説明

スライド式電極接続部

【課題】被検者に不快感を与えずに容易に装着可能であり、小型軽量化を実現すること。
【解決手段】生体に取り付けられる面状の接触電極40の端子部46に着脱自在に取り付けられるスライド式電極接続部100である。底面部120に、端子部46の頭部46bよりも大径に形成され、端子部46が挿入される挿入孔部132と、この挿入孔部132と連続して形成され、頭部46bの外径よりも小さい幅を有し、頸部46aを位置させて頭部46bに係合する係合溝部134と、係合溝部134内に頸部46aを位置させた際に、端子部46に接触する接触端子部材140とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の胸部等に取り付けられた接触電極に形成された突起状の端子部に接続して、接触電極から得られる生体情報を心電計や生体情報のモニタ等の生体情報取得装置に誘導する生体情報取得用のスライド式電極接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、不整脈や虚血性心疾患などの心電図異常を調べるために、心電図検査が行われている。心電図検査では、被検者の両手首、両足首および胸部に電極を取付け、これらの電極で心臓の活動により発生する微小な起電力を検出し、検出した起電力の電位差を利用して心電図波形を取得する。
【0003】
胸部から微小の起電力を検出する場合、例えば、特許文献1に示すように、胸部に、面状の接触電極を取り付ける。そして、この面状の接触電極において外面から突出する端子部に、心電計から導出されるケーブルの先端に設けられた電極用クリップまたは電極用ホックを接続することによって、接触電極で検出した起電力の情報(電気パルス)は心電計に入力される。
【0004】
電極用クリップは、先端部の半円筒状部が、それぞれ左右に開閉自在となるように結合された一対のクリップ部材を備える。これら半円筒状部は互いに閉じる方向にバネにより付勢されており、それぞれに金属板からなるコンタクトが設けられている。一対のクリップ部材では、それぞれの後端側に設けた摘み部を近接させることで、先端部の半円筒状部は開き、バネにより付勢されるこれら半円筒状部のコンタクトで端子部を挟むことで、接触電極に接続される。
【0005】
また、電極用ホックは、端子部を挿入する挿入孔と、挿入孔内に挿入される端子部を挟むように押圧するコンタクトとを有し、挿入孔に端子部を挿入する際に、コンタクトの付勢力に抗して挿入することにより、コンタクトを介して端子部に電気的に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−10138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の電極用クリップを用いて心電図検査を行う場合、胸部に取り付けられた接触電極に接続する際には、クリップ部材の後端部の摘み部を両指で摘んで先端部を開いた後で、接触電極の端子部を挟むため、その作業に手間がかかっていた。
【0008】
また、電極用ホックは、コンタクトの付勢力に抗して接触電極の端子部を挿入するため、被検者に対し押し付ける方向に力を加えることになり、被検者に不快感を与える。また、接触電極とケーブルとを接続する電極用クリップや電極用ホックは、使用する際に被検者に不快感を極力与えないように、一層小型化することが望まれている。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、被検者に不快感を与えずに容易に装着可能で、小型軽量化を実現できるスライド式電極接続部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスライド式電極接続部の一つの態様は、生体に取り付けられる面状の接触電極の表面から、頸部と、当該頸部よりも大径の頭部とを有する端子部が突設され、この端子部に着脱自在に取り付けて、前記接触電極から生体情報を取得するためのスライド式電極接続部であって、前記接触電極に対向して配置される対向面部に、前記端子部の頭部よりも大径に形成され、前記端子部が挿入される挿入孔部と、前記対向面部に前記挿入孔部と連続して形成され、前記頭部の外径よりも小さい幅を有し、前記頸部を位置させて前記頭部に係合する係合溝部と、前記係合溝部内に前記頸部を位置させた際に、前記端子部に接触する接触端子部材と、を備える構成を採る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被検者に不快感を与えずに容易に装着可能で、小型軽量化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係るスライド式電極接続部と接触電極を示す図
【図2】本発明の一実施の形態に係るスライド式電極接続部の底面図
【図3】本発明の一実施の形態に係るスライド式電極接続部の要部を模式的に示す断面図
【図4】本発明の一実施の形態に係るスライド式電極接続部に接続されるケーブルの断面図
【図5】本発明の一実施の形態に係るスライド式電極接続部を接触電極に取り付けた状態を模式的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態に係るスライド式電極接続部100と、スライド式電極接続部100が接続される接触電極40を示す図である。
【0015】
図1に示すスライド式電極接続部100は、例えば、心電計などの生体情報取得装置に接続されたケーブル30の先端部31に固定されており、面状の接触電極40に着脱自在に接続される。言い換えれば、スライド式電極接続部100では、接触電極40の端子部46を挿入して係合する扁平板状の接続部本体110を有し、この接続部本体110の基端部からケーブル30が導出されている。
【0016】
通常、接触電極40は、生体(ここでは被検者の胸部の皮膚)に直接取り付けて使用される。このため、本一実施の形態で使用される接触電極40としては、使い捨て電極を用いている。これにより、接触電極40自体を再使用することがなく、他被検者への感染を防いだり、被検者に衛生面での安心感を与え、不安感を払拭したりしている。
【0017】
接触電極40は、薄いシート状のベースパット42における一方の面にやわらかな導電パット44を設け、また他方の面に、ホック状の端子部46を設けた構造とする。更に生体への導電的な接触を簡単に行えるように、ベースパット42の一方の面(裏面)42aは粘着性を有している。
【0018】
使用前にはベースパット42の粘着面である裏面42aに、取り外し自在なテープが貼着されている。端子部46は、導電パット44から突出して設けられ、ベースパット42の他方の面(表面)42bを挿通して外部に露出している。この端子部46は、従来のクリップ式電極接続部或いはホック式電極接続部等の接続具により挟持される頸部46aと、頸部46aの先端に形成され、頸部46aの外径よりも大きい外径、つまり、頸部46aよりも大径の頭部46bと、を備える。
【0019】
このように構成された接触電極40を使用するときには、ベースパット42の裏面42aのテープをはがして、ベースパット42の粘着面(裏面42a)を皮膚に当接して接着させる。この接着により、導電パット44も皮膚面に当接し、測定部位からの電気パルスを導電パット44で検出する。電気パルスは、導電パット44、端子部46、スライド式電極接続部100、ケーブル30を介して心電計等の生体情報取得装置へ送られ、表示等がなされる。波形解析等も行われる。
【0020】
接続部本体110の両側面には、使用者が接続部本体110をつまみやすいように円弧状のくびれ部112が形成されている。
【0021】
接続部本体110は、絶縁性を有する材料、例えば、プラスチックなどの合成樹脂或いは絶縁性を備える硬質樹脂により形成されている。
【0022】
図2はスライド式電極接続部100の底面図であり、図3は、同スライド式電極接続部100の要部構成を模式的に示す断面図である。
【0023】
図2に示すように、接続部本体110は、接触電極40に取り付けられた際に、ベースパット42に対向して配置される底面部(対向面部)120を有する。この底面部120には、接触電極40の端子部46が挿入されるとともに挿入された端子部46と係合する長穴130が形成されている。
【0024】
具体的に、長穴130は、一端側に形成された挿入孔部132と、この挿入孔部132に連続して形成され、挿入孔部132から他端側(接続部本体110の先端側)に延出する係合溝部134とを有する。
【0025】
挿入孔部132は、端子部46の頭部46bよりも大径に形成されている。
【0026】
係合溝部134は、頭部46bの外径よりも小さい幅を有する。本実施の形態の係合溝部134は、頭部46bの外径よりも小さく、且つ、頸部46aの外径よりも大きい幅を有する。なお、本実施の形態では係合溝部134は、底面部120に形成された長穴130の一部として形成されているが、これに限らない。係合溝部134は、頭部46bの外径よりも小さい幅で端子部46の移動を案内して、幅内に頸部46aを位置させて頭部46bに係合する構成であれば、どのように構成されてもよい。例えば、長穴130において挿入孔部132に連続する部分の幅を、頭部46bが挿入される幅として形成し、加えて、挿入孔部132に連続する部分の幅に沿って長穴130に垂直に板バネを配設する。これら板バネで、係合溝部134内に位置する頸部46aを挟持して頭部46bと係合するように形成してもよい。また、板バネを導電性を有する板バネとした場合、この板バネに信号線を接続することにより、当該板バネを、端子部46(特に当接する頸部46a)と電気的に接続する接触端子部として使用できる。
【0027】
ここでは、係合溝部134は、図3に示すように、端子部46の頸部46aを案内して、当該係合溝部134の内側に位置させて、頸部46aの上部の頭部46bに係合する。
【0028】
また、接続部本体110内には、係合溝部134の上部に、接触端子部材140と、この接触端子部材140を覆うシールド板部150とが配設されている。
【0029】
接触端子部材140は、ここでは導電性を有する金属製の板バネ材により形成されている。接触端子部材140は、ケーブル30の信号線32の端部に接続されている。本実施の形態では、接触端子部材140は、接続部本体110の基端部側で、信号線32に接続されている。この接触端子部材140は、接続部本体110内で、挿入孔部132側から係合溝部134側に向かって下り勾配で配設され、係合溝部134の上方で、弾性変形によって頭部46bを押圧することで当該頭部46bに当接している。接触端子部材140は、係合溝部134に位置する端子部46の頭部46bに接触し、端子部46からの信号をケーブル30の信号線32(図4参照)を介して、接続される機器に誘導する。
【0030】
なお、本実施の形態では、導電性を有する金属製の板バネ材である接触端子部材140は、下り勾配で配設された構成としたが、これに限らない。接触端子部材140は、シールド板部150と離間して設けられ、且つ、係合溝部134内に頸部46aが位置する際に、端子部46に接触するよう案内される構成であれば、どのように構成されてもよい。例えば、接触端子部材140は、接続部本体110の延在方向と平行、言い換えれば、底面部120と平行に配設されたり、上り勾配で配設された構成でもよい。
【0031】
この接触端子部材140の上方には、この接触端子部材140と離間して配置され、接触端子部材140を覆うシールド板部150が配設されている。
【0032】
シールド板部150は、導電性を有するものであり、接触端子部材140と端子部46との接続部分を覆う。シールド板部150は、導電性を有する面状のもので形成されることが好ましく、ここでは、導電性を有する板金、導電シート、導電フィルム等を用いて形成されて、接続部本体110の上面部分の全面に亘って配設さている。
【0033】
シールド板部150は、接触端子部材140を上方から被覆して、心電図検査を行う部屋の蛍光灯及び商用電源に起因するノイズや衣服のこすれ等による静電気等の電気的なノイズを遮蔽する。これにより、従来の電極用クリップを用いて心電図検査を行う場合と異なり、心電図検査を行う部屋の蛍光灯、衣服のこすれ等による静電気、水滴の付着、或いは埃などの付着によるノイズを受けにくい。よって、検出した信号に不要な信号が加わることなく、正確な心電図信号を取得できる。
【0034】
なお、シールド板部150は、接触端子部材140とともに、インサート成形或いは二重成型によって、長穴130の上方で接続部本体110内に配設されている。これにより、スライド式電極接続部100が端子部46に取り付けられた状態では、シールド板部150は外部に露出しない。
【0035】
なお、シールド板部150は、接続部本体110の基端部側で、ケーブル30のシールド線36に接続されている。また、ここでは、シールド板部150とシールド線36との接続部分は、接続部本体110の一部である絶縁樹脂部分によって、信号線32と接触端子部材140との接続部分に対して仕切られている。
【0036】
図4にケーブル30の断面図を示す。スライド式電極接続部100が固定されるケーブル30は、図4に示すように、ここでは、中央に信号線32が配設され、この信号線32を絶縁被覆材34で被覆し、この絶縁被覆材34の外周に、導電性を有するシールド線36が配設されている。更にシールド線36は、ケーブル30の外皮となる外部絶縁被覆材38により被覆されている。ケーブル30は先端部31で、スライド式電極接続部100の内部で、信号線32は、接続端子部材140(図3参照)に接続され、シールド線36は、シールド板部150(図3参照)に接続されている。このケーブル30を介して、スライド式電極接続部100は、生体に取り付けられた接触電極40から生体情報を取得する。
【0037】
本実施の形態のスライド式電極接続部100を用いる際には、先ず、接触電極40を(生体、ここでは被検者の皮膚)に当接させる。
【0038】
そして、スライド式電極接続部100の挿入孔部132内に、端子部46を頭部46b側から挿入する(図3、図5参照)。そして、図3に示すように、端子部46の頸部46aを挿入孔部132の内側に位置させて、端子部46の頭部46bを接続部本体110内に位置させる。
【0039】
次いで、接続部本体110をケーブル30側にスライド移動させて、係合溝部134内に頸部46aを移動させる。
【0040】
すると、端子部46は、係合溝部134内を末端側まで位置して、図5に示すように、頭部46bが係合溝部134に係合され、係合溝部134に対して上下方向に抜けない状態になるとともに、接触端子部材140に上方から押圧された状態で電気的に接触する。
【0041】
このように、スライド式電極接続部100は、挿入孔部132に端子部46を差し込んで、接続部本体110をスライド移動して、接続部本体110内の端子部46(頸部46a及び頭部46b)を係合溝部134内に移動させるだけで、電極40に容易に取り付けることができる。
【0042】
また、スライド式電極接続部100で、端子部46に取り付ける際に、接続部本体110に端子部46を挿入させてスライド移動させるだけで、係合溝部134によって端子部46(詳細には端子部46の頭部46b)に係合し、かつ接続端子部材140に当接して電気的に接続される。つまり、端子部46に係合するために、バネ材を使って端子部46の左右から挟持する挟持構造等と比較して、簡単に構成できる。つまり、係合溝部134の上に板バネである接続端子部材140を配置し、その上に板金、シート状、フィルム状等の面状のシールド板部150を配置させるだけで構成されるため、一層の小型化を図ることができる。これにより、心電図検査を行う際に、電極にケーブルを接続する作業を容易に行うことができる。また、被検者に取り付けられた接触電極40に接続する際に、被検者に対し押し付けるのでは無くスライドさせる方向に力を加えることになり、従来のホック式に比べ被検者に不快感を与えない。
【0043】
このようにスライド式電極接続部100では、接触電極40(詳細には、接触電極40の端子部46)と接続する接続端子部材140が、絶縁性の接続部本体110に囲まれて被覆されるとともに、シールド板部150により上方で被覆される。シールド板部150によって、接続端子部材140と接触電極40との接続部分に影響するノイズを排除できる。つまり、スライド式電極接続部100を用いて心電図検査を行う場合、心電図検査を行う部屋の蛍光灯や商用電源に起因するノイズ、衣服のこすれ等による静電気、水滴の付着、或いは埃などの付着によるノイズを受けることもなく、検出した生体情報(信号)の信頼性を向上させて、その生体情報(信号)を、正確にケーブル30を介して出力、ケーブル30が接続された機器に正確な心電情報を取得させることができる。
【0044】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係るスライド式電極接続部は、被検者に不快感を与えずに容易に装着可能で、小型軽量化を実現できる効果を有し、接触電極と生体情報取得装置とを接続して心電図波形を取得する場合に患者のQOLの向上を図ることができ有用である。
【符号の説明】
【0046】
30 ケーブル
31 先端部
32 信号線
36 シールド線
40 接触電極
42 ベースパット
44 導電パット
46 端子部
46a 頸部
46b 頭部
100 スライド式電極接続部
110 接続部本体
120 底面部
130 長穴
132 挿入孔部
134 係合溝部
140 接触端子部材
150 シールド板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に取り付けられる面状の接触電極の表面から、頸部と、当該頸部よりも大径の頭部とを有する端子部が突設され、この端子部に着脱自在に取り付けて、前記接触電極から生体情報を取得するためのスライド式電極接続部であって、
前記接触電極に対向して配置される対向面部に、前記端子部の頭部よりも大径に形成され、前記端子部が挿入される挿入孔部と、
前記対向面部に前記挿入孔部と連続して形成され、前記頭部の外径よりも小さい幅を有し、前記頸部を位置させて前記頭部に係合する係合溝部と、
前記係合溝部内に前記頸部を位置させた際に、前記端子部に接触する接触端子部材と、
を備える、
スライド式電極接続部。
【請求項2】
前記接触端子部材は前記端子部の頭部に接触する、
請求項1記載のスライド式電極接続部。
【請求項3】
前記接触端子部材は前記端子部の頸部に接触する、
請求項1記載のスライド式接続部。
【請求項4】
前記接触端子部材の外側で当該接触端子部材と離間して配置され、前記接触端子部材を覆うシールド板部を備える、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のスライド式電極接続部。
【請求項5】
前記接触端子部材は、弾性変形して前記端子部に当接する導電性の板バネ材である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のスライド式電極接続部。
【請求項6】
シールド線と信号線とを有するケーブルが導出され、
前記シールド板部は、前記シールド線に接続されている、
請求項4記載のスライド式電極接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−42798(P2013−42798A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180737(P2011−180737)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)