明は、バーコードのスキャニング、ならびに薬剤を投与したときの量および時間の手操作による記録などのマニュアル入力を必要とする手順を含む。そのようなステップは本発明のこれらの実施形態においては必要ではない。
【0068】
図2は、本発明のスマート型治療学システムの別の実施形態の実施例を示している。注射器21は有益な物質17を含んでいる。チップ23は事前組み込み型の注射器21に埋め込まれている。その送信ユニットは、有益な物質が患者に注射されたときに、そのエンコードされたシグナルを患者内、患者上または患者の周囲に配置された受信ユニットへ送信する。その送信ユニットは図1で説明されているものと同様であってよい。
【0069】
本発明の1つの付加的な実施形態においては、本スマート型治療学システムは、どれだけの量の流体がバイアルから引き抜かれ、最終的にどれだけの量の流体が患者に送達されたのかを記録することができる。特定の実施形態においては、これは、注射器の一方の端部に固定されているコイルと、更に、プランジャーに設けられている別のコイルとを有することを含む。プランジャーが押し込まれると、これら2つのコイル間の相互インダクタンスが変化し、時間の経過に伴うプランジャーの位置を決定することができる。本発明の別の実施形態においては、2つの伝導性ストリップがバイアルの壁に埋め込まれており、また、プランジャー上に伝導体が埋め込まれている。プランジャーが押し込まれると、これらの伝導性ストリップがプランジャーに設けられた伝導体との間で容量結合するため、バイアル壁に設けられたこれら2つのストリップ間のインピーダンスが変化する。このインピーダンスを測定することができ、引き抜かれた流体の量を決定することができる。本発明の別の実施形態においては、流体の直接的なインピーダンス測定が実施され、引き抜かれた流体の量が決定される。同様に、特定の実施形態においては、引き抜かれた流体の量を決定するために、プランジャー対本システムの底部におけるプレートの容量測定が用いられる。上述の検討内容は定量的な流体移送シグナルの例を提供している。
【0070】
本システムの1つの付加的な実施形態においては、エンコードされたシグナルが送信用チップから患者の受信システム(患者付随型識別装置)へ送達されたときに、光または何らかの別のタイプのインジケーター、例えば緑色光が点滅する。これは、投与者に対して、患者から注射器を引き抜くように注意を喚起する。そのインジケーターは、投与者に対して、そのエンコードされたシグナルの送信が完了し、薬剤が成功裏に送達されたことを知らしめるであろう。
【0071】
図3は本発明の別の実施形態を描いており、この実施形態は、IVバッグを通じて投与される薬剤を検出するための本スマート型治療学システムの実施例である。バッグ11に配置されているチップ15には有益な物質のタイプおよび量が予めコーディングされている。流体がアウトレット13から流れると、バッグ11内のチップ15は、そのエンコードされたシグナルを伝達し始める。IV17に埋め込まれたチップ9は、そのエンコードされたシグナルを検出し、その情報を患者内、患者上または患者の周囲に配置された受信ユニットへ送信することができる。IV17に配置されているこの送信ユニットは、図1で説明されているものと同様であってよい。
【0072】
本発明の1つの実施形態によるインテリジェント型流体送達システムの概念図が図4に描かれている。図4において、システム40は、患者付随型識別装置41、非経口用流体送達装置42(例えばIV送達システム、注射器、吸入器および透析装置など)およびヘルスケアプロバイダーネットワーク(例えばHIS)43を含んでいる。エレメント41および42のそれぞれは、シグナルを受信および送信することができる識別装置エレメントを含んでいる。図4に示されている実施形態において、矢印44Aは流体送達装置から患者付随型識別装置への流体移送シグナルの伝達を示しており、ここで、その流体移送シグナルの内容は本装置が患者へ流体をまさに移送させようとしているところであることを患者付随型識別装置に知らせることである。矢印44Bは、その通知に応答した患者付随型識別装置から流体送達装置への情報の移送を示しており、ここで、そのシグナルの内容は、例えばその流体移送事象と患者識別情報とが例えば上述の如くマッチングしていることにより、本装置が投与を開始することを認めるものである。また、流体移送事象が開始された後の患者付随型識別装置41から薬剤送達装置42への情報の移送を描いた矢印44Cも示されており、ここで、その情報の内容は、その患者の1つまたは複数の検知されたパラメーターが、患者がうまく応答しておらず、本装置がその流体の投与を中止すべきであることを指示しているという情報である。代替的に、その情報は、患者が良好に応答しており、その投与を続けることができるという情報でもあり得よう。このシグナルは、ヘルスケア担当者に提供されるエラーシグナルに限定することができ、またはその流体送達装置からの流体の送達を実際に停止させるシグナルであってもよい。
【0073】
また、図4には、患者付随型識別装置41からHIS43への情報の移送を表す矢印46Aも示されている。矢印46Aで移送される情報の内容は薬剤および応答歴であり、例えば患者に送達された1つまたは複数の薬剤の性状およびその患者の応答歴、例えば時間の経過に伴って測定された生理学的パラメーターに照らした応答歴、例えば時間の経過に伴う心拍数などの応答歴などについての情報がその識別装置からHISへ移送される。また、HIS43から識別装置41への情報の移送を表す矢印46Bも示されており、ここで、この情報の内容は患者処方情報であり、例えばどの処方薬が流体送達装置43によって実行されることとなっているのかを識別装置が知ることとなるような情報である。
【0074】
また、図4には、矢印45Aおよび45Bで表わされた、流体送達装置42とHIS43との間での情報の移送も示されている。矢印45Aは本装置からHISへの情報の移送を表しており、ここで、この情報の内容は流体送達装置の使用および性能データであってよく、例えばその装置がある与えられた期間動作を停止していたという情報とか、その装置がどのくらいの時間流体を患者に投与したのかなどの情報であってよい。矢印45BはHISから本装置への情報の移送を表しており、ここで、その情報の内容は流体送達パラメーターであってよく、例えばある与えられた患者に対する許容された薬剤もしくは薬剤の組み合わせ、ある与えられた薬剤もしくは薬剤の組み合わせに対する許容された用量範囲、ならびにその送達装置の運転を制約する他の運転パラメーターまたはガイドラインなどであってよい。
【0075】
識別装置41と本装置42との間の通信ラインのうちの少なくとも1つは、患者の身体が流体伝導媒体として使用される通信ラインである。図4に示されているそれ以外の通信ラインは無線であってよく、望ましい場合には中継ステーションを含んでいてよい。
【0076】
図4に示されている実施形態の注目すべき点は、人間が介入する構成要素が存在しないことである。そのようなものとして、本質的に異なるそれらの構成要素が相互に通信し合い、且つ、予測的保護手段を提供し、更には本システムによりもたらされた歴史的投薬情報を提供するのに人間の介入を必要としない。
【0077】
IVバッグが患者に取り付けられて、患者に送達される場合の追跡に用途を見出す本発明の別の実施形態が図5Aから7Dまでと結び付けて以下で説明されている。図5Aに示されているように、送信機52がIVバッグ56または何かがそのIVバッグに接続されているIVセットに取り付けられており、また、受信機53が患者に植え込まれている。そのIVバッグが患者に接続されていないときには、受信機53は、IVバッグ54から伝わる送信機52を検出することができない。しかし、IVバッグが流体を注ぎ込んでいるとき、または導通ブリッジとして作用する患者50を介してIVバッグ54と受信機53との間に流体的な接続が存在する場合、または少なくともIVバッグから患者への流体の送達を見越して腕に取り付けられている場合には、シグナルがIVバッグ54により伝達され、受信機53により受け取られる。
【0078】
このシステムが機能する仕方は、送信機がシグナルを流体に容量結合させるというものである。そのシグナルは、流体を通じて患者に伝わり、更に、患者の身体を通じて受信機へ、具体的には受信機の1つの電極に伝わる(これにより、伝導ループの一方の側が出来上がる)。その伝導ループのもう一方の側は送信機の反対側にあり、そこでは、シグナルが、患者に付着されていない、患者を取り巻くすべてのものであるグラウンドに容量結合されている。そのグラウンドは椅子、テーブルおよび床などであり得よう。上述のシグナルはグラウンドを通って進んだ後、パッチ受信機のもう一方の側に容量結合され、これによりループが完成する。両側におけるこのグラウンドへの容量結合は、図5Aでは、それぞれ、コンデンサおよび破線の矢印55および57で示されている。
【0079】
図5Aを参照しながら説明すると、送信機52から始まり、シグナルは、容器またはIVバッグであるバッグ54を通って進み、IVバッグを通じて容量結合される。この後、そのシグナルは、IVチューブ58を通じてIVバッグ56内の流体へ進行し、患者の腕を通って進み、または身体のどこかの場所の静脈、例えば身体の腕、脚またはどこか別の場所の静脈を通って進む。そのシグナルは、身体を通って進み続け、受信機53へ至る。その受信機の反対側では、受信機のハウジングとグラウンドとの間での容量結合57が差分シグナルを与えている。その後、グラウンドを通じて戻り、次いで、グラウンドからの容量結合55を通じて、IVバッグに取り付けられている送信機へ戻る。
【0080】
この流体移送シグナルは1MHzから10MHzまでの間の高周波信号であってよく、また、もっと高い周波数、例えば100MHzもしくはそれ以上、例えば1GHzもしくはそれ以上の高周波信号であってよい。その周波数は、送信機により発せられる電磁波によるそのものではなく、IVバッグが身体に接続されたときにだけ受信機がそのシグナルを受信するような範囲にある。特定の実施形態においては、その周波数は、周波数を高くすればするほどシグナルをIVバッグに直接的にカップリングしやすくなるが、IVバッグが身体に接続されているかどうかにかかわらず、そのシグナルが受信機によって受信されがちになる、という考察に基づいて選択される。
【0081】
特定の実施形態においては、その流体移送シグナルは、位相偏移キーイングもしくは周波数偏移キーイング、または何らかの他の遠隔通信に都合のよい技術を用いて、ある番号もエンコードしている。
【0082】
上の実施形態の1つの変形例においては、患者に取り付けられた複数のIVバッグを有していてよい。これらのそれぞれのIVバッグが各自の送信機を有しており、また、それらのそれぞれの送信機が異なるエンコード番号でエンコードされている。それらはすべてが同じ周波数で発信していてもよいし、またはそれらが異なる周波数もしくは異なる周波数帯域で発信していてもよいであろう。望ましい場合には、それらのシステムは時分割多重化されていてもよいし、またはそれらが周波数分割多重化されていてもよい。例えば、本システムの本質的に異なる構成要素により送信されるそれらのシグナルはすべてが同じ周波数であってよく、時分割多重化を用い(例えばランダムに結び付け)、それらの本質的に異なる構成要素がすべて、それらが発するシグナルを相互に識別することができるように、少なくとも時折異なる時点で送信しているようにすることができる。
【0083】
こうすることにより、受信機は、それぞれのIVバッグからのシグナルを検出し、それらのバッグが取り付けられているときおよび流体がそれらのバッグから患者に流入しているときを知ることができる。本システムは、特定の実施形態においては、流体が流れていないときを決定することができるように、または流れが妨げられているときを決定することができるように構成されている。また、本システムは、特定の実施形態においては、注入の時刻および持続時間を測定することができるように構成されている。上で検討されているように、本発明のシステムは、例えば誤ったバッグが患者に接続されているときにはいつも、または送達が何らかの理由で妨げられていて流体がもはやチューブ中を滴下していないとき、またはIVバッグにより送達される薬剤と適合しないと考えられる別のタイプのある薬剤を患者が摂取しているときに、警報が発せられるように構成されていてよい。上述の検討は、エラー事象を検出し、それを報知するシグナルを与えることができるように構成されているシステムの例を提供する。従って、受信機は、IVバッグにより送達された薬剤を測定することができるだけでなく、患者が丸薬を服用しているとき、または吸入器から流体を吸い込んでいるとき、または腎臓機能のために透析装置を通じて透析されているとき、または何らかの他の目的でその患者に薬物療法のエレメントが投与されている場合を検出することもできよう。
【0084】
特定の実施形態においては、それらのIVバッグセットは、例えば図5Bに描かれているように、流体が1つのポイントから別のポイントへ滴下するドリップキャリヤーを有するであろう。望ましい場合には、その流体送達装置と患者付随型識別装置との間での流体的連通を提供するため、滴下の一方の側からもう一方の側まで、伝導体または容量性伝導体が設けられていてよい。これらの実施形態においては、シグナルがその滴下装置によって妨害されないように、送信機は下流側に、別な言葉で表現すれば、そのドリップキャリヤーよりも患者に近い方に配置することができる。
【0085】
代替的に、図5Bに示されているように、伝導性エレメントが送信機52を伴うバッグ54とドリップキャリヤーの患者50側との間に設けられていてよい。図5Bに示されているように、IVバッグ54は送信機52を含んでいる。また、IVバッグ54は点滴バッグ59を介して患者に接続されている。点滴バッグ59のため、上述のバッグと患者50の患者付随型識別装置53との間の直接的な流体的連通が破られている。54と53との間の連絡をもたらすため、点滴バッグ59のインレットとアウトレットとの間に伝導性エレメントを設けることができる。その連絡エレメントは、ナイロン線などの流体で湿らされた線59Aから点滴バッグ上の金属被膜59Bまたは金属ストリップ59Cなどまで広範囲にわたって様々であってよい。
【0086】
代替的に、本IVシステムの1つまたはそれ以上の構成要素が伝導性材料から製作されていてよく、例えば点滴バッグ構成要素59Dが患者付随型識別装置53と本IVまたは他の送達システムの種々の本質的に異なる構成要素との間に伝導的なリンクをもたらす伝導性プラスチックなどで製作されていてよい。これらの実施形態において、身体と流体送達装置との間での流体的な接続の確立は、それらのライン中の液体を伴って、またはそのような液体を伴わずに果たすことができる。そのようなものとして、本システムはOラインで使用することができよう。そのような実施形態においては、投薬用の接続だけでなく、栄養補給チューブ、尿用チューブおよびガス用チューブも含め、患者に対して成されたすべての接続に対してその全体的なシステムを電気的にチェックすることができる。
【0087】
特定の実施形態においては、そのIVバッグは生理食塩水などの第1の流体で満たされている。看護婦または他の医療担当者がそのIVバッグに薬剤を注入し、その後、その組み合わせ物が患者に投与される。この状況において、注入された薬剤を含有しているバイアルはシグナルを注射器へ転送することができるように構成されており、また、その注射器は、注射器が有効化された受信機そのものであるかのように、そのシグナルを受信し、記録することができるように構成されている。この後、注射器はそのシグナルをIVバッグへ送信し、IVバッグはそのシグナルを受信し、何が送達され、且つ、注射器によりバッグに何が注入されたのかに基づいてそのコードを変調し、それが患者付随型識別装置へ送信されることとなる。従って、患者付随型識別装置へのシグナル送信は、この付加的な薬剤を反映した異なる番号である。
【0088】
このシステムの別の変形例は、2つの分離したリンクが存在する場合である。複数のIVバッグのうちの1つがある流体処理ユニット、例えば組み合わせることであってよいポンプなどに進み、その後、その処理ユニットと患者との間にある別個のものへ進む。図6を参照すると、2つの異なるトランスコンダクションリンクが存在し得る。第1のトランスコンダクションリンク61は、IVバッグ64からIVポンプ66に進み、その後、IVポンプ66と患者50との間の第2のトランスコンダクションリンク63へ進む。もし、例えば、そのIVポンプにおいて何らかの処理もしくは濾過、または付加的な化学物質が存在する場合には、IVバッグから伝達されるシグナルとは別個のシグナルを身体へ伝達することができる。例えば、ポンプによって混合され、混合された後にすぐに送達される2つの異なるIVバッグが存在する場合、それぞれのIVバッグはそれらの一方の溶液についての識別情報をIVポンプへ送信し、そして、組み合わせ物が患者に投与されることを反映した異なるシグナルがポンプ66から患者付随型識別装置53へ送信されるであろう。
【0089】
尚も図6を参照すると、全体的なシステムが描かれており、ここでは、患者付随型識別装置53はRFリンクを介して1つまたはそれ以上の外部装置、例えば中継ステーション65のネットワーク、携帯用デバイスなどへ送信している。これは、長時間かけて集められたデータ、または送達データの受信後直ちに集められたデータである。そのデータは、更に、例えばRFリンクを介して、中継ステーションへ伝えられてよく、その後、更に、例えばRFリンクまたは伝導性パスリンク、例えばケーブルまたは何らかの他のタイプの遠隔通信リンクなどのいずれかを通じて、外部処理構成要素68、例えば病院またはケア施設内の健康情報システムまたはサービスまたはサーバー(病院情報システム(HIS))などへ伝えられてよい。その後、この情報は処理され、出力、例えば物理的な記録可能な媒体に記録された出力がユーザーなどに提示され、例えば看護婦または他の医療従事者などに提示される。
【0090】
望ましい場合には、外部プロセッサー68は様々なアラートを提供することができる。例えば、IVバッグは、出荷および納品を目的としてそのバッグ上にバーコードを有していることが考えられ、また、そのバッグの内容物が患者に投与される前に移送されるべき情報を事前に提供するためにもそのバッグ上にバーコードを有していることがあり得よう。例えば、流体を伴った、ある与えられた医療用流体容器にバーコードを付け、健康情報システム(病院情報システム)に登録することができる。ある与えられた患者に対するその医療用流体容器に関連した処方情報もその健康情報システムに登録されてよく、その処方情報を、例えばRFリンクを通じて、その患者の患者付随型識別装置にダウンロードすることができる。これに加え、その同じ情報を、例えばその容器の内部にある流体を患者へ送達するために使用されるIVポンプにダウンロードすることもできる。そのIVポンプは、2つの確認が行われた後にのみ送達が可能になる。先ず、そのポンプは、バーコードおよびその人の患者付随型識別装置によって決定されたとおりの正しい薬剤が患者に投与されようとしていることを患者付随型識別装置に確認する。伝導性リンクを通じてその患者にこれが正しい流体であることを伝達した後、そのシステムは流体の全送達を許容し続ける。例えば、最初のセットアップで、IVポンプ流体がプライミングされ、IVバッグから患者付随型識別装置へ伝導性シグナルが伝達されるのに充分に長く患者に導入され始める。この後、患者付随型識別装置は、流体が送達されていることを確認し、且つ、送達されているその流体が正しい流体であることを確認することによって応答する。その後、本システムはその流体を患者へ送達し続ける。しかし、もし本システムがこのステップの間にその流体が正しい流体ではないことを検出した場合には、ポンピングを中止するようにポンプにアラートが発せられる。これは、本発明の二重確認システムにおける実施形態の一例である。このタイプの実施形態の利点は、あなたがそのバッグについてのRFIDまたはバーコードシステムを有していて、あなたがそれを患者の部屋に持って入り、あなたはそのバッグがその部屋にあることは知っているが、そのバッグが患者に取り付けられていること、または正しい患者もしくは隣の患者に送達されていること、またはその流体がその部屋に単にあるだけであって誰にも取り付けられていないことをあなたが知らない場合である。このRFIDおよびバーコードは工場から患者までの間のこの製品の足跡を保つ一つの方法であり、また、本発明のトランスコンダクションリンクは、誰か一般的な患者またはドレインに対してではなく、この患者に対してのその薬剤の送達を確認する。本システムの別の用途は不正を防止することであり、この場合、本発明のシステムは、薬剤が、捨て去られずに、実際に患者へ送達されたことを確認するために使用することができる。
【0091】
特定の実施形態においては、本受信機は、患者の健康状態の測定を行う生理学的センサーも含んでいる。例えば、心拍数、呼吸数、温度および活動レベルなどが測定される。もしこれらのセンサーが何か予期せぬことまたは危険なことを検出した場合には、本システムは、特定の実施形態では、ある都合のよい通信リンク、例えばRFリンクなどを通じてアラート(例えばエラーシグナル)をそのネットワークまたは中継ステーションへ、また、情報サーバーシステムを通じてナースステーションへ送ることができるように構成されており、更に、本システムがポンプを停止させることも可能であろう。例えば、ポンプが鎮痛薬を送達していて、呼吸数があるべき値よりも低くなり始めているときには、そのポンプを自動的に停止させることができよう。特定の実施形態においては、本システムは、更に、鎮痛薬の作用を無効にし、且つ、例えばもし停止している場合にはその人の心臓を再始動させることができるような、あるタイプの薬剤を含むことができよう。または、万一薬剤を送達しすぎた場合などに患者に常に適用される除細動パッチの存在が考えられ、このシステムは、必要であれば、患者の心臓を再始動させるような除細動シグナルを自動的に送達することができよう。他の手段も講じることができよう。例えば、トラブルを引き起こしている投薬を中止することができよう。理論的にその有害反応を中和することができると考えられる他の薬剤、例えば心臓を再始動させることができるアドレナリンなどの薬剤が投与されてよく、例えば少量のアドレナリンの点滴を自動的に開始させることができよう。これは、多数の患者がいるにもかかわらずそれを追跡把握することができる看護婦または他の医療従事者の数が多くない環境で有用であると考えられる。
【0092】
別の実施形態においては、本受信機は、シグナルが成功裏に検出され、且つ、デコーディングされたときにアラートを起動させることができる。この構成は、ヘルスケアプロバイダー及び/又は患者に本投薬および治療監視システムが正しく機能しているという指示をもたらす。
【0093】
シグナルが受信されたことを指示するための他の可能な方法は、ビープ音などの可聴音または振動を含む。その受信機は、場合によって、RFシグナルをパーソナルデータアシスタントまたは他の外部装置へ送り、その薬剤送達シグナルが受信機によって成功裏に受信されたことを看護婦にアラーとすることができる。
【0094】
幾つかの実施形態においては、患者だけが検出可能なインジケーターを使用することができる。例えば、受信機が植え込み可能なユニットまたは外部皮膚パッチの形態である場合には、シグナルが成功裏に受信されたときに圧電気振動が起るようにすることができる。代替的に、患者にチクチクする感じを引き起こす電気的な刺激を与えることもできる。
【0095】
エラー監視についての上述の説明はIV型の非経口的送達装置に限定されるものではなく、吸入器、丸薬、ポンプ、透析装置および他の非経口的送達装置にも適用することができる。透析システム(この場合、注入ポンプの代わりに、外部装置は例えば図8に描かれているような透析装置である)に対しても同じシステムを使用することができよう。この適用形態において、数多くの物事をモニタリングすることができよう。患者の腕に配置された付加的な電極が存在する場合には、透析を行いながら、その静脈の水力学的インピーダンスを追跡把握することができよう。この実施形態の場合、例えば静脈が虚脱しているかどうかを知ることができる。これは、患者に透析を実施する場合、非常に重要なパラメーターである。また、身体に流入する他の物事および身体から流出する他の物事、例えばその流体の組成およびその流体の化学的性質などについても追跡把握することができる。この情報は、透析装置の典型的なものである他の多数の特徴と組み合わせることができる。特定の実施形態では、透析装置が典型的に行う他の測定に加え、流体が腕に送達されているときに、腕のインピーダンスおよびその腕を通っている静脈のインピーダンスを測定することができる。
【0096】
図7Aを参照すると、上で説明されている実施形態の別の態様が示されている。図7Aに示されている実施形態は、グラウンドプレーンの使用を必要とせず、インプラントならびにパッチとともに機能する。しかし、別の伝導体、例えば足首ストラップまたは手首ストラップ71、ならびにIVポンプもしくはIVバッグと患者との間の何らかの他の伝導体などが必要になる。患者に注入が行われている間、例えば患者の反対側の手に手首ストラップ71が装着される。代替的に、その伝導体は衣料品または患者のガウンの一部であってもよいであろう。そのガウンに電気を通すことが可能であり、従って、患者は幾分伝導性の衣服を着ていることとなる。第2の伝導体は別の衣料品、例えばベルト72またはブレスレットなどであってよい。この第2の伝導体は直接的に接触している必要はなく、ゆるく接触しているだけでよい。
【0097】
このとき、電流は前と同様にIVバッグ54の間を流れ、またはそのシステムが導線を有しているポンプを含んでいる場合には、そのポンプと流体との間で容量結合を確立することができ、その流体が患者の身体内に進む。その反対側は導線であるポンプであり、衣料品、またはブレスレットもしくは第2の伝導体の他の実施形態へと進んでいよう。それが電流ループパスになり、次いで、その電流ループパスが身体およびそこに結び付けられている患者付随型識別装置により受信される。上述の衣料品は、ある種の電気的細線をその内部に有していて、本質的に、その人の身体を一回りするグラウンドループである、患者が病院でいつも着ている衣服のような何かであってよいであろう。その構成は、皮膚への容量結合をもたらし、患者付随型識別装置がそのシグナルを受信するのに充分な作動電流を提供する。代替的に、それはベッドの一部であってもよく、この場合、そのベッドに伝導体を有することができ、また、あらゆるベッドは電気を通す何らかのエレメントを有しており、従って、IVポンプを有しているときには常に、そのベッドフレームにクランプし、そのベッドフレームを伝導体とすることができる。
【0098】
図7Bに示されているような特定の実施形態においては、ハイブリッドRFIDプロトコルなどのハイブリッド通信プロトコルが用いられる。図7Bに示されている実施形態では、その送達システムの各構成要素、例えばIVバッグ54、点滴バッグ59およびポンプ75は、その構成要素が存在し、正しく接続されているという知識などを提供すべくそのシステム内で通信する送信機(それぞれ、52、74および76)を有している。その送達システムの構成要素と患者付随型識別装置53との間での流体ベースの接続(即ち、「フルビウスリンク」)が確立され、図では、バッグ56と患者50との間の流体ラインを通じて走るドットで示されている。また、それらの送達システム構成要素の異なる送信機間における無線通信ライン77A、77Bおよび77Cも示されている。それらの構成要素の本質的に異なるこれらの送信機は、何らかの都合のよい手法、例えばバッテリー、コイルおよび光起電力電池などを用いて電力供給されてよい。
【0099】
特定の実施形態においては、それらの送信機は様々な様式で配列されたコイルにより電力供給される。特定の実施形態においては、2つのコイル(1つはバッグ上の送信機にあり、もう1つは注入ポンプにある)を有していてよく、エネルギーは無線でポンプからバッグ上の送信機へ送られ、これによりその送信機に電力供給される。この実施形態の1つの変形例においては、バッグ送信機用のコイルは、IVバッグの脇に置かれ、コードを介して注入ポンプに取り付けられ、IVバッグに隣接して配置される、着脱可能なパーツである。便宜上、IVバッグにそのコイルを収容するためのポケットが存在していてよく、もしくはそのコイルが、例えばVELCROTM連結エレメントを用いて、バッグに取り付けられていてもよく、またはその内部にコイルを組み込んでいるポケットにIVバッグを入れてもよい。この実施形態が図7Cに示されている。図7Cに示されている実施形態においては、コイルはポンプ75につながれる着脱可能なパーツである。バッグが使用されるときには、看護婦がコイルをポケット73に入れ、そのコイルを送信機52に隣接して配置する。代替的に、VELCROTMを用いてコイルをバッグ上に配置してもよいし、またはコイルが埋め込まれているスリーブにバッグを入れてもよい。これらの変形態様は電力伝達の効率を改善する。
【0100】
図7Dに示されている尚も別の変形例においては、送信機52AはIVバッグから離されていて、この送信機は外部モジュールになり、また、この送信機は、ポンプに導線接続;取り付けされていてもよいし、または代替的に、(破線で示されている如く)無線で接続することもできよう。この実施形態においては、そのバッグの内容物の識別は、数多くの異なる方法、例えばバーコード、テキスト;RFIDなどにより行うことができる。読み取り機がバーコード、テキストまたはRFIDのいずれかを読み取り、ここで、その読み取り機はカメラ、バーコードリーダーまたはRFIDリーダーなどであってよい。別の代替的な実施形態は、バッグの構造に組み込まれたコンデンサプレートおよびシンプルなコネクターを使用し、そのコネクターは送信機をコンデンサプレートに取り付けるものであり、この後、あなたは尚もドリップラインを通じてあなたのIDシグナルを患者へ伝達し、我々は、ここに、シグナルを読み取り、その後にそのIDを無線でポンプへ送信する我々の小さな読み取り機を有している。そのようなものとして、図7Dに示されている実施形態においては、その送信機は、有線または無線通信を介してポンプと通信する再使用可能なパーツである。その送信機は、そのバッグに埋め込まれている機械読み取り式のタグに基づいてそのIVバッグを識別する。その機械読み取り式のタグはバーコード、印刷されたテキストおよびRFIDなどであり得よう。その送信機は、バーコードを読み取るためまたはOCR機能を果たすための適切なソフトウェアと共に、上述のタグを読み取るための適切なハードウェア−RFIDリーダー、レーザーバーコードリーダー、CMOSまたはCCDカメラを含む。その送信機およびIVバッグは、送信機を機械読み取り式のタグに隣接して位置付け、且つ、その送信機のコンデンサプレートをバッグの外側に緊密に接触させて配置するための機構を有している。これらの機構は、Velcro、バッグの脇に設けられたポケット、またはその中にバッグが入れられる、送信機を組み込んだスリーブを含むことができよう。その送信機は、容量結合されたシグナルを用いて、あるIDを身体に取り付けられた受信機へIVドリップを通じて伝達し続ける。代替的に、その容量プレートをIVバッグ構造に組み入れ、再使用可能な送信機を取り付けるためのコネクターを設けることもできる。
【0101】
本スマート型治療学システムの別の実施形態においては、そのエンコードされた情報をインターネットシステムにリンクさせることもできる。例えば、患者の受信システムはその情報を受信するだけでなく、例えばBluetoothを使用することにより、そのエンコードされた情報を病院のベッドサイドモニターに送信することもできる。
【0102】
そのベッドサイドモニターは、その情報をインターネットへ中継し、その後、データベース管理システムへ中継する。そのようなものとして、その患者の医療記録は直ちにアップデートされ、その患者の健康記録と照合することができ、従って、もしその投与された薬剤が誤っていた場合、例えば処方されたものでなかった場合には、アラートが通知され、看護スタッフメンバーまたは必要な場合には何らかの他のスタッフメンバーのいずれかに、措置を講じるように通知される。場合によっては、それが生死にかかわる問題であることもあり、これが何らかの重大な被害が起る前のアラートプロセスとして作用することがあり得よう。
【0103】
本発明の1つの付加的な実施形態においては、薬剤のタイプ、量および使用時間を吸入器において検出することができる。その吸入器には、口の上と口の下に配置された2つの電極が設けられている。
【0104】
本発明の1つの実施形態においては、薬剤は、患者が吸入しているときにだけ送達することができる。典型的には、送達されたガスが患者の肺で終わることを保証するため、注入される薬剤は空気の流れ中に吸入されるべきである。本発明は、患者の空気流を検出することができる。本吸入器は、空気流が検出されたときに薬剤を送達する。
【0105】
本発明の1つの実施形態においては、薬剤が注入されたときに患者が吸入しているかどうかを検出するための差圧センサーが設けられている。薬剤の送達は、患者が適切に吸入しているときに薬剤が送達されるように、患者が吸入しているときに合わせてタイミングを計ることができる。薬剤の送達後、薬剤のタイプおよび使用日をエンコードしているシグナルが吸入器への接触を通じて送信される。そのシグナルは、患者内、患者上または患者の周囲に配置された受信機によって受信される。
【0106】
本発明の別の実施形態においては、別のタイプの合図を用いて、患者が成功裏にその薬剤を投与したかどうかを指示することができる。例えば、口と吸入器との間でのインピーダンス測定は、口と吸入器とが適切に接触しているかどうかを指示する。もし患者が口内に適切な密封状態を有していない場合には、薬剤は送達されない。
【0107】
もし薬剤が成功裏に投与されなかった場合には、その受信機がコードを何も送信しないか、または薬剤が何ら送達されなかったことを指示するコード、例えば患者が薬剤を注入しようとしたが失敗したことを指示するコードが送信されるかのいずれかである。このようにして、医師または適切なスタッフメンバーはその薬剤が適切に投与されたかどうかを決定し、その薬剤を服用することにおける適切な手順を示すべく措置を講じることができよう。
【0108】
本発明の1つの付加的な実施形態においては、吸入器により注入される薬剤の量を定量化することができる。例えば、1つの伝達情報ビットが、どれだけの量の薬剤が送達されるかを表すことができる。送達される薬剤の量は数多くの方法で測定することができる。例えば、圧力センサーによって残っている薬剤の体積を測定することができる。別の例においては、バルブが開かれた回数をカウンターで追跡把握しながら、電子バルブによって、ある設定された量の薬剤を送達することができる。
【0109】
本発明の別の実施形態においては、本吸入器は、薬剤が投与されたか否かをアラートすべく、患者にフィードバックすることができる。例えば、本吸入器は、薬剤が適切に投与されたときに可視または可聴アラートを発生させることができる
1つの付加的な実施形態においては、本スマート型治療学システムは、例えば腎臓患者において、透析が行われているときを検出し、且つ、透析がどのように行われているかを検出することができるように拡張されてよい。血液透析システムは、典型的には、患者の身体に挿入された針を伴う2つのチューブを使用する。1つのチューブは患者から血液を取り出して、その血液を濾過すべく透析装置へ運び、濾過後、血液は、もう一方のチューブを通って患者に注入され、戻される。図8は、フィルターを含む使い捨てユニット25およびハードウェアユニット27を伴った血液透析装置を示している。
【0110】
患者と接触している一方もしくは両方の針を、透析が行われているときにシグナルを送るための電極として使用することができる。送信に両方の針を使用する場合、一方の針は相対的な陽極となり、もう一方の針は相対的な陰極となる。ACシステムであるため、各針は、陽極と陰極の間を循環することになろう。透析が行われているときにはシグナルを伝達することができ、そのシグナルは透析システムに特異的なコードを有している。このコードを患者内、患者上または患者の周囲に配置された受信機によって受信し、デコーディングすることができる。その受信機は、透析が行われたときを追跡把握することができるだけでなく、透析がどれだけの時間行われたのか、また、流量など、その透析装置でどのような設定が選択されたのかも追跡把握することができる。
【0111】
また、透析中に、たくさんの付加的情報を受信機へ伝達することもできる。例えば、患者からやってくる血液の流量および濾過されて患者へ戻される血液の流量を測定し、伝達することができる。この後、その受信機は、患者に入る流体と患者から出てくる流体との間で不平衡が存在しているかどうかを監視し、もし不平衡が検出された場合にはアラームを作動させることができる。
【0112】
各場所における圧力を測定することができ、従って、圧力降下の指示を与えることができる。それらの圧力値は、透析での重大な問題となり得る、静脈が虚脱しているかどうかを決定するために使用することができる。また、受信機が設けられている場所での圧力を測定し、それぞれの針が設けられている場所での圧力と比較して圧力降下を指示することもできる。幾つかの実施形態において、もしその測定された圧力降下が、静脈が虚脱していることを指示している場合には、本システムは、流速を遅くするように、または完全に停止して静脈が広がるのを待つように透析装置にシグナルを送ることができる。幾つかの実施形態においては、本システムは、看護婦または他のヘルスケアプロバイダーにその問題を知らせるアラートを起動させることもできよう。
【0113】
患者に入る血液および患者から出てくる血液で測定され得る他のパラメーターは、温度、酸素レベル、ヘマトクリットおよび伝導率を含む。その伝導率は、透析治療がどの程度効果的であるかの指標であり得る。また、患者に入る血液および患者から出てくる血液で多岐にわたる化学分析も実施することができよう。行い得る測定の例は、その血液中に存在するカルシウム、カリウムおよびクレアチニンのレベルを含む。この情報をすべて受信機へ送ることができる。
【0114】
治療を果たすために使用される透析装置についての情報、例えばその透析装置の型式、モデルおよびシリアル番号なども伝達することができる。場合によっては、患者は、必ずしも同じ場所または同じ機械で透析治療を受けないことが考えられる。もし問題が生じた場合、それぞれの透析治療で使用された特定の機械を知り、且つ、相関があるかどうかを知ることは有用であり得る。
【0115】
幾つかの実施形態においては、パラメーター測定機能およびデータ送信機能を透析装置自体に統合することができる。
【0116】
別の実施形態においては、アドオンモジュールを利用してそれらの付加的な機能を提供することができる。1つの実施形態においては、そのアドオンモジュールは開けることができ、また、それを横断して上述の2つのチューブを配置することができる。そのモジュールを閉じると、針が一方または両方のチューブを穿孔し、これにより、分析用に血液をサンプリングすることが可能になる。この後、そのモジュールは、患者に入る血液および患者から出てくる血液で様々な分析を実施することができ、更には、上で検討されている如く、それら2つの血液の相違を分析することができる。データの送信にそれらの同じ針を使用することができる。その差分信号をそれらのチューブを通じて、次に身体を通じて伝達することができる。これら2つのチューブは身体の異なる場所につながっており、これにより、受信機で容易に受信することができるシグナルが提供される。
【0117】
別の実施形態においては、本スマート型治療学システムを、透析溶液(即ち、透析液)が老廃物を吸収するためにある期間身体内に入れられ、その後、排出され、廃棄される、腹膜透析システムに組み込むことができる。
【0118】
幾つかの実施形態においては、本スマート型透析システムにより測定されたデータを受信機へ連続的に送信することができる。別の実施形態においては、それらのデータを選定されたインターバルで送信することができ、もしくはその透析治療の始め及び/又は終わりに送信することもできる。
【0119】
1週間に数回透析が行われる、腎機能不全を患っている患者に対しては、透析が行われたことや、その透析処置中に得られたデータなどの記録は、医師にとって非常に重要であり得る。
【0120】
送信された情報が受信機によって検出されると、その検出された情報は、他の情報、例えばその患者が丸薬の服用、IV、注射器、吸入器または他の手段を通じてこれまでに受けた投薬治療情報などとともに、患者の記録の一部になる。その受信機からアップロードされたときには、それらのすべてのデータを医師に提供することができる。これは、あらゆるヘルスケアプロバイダーが、その患者の詳細な医療記録および記録された治療のログにアクセスすることを可能にする。
【0121】
回路構成
図9Aは、本発明の実施形態によるIVバッグと共同して使用することができる送信回路の1つの実施形態のトップレベルの概要を示している。チップ901はバッテリー903により電力供給されている。このチップは、IVバッグのコンデンサプレート905とグラウンドプレーンのコンデンサプレート907との間で行き来する出力信号を制御している。IVバッグのコンデンサプレート905は、銅製のストリップまたは印刷インクなどの伝導性材料でできていてよく、また、例えば製造の間に、もしくは病院で、IVバッグに取り付けられている。この容量性プレートをIVバッグに取り付ける方法は、数ある中でもとりわけ、伝導体の接着剤接着または伝導体の直接的な印刷を含む。上述のグラウンドプレートは、アースグラウンドに電気的に結び付けることができる場所であればどこにでも配置することができる。
【0122】
図9Bは、図9Aからのチップ901のもっと詳しい図である。その回路の2つの分岐が存在する。コア909はロジックを含んでおり、一方、パッド911は2つのコンデンサプレートを駆動する。図9Cにパッド911がもっと詳しく示されている。ここでは、コンデンサ913が静かな電力供給装置を提供している。幾つかの大きなトランジスタ922−925を通過する、アウトプット919および921におけるコンデンサプレートを駆動するためのファンアウト915および917が存在する。グラウンドアウトプット919およびIVアウトプット921は、それぞれ、グラウンドドライブインプット927および929により制御されている。
【0123】
図9Bからのコア909が図9Dにもっと詳しく示されている。オシレータ931は上述のバッテリーからDC電圧を取ってクロックを発生している。ブロック933はそのクロックからサイクルを発生している。ブロック935はそれらのサイクル数を計数し、その後、それがどのサイクルであるのかに基づき、この特定の送信機を記述していて、且つ、特定のIVバッグおよびそれの内容物とも関連したアドレスを発生している。ブロック937は、送信を可能にしてデューティーサイクルを付けるか、または送信を不能にして事態が静かになるかのどちらかである。送信が可能化されるときには、そのアドレスがアウトプット939および941に取り付けられた容量性プレートを通じて送信される。送信は、アウトプット941におけるグラウンドプレートとアウトプット939におけるIVバッグプレートとの間で高周波信号を創出することにより実行される。そのシグナルを受信するために使用される受信機は、患者の身体に取り付けられているプレートおよびアースグラウンドを参照しているプレートを有している。
【0124】
送信機と受信機のどちらもがアースグラウンドを参照しているため、IVが患者に取り付けられてIV流体が流れているときに存在するシグナル伝達ループがある。IVチューブが患者に取り付けられると、IVバッグからシグナルが伝達され、そのチューブを下り、患者の内部に配置された受信機または患者の表面に取り付けられた受信機によって受信される。
【0125】
オシレータ931が図9Eにもっと詳しく示されている。オシレータ943に続いて、その周波数を分割するための周波数分割器が設けられている。この特定の実施形態においては、4つの周波数が作り出されており、送信機はそれらの周波数のうちのいずれかまたはすべてを送信することが可能になっている。回路945は、最良に機能するものを見つけ出すため、これら4つの周波数を逐次的に繰り返す。また、複数のIVバッグまたは他のシステムが接続されていて、同時に送信が行われる場合には、異なる周波数で送信するようにそれらを設定することができる。別の実施形態においては、1つの周波数のみが使用される。尚も別の実施形態においては、異なる数の周波数を使用することができる。
【0126】
同時に発信する複数の送信機を取り扱うために使用することができる技術、ならびにシグナルをきれいにしてシグナルインテグリティを改善するために使用することができる技術は、ほかにも数多くのものがあり、そのような技術は当業者にとっては明らかであろう。例えば、多数の周波数を利用し、且つ、何らかの雑音消去を加える、スペクトル拡散設計を使用することができる。
【0127】
オシレータ943は、「In−Vivo Low Voltage Oscillator」と題する米国仮特許出願第60/829,832号で検討されているものと同じオシレータであってよく、これにより、この特許文献は、参照によりその内容全体が本明細書に組み入れられる。そのオシレータの基本的な機能ブロックが図9Fに示されている。5つのサブブロック945−949が存在する。リングオシレータブロック948が図9Gに示されている。それは、発振をセットアップする差動ペア951−954を伴ったリングオシレータである。このオシレータは、入力電圧にかかわりなく、安定した出力周波数を有している。それは、約1Vから約2Vまでなどの低い電圧でも安定しているオシレータである。これは、バッテリーの電力が低下しているときでも、その周波数が大きくシフトしすぎないため、重要である。
【0128】
図9Hは、図9Dからのサイクルジェネレータブロック933をもっと詳しく示している。そのオシレータは、インプットクロック955およびクロックバー957を生成する。その後、このサイクルジェネレータは、2つのフリップフロップ961による分割を用いることによってサイクル959を発生させる。
【0129】
図9Dからのサイクルカウンターブロック935が図9Iにもっと詳しく示されている。このブロックは、サイクル数を計数する。1ビット当たり五つのフェーズ963があり、従って、各ビットは5ビット相当のサイクルになる。そのアドレスはビット965にあり、また、使用される周波数はビット967にある。この回路のいずれかの部分でもっと多数のビットまたはもっと少数のビットを使用することもできる。例えば、もっと多数のビットから成るサイクルを得るために、もっと多くのビットをそのフェーズ部分に加えることができる。周波数を変える必要がない幾つかの実施形態においては、その周波数ビットを省くことができる。
【0130】
図9Jは、アドレスイン969を取り、アドレス・アウト971を生成する多重回路を示している。ブロック973は、可能化アウトプット975を用いて、その回路が送信するときおよび送信しないときを決定する。
【0131】
それらのコンデンサにおける送信シグナルをコントロールする制御回路が図9Kに示されている。ここで使用されているスキームはH−ドライブであり、従って、IVバッグコンデンサが「ハイ」であってグラウンドコンデンサが「ロー」であるか、またはグラウンドコンデンサが「ハイ」であってIVコンデンサが「ロー」であるかのどちらかである。この回路は、交互に切り替え、最大出力を与える。送信インプット977は、図9Jからの可能化アウトプット975と同じである。送信インプット977は、送信を行うべきか否かを決定する。送信がオフにされると、アウトプットドライブ979および981が定常状態にフリーズされる。それは容量性ドライブであり、従って、それらが定常状態に固定されることはなく、また、電流が漏れることもない。
【0132】
送信が可能化されると、ことごとくのクロックまたはことごとくのサイクルで、それらのドライブ979および981が極性を切り替え、シグナルを送信する。この実施形態はフェーズシフトキーイングを使用しており、従って、そのシグナルにおける異なるビットをエンコードすべく、その極性がフェーズインプット983を用いて切り替えられる。ロジックダイアグラム985は、その回路がそれぞれの送信インプット977およびフェーズインプット983に対してどのように作用するかを示している。他の通信技術、例えば周波数シフトキーイングなども別の実施形態において使用することができる。
【0133】
この回路は、約20kHzから約1GHzまでで機能することができ、より詳細には、約200kHzから約1MHzまでを含め、約100kHzから約20MHzまでで機能することができる。本システムは、多重周波数、スペクトル拡散設計、または雑音の多い環境においてもシグナルを成功裏に送信および受信するために当技術分野において周知の無数の他の技術を利用することができる。ここで示されている回路は単なるシンプルな例であり、本システムをもっと強固にするための他の幾重もの複雑性を付け加えることができる。
【0134】
図10Aは、送信回路の別の実施形態のトップレベル図を示している。この実施形態は、バッテリーがない点を除き、図9A−Kの実施形態に非常に類似している。代わりに、インプットS1(1003)およびS2(1005)を横断するAC場を受信するコイル1001またはアンテナが存在する。この後、チップ1007はそのAC電圧を取り、それを回路の残りの部分に電力を供給するためのDC電圧に変換する。このチップは、IVバッグコンデンサプレート1009およびグラウンドプレーンコンデンサプレート1011におけるアウトプットを制御している。そのAC場は、このIVバッグチップの近傍のどこかに配置されたコイルから発生させることができる。例えば、それはIVポンプシステムに統合されていてよく、また、壁面プラグから電力を引き出すことができる。
【0135】
図10Bは、図10Aからのチップ1007のより詳細な図である。コア1013はロジックを含んでおり、一方、パッド回路1015はコンデンサプレートにおけるアウトプットを制御している。
【0136】
図10Cに、パッド回路1015のもっと詳細な図が示されている。このパッド回路のドライブ部分は図9Cに示されているものと同様である。相違点は、回路ブロック1017がACシグナルをS1(1019)およびS2(1020)で変換し、アクティブ整流器を通じてそれをVcc1021および1022でDCシグナルに変換することである。
【0137】
そのアクティブ整流器が図10Dに示されている。能動ダイオード1023−1026がダイオードブリッジを形成している。ダイオード1029−1032は主として静電放電保護用であるが、他の実施形態においてはダイオードとして機能することもできよう。ダイオード1023−1026はカスタマイズされた能動ダイオードである。この能動ダイオードを横断する電圧降下が閾値より大きくなると、スイッチが入り、そのインプットをアウトプットに短絡する。これはその能動ダイオードがダイオードとして作用することを可能にするが、電圧降下を伴わず、その回路を低めの電圧で作動させることを可能にする。極僅かな電圧降下が存在するが、受動ダイオードの場合よりもずっと少ない。電圧が閾値以下に戻ると、その能動ダイオードは、これを検知し、上述のスイッチを迅速に開く。この回路は、約0.8Vほどの低い電圧、例えば約0.9Vで作動することができる。別の実施形態は、能動ダイオードの代わりにSchottkyダイオードなどの受動ダイオードを使用することができる。
【0138】
図10Eに、能動ダイオード・ハイ1023および1024のもっと詳細な図が示されている。インプット1037とVcc1039との間に10個のSchottkyダイオード1035が並列に存在している。このケースにおけるインプット1037は、それらが並列構造であるため、S1またはS2のどちらであってもよい。抵抗器1041および1043は、コンパレータ1045に対する比較的容易な動作範囲内でシグナルを得るための分圧器を形成している。そのシグナルが回路ブロック1047に散開されている。
【0139】
図10Fは、図10Dからの能動ダイオード・ロ−1025および1026を示している。それらは、分圧器を形成している抵抗器1049および1051が180度転換されている点を除き、図10Eに示されている能動ダイオード・ハイと本質的に同じである。
【0140】
図10Gには、図10Eからのコンパレータ1045がもっと詳しく示されている。バイアス電流を伴う能動構成要素の代わりに受動テール抵抗器1053が使用されている。これは、低めの電圧で本回路を作動させるために、使用されるトランジスタの個数を減らす目的で行われる。
【0141】
図10Hは、図10Bからのコア回路構成1013を描いている。このコア回路構成は、クロック発生器ブロック1055、サイクル発生器1056、サイクルカウンター1057、送信可能化ブロック1058および制御ブロック1059を含んでいる。ブロック1056−1059は、図9Dの実施形態におけるものと本質的に同じである。この実施形態においては、クロック発生器ブロック1055がオシレータの代わりに使用されている。
【0142】
クロック発生器ブロック1055が図10Iに示されている。コンパレータ1061は図10Eに示されているコンパレータと同じである。このコンパレータは、AC入力信号であるインプットS1(1063)およびS2(1065)を比較し、それらのゼロ交差を用いてクロックシグナル1067を発生させる。そのクロックシグナルは、ブロック1069で2つ、4つ、8つまたは16個に分割され、その後、ブロック1071へ送られ、そこでこの回路の残りの部分を駆動させるべく散開される。
【0143】
別の実施形態においては、そのIV回路構成は、IVバッグ中の流体の体積を測定し、且つ、送信するように構成することができ、その体積情報は、ある与えられた時間での複数のポイントにおける流量の指標を与えることができる。この実施形態においては、2つのコンデンサプレートは、第3のグラウンドプレートがアースグラウンドに電気的に取り付けられている状態で、IVバッグに張り付けられ、または別な仕方でIVバッグに取り付けられている。IVバッグに取り付けられているこれら2つのコンデンサプレートは平行である必要はなく、また、様々な形状および配向であってよい。IVバッグに取り付けられているこれら2つのプレート間で測定される静電容量は、そのバッグ内に存在する流体の量に依存して様々に変わるであろう。これら2つのコンデンサプレート間のIVバッグに多量の流体が存在しているときには、その静電容量は、IVバッグから流体が流れ出ていて、それらのプレート間にもっと多くの空気が存在しているときよりも高くなるであろう。時間の経過に伴う静電容量の変化を観察することにより、IVバッグからの薬剤の流量に関する指標を得ることができる。
【0144】
可撓性のIVバッグの場合、測定されるこの静電容量は、IVバッグ内の流体の量に対して線形的には変わらない可能性がある。適用形態によっては、高レベルの正確度を有することがさほど重要ではない場合があり、そのようなケースではこれを受け入れることができる。別の実施形態においては、そのシグナルを後でルックアップテーブルを用いて直線化することができる。もし特定のIVバッグに対する典型的な静電容量対流体体積曲線が既知である場合には、この情報を用いて算出流量を一層正確にすることができる。幾つかの実施形態においては、使用されているバッグのタイプに特徴的な静電容量対流体体積曲線からの特定個数のポイントを、そのアドレスとともに送信することができる。別の実施形態においては、静電容量対流体体積曲線をもっと直線的にするためにIVバッグまたはコンデンサプレートの形状に修飾を施すこともできる。例えば、IV流体が流れているときでもその形が変わらないようにIVバッグの壁をもっと剛性にすれば、その曲線はもっと直線的になるであろう。
【0145】
本チップは、IVバッグに取り付けられているそれらのコンデンサプレートを通じて識別装置アドレスを送信するようにプログラムすることができる。何らかの予め定められた数のパルスでのアドレスの送信後、その送信機は静かになる。この時間の間、これら2つのIVバッグコンデンサプレート間の電圧はランプアップされ、その後、閾値に達したときに放電される。その電圧は予め定められた回数ランプアップされ、これらのサイクル数が計数される。その電圧が特定の回数ランプアップおよび放電された後、別の送信周期が続く。それらのシグナル送信間に過ぎる時間は静電容量とともに様々に変わるであろう。IVバッグが含んでいる流体が多ければ多いほど、その静電容量は高くなり、また、シグナル送信間の時間が長くなるであろう。IVバッグが流体を排出しているときには静電容量が低くなり、シグナル送信間の時間が短くなるであろう。そのランプアップ期間中のオシレータのサイクル数を計数することにより、送信間の時間を測定することができ、また、その変化をモニタリングすることにより流量の指標を与えることができる。
【0146】
別の実施形態においては、別のスキームを用いて静電容量の変化を測定することができる。
【0147】
図11Aは、流体体積および流量情報を決定するために使用することができる、IVバッグに取り付けられた2つのプレート間の静電容量を測定し得るように構成された送信機回路のトップレベル図を示している。チップ1101はバッテリー1103により電力供給されており、IVバッグのコンデンサプレート1105および1107、ならびにグラウンドプレーンのコンデンサプレート1109における電圧を制御している。別の実施形態においては、電力を得るためにコイルが存在する。
【0148】
チップ1101のもっと詳しい図が図11Bに示されている。このチップは、コア1111およびパッド回路1113を含んでいる。
【0149】
パッド回路1113が図11Cにもっと詳しく示されている。これは、図9Cで以前に検討されたパッド回路と類似している。アウトプットA1117に加え、第2のIVバッグのコンデンサプレートに対応する別のアウトプットB1115が存在している。また、アウトプットB1115用のアウトプットドライバの高い方の電圧側1121にはドライブゲート1119も結合されている。送信中には、アウトプットA1117およびアウトプットB1115の両方が同じシグナルを送信している。ランプアップ期間中にはアウトプットA1117はグラウンドに結合されており、そして、アウトプットB1115はランプアップ中には浮いていて、その後、そのコンデンサを放電すべくグラウンドに結合される。
【0150】
アウトプットB1115をグラウンドに短絡させるための独立したドライブ1123が存在している。そのトランジスタは比較的大きく、従って、迅速な放電をもたらす。電圧がランプアップ中に閾値を通過する際、コンデンサが放電される前に小さな遅延が存在する。また、低い方の電圧においても次のランプアップの前に僅かな遅延が存在する。これは時間の経過に伴う静電容量の変化を算出するときに不連続性を創出するが、計算で補正することができる。
【0151】
図11Bからのコア回路1111が図11Dにもっと詳しく示されている。この回路は、サイクル発生器1125および制御ブロック1127が異なる点を除き、図9Dで検討されているコア回路と同様である。
【0152】
図11Eは、図11Dからのサイクル発生器1125を示している。送信が可能化されると、クロック1129がサイクル1131として送り出される。送信してから次の送信までの間に、その回路の残りの部分はランプアップシステムとして機能する。ダイオード1135および抵抗器1137から作られた基準電圧1133が存在する。基準電圧1133はコンパレータ1139へ送られ、そのコンパレータは基準電圧1133をコンデンサ1141の電圧と比較する。電流源1143は、そのコンデンサ電圧を高くするためのランプを提供する。その電圧が閾値を越えると、リセット1145がトリガーされ、これにより、そのコンデンサがグラウンドに短絡される。電圧が閾値以下になったとコンパレータが決定すると、その電圧は再びランプアップされる。
【0153】
本制御ブロックが図11Hにもっと詳しく示されている。アドレス1153に基づいてフェーズ1149およびフェーズバー1151を発生させるためにサイクル1147が使用される。そのフェーズは、アウトプットコントロールA1155、グラウンド・ドライブ1157およびコントロールB1159を制御すべく、送信可能化ビットと併せて使用される。送信しない場合には、コントロールA1155はグラウンドに結合され、一方、アウトプットB1159は、リセット1161が起動されない限り、「ハイ」になっている。送信するときには、リセットは重要でなく、そのフェーズがコントロールA1155およびコントロールB1159におけるシグナルを決定する。
【0154】
多重周波数をモニタリングし、且つ、IVバッグの送信機により送られてきたシグナルを受信する受信機のシンプルな実行例が図12A−12Fに描かれている。この回路は実証することのみを目的として作られたものであり、別の実施形態においては、もっとずっと多くの複雑性およびもっと多くの特徴を含むことができる。
【0155】
図12Aは線形レギュレータを示している。図12Bは受信チャンネルの第1利得段である。ハイパスフィルタ1201があり、シグナルが増幅され、続いて幾分かの帯域制限およびバッファが存在する。
【0156】
図12C−12Eは、それぞれが異なる中心周波数を有するバンドパスフィルタである。それらはLinear Technologiesから商業的に入手可能なパーツを中心にして構築された8次バンドパスフィルタである。そのアウトプットには別のバッファ段が存在する。
【0157】
図12Fの回路は、3つの濾波された周波数帯域のそれぞれにおける受信されたシグナルのエネルギーレベルを測定する。各周波数におけるそれらの受信されたシグナル1203−1205はSchottkyダイオード1207−1209およびコンデンサ1211−1213を通じて整流される。その整流されたシグナルはコンパレータ1215−1217に入り、それらのコンパレータは、それらの電圧をポテンショメーター1219−1221によって設定された基準電圧と比較する。もしその電圧が閾値以上であった場合には、LED1223−1225が、異なる周波数に対応した異なる色で点灯する。
【0158】
適用形態
上で指示されているように、本発明のシステムおよび方法は様々な異なる適用形態での用途を見出し、それらの適用形態を予測的適用、リアルタイム適用および歴史的適用に分類することができる。
【0159】
本発明の特定の実施形態においては、すべての投薬指示がHISにおいて提供される。入院患者は患者付随型識別装置を身に着けており、この識別装置は、例えば無線リンクを介して、彼らの個人的な最新の投薬指示で連続的に更新されている。流体を送達する際、IVポンプは、その送達装置と患者付随型識別装置との間での確認後にのみ、薬剤を患者に送達する。確認が得られていない状況に対してはアラートを配信することができる。更に、薬剤の送達が行われる際にも確認を必要とし、確認が取れていないときには薬剤の送達を制止することもできる。
【0160】
キット
本件の方法を実施するためのキットも提供される。キットは、上で説明されているとおりの本発明の1つまたはそれ以上の受信機を含んでいてよい。更に、それらのキットは、1つまたはそれ以上の非経口的投薬装置、例えば予め充填された注射器、バイアルおよびIVバッグなども含んでいてよい。キットで提供される1つまたはそれ以上の薬理学的物質の投薬量は、単回の適用または複数回の適用に充分な量であってよい。特定の実施形態においては、それらのキットは、非経口的に送達される有益な物質または別の方法を通じて、例えば上で述べられているような薬剤を投与する注射器、吸入器または他の装置の使用を通じて体内に取り入れられる有益な物質の特異的な識別および検出を提供するスマート型非経口送達システムを含んでいてよい。
【0161】
また、本件キットは、そのキットの構成要素を用いて本件方法を如何にして実践するかを示す使用説明も含んでいてよい。その使用説明は適切な記録媒体または担体に記録されていてよい。例えば、その使用説明は紙またはプラスチックなどの担体に印刷されていてよい。そのようなものとして、その使用説明は、添付文書として本キットに存在していてよく、または本キットもしくは本キットの構成要素の容器のラベルなど(即ち、パッケージングまたはサブパッケージングに付随して)に存在していてもよい。別の実施形態においては、その使用説明は、コンピュータで読み取り可能な何らかの適切な記憶媒体、例えばCD−ROMおよびディスケットなどに存在する電子記憶データとして存在している。尚も別の実施形態においては、その現実的な使用説明は本キットには存在しておらず、但し、例えばインターネットを介して、リモートソースからその使用説明を得るための手段が設けられている。この実施形態の1つの例は、そこで使用説明を見ることができるウェブアドレス及び/又はそこから使用説明をダウンロードすることができるウェブアドレスを含んでいるキットである。上述の使用説明の場合と同様に、その使用説明を得るためのこの手段が適切な担体に記録されている。
【0162】
本件キットの幾つかの構成要素またはすべての構成要素が無菌性を維持するための適切なパッケージングに包装されていてよい。本件キットの多くの実施形態においては、本キットの構成要素は、単一の容易に取り扱えるユニットに成すためのキット収容エレメントに包装され、ここで、そのキット収容エレメント、例えば箱または類似の構造物は、例えば本キットの幾つかの構成要素またはすべての構成要素の無菌性を更に確保するために、気密容器であってもよいし、または気密容器でなくてもよい。
【0163】
この発明が本明細書で開述されている特定の実施形態に限定されるものではなく、そのようなものとして様々な形態を取り得ることを理解すべきである。また、本発明の範囲が添付の特許請求項によってのみ制限されるものであるため、ここで使用されている専門用語は、特定の実施形態を開述するためだけのものであり、何ら限定することは意図されていないことも理解すべきである。
【0164】
ある範囲の値が与えられている場合、その範囲の上限と下限との間に存在する介在値であって、文脈が明らかに別な具合であることを指示していない限りその下限の単位の10分の1までの各介在値、およびその記述されている範囲内の何らかの他の記述値または介在値は、本発明の範囲に包含されるものと理解される。その記述されている範囲内に何らかの特定的に除外された限界があることを前提として、これらの小さい方の範囲の上限および下限は、独立してその小さい方の範囲に含めることができ、また、これらも本発明の範囲に包含される。記述されている範囲が一方または両方の限界を含んでいる場合、限界を含めたそれらのうちのいずれか一方または両方を除外した範囲も本発明に含められる。
【0165】
別な具合に定められていない限り、ここで使用されたすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者が普通に理解する意味と同じ意味を有している。ここで説明されているものと同様または同等の方法および材料も本発明の実践または試験において使用することができるが、今や、代表的な例証的方法および材料についての説明が為されている。
【0166】
この明細書で引用されているすべての出版物および特許文献は、それぞれ個々の出版物または特許文献が恰も参照により組み入れられるべく具体的および個別的に指示されているかの如くに参照により本明細書に組み入れられ、また、それらの出版物が引用されていることとの関連においてそれらの方法及び/又は材料を開示および開述すべく、参照により本明細書に組み入れられる。あらゆる出版物の引用は本出願日に先立って単にそれが開示されているためであって、本発明が、先願発明の理由でそのような出版物に先行する資格がないこと認めたものとして解釈すべきではない。更に、ここで与えられている出版日が実際の出版日とは異なっている可能性もあり、実際の出版日に関しては独自で確認する必要があり得る。
【0167】
本明細書および添付の特許請求項で使用する場合、文脈が明らかに別な具合に指示していない限り、単数形の「a」、「an」および「the」は複数形の指示対象を含むことに注意が必要である。更に、特許請求項は何らかの選択的エレメントを除外して作成され得ることにも注意が必要である。そのようなものとして、この言明は、特許請求項の言及に関連して「単に」および「だけ」などの排他的用語を使用することに対する根拠として、または「ネガティブ」な制限を使用することに対する根拠として機能することが意図されている。
【0168】
この開示を読めば当業者にとっては明らかなように、ここで開述および例証されている個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲または精神から逸脱することなく他の幾つかのいずれかの実施形態の特徴から容易に分離し、またはそのような特徴と容易に組み合わせることができる個別的な構成要素および特徴を有している。言及されているあらゆる方法は、言及されている事象の順番でまたは論理的に可能なあらゆる他の順番で実施することができる。
【0169】
これまでに、理解を明確にする目的で、本発明を例証および実施例によりかなり詳細に説明してきたが、この発明の教示に照らし、当業者にとっては、当然の如く、添付の特許請求項の精神または範囲から逸脱することなく、そこへ特定の変更および修飾を成し得ることが明らかであろう。
【0170】
従って、これまでの説明は単に本発明の原理を例証するものである。当業者であれば、ここでは明確には説明されておらず、または示されていないが、本発明の原理を具現化し、且つ、本発明の精神および範囲に含まれる様々なアレンジを工夫できることが認識されよう。更に、ここで言及されているすべての実施例および条件説明は、主に、読者が本発明の原理およびその技術を促進させるために本発明者らにより与えられる概念を理解するのに役立たせることを意図したものであり、また、そのような具体的に言及されている実施例および条件への限定を伴うものではないものと解釈すべきである。更に、本発明の原理、態様および実施形態、ならびに本発明の特定の実施例について言及しているここでのすべての言明は、それの構造的同等物と機能的同等物との両方を包含すべく意図されている。更に、そのような同等物が現在公知の同等物と将来開発される同等物、即ち、構造の如何にかかわらず同じ機能を果たす、将来開発されるあらゆるエレメントとの両方を含むことも意図されている。従って、本発明の範囲は、本明細書で示され、説明されている例証的な実施形態に限定されることが意図されていない。もっと正確に言えば、本発明の範囲および精神は添付の特許請求項により具体化されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【図9H】
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【図9I】
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【図9J】
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【図9K】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図10G】
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【図10H】
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【図10I】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【公開番号】特開2012−232179(P2012−232179A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−174111(P2012−174111)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【分割の表示】特願2009−518380(P2009−518380)の分割
【原出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
【出願人】(505222679)プロテウス デジタル ヘルス, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】