説明

スライドスイッチ

【課題】スライドスイッチを低背化する。
【解決手段】ベース10と、基準平面に対向した姿勢でベースに対して固定された複数の導電性固定接点11a,11bと、基準平面に沿った方向にスライドするスライド部16aと、ベース10から基準平面に沿ってスライド部16a側に延長された複数のプッシャー部15aを含む弾性導電部材15とを有するスライドスイッチ1。プッシャー部15aの延長方向に沿った当該プッシャー部15aの外面の一部は、何れかの導電性固定接点11a,11bに対向配置される対向面であってそこには導電性可動接点が存在する。スライド部16aが基準平面に沿った方向にスライドすることでプッシャー部15aに当接し、当該プッシャー部15aを弾性変形させて、その導電性可動接点を、それに対向配置された導電性固定接点11a,11bに接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向入力装置に関し、特にスライドスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の多方向入力装置として特許文献1に例示するものがある。特許文献1の多方向入力装置は、上部に開口部を有するハウジングと、このハウジングの開口部から突出する操作体と、ハウジングの底面に平行な多方向へスライド可能に操作体を支持する支持手段と、この操作体のスライド方向を検出して検出信号を出力する複数のスライド検出手段とを備える。各スライド検出手段は、ハウジング底面に平行な方向へ摺動可能に設けられた摺動部材と、摺動部材の位置を復帰させる板ばねと、ハウジングの内側壁に固定された固定接点とを含む。板ばねは、その長手方向がハウジングの内側壁の長手方向に沿い、短手方向がハウジングの内側壁の短手方向に沿う姿勢で、固定接点に対向配置される。板ばねは導電性を有し、板ばねの中央は可動接点として機能する。各可動接点は、それを含む板ばねの変形・復帰に伴って、ハウジングの底面に平行な方向に移動し、その位置に応じて固定接点と接離する。操作体がハウジングの底面に平行な方向へスライドすると、操作体のスライド部が何れかのスライド検出手段の摺動部材を押圧し、これによって板ばねが撓んでその可動接点が固定接点に接触する(特許文献1の図1,2,8参照)。
【0003】
また、別の従来例として特許文献2に例示するものもある。特許文献2の多方向入力装置は、絶縁性の筐体と、筐体の底面に沿って環状に配置された複数の周縁用固定接点と、リング状の金属平板材である周縁用可動電極と、傾斜操作が可能な操作体と、中心部から周縁部に向かって湾曲したドーム状の周縁用押圧部材とを有する。リング状の金属平板材である周縁用可動電極は、その内周縁部が筐体に支持された状態でその1つの面を周縁用固定接に対向させて配置される。周縁用可動電極の他面側には、操作体に中心部を支持された周縁用押圧部材がその内面側を筐体内の底面側に向けた状態で配置される。操作体を任意の径方向外側へ傾斜させると、それに支持された周縁用押圧部材が当該操作方向に回動する。この回動動作によって周縁用押圧部材の周縁部である周縁用押圧部は、筐体の底面に沿った方向だけではなく、それと略垂直な方向(筐体の厚さ方向)にも変位する。このように移動した周縁用押圧部材の周縁用押圧部は周縁用可動電極に当接し、さらに移動を続けることで周縁用押圧部が周縁用可動電極の外周縁部を筐体の厚さ方向に変形させて、当該外周縁部を周縁用固定接点に接触させる(特許文献2の図1,11,12参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−100119号公報
【特許文献2】特開2006−318859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の構成には、製品を薄型化する上での課題がある。
【0006】
特許文献1の構成では、スライド部のスライド先となるハウジングの内壁側の位置に、スライド部のスライド方向と略垂直な板ばねと固定接点とを対向させて配置し、スライド部がそのスライド方向に板ばねを押圧することで、当該板ばねの可動接点を当該スライド方向に変形させ、固定接点に接触させる。ここで、板ばねがスライド部からの押圧から開放された場合、板ばねはその弾性力によって復帰し、これによって板ばねの可動接点が固定接点から離れる(特許文献1の図2,8参照)。板ばねが確実に復帰するためには板ばねがそれに必要な弾性力を持たなければならず、例えば、一般的にスイッチの板ばねとして用いられるクリック板のように、押圧に対し元に戻る弾性力(反発力)を有する構造でなければならない。すなわち板ばねの短手方向(ハウジングの厚さ方向)にもある程度の長さが必要とされる。これにより、製品の薄型化が制限される。
【0007】
また、特許文献2の構成では、筐体の底面に沿った姿勢で周縁用可動電極と周縁用固定接点とを対向配置し、操作体の傾斜に伴って周縁用押圧部材が回動することで、その周縁用押圧部が筐体の底面に沿った方向と筐体の厚さ方向とに移動する。そして、当該周縁用押圧部が周縁用可動電極に当接し、周縁用押圧部を筐体の厚さ方向に押圧することで、周縁用可動電極を筐体の厚さ方向に変形させ、当該周縁用可動電極を周縁用固定接点に接触させる(特許文献2の図11,12参照)。このような周縁用押圧部材が回動する構成では、その周縁用押圧部が筐体の底面に沿った方向だけではなく筐体の厚さ方向にも移動するため、製品の薄型化が制限される。また、このような構成において、操作体の傾斜許容範囲を大きくして周縁用押圧部材のストロークを大きくしようとした場合、その製品の筐体の底面に沿った方向の大きさだけではなく、筐体の厚さ方向の大きさも大きくしなければならない。すなわち、特許文献2の構成では、製品の厚さを増加させることなく操作ストロークを増加させることはできない。
【0008】
さらに、特許文献2の構成では、操作体の傾斜に伴って、周縁用押圧部材の周縁用押圧部が、筐体の支持部に支持された周縁用可動電極の内周縁部側から筐体に支持されていない外周縁部に向かって摺動し、当該周縁用可動電極の外周縁部に達した周縁用押圧部が当該外周縁部を筐体の厚さ方向に変形させることで、当該外周縁部を周縁用固定接点に接触させる。このような構成では、周縁用押圧部材が筐体の支持部に支持された周縁用可動電極の内周縁部に乗り上げ、さらに、周縁用押圧部材の周縁用押圧部が周縁用可動電極の外周縁部まで達しなければ外周縁部を周縁用固定接点に接触させることができない(特許文献2の図11,12参照)。このように縁用押圧部材が当該支持部に支持された部位に乗り上げる構成では製品の厚みが厚くなってしまう。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、従来よりも薄型化が可能なスライドスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では上記課題を解決するために、ベースと、前記ベースに対して定まる基準平面に対向した姿勢で、前記ベースに対して固定された複数の導電性固定接点と、前記ベースに対し、前記基準平面に沿った方向にスライドするスライド部と、前記スライド部の外周側に配置されて前記ベースに支持された支持部と、前記支持部側から前記基準平面に沿って前記スライド部側に延長された複数のプッシャー部とを含む弾性導電部材と、を有し、前記プッシャー部の延長方向に沿った前記プッシャー部の外面の一部は、何れかの前記導電性固定接点に対向配置される対向面であり、前記対向面側には前記導電性固定接点と非接触に対向配置される導電性可動接点が存在し、前記スライド部は、前記基準平面に沿った方向にスライドすることでそのスライド先に位置する何れかの前記プッシャー部に当接し、この状態でさらに前記基準平面に沿った方向にスライドすることで前記プッシャー部を弾性変形させて、その前記導電性可動接点を、それに対向配置された前記導電性固定接点に接触させる、スライドスイッチが提供される。
【0011】
ここで、本発明の導電性固定接点は基準平面に対向した姿勢で配置され、スライド部のスライド方向は基準平面に沿った方向である。また、本発明の導電性可動接点は、基準平面に沿って延長されたプッシャー部の延長方向に沿った外面側に存在する。よって、本発明では、スライド部のスライド先となる位置に、当該スライド部のスライド方向と略垂直な板ばね(可動接点を含む)と固定接点とを対向配置させることに起因する、前述した特許文献1の構成での問題は生じない。
【0012】
また、本発明のスライド部は基準平面に沿った方向にスライドし、何れかのプッシャー部に当接し、この状態でさらに基準平面に沿った方向にスライドすることで当該プッシャー部を弾性変形させてその導電性可動接点を導電性固定接点に接触させる。よって、本発明では、周縁用押圧部材(スライド部に対応)が回動することに起因する、前述した特許文献2の構成での問題は生じない。
【0013】
また、本発明のプッシャー部は、スライド部の外周側に配置されてベースに支持された支持部側から、基準平面に沿ってスライド部側に延長される。本発明のスライド部は、基準平面に沿った方向にスライドすることでそのスライド先に位置する何れかのプッシャー部に当接し、この状態でさらに基準平面に沿った方向にスライド移動する。よって、本発明では、周縁用押圧部材(スライド部に対応)が周縁用可動電極の筐体の支持部に支持された側から筐体に支持されていない側へ摺動することに起因する、前述した特許文献2の構成での問題は生じない。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明のスライドスイッチは従来よりも薄型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(A)(B)は、それぞれ、第1実施形態のスライドスイッチの平面図及び底面図である。
【図2】図2(A)〜(D)は、それぞれ、第1実施形態のスライドスイッチの正面図、右側面図、左側面図及び背面図である。
【図3】図3は、第1実施形態のスライドスイッチのトップカバー側からみた展開図である。
【図4】図4は、第1実施形態のスライドスイッチのベース側からみた展開図である。
【図5】図5(A)は、第1実施形態のスライドスイッチの斜視図であり、図5(B)は、図5(A)からトップカバーを除いた構成の斜視図である。
【図6】図6(A)は、図5(B)から復帰部材を除いた斜視図であり、図6(B)は、図6(A)からインナープレートを除いた斜視図である。
【図7】図7(A)(B)は、第1実施形態の弾性導電部材の斜視図である。
【図8】図8(A)(B)は、それぞれ、第1実施形態のベースの斜視図及び平面図である。
【図9】図9は、図1(A)のIX−IX断面図である。
【図10】図10は、それぞれ、第1実施形態のスライドスイッチ1の動作を説明するための図1(A)のIX−IX断面図である(第1閾値の力)。
【図11】図11は、それぞれ、第1実施形態のスライドスイッチ1の動作を説明するための図1(A)のIX−IX断面図である(第2閾値の力)。
【図12】図12は、それぞれ、第1実施形態のスライドスイッチ1の動作を説明するための図1(A)のIX−IX断面図である(中央スイッチ動作)。
【図13】図13(A)は、第2実施形態のベースの斜視図であり、図13(B)は、第2実施形態の弾性導電部材の斜視図である。
【図14】図14は、第2実施形態のスライドスイッチからトップカバー、復帰部材及びインナープレートを除いた構成を示す斜視図である。
【図15】図15(A)(B)は、第3実施形態のスライド部材の斜視図である。
【図16】図16(A)(B)は、第3実施形態の弾性導電部材の斜視図である。
【図17】図17は、第3実施形態のスライドスイッチの図1(A)のIX−IX断面図である。
【図18】図18は、それぞれ、第3実施形態のスライドスイッチの動作を説明するための図1(A)のIX−IX断面図である。
【図19】図19は、それぞれ、第3実施形態のスライドスイッチの動作を説明するための図1(A)のIX−IX断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0017】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
【0018】
<構成>
以下、図1〜9を用い、第1実施形態のスライドスイッチ1の構成を説明する。
【0019】
図3等に示すように、第1実施形態のスライドスイッチ1は、ベース10と、複数の導電性固定接点11a,11bと、1つの中央導電性固定接点12aと、2つの接触接点12bと、導電性可動ドーム13と、ドームシート14と、弾性導電部材15と、スライド部材16と、インナープレート17と、復帰部材18と、トップカバー19とを有する。
【0020】
ベース10は、一面が開放された、断面が略矩形の箱状形状からなる絶縁性部材であり(図8(A)(B)及び図9)、例えば、絶縁性の合成樹脂やゴム等によって一体に形成された部材である。ベース10の内部底面(ベース10の開放面側に対向する面)の中心付近には略矩形の平面領域10hが設けられ、さらにその中心付近には平面領域10hよりも深い位置に設けられた略円形の平面領域10bが配置されている。平面領域10hの外周側には、これを環状に囲む、4つの略矩形の平面領域10aと4つの略扇状の平面領域10dとが設けられている。各平面領域10aはベース10の内壁面10f側に配置され、各平面領域10dは隣り合う平面領域10aの間に配置されている。各平面領域10a,10b,10d,10h及び各支持面10caは、例えば、互いに略平行である。なお、「略平行」とは、幾何学的に完全に平行である状態又はそこから所定の許容範囲内(本発明の効果を奏する範囲で許容される範囲内)にある状態を意味する。各内壁面10f側には、それぞれ各平面領域10aと略平行な支持面10caを持つ支持部10cが設けられ、各平面領域10dの円弧状の外周には、それぞれ、ベース10の内側を向く、当該平面領域10dと略垂直な凹面である曲面領域10eが設けられている。なお、「略垂直」とは、幾何学的に完全に垂直である状態又はそこから所定の許容範囲内(本発明の効果を奏する範囲で許容される範囲内)にある状態を意味する。4つの曲面領域10eは、例えば、略周上(略円上や略楕円上など)に配置される。また、本形態ではベース10に対して定まる1つの仮想的な基準平面Aを想定する。本形態では、例えば、ベース10の内部底面の一部である各平面領域10a,10bと略平行であって、各平面領域10a,10bよりもベース10の開放面側に位置する1つの平面を基準平面Aとする(図6(B)及び図9)。
【0021】
ベース10の内部底面には、基準平面Aに対向した姿勢で、ベース10に対して固定された複数の導電性固定接点11a,11bが設けられる。本形態の例では、互いに絶縁された導電性固定接点11a,11bが各平面領域10aにそれぞれ設けられ、これらの導電性固定接点11a,11bが平面領域10hの外周側を環状に囲む(図8(A)(B),図9)。例えば、各平面領域10aが同一平面上に位置するのであれば、導電性固定接点11a,11bは、当該平面上の略周上(略円上や略楕円上など)に配置される。導電性固定接点11a,11bは、それぞれ出力端子に接続され、導電性固定接点11aと11bとの間の導通の有無を検出できる構成とされている。
【0022】
さらに、ベース10の内部底面には、基準平面Aに対向した姿勢でベース10に対して固定された中央導電性固定接点12aが設けられている。本形態では、平面領域10bの中心付近に1つの中央導電性固定接点12aが設けられている。また、中央導電性固定接点12aの両側に位置する平面領域10bの縁部分には、基準平面Aに対向した姿勢で2つの接触接点12bが設けられている。接触接点12bは中央導電性固定接点12aから絶縁されている。中央導電性固定接点12a及び接触接点12bは、それぞれ出力端子に接続され、中央導電性固定接点12aと接触接点12bとの間の導通の有無を検出できる構成とされている。
【0023】
ベース10の平面領域10bには、柔軟性を持つ導電性物質からなるドーム形状の導電性可動ドーム13が配置されている(図3,4,及び図9)。導電性可動ドーム13は、その凹面13bを中央導電性固定接点12aに対向させ、その縁部13cの一部を接触接点12bに接触させ、その凸面13aをベース10の開放面側に向けた状態で配置される。導電性可動ドーム13の凸面13aに力が加えられていない状態では、導電性可動ドーム13の凹面13bの中央付近に位置する中央導電性可動接点13baは中央導電性固定接点12aと非接触である。一方、導電性可動ドーム13の外側から凸面13aに向かって一定以上の力が加えられた場合には、導電性可動ドーム13の一部が弾性変形し、中央導電性可動接点13baが中央導電性固定接点12aに接触することで中央導電性固定接点12aと接触接点12bとを導通させる。さらに、導電性可動ドーム13の外側から凸面13aに向かう力が一定未満となった場合には、導電性可動ドーム13の形状が復元され、中央導電性可動接点13baが中央導電性固定接点12aと非接触となることで中央導電性固定接点12aと接触接点12bとが絶縁される。
【0024】
導電性可動ドーム13の凸面13a側には、絶縁性又は導電性物質からなるドーム形状のドームシート14が配置されている(図3,4,及び図9)。ドームシート14は、その凹面14bを導電性可動ドーム13の凸面13a側に向け、その凸面14aをベース10の開放面側に向けた状態で配置される。
【0025】
ドームシート14の凸面14a側にはスライド部材16が配置される(図3,図4,図6(B)及び図9)。本形態のスライド部材16は、ベース10に対し、基準平面Aに沿った方向にスライド可能なスライド部16aと、そのスライド方向に沿った一方の外面16ab側に突設された操作部16bとを含む。なお、スライド部16aのスライド方向は、例えば、基準平面Aに沿った全方位である。また、基準平面Aに沿った方向とは、基準平面Aと略平行な面内の方向であり、例えば、ベース10の内部底面と略平行な面内の方向である。本形態の場合、スライド部材16は、絶縁性の合成樹脂やゴム等によって構成され、円板状のスライド部16aと円柱状の操作部16bとが一体に形成されている。スライド部16aの外面16abとその背面側の外面16ac,16adとは基準平面Aに沿って配置される。ここで、スライド部16aの外面16ad(中央押圧部)はスライド部16aの中心付近に位置する略円形領域であり、外面16acは外面16adの外周側に位置する環状領域であり、当該外面16ac,16adはドームシート14の凸面14a側に対向した姿勢で配置される。また、スライド部16aの外面16abはベース10の開放面側に向けられ、外縁部16aa(スライド押圧部)は当該スライド部16aのスライド方向に向けられている。また、操作部16bは、スライド部16aに近い第1領域と、第1領域よりも先端部側に位置し、第1領域よりも小径の第2領域とを含み、当該第1領域の外周側面16ba及び第2領域の外周側面16bbは、ともにスライド部16aのスライド方向を向く。
【0026】
スライド部材16のスライド部16aの外周側には、導電性ゴム等の弾性導電材料からなる弾性導電部材15が配置される(図3,図4,図6(B),図7(A)(B)及び図9)。弾性導電部材15は、ベース10の支持面10caに支持された支持部15aaと、当該支持部15aa側から基準平面Aに沿ってスライド部16a側に延長された複数(図7(A)等の例では4つ)のプッシャー部15aとを含む。本形態の各プッシャー部15aは、それぞれ板状や舌状等に形成され、スライド部16aの外周側を環状に取り囲む(図6(B))。弾性導電部材15は、さらに、隣り合うプッシャー部15aをつなぐ弾性体からなる腕部15bと、当該腕部15bから基準平面Aに沿ってスライド部16a側に突設された凸部15cとをさらに含む。各凸部15cの先端部15caは基準平面Aと略垂直な凸曲面となっており、各凸部15cはスライド部16aの外周側に配置されてスライド部16aの外周側を環状に取り囲み、各凸部15cの先端部15caは同一の略周上(例えば、図6のE上)に配置される。なお、「略周上」とは、略円上や略楕円上などを意味し、幾何学的に正確な円上や楕円上などだけではなく、そこから所定の許容範囲内(本発明の効果を奏する範囲で許容される範囲内)をも含む概念である。弾性導電部材15は、さらに、各プッシャー部15aの延長方向に沿った両側面15af,15agの一部分(支持部15aa側の一部分)から腕部15bに渡る弾性体からなる板状の側面支持部15e,15fを含む(図7(A)(B))。側面支持部15e,15fは、その板面が基準平面Aに沿った姿勢でプッシャー部15aの両側面15af,15agの一部を支持する。これらの側面支持部15e,15fの板厚(基準平面Aと略垂直方向の板厚)は、プッシャー部15aの厚み(基準平面Aと略垂直方向の厚み)よりも薄い。なお、本形態の弾性導電部材15は、環状の一体形成部材であり、腕部15bや側面支持部15e,15fは、それぞれ、環状に配置される部位の一部であり、複数のプッシャー部15aや凸部15cは、それぞれ、弾性導電部材15の内周側に突起した部位である。
【0027】
弾性導電部材15は、各プッシャー部15aの各支持部15aaがベース10の各支持面10caに支持され、曲面領域10eに沿って配置された腕部15bが平面領域10dに支持された状態で、ベース10内に配置される(図6(B),図7(A)(B)及び図9)。各プッシャー部15aの延長方向に沿った当該プッシャー部15aの外面の一部は、何れかの導電性固定接点11a,11bの組に対向配置される対向面15abであり、当該対向面15ab側には当該導電性固定接点11a,11bと非接触に対向配置される導電性可動接点が存在する。本形態の例では、対向面15abの一部が導電性可動接点となっている。プッシャー部15aの対向面15abの背面15acと当該プッシャー部15aの先端部15adとの間には、第1面取形状部15aeが設けられている(図7(A)及び図9)。例えば、プッシャー部15aは、背面15acから先端部15adに向かって、傾斜又は湾曲した平面又は凸曲面である第1面取形状部15aeを含む。この第1面取形状部15aeと対向面15abとの間の距離は先端部15adに近づくほど短い。また、プッシャー部15aの各側面15af,15agと当該プッシャー部15aの先端部15adとの間には、それぞれ、側面面取形状部15aj,15akが設けられている。例えば、プッシャー部15aは、側面15afから先端部15adに向かって傾斜又は湾曲した平面又は凸曲面である側面面取形状部15ajと、先端部15adから側面15agに向かって傾斜又は湾曲した平面又は凸曲面である側面面取形状部15akとを含む。さらに、プッシャー部15aは、第1面取形状部15aeの側面15ag,15af側の縁部に設けられた第2面取形状部15ahを含む。例えば、プッシャー部15aは、第1面取形状部15aeから、側面15af、側面面取形状部15aj、先端部15ad、側面面取形状部15ak及び側面15agに向かって傾斜又は湾曲した平面又は凸曲面である第2面取形状部15ahを含む。なお、「面取形状」は、その形状のみを特定するための用語であり、その形状を得るための製造方法や加工方法を限定するものではない。
【0028】
スライド部材16の外面16ab及び弾性導電部材15の背面15ac側にはインナープレート17が配置される(図3,図4,図6(A)及び図9)。インナープレート17は、金属等の剛体から構成された略矩形の板であり、その中心部に開口部の形状が円状の貫通孔17aが設けられている。ここで、前述したスライド部材16の操作部16bの外径(外周側面16baが位置する第1領域の外径)はインナープレート17の貫通孔17aの内径よりも小さく、スライド部材16のスライド部16aの外径はインナープレート17の貫通孔17aの内径よりも大きい。スライド部材16の外面16ab側に配置されたインナープレート17は、その貫通孔17aに操作部16bが挿入され、貫通孔17aの内壁17bが操作部16bの外周側面16baの外周側を(距離を空けて)取り囲む姿勢で配置される(図6(A))。また、インナープレート17の一方の面側に位置する辺縁面17cは、弾性導電部材15の背面15acの根元側(弾性導電部材15の外周側)に位置する支持面15acaに接し、プッシャー部15aの根元側(弾性導電部材15の外周側)を支持する(図9)。また、インナープレート17の外周部17dは、ベース10の内壁面10fに接した状態で、インナープレート17はベース10に対して固定されている。
【0029】
インナープレート17の外面側には、復帰部材18が配置される(図3,図4,図5(B)及び図9)。復帰部材18は、ゴム等の弾性体から構成された略矩形の板であり、その中心部に開口部の形状が円状の貫通孔18aが設けられ、その周囲が略ドーム状の弾性ドーム部18cとなっている。ここで、前述したスライド部材16の操作部16bの外径(外周側面16bbが位置する第2領域の外径)は復帰部材18の貫通孔18aの内径とほぼ同じである。インナープレート17の外面側に配置された復帰部材18は、その貫通孔18aに操作部16bが挿入され、貫通孔18aの内周部18bが操作部16bの外周側面16bbを取り囲む姿勢で配置される(図5(B)及び図9)。
【0030】
復帰部材18の外面側には、トップカバー19が配置される(図3,図4,図5(A)及び図9)。トップカバー19は、金属等の剛体から構成された略矩形の板であり、その中心部に開口部の形状が円状の貫通孔19aが設けられている。貫通孔19aの内径は、復帰部材18の弾性ドーム部18cの外径と同程度であり、トップカバー19は、その貫通孔19aに弾性ドーム部18cを配置した姿勢で復帰部材18の外面側に配置され、ベース10にかしめられる。
【0031】
<動作>
スライド部材16のスライド部16aは、操作部16bの操作に応じ、基準平面Aに沿った方向にスライドする。図9から図11に例示するように、スライド部16aが基準平面Aに沿った方向(例えば、方向B)にスライドした場合、スライド部16aの外縁部16aaは、スライド先に位置する何れかのプッシャー部15aに当接する。そして、この状態でさらにスライド部16aが基準平面Aに沿った方向にスライドすることで、スライド部16aの外縁部16aaが当該プッシャー部15aを弾性変形させて対向面15abの導電性可動接点を、それに対向配置された導電性固定接点11a,11bに接触させる。より具体的には、スライド部16aの外縁部16aaは、例えば、そのスライド先に位置する何れかのプッシャー部15aの第1面取形状部15ae,第2面取形状部15ahに当接し、当該第1及び2面取形状部15ae,15ahに当接しながら基準平面Aに沿った方向にさらにスライドすることで、当該プッシャー部15aをその導電性可動接点に対向配置された導電性固定接点11a,11b側に誘導し、当該プッシャー部15aの導電性可動接点を当該導電性固定接点11a,11bに接触させる。この時、スライド部16aには上方向(インナープレート17方向)への変位が発生するが、スライド部16aはインナープレート17の内側の面にほぼ点接触で当接し、上方向への変位が抑制されながらスライドするため、スムーズなスライド動作をすることが可能となる。これにより、当該プッシャー部15aを介して当該導電性固定接点11a,11bの組が導通し、スライド部16aのスライド方向の検出が可能となる。
【0032】
ここで、本形態の導電性固定接点11a,11bは基準平面Aに対向した姿勢で配置され、スライド部16aのスライド方向は基準平面Aに沿った方向である。また、プッシャー部15aの導電性可動接点は、基準平面Aに沿って延長されたプッシャー部15aの延長方向に沿った対向面15ab側に存在する。よって、本形態では、スライド部のスライド先となる位置に、当該スライド部のスライド方向と略垂直な板ばね(可動接点を含む)と固定接点とを対向配置させることに起因する、前述した特許文献1の構成での問題は生じず、スライドスイッチ1の薄型化が可能となる。
【0033】
また、本形態のスライド部16aは基準平面Aに沿った方向にスライドし、何れかのプッシャー部15aに当接し、この状態でさらに基準平面Aに沿った方向にスライドすることで当該プッシャー部15aを弾性変形させてその対向面15abの導電性可動接点を導電性固定接点11a,11bに接触させる。よって、本形態では、周縁用押圧部材(スライド部に対応)が回動することに起因する、前述した特許文献2の構成での問題は生じず、スライドスイッチ1の薄型化が可能となる。
【0034】
また、本形態のプッシャー部15aは、スライド部16aの外周側に配置されてベース10に支持された支持部15aa側から、基準平面Aに沿ってスライド部16a側に延長される。本形態のスライド部16aの外縁部16aaは、基準平面Aに沿った方向にスライドすることでそのスライド先に位置する何れかのプッシャー部15aに当接し、この状態でさらに基準平面Aに沿った方向にスライドすることでプッシャー部の対向面の背面側に移動する。よって、本形態では、周縁用押圧部材(スライド部に対応)が周縁用可動電極の筐体の支持部に支持された側から筐体に支持されていない側へ摺動することに起因する、前述した特許文献2の構成での問題は生じず、スライドスイッチ1の薄型化が可能となる。
【0035】
また、弾性導電部材15を一体形成したため、部品点数削減及び組立工数削減が実現できる。
【0036】
なお、上述のようにスライド部16aの外縁部16aaがプッシャー部15aを弾性変形させてその対向面15abの導電性可動接点を導電性固定接点11a,11bに接触させるためには、プッシャー部15aに当接したスライド部16aを第1閾値以上の力でさらに基準平面Aに沿った方向にスライドさせる必要がある。ここで、スライド部16aは操作部16bをインナープレート17の貫通穴17aに挿入させた状態で基準平面Aに沿った方向にスライドされるが、第1閾値の力でスライド部16aが基準平面Aに沿った任意の方向にスライドされた場合、スライド部16aがプッシャー部15a及び/又は凸部15cに支持されることで、操作部16bの外周側面16baはインナープレート17の貫通穴17aの内壁17bに接触せず(例えば、図10参照)、第1閾値よりも大きな第2閾値以上の力でスライド部16aが基準平面Aに沿った方向にスライドされた場合、操作部16bの外周側面16baはインナープレート17の貫通穴17aの内壁17bに当接して当該インナープレート17に支持される(例えば、図11参照)。
【0037】
ここで、プッシャー部15aに当接したスライド部16aの外縁部16aaを第1閾値以上第2閾値未満の力で基準平面Aに沿った方向にスライドさせた場合には、プッシャー部15aの対向面15abの導電性可動接点が導電性固定接点11a,11bに接触するが、操作部16bの外周側面16baはインナープレート17の貫通穴17aの内壁17bに接触しない。これにより、操作部16bの操作に伴って、合成樹脂等の操作部16bの外周側面16baが剛体であるインナープレート17の貫通穴17aの内壁17bによって削られ、塵が発生することを抑制できる。その結果、このように発生した塵がベース10内に侵入することで生じる接触不良等を抑制できる。
【0038】
一方、第1閾値よりも大きな第2閾値以上の力でスライド部16aが基準平面Aに沿った方向にスライドされた場合に、操作部16bの外周側面16baがインナープレート17の貫通穴17aの内壁17bに当接して剛体である当該インナープレート17に支持されることで、スライド部16aによって必要以上の力がプッシャー部15a及び/又は凸部15cに加えられ、弾性導電部材15がベース10から外れたり、プッシャー部15aや凸部15c等の復元力が劣化したりすることを防止できる。
【0039】
また、スライドスイッチ1の操作として、スライド部材16の操作部16bの軸が基準平面Aに沿って環状に移動するように操作部16bを操作し、基準平面Aに沿った略周上を移動するようにスライド部16aをスライドさせ、各プッシャー部15aの対向面15abの導電性可動接点を、順次、それぞれに対向する各導電性固定接点11a,11bに接触させていくことが想定される(環状操作)。本形態の弾性導電部材15は、隣り合うプッシャー部15aをつなぐ弾性体からなる腕部15bと、当該腕部15bから基準平面Aに沿ってスライド部16a側に突設された凸部15cとをさらに含み、当該凸部15cは、スライド部16aの外周側に配置されてスライド部16aの外周側を環状に取り囲むこととしたため、凸部15cが存在しない場合に比べてこのような環状操作を滑らかに行うことができる。このような環状操作において、スライド部16aの外縁部16aaを、プッシャー部15aだけではなく凸部15cにも当接させることができるからである。
【0040】
また、本形態のプッシャー部15aは、第1面取形状部15aeの側面15ag,15af側の縁部に設けられた第2面取形状部15ahを含むため、このような操作部16bの略周上での操作に応じ、スライド部16aの外縁部16aaがプッシャー部15aの側面15ag,15af側や側面面取形状部15aj,15ak側からプッシャー部15aに当接する場合であっても、スライド部16aの外縁部16aaが滑らかに各プッシャー部15aの背面15ac側に潜り込み、当該プッシャー部15aの対向面15abの導電性可動接点を、それに対向する導電性固定接点11a,11bに接触させることができる。さらに、本形態のプッシャー部15aの各側面15af,15agと当該プッシャー部15aの先端部15adとの間には、それぞれ、側面面取形状部15aj,15akが設けられているため、上述の環状操作を滑らかに行うことができる。また、本形態の凸部15cは、弾性体からなる腕部15bに形成されているため、上述の環状操作において、スライド部16aの外縁部16aaを柔軟に支持することができる。これにより、上述の環状操作を滑らかに行うことができる。
【0041】
また、好ましくは、プッシャー部15aの対向面15abの導電性可動接点が各導電性固定接点11a,11bに接触した際における、当該プッシャー部15aに当接したスライド部16aのスライド方向を向くスライド部16aの外縁部16aaは、複数の凸部15cの先端部15caを通る略周上(例えば、図6のE上)に位置する。このような構成となるように凸部15cの突出量等を設定することにより、より滑らかな環状操作が可能となる。
【0042】
また、より好ましくは、プッシャー部15aに当接したスライド部16aを第1閾値以上第2閾値未満の力で基準平面Aに沿った方向にスライドさせ、プッシャー部15aの対向面15abの導電性可動接点が各導電性固定接点11a,11bに接触した際における、当該プッシャー部15aに当接したスライド部16aのスライド方向を向くスライド部16aの外縁部16aaは、複数の凸部15cの先端部15caを通る略周上(例えば、図6のE上)に位置する。これにより、上述した操作部16bの略周上での操作に伴って、操作部16bの外周側面16baが剛体であるインナープレート17の貫通穴17aの内壁17bによって削られることを防止できる。
【0043】
また、利用者によってスライド部材16の操作部16bに加えられていた力が開放されると、復帰部材18は、その弾性ドーム部18cの弾性力によってスライド部16aを中央導電性固定接点12aと導電性可動ドーム13とを通る直線C(中央導電性固定接点と中央導電性可動接点とを通る直線C)上の位置に復帰させる(図9)。
【0044】
前述のように、スライド部16aは、直線C上に配置可能であり、直線C上に配置されたスライド部16aと中央導電性固定接点12aとの間に中央導電性可動接点13baが配置される。そして、当該直線C上に配置されたスライド部16aを中央導電性可動接点13ba側(図12のD方向)へ移動させることにより、中央導電性可動接点13baが中央導電性固定接点12a側に押圧され、当該中央導電性可動接点13baと当該中央導電性固定接点12aとが接触する。ここで、直線C上に配置されたスライド部16aと、複数のプッシャー部15aとの間には、それぞれ隙間が存在する。言い換えると、直線C上に配置されたスライド部16aは、弾性導電部材15と非接触である。これにより、直線C上に配置されたスライド部16aを中央導電性可動接点13ba側(図12のD方向)へ移動させる際に、スライド部16aがプッシャー部15aに接触しプッシャー部15aの対向面15abの導電性可動接点が各導電性固定接点11a,11bに接触することを防止できる。
【0045】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を説明する。本形態は、第1実施形態の変形例であり、弾性導電部材15が凸部15cを持つのではなく、ケースに凸部が形成された形態である。すなわち、本形態では、隣り合うプッシャー部の間には、ベースに対する相対位置が固定された基準部から基準平面に沿ってスライド部側に突設された凸部がさらに設けられ、当該凸部は、スライド部の外周側に配置されてスライド部の外周側を環状に取り囲む。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、共通する部分については説明を省略する。また、各図において第1実施形態と共通する部分については第1実施形態と同じ符号を用いる。
【0046】
図13(A)は、第2実施形態のベース20の斜視図であり、図13(B)は、第2実施形態の弾性導電部材25の斜視図である。また、図14は、本形態のスライドスイッチからトップカバー19、復帰部材18及びインナープレート17を除いた構成を示す斜視図である。
【0047】
第1実施形態との相違点は、弾性導電部材15が弾性導電部材25に置換され、ベース10がベース20に置換された点である。
【0048】
第2実施形態のベース20は、一面が開放された断面が略矩形の箱状形状からなる絶縁性部材であり(図13(A)及び図14)、例えば、絶縁性の合成樹脂やゴム等によって一体に形成された部材である。第1実施形態のベース10では、当該ベース10の内側の4角付近にベース10の内側を向く、当該平面領域10eと略垂直な凹面である曲面領域10eが設けられていた。しかし、第2実施形態のベース20では、ベース20の内側の4角付近に、それぞれ、その内壁面20fから一定の距離を空けて配置された基準部20eが設けられ、各基準部20eのベース20の内側を向く面が基準平面Aと略垂直な凸面である凸部20eaとされている(図13(A))。本形態の各凸部20eaは、それぞれ、基準平面Aに沿った1つの略周上(例えば、図13のF上)に配置される。また、ベース20の内壁面20fに隣接する基準平面Aに沿った内側底面には、弾性導電部材25を支持する支持面20caが設けられている。ベース20のその他の構成は、第1実施形態のベース10と同様である。
【0049】
第2実施形態の弾性導電部材25は、導電性ゴム等の弾性導電材料からなる略矩形の環状の一体形成部材である(図13及び図14)。弾性導電部材25は、ベース20の支持面20caに支持された支持部15aaと、当該支持部15aa側から基準平面Aに沿ってスライド部16a側に延長された複数(図13(B)及び図14の例では4つ)のプッシャー部15aとを含む。本形態の各プッシャー部15aは、それぞれ板状や舌状等に形成され、弾性導電部材25がベース20の内部に配置されることで、スライド部16aの外周側を環状に取り囲む(図14)。弾性導電部材25は、さらに、隣り合うプッシャー部15aをつなぐ弾性体からなる腕部25bをさらに含む。弾性導電部材25がベース20の内部に配置される際、各腕部25bが内壁面20fと基準部20eと支持面20caとによって位置決め支持される。ベース20の内部に配置された弾性導電部材25の隣り合うプッシャー部15aの間には、ベース20に対する相対位置が固定された基準部20eから基準平面Aに沿ってスライド部16a側に突設された凸部20eaが、それぞれ配置され、これらの凸部20eaは、スライド部16aの外周側に配置されてスライド部16aの外周側を環状に取り囲む。各凸部20eaの機能は、第1実施形態の各凸部10eaの機能と同様である。例えば、プッシャー部15aの対向面15abの導電性可動接点が導電性固定接点11a,11bに接触した際における、当該プッシャー部15aに当接したスライド部16aのスライド方向を向く当該スライド部16aの外縁部16aaが、複数の凸部20eaの先端部を通る略周上(例えば、図13のF上)に位置することとすれば、前述の環状操作を滑らかに行うことが可能となる。
【0050】
〔第3実施形態〕
次に、図15〜図19を用い、本発明の第3実施形態を説明する。本形態のスライド部は、そのスライド方向に沿った当該スライド部の外面とそのスライド方向を向く当該スライド部の外縁部との間に第3面取形状部を含む。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、共通する部分については説明を省略する。また、各図において第1実施形態と共通する部分については第1実施形態と同じ符号を用いる。
【0051】
<構成>
第1実施形態との相違点は、スライド部材16がスライド部材36に置換され、弾性導電部材15が弾性導電部材35に置換された点である。
【0052】
本形態のスライド部材36は、ベース10に対し、基準平面Aに沿った方向にスライド可能なスライド部36aと、そのスライド方向に沿った一方の外面16ab側に突設された操作部16bとを含む(図15(A)(B)及び図17)。なお、スライド部36aのスライド方向は、例えば、基準平面Aに沿った全方位である。本形態の場合、スライド部材36は、絶縁性の合成樹脂やゴム等によって構成され、円板状のスライド部36aと円柱状の操作部16bとが一体に形成されている。スライド部36aの外面16abとその背面側の外面36ac,16adとは基準平面Aに沿って配置される。ここで、スライド部36aの外面36acは外面16adの外周側に位置する環状領域であり、当該外面36ac,16adはドームシート14の凸面14a側に対向した姿勢で配置される。また、スライド部36aの外面16abはベース10の開放面側に向けられ、外縁部36aaは当該スライド部36aのスライド方向に向けられている。また、本形態のスライド部36aは、そのスライド方向に沿った当該スライド部36aの外面36acとそのスライド方向を向く当該スライド部36aの外縁部36aaとの間に第3面取形状部36aeを含む。例えば、スライド部36aは、外面36acから外縁部36aaに向かって、傾斜又は湾曲した平面又は凸曲面である第3面取形状部36aeを含む。
【0053】
スライド部材36のスライド部36aの外周側には、導電性ゴム等の弾性導電材料からなる弾性導電部材35が配置される(図16(B)及び図17)。弾性導電部材35は、ベース10の支持面10caに支持された支持部35aaと、当該支持部35aa側から基準平面Aに沿ってスライド部36a側に延長された複数(図16(A)等の例では4つ)のプッシャー部35aとを含む。本形態の各プッシャー部35aは、それぞれ板状や舌状等に形成され、スライド部36aの外周側を環状に取り囲む。
【0054】
弾性導電部材35は、第1実施形態と同様、各プッシャー部35aの各支持部35aaがベース10の各支持面10caに支持され、曲面領域10eに沿って配置された腕部15bが平面領域10dに支持された状態で、ベース10内に配置される。各プッシャー部35aの延長方向に沿った当該プッシャー部35aの外面の一部は、何れかの導電性固定接点11a,11bの組に対向配置される対向面35abであり、当該対向面35abは当該導電性固定接点11a,11bと非接触に対向配置される導電性可動接点を含む。その他、プッシャー部35aは、対向面35abの背面35acと、当該プッシャー部35aの先端部35ad、各プッシャー部35aの延長方向に沿った側面35af,35agとを含む。また、本形態のプッシャー部35aも第1実施形態のプッシャー部15aと同様の面取形状部を持っていてもよいが、本形態では、スライド部36aが第3面取形状部36aeを持つため、必ずしもプッシャー部35aに面取形状部を設ける必要はない。弾性導電部材35のその他の構成は、第1実施形態の弾性導電部材15と同様であり、弾性導電部材35は、第1実施形態と同様、環状の一体形成部材である。
【0055】
<動作>
次に、図17から図19を用いて、第3実施形態のスライドスイッチ3の動作を説明する。
【0056】
スライド部材36のスライド部36aは、操作部16bの操作に応じ、基準平面Aに沿った方向にスライドする。図17から図19に例示するように、スライド部36aが基準平面Aに沿った方向(例えば、方向B)にスライドした場合、スライド部36aの外縁部36aa又は第3面取形状部36aeは、スライド先に位置する何れかのプッシャー部35aに当接する。そして、この状態でさらにスライド部36aが基準平面Aに沿った方向にスライドすることで、スライド部36aの外縁部36aaや第3面取形状部36aeが当該プッシャー部35aを弾性変形させて対向面35abの導電性可動接点を、それに対向配置された導電性固定接点11a,11bに接触させる。より具体的には、スライド部36aは、そのスライド先に位置する何れかのプッシャー部35aの対向面35abの背面35ac側に第3面取形状部36aeを当接させ、当該第3面取形状部36aeを当該背面35acに当接させながら基準平面Aに沿った方向にさらにスライドすることで、当該プッシャー部35aをその対向面35abの導電性可動接点に対向配置された導電性固定接点11a,11b側に誘導し、当該導電性可動接点を当該導電性固定接点11a,11bに接触させる。これにより、当該プッシャー部35aを介して当該導電性固定接点11a,11bの組が導通し、スライド部36aのスライド方向の検出が可能となる。
【0057】
このように本形態ではスライド部36aに第3面取形状部36aeを設けたため、プッシャー部35aに面取形状部を設けなくても第1実施形態と同様な効果を得ることができる。また、第1実施形態と同様、第1閾値の力でスライド部36aが基準平面Aに沿った任意の方向にスライドされた場合、スライド部36aや第3面取形状部36aeがプッシャー部35a及び/又は凸部15cに支持されることで、操作部16bの外周側面16baはインナープレート17の貫通穴17aの内壁17bに接触せず(例えば、図18参照)、第1閾値よりも大きな第2閾値以上の力でスライド部36aが基準平面Aに沿った方向にスライドされた場合、操作部16bの外周側面16baはインナープレート17の貫通穴17aの内壁17bに当接して当該インナープレート17に支持される(例えば、図19参照)。ここで、プッシャー部35aに当接したスライド部36aを第1閾値以上第2閾値未満の力で基準平面Aに沿った方向にスライドさせた場合には、プッシャー部35aの対向面35abの導電性可動接点が導電性固定接点11a,11bに接触するが、操作部16bの外周側面16baはインナープレート17の貫通穴17aの内壁17bに接触しない。これにより、操作部16bの操作に伴って、操作部16bの外周側面16baが剛体であるインナープレート17の貫通穴17aの内壁17bによって削られることを抑制できる。一方、第1閾値よりも大きな第2閾値以上の力でスライド部36aが基準平面Aに沿った方向にスライドされた場合に、操作部16bの外周側面16baがインナープレート17の貫通穴17aの内壁17bに当接して剛体である当該インナープレート17に支持されることで、スライド部36aによって必要以上の力がプッシャー部35a及び/又は凸部15cに加えられ弾性導電部材35がベース10から外れたり、プッシャー部35aや凸部35c等の復元力が劣化したりすることを防止できる。その他の動作及び特徴は第1実施形態と同様である。
【0058】
〔その他の変形例〕
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではない。例えば、プッシャー部、凸部、固定/可動接点等の数は上述の各実施形態に限定されず、例えば、2,3又は5以上のプッシャー部を有する構成であってもよい。また、スライド部の基準平面Aに沿ったスライド方向が制限されていてもよい。例えば、スライド部が基準平面Aに沿って2つの方向のみスライドする構成であってもよい。また、第1,2実施形態においてプッシャー部15aが面取形状部15ak(第2面取形状部)や面取形状部15ad,15akを有しない構成であってもよい。その他、プッシャー部が円柱等の柱状に形成されてもよく、また、弾性導電部材が一体に形成されず、複数の部品から構成されてもよい。また、上記実施形態では、プッシャー部の対向面15ab,35abの一部が導電性可動接点となっていた。しかし、プッシャー部15a,35aの対向面15ab,35abに突設された部位の一部が導電性可動接点であってもよいし、対向面15ab,35ab側に固着された部位の一部が導電性可動接点であってもよい。また、対向面15ab,35abは平面であってもよいし、曲面であってもよいし、凹凸面であってもよい。また、第1実施形態のプッシャー部15aは、第1面取形状部15aeの側面15ag,15af側の縁部に第2面取形状部15ahが設けられていたが、背面15acの側面15ag,15af側の縁部に第2面取形状部15ahが設けられてもよい。また、少なくとも一部の凸部15c,20eaが存在しない構成でもよい。
【符号の説明】
【0059】
1,3 スライドスイッチ
10,20 ベース
11a,11b 導電性固定接点
12a 中央導電性固定接点
12b 接触接点
13 導電性可動ドーム
13ba 中央導電性可動接点
14 ドームシート
15,25,35 弾性導電部材
15a,35a プッシャー部
15c,20ea 凸部
15aa,35aa 支持部
15ab,35ab 対向面(導電性可動接点を含む)
15ac,35ac 背面
15b,25b 腕部
15ae 第1面取形状部
15ah 第2面取形状部
15aj,15ak 側面面取形状部
36ae 第3面取形状部
16,36 スライド部材
16a,36a スライド部
16b 操作部
17 インナープレート
17a 貫通孔
17b 内壁
18 復帰部材
19 トップカバー
A 基準平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに対して定まる基準平面に対向した姿勢で、前記ベースに対して固定された複数の導電性固定接点と、
前記ベースに対し、前記基準平面に沿った方向にスライドするスライド部と、
前記スライド部の外周側に配置されて前記ベースに支持された支持部と、前記支持部側から前記基準平面に沿って前記スライド部側に延長された複数のプッシャー部とを含む、弾性導電部材と、を有し、
前記プッシャー部の延長方向に沿った前記プッシャー部の外面の一部は、何れかの前記導電性固定接点に対向配置される対向面であり、前記対向面側には前記導電性固定接点と非接触に対向配置される導電性可動接点が存在し、
前記スライド部は、前記基準平面に沿った方向にスライドすることでそのスライド先に位置する何れかの前記プッシャー部に当接し、この状態でさらに前記基準平面に沿った方向にスライドすることで前記プッシャー部を弾性変形させて、その前記導電性可動接点を、それに対向配置された前記導電性固定接点に接触させる、
ことを特徴とするスライドスイッチ。
【請求項2】
請求項1のスライドスイッチであって、
前記弾性導電部材は、環状の一体形成部材であり、
複数の前記プッシャー部は、それぞれ、前記弾性導電部材の内周側に突起した部位であり、
複数の前記プッシャー部は、前記スライド部の外周側を環状に取り囲む、
ことを特徴とするスライドスイッチ。
【請求項3】
請求項1又は2のスライドスイッチであって、
前記プッシャー部は、前記対向面の背面と前記プッシャー部の先端部との間に設けられた第1面取形状部を含み、
前記スライド部は、そのスライド先に位置する何れかの前記プッシャー部の前記第1面取形状部に当接し、前記第1面取形状部に当接しながら前記基準平面に沿った方向にさらにスライドすることで、前記プッシャー部をその前記導電性可動接点に対向配置された導電性固定接点側に誘導し、前記導電性可動接点を前記導電性固定接点に接触させる、
ことを特徴とするスライドスイッチ。
【請求項4】
請求項1から3の何れかのスライドスイッチであって、
前記プッシャー部は、前記対向面とその背面と先端部と前記プッシャー部の延長方向に沿った側面とを含む形状に形成され、
前記プッシャー部は、さらに、前記背面の前記側面側の縁部及び/又は前記第1面取形状部の前記側面側の縁部に設けられた第2面取形状部を含む、
ことを特徴とするスライドスイッチ。
【請求項5】
請求項1から4の何れかのスライドスイッチであって、
前記スライド部は、そのスライド方向に沿った前記スライド部の外面とそのスライド方向を向く前記スライド部の外縁部との間に第3面取形状部を含み、
前記スライド部は、そのスライド先に位置する何れかの前記プッシャー部の前記対向面の背面側に前記第3面取形状部を当接させ、前記第3面取形状部を前記背面に当接させながら前記基準平面に沿った方向にさらにスライドすることで、前記プッシャー部をその前記導電性可動接点に対向配置された導電性固定接点側に誘導し、前記導電性可動接点を前記導電性固定接点に接触させる、
ことを特徴とするスライドスイッチ。
【請求項6】
請求項1から5の何れかのスライドスイッチであって、
複数の前記プッシャー部は、前記スライド部の外周側を環状に取り囲み、
隣り合う前記プッシャー部の間には、前記ベースに対する相対位置が固定された基準部から前記基準平面に沿って前記スライド部側に突設された凸部がさらに設けられ、前記凸部は、前記スライド部の外周側に配置されて前記スライド部の外周側を環状に取り囲む、
ことを特徴とするスライドスイッチ。
【請求項7】
請求項1から5の何れかのスライドスイッチであって、
複数の前記プッシャー部は、前記スライド部の外周側を環状に取り囲み、
前記弾性導電部材は、隣り合う前記プッシャー部をつなぐ弾性体からなる腕部と、前記腕部から前記基準平面に沿って前記スライド部側に突設された凸部とをさらに含み、前記凸部は、前記スライド部の外周側に配置されて前記スライド部の外周側を環状に取り囲む、
ことを特徴とするスライドスイッチ。
【請求項8】
請求項6又は7のスライドスイッチであって、
前記導電性可動接点が前記導電性固定接点に接触した際における、前記プッシャー部に当接した前記スライド部のスライド方向を向く前記スライド部の外縁部は、複数の前記凸部の先端部を通る略周上に位置する、
ことを特徴とするスライドスイッチ。
【請求項9】
請求項6から8の何れかのスライドスイッチであって、
前記基準平面に沿った姿勢で前記ベースに対して固定された剛体の板であるインナープレートをさらに有し、前記インナープレートには貫通穴が設けられ、
前記スライド部のスライド方向に沿った前記スライド部の一方の外面側に突設された操作部を含み、前記操作部の外径は前記インナープレートの貫通穴の内径よりも小さく、前記スライド部は前記操作部を前記インナープレートの貫通穴に挿入させた状態で前記基準平面に沿った方向にスライドされ、
前記プッシャー部を弾性変形させてその前記導電性可動接点を前記導電性固定接点に接触させるためには、前記プッシャー部に当接した前記スライド部を第1閾値以上の力でさらに前記基準平面に沿った方向にスライドさせる必要があり、
前記第1閾値の力で前記スライド部が前記基準平面に沿った任意の方向にスライドされた場合、前記スライド部が前記プッシャー部及び/又は前記凸部に支持されることで、前記操作部は前記インナープレートの貫通穴の内壁に接触せず、
前記第1閾値よりも大きな第2閾値以上の力で前記スライド部が前記基準平面に沿った方向にスライドされた場合、前記操作部は前記インナープレートの貫通穴の内壁に当接して前記インナープレートに支持される、
ことを特徴とするスライドスイッチ。
【請求項10】
請求項1から9の何れかのスライドスイッチであって、
前記基準平面に対向した姿勢で前記ベースに対して固定された中央導電性固定接点と、
前記中央導電性固定接点と非接触に対向配置される中央導電性可動接点と、を有し、
前記スライド部は、前記中央導電性固定接点と前記中央導電性可動接点とを通る直線上に配置可能であり、前記直線上に配置された前記スライド部と前記中央導電性固定接点との間に前記中央導電性可動接点が配置され、前記直線上に配置された前記スライド部を前記中央導電性可動接点側へ移動させることにより、前記中央導電性可動接点が前記中央導電性固定接点側に押圧され、前記中央導電性可動接点と前記中央導電性固定接点とが接触し、
前記直線上に配置された前記スライド部と、複数の前記プッシャー部との間には、それぞれ隙間が存在する、
ことを特徴とするスライドスイッチ。
【請求項11】
請求項10のスライドスイッチであって、
弾性力によって前記スライド部を前記直線上の位置に復帰させる復帰部材をさらに有する、
ことを特徴とするスライドスイッチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−100552(P2011−100552A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252696(P2009−252696)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】