説明

スライディングノズル装置

【課題】摺動ブロックを使用することなく、摺動金枠とシリンダー機構とを着脱可能に連結でき、かつプレートれんが間に面圧を負荷及び解除することができるSN装置を提供する。
【解決手段】固定金枠と、固定金枠に開閉可能に連結された開閉金枠と、開閉金枠に摺動可能に支持された摺動金枠3と、基端部どうしを連結部材10で連結された一対の面圧バー9とを備え、一対の面圧バー9を進退させることによってプレートれんが間に面圧を負荷及び解除するスライディングノズル装置において、摺動金枠3とシリンダー機構8とを着脱可能に直接連結し、摺動金枠3及び連結部材10のそれぞれに、摺動金枠3の摺動ストローク内の特定の位置で整合する係合孔3b,10cを設け、摺動金枠3及び連結部材10のそれぞれの係合孔3b,10cが整合したときに、それぞれの係合孔3b,10cにピンを挿入することにより、摺動金枠3及び連結部材10を連結可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属の流量を制御するスライディングノズル装置(以下「SN装置」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
SN装置は、溶融金属の流量制御を正確に行うことができるという利点を有することから、取鍋やタンディッシュなどの溶融金属容器で広く利用されている。SN装置は、溶融金属容器の底部に固定された固定金枠と、固定金枠に開閉可能に連結された開閉金枠と、開閉金枠に摺動可能に配置された摺動金枠とを備え、これらの金枠に2枚又は3枚のプレートを装着し、摺動金枠をシリンダー機構により摺動させることによって、溶融金属の流量制御を行う。また、SN装置では、使用中はプレートれんが間からの溶融金属の漏れを防止するため、プレートれんが間に面圧を負荷し、使用後のプレートれんがの交換時には、その面圧を解除するようにしている。
【0003】
このような面圧の負荷及び解除をする面圧負荷解除機構として、面圧バーを利用したものがある(例えば特許文献1)。この面圧負荷解除機構では、シリンダー機構の駆動力を利用して面圧バーを前進させることによって面圧を負荷し、面圧バーを後退させることによって面圧を解除する。
【0004】
図3は、上述の面圧負荷解除機構を備えた従来のSN装置を示す縦断面図、図4は、その底面図である。
【0005】
SN装置は、溶融金属容器Aの底部に固定された固定金枠1と、固定金枠1に開閉可能に連結された開閉金枠2と、開閉金枠に摺動可能に支持された摺動金枠3とを備える。図3及び4に示すSN装置は、プレートれんがとして上プレート4及び下プレート5を有する2枚プレート式であり、上プレート4は固定金枠1に装着され、下プレート5は摺動金枠3に装着されている。下プレート5の下面には下ノズル6が接合されている。
【0006】
摺動金枠3は、摺動ブロック7を介してシリンダー機構8のシリンダーロッド8aと着脱可能に連結されている。具体的には、シリンダーロッド8aの先端は摺動ブロック7に固定され、摺動ブロック7の先端側に、先端がT型の係合金具7aが固定されている。そして、係合金具7aが摺動金枠3の基端側(シリンダー機構8側)に形成したT型の係合溝3aに着脱可能に装着される。これにより、シリンダー機構8のシリンダーロッド8aを進退させることで、摺動金枠3が摺動する。
【0007】
このSN装置は、面圧負荷解除機構として一対の面圧バー9を有する。一対の面圧バー9は、基端部どうしを連結部材10で連結され、全体としてコの字状をなして一体化されている。
【0008】
連結部材10には係合部材10aが一体的に設けられている。一方、摺動ブロック7には、シリンダー機構8により摺動ブロック7を前進させたときに係合部材10aと係合する係合突起7bが設けられている。
【0009】
以上の構成において、プレートれんが間に面圧を負荷する際には、シリンダー機構8により摺動ブロック7を前進させる。そうすると、摺動ブロック7の係合突起7bが係合部材10aに係合し、さらに摺動ブロック7を前進させると、連結部材10とともに一対の面圧バー9が前進し、シリンダー機構8の前進限まで前進させることで、プレートれんが間に面圧が負荷される。その後、SN装置は、実操業に供されるが、シリンダー機構8を後退させても、摺動ブロック7の係合突起7bと係合部材10aとが係合することはないので、実操業中は、プレートれんが間に面圧が負荷されたままである。
【0010】
使用後にプレートれんが間の面圧を解除する際は、シリンダー機構8を後退させて、摺動ブロック7の係合突起7bと係合部材10aとが所定の間隔をおいて離れた状態とする。その状態で、摺動ブロック7の係合突起7bと係合部材10aとを跨いで連結する面圧解除治具(図示せず)を装着し、シリンダー機構8を後退させる。そうすると、連結部材10とともに一対の面圧バー9が後退し、プレートれんが間の面圧が解除される。面圧を解除したら、上記の面圧解除治具は取り外される。
【0011】
以上説明した従来のSN装置では、上述のとおり、摺動ブロック7を介して摺動金枠3とシリンダー機構8とを着脱可能に連結し、さらに摺動ブロック7を使用してプレートれんが間に面圧を負荷及び解除するようにしている。すなわち、従来のSN装置は摺動ブロック7を必須の構成としているが、摺動ブロック7が必要であるが故に、SN装置が大きくなり、小型化が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−117985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、摺動ブロックを使用することなく、摺動金枠とシリンダー機構とを着脱可能に連結でき、かつプレートれんが間に面圧を負荷及び解除することができるSN装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、溶融金属容器の底部に固定された固定金枠と、固定金枠に開閉可能に連結された開閉金枠と、開閉金枠に摺動可能に支持された摺動金枠と、基端部どうしを連結部材で連結された一対の面圧バーとを備え、前記一対の面圧バーを進退させることによってプレートれんが間に面圧を負荷及び解除するスライディングノズル装置において、摺動金枠とシリンダー機構とを着脱可能に直接連結し、摺動金枠及び連結部材のそれぞれに、摺動金枠の摺動ストローク内の特定の位置で整合する係合孔を設け、摺動金枠及び連結部材のそれぞれの係合孔が整合したときに、それぞれの係合孔にピンを挿入することにより、摺動金枠及び連結部材を連結可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、摺動金枠とシリンダー機構とを着脱可能に直接連結しており、しかもプレートれんが間に面圧を負荷及び解除する際にも摺動金枠と一対の面圧バーを連結する連結部材とをピンにより直接連結するので、従来のSN装置では必須であった摺動ブロックを使用することなく、プレートれんが間に面圧を負荷及び解除することができる。したがって、摺動ブロックが不要となり、結果としてSN装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のSN装置の一実施例を示す断面図である。
【図2】図1に示す本発明のSN装置の底面図である。
【図3】従来のSN装置を示す縦断面図である。
【図4】図3に示す従来のSN装置の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1はSN装置の一実施例を示す断面図、図2はその底面図である。本発明のSN装置の基本構成は、図3及び4に示した従来のSN装置と同じであり、溶融金属容器Aの底部に固定された固定金枠1と、固定金枠1に開閉可能に連結された開閉金枠2と、開閉金枠に摺動可能に支持された摺動金枠3とを備える。図1及び2に示すSN装置は、プレートれんがとして上プレート4及び下プレート5を有する2枚プレート式であり、上プレート4は固定金枠1に装着され、下プレート5は摺動金枠2に装着されている。下プレート5の下面には下ノズル6が接合されている。
【0019】
摺動金枠3は、シリンダー機構8のシリンダーロッド8aと着脱可能に直接連結されている。具体的には、シリンダーロッド8aの先端部がT型に形成されており、このT型の先端部が摺動金枠3の基端側(シリンダー機構8側)に形成したT型の係合溝3aに着脱可能に装着される。これにより、シリンダー機構8のシリンダーロッド8aを進退させることで、摺動金枠3が摺動する。
【0020】
このSN装置は、面圧負荷解除機構として一対の面圧バー9を有する。一対の面圧バー9は、基端部どうしを連結部材10で連結され、全体としてコの字状をなして一体化されている。
【0021】
連結部材10には2箇所に係合部材10bが一体的に設けられており、それぞれの係合部材10bに係合孔10cが設けられている。一方、摺動ブロック7にも2箇所に係合孔3bが設けられている。これらの係合孔3bと係合孔10cとは、摺動金枠3の摺動ストローク内の特定の位置で整合する。
【0022】
以上の構成において、プレートれんが間に面圧を負荷する際には、シリンダー機構8により摺動金枠3を摺動させ、係合孔3bと係合孔10cとを整合させた上で、係合孔3b及び係合孔10cにピン11(図1参照)を挿入する。これにより、摺動金枠3と連結部材10とが連結される。この状態で、シリンダー機構8により摺動金枠3を前進させることで、一対の面圧バー9が前進し、プレートれんが間に面圧が負荷される。面圧を負荷した後にピン11は抜き取られ、SN装置は実操業に供される。ピン11を抜き取ったら、シリンダー機構8により摺動金枠3を後退させたとしても、一対の面圧バー9は後退しないので、実操業中に面圧が解除されることはない。なお、ピン11を抜き忘れたら、実操業中に面圧が解除されるおそれがあるが、本実施例のSN装置では、ピン11を抜き忘れたら、実操業中に使用する防熱カバー(図示せず)を装着できないようになっているので、ピン11の抜き忘れを防止することができる。
【0023】
使用後にプレートれんが間の面圧を解除する際は、上述の面圧負荷の際と同じ要領で係合孔3bと係合孔10cとを整合させた上で、係合孔3b及び係合孔10cにピン11を挿入する。この状態で、シリンダー機構8により摺動金枠3を後退させることで、一対の面圧バー9が後退し、プレートれんが間の面圧が解除される。
【0024】
以上のように本発明のSN装置では、従来のSN装置では必須であった摺動ブロックを使用することなく、プレートれんが間に面圧を負荷及び解除することができる。したがって、摺動ブロックが不要となり、結果としてSN装置を小型化することができる。
【符号の説明】
【0025】
A 溶融金属容器
1 固定金枠
2 開閉金枠
3 摺動金枠
3a 係合溝
3b 係合孔
4 上プレート
5 下プレート
6 下ノズル
7 摺動ブロック
7a 係合金具
7b 係合突起
8 シリンダー機構
8a シリンダーロッド
9 面圧バー
10 連結部材
10a 係合部材
10b 係合部材
10c 係合孔
11 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属容器の底部に固定された固定金枠と、固定金枠に開閉可能に連結された開閉金枠と、開閉金枠に摺動可能に支持された摺動金枠と、基端部どうしを連結部材で連結された一対の面圧バーとを備え、前記一対の面圧バーを進退させることによってプレートれんが間に面圧を負荷及び解除するスライディングノズル装置において、摺動金枠とシリンダー機構とを着脱可能に直接連結し、摺動金枠及び連結部材のそれぞれに、摺動金枠の摺動ストローク内の特定の位置で整合する係合孔を設け、摺動金枠及び連結部材のそれぞれの係合孔が整合したときに、それぞれの係合孔にピンを挿入することにより、摺動金枠及び連結部材を連結可能としたことを特徴とするスライディングノズル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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