説明

スライド式開閉蓋を有する収納容器

【課題】たとえ片手が塞がっていても、容器本体のどちら側からでも積層薄紙を容易に、素早く引き出せるようにする。
【解決手段】内側に積層薄紙Pを収容する収容空間Sとこの積層薄紙Pの取出し口4とが備わった容器本体2と、前記取出し口4を閉塞並びに解放するための開閉蓋5とが備わり、前記開閉蓋5が前記容器本体2の外壁にほぼ沿って平行にスライド出来るように装着されていると共に、容器本体2と開閉蓋5の辺縁16の間にこの開閉蓋5による前記取出し口4の閉塞姿勢を保持するロック機構17が設けられ、このロック機構17は開閉蓋5の前記辺縁16上面を押圧することでロック解除可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウエットティッシュ等、主として家庭で用いられている多数枚が積層された薄紙を収納するための収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体等を拭ったり、家屋の床やトイレ等を拭いたりするため等の積層薄紙を収納する収納容器が知られている。
この種の家庭用の積層薄紙の収納容器は、例えば、内側にそのまま集積された若しくは個包装された積層薄紙を収容する収容空間とこの積層薄紙の取出し口を上部に備えた容器本体と、この容器本体の上部に回動自在に設けられて取出し口を開放及び閉塞する開閉蓋とを備えたものが存在したり提案されていたりする。そして、何れもが開閉蓋を上向きに回動させて取出し口を開放し、この取り出し口から積層薄紙を引き出して使用する。使用後は開閉蓋を下向きに回動させて取出し口を閉塞し、積層薄紙に塵や埃が付着するのを防止するようにしてある。(例えば特許文献1〜8参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来のこの種収納容器は、多くのものが開閉蓋を開放した際に、この開閉蓋が上方へ立ち上がってその開放姿勢を保っている(特許文献1〜6参照)。
翻って、この種積層薄紙を容器から引き出す際の状況は、特に赤ちゃんなどの乳幼児のおしり拭きとして使用する場合においては、片方の手に乳幼児を抱き抱えていたり、幼児の足首などを持っていたりといった状況など、往々にして片側の手が塞がっている場合に使用されることが多いのが良く知られている事実でもある。
【0004】
したがって、この片手が塞がっている状況下で、空いているもう片方の手で積層薄紙を容器から引き出そうとしても、特に容器の背側からでは開閉蓋がその引き出しを邪魔して、また、視界を遮って、中々上手く引き出せないのが常であった。
【0005】
一方、種々検討の過程で、開閉蓋をその閉塞姿勢から180度反転して、取出し口を大きく解放するものも見られる(特許文献7〜8参照)。
【0006】
しかし、このタイプは開閉蓋をその閉塞姿勢に保つためのロック構造が、一般的には、開閉蓋から一体に突設させた係合片を容器本体に連設したプッシュ片に係合する構造(特許文献6〜7参照)であったり、開閉蓋に設けたノッチを容器本体の係合凹部に係止させる等であったりする。そのために、早期の内に係合力が弱まり、開閉蓋が開きっぱなしになったり、係合片とプッシュ片の係合に不具合が生じても、開け難く、開放作業に時間がかかったりする問題点が見られる。そして、何れの場合にも開放姿勢にあるときの開閉蓋が、容器本体の側方へ大きく突出し、手足に引っ掛かったりして、取り扱い上問題がある。
【0007】
そこでこの発明の課題は、たとえ片手が塞がっていても、容器本体のどちら側からでも積層薄紙を容易に、素早く引き出せるようにする点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の技術的な課題を解決するために、この発明の請求項1記載のスライド式開閉蓋を有する収納容器は、内側に積層薄紙を収容する収容空間とこの積層薄紙の取出し口とが備わった容器本体と、前記取出し口を閉塞並びに解放するための開閉蓋とが備わり、前記開
閉蓋が前記容器本体の上壁にほぼ沿って平行にスライド出来るように装着されていると共に、容器本体と開閉蓋の辺縁の間にこの開閉蓋による前記取出し口の閉塞姿勢を保持するロック機構が設けられ、このロック機構は開閉蓋の前記辺縁上面を押圧することでロック解除可能に構成する構造を採用したものである。
【0009】
以上の構成によれば、開閉蓋の辺縁を押圧することでロックを解除でき、しかも開閉蓋を取出し口の存在仮想平面と平行に横移動させることによって取出し口を開放できるので、容器本体の何れの側からでも、取出し口をしっかり視認できながら、しかもワンタッチで簡便に開閉蓋の開閉が可能になる。
【発明の効果】
【0010】
従って、この発明の請求項1記載のスライド式開閉蓋を有する収納容器は、開閉蓋が立ち上がって開放姿勢を保つ従来品やロック機構の作動が不安定な従来品と違って、収納容器の向きに関わりなく、どちらの側からも簡便に開閉蓋を開閉でき、併せて開閉蓋に邪魔されることなく、的確、かつ、素早く積層薄紙を取出し口から引き出すことができる。
【0011】
また、上記の技術的な課題を解決するために、この発明は請求項2に記載のように、内側に積層薄紙の収容空間を備え、上壁が弧状に形成されていて、この上壁に積層薄紙の取出し口が備わった容器本体と、前記取出し口を閉塞並びに解放するための前記上壁の円弧形状に沿って円弧状に形成された開閉蓋とを備え、前記容器本体には前記開閉蓋が前記容器本体の上壁の弧状面にほぼ沿って平行にスライド出来るようにこれを案内するガイドが備わっていると共に、容器本体と開閉蓋の辺縁の間にこの開閉蓋による前記取出し口の閉塞姿勢を保持するロック機構が設けられ、このロック機構は開閉蓋の前記辺縁上面を押圧することでロック解除可能に構成されたものである。
【0012】
以上の構成によるスライド式開閉蓋を有する収納容器においては、図2の説明断面図に示すように、開閉蓋がロック機構によって取出し口を覆い、収納空間内の積層薄紙が乾燥するのを防止しながら、閉塞姿勢を保っている。この状態から収納空間内の積層薄紙を取り出すには、開閉蓋の辺縁を指先などで押圧して、開閉蓋を押しやり撓ませる。この撓みによって、開閉蓋と容器本体とのロック状態が解除される。ロックが解除された後は、容器本体の向きはそのままで、先ほどの開閉蓋の辺縁を押し付けた指などで、この容器本体の向きに応じて、開閉蓋を手前に引く、又は前方へ押しやる。このようにすることで、図3の作用を示す全体外観図中の矢印で示すように、開閉蓋は容器本体の上壁の弧状面にほぼ沿って平行にスライドする。このスライドはガイドによって円滑に達成される。開閉蓋が取出し口を開放したら、指先で積層薄紙を引き出す。開閉蓋は取出し口の片側へ移るだけであるから、容器本体の向きによって開閉蓋が視界を遮って取出し口が見え難くなることがなく、容器本体の何れの側からでもこの取出し口を的確に視認できる。
【0013】
積層薄紙を使い終わって取出し口を閉塞するには、図3に示した開放姿勢から、開閉蓋辺縁のプッシュ部に指先を添えて開閉蓋を閉止方向へ押しやり、開閉蓋をガイドに沿ってスライドさせる。最終段階でやや強く押しやってロック機構を作動させ、図1や図2に示す閉塞姿勢を保つようにする。
【0014】
従って、この発明の請求項2記載のスライド式開閉蓋を有する収納容器は、開閉蓋の辺縁を押圧することでロックを解除でき、しかも開閉蓋を取出し口の存在仮想平面と平行に横移動させることによって取出し口を開放できるので、容器本体の何れの側からでも、取出し口をしっかり視認できながら、しかもワンタッチで簡便に開閉蓋の開閉が可能になる。
その結果、開閉蓋が立ち上がって開放姿勢を保つ従来品やロック機構の作動が不安定な従来品と違って、収納容器の向きに関わりなく、どちらの側からも簡便に開閉蓋を開閉で
き、併せて開閉蓋に邪魔されることなく、的確、かつ、素早く積層薄紙を取出し口から引き出すことができる。
【0015】
また、この発明に係るスライド式開閉蓋を有する収納容器は、請求項3に記載されるように、ガイドは容器本体の左右の壁面下部に形成されたガイドレールと前記開閉蓋の左右の垂下壁の下部に設けられ、前記ガイドレールに嵌め込まれた駒とで構成されるのが望ましい。
開閉蓋の開閉動作を一層的確、かつ迅速、更にスムーズに行えるからである。
【0016】
また、請求項4に記載のように、開閉蓋の辺縁上面には部分的に粗面に形成された押圧面に形成されるのが望ましい。
指先の開閉蓋に対するフット感を高め、引っ掛かりを的確にして、開閉を的確、かつ、素早く行えるからである。
【0017】
更に、請求項5に記載のように、ロック機構は開閉蓋辺縁の左右中央下面から容器本体の上壁側に一体的に突設された上向きの係合突部と前記上壁のこの開閉蓋辺縁の中央部に対向する部位の下面に一体に設けられた下向きの係止凹部とから構成されるのが望ましい。
簡易な構造で、廉価に提供できるからである。
【0018】
また、請求項6に記載のように、開閉蓋は取出し口の開口幅よりもやや長寸に形成されていて、開放姿勢でこの取出し口の上方を開放すると共に、容器本体の側面からの側方への突出量がこの開閉蓋のスライド方向の幅のほぼ3分の1以下に設定されるのが望ましい。
開閉蓋が大きく側方へ食み出す従来品と違って、側方への突出量が可及的に小さく、安全に取り扱えるからである。
【0019】
さらに、積層薄紙としてウエットティッシュペーパーを用いるのが望ましい。
この発明に係るスライド式開閉蓋を有する収納容器の機能を最も理想的に働かせることができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係るスライド式開閉蓋を有する収納容器の実施例を示し、一部を取出して拡大した要部の拡大図を含む、開閉蓋を閉めた時の中央部分の説明断面図である。
【図2】開閉蓋を閉めた状態を示す全体外観図である。
【図3】開閉蓋を開いた状態を示す全体外観図である。
【図4】全体側面図で、(A)は開閉蓋を閉めた時の側面図、(B)は開閉蓋を開いた時の側面図である。
【図5】開閉蓋を開いた時の中央部分の説明断面図である。
【図6】ガイドと開閉蓋の関係を示し、一部を取出して拡大した要部の拡大図を含む、図1中A−A線一部切り欠き説明断面図である。
【図7】開閉蓋の変形例を示す一部切り欠き説明断面図である。
【図8】開閉蓋の別の変形例を示し、(A)は開閉蓋を閉めた時の一部切り欠き側面図、(B)は開閉蓋を開いた時の一部切り欠き側面図である。
【図9】この発明に係るスライド式開閉蓋を有する収納容器の別の実施例を示し、(A)は開閉蓋を閉めた時の一部切り欠き側面図、(B)は開閉蓋を開いた時の一部切り欠き側面図である。
【図10】ロック機構の変形例を示す要部の拡大断面図である。
【図11】ウエットティッシュの乾燥予防構造を示す全体外観図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明に係るスライド式開閉蓋を有する収納容器をウエットティッシュペーパー等の積層薄紙の収納容器に適用した場合の実施の形態を図1〜6の記載に基づいて説明する。
【0022】
本発明のスライド式開閉蓋を有する収納容器1は、図1、図3に示すように、容器本体2と、この容器本体2の上壁3の中央部分に形成されたウエットティッシュ等の積層薄紙(以下単にウエットティッシュと称するが、あくまでもウエットティッシュに限定されるものでないことは言うまでもない)の取出し口4と、この取出し口4を開閉する開閉蓋5とを具備する。
【0023】
容器本体2は、例えば硬質ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂を素材にしてほぼ直方体として形成されている。この容器本体2の底壁6は、図1、5に示すように、容器本体2の周壁7に対して凹凸縁8を介して着脱自在に嵌合させる。凹凸縁8の嵌合により、容器本体2内が密封状態に保たれる。凹凸縁8の嵌合を解除してこの底壁6を外すことによって、容器本体2の収納空間S内にウエットティッシュPを収納できる。
【0024】
次に、取出し口4の構成について、図1、図3、図5の記載に基づいて説明する。
容器本体2の上壁(天壁)3の中央部分を収納空間S側に矩形にやや凹没させて凹部9を一体的に形成する。そして、この凹部9の中央に取出し口4が形成される。開口の形状は容器本体2の長手方向(図1上において紙面の奥行き方向)に延びるようにして、周知の円形、楕円形、長方形、更には波型、十字型など種々選択される(図外)。また、この容器本体2の上壁3は、容器本体の長手方向に直行する方向、つまりは幅方向(図1において紙面の左右方向)で、中央部が軽く上方に盛り上がっていて、容器本体全体としては、側面視ほぼかまぼこ型を呈する。
【0025】
更に、この上壁3は、前記幅方向をほぼ等分に三分割した一側方の3分の1部分が残りの3分の2部分よりやや上方の高位の位置にあるように寸法設定されている。そして、高位の上壁3Aと低位の上壁3Bの境には、丁度開閉蓋5の肉厚寸法よりやや長い寸法に設定された段差10が形成される。この段差10は容器本体2左右の側壁14 (後述:図2〜4参照)にも連なって一連に形成されていて、開閉蓋5の左右の脚部分12(後述:図2〜4参照)のガイド溝15(後述:図2〜4、図6参照)まで連なって設けられている。前記凹部9はこの低位の上壁3Bに設けられている。また、前記段差10は、後述するロック機構17を形成するのに便利であり、また、開閉蓋5閉めた時の見栄えが良くなるようにするために設けられている。
【0026】
開閉蓋5は、図1、図3、図4、図5に明示するように、容器本体2の前記幅方向の寸法のほぼ3分の1の幅を備え、設置される位置は低位の上壁3B存在側である。この開閉蓋5は、例えば硬質ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂を素材にして形成されている。上壁3の形状に合わせて中央部が軽く上方に盛り上がった円弧状の閉塞板部分11と、この閉塞板部分11の両端から下方へ一体に垂下された脚部分12から構成されている。設置位置は低位の上壁3B存在側である。閉塞板部分11は、前記低位の上壁3Bに設けられた前記凹部9の全域上方を覆うことが出来る寸法である。また、この前記閉塞板部分11の段差10存在側の辺縁16の中央部分上面には部分的に粗面にした押圧面11A(図2上PUSH表示部位、図3)が形成されている。指先の開閉蓋5に対するフィット感を高め、引っ掛かりを的確にして、開閉を的確、かつ、素早く行えるようにするためである。粗面の形態としては、砂状の凹凸形状や複数の凸状リブ、更には複数の凹状溝などを用いることができる。
【0027】
図1、図5、特に図6に示すように、この脚部分12の下端には夫々内側に突設するスライド駒13が一体に設けられている。このスライド駒13は、容器本体2の長手方向の両側の側壁14の外面下方に、断面コの字型に凹没させて設けられたガイドの一例としてのガイド溝15に滑動自在に嵌合されている。このガイド溝15は、前記上壁3の曲率に合わせてほぼ同じ曲率でカーブし、ほぼ前記段差10相当下方部位から低位の上壁3Bの終端相当部分で、容器本体2周壁7の下端に設けられた外向きフランジ7Aにわたって設けられている。従って、開閉蓋5は脚部分12を介して、この上壁3の曲率に沿って低位の上壁3Bに平行してスライドでき、スライド行程の最終段階で、脚部分12の一端がこのフランジ7Aに突き当ってそのスライドが終了する。この時の開閉蓋5の後ろ側の周壁7B側の突出量は、この発明では、図3、図4(B)、図5に示すように、概ね開閉蓋5の横幅寸法のほぼ3分の1程度に設定されている。
【0028】
尚、図6に示すように、前記開閉蓋5の両脚部分12に設けられたスライド駒13同士の間隔K1はガイド溝15の底同士の間隔K2と同等若しくはやや広く、かっ、容器本体2両側壁14の外面同士の間隔K3よりは狭い寸法に設定されていることは改めて言うまでもない。要するに、スライド駒13をガイド溝15から簡単に離脱させず、スムーズに開閉動できるようにするために形成されるものである。
【0029】
容器本体2と開閉蓋5の辺縁16の間に、開閉蓋5による前記取出し口4の閉塞姿勢を保持するロック機構17が設けられている。
ロック機構17は、図1、同図の拡大部分、図3、図4、図5に示すように、容器本体2側の上壁3の前記段差10部分内側、つまり上位の上壁3Aの下面に設けられた係合凹部18と、開閉蓋5のこの段差側に対向する辺縁16に段差10側に向けて一体に突設された係止突起19とから構成される。係合凹部18並びに係止突起19は共に、容器本体2の長手方向の中央部分に相当する位置に設けられている。係合凹部18は上壁3の前記段差10からやや内側に入った部位の下面を上方に凹入させて形成されている。また、係止突起19は先端に前記係合凹部18に下方から嵌合する上方への突部20を備えている。この係止突起19は、前記段差10に形成された矩形の挿入穴21を介して高位の上壁3Aの下面側へ出入りできるように構成されている。
【0030】
また、図1、図5に示すように、開閉蓋5の辺縁16の下面とこの辺縁16下の低位の上壁3B上面との間には、この開閉蓋5の下方への撓みを許し、係合凹部18から係合突起19が離脱を許すに足る隙間22が存在するように構成されている。この隙間22は、開閉蓋5の下面が低位の上壁3Bの上面よりやや高い位置にあるように、脚部分12の寸法を設定することで形成されている。
【0031】
開閉蓋5を開くには次のようにする。
先ず、図1、図2、図4(A)に示す状態で、先ず開閉蓋5の前記辺縁16の中央部分を指先などで下方へ押圧して、この辺縁16の中央部分を、前記隙間22の存在を活用して、下方へ撓ませる。この押圧によって、係止突起19の突部20が前記係合凹部18から下方へ移行して互いの係合状態が解除される。引き続き、図3中矢印で示すように、指先で開閉蓋5を段差10から低位の上壁3A終端側へ移行させることで取出し口4の上方を開放する。開閉蓋5は両脚部分12のスライド駒13が容器本体2のガイド溝15に案内されてスムーズに低位の上壁3Bのカーブに沿ってスライドして、取出し口4を開放する。前記ガイド溝15は容器本体2後ろ側の周壁7B手前で、周壁7下端の外向きとフランジ7A上まで形成されているので、脚部分12の一端がこのフランジ7Aに突き当ってそのスライドが終了する(図3、図4(B)、図5参照)。
【0032】
次に、開閉蓋5閉じるには、図3、図4(B)、更には図5に示される開放姿勢にある開閉蓋5の押圧面11Aを指先で押圧しながら、開閉蓋5を段差10側へ移行させる。こ
の移行はガイド溝15とスライド駒13によってスムーズに行われる。最終的に係止突起19が係合凹部18に係合されるまで押圧する。これによって、開閉蓋5の閉止動作が完了し、開閉蓋5取出し口4を閉止する(図1、図2、図4(A)参照)。
【0033】
次にこの発明の第2の実施例について、図7の記載に基づいて説明する。
図示するように、上記実施例1では押圧面11Aが粗面に形成された例を示したが、これに代えて、摘み23を設けた例を示す。
設置位置は押圧面11Aを設けた位置、若しくは閉鎖板部分11の上壁3A存在側の端縁となる、辺縁16の中央部分の上面に一体に立ち上げて設けられている。
開閉蓋5の開閉時に、この摘み23を指先で摘まむことによって、より一層的確に開閉蓋5の開閉を可能にする。
尚、他の構成は上記実施例1と同様であるので、実施例1と同様の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0034】
更に、以下に説明する実施例3では、収納容器2からウエットティッシュを取出す際の緊急性を勘案して、開閉蓋5の開放姿勢への動きをより一層軽い力で、素早く、また的確に行えるようにすることを意図して開発されたもので、スプリングの弾性反発力を利用して、ロック機構17によるロック解除後の開閉蓋5の開放動作を素早く行えるようにしたものである。
【0035】
図8に示すように、開閉蓋5の後ろ側の周壁7B側の下面に樹脂ばね24が装着されている。この樹脂ばね24を、開閉蓋5閉塞時に前記凹部9の後ろ側の周壁7B側の立ち上がり壁9Aに弾性反発力に抗して当接させ、ロック機構17のロック状態が解除されると、樹脂ばね24の弾性反発力で開閉蓋5が一挙に開放されるようになっている。
【0036】
樹脂ばね24は薄板状の長方形状の板バネを中央で二つ折にし、この二つ折り部24Aを前記凹部9側に向けた姿勢で、基端側の二枚重ね部分24Bを開閉蓋5の下面にピン止め25など適宜の手段で固定される。樹脂ばね24の長さは、適宜設定されるが、図例では開閉蓋5の幅のほぼ4分の1程度である。二つ折り部24Aはループになるので、凹部9の後ろ側の周壁7Bの立ち上がり壁9Aに当接すると、この壁9Aに沿って中間部分から上手く折れ曲がるようにして下方へ移行する。この折れ曲がりによって、弾性反発力が蓄えられる。また、前記凹部9の後ろ側の周壁7B側の低位の上壁3B部分の中央には、この樹脂ばね24の移行と開閉蓋5の閉塞時の折れ曲がり姿勢を許容するための凹入部26が形成されている。凹入部26の深さは、この凹入部26の底壁26Aが、図例では、収納容器2内に収められた新規のウエットティッシュ束の最上端面とほぼ同等の高さ位置にあるように設定されている。樹脂ばね24の素材はとしては、ポリウレタンなどの合成樹脂製またはシリコンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴムなどのゴム製のものを用いることができる。さらに形態(形状)としては、板状の板バネや円筒状のチューブバネなどを用いることができる。また、金属ばねを前記樹脂ばねの代替として用いることもできる。
尚、その他の構成は上記実施例1と同様であるので、実施例1と同様の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0037】
以上の各実施例では、上壁3を円弧状に形成し、収納容器2全体としては、側面視かまぼこ型に形成してあるが、この実施例4では、図9に示すように、上壁3が扁平に形成されている。この上壁3の扁平形状に合わせて、開閉蓋5も水平に方向に沿った扁平に形成され、また、ガイド溝15も水平に方向に沿って直線に形成されている。
この実施例4の場合も、開閉蓋5が開いたとき(図9(B)参照)に、その後ろ側の周壁7からの出っ張る量が前記実施例1と同等で、開いている開閉蓋5が手足に引っ掛かったりする虞も少なく、取り扱い易い。
尚、その他の構成は上記実施例1と同様であるので、実施例1と同様の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0038】
以上の各実施例において、必要に応じて、前記ロック機構17のロック強度を強弱種々選択出来るようにするのが望ましい。図10に示す例は、上記各実施例のものと違って、強く締めたい時の構造を示す。係合凹部18と係止突起19との引っ掛かりを強くし、外れにくくしたものである。
具体的には、係合凹部18の段差10側をほぼ垂直な面とし、これに対応させて、前記係止突起19の開閉蓋5に面する側を係合凹部18の前記垂直面に合わせてほぼ垂直に
形成したものである。係合凹部18と係止突起19との引っ掛かりが強くなり、強い閉止が可能になる。
【0039】
更に、11図に示すように、前記凹部9の周囲に可撓性のある素材、例えばゴム素材や合成樹脂素材の立ち上がり壁27を設ける。その立ち上がり高さは、開閉蓋5が凹部9上を覆った閉止時に、この開閉蓋5の下面にこの立ち上がり壁27の上縁が丁度接触する程度である。つまりは、開閉蓋5の下面と下位の上壁3Bとの間に形成されている前記隙間22と同等寸法である。
ロック機構17のロックを解除するために、開閉蓋5を下方へ押圧して撓ませるが、この立ち上がり壁27は可撓性であるから、この開閉蓋5の下方への撓みを自身が撓んで許すので、ロックの解除はスムーズに行われる。
【0040】
また、前記各実施例において、開閉蓋5の開放量は、前記凹部9の上方全域として説明をした。ウエットティッシュPを最も引き出し易い、理想的な開放量であるからである。しかし、この発明では、必ずしもこの最適な開放量に拘るものではない。少なくとも取出し口4の上方を開放できるに足る開放量であればウエットティッシュPは容易に引き出せるものであるから、最小限の開放量で効率良くウエットティッシュPを引き出せる範囲として、少なくとも取出し口4を解放する量が必要であることは言うまでもなく、この発明では、開放量の範囲としては取出し口4の上方から凹部9の上方の全域にわたる範囲を含み、この範囲内で適宜に設定されるのが望ましい。
【0041】
また、前記開閉蓋5の辺縁16の下面とこの辺縁16下の低位の上壁3B上面との間には、この開閉蓋5の下方への撓みを許し、係合凹部18から係合突起19が離脱を許すに足る隙間22が存在する構成を実施例1で示したが(図1中拡大部分参照)、図中符号の記載は省略するが、図7〜9に示す実施例2〜4も共に同様の構成を備えていることは言うまでもない。
【0042】
以上に示したこの本発明に係るスライド式開閉蓋を有する収納容器は、単にウエットティッシュペーパー収納紙容器に適用されるに止まらず、各種軟質材収納容器、その他各種容器など、ワンタッチの開閉を必要とする分野へも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
1…スライド式開閉蓋を有する収納容器
2…容器本体
3…上壁
3A…上位の上壁
3B…低位の上壁
4…取出し口
5…開閉蓋
7…周壁
7B…後ろ側の周壁
9…凹部
10…段差
11…閉塞板部分
12…脚部分
13…スライド駒
14…側壁
15…ガイド溝
16…辺縁
17…ロック機構
P…積層薄紙
S…収納空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【特許文献1】特開2008−143575号公報
【特許文献2】特開2008−137678号公報
【特許文献3】特開2008−100749号公報
【特許文献4】特開2006−347554号公報
【特許文献5】特開2001−341788号公報
【特許文献6】特開2005−104536号公報
【特許文献7】特開平11−349066号公報
【特許文献8】特開平08−104377号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に積層薄紙を収容する収容空間とこの積層薄紙の取出し口とが備わった容器本体と、前記取出し口を閉塞並びに解放するための開閉蓋とが備わり、前記開閉蓋が前記容器本体の上壁にほぼ沿って平行にスライド出来るように装着されていると共に、容器本体と開閉蓋の辺縁の間にこの開閉蓋による前記取出し口の閉塞姿勢を保持するロック機構が設けられ、このロック機構は開閉蓋の前記辺縁上面を押圧することでロック解除可能に構成されていることを特徴とするスライド式開閉蓋を有する収納容器。
【請求項2】
内側に積層薄紙の収容空間を備え、上壁が弧状に形成されていて、この上壁に積層薄紙の取出し口が備わった容器本体と、前記取出し口を閉塞並びに解放するための前記上壁の円弧形状に沿って円弧状に形成された開閉蓋とを備え、前記容器本体には前記開閉蓋が前記容器本体の上壁の弧状面にほぼ沿って平行にスライド出来るようにこれを案内するガイドが備わっていると共に、容器本体と開閉蓋の辺縁の間にこの開閉蓋による前記取出し口の閉塞姿勢を保持するロック機構が設けられ、このロック機構は開閉蓋の前記辺縁上面を押圧することでロック解除可能に構成されていることを特徴とするスライド式開閉蓋を有する収納容器。
【請求項3】
ガイドは容器本体の左右の壁面下部に形成されたガイドレールと前記開閉蓋の左右の垂下壁の下部に設けられ、前記ガイドレールに嵌め込まれた駒とで構成されている請求項2記載のスライド式開閉蓋を有する収納容器。
【請求項4】
開閉蓋の辺縁上面には部分的に粗面に形成された押圧面が設けられている請求項2又は3のいずれかに記載のスライド式開閉蓋を有する収納容器。
【請求項5】
ロック機構は開閉蓋辺縁の左右中央下面から容器本体の上壁側に一体的に突設された上向きの係合突部と前記上壁のこの開閉蓋辺縁の中央部に対向する部位の下面に一体に設けられた下向きの係止凹部とから構成されている請求項2〜4のいずれかに記載のスライド式開閉蓋を有する収納容器。
【請求項6】
開閉蓋は取出し口の開口幅よりもやや長寸に形成されていて、開放姿勢でこの取出し口の上方を開放すると共に、容器本体の側面からの側方への突出量がこの開閉蓋のスライド方向の幅のほぼ3分の1以下に設定されている請求項2〜5のいずれかに記載のスライド式開閉蓋を有する収納容器。
【請求項7】
積層薄紙がウエットティッシュである請求項1〜6のいずれかに記載のスライド式開閉蓋を有する収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−91835(P2012−91835A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241333(P2010−241333)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】