説明

スライダーの引手

【課題】コード等の紐状物を浮き上がった状態とならないように適切に保持して、紐状物がぶらつくことを防ぐとともに、紐状物が他の部材に引っ掛かることも効果的に防止することが可能なスライドファスナー用スライダーの引手を提供する。
【解決手段】本発明に係るスライダー(1) の引手(2,42,62) は、スライドファスナー用スライダー(1) のスライダー胴体(20)にその一端を連結させる環状部(3) と、前記環状部(3) の他端に形成される引手本体(4,44,64) と、前記引手本体(4,44,64) に形成され、1本以上のコード等の紐状物(35)を前記引手(2,42,62) の長手方向に沿って移動可能に又は固定して挿通保持するコード保持部(9,49,69) とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドファスナー用スライダーにおける引手であって、ヘッドホンのコード等の紐状物を簡単に体裁良く保持することが可能なスライダーの引手に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ポータブル型のオーディオプレーヤーや携帯電話等が広く普及しており、オーディオプレーヤーや携帯電話の本体に保存した音楽等のサウンドを、電車等により移動する際に聞いている人が多く見られる。この場合、プレーヤーや携帯電話の本体を、衣服のポケットや携帯しているバッグ等に保持し、その本体に接続したイヤホンやヘッドホンを介して保存したサウンドを聴くことが一般的である。このため、通常は、バッグ等にプレーヤー等の本体を保持している場合でも、イヤホン等が容易に使用できるようにそのコードが長く形成されている。
【0003】
また、上記のような電車等による移動中や歩行中にイヤホンやヘッドホンを身体に装着しているときには、長いコードが衣服の前立てや衣服の表面で垂れ下がったり、ぶらついたりしていることが多い。しかしながら、このような状態のコードは、煩わしく感じるものの、邪魔にならないように処理することが難しい。更に、コードが周辺の様々な部材に引っ掛かり易く、ユーザーの頭部が不意に引っ張られ、また、プレーヤー等の本体がバッグから落ちて壊れ易くなる等の不具合があった。
【0004】
ところで、衣服や鞄等の開口部にはスライドファスナーが取り付けられていることが多く、また、スライドファスナーは、従来から様々な改良を加えることによりその利便性を向上させてきている。例えば、実公昭55−11690号公報(特許文献1)には、スライドファスナーを有する洋服等の商品にラベル等を取り付ける際に、ラベルの取付作業を容易に行うことが可能なスライダーの引手に関する発明が開示されている。
【0005】
この特許文献1に記載されているスライダーの引手は、図8に示したように、スライダー胴体と結合される取付孔82を有する板状の引手81に係止孔83が設けられている。また、係止孔83の底面側には、内側に向けて突出した三角形状の耳片84が割溝85(切り欠)を介して対向して形成されている。
【0006】
このような特許文献1の引手81は、ラベルの取付作業に際して、ラベルが有する糸輪を引手81に形成した割溝85を通して係止孔83に挿通することにより、係止孔83に糸輪が係止されてラベルを引手81に容易に取り付けることができる。また、この引手81は、三角形状の耳片84が係止孔83の内側に突出しているため、係止孔83に一旦挿通された糸輪が割溝85から脱出し難く、ラベルが引手81から自然に外れ落ちることを防ぐという利点も有する。
【特許文献1】実公昭55−11690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、電車等による移動中や歩行中にイヤホンやヘッドホンを使用する場合には、前述のようにイヤホン等のコードが邪魔になったり、周辺の様々な部材に引っ掛かったりする不具合があった。これに対して、例えば前記特許文献1に記載されているスライダーの引手81を、衣服や鞄等の開口部に取り付けられるスライドファスナーに用いることにより、引手81が有する係止孔83にイヤホン等のコードを挿通して係止できるため、引手81によってコードを保持することが可能となる。これにより、コードが長く形成されている場合でも、コードの自由な動きがある程度抑えられるため、コードがぶらついて邪魔になることを防ぐことができる。
【0008】
しかしながら、前記特許文献1の引手81は、係止孔83が引手81の表裏面を貫通して形成されているため、イヤホン等のコードを係止孔83に係止させる場合に、そのコードが引手81の一方の面側から他方の面側に向けて通過した状態となる。このため、係止孔83にコードを係止させたときに、コードが引手81から浮き上がった状態となるため見栄えが悪く、また、その浮き上がった部分のコードが、他の部材に引っ掛かり易くなるという不具合があった。
【0009】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、コード等の紐状物を浮き上がった状態とならないように適切に保持して、紐状物がぶらつくことを防ぐとともに、紐状物が他の部材に引っ掛かることも効果的に防止することが可能なスライドファスナー用スライダーの引手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるスライダーの引手は、基本的な構成として、スライドファスナー用スライダーのスライダー胴体に、一端を連結させる環状部と、前記環状部の他端側に設けられた引手本体とを備えたスライダーの引手であって、前記引手本体と一体に配され、1本以上のコード等の紐状物をファスナーテープのテープ面に平行に挿通保持するコード保持部を有してなることを最も主要な特徴とするものである。前記コード保持部が、前記紐状物とスライダーとが相対的に移動可能に挿通保持する保持空間を有していることが好ましい。
【0011】
更に、本発明において、好ましい態様によると、前記コード保持部は、前記紐状物を収容する保持空間と、前記保持空間に前記紐状物を導入する導入開口とを有し、前記導入開口は、前記保持空間よりも狭く、前記引手本体と前記紐状物との相対的な弾性変形を利用して前記紐状物を前記保持空間に導入可能な開口幅を有している。前記保持空間は、上述のように紐状物とスライダーとが相対的に移動可能に挿通保持するように構成する以外にスライダーが紐状物を固定把持するように構成することもできる。
前記導入開口を、前記保持空間に向けて前記開口幅が漸減するテーパ状に形成し、或いは前記導入開口の内面に突部を突設させてもよい。
【0012】
前記コード保持部は、より具体的な態様によれば、前記引手本体の側面に配される筒状体により構成され、前記保持空間は、前記筒状体の前記引手の長手方向に沿って形成される中空部により構成され、前記導入開口は前記筒状体の外周面から前記中空部に連通し、前記引手の長手方向に沿って形成されたスリットにより構成される。
【0013】
他の好適な態様によれば、前記コード保持部は、前記引手本体との間に間隙を有して前記引手本体の周面の一部と一体に設けられており、前記保持空間及び前記導入開口は、前記引手本体と前記コード保持部との間に形成された前記間隙により構成される。
前記間隙は、前記引手の長手方向に沿って形成される場合と、前記引手の長手方向と交差する方向に沿って形成される場合とがある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るスライダーの引手は、1本以上の紐状物をファスナーテープのテープ面に平行に、すなわち引手の長手方向に沿って、或いは引手の長手方向に交差させて挿通保持するコード保持部を引手本体に有している。このようなコード保持部を有していることにより、コード保持部にコード等の紐状物を安定して保持することができるため、例えコードが長く形成されている場合でも、コードがぶらついて邪魔になることを防ぐことができる。特に、本発明の引手は、紐状物を引手の長手方向に沿って平行に保持することができるため、コードをコード保持部に保持したときにコードが引手から浮き上がった状態にはならない。このため、コードが周辺部に引っ掛かることを効果的に防止できるとともに、コードの保持状態を体裁良くすることができる。
【0015】
本発明にあっては、前記コード保持部をスライダーと紐状物とが相対移動可能に構成することが好ましいが、相対移動ができないようにコード保持部が紐状物を固定把持するように構成することもできる。相対移動が可能な場合には、スライダーの摺動操作時にも紐状物を気にすることがなく、また逆に紐状物を引っ張ったりしてもスライダーの摺動がなく、妄りにスライドファスナーが開閉することがない。一方、本発明は上述のとおりコード保持部のコード保持空間が引手の長手方向と交差して配される場合もある。この場合には、スライダーと紐状物とが相対的に移動可能にすると、スライダーの摺動操作にあたり紐状物が操作の邪魔となるようなことが起こる。そのため、スライダーと紐状物とを互いに動かないように固定状態におくことが望ましい。なお、本発明において引手の長手方向とは、例えば引手をスライダーの後口側に傾倒させてファスナーテープと平行な状態にした際に、そのスライダーの摺動方向に沿った方向である。
【0016】
本発明において、前記コード保持部は、紐状物の保持空間に紐状物を導入する導入開口を有している。この導入開口は、保持空間よりも狭く、引手本体と紐状物との相対的な弾性変形を利用して紐状物を保持空間に導入可能な開口幅を有している。これにより、引手本体と紐状物のうちの少なくとも一方を弾性変形させることによって紐状物を保持空間に円滑に導入でき、この保持空間にて紐状物を引手の長手方向に沿って移動可能に確実に保持することができる。更に、引手本体と紐状物の少なくとも一方を弾性変形させない限り、保持空間に保持した紐状物が導入開口を介して抜け出し難くなるため、紐状物の保持状態を安定して維持することができる。
【0017】
また、前記導入開口が、その開口幅を保持空間に向けて漸減するようにテーパ状に形成する場合には、紐状物の保持空間への導入をより円滑に行うことができるとともに、紐状物を安定して保持し、紐状物が保持空間から抜け出すことを確実に防止することができる。更に、前記導入開口の内面に突部を形成する場合には、紐状物を安定して保持し、紐状物が保持空間から導入開口を介して自由に抜け出ることを確実に防止することができる。
【0018】
特に本発明では、前記コード保持部を引手本体の側面に配される筒状体により構成し、前記保持空間を筒状体の引手の長手方向に沿って形成される中空部により構成し、前記導入開口を筒状体の外周面から中空部に貫通し、引手の長手方向に沿って形成されるスリットにより構成することができる。かかる構成により、引手の長手方向に沿って長い領域で紐状物を保持するため、引手から浮き上がった状態とならず、コード保持部に安定して保持させることができる。
【0019】
またその他に、前記コード保持部が、前記引手本体との間に前記引手の長手方向に沿って間隙を形成して、前記引手本体の周面の一部と一体に設けられており、前記保持空間及び前記導入開口を、前記引手本体と前記コード保持部との間に形成された間隙により構成することも可能である。これによっても、紐状物を引手から離脱させることなく、コード保持部に安定して保持することができる。なおこの場合、前記間隙を前記引手の長手方向と交差する方向に沿って形成することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する各実施例に限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば、下記実施例において、引手の引手本体、コード保持部の形状等を具体的に図示して説明し、或いはコード保持部の保持方向を引手の長手方向に沿う場合を説明しているが、本発明はこれに限定されず、様々な形状を有する引手本体やコード保持部を形成することが可能であり、或いはコード保持部の保持方向を引手の長手方向と交差させる場合をも含むものである。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1に係る引手を有するスライドファスナー用スライダーを示した斜視図である。また、図2は、同引手を裏面側から見たときの引手の斜視図である。なお、以下の説明において、引手の表面とは、スライダーを停止させて引手をスライダーの後口側に傾倒させたときに(例えば、図3を参照)、正面から見える側の一面を指しており、また、引手の裏面とは、表面とは反対側の一面(正面から見えない側の一面)を指している。
【0022】
本実施例1の引手2は、スライドファスナー用スライダー1のスライダー胴体20に取り付けて用いられるものであり、スライダー1のスライダー胴体20に連結させる環状部3と、環状部3の端部に形成され、スライダー1の操作時に持ち手となる引手本体4と、引手本体4の側面に配されたコード保持部9とを備えている。
【0023】
なお、この引手2が取り付けられるスライダー胴体20の構成は特に限定されず、従来から一般的に用いられているものを利用できる。例えば図1に示したように、スライダー胴体20は、上下翼板21,22と、上下翼板21,22間を連結する連結柱23と、上下翼板21,22の左右側縁に立設された上下フランジ部24,25と、上翼板21の外面に形成され、引手1の環状部3が連結される引手取付部26とを有している。また、この引手2は、例えば引手をスライダーの後口側に傾倒させた状態において、スライダー胴体20の引手取付部26との連結部からスライダー1の後口側に向けて長く延びた形状に形成されている。
【0024】
本実施例1における引手2の前記環状部3は、亜鉛合金やアルミニウム合金等の金属で形成されている。また、スライダー胴体20に連結する端部側には、スライダー胴体20の引手取付部26を挿通可能な取付孔5が設けられており、この取付孔5の端部側枠材となる軸部6を引手取付部26が保持することにより、引手2がスライダー胴体20に、軸部6を中心にして回動可能に取り付けられる。また、環状部3は、軸部6の内面に、取付孔5の中心部に向けて突出するカム部7を有している。このようなカム部7が形成されていることにより、例えば図3に示したようにスライダー1の非操作時に、引手2がスライダー胴体20の後口側に向けて傾倒するように引手2の傾倒が促され、更に、引手2がスライドファスナー30のファスナーテープ31に対して平行となるように傾倒した状態を安定して維持することが可能となる。
【0025】
また、引手2の前記引手本体4及びコード保持部9は、弾性を有する合成樹脂を射出成形することにより得られる一体成形品で構成されている。また、引手本体4は、環状部3の他端部(スライダー胴体20に連結する端部とは反対側の端部)に形成されており、スライダー1の操作時に摘み易いように平板状に細長く形成されている。更に、この引手本体4の平坦な表面や裏面には、必要に応じて模様等の装飾を施したり、摘み易さを向上させるために凹凸を形成する等加工を施したりすることができる。
【0026】
前記コード保持部9は、中心部が円形断面の保持空間10となる中空の筒状体9aで構成されており、この保持空間10は引手2の長手方向に沿うように形成されている。また、コード保持部9には、筒状体9aの外周面から保持空間10に向けて貫通するスリットが保持空間10の長さ方向に沿って形成されており、このスリットがコード35等の紐状物を保持空間10に導入する導入開口11を構成している。なお、筒状体9aにおいて、スリット11aを設ける位置は特に限定されるものではないが、例えば図2に示したように、引手2の裏面側に設けることが好ましい。これにより、スリット(導入開口11)の存在がスライダー1の正面側から見えにくくなるため、引手2のデザイン性が損なわれない。
【0027】
本実施例1において、コード保持部9に設けた保持空間10の直径(筒状体9aの内径)は、イヤホン等に一般的に用いられているコード35における外径の大きさと同等、若しくは、その外径よりも若干大きく形成されており、コード35を安定して挿通保持できるように構成されている。また、コード保持部9に形成した導入開口11は、その開口幅を保持空間10に向けて漸減するようにテーパ状に形成されており、更に、導入開口11の最小開口幅(即ち、筒状体9aの内径側における導入開口11の開口幅)が、保持空間10の直径よりも小さく形成されている。これにより、コード35等の紐状物を保持空間10に導入する際に、紐状物をコード保持部9の外周面から導入開口11を介して導入させ易くすることができ、更に、紐状物を保持空間10に保持した際に、コード保持部9を弾性変形させない限り、その保持した紐状物が導入開口11から自由に抜け出すことを防ぐことができる。
【0028】
以上のような本実施例1の引手2を有するスライダー1は、例えば図3に示すように、ファスナーエレメント列32に挿通させてスライドファスナー30を構成し、そのスライドファスナー30のファスナーテープ31を衣服の前立て等に縫い付けることにより、本実施例1の引手2を有するスライダー1を衣服に取り付けることができる。このように本実施例1の引手2を有するスライダー1が衣服の前立て等に取り付けられることにより、例えばイヤホン34を耳に装着して、そのコード35をオーディオプレーヤー等の本体に接続する場合に、コード35の一部を引手2の導入開口11から保持空間10に導入して、コード保持部9で安定して挿通保持することができる。
【0029】
このとき、コード保持部9が有する導入開口11の開口幅がコード35の直径よりも小さくても、引手本体4及びコード保持部9が弾性を有する合成樹脂で成形されているため、例えばコード35を導入開口11の位置に合わせてコード35を保持空間10に向けて指で押し込むことにより、コード保持部9を導入開口11が開くように弾性変形させて、コード35を導入開口11を介して保持空間10に容易に導入し、この保持空間10にてコード35を安定して保持することができる。これにより、コード35が長く形成されている場合であっても、コード35がぶらついて邪魔になることがなく、また、周辺に存在する他の部材等にコード35を引っ掛かり難くすることができる。
【0030】
特に、本実施例1の引手2は、イヤホン34のコード35を引手2の長手方向に平行に保持することができる。従って、コード35をコード保持部9に保持しても、例えば前記特許文献1の場合のように、保持したコードが引手から浮き上がった状態となることがないため、コード35を体裁よく保持できるとともに、コード35がその他の周辺にある部材等に引っ掛かることを、より確実に防止することができる。
【0031】
また、引手2のコード保持部9にコード35を保持した状態を図4に示したように、コード保持部9の保持空間10の直径がコード35の直径よりも大きく形成されているため、引手2はコード35を引手2の長手方向に移動可能に保持することができる。これにより、引手2がコード35を保持していても、ユーザーの身体の動きに応じて、コード35が引手2の長手方向に沿って容易に移動することができるため、図示を省略したオーディオプレーヤーの本体やイヤホン34が引手2によって引っ張られることはない。更に、引手2がコード35を引手2の長手方向に挿通可能に保持することにより、例えば引手2がコード35を保持した状態でスライダー1を上下に摺動させた場合でも、スライダー1の摺動によってコード35が引っ張られることを防止でき、スライドファスナー30の使い勝手を低下させることもない。
【0032】
更に、引手2がコード35を保持している間は、コード保持部9における導入開口11の最小開口幅がコード35の直径よりも小さく形成されているため、コード35がコード保持部9から勝手に外れることを防ぐことができる。また、例えばユーザーの意思で引手2からコード35を外す場合には、コード保持部9を指で弾性変形させることにより、導入開口11の開口幅を容易に拡げることができるため、コード保持部9からコード35を簡単に取り外すことができる。
【実施例2】
【0033】
次に、本発明の実施例2に係る引手について説明する。ここで、図5は、本実施例2に係る引手を示した斜視図であり、図6は、同引手がコードを保持したときの断面を示した断面図である。なお、本実施例2及び後述する実施例3において、引手が連結されるスライダー胴体は、前記実施例1にて図を参照しながら説明したスライダー胴体と基本的に同じ構成を有しているため、その説明及び図示を省略する。また、スライダー胴体の引手取付部に連結される環状部の構成についても、前記実施例1のものと実質的に同様であるため、図面に同じ符号を用いて示すことによって、その環状部を詳細に説明することを省略する。
【0034】
本実施例2の引手42は、スライダー胴体の引手取付部に連結させる環状部3と、環状部3の端部に形成された引手本体44と、引手本体44の表面側に半球状に膨出するように形成されたコード保持部49とを備えている。また、引手本体44及びコード保持部49は、前記実施例1と同様に、弾性を有する合成樹脂を射出成形することにより形成されており、これら引手本体44とコード保持部49とによって、スライダーの操作時に持ち手となる摘み部を形成している。更に、引手42の全体は、例えば引手をスライダーの後口側に傾倒させた状態において、スライダー胴体の引手取付部との連結部からスライダーの後口側に向けて延びた形状に形成されている。
【0035】
前記引手本体44は、平板状に形成されており、正面視にて等脚台形の下辺にその下辺を直径とする半円が設けられているような形状を有している。前記コード保持部49は、その一部が引手本体44の表面の一部と一体に連結するように形成されている。また、引手本体44とコード保持部49との間には、コード保持部49の外周面から切り込むように形成された間隙52が引手の長手方向に沿うようにして形成されており、更にコード保持部49の先端部側内面には、間隙52に向けて突出した突部53が形成されている。
【0036】
即ち、本実施例2の引手42は、引手の長手方向に沿うようにして形成された間隙52によってコード35等の紐状物を保持する保持空間50が構成されており、また、突部53が突設されて間隙52の間隔が狭められている領域によって、保持空間50に向けて紐状物を導入する導入開口51が構成されている。この場合、突部53よりも内側に形成された保持空間50の間隔は、イヤホン等に一般的に用いられているコード35の外径の大きさと同等、若しくは、その外径よりも若干大きく形成されており、コード35を安定して挿通保持できるように形成されている。
【0037】
このような本実施例2の引手42によってイヤホン等のコード35の一部を保持する場合には、コード35を引手本体44とコード保持部49との間に形成された導入開口51から保持空間50に向けて押し込む。これにより、引手本体44及び/又はコード保持部49が弾性変形するため、導入開口51の開口幅が拡大してコード35を保持空間50に容易に導入することができ、更に、コード35を保持空間50で引手の長手方向に挿通可能に安定して保持することができる。従って、前記実施例1と同様に、イヤホン等のコード35が長く形成されている場合でも、コード35がぶらついて邪魔になることを防ぐことができるとともに、コード35が周辺のその他の部材等に引っ掛かることを防止することができる。
【0038】
また、本実施例2の引手42は、その長手方向に沿うように保持空間50が形成されているため、コード35を保持空間50に保持しても、コード35が引手42から浮き上がった状態とはならない。従って、コード35を体裁よく保持できるとともに、コード35が他の部材等と引っ掛かることをより確実に防止することができる。更に、引手42がコード35を保持していても、コード35が引手の長手方向に沿って移動可能であるため、前記実施例1と同様に、身体の動きによってイヤホンが引手42によって引っ張られることも、スライダーの摺動によってコードが引っ張られることもない。
【実施例3】
【0039】
更に、本発明の実施例3に係る引手について説明する。ここで、図7は、本実施例3に係る引手を示した斜視図である。
本実施例3の引手62は、スライダー胴体の引手取付部に連結させる環状部3と、環状部3の端部に形成された引手本体64と、引手本体64と一体に形成されたコード保持部69とを備えている。また、引手本体64及びコード保持部69は、前記実施例1及び2と同様に、弾性を有する合成樹脂を射出成形することにより形成されている。
【0040】
前記引手本体64と前記コード保持部69は、両部材が一体となってスライダーの操作時に持ち手となる摘み部を形成しており、この摘み部は、断面が略正八角形で、底面から環状部3側に向けてその断面積が漸減するような棒状の形状を有している。また、引手62の全体は、例えば引手をスライダーの後口側に傾倒させた状態において、スライダー胴体の引手取付部との連結部からスライダーの後口側に向けて長く延びた形状を有している。更に、引手本体64とコード保持部69との間には、断面が矩形状の保持空間70と、摘み部の外周面から保持空間70に向けて貫通する導入開口71とが、引手の長手方向に沿うように形成されている。
【0041】
また本実施例3において、前記保持空間70は、一片の長さがイヤホン等に一般的に用いられているコード35の外径の大きさと同等、若しくは、その外径よりも若干大きく形成されており、コード35を安定して挿通保持できるように構成されている。更に、前記導入開口71は、その開口幅を保持空間70に向けて漸減するようにテーパ状に形成されており、導入開口71の最小開口幅(即ち、保持空間70側における導入開口71の開口幅)が、コード35の外径よりも小さく形成されている。
【0042】
このような本実施例3の引手62によってイヤホン等のコード35の一部を保持する場合には、コード35を導入開口71から保持空間70に向けて押し込むことにより、導入開口71の開口幅が拡大してコード35を保持空間70に容易に導入して、コード35を引手62から浮き上がった状態にさせることなく、保持空間70で安定して保持することができる。従って、前記実施例1及び2と同様に、コード35がぶらついて邪魔になることを防ぐことができるとともに、コード35がその他の周辺部材等に引っ掛かることを防止することができる。また、このようにコード35を保持空間70に保持しても、コード35が引手62の長手方向に沿って移動可能であるため、前記実施例1及び2と同様に、身体の動きによってイヤホンが引手62によって引っ張られることも、また、スライダーの摺動によってコード35が引っ張られることもない。
【0043】
なお、本発明の実施例1〜実施例3は、引手本体及びコード保持部が、合成樹脂を射出成形することにより形成されているが、例えば紐状物自体が弾性を有する場合等では、引手本体やコード保持部を、金属をダイカスト手段により成形することによって形成しても良い。即ち、前記実施例1〜実施例3においては、紐状物をコード保持部の導入開口から保持空間に導入する際に、引手本体及び/又はコード保持部を弾性変形させることによって、開口幅が狭く形成されている導入開口から紐状物を導入することができる。しかし、本発明では、例えば引手本体及びコード保持部を亜鉛合金やアルミニウム合金等の金属によって形成することも可能であり、この場合、コード等の紐状物が弾性を有する合成樹脂で形成されていれば、紐状物を引手本体の導入開口に押し込むことにより、紐状物自体を弾性変形させて、その幅(直径)を小さくすることができる。このため、引手本体やコード保持部が弾性変形するものではなくても、紐状物を保持空間に容易に導入して保持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例1に係る引手を有するスライドファスナー用スライダーを示した斜視図である。
【図2】同引手を裏面側から見たときの引手の斜視図である。
【図3】同引手にイヤホンのコードを保持したときのスライダーを正面から見た正面図である。
【図4】同引手がコードを保持したときのコード保持部の断面を示した断面図である。
【図5】本発明の実施例2に係る引手を示した斜視図である。
【図6】同引手がコードを保持したときの断面を示した断面図である。
【図7】本発明の実施例3に係る引手を示した斜視図である。
【図8】従来の引手を模式的に示した正面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 スライダー
2 引手
3 環状部
4 引手本体
5 取付孔
6 軸部
7 カム部
9 コード保持部
9a 筒状体
10 保持空間
11 導入開口
20 スライダー胴体
21 上翼板
22 下翼板
23 連結柱
24 上フランジ部
25 下フランジ部
26 引手取付部
30 スライドファスナー
31 ファスナーテープ
32 ファスナーエレメント列
34 イヤホン
35 コード(紐状物)
42 引手
44 引手本体
49 コード保持部
50 保持空間
51 導入開口
52 間隙
53 突部
62 引手
64 引手本体
69 コード保持部
70 保持空間
71 導入開口
81 引手
82 取付孔
83 係止孔
84 耳片
85 割溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドファスナー用スライダー(1) のスライダー胴体(20)に、一端を連結させる環状部(3) と、前記環状部(3) の他端側に設けられた引手本体(4,44,64) とを備えたスライダー(1) の引手(2,42,62) であって、
前記引手本体(4,44,64) と一体に配され、1本以上のコード等の紐状物(35)をファスナーテープ(31)のテープ面に平行に挿通保持するコード保持部(9,49,69) を有してなることを特徴とするスライダーの引手。
【請求項2】
前記コード保持部(9,49,69) は、前記紐状物(35)を引手(2,42,62) の長手方向に沿って移動可能に挿通保持する保持空間(10,50,70)を有してなる請求項1記載のスライダーの引手。
【請求項3】
前記コード保持部(9,49,69) は、前記紐状物(35)を収容する保持空間(10,50,70)と、前記保持空間(10,50,70)に前記紐状物(35)を導入する導入開口(11,51,71)とを有し、
前記導入開口(11,51,71)は、前記保持空間(10,50,70)よりも狭く、前記引手本体(4,44,64) と前記紐状物(35)との相対的な弾性変形を利用して前記紐状物(35)を前記保持空間(10,50,70)に導入可能な開口幅を有してなる、
請求項1又は2に記載のスライダーの引手。
【請求項4】
前記導入開口(11,71) は、前記保持空間(10,70) に向けて前記開口幅が漸減するテーパ状に形成されてなる請求項3記載のスライダーの引手。
【請求項5】
前記導入開口(51)の内面に突部(53)を有してなる請求項3記載のスライダーの引手。
【請求項6】
前記コード保持部(9) は、前記引手本体(4) の側面に配される筒状体(9a)により構成され、前記保持空間(10)は、前記筒状体(9a)の前記引手(2,42,62) の長手方向に沿って形成される中空部により構成され、前記導入開口(11)は、前記筒状体(9a)の外周面から前記中空部に貫通し、前記引手(2,42,62) の長手方向に沿って形成されたスリットにより構成されてなる請求項2〜5のいずれかに記載のスライダーの引手。
【請求項7】
前記コード保持部(49)は、前記引手本体(44)との間に間隙を有して前記引手本体(44)の周面の一部と一体に設けられており、前記保持空間(50)及び前記導入開口(51)は、前記引手本体(44)と前記コード保持部(49)との間に形成された前記間隙により構成されてなる請求項2〜5のいずれかに記載のスライダーの引手。
【請求項8】
前記間隙が前記引手(2,42,62) の長手方向に沿って形成されてなる請求項7記載のスライダーの引手。
【請求項9】
前記間隙が前記引手(2,42,62) の長手方向と交差する方向に沿って形成されてなる請求項7記載のスライダーの引手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−55050(P2008−55050A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238000(P2006−238000)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】