説明

スライド式門扉

【課題】スライド式門扉の操作性の向上を図ることである。
【解決手段】出入口2の床面に平行2条のレール3を敷設し、そのレール3に沿って転動可能な複数の車輪10を下部に有するスライド可能な引き戸4の戸先側端部に、その引き戸4のスライド操作用のハンドル12a、12bと、引き戸4を閉鎖位置において施錠する引き戸錠20とを設ける。ハンドル12a、12bにグリッパ15を揺動可能に設け、そのグリッパ15の握り締めによる揺動に連動して前記引き戸錠20を解錠させる解錠連動機構40を設けて、引き戸錠20の解錠と引き戸4の開放の一連の操作を連続して行えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、学校や工場等のように、間口の比較的広い出入口等をスライド可能な引き戸によって開閉するようにしたスライド式門扉に関する。
【背景技術】
【0002】
出入口の床面にレールを敷設し、そのレールに沿って転動可能な複数のローラを下部に有するスライド可能な引き戸、あるいはレールを設けることなく吊元支柱に吊持したスライド可能な引き戸により出入口を開閉するようにしたスライド式門扉においては、引き戸の戸先側に内側ハンドルおよび外側ハンドルを設け、そのハンドルを引く操作によって引き戸を開閉するようにしている。
【0003】
また、引き戸の戸先側端部に引き戸錠を取付け、出入口の一側部に起立させた戸当たり支柱に戸先側端面を当接させた引き戸の閉鎖状態で、その引き戸錠を施錠して引き戸を閉鎖位置で保持し、安全性を確保することが行われている。
【0004】
上記のようなスライド式門扉の引き戸は非常に重く、スライド移動時の慣性力が極めて大きいために、制動に大きな操作力を必要とし、急激に閉鎖されると、戸当たり支柱に衝撃的に当接して、故障の原因となる可能性があった。
【0005】
レール上を転動する車輪を有する引き戸においては、支柱との衝突による不都合の発生を防止するため、引き戸の下部に制動装置を設け、その制動装置によって引き戸の下部に設けられた車輪の車輪軸に制動力を付与して、慣性力の低減を図るようにしたスライド式門扉も提供されている。
【0006】
ここで、制動装置を有するスライド式門扉においては、引き戸の移動初期に大きな操作力を必要とするため、その移動初期に制動装置の制動および解除の切換え機構を設け、引き戸の開閉による移動初期に、その切換え機構の操作により制動装置の制動を解除して、軽い力で引き戸を移動させることができるようにし、引き戸を一旦移動させると、制動装置を作動状態に切り換えて慣性力の低減を図り、安全性を確保することが行なわれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来から知られているスライド式門扉においては、引き戸錠を施解錠する操作と、引き戸のハンドルを引いて引き戸を移動させる操作とを別々に行って引き戸を開閉するようにしているため、操作が煩わしく、その操作性を向上させる上において改善すべき点が残されていた。
【0008】
また、制動装置を有するスライド式門扉においても、その制動装置の制動および解除の切換え操作を別に行うようにしているため、操作がさらに煩わしくなり、その点においても改善すべき点が残されていた。
【0009】
この発明の課題は、スライド式門扉の操作性の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、この発明においては、出入口を横切るようにしてスライド可能な引き戸の戸先側端部に、その引き戸のスライド操作用のハンドルと、引き戸を閉鎖位置において施錠する引き戸錠とを設け、その引き戸錠を解錠し、前記ハンドルを引く操作によって引き戸を開放させるようにしたスライド式門扉において、前記ハンドルにグリッパを揺動可能に設け、そのグリッパの握り締めによる揺動に連動して前記引き戸錠を解錠させる解錠連動機構を設けた構成を採用したのである。
【0011】
上記の構成からなるスライド式門扉において、引き戸の開放に際しては、ハンドルとグリッパを共に握り締めてハンドルを引くようにする。
【0012】
ここで、ハンドルと共にグリッパを握り締めると、グリッパが揺動し、解錠連動機構が引き戸錠を解錠させることになる。このため、グリッパの握る状態でハンドルを引くことにより、引き戸錠の解錠操作と、引き戸の開放操作の一連の操作を連続して行うことができ、引き戸を簡単に開放させることができる。
【0013】
この発明に係るスライド式門扉において、引き戸錠として、引き戸の戸先側端面に埋設される錠ケースと、その錠ケース内に組み込まれ、引き戸を閉鎖位置に停止保持する戸当たり支柱に設けられた係合孔に対して係合可能な鈎片を先端部に有する揺動可能な鎌状ボルトと、上記錠ケースのフロントプレートに形成されたトリガー挿入孔に対して先端部が出没自在とされ、上記戸当たり支柱に対する当接によって錠ケース内に押し込まれた際に、鎌状ボルトの後端部を押圧して、その鎌状ボルトを施錠位置に向けて揺動させるボルト操作用のトリガー部材と、そのトリガー部材を突出方向に向けて付勢する弾性部材と、上記錠ケース内に組み込まれ、鎌状ボルトの外周一部に形成された係合段部に対する係合によって、その鎌状ボルトを施錠位置でロックする揺動可能なロックレバーと、そのロックレバーを鎌状ボルトに向けて付勢するロックばねとを有してなるものを採用することができる。
【0014】
上記のような引き戸錠の採用において、解錠連動機構として、ロックレバーの揺動中心軸上に設けられて、そのロックレバーと一体的に回転する解除レバーと、前記グリッパの揺動に連動してグリッパの揺動方向と相反する方向に揺動するL形のカム片と、そのカム片の揺動に連動して昇降動するスライド部材と、そのスライド部材と共に昇降動し、上昇時に前記解除レバーの揺動側端部を押し上げて、前記ロックレバーをロック解除位置に向けて揺動させる突き上げロッドからなるものを採用することができる。
【0015】
また、解錠連動機構として、ロックレバーの揺動中心軸上に設けられて、ロックレバーと一体的に回転する解除レバーと、前記グリッパの揺動に連動してグリッパの揺動方向と相反する方向に揺動するL形のカム片と、前記引き戸の戸先側端面に埋設されたユニットケースと、そのユニットケース内に組み込まれ、前記カム片の揺動に連動して昇降動するスライド部材と、そのスライド部材によって下端部が上下方向にスライド自在に支持され、ユニットケースの上方に位置する上端が前記解除レバーの揺動側端部の下面に対向し、前記ユニットケース内に位置する下端部に設けられた抜止め突部の引き上げにより上昇して、前記ロックレバーをロック解除位置に向けて押し上げ揺動させる突き上げロッドと、前記スライド部材により水平方向にスライド自在に支持されて、ユニットケースのフロントプレートに形成されたトリガー挿入孔に対して先端部が出没自在とされ、前記戸当たり支柱に対する当接によってユニットケース内に没入した際に後端部が前記抜止め突部の下面と対向し、突出時には前記後端部が抜止め突部の下面から退避するロッド昇降用のトリガー部材と、そのトリガー部材を突出方向に向けて付勢するばねとからなるものを採用することができる。
【0016】
上記のような引き戸錠および解錠連動機構の採用において、ロッド昇降用のトリガー部材が戸当たり支柱に対する当接により押し込まれると、トリガー部材の後端部が抜止め突部の下面と上下で対向する。そして、グリッパを握ることにより、スライド部材が上昇し、そのスライド部材と共に上昇するトリガー部材の後端部で抜止め突部が押し上げられ、突き上げロッドが上昇して引き戸錠の鎌状ボルトが解錠する。
【0017】
上記のような引き戸錠の解錠において、引き戸を開放すると、ばねの押圧により、ロッド昇降用のトリガー部材が突出して、後端部が抜止め突部から退避し、突き上げロッドの押し上げを解除する。その解除により、突き上げロッドが自重で下降するため、引き戸の開放後、グリッパを握った状態で引き戸が直ちに閉鎖された場合でも引き戸錠を確実に施錠状態とすることができる。
【0018】
ここで、ロッド昇降用トリガー部材を、その長さ方向で分割して前部トリガー部材と後部トリガー部材を設け、その前部トリガー部材と後部トリガー部材を伸縮自在に連結し、その連結部間に前部トリガー部材と後部トリガー部材を伸長する方向に付勢するトリガーばねを組込んでおくと、引き戸の開放後、グリッパを握った状態で引き戸が直ちに閉鎖された場合、トリガー部材は戸当たり支柱に対する当接により押し込められることになる。このとき、後部トリガー部材は抜止め突部に当接して停止状態とされ、前部トリガー部材のみが押し込まれることになってトリガー部材が収縮するため、トリガー部材の衝撃的な衝突を避けることができ、トリガー部材や抜止め突部、突き上げロッド等の各種の部品の損傷防止に効果を挙げることができる。
【0019】
後部トリガー部材の後端部に抜止め突部を支持する回転可能なローラを設けておくと、トリガー部材の移動抵抗の低減を図り、トリガー部材の後端部が抜止め突部の下面から退避する位置までトリガー部材を円滑に移動させることができる。
【0020】
ここで、引き戸が、出入口を横切るようにして敷設したレールに沿って転動可能な複数の車輪を下部に有し、前記車輪を支持する回転可能な車輪軸に対して制動力を付与する制動装置と、その制動装置を制動状態と制動解除状態とに選択的に切り換える制動解除機構とを設け、前記グリッパの揺動に連動して前記制動解除機構を作動させる連動機構を設けておくと、ハンドルと共にグリッパを握る操作により、引き戸錠の解錠と制動装置の制動を解除する操作を連続して行うことができるため、制動装置を有するスライド式門扉の操作性をより高めることができる。
【0021】
上記車輪軸に制動力を付与する制動装置として、車輪軸に固定されたブレーキロータと、上記車輪軸に嵌合されて、上記ブレーキロータに向けてスライド可能なパッドホルダと、そのパッドホルダのブレーキロータに対する対向面に保持されたブレーキパッドと、上記パッドホルダをブレーキロータに向けて付勢するスプリングとからなるものを採用することができる。
【0022】
そのような制動装置の採用において、制動解除機構として、パッドホルダの端面に向けて移動自在に支持され、そのパッドホルダの端面に形成された凹部に対する先端部の係合によってパッドホルダを回り止めする回り止めピンと、その回り止めピンをパッドホルダに向けて付勢するスプリングとからなるものを採用することができる。
【0023】
また、連動機構として、アウタチューブ内に挿通されたインナワイヤの一端部を前記スライド部材に対して相対的な移動を可能とする遊びをもって連結し、そのインナワイヤの他端部を前記回り止めピンに連結した構成からなるものを採用することにより、回り止めピンが凹部に係合せず、パッドホルダの端面に乗り上げた場合でも、グリッパの握り解除によってスライド部材を確実に下降させることができ、引き戸錠の施錠および解錠を確実に行わせることができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明においては、ハンドルにグリッパを揺動可能に設け、そのグリッパの握り締めによる揺動に連動して引き戸錠を解錠させる解錠連動機構を設けたことによって、引き戸錠を解錠する操作と、引き戸を開放する操作の一連の操作を連続して行うことができるため、スライド式門扉の操作性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明に係るスライド式門扉の正面図
【図2】図1の平面図
【図3】図1に示す引き戸の戸先側端部の一部分を拡大して示す正面図
【図4】図3のIV−IV線に沿った断面図
【図5】図3のV−V線に沿った断面図
【図6】図5のVI−VI線に沿った断面図
【図7】図6に示すスライド部材が上昇した状態を示す縦断面図
【図8】図7に示す突き上げロッドが下降した状態を示す縦断面図
【図9】図3に示す引き戸錠の縦断面図
【図10】引き戸錠の解錠状態を示す断面図
【図11】図2のXI-XI線に沿った断面図
【図12】図11の一部分を拡大して示す断面図
【図13】図12のXIII−XIII線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1および図2に示すように、塀1に形成された出入口2の床面には、出入口2を横切るようにして平行2条のレール3が敷設され、そのレール3上に出入口2を開閉する引き戸4が設けられている。
【0027】
ここで、引き戸4は、長さ方向に2分割され、その分割引き戸4a、4bは、図11に示すように、一方の分割引き戸4aの内側面に設けられた案内レール5と、他方の分割引き戸4bの外面側に設けられて上記案内レール5に沿って転動可能なローラ6とによって長さ方向に相対的に移動自在とされているが、1枚からなる単一の大きさのものであってもよい。
【0028】
引き戸4の下部には、平行2条のレール3間にわたる長さの複数の座板7が長さ方向に間隔をおいて設けられ、それぞれの座板7における下面の両端部に対向一対の軸受8が取付けられ、その一対の軸受8によって回転自在に支持された車輪軸9の両端部に平行2条のレール3に沿って転動可能な車輪10が設けられており、上記引き戸4が平行2条のレール3に沿って移動自在とされている。
【0029】
図1および図2に示すように、出入口2の一側部には戸当たり支柱11が設けられ、その戸当たり支柱11に対する引き戸4の戸先側端面の当接によって引き戸4は閉鎖位置に停止保持される。
【0030】
図3および図4に示すように、引き戸4の戸先側端部には、スライド操作用の外側ハンドル12aおよび内側ハンドル12bが取付けられている。図4および図5に示すように、ハンドル12a、12bのそれぞれは、コの字状をなし、その両端部が上下に位置するようにして引き戸4に取付けられ、上記引き戸4との間に指先挿入部13が形成されている。
【0031】
また、ハンドル12a、12bのそれぞれには、指先挿入部13において開口するグリッパ収容溝14が形成され、そのグリッパ収容溝14のそれぞれ内部に組み込まれたグリッパ15は、ハンドル12a、12bの上端部で支持されたピン16を中心に揺動自在に支持されて、内側部が指先挿入部13に露出し、ハンドル12a、12bを握ることにより同時に握り締められてピン16を中心に揺動するようになっている。
【0032】
図3に示すように、引き戸4の戸先側端部には、上記ハンドル12a、12bの取付位置よりも上側の位置に、引き戸4を閉鎖位置において施錠する引き戸錠20が設けられている。
【0033】
図9および図10に示すように、引き戸錠20は、引き戸4の戸先側端面に埋設される錠ケース21と、その錠ケース21の対向する側板によって両端部が支持された支点軸22を中心にして揺動可能な鎌状ボルト23と、その鎌状ボルト23の上側に配置されて先端部が錠ケース21のフロントプレート21aに形成されたトリガー挿入孔24に対して出没自在とされ、後端部に鎌状ボルト23の後端部が挿入される切欠部26が形成されたスライド可能なトリガー部材25とを有している。
【0034】
上記の引き戸錠20においては、トリガー部材25を戸当たり支柱11に対する当接により錠ケース21内に押込み、そのトリガー部材25に形成された切欠部26の閉塞端で鎌状ボルト23の後端部を押圧して、支点軸22を中心に鎌状ボルト23を揺動させ、その鎌状ボルト23の先端部に形成された鈎片23aをフロントプレート21aに形成された開口27から戸当たり支柱11に形成された係合孔28内に進入させて、その係合孔28の周縁部に係合させるようにしている。
【0035】
また、錠ケース21の対向する側板によって解錠プレート29に設けられたボス部30の両端部を回転自在に支持し、そのボス部30を中心にして回転自在に設けられたロックレバー31の先端部を鎌状ボルト23の外周一部に形成された係合段部32に係合させて、鎌状ボルト23を係合状態でロックするようにしている。
【0036】
ここで、鎌状ボルト23は、支点軸22に支持されたキックばねからなる弾性部材33によって係合孔28から係合解除する方向に向けて付勢されており、上記ロックレバー31が係合段部32に対して係合解除すると、弾性部材33の弾性力によって鎌状ボルト23が係合解除方向に揺動するようになっている。
【0037】
また、ロックレバー31は、ボス部30に支持されたキックばねからなるロックばね34によって鎌状ボルト23に向けて付勢され、上記鎌状ボルト23が係合孔28の周縁部に係合すると、ロックレバー31が係合段部32に自動的に係合するようになっている。
【0038】
さらに、解錠プレート29のボス部30の軸心上には角孔35が形成され、その角孔35に挿入された角軸36を回転させると、解錠プレート29が回転し、その解錠プレート29に形成された加圧ピン37がロックレバー31の外周に形成された突片38を押圧して、ロックレバー31を係合段部32から係合解除する方向に向けて揺動させるようになっている。
【0039】
図5に示すグリッパ15と図9に示す引き戸錠20の相互間には、グリッパ15の握り締めによる揺動に連動して引き戸錠20を解錠させる解錠連動機構40が設けられている。
【0040】
解錠連動機構40は、ハンドル12a、12bのそれぞれ下部にピン41を設け、そのピン41を中心にして揺動可能に支持されたL形のカム片42の一端部をグリッパ15の下端部に形成された連動孔43内に挿入し、上記カム片42の他端部を、図6に示すように、コントロールユニット44のユニットケース45内に昇降自在に組み込まれたスライド部材46の係合孔47内に挿入し、そのスライド部材46の後端部に上下に貫通するロッド挿入孔57を形成し、そのロッド挿入孔57内に下端部がスライド自在に挿入された突き上げロッド48の上端部を、図9に示すように、ロックレバー31の揺動操作用の角軸36に一端部が固定された解除レバー49の他端部下面に対向させるようにしている。
【0041】
また、突き上げロッド48のユニットケース45内に位置する下端部に、図6に示すように、スライド部材46の上面後部に形成された低段面46aと上下で対向する抜止め突部53を設け、上記スライド部材46には、その前後面に貫通するガイド孔58を形成し、そのガイド孔58内にトリガー部材51をスライド自在に挿入してユニットケース45のフロントプレート45aに形成されたトリガー挿入孔50に対して先端部を出没自在とし、スライド部材46の内部空間内に組み込まれたばね52によってトリガー部材51を突出方向に向けて付勢している。
【0042】
ここで、トリガー部材51は、前部トリガー部材51aと後部トリガー部材51bとに分割されており、その前部トリガー部材51aの後部には対向一対の側板51cが形成され、その一対の側板51c間に後部トリガー部材51bがスライド自在に組み込まれている。また、一対の側板51cには横長孔90が形成され、その横長孔90内に後部トリガー部材51bに設けられたピン91がスライド自在に挿入されて、前部トリガー部材51aと後部トリガー部材51bとは伸縮自在に連結され、その連結部間に組み込まれたトリガーばね92によって前部トリガー部材51aと後部トリガー部材51bとを伸長する方向に付勢されている。
【0043】
上記トリガー部材51は、スライド部材46および突き上げロッド48が下降してユニットケース45の底板で支持される下降停止状態において、戸当り支柱11に対する当接によりユニットケース45内に押し込まれると、後部トリガー部材51bの後部に設けられた回転可能なローラ93が抜止め突部53の下面と上下で対向して、その下面を支持するようになっており、また、トリガー挿入孔50から先端部が突出する突出状態で、上記ローラ93が抜止め突部53の下面から退避する位置まで前進動するようになっている。
【0044】
なお、解錠連動機構40を構成するコントロールユニット44のユニットケース45は、図3および図4に示すように、引き戸4の戸先側端面に埋設される取付けとされ、そのユニットケース45内には、図6に示すように、スライド部材46を下向きに付勢する押しばね54が組み込まれている。
【0045】
上記の構成からなる解錠連動機構40においては、グリッパ15の握り締めによる揺動により、ピン41を中心にカム片42をグリッパ15に対して相反する方向に揺動させ、そのカム片42の他端部でスライド部材46の係合孔47の内周上面を上方に押圧してスライド部材46を上昇させるようにしている。また、スライド部材46と共に上昇するトリガー部材51により抜止め突部53を押し上げて突き上げロッド48を上昇動させ、その突き上げロッド48で解除レバー49を係合解除方向に揺動させて角軸36を回転させ、角軸36と共に回転する解錠プレート29の回転によりロックレバー31を回転させて、係合段部32に対する係合を解除させるようにしており、その係合解除によって、弾性部材33の弾性により、鎌状ボルト23が解錠方向に揺動するようになっている。図5に示すSは、グリッパ15およびカム片42の復帰回動用のキックばねを示す。
【0046】
図11および図12に示すように、車輪軸9上には、その車輪軸9に制動力を付与する制動装置60が設けられている。制動装置60は、車輪軸9に固定されたブレーキロータ61と、車輪軸9に嵌合されて、そのブレーキロータ61に向けてスライド可能なパッドホルダ62と、そのパッドホルダ62のブレーキロータ61に対する対向面に保持されたブレーキパッド63と、上記パッドホルダ62をブレーキロータ61に向けて付勢するスプリング64とからなり、上記ブレーキロータ61に対するブレーキパッド63の摩擦接触によって車輪軸9に制動力を付与するようにしている。
【0047】
制動装置60の上側には、その制動装置60を制動状態と制動解除状態とに選択的に切り換える制動解除機構70が設けられている。制動解除機構70は、座板7の下面にコの字形のブラケット71を固定し、そのブラケット71によって移動自在に支持された回り止めピン72の先端部をパッドホルダ62の端面に形成された凹部73に対して係脱自在とし、その回り止めピン72をスプリング74によりパッドホルダ62に向けて付勢し、上記凹部73に対する回り止めピン72の先端部の係合によって制動装置60を制動状態とし、係合解除によって制動装置60を制動解除状態としている。
【0048】
ここで、凹部73は、図13に示すように、パッドホルダ62の端面周方向に間隔をおいて複数設けられている。
【0049】
制動解除機構70は、グリッパ15との間に設けられた連動機構80によって切換え操作されるようになっている。連動機構80は、アウタチューブ81内に挿通されたインナワイヤ82の一端部を図6に示すスライド部材46に形成されたワイヤ挿入孔83内にスライド自在に挿入して、その上端に設けられた係合突部84をワイヤ挿入孔83の上側に形成された連結孔85内に上昇動を可能とする遊びをもって嵌合し、上記インナワイヤ82の他端部を図12に示す回り止めピン72に連結し、グリッパ15を握り締めることによるスライド部材46の上昇動によりインナーワイヤ82を介して回り止めピン72を後退動させて凹部73に対する係合を解除させるようにしている。
【0050】
実施の形態で示すスライド式門扉は上記の構造からなり、内側からの操作によって引き戸4を開放する場合は、内側ハンドル12bとグリッパ15を共に握り締めて内側ハンドル12bを引き戸4が戸当たり支柱11から離反する方向に引くようにする。
【0051】
いま、内側ハンドル12bと共にグリッパ15を握り締めると、グリッパ15がピン16を中心に揺動し、その揺動に連動してカム片42がグリッパ15と相反する方向に揺動する。また、カム片42の揺動により、そのカム片42の他端部がスライド部材46の係合孔47の内周上面を上方に押圧するため、スライド部材46およびそのスライド部材46に支持されたトリガー部材51が上昇する。
【0052】
このとき、トリガー部材51は、図6に示すように、戸当たり支柱11により押し込められた状態にあって、その後端部が抜止め突部53の下面に対向する状態にあるため、スライド部材46と共に上昇動するトリガー部材51により抜止め突部53が押し上げられる。その押し上げにより、図7に示すように、突き上げロッド48が上昇し、図9に示す解除レバー49の他端部を押し上げる。その押し上げにより解除レバー49が揺動する。
【0053】
解除レバー49の揺動により、角軸36が回転し、その角軸36と共に解錠プレート29が図9の反時計方向に回転して、解錠プレート29に設けられた加圧ピン37がロックレバー31に形成された突片38を押圧する。その押圧により、ロックレバー31が解錠プレート29と同方向に回転して、鎌状ボルト23に形成された係合段部32に対する係合が解除する。
【0054】
係合段部32に対するロックレバー31の係合解除により、弾性部材33の弾性により、鎌状ボルト23が解錠方向に揺動し、図10に示すように、引き戸錠20が解錠状態となる。
【0055】
このように、ハンドル12bと共にグリッパ15を握り締めることによって、グリッパ15が揺動し、解錠連動機構40の作動により引き戸錠20が解錠するため、グリッパ15の握る状態で内側ハンドル12bを引くことにより、引き戸錠20の解錠操作と、引き戸4の開放操作の一連の操作を連続して行うことができ、引き戸4を簡単に開放させることができる。
【0056】
ここで、引き戸4を開放すると、引き戸4の戸先側端部が戸当たり支柱11から離反するため、図8に示すように、トリガー部材51がばね52の押圧により前進して後端部が抜止め突部53の支持を解除する。その支持解除により、抜止め突部53および突き上げロッド48が自重で下降し、その突き上げロッド48の上端が解除レバー49から離反し、ロックレバー31のロック方向への回動を可能とする。
【0057】
このため、引き戸4を一旦開放させた後、閉鎖方向に移動させ、戸当たり支柱11に対するトリガー部材25の当接により、そのトリガー部材25を錠ケース21内に後退動させ、鎌状ボルト23の他端部の押圧により、その鎌状ボルト23を施錠方向に揺動させて、引き戸錠20を施錠させると、ロックレバー31はロックばね34の押圧により係合方向に揺動して、係合段部32に係合することになり、グリッパ15を握る状態で引き戸錠20を自動施錠することができる。
【0058】
上記のような引き戸4の開放操作において、グリッパ15を握り締め、カム片42の揺動によりスライド部材46を上昇させると、係合突部84の下面と連結孔85の底面の係合によりインナワイヤ82が引かれ、そのインナワイヤ82に連結された回り止めピン72がパッドホルダ62から離反する方向に移動し、凹部73に対する回り止めピン72の係合が解除する。その回り止めピン72の係合解除によって制動装置60は制動解除状態になり、比較的小さな操作力によって引き戸4を開放させることができる。
【0059】
ここで、図8に示すように、スライド部材46の上昇停止位置でトリガー部材51が前進し、その後端部が抜止め突部53の下面から退避して、突き上げロッド48が下降する停止状態で、引き戸4が閉鎖方向に引かれると、トリガー部材51の先端部が戸当たり支柱11に当接して押し込まれ、後端部が抜止め突部53に当接することになる。
【0060】
このとき、トリガー部材51は、前部トリガー部材51aと後部トリガー部材51bを伸縮自在に連結し、その連結部間に前部トリガー部材51aと後部トリガー部材51bを伸長する方向に付勢するトリガーばね92を組込んだ構成とされているため、後部トリガー部材51bは抜止め突部53に当接して停止状態とされ、前部トリガー部材51aのみが押し込まれることになってトリガー部材51が収縮する。このため、トリガー部材51が抜止め部材53に衝撃的に衝突するというようなことがなく、トリガー部材51や抜止め突部53、突き上げロッド48等の各種の部品が損傷するというようなことはない。
【0061】
引き戸4の開放後、グリッパ15の握りを解除すると、図8に示す押しばね54の押圧によりスライド部材46が下降して、図6に示すように、ユニットケース45の底板で支持される下降停止とされる。
【0062】
この時、図12に示すスプリング74の復元弾性力により回り止めピン72がパッドホルダ62に向けて移動し、その回り止めピン72が凹部73に対向する状態にあると、その回り止めピン72が凹部73に係合してパッドホルダ62を回り止めし、制動装置60は制動状態とされる。
【0063】
一方、回り止めピン72と凹部73とがパッドホルダ62の周方向に位置がずれる状態にあると、回り止めピン72はパッドホルダ62の端面に当接して乗り上げ状態とされる。この時、インナワイヤ82の一端部に設けられた係合突部84と連結孔85との間には、係合突部84とスライド部材46とが相対的に移動することができる遊びが設けられているため、その遊びによってスライド部材46は下降停止位置まで下降することになる。その結果、回り止めピン72の乗り上げによって引き戸錠20が施錠および解錠することができなくなるという不都合の発生はなく、引き戸錠20を確実に施、解錠させることができる。
【0064】
なお、上記発明の実施形態では、出入口を横切るようにして敷設したレール3上を転動する車輪10を下部に設けた引き戸について説明したが、レール、車輪等を有さない吊元柱に吊持した引き戸であっても構わない。即ち、引き戸4には、引き戸錠20と解錠連動機構40のみを設け、制動装置60、制動解除機構70および連動機構80を省略したものであっても、本発明の要旨を逸脱するものではない。
【符号の説明】
【0065】
2 出入口
3 レール
4 引き戸
9 車輪軸
10 車輪
12a 外側ハンドル
12b 内側ハンドル
15 グリッパ
20 引き戸錠
21 錠ケース
21a フロントプレート
23 鎌状ボルト
23a 鈎片
24 トリガー挿入孔
25 ボルト操作用のトリガー部材
28 係合孔
31 ロックレバー
32 係合段部
34 ロックばね
40 解錠連動機構
42 カム片
45 ユニットケース
46 スライド部材
48 突き上げロッド
49 解除レバー
50 トリガー挿入孔
51 トリガー部材
51a 前部トリガー部材
51b 後部トリガー部材
52 ばね
60 制動装置
61 ブレーキロータ
62 パッドホルダ
63 ブレーキパッド
64 スプリング
70 制動解除機構
72 回り止めピン
73 凹部
80 連動機構
81 アウタチューブ
82 インナワイヤ
92 トリガーばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口を横切るようにしてスライド可能な引き戸の戸先側端部に、その引き戸のスライド操作用のハンドルと、引き戸を閉鎖位置において施錠する引き戸錠とを設け、その引き戸錠を解錠し、前記ハンドルを引く操作によって引き戸を開放させるようにしたスライド式門扉において、
前記ハンドルにグリッパを揺動可能に設け、そのグリッパの握り締めによる揺動に連動して前記引き戸錠を解錠させる解錠連動機構を設けたことを特徴とするスライド式門扉。
【請求項2】
前記引き戸錠が、前記引き戸の戸先側端面に埋設される錠ケースと、その錠ケース内に組み込まれ、引き戸を閉鎖位置に停止保持する戸当たり支柱に設けられた係合孔に対して係合可能な鈎片を先端部に有する揺動可能な鎌状ボルトと、前記錠ケースのフロントプレートに形成されたトリガー挿入孔に対して先端部が出没自在とされ、前記戸当たり支柱に対する当接によって錠ケース内に押し込まれた際に、鎌状ボルトの後端部を押圧して、その鎌状ボルトを施錠位置に向けて揺動させるボルト操作用のトリガー部材と、そのトリガー部材を突出方向に向けて付勢する弾性部材と、前記錠ケース内に組み込まれ、鎌状ボルトの外周一部に形成された係合段部に対する係合によって、その鎌状ボルトを施錠位置でロックする揺動可能なロックレバーと、そのロックレバーを鎌状ボルトに向けて付勢するロックばねとを有してなり、
前記解錠連動機構が、前記ロックレバーの揺動中心軸上に設けられて、そのロックレバーと一体的に回転する解除レバーと、前記グリッパの揺動に連動してグリッパの揺動方向と相反する方向に揺動するL形のカム片と、そのカム片の揺動に連動して昇降動するスライド部材と、そのスライド部材と共に昇降動し、上昇時に前記解除レバーの揺動側端部を押し上げて、前記ロックレバーをロック解除位置に向けて揺動させる突き上げロッドからなる請求項1に記載のスライド式門扉。
【請求項3】
前記解錠連動機構が、前記ロックレバーの揺動中心軸上に設けられて、ロックレバーと一体的に回転する解除レバーと、前記グリッパの揺動に連動してグリッパの揺動方向と相反する方向に揺動するL形のカム片と、前記引き戸の戸先側端面に埋設されたユニットケースと、そのユニットケース内に組み込まれ、前記カム片の揺動に連動して昇降動するスライド部材と、そのスライド部材によって下端部が上下方向にスライド自在に支持され、ユニットケースの上方に位置する上端が前記解除レバーの揺動側端部の下面に対向し、前記ユニットケース内に位置する下端部に設けられた抜止め突部の引き上げにより上昇して、前記ロックレバーをロック解除位置に向けて押し上げ揺動させる突き上げロッドと、前記スライド部材により水平方向にスライド自在に支持されて、ユニットケースのフロントプレートに形成されたトリガー挿入孔に対して先端部が出没自在とされ、前記戸当たり支柱に対する当接によってユニットケース内に没入した際に後端部が前記抜止め突部の下面と対向し、突出時には前記後端部が抜止め突部の下面から退避するロッド昇降用のトリガー部材と、そのトリガー部材を突出方向に向けて付勢するばねとからなる請求項1又は2に記載のスライド式門扉。
【請求項4】
前記ロッド昇降用トリガー部材を、その長さ方向で分割して前部トリガー部材と後部トリガー部材を設け、その前部トリガー部材と後部トリガー部材を伸縮自在に連結し、その連結部間に前部トリガー部材と後部トリガー部材を伸長する方向に付勢するトリガーばねを組込み、前記後部トリガー部材の後端部に前記抜止め突部を支持する回転可能なローラを設けた請求項3に記載のスライド式門扉。
【請求項5】
前記引き戸が、出入口を横切るようにして敷設したレールに沿って転動可能な複数の車輪を下部に有し、前記車輪を支持する回転可能な車輪軸に対して制動力を付与する制動装置と、その制動装置を制動状態と制動解除状態とに選択的に切り換える制動解除機構とを設け、前記グリッパの揺動に連動して前記制動解除機構を作動させる連動機構を設けた請求項1乃至4のいずれかの項に記載のスライド式門扉。
【請求項6】
前記制動装置が、前記車輪軸に固定されたブレーキロータと、前記車輪軸に嵌合されて、前記ブレーキロータに向けてスライド可能なパッドホルダと、そのパッドホルダのブレーキロータに対する対向面に保持されたブレーキパッドと、前記パッドホルダをブレーキロータに向けて付勢するスプリングとからなり、
前記制動解除機構が、前記パッドホルダの端面に向けて移動自在に支持され、そのパッドホルダの端面に形成された凹部に対する先端部の係合によってパッドホルダを回り止めする回り止めピンと、その回り止めピンをパッドホルダに向けて付勢するスプリングとからなり、
前記連動機構が、アウタチューブ内に挿通されたインナワイヤの一端部を前記スライド部材に相対的な移動を可能とする遊びをもって連結し、そのインナワイヤの他端部を前記回り止めピンに連結した構成からなる請求項5に記載のスライド式門扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−64292(P2013−64292A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204426(P2011−204426)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000180302)四国化成工業株式会社 (167)
【出願人】(000230928)シコク景材株式会社 (18)
【出願人】(000131511)株式会社シブタニ (88)
【Fターム(参考)】