説明

スマートエントリーシステムにおける車載機

【課題】 干渉信号発信源の存在により車両のスマートエントリー機能が正常に作動しなかったときに、その原因を使用者に報知する車載機の提供である。
【解決手段】 車両2の近傍に干渉信号発信源14が存すると、この干渉信号と携帯機4からのRF信号とが干渉し、スマートエントリー機能が正常に作動しない場合がある。このとき、車両の制御手段5は、使用者が予備キー15を使用してドアを解錠したことをトリガとして、携帯機4がRF信号を送信することを禁止させるとともに、干渉信号の電界強度を検出する。検出された干渉信号の電界強度が閾値を超えるものであれば、スマートエントリー機能の不作動の原因が干渉信号であると判断し、それを使用者に報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のスマートエントリー(登録商標)システムにおける車載機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の車両(例えば、自動車)には、使用者が所持する携帯機と車両との間で通信を行い、両者のIDコードの認証が成立したときに車両のドアを解錠又は施錠の待機状態とし、使用者がドアスイッチをオンした(例えば、使用者がドアハンドルに触れる)ときにドアを解錠又は施錠するシステム(スマートエントリーシステム)が搭載されている。スマートエントリーシステムにおいて、何らかの原因によってドアの解錠又は施錠がなされなかったときに、使用者は携帯機に付属しているエマージェンシーキーを使用してドアの解錠又は施錠をすることができる。
【0003】
スマートエントリーシステムが正常に作動しない原因として、携帯機の電池切れと周辺ノイズの存在(例えば、電波塔のように所定帯域の電波を発信する装置の存在)が考えられる。従来のスマートエントリーシステムでは、正常に作動しなかったときであってもその原因を特定することは困難であるため、使用者が不安を感じる。
【0004】
特に、周辺ノイズの存在によりスマートエントリーシステムが正常に作動しなかったとき、使用者がその原因を携帯機の電池切れと思い、携帯機の電池を無駄に交換してしまうという事態も予想される。
【0005】
上記の不具合を解消するため、特許文献1の技術が開示されている。この技術では、車載機が送信したLF信号又は携帯機が送信したRF信号のSN比を検出し、それを閾値と比較することにより、ノイズの有無を判断するものである。しかし、携帯機に、信号のSN比を検出するための回路や表示手段を設けなければならない。即ち、現状の携帯機に新たな装備を付加しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−332571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した不具合に鑑み、干渉信号発信源の存在により車両のスマートエントリー機能が正常に作動しなかったときに、その原因を使用者に報知する車載機を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明は、
車両に搭載される車載機から1次信号を送信し、使用者が所持する携帯機が前記車載機からの1次信号を受信するとともに、その車載機に対して2次信号を送信し、それら1次及び2次信号に基づき前記車載機と前記携帯機との間で認証が成立したときに前記車両のドアの解錠又は施錠等のロック関連作動を行うスマートエントリーシステムに適用される車載機において、
車外に向けて前記認証のための1次信号を送信する1次信号送信手段と、
前記携帯機からの応答の2次信号を受信する2次信号受信手段と、
前記認証が成立したときに、前記ドアのロック関連作動を可能とする制御手段と、
前記ドアがその認証によらず使用者が所持する予備キーで前記ロック関連作動のための認証外操作が行われたことを検出する認証外操作検出手段と、
その認証外操作を検出したときに、前記携帯機に対し前記2次信号の送信を禁止する送信禁止手段と、
その2次信号の送信が禁止された状態で、前記2次信号と周波数帯域が干渉する干渉信号を受信する干渉信号受信手段と、
その干渉信号受信手段が一定以上の干渉信号を受信したときに、前記干渉信号の発信源が前記車両又はその近傍に存在することを報知する報知手段と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るスマートエントリーシステムの車載機は、上記のように構成されている。スマートエントリーシステムが正常に作動せず、使用者が予備キーによってドアのロック関連作動をし、そのことを認証外操作検出手段が検出した場合、送信禁止手段が、携帯機が2次信号を送信することを禁止する。このためには、例えば1次信号送信手段が送信する1次信号に、携帯機から2次信号が送信されることを禁止する指令を含ませる。これにより、車載機の干渉信号受信手段は、携帯機からの2次信号を受信せず、車両又はその近傍に存すると予想される干渉信号発信源からの干渉信号(2次信号と周波数帯域が干渉する信号)のみを受信する。この干渉信号が一定以上のものであることが確認されたとき、報知手段は、スマートエントリーシステムが正常に作動しなかったことの原因が干渉信号発信源からの干渉信号であることを使用者に報知する。また、干渉信号が一定以上のものでなかった場合には、報知手段は、スマートエントリーシステムが正常に作動しなかったことの原因が干渉信号発信源からの干渉信号ではなく、他の要因(例えば携帯機の電池切れ)であることを使用者に報知する。これにより、使用者は、スマートエントリーシステムが正常に作動しなかったことの原因を一定範囲で特定することができるため安心感を得るとともに、それに対する的確な処理を行うことができる。
【0010】
前記使用者が前記予備キーで前記ロック関連作動の認証外操作を行うことにより、前記送信禁止手段が前記携帯機に対して2次信号の送信を禁止したとき、前記車両のエンジン始動スイッチがオンされることによって、その送信禁止が解除されるようにしてもよい。
【0011】
前記認証外操作検出手段は、前記車両のドアに取り付けられ、前記予備キーが差し込まれた状態でその予備キーを回動可能とするキーシリンダとすることができる。使用者が予備キーを使用して車両のドアを解錠し、そのドアを開けて車両の座席に着席するまでに報知手段が報知を行うことが望ましい。これにより、使用者は、スマートエントリーシステムが正常に作動しなかった原因をいち早く知覚でき、安心感が増す。
【0012】
前記干渉信号の電界強度の閾値が予め設定されていて、
前記干渉信号受信手段が受信した、前記2次信号の受信帯域内における干渉信号の電界強度が前記閾値を超えたときに、前記報知手段が作動するようにできる。
【0013】
干渉信号が一定以上のものであるか否かは、干渉信号の電界強度(RSSIレベル)が、予め設定された閾値を超えているか否かを判断することによって確認することができる。この閾値は、携帯機から送信される2次信号の電界強度よりも小さくする。干渉信号の電界強度が閾値よりも低いのであれば、たとえ干渉信号を受信したとしても、車載機の受信手段が携帯機からの2次信号を受信することに支障は生じないため、スマートエントリーシステムは正常に作動する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例のスマートエントリーシステム1における車載機3の構成を示すブロック図である。
【図2】車両2の平面図である。
【図3】車両2のドアの正面図である。
【図4】携帯機4の構成を示すブロック図である。
【図5】(a)は閾値を超える干渉信号を示す図であり、(b)は閾値を超えない干渉信号を示す図である。
【図6】閾値を超えたり、超えなかったりする干渉信号を示す図である。
【図7】スマートエントリーシステム1の作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本実施例のスマートエントリーシステム1における車載機3の構成を示すブロック図、図2は車両2の平面図、図3は車両2のドアの正面図、図4は携帯機4の構成を示すブロック図である。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。最初に、スマートエントリーシステム1の全体構成について説明する。図1に示されるように、スマートエントリーシステム1は車両2に搭載される車載機3と、携帯機4とを含んで構成されている。なお、携帯機4は、「スマートキー」や「電子キー」とも称されている。
【0017】
最初に、車載機3について説明する。図1に示されるように、車載機3は、制御手段5を備える。制御手段には、送信手段6(1次信号送信手段)、受信手段7(2次信号受信手段)、ドアロック装置8、ドアハンドルスイッチ9、認証外操作検出手段11及び報知手段12が接続されている。
【0018】
制御手段5は、CPU,ROM,RAM,メモリ,入出力部(I/O)等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品としている。制御手段5内の記憶部(ROM等)には、スマートエントリー機能を実現するための各種プログラムや車両照合用のIDコードが記憶されている。また、図2に示されるように、制御手段5は、車両2の周辺の予め定められた携帯機探索エリア13内にポーリング電波を無線出力して、該携帯機探索エリア13内に存在する携帯機4を探索するとともに、携帯機4からの応答信号を無線受信して、該携帯機4から無線送信されるIDコードを、車両2が有するIDコードと照合する。そして、その照合結果に基づいてドアロック装置8に解錠又は施錠(ロック関連作動)の許可を与える。この状態で、携帯機4を所持する使用者が所定の操作(例えば、使用者がドアハンドルスイッチ9に指を触れる操作)を行うことにより、ドアロック装置8が作動してドアを解錠する、という一連のスマートエントリー機能が実現される。そして、本実施例の制御手段は、送信手段6が携帯機4に向けて送信するLF信号に、携帯機4がRF信号を送信することを禁止する指令を含ませる送信禁止手段としての機能も有している(後述)。
【0019】
送信手段6は、送信アンテナ6aを介して車外に向けてリクエスト信号(1次信号)を送信するためのものであり、例えば車両2の運転席、助手席及びトランクの部分のそれぞれに設けられた開閉用のドアに取り付けられている。送信アンテナ6aは各ドアのドアハンドルに内装されており、その周囲に定期的にリクエスト信号を送信する。このリクエスト信号は例えば長波(LF:Low Frequency。以下、LF信号という。)であり、その帯域は30〜300kHzで、波長は1〜10kmのものである。なお、車両2の場合、約130kHzの帯域のLF信号が使用されている。そして、各ドアから70cm〜1m程度の予め定められた携帯機探索エリア13内にのみ届くよう出力調整されている。これにより、携帯機探索エリア13内に存在する携帯機4だけがこのLF信号を受信することができる。なお、送信アンテナ6aは、車両2の車内にも取り付けられているが、本明細書では説明を省略する。
【0020】
この送信手段6は、車外に向けて常時(例えば、一定の時間間隔をおいて常時)LF信号を送信している。このLF信号を受信した携帯機4は、RF信号を返信する。
【0021】
受信手段7(チューナともいう。)は、受信アンテナ7aを介して携帯機4が送信した応答信号を受信するためのものである。この応答信号は、例えば高周波(RF:Radio Frequency。以下、RF信号という。)であり、LF信号よりも電波到達距離が比較的長い(5〜10m程度)。なお、車両2の場合、約312MHzの帯域のRF信号が使用されている。本実施例の受信手段7は、携帯機4からのRF信号だけでなく、車両2の周辺に存する干渉信号発信源14から発信される各種の信号(ノイズを含む。)を受信する干渉信号受信手段としての機能も有している。このとき、受信手段7が受信した信号によっては、スマートエントリー機能の正常な作動が妨げられる場合がある(後述)。
【0022】
もし、何らかの原因でスマートエントリー機能が正常に作動しなかったとき、使用者は携帯機4に付属している又は使用者が携帯機4とは別に所持している予備キー15(エマージェンシーキーともいう。)によってドアを解錠する。このため、図3に示されるように、車両2のドアの部分にキーシリンダ16が取り付けられている。使用者が、キーシリンダ16に差し込んだ予備キー15を所定方向に回動させると、ドアロック装置8が作動してドアが解錠される。即ち、キーシリンダ16は、IDコードの認証を行うことなくドアを解錠する認証外操作検出手段11(図1参照)となっている。
【0023】
報知手段12について説明する。後述するように、本実施例のスマートエントリーシステム1では、何らかの原因でスマートエントリー機能が正常に作動せず、車両2のドアが予備キー15で解錠されたときに、その原因を調査する。そして、その原因が車両2の周辺に存する干渉信号発信源14からの干渉信号である場合、報知手段12によって使用者に報知する。この報知手段12は、例えばスピーカであり、音声をもって使用者に報知する。なお、報知手段12は、スピーカ以外のもの、例えば光のように音声以外の手段で報知するものであってもよい。
【0024】
次に、携帯機4について説明する。図4に示されるように、携帯機4は制御部17を有し、この制御部17に、車両2の送信手段6から送信されたLF信号(1次信号)を受信するためのLF受信部18及びLF受信アンテナ19、受信したLF信号に対する応答信号であるRF信号(2次信号)を送信するためのRF送信部21及びRF送信アンテナ22、キーレスエントリー機能を手動で作動させるための操作スイッチ23及び電池24が接続されている。車載機3の送信手段6と同様に、携帯機4のLF受信部18は、LF信号を常時(例えば一定の時間間隔をおいて常時)受信できるようにされている。LF受信部18に設けられたLF受信アンテナ19は、異なる3軸方向(X軸、Y軸、Z軸)について受信指向性を有した3つのアンテナとして構成され、それらが受信したLF信号がLF受信部18に入力される。受信したLF信号に含まれる指令は、制御部17に送られる。制御部17は、送られた指令に基づいて、RF送信部21に、受信したLF信号に対応するRF信号を送信させる。また、後述するように、制御部17は、受信したLF信号に、携帯機4がRF信号を送信することを禁止する指令が含まれている場合、応答信号及び操作スイッチの操作により、RF送信部21がRF信号を送信しないようにする。
【0025】
スマートエントリー機能が正常に作動しなかったとき、その原因を調査する方法について説明する。車両2の周囲(車内を含む。)に、携帯機4からのRF信号の周波数帯域と干渉する干渉信号を発信する干渉信号発信源14が存すると、図1に示す車載機3の受信手段7は、携帯機4からのRF信号とともに干渉信号発信源14からの干渉信号をも受信する。すると、制御手段5は、干渉によってRF信号を正規な信号と認識できなくなるため、スマートエントリー機能を正常に作動させなくする。この場合、使用者は、予備キー15によってドアを解錠する。
【0026】
車載機3の認証外操作検出手段11が、予備キー15によってドアが解錠されたことを検出すると、制御手段5は、車載機3の送信手段6に、携帯機4がRF信号を送信することを禁止する指令を含むLF信号を送信させる。これにより、携帯機4からのRF信号の送信が停止する。このため、車載機3の受信手段7は、干渉信号のみを受信する(本実施例の場合、受信手段7は干渉信号受信手段を兼ねている)。そして、制御手段5が、干渉信号の電界強度(RSSI(Received Signal Strength Indication)レベル)を検出し、検出された干渉信号の電界強度を、予め設定されている閾値と比較する。
【0027】
ここで、図5の(a)に示されるように、携帯機4から送信されるRF信号の電界強度(二点鎖線で示す。ただし、この状態で受信はしていない。)は、受信可能なレベルを示す。このため、RF信号の電界強度よりも低いレベルを閾値として設定する。この閾値は、干渉信号があっても、携帯機4からのRF信号が干渉信号の影響を受けないレベル(換言すれば、干渉信号があってもスマートエントリー機能が正常に作動するレベル)である。図5の(a)に示す場合、干渉信号の電界強度が常に閾値を超えているので、車両2の周囲に干渉信号発生源14が存していて、そこから発信される干渉信号によってスマートエントリー機能が不作動であったと判断される。しかし、このことを車載機3は認識できても、使用者は知覚できない。そのため、この場合には、報知手段12がスマートエントリー機能の不作動の原因が干渉信号であり、その干渉信号を発信する干渉信号発信源14が車両2の周囲に存することを使用者に報知する。
【0028】
また、図5の(b)に示す場合、干渉信号の電界強度は常に閾値以下なので、干渉信号があってもスマートエントリー機能は正常に作動するはずである。それにも拘らず、スマートエントリー機能が不作動であったということは、その原因が干渉信号以外であることを意味する。上記の場合と同様に、このことを車載機3は認識できても、使用者は知覚できない。そのため、この場合には、報知手段12がスマートエントリー機能の不作動の原因が干渉信号以外のものである(例えば、携帯機4の電池切れ)ことを使用者に報知する。
【0029】
図6に示されるように、干渉信号の電界強度が閾値を超えたり、超えなかったりする場合の判断方法について説明する。この場合、干渉信号の電界強度が一定時間の間において閾値を超えた時間(図6に示す場合、t1〜t2までの時間とt3〜t4までの時間)を検出する。そして、一定時間に対するそれらの合計時間の割合が所定値を超えている場合に、スマートエントリー機能の不作動の原因が、干渉信号によるものであると判断し、そのことを使用者に報知する。なお、この場合、他の原因による可能性も否定できないため、そのことを加味して設定することが望ましい。
【0030】
携帯機4が複数種類の周波数のRF信号(マルチチャンネルのRF信号)を送信する場合、閾値は、それらの電界強度に対してそれぞれ設定される。そして、すべての閾値に対して干渉信号の電界強度を確認する。
【0031】
次に、本実施例のスマートエントリーシステム1の車載機3の作用について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0032】
車両2に搭載された車載機3の送信手段6は、常時、車外に向かってLF信号(リクエスト信号)を発信している(ステップS10)。携帯機4を所持する使用者が車両2に接近し、携帯機探索エリア13内に進入すると(ステップS20)、車載機3からのLF信号を受信した携帯機4が、RF信号(応答信号)を送信する(ステップS30)。このRF信号を車載機3の受信手段7が受信し、制御手段5に送る。制御手段5では、携帯機4から送信されたRF信号に含まれるIDコードと車両2のIDコードとを照合し、両者が一致していればそれらの認証を正常終了し(ステップS40における「Yes」)、ドアを解錠待機状態とさせる。この状態で、使用者がドアのアンロックスイッチ(ドアハンドルスイッチ9)をオンにする(例えば、ドアハンドルに触れる)と(ステップS50)、ドアロック装置8がドアを解錠する(ステップS60)。
【0033】
ここで、使用者が所持する携帯機4が正規なもの(即ち、携帯機4のIDコードと車両2のIDコードとが一致しているもの)であっても、ドアが解錠しない場合がある。例えば、携帯機4の電池24が消耗していたり、車両2の周囲に存する干渉信号発信源14から発せられる干渉信号(ノイズ)がRF信号の受信帯域に存していて、RF信号と干渉していたりする場合である。この場合、制御手段5におけるIDコードの照合が異常終了するため(ステップS40における「No」)、使用者がドアのアンロックスイッチを操作しても、ドアが解錠されない(ステップS70)。なお、使用者は、IDコードの認証の異常終了を知覚できないため、ドアのアンロックスイッチを操作してもドアが解錠されないことにより、スマートエントリー機能の不作動を知覚する。使用者は、携帯機4に付属している(又は携帯機4とは別に所持している)予備キー15を使用して、ドアを解錠する(ステップS80)。
【0034】
車載機3の認証外操作検出手段11(図1参照)が、予備キー15によってドアが解錠されたことを検出すると、制御手段5は、車載機3の送信手段6から送信されるLF信号に、携帯機4がRF信号を送信することを禁止する指令を含める(ステップS90)。これにより、携帯機4は、RF信号の送信を停止する。換言すれば、この状態で車載機3の受信手段7が携帯機4からのRF信号を受信しなくなり、受信手段7が受信する信号は干渉信号だけとなる。
【0035】
受信手段7が閾値を超える干渉信号を受信すると(ステップS100における「Yes」)、制御手段5は、この干渉信号によって認証が異常終了したものと判断し、そのことを報知手段12によって使用者に報知する(ステップS110)。制御手段5による上記の判断は、使用者が予備キー15によってドアを解錠し、ドアを開けてから運転席に乗り込むまでの時間(数秒と推定される。)の間に行われる。このため、報知手段12が車内スピーカである場合、運転席のドアの内面に設けることが望ましい。これにより、使用者は、運転席に着席した状態であっても、また運転席に着席する前の状態であっても報知を受けることができ、報知の確実性が向上する。使用者は、スマートエントリー機能の不作動の原因が、車両2の周囲に存する干渉信号発信源14であり、それ以外の要因(例えば携帯機4の電池切れ)ではないことを知覚する。
【0036】
そして、車両2がその場所(周囲に干渉信号発信源14が存する場所)から離れたり、車内に積載されている干渉信号発信源14を除去したりすれば、スマートエントリー機能が正常に機能するだろうと予想できるため、使用者は安心感を得る。
【0037】
もし、受信手段7が受信した干渉信号の電界強度が閾値を超えていない場合(ステップS100における「No」)、報知手段12は、スマートエントリー機能の不作動の要因が、干渉信号によるものではない(換言すれば、車両2の周辺に干渉信号発信源14が存しない。)ことを使用者に報知する(ステップS120)。このとき、使用者は、その原因として例えば携帯機4の電池切れを考慮することができ、それに対して的確な処理を行うことができる。
【0038】
上記したように、本実施例のスマートエントリーシステム1の車載機3を搭載した車両2では、そのスマートエントリー機能が不作動であった(スマートエントリー機能がスムーズに作動しなかった場合を含む。)ときに、その原因が干渉信号であるか否か(即ち、車両2の周囲に干渉信号発信源14があるか否か)を使用者に報知する。これにより、使用者は、スマートエントリー機能の不作動の原因が少なくとも干渉信号によるものであるか否かを特定することができ、例えば車両2を移動させればスマートエントリー機能が正常に作動すると予測できるため、安心感を得る。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、車両におけるスマートエントリーシステム、特にその車載機として利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 スマートエントリーシステム
2 車両
3 車載機
4 携帯機
5 制御手段(送信禁止手段)
6 送信手段(1次信号送信手段)
7 受信手段(2次信号受信手段、干渉信号受信手段)
11 認証外操作検出手段
12 報知手段
14 干渉信号発信源
15 予備キー
16 キーシリンダ(認証外操作検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載機から1次信号を送信し、使用者が所持する携帯機が前記車載機からの1次信号を受信するとともに、その車載機に対して2次信号を送信し、それら1次及び2次信号に基づき前記車載機と前記携帯機との間で認証が成立したときに前記車両のドアの解錠又は施錠等のロック関連作動を行うスマートエントリーシステムに適用される車載機において、
車外に向けて前記認証のための1次信号を送信する1次信号送信手段と、
前記携帯機からの応答の2次信号を受信する2次信号受信手段と、
前記認証が成立したときに、前記ドアのロック関連作動を可能とする制御手段と、
前記ドアがその認証によらず使用者が所持する予備キーで前記ロック関連作動のための認証外操作が行われたことを検出する認証外操作検出手段と、
その認証外操作を検出したときに、前記携帯機に対し前記2次信号の送信を禁止する送信禁止手段と、
その2次信号の送信が禁止された状態で、前記2次信号と周波数帯域が干渉する干渉信号を受信する干渉信号受信手段と、
その干渉信号受信手段が一定以上の干渉信号を受信したときに、前記干渉信号の発信源が前記車両又はその近傍に存在することを報知する報知手段と、
を含むことを特徴とするスマートエントリーシステムにおける車載機。
【請求項2】
前記使用者が前記予備キーで前記ロック関連作動の認証外操作を行うことにより、前記送信禁止手段が前記携帯機に対して2次信号の送信を禁止したとき、前記車両のエンジン始動スイッチがオンされることによって、その送信禁止が解除されることを特徴とする請求項1に記載のスマートエントリーシステムにおける車載機。
【請求項3】
前記認証外操作検出手段は、前記車両のドアに取り付けられ、前記予備キーが差し込まれた状態でその予備キーを回動可能とするキーシリンダであることを特徴とする請求項1又は2に記載のスマートエントリーシステムにおける車載機。
【請求項4】
前記干渉信号の電界強度の閾値が予め設定されていて、
前記干渉信号受信手段が受信した、前記2次信号の受信帯域内における干渉信号の電界強度が前記閾値を超えたときに、前記報知手段が作動することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスマートエントリーシステムにおける車載機。
【請求項5】
前記携帯機は、複数種類の周波数の2次信号を送信可能であり、
前記2次信号受信手段は、前記携帯機から送信される複数種類の周波数の2次信号を受信可能であり、
前記閾値は、前記複数種類の周波数の2次信号のそれぞれに対して設定されていることを特徴とする請求項4に記載のスマートエントリーシステムにおける車載機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−219446(P2012−219446A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83254(P2011−83254)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】