説明

スライドドア構造

【課題】車体の重量増加を抑えつつ、スライドドアがキャビンに侵入することを抑制することができるスライドドア構造を得る。
【解決手段】車幅方向外側に突出して形成された第1凸部46をロッカ16に設けると共に、第1凸部46と対向する位置に配置された平面部50Aと該平面部50Aの下方側に配置されかつ車幅方向内側に突出して形成された第2凸部56をスライドドア14に設けた。その結果、側面衝突による衝突荷重がスライドドア14に加わったとしても、先ずロッカ16に設けた第1凸部46とスライドドア14に設けた平面部50Aとが当接し、次いで第2凸部56が第1凸部46に係止されることにより、スライドドア14がキャビン26に侵入することを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のスライドドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体の側面に設けられたスライドドアが側面衝突による衝突荷重を受けた場合において、該スライドドアがキャビンに侵入することを抑制する構造が知られている。例えば、下記特許文献1には、スライドドアの下部に設けられた引っ掛けビードをロッカーレールのガイド溝の上縁に係合させて、スライドドアがキャビンに侵入することを抑制する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−081853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構造では、ドアインナパネルが大きく変形すると、引っ掛けビードとロッカーレールのガイド溝の上縁との係合が外れてしまい、スライドドアがキャビンに侵入することを充分に抑制できないことが考えられる。そのため、スライドドアがキャビンに侵入することを抑制するために、インパクトビーム等の補強部材をスライドドアのドアインナパネルとドアアウタパネルとの間に余分に設定して、スライドドア全体の強度及び剛性を上げることが考えられる。この場合、スライドドア全体の重量の増加を招き、ひいては車体全体の重量の増加を招く。
【0005】
上記事実に鑑み、本発明は、車体の重量の増加を抑制しつつ、側面衝突の際にスライドドアがキャビンに侵入することを抑制することができるスライドドア構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係るスライドドア構造は、ドア枠に収容されキャビンと車外側とを開閉可能に隔成するスライドドアと、前記ドア枠の下部を構成すると共に、車幅方向外側に開口したU字状の閉断面を形成するロッカと、前記ロッカの車幅方向外側に突出して設けられかつ複数の角部を有する第1凸部と、前記スライドドアのドアインナパネルにおける前記第1凸部と対向する位置に設けられた平面部と、前記ドアインナパネルにおける前記平面部の下方に設けられ、車幅方向内側に突出しかつ複数の角部を有する第2凸部と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項1に係る本発明では、スライドドアが側面衝突による衝突荷重を受けて、スライドドアがキャビンに向けて変形及び移動すると、先ずロッカに設けられた第1凸部と、スライドドアに設けられた平面部とが当接する。さらにスライドドアがキャビン内側に向けて変形すると、該平面部の下方に設けられた第2凸部が第1凸部に係止される。換言すると、請求項1に係る本発明では、上記平面部を備えているため、第2凸部が第1凸部に確実に係止される。その結果、スライドドアの下端部がロッカをすり抜けてキャビンに侵入することが抑制されると共に、スライドドアの強度及び剛性を上げるために、インパクトビーム等の補強部材をスライドドア内部に余分に追加することが不要となる。
【0008】
請求項2記載の本発明に係るスライドドア構造は、請求項1記載のスライドドア構造において、前記第1凸部の下側角部の車両上下方向の高さが前記第2凸部の上側角部の車両上下方向の高さよりも高い位置に配置されると共に、前記第1凸部の下側角部が前記第2凸部の上側角部よりも車幅方向外側に配置されたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る本発明では、スライドドアが側面衝突による衝突荷重を受けることにより、スライドドアがキャビンに向けて変形及び移動したとしても、第1凸部の下側角部が第2凸部の上側角部よりも車幅方向外側に配置されているため、第2凸部が第1凸部により確実に係止される。
【0010】
請求項3記載の本発明に係るスライドドア構造は、請求項1又は請求項2記載のスライドドア構造において、前記ロッカは、ロッカインナパネルの上側フランジ部とロッカアウタパネルの上側フランジ部とが重ね合わされて接合されると共にロッカインナパネルの下側フランジ部とロッカアウタパネルの下側フランジ部とが重ね合わされて接合されることにより構成され、前記第2凸部の前記上側角部が前記ロッカアウタの前記上側フランジ部に対して車幅方向同位置あるいは車幅方向内側に配置されたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る本発明では、第2凸部の上側角部がロッカアウタパネルの上側フランジ部に対して車幅方向同位置あるいは車幅方向内側に配置されている。そのため、スライドドアが側面衝突による衝突荷重を受けて、スライドドアがキャビンに向けて変形及び移動すると、第2凸部が第1凸部に係止されると共に第2凸部がロッカアウタの上側フランジ部の下端部に係止される。
【0012】
請求項4記載の本発明に係るスライドドア構造は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のスライドドア構造において、前記スライドドアが前席スライドドアとされたことを特徴とする。
【0013】
ところで、乗員が助手席等の前席に乗車することが可能とされたスライドドア(以下「前席スライドドア」という)を備えた車体は、乗員が2列目や3列目等の後席に乗車することが可能とされたスライドドア(以下「後席スライドドア」という)を備えた車体に比べ、スライドドアのドア枠を構成する前側ピラーと後ろ側ピラーとの間隔が広くなる傾向にある。そのため、前席スライドドアがキャビンに侵入することを抑制するために、車両前後方向に長尺状に形成されたインパクトビーム等の補強部材を余分に追加することになる。即ち、前席スライドドアを備えた車体では、インパクトビームなどの補強部材を設けることによる、車体の重量の増加はより顕著となる。しかしながら、請求項4に係る本発明では、上記平面部を備えているため、第2凸部が第1凸部に確実に係止される。その結果、前席スライドドアの下端部がロッカをすり抜けてキャビンに侵入することが抑制されると共に、前席スライドドアの強度及び剛性を上げるために、インパクトビーム等の補強部材を前席スライドドアの内部に余分に追加することが不要となる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係るスライドドア構造は、車体の重量の増加を抑えつつ、スライドドアがキャビンに侵入することを抑制することができる、という優れた効果を有する。
【0015】
請求項2記載の本発明に係るスライドドア構造は、スライドドアがキャビンに侵入することをより一層抑制することができる、という優れた効果を有する。
【0016】
請求項3記載の本発明に係るスライドドア構造は、側面衝突による衝突荷重を効率よくロッカに伝達することができる、という優れた効果を有する。
【0017】
請求項4記載の本発明に係るスライドドア構造は、前席スライドドアを備えた車体の重量の増加を抑えつつ、前席スライドドアがキャビンに侵入することを抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係るスライドドア構造を示す断面図である。
【図2】(A)は第1実施形態に係るスライドドア構造が適用された車体を示す斜視図であり、(B)は(A)に記載された車体におけるスライドドアの開扉状態を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係るスライドドアに対して、側面衝突による荷重が加わった際のスライドドア及びロッカの状態を示す断面図である。
【図4】第1実施形態に係るスライドドアに対して、側面衝突による荷重が加わることにより、スライドドアがキャビン側に向けて変形した状態を示す該スライドドア及びロッカの断面図である。
【図5】第2実施形態に係るスライドドア構造を示す拡大断面図である。
【図6】第3実施形態に係るスライドドア構造を示す拡大断面図である。
【図7】第3実施形態に係るスライドドアに対して、側面衝突による荷重が加わることにより、スライドドアがキャビン側に向けて変形した状態を示す該スライドドア及びロッカの断面図である。
【図8】(A)は後席スライドドアを備えた車体を示す斜視図であり、(B)は(A)に記載されたスライドドア構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2を用いて、本発明の第1実施形態に係るスライドドア構造について説明する。なお、車両前後方向前方側を矢印FRで示し、車幅方向外側を矢印OUTで示し、車両上下方向上側を矢印UPで示す。
【0020】
図2(A)に示されるように、本実施形態に係るスライドドア構造10が適用された車体12は、スライドドア14を開閉することにより、乗員が助手席等の前席に乗車することが可能とされた所謂前席スライドドアを備えている。
【0021】
また、図2(B)に示されるように、車体12は、車両前後方向を長手方向として延在するロッカ16と、該ロッカ16の車両前方側の端部から車両上方側に延在するフロントピラー18とを備えている。また、車体12は、フロントピラー18の車両上方側の端部から車両後方側に延在するルーフレール20と、該ルーフレール20の車両後方側の端部から車両下方側に延在すると共に、下端部がロッカ16の後端部に接続されたセンタピラー22を備えている。この、ロッカ16、フロントピラー18、ルーフレール20及びセンタピラー22によって、車両側面視で略矩形状のドア枠24が形成されている。図2(A)に示されるように、このドア枠24にスライドドア14が収容されることにより、スライドドア14がキャビン26と車外側とを開閉可能に隔成する構成である。
【0022】
次に、本実施形態のスライドドア構造10の要部であるロッカ16及びスライドドア14について説明する。
【0023】
(ロッカ16)
図1に示されるように、ロッカ16は、断面視で車幅方向外側に開口した略U字状の閉断面を成している。このロッカ16は、車幅方向外側に配置されたロッカアウタパネル28と車幅方向内側に配置されたロッカインナパネル30とを含んで構成された分割構造とされている。更に、ロッカアウタパネル28は、車両上方側に配置されたロッカアウタアッパ32の下端部と車両下方側に配置されたロッカアウタロア34の上端部とが接合されることにより構成された分割構造とされている。
【0024】
ロッカアウタアッパ32は、車両上下方向に延在する第1延在部32Aを備えている。また、この第1延在部32Aの車両下方側の端部は接合部32Bとされている。さらに、ロッカアウタアッパ32は、第1延在部32Aの車両上方側の端部から車幅方向外側に屈曲して延在する第2延在部32C及び、該第2延在部32Cの車幅方向外側の端部から段差部32Dを介して車幅方向外側に延在する第3延在部32Eを備えている。また、ロッカアウタアッパ32は、第3延在部32Eの車幅方向外側の端部から車両上方側に屈曲して延在する上側フランジ部32Fを備えている。
【0025】
ロッカアウタロア34は、車両上下方向に延在する第1延在部34Aを備えている。また、この第1延在部34Aの車両上方側の端部は、ロッカアウタアッパ32の接合部32Bと重ね合わされて接合される接合部34Bとされている。さらに、ロッカアウタロア34は、第1延在部34Aの車両下方側の端部から車幅方向外側に屈曲して延在する第2延在部34C及び、該第2延在部34Cの車幅方向外側の端部から段差部34Dを介して車幅方向外側に延在する第3延在部34Eを備えている。また、ロッカアウタロア34は、第3延在部34Eの車幅方向外側の端部から車幅方向外側に傾斜して延在する第4延在部34Fを備えている。さらに、ロッカアウタロア34は、第4延在部34Fの車幅方向外側の端部から車幅方向内側に傾斜して延在する第5延在部34G及び、該第5延在部34Gの車両下方側の端部から車両下方側へ屈曲して延在する下側フランジ部34Hを備えている。
【0026】
ロッカインナパネル30は、車両上下方向に延在する第1延在部30Aを備えている。また、ロッカインナパネル30は、第1延在部30Aの車両上方側の端部から車幅方向外側に屈曲して延在する第2延在部30B及び、該第2延在部30Bの車幅方向外側の端部から段差部30Cを介して車幅方向外側に延在する第3延在部30Dを備えている。さらに、ロッカインナパネル30は、第3延在部30Dの車幅方向外側の端部から車両上方側に屈曲して延在すると共に、上記ロッカアウタアッパ32の上側フランジ部32Fと重ね合わされて接合される上側フランジ部30Eを備えている。また、ロッカインナパネル30は、第1延在部30Aの車両下方側の端部から段差部30Fを介して車両下方側に延在する第4延在部30Gを備えている。さらに、ロッカインナパネル30は、第4延在部30Gの車両下方側の端部から車両上方側から下方側にかけて車幅方向外側に傾斜して延在する第5延在部30Hを備えている。また、ロッカインナパネル30は、第5延在部30Hの車幅方向外側の端部から車両下方側に延在すると共に、上記ロッカアウタロア34の下側フランジ部34Hと重ね合わされて接合される下側フランジ部30Iを備えている。さらに、第1延在部30Aと第2延在部30Bとにより形成された屈曲部30Jには、車両前後方向に延在すると共に略L字状の断面とされた肩パッチ36が接合されている。
【0027】
以上説明した、ロッカアウタアッパ32、ロッカアウタロア34及びロッカインナパネル30によってロッカ16が形成されている。
【0028】
また、ロッカ16の車幅方向外側に開口した溝部38には、スライドドア14を開閉可能にスライドさせるスライドレールガイド40及びガイドローラ41が設けられている。スライドレールガイド40は、車両前後方向を長手方向として延在すると共に車両下方側に開口した断面U字形状とされている。このスライドレールガイド40がロッカアウタアッパ32の第2延在部32Cの車両下方側の壁面に接合されている。このスライドレールガイド40に沿ってガイドローラが転動可能に収容されることにより、スライドドア14がヒンジ42を介して車両前後方向にスライド可能となる構成である。
【0029】
さらに、ロッカ16におけるロッカアウタアッパ32の上側フランジ部32Fには、サイメンアウタの下部44が接合されている。このサイメンアウタの下部44は、車両上下方向に延在すると共にロッカアウタアッパ32の上側フランジ部32Fに接合される接合部44Aを備えている。また、サイメンアウタの下部44は、接合部44Aの車両下方側の端部から車幅方向外側に傾斜して延在する第1延在部44B及び、該第1延在部44Bの下端部から車両下方側に延在する第2延在部44Cを備えている。さらに、サイメンアウタの下部44は、第2延在部44Cの車両下方側の端部から車幅方向内側に傾斜して延在する第3延在部44Dを備えている。また、サイメンアウタの下部44には、上記第1延在部44B、第2延在部44C及び第3延在部44Dによって、車幅方向外側に突出した第1凸部46が形成されている。さらに、この第1凸部46の車両上方側の角部は上側角部46Aとされると共に、第2凸部56の車両下方側の角部は下側角部46Bとされている。
【0030】
(スライドドア14)
スライドドア14は、車幅方向外側に配置されたドアアウタパネル48と車両幅方向内側に配置されたドアインナパネル50とを主要な要素として構成されている。また、ドアアウタパネル48とドアインナパネル50との間には、スライドドア14を補強するドアロアヒンジリインフォース52及びドアヒンジリインフォースロア54が設けられている。
【0031】
ドアアウタパネル48は、車両前後方向及び車幅方向に延在する板状のプレス成型部品であり、車幅方向外側に向けて突出すると共に緩やかに湾曲して形成されている。また、ドアアウタパネル48の車幅方向外側の面は、車両の外観意匠の一部を構成する意匠面とされている。また、ドアアウタパネル48の車両下方側の端部48Aが折り返されてヘミング加工が施されることによって、ドアアウタパネル48の車両下方側の端部48Aとドアロアヒンジリインフォース52の車両下方側の端部とが結合されている構成である。
【0032】
ドアインナパネル50は、車両上下方向に延在する平面部50Aを備えている。この平面部50Aは、スライドドア14がドア枠24に収容された状態において、上記第1凸部46と対向する位置に配置されている。また、ドアインナパネル50は、平面部50Aの車両上方側の端部から段差部50Bを介して車両上方側に延在する第1延在部50Cを備えている。また、ドアインナパネル50は、平面部50Aの車両下方側の端部から車幅方向内側に向けて傾斜して延在する第2延在部50Dを備えている。さらに、ドアインナパネル50は、第2延在部50Dの車両下方側の端部から車両下方側に屈曲して延在する第3延在部50E及び、該第3延在部50Eの車両下方側の端部から車幅方向外側に向けて傾斜して延在する第4延在部50Fを備えている。この第4延在部50Fがドアロアヒンジリインフォース52に接合されることにより、該ドアロアヒンジリインフォース52を介してドアアウタパネル48の下端部とドアインナパネル50の下端部とが接合される構成である。
【0033】
また、ドアインナパネル50の平面部50Aの車両下方側には、上記第2延在部50D、第3延在部50E及び第4延在部50Fによって、車幅方向内側に突出した第2凸部56が形成されている。さらに、この第2凸部56の車両上方側の角部は上側角部56Aとされると共に、第2凸部56の車両下方側の角部は下側角部56Bとされている。
【0034】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0035】
図3に示されるように、本実施形態に係るスライドドア14に対して、側面衝突による衝突荷重が加わると、ドアアウタパネル48が車幅方向内側に変形してドアヒンジリインフォースロア54に当接すると共にスライドドア14全体がキャビン26に向けて移動する。この場合、先ずドアインナパネル50の平面部50Aがロッカ16に接合されたサイメンアウタの下部44の第1凸部46の第2延在部44Cに当接する。また、図4に示されるように、スライドドア14がキャビン26に向けてさらに変形すると、平面部50Aの下部に設けられた第2凸部56の第2延在部50Dが第1凸部46の下側角部46Bに当接する。即ち、第2凸部56が第1凸部46に係止される。
【0036】
ここで、本実施形態のスライドドア構造10では、先ずドアインナパネル50の平面部50Aがサイメンアウタの下部44の第1凸部46に当接してから、第2凸部56が第1凸部46に係止される。換言すると、本実施形態のスライドドア構造10では、上記平面部50Aを備えているため、第2凸部56を第1凸部46に確実に係止させることができる。その結果、スライドドア14の下端部がロッカ16をすり抜けてキャビン26に侵入することが抑制されると共に、スライドドア14の強度及び剛性を上げるために、インパクトビーム等の補強部材をスライドドア14の内部に余分に追加することが不要となる。即ち、本実施形態のスライドドア構造10では、車体の重量の増加を抑えつつ、スライドドア14がキャビン26に侵入することを抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態のスライドドア構造10は、前席スライドドアを備えた車体に適用されているが、前席スライドドアを備えた車体は、後席スライドドアを備えた車体に比べ、スライドドア14のドア枠24を構成するフロントピラー18とセンタピラー22との間隔が広くなる傾向にある。そのため、スライドドア14がキャビン26に侵入することを抑制するために、車両前後方向に長尺状に形成されたインパクトビームなどの補強部材を余分に追加することになる。即ち、前席スライドドアを備えた車体では、インパクトビームなどの補強部材を設けることによる、車体の重量の増加はより顕著となる。しかしながら、本実施形態では、上記構成の平面部50A、第1凸部46及び第2凸部56が設けられているため、スライドドア14の内部にインパクトビームなどの補強部材を余分に追加することなく、スライドドア14がキャビン26に侵入することを抑制することができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、図5を用いて、本発明の第2実施形態に係るスライドドア構造について説明する。なお、上記第1実施形態と同一の部材については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
図5に示されるように、本実施形態のスライドドア構造58は、第2凸部56の第3延在部50Eが第1凸部46の第2延在部44Cよりも車幅方向内側に配置されている(本実施形態では、第3延在部50Eが第2延在部44Cよりもaだけ車幅方向内側に配置されている)ことに特徴がある。即ち、第1凸部46の下側角部46Bが第2凸部56の上側角部56Aがよりも車幅方向外側に配置された構成となっている。
【0040】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0041】
本実施形態に係るスライドドア構造58では、第1凸部46の下側角部46Bが第2凸部56の上側角部56Aよりも車幅方向外側に配置されているため、第2凸部56が第1凸部46により確実に係止される。その結果、スライドドア14がキャビン26に侵入することをより一層抑制することができる。
【0042】
(第3実施形態)
次に、図6を用いて、本発明の第3実施形態に係るスライドドア構造について説明する。なお、上記第1実施形態等と同一の部材については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0043】
図6に示されるように、本実施形態のスライドドア構造60は、第2凸部56の第3延在部50Eがロッカアウタアッパ32の上側フランジ部32Fよりも車幅方向内側に配置されている(本実施形態では、第3延在部50Eが上側フランジ部32Fよりもbだけ車幅方向内側に配置されている)ことに特徴がある。即ち、第2凸部56の上側角部56Aがロッカアウタアッパ32の上側フランジ部32Fよりも車幅方向内側に配置された構成となっている。
【0044】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0045】
本実施形態に係るスライドドア14に対して、側面衝突による衝突荷重が加わると、ドアアウタパネル48が車幅方向内側に変形してドアヒンジリインフォースロア54に当接すると共にスライドドア14全体がキャビン26に向けて移動する。この場合、上記第1実施形態と同様に、先ずロッカ16に接合されたサイメンアウタの下部44の第1凸部46がドアインナパネル50の平面部50Aに当接する。さらに、スライドドア14がキャビン26に向けて変形すると、平面部50Aの下部に設けられた第2凸部56が第1凸部46に係止される。そしてさらに、スライドドア14がキャビン26に向けて変形すると、図7に示されるように、第2凸部56がロッカアウタアッパ32の上側フランジ部32Fの下端部に係止される。その結果、本実施形態に係るスライドドア構造では、側面衝突による衝突荷重を効率よくロッカに伝達することができる。
【0046】
なお、上記第1実施形態及び第2実施形態では、ロッカ16がロッカアウタアッパ32、ロッカアウタパネル28及びロッカインナパネル30による分割構造とされた例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ロッカアウタパネル及びロッカインナパネルによる2分割の構成としても良い。
【0047】
また、上記第1実施形態乃至第3実施形態では、前席スライドドアを備えた車体に本発明を適用した例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、後席スライドドアを備えた車体に本発明を適用しても良い。例えば、図8(A)に示される後席スライドドアを備えた車体に図8(B)に示されるスライドドア構造62を適用することにより、上記第1実施形態等と同様の効果を得ることができる。
【0048】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
10 スライドドア構造
14 スライドドア
16 ロッカ
24 ドア枠
26 キャビン
28 ロッカアウタパネル
30 ロッカインナパネル
30E 上側フランジ部
30I 下側フランジ部
32F 上側フランジ部
34H 下側フランジ部
46 第1凸部
46A 上側角部(角部)
46B 下側角部(角部)
50 ドアインナパネル
50A 平面部
56 第2凸部
56A 上側角部(角部)
56B 下側角部(角部)
58 スライドドア構造
60 スライドドア構造
62 スライドドア構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア枠に収容されキャビンと車外側とを開閉可能に隔成するスライドドアと、
前記ドア枠の下部を構成すると共に、車幅方向外側に開口したU字状の閉断面を形成するロッカと、
前記ロッカの車幅方向外側に突出して設けられかつ複数の角部を有する第1凸部と、
前記スライドドアのドアインナパネルにおける前記第1凸部と対向する位置に設けられた平面部と、
前記ドアインナパネルにおける前記平面部の下方に設けられ、車幅方向内側に突出しかつ複数の角部を有する第2凸部と、
を有するスライドドア構造。
【請求項2】
前記第1凸部の下側角部の車両上下方向の高さが前記第2凸部の上側角部の車両上下方向の高さよりも高い位置に配置されると共に、前記第1凸部の下側角部が前記第2凸部の上側角部よりも車幅方向外側に配置された請求項1記載のスライドドア構造。
【請求項3】
前記ロッカは、ロッカインナパネルの上側フランジ部とロッカアウタパネルの上側フランジ部とが重ね合わされて接合されると共にロッカインナパネルの下側フランジ部とロッカアウタパネルの下側フランジ部とが重ね合わされて接合されることにより構成され、
前記第2凸部の前記上側角部が前記ロッカアウタの前記上側フランジ部に対して車幅方向同位置あるいは車幅方向内側に配置された請求項1又は請求項2記載のスライドドア構造。
【請求項4】
前記スライドドアが前席スライドドアとされた請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のスライドドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−82360(P2013−82360A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224318(P2011−224318)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】