説明

スモーク発生装置

【課題】気化容器3内のスモーク液1を効率的に加熱し、メンテナンスの容易化を図る。
【解決手段】本発明のスモーク発生装置は、スモーク液1を気化容器3に供給し、誘導加熱コイル4で気化容器3を高周波誘導加熱することにより、気化容器内に供給されたスモーク液1を加熱してスモーク2を発生させ、この発生したスモークを外部に放出する。
さらに、気化容器3を、筒体の軸方向の両端を一対の側板で蓋した筒状容器に形成する。誘導加熱コイル4を、筒状容器に形成された気化容器3に対して、着脱自在に設けられ、装着状態時には気化容器の外周面を所定の隙間を介して覆う筒状に形成されたケーシング6に収納している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舞台や屋外での演出に用いられるスモークを発生するスモーク発生装置に係わり、特に、スモーク液を気化容器内で加熱してスモークを発生させるスモーク発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電子機器内で発生した熱を除去するために、電子機器内にファンを取付けた場合に、電子機器内における空気の流れを煙(スモーク)を用いて視覚的に把握する必要がある。そこで、この電子機器内に注入する煙(スモーク)を発生する煙発生装置の技術が特許文献1、2に開示されている。この煙発生装置においては、液体容器に収納された灯油を煙発生容器内に供給して、この煙発生容器内に収納されたグラスウール内に毛細管現象で導き、このグラスウールをニクロム線で加熱することにより、灯油を気化して、煙を発生させる。
【0003】
また、室内や建屋内の空気の微細な流れを検出するための煙(スモーク)を発生する煙発生器の技術が特許文献3に開示されている。この煙発生器においては、貯蔵容器に収納された煙発生用の液体を加熱槽に導き、加熱槽に設けられたヒータで加熱して、ノズルを介して加熱槽外へ噴射することにより気化させて煙を発生させる。
【0004】
一方、野外劇場やアミューズメント施設等の屋外における各種演出や火災避難訓練等に用いる大掛かりなスモーク発生装置においても、前述した各特許文献1、2、3に記載された、煙発生装置、煙発生器と同様に、気化容器の外周に電熱線(ヒータ)を巻回して気化容器を直接加熱し、その内部にスモーク液を供給し、それを気化して外部にスモークを噴出させる。そのスモーク液としては、グリコール類および蒸留水を用いるウォーターベ一スのものと、オイルを用いるオイルベースのもの等、種々のものが知られている。それらは用途に応じて各種のスモーク液が選択される。
【特許文献1】特開平5―133516号公報
【特許文献2】特開平5―133517号公報
【特許文献3】特開平6―186130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した各スモーク発生装置においてもまだ解消すべき次のような課題があった。
【0006】
すなわち、気化容器又は加熱容器に収納された灯油を含む各種のスモーク液を加熱する加熱手段として、スモーク液に直接接触し、又は気化容器に接してこの気化容器を直接加熱するヒータ(電熱線)を採用している。
【0007】
しかしながら、このヒータ(電熱線)は自から発熱するので、他の電子部品に比較して格段に寿命が短かく、故障しがちである。また、スモーク液に直接接触する場合においては、汚れやすくメンテナンスに多大の手間と費用が発生する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、長寿命で故障し難く高い信頼性を維持でき、かつメンテナンスも簡単に実施できるスモーク発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明のスモーク発生装置においては、スモーク液を気化容器に供給し、誘導加熱コイルで気化容器を高周波誘導加熱することにより、気化容器内に供給されたスモーク液を加熱してスモークを発生させ、この発生したスモークを外部に放出するようにしている。
【0010】
このように構成されたスモーク発生装置においては、気化容器内に供給されたスモーク液を加熱する加熱源として、このスモーク液を直接ヒータで加熱することなく、誘導加熱コイルで気化容器を高周波誘導加熱するので、この誘導加熱コイル自体が発熱することはないので、この誘導加熱コイルの寿命を自ら発熱するヒータに比較して大幅に伸ばすことが可能となる。さらに、故障の発生率を低減できる。
【0011】
また、別の発明は、上記発明のスモーク発生装置において、気化容器は、筒体の軸方向の両端を一対の側板で蓋した筒状容器に形成され、一方の側板にスモーク液の注入口が形成され、他方の側板の筒体の軸心線を含む中央位置に、発生したスモークを外部空間へ噴射するスモーク噴射ノズルが取付られている。
【0012】
このように構成されたスモーク発生装置においては、筒状容器の一方の側板に形成された注入口から供給されたモーク液はこの気化容器内で気化されて、筒状容器の他方の側板の中央に取付けられたスモーク噴射ノズルから外部空間へ噴射される。したがって、スモーク液からスモークへの状態変遷の流れが円滑に進む。
【0013】
別の発明は、上記発明のスモーク発生装置において、気化容器は筒状容器に形成され、誘導加熱コイルは、筒状容器に形成された気化容器に対して、着脱自在に設けられ、装着状態時には気化容器の外周面を所定の隙間を介して覆う筒状に形成されたケーシングに収納されている。
【0014】
このような構成においては、誘導加熱コイルは気化容器の外周面を所定の隙間を介して覆う筒状に形成されたケーシングに収納されている。そして、ケーシングは気化容器に対して着脱自在に設けられているので、メンテナンスが容易である。
【0015】
また、別の発明は、上記発明のスモーク発生装置において、気化容器の外周面と外挿状態のケーシングの内周面との隙間に断熱層を介挿している。したがって、誘導加熱コイルは気化容器の熱の影響をほとんど受けない。
【0016】
さらに、別の発明においては、気化容器は円筒状容器に形成され、気化容器の外周面を覆うケーシングは円筒状に形成され、かつ気化容器及びケーシングは軸心線を共有する。したがって、気化容器は全周に亘って均一に加熱され、気化効率を向上できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、気化容器に収納されたスモーク液を加熱する加熱手段として、ニクロム線等のヒータでなくて高周波加熱コイルを用いた電磁誘導加熱手法を採用しているので、加熱源の長寿命で故障し難く高い信頼性を維持でき、かつメンテナンスも簡単に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係わるスモーク発生装置の縦断面図であり、図2及び図3は同スモーク発生装置における要部部品を取出して示す斜視図であり、図4は分解斜視図である。また、図5は同実施形態のスモーク発生装置の使用状態を示す説明図である。
【0020】
このスモーク発生装置は、大きく分けて、外部から供給されたスモーク液1を加熱して気化してスモーク2として外部空間へ放出する気化容器3と、この気化容器3を外側から高周波誘導加熱する誘導加熱コイル4と、この誘導加熱コイル4が収納されるケーシング6とで構成されている。
【0021】
気化容器3は図1、図2(a)に示すように、円筒部3aの軸方向の両端を一対の側板3b、3cで蓋した円筒状容器に構成されている。軸心線方向の一方の側板3bの軸心線を含む中央位置にスモーク液1の供給チューブ7を有するチューブ継手8が液密に取付けられている。さらに、この気化容器3の軸心線方向の他方の側板3cの軸心線を含む中央位置にスモーク2を外部空間へ放出するスモーク噴出ノズル9が取付けられている。
【0022】
気化容器3には、誘導加熱コイル4における高周波誘導加熱により容易に加熱する金属材料等が用いられる。即ち、渦電流損、ヒステリ損の大きな鋼材やステンレス材その他の金属材が用いられる。
【0023】
気化容器3の円筒部3aの外周面には、図2(b)に示すように円筒状の断熱層5が被嵌されている。断熱層5はガラスウール等の無機質の繊維材料で形成されている。したがって、この断熱層5を円筒部3aに対して脱着できる。そして、この断熱層5の外周には、誘導加熱コイル4を内装した円筒形状を有したケーシング6に被嵌されている。
【0024】
このケーシング6は、図3(a)の斜視図、図3(b)の切欠斜視図に示すように、外側筒体6aと内側筒体6bとの二重筒状に形成され、軸心線方向の両端がフランジ6c、6dで蓋されている。そして、外側筒体6aと内側筒体6bとの間に、リッツ線を巻回してなる誘導加熱コイル4が収納されている。誘導加熱コイル4にリッツ線を用いる理由は、誘導加熱コイル4に高周波電流をした場合に生じる表皮効果の影響を考慮する必要があるからである。このケーシング6は、誘導加熱コイル4による高周波誘導磁界によって加熱されない素材であるガラスエポキシ等の材料で形成されている。
【0025】
そして、図4の分解斜視図にも示すように、気化容器3の一方側の側板3bとケーシング6のフランジ6cとの間は、断熱内側板10aが締結ボルト11a、12aによって連結されている。同様に、気化容器3の他方側の側板3cとケーシング6のフランジ6dとの間は、断熱内側板10bが締結ボルト11b、12bによって連結されている。
【0026】
この各断熱内側板10a、10bは、セラミックや耐熱性プラスチック等の誘導加熱コイル4による高周波誘導磁界によって加熱されない材料で形成されている。
【0027】
さらに一方の断熱内側板10aの外面側には、カラー13aを介し外断熱外側板14aが前記締結ボルト12aを介して固定されている。同様に、他方の断熱内側板10bの外面側には、カラー13bを介し外断熱外側板14bが前記締結ボルト12bを介して固定されている。
【0028】
この気化容器3、誘導加熱コイル4が収納されたケーシング6の両側に取付けられた断熱外側板14a、14bは図4に示すように、一例として方形に形成され、その下面が載置面を構成する。したがって、この気化容器3ほぼ水平状態を維持している。
【0029】
なお、気化容器3の他方の側板3cには温度センサ取付孔15が刻設されている。そして断熱外側板14bにおける温度センサ取付孔15に整合する位置に、センサ挿通孔16が穿設されている。
【0030】
このセンサ挿通孔16および温度センサ取付孔15には、図5に示すように、温度センサ17が挿通される。そして温度信号ケーブル18を介し、その温度信号が温度調節器19に入力される。温度調節器19は入力された温度信号の示す温度が予め定められた一定温度範囲になるように、誘導加熱コイル4に高周波ケーブル20を介して高周波電流を供給する高周波電源装置21を制御する。
【0031】
具体的には、温度調節器19は、高周波電源装置21の電源をON―OFF制御または周波数制御その他により、ケーシング6内の誘導加熱コイル4の励磁電流を制御し、気化容器3を設定温度の範囲に維持する。
【0032】
そして、使用可能なスモーク液1として、前述した、グリコール類および蒸留水を用いるウォーターベ一スのものと、オイルを用いるオイルベースのもの等、種々のものがあり、それらは用途に応じて選択される。すなわち、人体や環境に対して悪影響を与えることなく、常温で液体であり、加熱されると気化して、スモーク2を発生する条件を満たせばよい。
【0033】
すなわち、最終的に、外部空間に放出すべきスモーク2を白色のもの、色付きのもの等、放出させる目的に応じて、スモーク液1の種別を選択できる。前記従来技術で示したスモーク液以外に炭化物を含むものを用いてもよい。
【0034】
このように構成されたスモーク発生装置において、上述した条件を満たすスモーク液1は供給チューブ7及び一方の側板3bに取付けられたチューブ継手8を介し、気化容器3内に圧縮空気と共に供給される。前述したように、金属材料で形成された気化容器3は、誘導加熱コイル4にて高温の所定温度に高周波誘導加熱されているので、気化容器3内も高温の一定温度に維持される。したがって、気化容器3内に供給されたスモーク液1は加熱されて、気化して、スモークを発生する。この発生したスモーク2は、他方の側板3cに取付けられたスモーク噴出ノズル9より外部空間に噴出する。
【0035】
なお、スモーク噴出ノズル9は、前述したように、気化容器3の軸心線方向の他方の側板3cの軸心線を含む中央位置に取付けられており、かつ、気化容器3は水平状態を維持しているので、気化されないスモーク液1がスモーク噴出ノズル9から外部に流出することが防止される。さらに、スモーク液1内の未気化固形物がスモーク噴出ノズル9に付着して、ノズルを閉塞することも防止される。
【0036】
また、誘導加熱コイル4は気化容器3の外周に断熱層5を介して同心的に配置されているため、気化容器3の外周を均一に且つ効率よく加熱できると共に、断熱層5の存在によって誘導加熱コイル4が異常に加熱されて温度上昇することを防止できる。
【0037】
また、誘導加熱コイル4を収納した、外側筒体6aと内側筒体6bとの二重筒状に形成され、軸心線方向の両端がフランジ6c、6dで蓋されているケーシング6は、気化容器3に対して着脱自在(挿脱自在)に設けられている。すなわち、
(1) 図1、図4に示すように、締結ボルト12a、12bを外し、軸方向の最も外側に位置する方形の断熱外側板14a,14bを除去する。
【0038】
(2) チューブ継手8及びスモーク噴出ノズル9を取り外す。
【0039】
(3) 締結ボルト11a、11bを外し、ケーシング6を、外周面に筒状の断熱層5が装着された状態の気化容器3の外周面から、いずれか一方の軸方向に抜き取る。
【0040】
(4) 気化容器3の外周面から筒状の断熱層5を抜き取る。
【0041】
このように、スモーク発生装置を、気化容器3、断熱層5、誘導加熱コイル4を収納したケーシング6等の個別部材(部品)に簡単に分離、分割できるので、気化容器3、断熱層5、誘導加熱コイル4を収納したケーシング6をそれぞれ個別に、かつ個別のタイミングで、新しい部材(部品)に交換したり、修理することが可能となる。
【0042】
したがって、たとえ、寿命や故障発生率が大きく異なる部材(部品)が混在して一つのスモーク発生装置に組込まれていたとしても、寿命が尽きたり、故障した部材のみを簡単に交換できるので、スモーク発生装置全体のメンテナンスの手間と時間及び費用を大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係わるスモーク発生装置の縦断面図
【図2】同実施形態のスモーク発生装置に組込まれた気化容器及び断熱層を取出して示す斜視図
【図3】同実施形態のスモーク発生装置に組込まれたケーシングを取出して示す斜視図及び切欠斜視図
【図4】同実施形態のスモーク発生装置の組立分解図
【図5】同実施形態のスモーク発生装置の使用状態を示す説明図
【符号の説明】
【0044】
1…スモーク液、2…スモーク、3…気化容器、3a…筒体、3b,3c…側板、4…誘導加熱コイル、5…断熱層、6…ケーシング、6a…外側筐体,6b…内側筒体、6c,6d…フランジ、7…供給チューブ、8…チューブ継手、9…スモーク噴出ノズル、10a,10b…断熱内側板、11a,11b,12a,12b…締結ボルタ、13a、13b…カラー、14a,14b…断熱外側板、15…温度センサ取付孔、16…センサ貫通孔、17…温度センサ、18…温度信号テーブル、19…温度調節器、20…高周波ケーブル、21…高周波電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スモーク液を気化容器に供給し、誘導加熱コイルで前記気化容器を高周波誘導加熱することにより、前記気化容器内に供給されたスモーク液を加熱してスモークを発生させ、この発生したスモークを外部に放出することを特徴とするスモーク発生装置。
【請求項2】
前記気化容器は、筒体の軸方向の両端を一対の側板で蓋した筒状容器に形成され、一方の側板に前記スモーク液の注入口が形成され、他方の側板の前記筒体の軸心線を含む中央位置に前記発生したスモークを外部空間へ噴射するスモーク噴射ノズルが取付られていることを特徴とする請求項1記載のスモーク発生装置。
【請求項3】
前記気化容器は筒状容器に形成され、
前記誘導加熱コイルは、前記筒状容器に形成された気化容器に対して、着脱自在に設けられ、装着状態時には前記気化容器の外周面を所定の隙間を介して覆う筒状に形成されたケーシングに収納されている
ことを特徴とする請求項1又は2記載のスモーク発生装置。
【請求項4】
前記気化容器の外周面と前記装着状態のケーシングの内周面との隙間に断熱層を介挿したことを特徴とする請求項3記載のスモーク発生装置。
【請求項5】
前記気化容器は円筒状容器に形成され、前記気化容器の外周面を覆う前記ケーシングは円筒状に形成され、かつ前記気化容器及び前記ケーシングは軸心線を共有することを特徴とする請求項3又は4記載のスモーク発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−307215(P2008−307215A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157737(P2007−157737)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(592188977)株式会社オリエンタルランド (12)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】