説明

スライドファスナー用スライダー

【課題】エレメント案内路に対する爪部の円滑な挿入・抜出動作を確保し、スライダーの摺動特性や自動停止機構を長期に渡って安定して維持可能なスライダーを提供する。
【解決手段】本発明に係るスライダー(1,71)は、上翼板(21)が、引手保持部(31)と、停止爪体(6) の挿入溝(32)と、停止爪体(6) を加締め固定する加締め部(34,74) と、爪部(61)を挿通可能に穿設した爪孔(37)とを備え、停止爪体(6) を加締め固定した加締め部(34,74) の上端(34a,74a) の高さ位置は、上翼板(21)の上面と同一面上に、又は同上面よりも低くなるように配され、上翼板(21)の加締め部(34,74) と引手保持部(31)との間に、引手(5) を当接させる隆起部(35)が配されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停止爪体による自動停止機構を備えたスライドファスナー用スライダーに関し、特に、停止爪体の動作を保護して、その摺動特性や自動停止機構を長期に渡って安定して維持することが可能なスライドファスナー用スライダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スライドファスナーに用いられるスライダーとして、スライドファスナーを開閉した後に、引手の操作を解除するとスライダー内部に装着された停止爪体が自動的に作用してスライダーの停止位置を保持し、引手を操作しないかぎりスライダーの摺動停止状態を保持することが可能な自動停止機構付きのスライダーが知られている。また、このような自動停止機構を備えたスライダーの具体例が、例えば米国特許第6,647,598号明細書(特許文献1)や、英国特許第1201522号明細書(特許文献2)などに開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているスライダー80は、図13及び図14に示したように、その上翼板82に、停止爪体96が挿入される挿入溝83と、上翼板82の後口側端縁部に同上翼板82の上面側からエレメント案内路84に貫通するように穿設された爪孔85と、上翼板82の前端部にて前記挿入溝83の左右両側に立設された加締め用の突起部86と、引手91を保持するための左右の引手保持部87とが設けられている。
【0004】
また、同特許文献1における停止爪体96には、スライダー胴体81の爪孔85に挿通される爪部97が同停止爪体96の一端部に配され、スライダー胴体81の挿入溝83に嵌入されるフック部98が同停止爪体96の他端部に配され、爪部97とフック部98との間には、引手91の連結杆94を覆うカバー部99が設けられている。
【0005】
更に、同特許文献1の引手91は、引手本体部92と、同引手本体部92から延設された左右のアーム部93と、左右のアーム部93の先端部間を連結する円柱状の連結杆94とを有している。また、前記連結杆94の左右方向における中央部には、同連結杆94の断面を半円状とする凹部95が形成されている。
【0006】
そして、同特許文献1において、前述の引手91及び停止爪体96をスライダー胴体81に組み付ける場合、先ず、引手91の連結杆94をスライダー胴体81の引手保持部87に挿入し、同引手保持部87を加締めることにより、引手91をスライダー胴体81に回動可能に保持する。続いて、引手91を保持したスライダー胴体81の挿入溝83に、停止爪体96を、同停止爪体96の爪部97がスライダー胴体81の爪孔85に挿通するように位置合わせをして挿入する。これによって、停止爪体96がスライダー胴体81の所定位置に配置される。
【0007】
その後、スライダー胴体81の突起部86を加締めることにより、停止爪体96の他端部を所定のクリアランスをもって加締め固定する。これにより、図14に示したような特許文献1のスライダー80が組み立てられる。なお、図14では、スライダー80の組み立て状態を解り易く図示するために、引手91が仮想線で描かれている。
【0008】
このようにして組み立てられた特許文献1のスライダー80において、図14に示したように引手91が後口側に倒伏している状態のときには、停止爪体96のカバー部99が引手91の凹部95に嵌り込み、スライダー胴体81に対する停止爪体96の相対的な位置が下がるため、同停止爪体96の爪部97がスライダー胴体81の爪孔85からエレメ
ント案内路84内に挿入される(突出する)。
【0009】
一方、引手91を起立させたときや、スライダー80の前端側に倒伏させたときには、停止爪体96のカバー部99が、回動する引手91の連結杆94によって凹部95から抜け出して持ち上げられるため、同停止爪体96の爪部97がエレメント案内路84から抜出される。この場合、停止爪体96の他端部は、前述のように、所定のクリアランスをもって固定されている。このため、引手91を倒伏・起立操作したときに、停止爪体96の他端部がそのクリアランスを利用して挿入溝83内を移動することが可能となり、それによって、エレメント案内路84に対する爪部97の挿入・抜出動作を円滑に行うことが可能となる。
【0010】
従って、同スライダー80を用いてスライドファスナーを構成したときに、例えば引手91の操作を解除して引手91を後口側に倒伏させた場合には、停止爪体96の爪部97をエレメント案内路84に突出させてエレメント列に係合させることができる。このため、スライダー80をエレメント列に対して停止させて、その停止位置を保持することができる。一方、スライダー80を操作するために引手91を起立させた場合には、爪部97がエレメント案内路84から抜出されて、爪部97とエレメント列との係合が解除されるため、スライダー80をエレメント列に沿って円滑に摺動させることができる。
【0011】
また、特許文献2に記載されているスライダーも、特許文献1のスライダーと同様に、スライダー胴体と、同スライダー胴体の上翼板に配される停止爪体と、前記上翼板に一端が回動可能に保持される引手とを有している。
【0012】
この場合、スライダー胴体の上翼板には、停止爪体が挿入される挿入溝と、上翼板の後口側端縁部に同上翼板の上面側からエレメント案内路に貫通するように穿設された爪孔と、引手の連結杆を保持する左右の引手保持部とが設けられている。
【0013】
また、このスライダー胴体には、前記特許文献1のような停止爪体を加締め固定するような突起部は設けられておらず、停止爪体の他端部を所定のクリアランスをもって固定するために、挿入溝に橋を掛けるように横断する固定部が上翼板の上面に固着されている。
【0014】
同特許文献2における引手は、左右のアーム部を連結する円柱状の連結杆の中央部に、同引手をスライダー胴体に対して起立させたときに停止爪体を持ち上げるためのカム部を有している。
【0015】
このような特許文献2のスライダーを用いてスライドファスナーを構成することによっても、前記特許文献1と同様に、引手を後口側に倒伏させることによって、停止爪体の爪部をエレメント列に係合させてスライダーの停止位置を保持することができ、また、引手を起立させることによって、爪部がエレメント案内路から抜出されてスライダーを円滑に摺動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6,647,598号明細書
【特許文献2】英国特許第1201522号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
前記特許文献1や特許文献2に記載されているスライダーは、前述のように、スライダー胴体81の前端部に停止爪体96を固定するための加締め用の突起部86又は固定部が
設けられている。このため、停止爪体96を上翼板82の挿入溝83に挿入して配置した後、その加締め部を加締めることにより、又は固定部を上翼板82の所定位置に固着することにより、停止爪体96の爪部97をエレメント案内路84に挿入・抜出することが可能なように、停止爪体96をスライダー胴体81の上翼板82に固定することができる。
【0018】
しかしながら、このようにして停止爪体96をスライダー胴体81の上翼板82に固定した場合、停止爪体96を固定した加締め用の突起部86又は固定部が、スライダー胴体81の上翼板82の上面から盛り上がった状態となる(図14を参照)。この場合、スライダー80を使用したときに、引手91が前端側に倒伏することにより加締め用の突起部86又は固定部に衝突したり、また、加締め用の突起部86又は固定部が他部材と接触したりする。これによって、その加締め用の突起部86又は固定部が外力を受けて押し潰されてしまい、停止爪体96の他端部を固定する際に設けたクリアランスの大きさを安定して維持することができなくなることがあった。
【0019】
このように停止爪体96の他端部側に十分なクリアランスが確保できなくなると、停止爪体96の挿入溝83内での動き(移動)が制限されてしまうため、エレメント案内路84に対する爪部97の挿入・抜出動作を円滑に行うことができなくなり、その結果、スライダー80の摺動特性が低下し、また、自動停止機構が円滑に機能しなくなるなどの不具合を生じさせるという問題があった。
【0020】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、スライダーの使用時に停止爪体の移動が制限されることなく、エレメント案内路に対する爪部の挿入・抜出動作を円滑に行って、スライダーの摺動特性や自動停止機構を長期に渡って安定して維持することが可能なスライドファスナー用スライダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるスライドファスナー用スライダーは、基本的な構成として、上下翼板の前端部が連結柱により連結され、前記上下翼板間にY字状のエレメント案内路が配されたスライダー胴体と、前記上翼板に一端部が回動可能に保持された引手と、前記上翼板に配され、一端に爪部を備えた停止爪体とを有し、前記上翼板は、前記引手を保持する引手保持部と、前記停止爪体が挿入される挿入溝と、前記停止爪体の他端部を加締め固定する加締め部と、前記爪部を挿通可能に穿設した爪孔とを備え、前記停止爪体は、前記引手の倒伏・起立操作により、前記爪部が前記爪孔を介して前記エレメント案内路に挿入・抜出可能なように配されてなるスライドファスナー用スライダーであって、前記加締め部は、前記停止爪体を加締め固定した状態にて、同加締め部の上端の高さ位置が前記上翼板の上面と同一面上に、又は同上面よりも低くなるように配され、前記加締め部と前記引手保持部との間に、前記上翼板の上面から隆起し、前記引手を当接させる隆起部が配されてなることを最も主要な特徴とするものである。
【0022】
本発明に係るスライドファスナー用スライダーにおいて、前記上翼板の前記連結柱が連結されている部位の上面側に、前記挿入溝を挟んで凹陥部が凹設され、前記加締め部は、前記凹陥部の底面部から立設されていることが好ましい。この場合、前記凹陥部の周囲の少なくとも一部に、前記上翼板の上面と前記凹陥部の底面部との間の高さ位置に形成された段差部を有していることが好ましい。
【0023】
一方、本発明に係るスライドファスナー用スライダーにおいて、前記加締め部は、前記上翼板を上面から押圧して同上翼板の一部を塑性変形させることにより、前記挿入溝の側壁部から同挿入溝内に張り出すように延設されていても良い。
【0024】
また、前記隆起部は、前記挿入溝の左右両側に配されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るスライドファスナー用スライダーは、スライダー胴体の上翼板に、停止爪体が挿入される挿入溝と、停止爪体の他端部を加締め固定する加締め部と、停止爪体の爪部を挿通可能に穿設した爪孔とを有しており、加締め部は、停止爪体を加締め固定した状態にて、その加締め部の上端の高さ位置が上翼板の上面と同一面上に、又は同上面よりも低くなるように配されている。
【0026】
このような本発明のスライダーであれば、停止爪体を加締め固定した加締め部の上端の高さ位置が上翼板の上面と同一面上に、又は同上面よりも低くなるため、引手がスライダー胴体の前端側に倒伏しても、引手が加締め部に衝突することはなく、また、加締め部が他部材と接触することも抑えられ、スライダーの使用時に加締め部が外力を直接受けることにより押し潰されることを防ぐことができる。
【0027】
これにより、加締め部により停止爪体の他端部を固定する際に設けたクリアランスの大きさを安定して維持することができるため、スライダーの使用時に停止爪体の移動が制限されることはない。従って、同スライダーは、エレメント案内路に対する爪部の挿入・抜出動作を円滑に行って、スライダーの摺動特性や自動停止機構を長期に渡って安定して維持することができる。
【0028】
特に本発明のスライダーには、加締め部と引手を保持する引手保持部との間に、上翼板の上面から隆起し、引手を当接させる隆起部が配されている。この隆起部に引手が当接したときに、当該引手と加締め部とが互いに離間した非接触の状態となる。これにより、引手がスライダー胴体の前端側に倒伏したときに、同引手が、隆起部に当接してそれ以上の回動が規制されるため、上翼板の上面と同一面上に又は同上面よりも低く配されている加締め部に引手が衝突することを確実に防ぐことができる。
【0029】
このような本発明のスライドファスナー用スライダーにおいて、前記上翼板の連結柱が連結されている部位の上面側に、挿入溝を挟んで凹陥部が凹設され、前記加締め部は、凹陥部の底面部から立設されている。これにより、停止爪体を固定した加締め部の上端を、上翼板の上面と同一面上に、又は同上面よりも低くなるように容易に設定することができる。
【0030】
この場合、凹陥部の周囲の少なくとも一部に、上翼板の上面と凹陥部の底面部との間の高さ位置に配される段差部が形成されていることにより、スライダーを成形する金型の強度を安定して確保できるとともに、加締め部の立設高さを容易に確保することができる。
【0031】
より具体的に説明すると、前述のように加締め部を凹陥部の底面部から立設する場合、一般的にスライダー自体が小さいものであるため、加締め部と凹陥部の側壁部との間に十分な空間を確保することが難しい。このため、スライダー胴体を成形する金型において、加締め部を成形する金型部分の肉厚が必然的に薄くなり、その肉厚が薄い部分が長くなると金型の強度低下を招く。従って、金型の強度を適切に確保するためには、その肉厚が薄くなる金型部分の長さを短くする必要があり、その結果として、加締め部の立設高さが制限されることがあった。
【0032】
しかしながら、本発明のように、凹陥部の周囲の少なくとも一部に段差部を設けることによって、凹陥部の側壁部の高さが低くなるため、加締め部と凹陥部の側壁部との間に配置される肉厚の薄い金型部分を短くすることができ、金型の強度低下を防ぐことができる。更に、このように段差部を設けることによって加締め部を成形する金型部分の強度を安定して確保できる結果、その金型部分の長さを金型の強度確保のために短くする必要もな
くなるため、加締め部の立設高さを容易に確保することができる。
【0033】
また、本発明のスライドファスナー用スライダーでは、前記加締め部は、上述のように凹陥部の底面部から立設されていなくとも、上翼板を上面から押圧して同上翼板の一部を挿入溝内に向けて塑性変形させることにより、その挿入溝の側壁部から同挿入溝内に張り出すように延設されていても良い。これによっても、停止爪体を固定した加締め部の上端を、上翼板の上面と同一面上に、又は同上面よりも低くなるように容易に設定することができる。
【0034】
更に、本発明のスライドファスナー用スライダーにおいて、前記隆起部が、前記挿入溝の左右両側に配されていることによって、引手が加締め部に衝突することをより確実に防止できる。その上、引手の操作によって停止爪体が挿入溝内で上下動したときに、同停止爪体の一部が上翼板の上面よりも上方に移動しても、停止爪体が挿入溝内から飛び出さないように隆起部によって停止爪体を左右側方から隠して見え難くすることができるため、スライダーの見た目を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、実施例1のスライドファスナー用スライダーにおける構成部品が分離した状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、同スライダーが組み立てられた状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、同スライダーにおいて引手が後口側に倒伏した状態を示す断面図である。
【図4】図4は、図3におけるIV−IV線断面図である。
【図5】図5は、図3におけるV−V線断面図である。
【図6】図6は、スライダー胴体を成形する金型について説明する説明図である。
【図7】図7は、同スライダーにおいて、引手を後口側に倒伏した状態から起立させる操作を示す断面図である。
【図8】図8は、同スライダーにおいて、引手が起立した状態を示す断面図である。
【図9】図9は、同スライダーにおいて、引手が連結柱側に倒伏した状態を示す断面図である。
【図10】図10は、実施例2のスライドファスナー用スライダーにおける構成部品が分離した状態を示す斜視図である。
【図11】図11は、同スライダーが組み立てられた状態を示す斜視図である。
【図12】図12は、同スライダーの加締め部が設けられている部位の断面を示す断面図である。
【図13】図13は、従来のスライダーにおける構成部品が分離した状態を示す斜視図である。
【図14】図14は、従来のスライダーが組み立てられた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0037】
図1は、本実施例1のスライドファスナー用スライダーを構成する部品が分離した状態を示す斜視図であり、図2は、同スライダーが組み立てられた状態を示す斜視図である。また、図3は、同スライダーにおいて引手が後口側に倒伏した状態を示す断面図であり、図4は、図3におけるIV−IV線断面図であり、図5は、図3におけるV−V線断面図である。
【0038】
なお、本発明のスライダーにおいて、同スライダーがエレメント列を噛合させるように摺動する向きを前方とし、エレメント列を分離させるように摺動する向きを後方とする。また、上下翼板に直交する方向を上下方向とし、上下翼板に平行で、スライダー摺動方向に直交する方向を左右方向として規定する。
【0039】
本実施例1に係るスライドファスナー用スライダー1は、図1に示したように、スライダー胴体2と、スライダー胴体2に一端部が回動可能に保持される引手5と、スライダー胴体2に配される停止爪体6とを有している。本実施例1のスライダー1において、スライダー胴体2及び引手5は、アルミニウム合金、亜鉛合金などの金属材料を使用してダイキャスト成形によって作製されている。また、停止爪体6は、ステンレスや銅合金等の金属材料を使用してプレス成形により作製されている。
【0040】
前記スライダー胴体2は、図1に示すように、上翼板21と、下翼板22と、この上下翼板21,22の前端部間を連結する連結柱23とを有している。上翼板21の左右側部には、同上翼板21に直交する方向に上フランジ部24が垂設され、下翼板22の左右側部には、同下翼板22に直交する方向に下フランジ部25が立設されている。
【0041】
また、同スライダー胴体2は、連結柱23の左右両側に配された肩口26と、後端に配された後口27とを有しており、上下翼板21,22の間には、左右の肩口26と後口27とを連結するY字形のエレメント案内路28が形成されている。
【0042】
同スライダー胴体2の上翼板21は、引手5の一端を回動可能に保持する左右の引手保持部31と、上翼板21の上面の左右方向中央部に配され、停止爪体6を挿入する挿入溝32と、上翼板21の前端部に挿入溝32を挟むように凹設された凹陥部33と、凹陥部33の底面部から立設された左右一対の加締め部34と、引手保持部31と凹陥部33との間に且つ挿入溝32の左右両側に配され、上翼板21の上面から隆起した隆起部35と、引手5を後口27側に倒伏させたときに同引手5を抜脱可能に係着させる引手係脱部36とを有している。
【0043】
前記引手保持部31は、挿入溝32の左右両側に突設された前後一対の引手加締め用突起31aを有しており、引手5の後述する連結杆53が前後の引手加締め用突起31a間に挿入された後、この前後一対の引手加締め用突起31aを互いに近づける方向へ屈曲させて加締めることにより、引手5の連結杆53を引手保持部31に回動可能に保持することができる。
【0044】
前記挿入溝32は、停止爪体6を安定して挿入できるように停止爪体6の幅寸法(左右方向の寸法)と同等の溝幅、又は同幅寸法よりも少し大きな溝幅を有しており、また、同挿入溝32の底面部には、停止爪体6の形状に対応した段差が挿入溝32の長さ方向に階段状に設けられている。更に、同挿入溝32の後端部には、挿入溝32内に停止爪体6を配置したときに同停止爪体6の後述する爪部61を挿通することが可能な爪孔37が穿設されている。
【0045】
前記凹陥部33は、上翼板21の連結柱23が連結されている部位(即ち、前端部)の上面側に凹設されている。本実施例1において、凹陥部33の左右方向中央部には前記挿入溝32が前後方向に延設されているため、同凹陥部33は、挿入溝32を挟むように左右に分かれて配されている。
【0046】
更に、この凹陥部33の前半部を取り囲む部分には、上翼板21の上面と凹陥部33の底面部との間の高さ位置に段差面を有する段差部38が形成されている。
【0047】
ここで、段差部38を設けることによる利点について、図6を参照しながら説明する。
本実施例1のスライダー1をダイキャスト成形により形成する場合、図6に示したようなスライダー1の形状に対応したキャビティを有する金型10が用いられる。この場合、本実施例1のような段差部38を有さないスライダーを成形する場合(図6に示す仮想線の場合)には、所定の高さを有する加締め部34を成形するキャビティを形成するために、金型の一部10aの高さが寸法L1だけ突出する必要がある。
【0048】
しかしながら、この場合、スライダー1は寸法が小さいために加締め部34と凹陥部33の側壁部との間に十分な空間を確保することが難しく、金型の突出する部分10aの肉厚が必然的に薄くなる。このため、当該金型の薄肉で突出する部分10a(以下、薄肉突出部10aと記載する)が高さL1のように高くなると、当該薄肉突出部10aの強度が低下してその薄肉突出部10aが欠損し易くなることから、加締め部34の立設高さはある程度制限されていた。
【0049】
これに対して、本実施例1のスライダー1のように、凹陥部33の周囲に段差部38を有することによって(図6に示す実線の場合)、加締め部34のキャビティを形成するための薄肉突出部10aの高さを寸法L2と低くすることができるため、当該薄肉突出部10aの強度を安定して確保し、金型に欠損が生じることを防止できる。これにより、加締め部34を所望の高さに容易に形成することが可能となり、その上、金型の寿命も長くなるため、スライダー1の製造コストにかかる負担を低減することができる。
【0050】
本実施例1のスライダー1における前記加締め部34は、凹陥部33の底面部から立設されており、上翼板21の挿入溝32に停止爪体6が挿入された後、左右の加締め部34を内側に向けて屈曲させて加締めることにより、図2〜図4に示したように、停止爪体6の他端部を、加締め部34の先端部内面と挿入溝32の底面との間に所定のクリアランスを有する状態で加締め固定することができる。
【0051】
このとき、本実施例1の加締め部34は、停止爪体6を加締め固定した状態にて、加締め部34の上端34aが、上翼板21の上面と同一面上の高さ位置に、又は、同上面よりも低い高さ位置に配されている。即ち、本実施例1では、凹陥部33の底面部から加締め部34の上端34aまでの高さ寸法H1が、凹陥部33の底面部から上翼板21の上面までの高さ寸法H2と同じ大きさ、又はそれよりも小さくなるように、加締め部34が設けられている。
【0052】
また、同加締め部34は、停止爪体6を加締め固定した状態にて、加締め部34の上端34aが段差部38の段差面よりも高い位置に配されるように形成されており、これにより、停止爪体6の他端部を加締め部34で加締め固定したときに、加締め部34の先端部内面と挿入溝32の底面との間に停止爪体6の他端部が上下方向に移動することが可能な所定のクリアランスを安定して確保することができる。
【0053】
前記隆起部35は、挿入溝32の左右両側に上翼板21の上面から盛り上がるように配されている。このような隆起部35が配されていれば、例えば停止爪体6が挿入溝32に配置され、更に引手5の操作によって同停止爪体6が挿入溝32内で上下動したときに、同停止爪体6の一部が上翼板21の上面よりも上方に移動しても、停止爪体6が挿入溝32内から飛び出さないように隆起部35によって停止爪体6を左右側方から隠して見え難くすることができ、これによって、スライダー1の見栄えを向上させることができる。
【0054】
また、この隆起部35は、後述するように引手5をスライダー胴体2に取り付けて連結柱23側に倒伏させたときに、同引手5を当接させることによって引手5の回動限界を定めている。これにより、引手5を連結柱23側に完全に倒伏させても、倒伏した引手5と
上翼板21の上面との間に間隙を設けて、同引手5が加締め部34に衝突することを防止できる。
【0055】
前記引手係脱部36は、上翼板21の後口側端部の上面中央から上方に向けて突設されている。この引手係脱部36は、上翼板21の上面から起立する首部36aと、同首部36aの上端に配され、首部36aよりも左右方向に膨らんだ係脱頭部36bとを有している。この場合、係脱頭部36bの前後方向の寸法は、首部36aと同一の寸法に設定されている。また、係脱頭部36bの上面は平坦に形成されるとともに、その左右側縁部は、外側に円弧状に膨出して形成されている。
【0056】
本実施例1における前記引手5は、引手本体部51と、引手本体部51の一端から平行に延設された左右のアーム部52と、左右のアーム部52の先端部を連結する連結杆53とを有している。また、引手本体部51における表裏面の中央部分には、表裏方向に貫通する矩形状の開口窓部54が設けられており、この開口窓部54を取り囲む側壁部のうち引手5の他端部側に配された側壁部54aからは、左右の片持係止片55が連結杆53側に向けて延設されている。
【0057】
特に、左右の片持係止片55は、互いの間隔が基端側から先端側に向けて傾斜して延設された第1係止片部55aと、第1係止片部55aの先端から互いに平行に延設された第2係止片部55bとを有している。この場合、左右の第2係止片部55bの間隔は、スライダー胴体2に配した引手係脱部36の首部36aの幅寸法よりも大きく、且つ、同引手係脱部36の係脱頭部36bの幅寸法よりも小さく設定されている。
【0058】
同引手5の連結杆53は、円形断面を有するように円柱状に形成されており、同連結杆53の中央部には、同連結杆53と、左右のアーム部52と、引手本体部51の一端縁とにより形成される開口内に突出するカム部56が一体的に設けられている。このカム部56は、引手長さ方向に直交するカム部56の断面がカム部56の基端側から先端側に向けて漸減するように、カム部先端に向けて下り傾斜する傾斜面56aを引手5の第1面(表面)側に有している。このため、例えば図7などに示したように、引手5をスライダー胴体2に対して後口27側に完全に倒伏させたときには、カム部56の傾斜面56aと停止爪体6の後述するカバー部63との間に、所定の間隙11を形成することが可能となる。
【0059】
本実施例1における前記停止爪体6は、弾性を備えており、スライダー胴体2の爪孔37を介してエレメント案内路28内に挿入・抜出可能な爪部61をその一端部に有するとともに、スライダー胴体2の挿入溝32に嵌入されるフック部62をその他端部に有している。また、同停止爪体6の爪部61とフック部62との間には、引手5の連結杆53及びカム部56を上方から覆うように配される断面略U字状のカバー部63が設けられている。
【0060】
同停止爪体6のカバー部63は、スライダー胴体2に配された左右の引手保持部31間の間隔よりも小さく、且つ、スライダー胴体2に形成した挿入溝32の溝幅よりも大きい幅寸法を有している。また、停止爪体6のカバー部63よりも他端側の部位は、スライダー胴体2に形成した挿入溝32の溝幅よりも小さい幅寸法を有している。
【0061】
次に、上述のようなスライダー胴体2、引手5、及び停止爪体6より構成される本実施例1のスライダー1を組み立てる方法について説明する。
先ず、スライダー胴体2の左右の引手保持部31がそれぞれ有する前後の引手加締め用突起31a間に引手5の連結杆53を挿入し、引手5をスライダー胴体2の後口側に倒伏させた状態にて、前後の引手加締め用突起31aを互いに近づける方向へ屈曲させて加締める。これにより、引手5がスライダー胴体2に対して連結杆53を中心に回動可能に保
持される。
【0062】
続いて、引手5を保持したスライダー胴体2に、停止爪体6を、同停止爪体6の爪部61がスライダー胴体2の爪孔37に挿通し、且つ、同停止爪体6のカバー部63が引手5の連結杆53及びカム部56を上方から覆うようにして、スライダー胴体2の挿入溝32に挿入する。これによって、停止爪体6がスライダー胴体2の所定位置に配置される。
【0063】
その後、スライダー胴体2に配した加締め部34を内側に屈曲させて加締めることにより、停止爪体6の爪部61が爪孔37に挿通した状態で、同停止爪体6の他端部が所定のクリアランスをもって加締め部34によって加締め固定される。このような作業を行うことにより、図2〜図4に示したような本実施例1のスライドファスナー用スライダー1が組み立てられる。
【0064】
このようにして得られた本実施例1のスライダー1は、加締め部34が凹陥部33の底面部から立設されているため、加締め部34の上端34aが、停止爪体6を加締め固定した状態にて、上翼板21の上面と同一面上の高さ位置又は同上面よりも低い高さ位置に配されている。
【0065】
このため、同加締め部34が、従来のスライダーのように上翼板21の上面から突出することはなく、上翼板21の上面よりも低い位置に凹陥部33内に収容された状態で配される。従って、同スライダー1を用いてスライドファスナーを構成したときに、加締め部34が他の部材と接触することを防止できるため、同加締め部34が他の部材から外力を直接受けて押し潰されることを防ぐことができる。その結果、停止爪体6の他端部を固定する際に加締め部34の内側に設けたクリアランスの大きさを安定して維持することができる。
【0066】
また、本実施例1のスライダー1は、例えば図2及び図3に示したように、引手5をスライダー胴体2の後口27側に倒伏させることによって、引手5の連結杆53に形成したカム部56は、上翼板21の上面に対して略平行な方向に向けられる。このとき、引手5のカム部56は停止爪体6のカバー部63と干渉しないため、停止爪体6のカバー部63がカム部56によって持ち上げられることはなく、同停止爪体6の爪部61が爪孔37を介してエレメント案内路28内に突出した状態となる。
【0067】
従って、本実施例1のスライダー1をファスナーチェーンのエレメント列に挿通させてスライドファスナーを構成したときに、引手5をスライダー胴体2の後口27側に倒伏させることにより、停止爪体6の爪部61がエレメント案内路28内に突出してエレメント列に係着し、エレメント列に対するスライダー1の停止位置を保持することができる。
【0068】
更に、このように引手5をスライダー胴体2の後口27側に倒伏させる場合、同引手5をスライダー胴体2に配した引手係脱部36に向けて押し込むことによって、引手5に配した左右の片持係止片55を、外側に撓ませながら引手係脱部36の係脱頭部36bを乗り越えさせて、例えば図2、図3及び図5に示したようにスライダー胴体2の引手係脱部36に係着させることができる。
【0069】
このように引手5の片持係止片55をスライダー胴体2の引手係脱部36に係着させることによって、引手5を倒伏した状態で保持することができる。このため、停止爪体6の爪部61がエレメント案内路28内に突出してエレメント列に係着した状態を安定して維持し、スライダー1をその停止位置で確実に保持することができる。なお、引手5の片持係止片55とスライダー胴体2の引手係脱部36との係着状態は、引手5を上翼板21から離れる方向に回動させることによって容易に解除することができる。
【0070】
更に、本実施例1のスライダー1では、引手5のカム部56が前述のような下り傾斜面56aを有している。このため、例えば引手5の片持係止片55をスライダー胴体2の引手係脱部36に係着させずに、引手5が引手係脱部36に載置されて上翼板21の上面に対して傾いた状態に配されても、引手5のカム部56が停止爪体6のカバー部63に干渉することはなく、停止爪体6の爪部61をエレメント案内路28内に突出させて、エレメント列に係着させることができる。
【0071】
またこれにより、例えば引手5が引手係脱部36に係着している状態を解除するために、同引手5を少し持ち上げた場合でも、引手5のカム部56が停止爪体6のカバー部63に干渉しない範囲で引手5を回動させれば、停止爪体6の爪部61がエレメント案内路28から抜出することなく、スライダー1を停止位置で保持した状態で引手5の係着状態を解除することが可能となる。
【0072】
一方、本実施例1のスライダー1において、引手5がスライダー胴体2の後口27側に倒伏している状態から、同引手5を図7に示したように持ち上げて、上翼板21に対して直行する方向へ起立させる場合、引手5が上翼板21の上面に対して所定の傾斜角度以上に傾くことにより、引手5のカム部56が停止爪体6のカバー部63に干渉して、停止爪体6がカム部56によって持ち上げられ、停止爪体6の爪部61がエレメント案内路28から抜出される(図8を参照)。
【0073】
このとき、停止爪体6の他端部は加締め部34によって所定のクリアランスをもって加締め固定されているため、同停止爪体6を、そのクリアランスを利用して挿入溝32内で容易に撓ませて、爪部61の抜出動作を円滑に行うことができる。
【0074】
更に、本実施例1のスライダー1では、引手5が起立している状態から連結柱23側に倒伏させることにより、引手5のカム部56が停止爪体6のカバー部63に干渉しなくなるため、図9に示したように、停止爪体6のカバー部63が下降して爪部61がエレメント案内路28内に突出してエレメント列に係着する。これにより、スライダー1をその停止位置で保持することができる。
【0075】
このとき、上翼板21の引手保持部31と凹陥部33との間には隆起部35が配されているため、引手5を隆起部35に接触させた状態が、同引手5が連結柱23側に完全に倒伏した状態となる。また、引手5と上翼板21の上面との間には間隙が形成されるため、引手5を連結柱23側に完全に倒伏させても、同引手5とスライダー胴体2の加締め部34とが接触することはない。従って、本実施例1のスライダー1では、加締め部34が、従来のように引手5から外力を受けて押し潰されることもなく、加締め部34の内側に設けたクリアランスの大きさを安定して維持することができる。
【0076】
以上のように、本実施例1の自動停止機構を備えたスライダー1は、停止爪体6を加締め固定した加締め部34が、引手5やその他の部材との接触により外力を受けて押し潰されることを防ぐことができる。
【0077】
従って、同スライダー1は、加締め部34の内側に設けたクリアランスの大きさを長期に渡って安定して保持することができるため、エレメント案内路28に対する爪部61の挿入・抜出動作を円滑に行って、スライダー1の自動停止機構を安定して機能させることができ、また、スライダー1の摺動時に爪部61がエレメント案内路28内に突出してスライダー1の摺動特性を低下させることもない。
【0078】
更に、本実施例1のように、凹陥部33を設けて、同凹陥部33の底面部から加締め部
34を立設してスライダー1を構成することによって、加締め部34を上翼板21上面から立設した従来のスライダーに比べて材料費を安く抑えることができるため、スライダー1のコストダウンを図ることができる。
【実施例2】
【0079】
図10は、本実施例2のスライドファスナー用スライダーを構成する部品が分離した状態を示す斜視図であり、図11は、同スライダーが組み立てられた状態を示す斜視図である。また、図12は、同スライダーの加締め部が設けられている部位の断面を示す断面図である。
【0080】
本実施例2に係るスライドファスナー用スライダー71は、停止爪体6を加締め固定する加締め部74の形態が前記実施例1のスライダー1と異なるものであり、この加締め部74が設けられる上翼板21の前端部分以外の構成については、前記実施例1のスライダー1と実質的に同じ構成を有している。従って、本実施例2では、前記実施例1のスライダー1と同様の構成を有する部品及び部材については同じ符号を用いて表しており、それによって、それらの部品及び部材の説明を省略することとする。
【0081】
本実施例2のスライダー71において、停止爪体6を加締め固定する以前の上翼板21は、図10に示したように、左右の引手保持部31と、停止爪体6の挿入溝32と、挿入溝32の左右両側に配された隆起部35と、上翼板21の後口27側端部に立設された引手係脱部36とを有しており、前記実施例1のスライダー1のような凹陥部33と、同凹陥部33の底面部から立設された左右一対の加締め部34とは設けられていない。
【0082】
このようなスライダー胴体72に、引手5と停止爪体6とを取り付けて本実施例2のスライダー71を組み立てる場合、先ず、前記実施例1と同様にして、スライダー胴体72の左右の引手保持部31に引手5を挿入し、同引手保持部31を加締めることによって引手5をスライダー胴体72に対して回動可能に保持する。
【0083】
続いて、引手5を保持したスライダー胴体72に、停止爪体6を、同停止爪体6の爪部61がスライダー胴体72の爪孔37に挿通し、且つ、同停止爪体6のカバー部63が引手5の連結杆53及びカム部56を上方から覆うようにして、スライダー胴体72の挿入溝32に挿入する。これによって、停止爪体6がスライダー胴体72の所定位置に配置される。
【0084】
その後、上翼板21の前端部において、上翼板21上面の挿入溝32に近接する左右両側の部位を上方から局部的に押圧することによって、図11及び図12に示したように、上翼板21の一部を挿入溝32の側壁部から同挿入溝32内に張り出すように塑性変形させる。これにより、上翼板21の上面には押圧によって凹部75が形成されるとともに、加締め部74を挿入溝32内に延設させることができるため、同加締め部74によって、停止爪体6の他端部を所定のクリアランスをもって加締め固定することができる。以上のような組み立て作業を行うことによって、図11に示したような本実施例2のスライドファスナー用スライダー71が組み立てられる。
【0085】
このような本実施例2のスライダー71であれば、前記実施例1と同様に、加締め部74の上端74aが、停止爪体6を加締め固定した状態にて、上翼板21の上面と同一面上の高さ位置又は同上面よりも低い高さ位置に配されている。従って、停止爪体6を加締め固定した加締め部74が、引手5やその他の部材との接触により押し潰されることを防止して、加締め部74の内側に設けたクリアランスの大きさを長期に渡って安定して保持することができる。このため、同スライダー71は、エレメント案内路28に対する爪部61の挿入・抜出動作を円滑に行って、スライダー71の自動停止機構を安定して機能させ
るとともに、スライダー71の摺動特性の低下を防ぐことができる。
【0086】
更に、本実施例2のスライダー71は、前記実施例1のスライダー1に比べて、加締め部74による停止爪体6の加締め固定を容易に行うことができるため、スライダー71の組み立て作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 スライダー
2 スライダー胴体
5 引手
6 停止爪体
10 金型
10a 金型の一部(薄肉突出部)
11 間隙
21 上翼板
22 下翼板
23 連結柱
24 上フランジ部
25 下フランジ部
26 肩口
27 後口
28 エレメント案内路
31 引手保持部
31a 引手加締め用突起
32 挿入溝
33 凹陥部
34 加締め部
34a 上端
35 隆起部
36 引手係脱部
36a 首部
36b 係脱頭部
37 爪孔
38 段差部
51 引手本体部
52 アーム部
53 連結杆
54 開口窓部
54a 側壁部
55 片持係止片
55a 第1係止片部
55b 第2係止片部
56 カム部
56a 傾斜面
61 爪部
62 フック部
63 カバー部
71 スライダー
72 スライダー胴体
74 加締め部
74a 上端
75 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下翼板(21,22) の前端部が連結柱(23)により連結され、前記上下翼板(21,22) 間にY字状のエレメント案内路(28)が配されたスライダー胴体(2,72)と、前記上翼板(21)に一端部が回動可能に保持された引手(5) と、前記上翼板(21)に配され、一端に爪部(61)を備えた停止爪体(6) とを有し、前記上翼板(21)は、前記引手(5) を保持する引手保持部(31)と、前記停止爪体(6) が挿入される挿入溝(32)と、前記停止爪体(6) の他端部を加締め固定する加締め部(34,74) と、前記爪部(61)を挿通可能に穿設した爪孔(37)とを備え、前記停止爪体(6) は、前記引手(5) の倒伏・起立操作により、前記爪部(61)が前記爪孔(37)を介して前記エレメント案内路(28)に挿入・抜出可能なように配されてなるスライドファスナー用スライダー(1,71)であって、
前記加締め部(34,74) は、前記停止爪体(6) を加締め固定した状態にて、同加締め部(34,74) の上端(34a,74a) の高さ位置が前記上翼板(21)の上面と同一面上に、又は同上面よりも低くなるように配され、
前記加締め部(34,74) と前記引手保持部(31)との間に、前記上翼板(21)の上面から隆起し、前記引手(5) を当接させる隆起部(35)が配されてなる、
ことを特徴とするスライドファスナー用スライダー。
【請求項2】
前記上翼板(21)の前記連結柱(23)が連結されている部位の上面側に、前記挿入溝(32)を挟んで凹陥部(33)が凹設され、
前記加締め部(34)は、前記凹陥部(33)の底面部から立設されてなる、
請求項1記載のスライドファスナー用スライダー。
【請求項3】
前記凹陥部(33)の周囲の少なくとも一部に、前記上翼板(21)の上面と前記凹陥部(33)の底面部との間の高さ位置に形成された段差部(38)を有してなる請求項2記載のスライドファスナー用スライダー。
【請求項4】
前記加締め部(74)は、前記上翼板(21)を上面から押圧して同上翼板(21)の一部を塑性変形させることにより、前記挿入溝(32)の側壁部から同挿入溝(32)内に張り出すように延設されてなる請求項1記載のスライドファスナー用スライダー。
【請求項5】
前記隆起部(35)は、前記挿入溝(32)の左右両側に配されてなる請求項1〜4のいずれかに記載のスライドファスナー用スライダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−31691(P2013−31691A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−223161(P2012−223161)
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【分割の表示】特願2010−542780(P2010−542780)の分割
【原出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】