説明

スライドコアガイドユニット

【課題】ピンホルダへ傾斜ピンを装着する際の作業性がよく、かつより低コストで製造可能な高強度なスライドコアガイドユニットを提供する。
【解決手段】スライドコアガイドユニット1は、スライドプレート3のトラニオン挿入穴32の外周領域において、スライドプレート3とピンホルダ2のホルダ本体21との間に挟み込まれたウェーブワッシャ4を有する。ウェーブワッシャ4は、中心軸O1方向に起伏する波形状に曲げ加工されており、2つのベースブロック51のガイド溝511に収容されたスライドプレート3の表面31Bとピンホルダ2のホルダ本体21の側面211A,211Bとの間で圧縮されて中心軸O1方向に弾性変形している。そして、その復元力Fで、ピンホルダ2のホルダ本体21を両側面211A,211B側から押圧している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型品のアンダーカット部を取り出すための傾斜ピンを案内するスライドコアガイドユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
スライドベースに対するピンホルダのふらつきを防止可能なスライドコアガイドユニットとして、特許文献1に記載のスライドコアガイドユニットが知られている。
【0003】
このスライドコアガイドユニットにおいては、傾斜ピンを保持するためのピンホルダの両側に設けられたトラニオン部(回転軸)の外周に環状の溝が切られており、これらの溝にそれぞれOリングがはめ込まれている。ピンホルダの各トラニオン部は、Oリングが装着された状態で、スライドベースのガイド溝により案内されるスライドプレートの貫通穴に挿入されている。
【0004】
このような構造とすることにより、Oリングとスライドプレートの貫通穴の内周面との間に摩擦抵抗が発生するため、ピンホルダは、スライドプレートに対して回転可能に保持されつつ、スライドプレートに対する回転に適度な制動力が与えられる。このため、スライドプレートに対するピンホルダのふらつき、つまり、スライドベースに対するピンホルダのふらつきが防止され、ピンホルダへの傾斜ピンの装着中、スライドベースに対するピンホルダの姿勢が保持される。これにより、ピンホルダへの傾斜ピンの装着時における作業効率が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−79898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のスライドコアガイドユニットにおいては、Oリングをはめ込むための溝をピンホルダの各トラニオン部の外周に形成する必要がある。このため、溝加工のためのコストがかかる。また、例えば、スライドコアガイドユニットの小型化にともない、ピンホルダのトラニオン部(回転軸)が小径化された場合、このようなOリング用の溝をピンホルダの各トラニオン部の外周に切ると、トラニオン部の強度に影響を与える可能性がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ピンホルダへ傾斜ピンを装着する際の作業性がよく、かつより低コストで製造可能な高強度のスライドコアガイドユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明においては、ピンホルダと、このピンホルダを回転可能に保持するスライドプレートとの間に弾性部材を圧縮状態で挟み込む。
【0009】
例えば、本発明は、金型から成型品を取り出すための傾斜ピンを案内するスライドコアガイドユニットであって、
トラニオン部を有し、前記傾斜ピンを取り付けるためのピンホルダと、
前記トラニオン部が挿入されるトラニオン挿入穴が形成され、当該トラニオン挿入穴で前記トラニオン部を回転可能に支持しながら所定の方向に移動するスライドプレートと、
前記スライドプレートと前記ピンホルダとの間に介在し、前記スライドプレートと前記ピンホルダとの対向面間で圧縮された弾性部材と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ピンホルダと、このピンホルダを回転可能に保持するスライドプレートとの間に圧縮状態で挟み込まれた弾性部材の復元力によってピンホルダがスライドプレート側から押圧されているため、ピンホルダのトラニオン部に対して溝加工等の機械加工を施さなくても、適度な摩擦抵抗により、スライドベースに回転自在に保持されたピンホルダの、自重による回転が防止され、スライドベースに対するピンホルダの姿勢を保持することができる。このため、金型から成型品を押し出すための傾斜ピンをピンホルダへ装着する際の作業性がよい高強度なスライドコアガイドユニットを、より低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係るスライドコアガイドユニット1の外観図である。
【図2】図2(A)は、図1に示したスライドコアガイドユニット1の上面図であり、図2(B)は、図2(A)のA−A断面図であり、図2(C)は、図2(A)のB−B断面図である。
【図3】図3(A)は、スライドベース5の上面図であり、図3(B)および(C)は、図3(A)のC−C断面図およびD−D断面図であり、図3(D)は、スライドベース5の右側面図である。
【図4】図4(A)、(B)および(C)は、スライドプレート3の外観図、上面図および側面図であり、図4(D)は、図4(B)のE−E断面図である。
【図5】図5(A)、(B)、(C)および(D)は、平行キー7が取り付けられたピンホルダ2の外観図、正面図、側面図および上面図であり、図5(E)は、図5(D)のF−F断面図である。
【図6】図6(A)、(B)および(C)は、ウェーブワッシャ4の外観図、正面図および側面図であり、図6(D)は、図6(C)のA部拡大図であり、図6(E)は、ウェーブワッシャ4の取付け状態を説明するための図である。
【図7】図7(A)は、スライドベース5へのピンホルダ2の組み込み手順の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
まず、本実施の形態に係るスライドコアガイドユニット1の構成について説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係るスライドコアガイドユニット1の外観図であり、図2(A)は、このスライドコアガイドユニット1の上面図である。また、図2(B)は、図2(A)のA−A断面図であり、図2(C)は、図2(A)のB−B断面図である。
【0015】
図示するように、本実施の形態に係るスライドコアガイドユニット1は、金型から成型品を取り出す傾斜ピン9を保持するためのピンホルダ2と、ピンホルダ2を回転可能に保持する1対のスライドプレート3と、スライドプレート3に対するピンホルダ2の自重による回転を阻止するためのウェーブワッシャ4と、金型から成型品を取り出すときのピンホルダ2の移動に伴って移動するスライドプレート3の移動を案内するスライドベース5と、傾斜ピン9をピンホルダ2に固定するための六角穴付きボルト6と、傾斜ピン9の回り止め用の平行キー7および平行キー7用の固定ネジ8と、を備えている。ここで、このスライドコアガイドユニット1の保持対象となる傾斜ピン9の一方の端部(金型から成型品を突き出す側の端部の反対側端部:以下、固定端部)91の外周には、平行キー7に接触する平坦な切り欠き部92が形成されており、さらに、この固定端部91側の端面93には、六角穴付きボルト6が締結されるネジ穴94が形成されている。
【0016】
スライドコアガイドユニット1の構成部品2〜8の詳細は以下のとおりである。
【0017】
図3(A)は、スライドベース5の上面図であり、図3(B)および(C)は、図3(A)のC−C断面図およびD−D断面図であり、図3(D)は、スライドベース5の右側面図である。
【0018】
スライドベース5は、不図示の成型機に取り付けられるエジェクタプレートに組み込まれる。図示するように、このスライドベース5は、所定の間隔T1をおいて配置された1対のベースブロック51と、これらのベースブロック51を連結する2本のスペーサ52および4本の固定ネジ53と、を有している。
【0019】
各ベースブロック51には、それぞれ、エジェクタプレートへの取付け面として利用可能な両端面513A,513Bを貫通した複数のネジ穴515が形成されている。2つのベースブロック51のいずれか一方の端面513A,513Bを取付け面としてエジェクタプレートに接触させた状態で、2つのベースブロック51の各ネジ穴515に、エジェクタプレートの対応貫通穴に挿入した取付けネジを締結する、または、2つのベースブロック51の各ネジ穴515に挿入した取付けネジをエジェクタプレートの対応ネジ穴に締結することによって、スライドベース5はエジェクタプレートに固定される。
【0020】
また、2つのベースブロック51の対向面(互いに他のベースブロック51側に向けられた面)512には、それぞれ、ピンホルダ2が移動する方向に沿ったガイド溝511が形成されている。このガイド溝511は、他方のベースブロック51との対向面512と隣り合う両側面517において開口している。このガイド溝511には、ベースブロック51の側面517側からスライドプレート3が挿入され、スライド可能に収容される(図2(C)参照)。なお、図3には、一例として、ベースブロック51の端面513A,513Bに対してガイド溝511が傾斜している場合を示しているが、ベースブロック51の端面513A,513Bとガイド溝511との角度は、成型品のアンダーカット部の形状等に応じて適宜定められる。
【0021】
2つのベースブロック51の両側面517には、それぞれ、他方のベースブロック51側のネジ穴と対応する高さの位置にネジ穴(不図示)が形成されている。
【0022】
2本のスペーサ52には、2つのベースブロック51の間に保持すべき間隔T1に応じた間隔で貫通穴522が形成されている。これらのスペーサ52は、それぞれ、対向配置された2つのベースブロック51の側面517間にかけ渡され、各貫通穴522に挿入された固定ネジ53とベースブロック51の側面517のネジ穴(不図示)との締結によって固定される。これにより、2つのベースブロック51が、所定の間隔T1をおいた位置で固定される。
【0023】
図4(A)、(B)および(C)は、スライドプレート3の外観図、上面図および側面図であり、図4(D)は、図4(B)のG−G断面図である。
【0024】
2枚のスライドプレート3は、2つのベースブロック51の側面517側からガイド溝511に一枚ずつ挿入され、ピンホルダ2を保持した状態で、2つのベースブロック51のガイド溝511内にスライド可能に収容されている(図2(C)参照)。図示するように、各スライドプレート3の表面31A,31Bのうち、少なくとも、ベースブロック51のガイド溝511の溝底5112と摺動する一方の表面(図4においては31A)には、外部に露出する固体潤滑剤33が埋め込まれている。同様に、各スライドプレート3の端面のうち、スライドベース5のガイド溝511の側壁5111と摺動する端面31C,31Dにも、外部に露出する固体潤滑剤33が埋め込まれている。
【0025】
また、各スライドプレート3には、一方の表面31Aから他方の表面31Bに貫通したトラニオン挿入穴32が形成されている。このトラニオン挿入穴32には、スライドプレート3の他方の表面31B側からピンホルダ2のトラニオン部22が回転可能に挿入されている(図2(C)参照)。なお、後述するように、2つのベースブロック51のガイド溝511に収容された各スライドプレート3は、このトラニオン挿入穴32の周りを囲むように他方の表面31B側に配されたウェーブワッシャ4を、ピンホルダ2の後述するトラニオン22が形成されているホルダ本体21の側面211A,211Bとの間で圧縮して弾性変形させている。
【0026】
図5(A)、(B)、(C)および(D)は、平行キー7が取り付けられたピンホルダ2の外観図、正面図、側面図および上面図であり、図5(E)は、図5(D)のF−F断面図である。
【0027】
ピンホルダ2は、スライドベース5の2つのベースブロック51間に回転およびスライド可能な状態で収容されている。図示するように、このピンホルダ2は、傾斜ピン9の固定端部91が固定されるブロック状のホルダ本体21と、ホルダ本体21の4つ側面211A〜211Dのうち、対向する2つの側面211A,211Bに一体的に形成された1対のトラニオン部(回転軸)22と、を備えており、ホルダ本体21の幅t1は、2つのベースブロック51の間隔T1よりも狭く、トラニオン部22の端面221間の距離t2は、2つのベースブロック51のガイド溝511の溝底5112間の距離T2よりも狭い。
【0028】
ホルダ本体21には、成型機のキャビティ側に向けられる一方の端面(側面211A〜211D以外の面:以下、上面と呼ぶ)212Aにピン挿入穴214が形成されるとともに、上面212Aの反対側の面(底面)212Bに、ピン挿入穴214の底面2141を貫通する座繰り付きのボルト挿入穴215が形成されている。また、このホルダ本体21には、上面212A内においてピン挿入穴214の軸方向で周面と一部接触する位置にキー溝216が形成されるとともに、トラニオン部22を備える側面211A,211B以外の側面211Cに、キー溝216の内壁を貫通するネジ挿入穴217が形成されている。
【0029】
傾斜ピン9の固定端部91は、ホルダ本体21の上面212A側からピン挿入穴214に挿入され、六角穴付きボルト6は、ホルダ本体21の底面212B側からボルト挿入穴215に挿入され、ピン挿入穴214に挿入された傾斜ピン9の端面93のネジ穴94に締結される。
【0030】
平行キー7は、ホルダ本体21の上面212A側からキー溝216内に収容されており、固定ネジ8は、ホルダ本体21の側面211C側からネジ挿入穴217に挿入され、キー溝216内の平行キー7のネジ穴71に締結されている。このようにしてホルダ本体21に固定された平行キー7は、ホルダ本体21のピン挿入穴214に挿入される傾斜ピン9の切り欠き部92に面接触し、これにより、ホルダ本体21に対して所定の向きに傾斜ピン9を位置付けるとともに、ホルダ本体21に対する傾斜ピン9の回転を阻止する。
【0031】
一対のトラニオン部22は、ホルダ本体21のピン挿入穴214を横切る共通の軸心Oを有している。前述したように、これらのトラニオン部22が、2つのスライドベース5のガイド溝511にスライド可能に収容されたスライドプレート3のトラニオン挿入穴32内に回転可能に挿入されている。このため、ホルダ本体21のピン挿入穴214に挿入された傾斜ピン9は、セッティング時には、トラニオン部22の軸心O回りに回転することにより、アンダーカットの角度に応じて傾斜角度を調整可能であり、アンダーカット処理中には、エジェクタプレートの移動に伴い、2つのスライドベース5のガイド溝511に沿ってピンホルダ2とともに往復移動する。
【0032】
図6(A)、(B)および(C)は、ウェーブワッシャ4の外観図、正面図および側面図であり、図6(D)は、図6(C)のA部拡大図であり、図6(E)は、ウェーブワッシャ4の取付け状態を説明するための図である。
【0033】
図示するように、2つのウェーブワッシャ4は、スライドプレート3のトラニオン挿入穴32よりも大きな直径の開口41を有する環状の帯状板材から形成されており、スライドプレート3のトラニオン挿入穴32の外周領域において、ピンホルダ本体21の側面211A,211Bとスライドプレート3の他方の表面31Bとの間に挟み込まれている。これらのウェーブワッシャ4は、中心軸O1方向(ピンホルダ本体21の側面211A,211Bとスライドプレート3の表面31Bとの隙間T3方向)に起伏する波形状に曲げ加工されており、2つのベースブロック51のガイド溝511に収容されたスライドプレート3の他方の表面31Bとホルダ本体21の側面211A,211Bとの間で圧縮されて中心軸O1方向に弾性変形している。そして、その復元力Fで、ホルダ本体21の両側面211A,211B内の、トラニオン部22を囲む領域を押圧している。このように、2つのベースブロック51のガイド溝511に収容された2つのウェーブワッシャ4が、ピンホルダ2を、トラニオン挿入穴32およびトラニオン部22の周りを囲む領域において、ホルダ本体21の両側面211A,211B側から適度に押さえつけているため、スライドプレート3に対するピンホルダ2の自重による回転が防止されるとともに、2枚のスライドプレート3の間におけるピンホルダ2のがたつきが防止される。
【0034】
つぎに、このようなスライドコアガイドユニット1の組立て順について説明する。ただし、ここでは、予め組み立てられたスライドベース5を用いることとする。
【0035】
図7は、スライドベース5へのピンホルダ2の組み込み手順を説明するための図である。
【0036】
図示するように、2枚のスライドプレート3の他方の表面31B側に、それぞれ、トラニオン挿入穴32の周りを囲むようにウェーブワッシャ4を1つずつあてがいながら、ピンホルダ2の2つのトラニオン部22を、それぞれのウェーブワッシャ4の開口41を介してそれぞれのスライドプレート3のトラニオン挿入穴32に挿入する。これにより、スライドプレート3のトラニオン挿入穴32の周りを囲む領域において、ホルダ本体21の側面211A,211Bとスライドプレート3の他方の表面31Bとの間にウェーブワッシャ4が挟み込まれる。
【0037】
このようにして、ピンホルダ2に2つのウェーブワッシャ4および2枚のスライドプレート3を組み付けたら、この組み付け体をスライドベース5のベースブロック51の間に収容する。具体的には、2本のスペーサ52のうち、いずれか一方のスペーサ52を2つのベースブロック51から外してから、2つのベースブロック51のガイド溝511にスライドプレート3が1枚ずつ挿入されるように、2枚のスライドプレート3をホルダ本体21側に押しあてながら(ウェーブワッシャ4を、ホルダ本体21の側面211A,211Bとスライドプレート3の他方の表面31Bとの間で圧縮して弾性変形させながら)、2つのベースブロック51の間に組立て体を挿入する。これにより、ピンホルダ2は、2枚のスライドプレート3に回転可能に支持された状態で、ガイド溝511に沿って移動可能に2つのベースブロック51間に収容される。このとき、2つのベースブロック51のガイド溝511の溝底5112により、ピンホルダ2から離れる方向へのスライドプレート3の移動が拘束されるため、スライドプレート3の他方の表面31Bとホルダ本体21の側面211A,211Bとの間では、ウェーブワッシャ4の圧縮状態が維持されている。このため、ピンホルダ2は、トラニオン挿入穴32およびトラニオン部22の周りを囲む領域において、2つのウェーブワッシャ4の復元力Fによってホルダ本体21の両側面211A,211B側から押圧されている(図6(E)参照)。したがって、2枚のスライドプレート3の間においてピンホルダ2が一定の位置に保持されて、ピンホルダ2のがたつきが防止されるとともに、トラニオン部22の軸心O周りのピンホルダ2の回転に対する抵抗力が増大して、スライドプレート3に対するピンホルダ2の自重による回転が防止される。
【0038】
その後、外したスペーサ52を、再度、2本の固定ネジ53で2つのベースブロック51に固定する。これにより、スライドコアガイドユニット1が完成する。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態に係るスライドコアガイドユニット1においては、ピンホルダ2のホルダ本体21の側面211A,211Bと、トラニオン部22を回転可能に保持する各スライドプレート3の表面31Bとの間に、トラニオン部22の軸心O方向に弾性を有するウェーブワッシャ4が圧縮状態で挟み込まれ、ウェーブワッシャ4の復元力Fにより、ピンホルダ2の側面211A,211Bが押圧されている。このような構造によれば、ピンホルダ2のトラニオン部22に溝加工等の機械加工を施してOリングを装着しなくても、ピンホルダ2のホルダ本体21の側面211A,211Bと各スライドプレート3の表面31Bとの間で圧縮されたウェーブワッシャ4の復元力Fにより、ピンホルダ2が両側面211A,211Bから適度に押さえつけられるため、スライドプレート3に対するピンホルダ2の自重による回転が防止され、スライドベース5に対するピンホルダ2の姿勢が保持される。また、ピンホルダ2のホルダ本体21が、トラニオン部32の周りを囲む円周領域において、両側面211A,211B側から押さえつけられ、2枚のスライドプレートの間において安定な姿勢で一定の位置に保持されるため、ピンホルダ2のがたつきが防止される。このため、スライドコアガイドユニット1の強度を低下させることなく、ピンホルダ2へ傾斜ピン9を装着する際の作業性の向上を実現することができる。また、ピンホルダ2のトラニオン部22に対する溝加工等の機械加工工程が不要となり、その分、スライドコアガイドユニット1の製造コストの低減を図ることができる。
【0040】
ところで、ピンホルダ9の回転による傾斜ピン9の姿勢調整は、一般に、成型機のエジェクタプレートへの組み込み段階で行われるのみであるため、ウェーブワッシャ4には、さほど高い強度が要求されない。そこで、例えば、金属よりも弾性力が高く摩擦係数の低い樹脂でウェーブワッシャ4を形成しても、ウェーブワッシャ4の復元力Fによって、ピンホルダ2の自重による回転を防止しつつ、作業者が適度な力を加えるだけで、スライドベース5に対してピンホルダ2をよりスムーズに回転させることが可能となる。このため、ピンホルダ2へ傾斜ピン9を装着する際の作業性をより向上させることができる。
【0041】
なお、本実施の形態においては、スライドプレート3に対するピンホルダ2の自重による回転を阻止するためにウェーブワッシャ4を用いているが、ウェーブワッシャ4の代わりに、ピンホルダ2のホルダ本体21とスライドプレート3との間で圧縮されて弾性変形し、その復元力によりピンホルダ2の側面211A,211Bを適度に押圧する他の弾性部材を用いてもよい。例えば、皿ばね、スライドプレート3のトラニオン挿入穴32を囲むための穴が形成されたゴム材、ウレタン材等を用いてもよい。また、弾性部材は、スライドプレート3のトラニオン挿入穴32を囲むための穴を有している必要はなく、例えば、板ばね、ゴム材、ウレタン材等を、1つ以上、トラニオン挿入穴32の周りに配置されるようにスライドプレートの他方の表面31Bに接着してよい。
【0042】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。例えば、ピンホルダ2に対する傾斜ピン9の高さを調整するためのアジャストロッドおよびロックナットを備えるスライドコアガイドユニットに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1:スライドコアガイドユニット、2:ピンホルダ、3:スライドプレート、4:ウェーブワッシャ、5:スライドベース、6:六角穴付きボルト、7:平行キー、8:平行キー7の固定ネジ、9:傾斜ピン、21:ホルダ本体、22:トラニオン部、31A,31B:スライドプレート3の表面、31C,31D:スライドプレート3の端面、32:トラニオン挿入穴、33:固体潤滑剤、41:開口、51:ベースブロック、52:スペーサ、53:スペーサ52用の固定ネジ、71:平行キー7のネジ穴、91:傾斜ピン9の固定端部、92:傾斜ピン9の切り欠き部、93:傾斜ピン9の端面、94:六角穴付きボルト6用のネジ穴、211A〜211D:ピンホルダ2の側面、212A:ピンホルダ2の上面、212B:ピンホルダ2の底面、214:傾斜ピン9のピン挿入穴、215:六角穴付きボルト6のボルト挿入穴、216:キー溝、217:固定ネジ8用のネジ挿入穴、221:トラニオン部22の端面、222:トラニオン部22の外周面、321:トラニオン挿入穴32の内周面、511:ガイド溝、512:ベースブロック51の対向面、513A,513B:ベースブロック51の端面、515:ベースブロック51のネジ穴、517:ベースブロック51の側面、522:スペーサ52の貫通穴、2141:ピン挿入穴214の底面、5111:ガイド溝511の側壁、5112:ガイド溝511の溝底、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型から成型品を取り出すための傾斜ピンを案内するスライドコアガイドユニットであって、
トラニオン部を有し、前記傾斜ピンを取り付けるためのピンホルダと、
前記トラニオン部が挿入されるトラニオン挿入穴が形成され、当該トラニオン挿入穴で前記トラニオン部を回転可能に支持しながら所定の方向に移動するスライドプレートと、
前記スライドプレートと前記ピンホルダとの間に介在し、前記スライドプレートと前記ピンホルダとの対向面間で圧縮された弾性部材と、を備える
ことを特徴とするスライドコアガイドユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のスライドコアガイドユニットであって、
前記スライドプレートがスライド可能に挿入され、当該スライドプレートを前記所定の方向に案内するガイド溝が形成されたスライドベースをさらに備える
ことを特徴するスライドコアガイドユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスライドコアガイドユニットであって、
前記弾性体として、
前記トラニオン挿入穴および前記トラニオン部の周りを囲む弾性部材を備える
ことを特徴とするスライドコアガイドユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のスライドコアガイドユニットであって、
前記弾性部材は、前記スライドプレートと前記ピンホルダとの隙間方向に起伏する波形状を有するウェーブワッシャである
ことを特徴とするスライドコアガイドユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−91271(P2013−91271A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235355(P2011−235355)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】