スライド構造
【課題】部品点数を増加させることなく、第1部材の幅方向及び第1部材の板面に対向する方向におけるがたつきを抑制できるスライド構造を提供する。
【解決手段】
一定幅を維持するベース体7と、そのベース体7の幅方向両側部分を包被するスライド本体22とをスライド可能に組み付け、ベース体7の幅方向両側部にスライド案内面60を形成し、スライド本体22の幅方向両側内面にスライド案内面60に対向してスライド傾斜面7を形成する。このスライド案内面60とスライド傾斜面70との間に付勢構造62を介在させ、その付勢構造62の付勢力に基づき、スライド案内面60とスライド傾斜面70とを、互いが離間する方向に付勢する。これにより、付勢構造62の付勢力を、ベース体7の幅方向(横方向)の分力と、ベース体7の板面に対向する方向(上下方向)の分力とに分け、その各分力をスライド案内面60とスライド傾斜面70と間で作用させる。
【解決手段】
一定幅を維持するベース体7と、そのベース体7の幅方向両側部分を包被するスライド本体22とをスライド可能に組み付け、ベース体7の幅方向両側部にスライド案内面60を形成し、スライド本体22の幅方向両側内面にスライド案内面60に対向してスライド傾斜面7を形成する。このスライド案内面60とスライド傾斜面70との間に付勢構造62を介在させ、その付勢構造62の付勢力に基づき、スライド案内面60とスライド傾斜面70とを、互いが離間する方向に付勢する。これにより、付勢構造62の付勢力を、ベース体7の幅方向(横方向)の分力と、ベース体7の板面に対向する方向(上下方向)の分力とに分け、その各分力をスライド案内面60とスライド傾斜面70と間で作用させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、スライド構造として、一定幅を維持する第1部材と、該第1部材の幅方向両側部分を少なくとも包被する第2部材とを、相対的にスライド可能に組み付け、第1部材と第2部材との間に付勢手段を介在させたものが開発されつつある。
例えば、特許文献1には、コンソールボックスにおけるアームレストのスライド構造として、スライダ(第1部材)の幅方向(横方向)両側部分を、車体側(ボックス本体側)に取付けられた一対のサイドレール(第2部材)によりスライド可能に支持すると共に、各サイドレールとスライダの幅方向各側部との間に付勢手段をそれぞれ介在させたものが開示されている。これによれば、スライダの幅方向におけるがたつきを抑制でき、安定した使用感を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−254881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1におけるスライド構造においては、スライダ(第1部材)の幅方向におけるがたつきを抑制できるものの、スライダの板面に対向する方向(上下方向)のがたつきについては考慮されておらず、その方向におけるがたつきを抑制することができない。このため、スライダの板面に対向する方向のがたつきについても抑制するとすれば、その専用の付勢手段が新たに必要となり、部品点数が増加することになる。
【0005】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、部品点数を増加させることなく、第1部材の幅方向及び第1部材の板面に対向する方向におけるがたつきを抑制できるスライド構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため本発明(請求項1に係る発明)にあっては、
一定幅を維持する第1部材と、該第1部材の幅方向両側部分を少なくとも包被する第2部材とが、相対的にスライド可能に組み付けられ、前記第1部材と前記第2部材との間に付勢手段が介在されているスライド構造において、
前記第1部材、前記第2部材の少なくとも一方の部材に、該第1部材と該第2部材とが摺動する部分において、前記第1部材の幅方向に対して傾斜する傾斜面が設けられ、
前記第1部材、前記第2部材の他方の部材のうち、前記一方の部材の傾斜面に対向する部分と該傾斜面との間に前記付勢手段が介在されて、該対向する部分と該傾斜面とが離間する方向に付勢されている構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2以下の記載の通りとなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明(請求項1の発明)によれば、第1部材、第2部材の少なくとも一方の部材の傾斜面に基づき、付勢手段の付勢力を第1部材の幅方向の分力と、第1部材の板面に対向する方向の分力とに分けることができ、その各分力を第1、第2部材間で作用させることができる。このため、第1部材の板面に対向する方向のがたつき抑制用の付勢手段を新たに設けなくても(部品点数を増加させなくても)、上記両分力により、第1部材の幅方向だけでなく、第1部材の板面が対向する方向においても、がたつきが生じることを抑制できる。
【0008】
請求項2の発明によれば、傾斜面の角度が第1部材の幅方向に対して略45°に設定されていることから、付勢手段の付勢力を第1部材の幅方向の分力と、第1部材の板面に対向する方向の分力とに均等に分けることができ、第1部材の幅方向及び第1部材の板面に対向する方向におけるがたつきを効果的に抑制できる。
【0009】
請求項3の発明によれば、付勢手段が第1、第2部材の少なくともいずれか一方に着脱可能に設けられていることから、付勢力の異なる付勢手段に適宜、取り替えることができ、付勢力の調整を容易に行うことができる。
【0010】
請求項4の発明によれば、付勢手段が、第1、第2部材のすくなくともいずれか一方に変位動可能に支持される押圧片と、押圧片を相手方部材に向けて付勢するスプリングと、を備えていることから、押圧片とスプリングとを用いることにより付勢力を発生させ、具体的に、第1部材の幅方向及び第1部材の板面に対向する方向におけるがたつきを抑制できる。
【0011】
請求項5の発明によれば、付勢手段が、第1、第2部材の少なくともいずれか一方に一体的に設けられた撓み片であることから、管理部品点数を少なくすることができることになり、管理負担を軽減できる。
【0012】
請求項6の発明によれば、コンソールボックスにおけるボックス本体と該ボックス本体の上側においてアームレストをなす蓋体との間に介在させて用いられることから、スライドするアームレストにおいて好ましいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るコンソールボックスにおける蓋体のスライドを示す説明図。
【図2】実施形態に係るコンソールボックスにおいて、蓋体が非突出状態にあるときにおける状態を示す拡大縦断面図。
【図3】実施形態に係るコンソールボックスにおいて、蓋体が突出状態にあるときにおける状態を示す拡大縦断面図。
【図4】実施形態に係るベース体を示す斜視図。
【図5】実施形態に係るベース体を示す平面図。
【図6】実施形態に係る蓋体を裏面側から見た状態を示す斜視図。
【図7】スライド本体にベース体がスライド可能に嵌合された状態を示す断面図。
【図8】図7のX8−X8線断面図。
【図9】ベース体における凹所に対する押圧片、コイルスプリングの取付けを説明する説明図。
【図10】実施形態に係るスライド本体を示す平面図。
【図11】実施形態に係る係合片の昇降動を説明する説明図。
【図12】実施形態に係る係合片と各位置決め凹所との関係を示す説明図。
【図13】他の実施形態に係る付勢構造(撓み片)を示す斜視図。
【図14】図13のX14−X14線断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付した図面を参照しつつ説明する。
図1〜図3において、符号1は、前後方向(図1中、左右方向)に延びるコンソールボックスで、コンソールボックス1は、ボックス本体2と、ボックス本体2上に配置される蓋体(リッド)3とを備えている。
【0015】
前記ボックス本体2は、図1〜図3に示すように、自動車内のフロアに固定されるものであり、そのボックス本体2は、シフトレバー4の後方側に配置されている。このボックス本体2内には収納部5が形成されており、その収納部5には外部上方に向って開放された開口6が形成され、その開口6を通じて収納部5内に対して小物等の出し入れを行うことができることになっている。
【0016】
このボックス本体2には、その上部において上壁部として構成すべく、ベース体7(第1部材)が備えられている。ベース体7は、前記収納部5の開口6に対応して長尺な板体として形成されており、その後部(図2,図3中、右側)には支持部7aが設けられ、その前部(図2,図3中、左側)には操作レバー9が取付けられている。支持部7aは、ボックス本体2の後部に回動可能に支持されており、ベース体7は、その支持部7aの回動により、収納部5の開口6を開閉(起倒動)できることになっている。この場合、支持部7aとボックス本体2との間には、図示を略すばねが介在されており、そのばねにより、ベース体7は開方向に付勢されている。操作レバー9は、ベース体7の前部下面に回動可能に支持されている。操作レバー9は、ボックス本体2に形成される係止孔10に係止させるための係止爪部11と、乗員が開閉操作するためのレバー部12とを備えており、係止爪部11が係止孔10に係止されているときには、ベース体7は、収納部5の開口6を塞いだ状態に維持され、レバー部12を上側に持ち上げるように回動させて係止爪部11をボックス本体2の係止孔10から退出させたときには、ベース体7は、図示を略すばねの付勢力により後方に向けて起立され、収納部5の開口6は開かれる。
【0017】
このベース体7は、図2〜図5に示すように、内部空間を有する扁平な構造体とされており、その上面部13には、その幅方向(図5中、上下方向)中央部において、その前部から前後方向中央部分当たりまでの間において平坦面14が確保されている。このベース体7の平坦面14には、第1位置決め凹所15と第2位置決め凹所16とが前後方向に離間された状態で形成されている。第1位置決め凹所15は、第2位置決め凹所16よりも後方側に位置され、第2位置決め凹所16は、ベース体7の前部よりもやや後方側に位置されている。この第1,第2位置決め凹所15,16内の底面上には、本実施形態においては、スポンジ材50がそれぞれ配置されている。
【0018】
また、ベース体7の平坦面14には、図2〜図5に示すように、その前部よりも多少、後方側において、片持ち片部51が形成されている。この片持ち片部51は、前後方向に延びる一対のスリット17と、その一対のスリット17の前端側をつなぐスリット18とをベース体7に形成することにより、平面視コ字状に形成されており、その片持ち片部51は、一対のスリット17の後端側を基準として、ベース体7の厚み方向に撓むことができることになっている。この片持ち片部51の先端部(前端部)の上面は、それよりも後方側部分に対して多少、下方側に段差をもって引っ込むように形成されており、この片持ち片部51の先端部形状に基づき、前記第2位置決め凹所16が構成されている。
【0019】
このベース体7には、図4、図5、図7、図9に示すように、その幅方向両側部において、スライド構造の一方のスライド構造部の構成部分として、スライド案内面(傾斜面)60がそれぞれ形成されている。この各スライド案内面60は、ベース体7の前端からその長手方向後方に向けて延びており、その各スライド案内面60は、ベース体7の幅方向外方に向かうに従って該ベース体7の下面側に近づくように傾斜される傾斜面とされている。本実施形態においては、このスライド案内面60は、ベース体7の平坦面14(水平面)に対して略45°に設定されている。
【0020】
この各スライド案内面60には、図4、図5、図7、図9に示すように、凹所61がそれぞれ形成されている。凹所61は、本実施形態においては、各スライド案内面60につき、ベース体7の前後方向(長手方向)に間隔をあけて2個所形成されており、その各凹所61は、ベース体7の幅方向長さよりも前後方向の長さが多少、長くされている。この各凹所61の底部(内底面)61aは、スライド案内面60の垂直方向に一定深さだけ内方側に引っ込んでおり、その底部60aの傾きは、スライド案内面60と同じ傾き(水平面に対して略45°)に設定されている。
【0021】
この各凹所61内には、図7、図8、図9に示すように、付勢構造(付勢手段)62がそれぞれ収納されている。各付勢構造62は、本実施形態においては、ガイド孔63と、一対の係止孔64と、樹脂製の押圧片65と、コイルスプリング66と、を備えている。ガイド孔63は、凹所底部61aにベース体7の前後方向中央部において形成されており、一対の係止孔64は、同じく凹所底部61aにベース体7の前後方向両側において形成されている。
押圧片65は、板状(帯板状)の当接板部67と、一対の係止脚部68と、ガイド軸部69と、を一体的に有している。当接板部67は、凹所61に対応させて、帯板状に形成され、その当接板部67は、その長手方向をベース体7の前後方向に向けた状態で凹所61開口を覆っている。
一対の係止脚部68は、当接板部67の長手方向両側から垂下して凹所61内に入り込んでおり、その一対の係止脚部68の爪部68aは、凹所底部61aの一対の係止孔64に着脱可能に係止されている。これにより、押圧片65が凹所61内から脱離することが規制されると共に、係止孔64(周縁部)と係止脚部68の爪部68aとの係止関係(当接関係)により規制を受けない範囲で(係止孔64を係止脚部68が摺動できる範囲で)、押圧片65は、凹所61内外をスライド案内面60に対して垂直方向に変位動可能となっている。また、押圧片65は、樹脂製であることに基づき、各係止脚部68が撓み可能となっており、これに基づき、所定以上の引き抜き力を押圧片65に付与すれば、各係止脚部68の爪部68aが係止孔64の周縁部から外れ、押圧片65を引き抜くことができることになっている。
ガイド軸部69は、当接板部67の裏面にその当接板部67の長手方向中央部に設けられ、そのガイド軸部69は、当接板部67の裏面から遠のく方向に延ばされている。このガイド軸部69は、前記ガイド孔63に摺動可能に挿通されており、このガイド軸部69とガイド孔63のガイド作用により、押圧片65(当接板部67)は、凹所61内外を円滑に変位動することになる。本実施形態においては、ガイド軸部69として、頭部69aを有するピン69が用いられている。このため、そのピン69の湾曲面状の頭部69aが当接板部67の表面に突出した状態で位置されることになっている。
コイルスプリング66は、その内部にガイド軸部69が挿入された状態で、当接板部67と凹所底部61aとの間に配設されている。このコイルスプリング66は、当接板部67に対して、凹所底部61aから離間する方向の付勢力を与えるものであり、このコイルスプリング66の付勢力により、当接板部67に外力が作用しないときには、係止脚部68の爪部68aは係止孔64の周縁部に係止された状態となり、そのときには、その当接板部67の表面は、頭部69aと共に、スライド案内面60より若干、外方に位置されることになっている。
【0022】
この他に、ベース体7には、図4、図5に示すように、蓋体3に連係されてその蓋体3を前方に付勢するためのばね材20、蓋体3のスライドに対して抵抗力を付与するためのピニオン21(回転ダンパ)が設けられている。尚、図4においては、後述の係合片29が、位置決め凹所の一つとしての第1位置決め凹所15内に進入した状態を示している。
【0023】
前記蓋体3は、図2,図3に示すように、前記ベース体7に対してスライド可能に保持されている。蓋体3は、スライド構造の他方のスライド構造部の構成部分をなすスライド本体(第2部材)22と、カバー体23とを備えており、スライド本体22は、その上面がカバー体23により被われている。
【0024】
スライド本体22は、ベース体7に対応して長尺な略板体として形成されており、そのスライド本体22の幅方向両側には垂下壁部24がそれぞれ設けられている。その各垂下壁部24の内面にはガイド部25が前後方向(長手方向)に延びるようにしてそれぞれ設けられており、その各ガイド部25は、図6、図7に示すように、スライド本体22の幅方向外方に向かうに従ってそのスライド本体22の下面に近づくように傾斜されるスライド傾斜面(傾斜面)70と、そのスライド傾斜面70の下部に連続してスライド本体22の幅方向内方に張り出すスライド支持面71と、を構成している。尚、本実施形態においては、スライド傾斜面70とスライド支持面71との間に起立内面72が介在されている。このようなスライド本体22は、ベース体7上において、その内部にベース体7を取り囲むように配置されており、これに伴い、各スライド傾斜面70は各スライダ案内面60に対向して配置され、各スライド支持面71上にベース体の幅方向外側の下面が支持される。これにより、スライド本体22は、ベース体7のスライド案内面60、スライド傾斜面70等の案内作用に基づき、ベース本体7に対して前後方向にスライドすることになる(スライド構造)。
【0025】
この場合、図7、図8に示すように、各スライド傾斜面70が当接板部67表面の頭部69aに当接して、当接板部67を、コイルスプリング66に抗して凹所61内側に引っ込ませることになる。このため、コイルスプリング66の反発力が、スライド傾斜面70に付勢力として垂直に作用することになり、その付勢力は、上向きの分力と幅方向外向きの分力としてスライド傾斜面70に作用する。この結果、スライド本体22は、位置決め時は勿論、スライド時においても、上下方向及びその幅方向においてがたつくことが抑えられることになる。
図7中、符号52は、ベース体7上に配置される前記ピニオン21に噛合するラックである。
【0026】
このスライド本体22には、図2,図3,図10,図11に示すように、案内凹所26が形成されている。この案内凹所26は、スライド本体22を下方側に膨出させることにより形成されており、その案内凹所26は、スライド本体22の前端から後方に延びてスライド本体22の延び方向略中央までに至っている。この案内凹所26の底部には、その後端側において、その幅方向に延びるようにして長孔27(図11参照)が形成されており、その長孔27を前後方向に跨ぐようにして案内箱28が設けられ、その案内箱28内に係合片29が配設されている。係合片29は、図11,図12に示すように、係合片本体部30と、その係合片本体部30の両側壁部を兼ねて上方に突出する一対のガイド板部31と、係合片本体部30の中央部から、前記ガイド板部31同様、上方に突出してその外周にコイルスプリング66を装着するばね装着ピン部33と、係合片本体部30の各ガイド板部31から側方に突出される一対の昇降用ガイド軸部34とを備えている。案内箱28は、その下部に開口を有しており、その案内箱28内は、その下部開口を介して長孔27に臨んでいる(案内箱28の下部開口も符号27を用いる)。また、案内箱28は、その両側壁部28aが長孔27の長手方向内方側に位置されている。各側壁部28aには、切り欠き35が上下方向に延びるようにしてそれぞれ形成されており、その各切り欠き35の下端側切り欠き端は、案内凹所26底部における長孔27に開口されている。これにより、係合片29は、スライド本体22の下面側から長孔27を介して案内箱28内に収納され、その係合片29の各昇降用ガイド軸部34は、長孔27を通過した後、案内箱28の切り欠き35から外方に突出されることになっている。また、案内箱28の上壁部28bには、一対のガイド板部31、ばね装着ピン部33が貫通できる貫通孔36,37がそれぞれ形成されており、一対のガイド板部31、ばね装着ピン部33がその各貫通孔36,37を貫通して変位動することにより、係合片29は、上下方向に変位動可能となり、これに伴い、係合片本体部30の下端部が案内凹所26底部下面(スライド本体22下面)から下方に突出した状態、その突出状態から案内箱28内に退出した状態をとり得るようになっている。
【0027】
また、案内凹所26内には、図2,図3,図10,図11に示すように、長尺な移動体38が摺動可能に収納されている。この移動体38は、案内箱28とスライド本体22の前部との間に亘って延びており、その後端部には、昇降機構39が形成され、その前端部には、係止片操作手段としての操作ボタン40が取付けられている。昇降機構39は、案内箱28の側壁部28aを挟みつつ前記長孔29を横切る一対の脚部41を有しており、その各脚部41にはガイド面42がそれぞれ形成されている。この両ガイド面42は、移動体38の前端部側に向うに従って高くなるように傾斜されており、この両ガイド面42は、係止片の一対の昇降用ガイド軸部34を受け止めると共に、その傾斜したガイド面42の前後動に基づき一対の昇降用ガイド軸部34を昇降動させる機能を有している。この場合、ばね装着ピン部33のコイルスプリング32が係合片本体部30と案内箱28の上壁部28bとの間に介在されており、このコイルスプリング32の付勢力により、係合片29は、各昇降用ガイド軸部34が各ガイド面42に押し付けられる方向に付勢されている。また、この移動体38には、図10に示すように、延び方向内方側において、幅広のスリット43が前後方向に延びるように形成され、その幅広スリット43は、案内凹所26底部に臨んでいる。その案内凹所26底部には、スリット43内において、ばね受け44とストッパ45とが立設されている一方、移動体38には、ばね受け44とストッパ45との間に区画壁46が設けられている。その区画壁46にはばね装着ピン47がばね受け44に向けて突出されると共にそのばね装着ピン47にコイルスプリング48が装着されており、そのコイルスプリング6648の付勢力により、移動体38は、その区画壁46がストッパ45に当接する方向に付勢されている。これにより、区画壁46がストッパ45に当接しているときには、移動体38は最も前方位置に位置することになり、このとき、前記一対の昇降用ガイド軸部34が位置(当接)している前記一対のガイド面42の高さは、最も低い状態となり、係合片29における係合片本体部30の下端部は、スライド本体22の下面から下方に突出する状態となる。一方、操作ボタン40を押したときには、移動体38が後方に移動して一対のガイド面42も後退することになり、その各ガイド面42により、昇降用ガイド軸部34は上方に持ち上げられることになり、これに伴い、係合片本体部30の下端部は、前記突出状態から案内箱28(案内凹所26)内に退出することになる。
【0028】
前記係合片29は、スライド本体22のスライドに伴うその移動領域が、前記第1位置決め凹所15と前記第2位置決め凹所16とに対して臨むように配置されている。これにより、操作ボタン40の非操作時状態において、係合片本体部30の下端部が第1位置決め凹所15内に臨んだ位置に位置されたときには、係合片本体部30の下端部が第1位置決め凹所15内に進入され、係合片本体部30の下端部と第1位置決め凹所15の内壁(前後壁)との係合関係により、蓋体3はベース体7と略全体的に重なった状態で保持される(図2の状態)。一方、係合片本体部30の下端部が第2位置決め凹所16内に臨んだ位置に位置されたときには、図12に示すように、係合片本体部30の下端部が第2位置決め凹所16内に進入され、係合片本体部30の下端部と第2位置決め凹所16の内壁(前後壁)との係合関係により、蓋体3はベース体7から突出した状態で保持される(図3の状態)。
【0029】
したがって、このようなコンソールボックス1においては、係合片本体部30の下端部が第1位置決め凹所15内に進入しているときには、蓋体3は、ベース体7に対して略全体的に重なった状態で位置決めされ、係合片本体部30の下端部が第2位置決め凹所16内に突出しているときには、ベース体7よりも前方に突出する突出状態で位置決めされ、それらの各状態は、操作ボタン40を押すことにより係合片29を各位置決め凹所15(16)内から退出させない限り保持され、蓋体3は、高い位置決め保持状態をもって保持される。これに対して、蓋体3の位置調整に関しては、操作ボタン40を押すことにより係合片29が進入状態の位置決め凹所(第1又は第2位置決め凹所16)から退出することになり、その状態を維持しつつ、スライド力を蓋体3に付与すれば、蓋体3は、ベース体7に対してスムーズにスライドすることになる。このため、蓋体3の係合片29を別の位置決め凹所(第2又は第1位置決め凹所15)に移動させてそこでの位置決めを簡単に行うことができる。
【0030】
また、スライド本体22の垂下壁部24の内面のスライド傾斜面70と、ベース体7の幅方向両側にスライド案内面60との間に押圧片65(付勢構造62)が介在されて、押圧片65(当接板部67)が、コイルスプリング66に抗して凹所内側に引っ込むことになることから、コイルスプリング66の反発力が、スライド傾斜面70に付勢力として垂直に作用することになり、その付勢力は、上向きの分力と幅方向外向きの分力として作用する。このため、蓋体3(スライド本体22)は、上下方向におけるがたつき抑制用の付勢構造6及びその幅方向におけるがたつき抑制用の付勢構造の両方を設けずに、付勢構造62だけで、位置決め時は勿論、スライド時においても、上下方向及びその幅方向においてがたつきを抑えることができる。
【0031】
特に本実施形態においては、スライド傾斜面70及びスライド案内面60が水平面に対して略45°に設定されていることから、スライド本体22に、上下方向及びその幅方向両側外方に均等に付勢力が作用することになり、蓋体3のがたつきを確実且つ効果的に抑制できる。
しかも、スライド傾斜面70に付勢力が付与されるに際して、湾曲面上の頭部69aがスライド傾斜面70が当接されることになり、当接板部67全体がスライド傾斜面70に当接する場合よりも、摺動抵抗を少なくすることができる。このため、がたつきの抑制を図りつつ、乗員の操作性が低下することを抑制できる。
【0032】
また、作業者が押圧片65に引き抜き力を付与し、係止脚部68の爪部と係止孔64周縁部との係止を解除すれば、押圧片65を凹所61から取り外すことができる。このため、コイルスプリング66をばね係数の異なるものに簡単に取り替えることができ、これに伴い、押圧片65による付勢力を簡単に調整できる。
【0033】
図13,図14は他の実施形態を示す。この他の実施形態において、前記実施形態と同一構成要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0034】
この他の実施形態は、付勢構造62として、片持ち状の撓み片73を用いた内容を示している。
すなわち、各スライド案内面60に片持ち状の撓み片73が一体的にそれぞれ設けられており、スライド本体22における幅方向両側のガイド部25がベース体7の両側部にスライド可能に嵌合されたときに、撓み片73は、スライド本体22のスライド傾斜面70と当接して撓められ、反発付勢力が発生する。この付勢力が、前記実施形態同様、スライド本体22(スライド傾斜面70)に作用することになり、蓋体3(スライド本体22)は、上下方向及びその幅方向にがたつくことが抑制される。
【0035】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次のような態様を包含する。
(1)スライド案内面60又はスライド傾斜面70の一方のみを傾斜面とすること。
のみを傾斜面
(2)付勢構造62を、スライド本体22側に設けること。
(3)頭部69aに代えて、押圧片65を構成する当接板部67の表面を湾曲させて、その湾曲した当接板部67をスライド傾斜面70に当接すること。
(4)本発明に係るスライド構造をコンソールボックス以外のものに適用すること。
【0036】
本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【符号の説明】
【0037】
1:コンソールボックス
3:蓋体
7:ベース体(第1部材)
22:スライド本体(第2部材)
60:スライド案内面(傾斜面)
62:付勢構造(付勢手段)
65:押圧片(付勢手段)
66:コイルスプリング(付勢手段)
70:スライド傾斜面(傾斜面)
73:撓み片(付勢手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、スライド構造として、一定幅を維持する第1部材と、該第1部材の幅方向両側部分を少なくとも包被する第2部材とを、相対的にスライド可能に組み付け、第1部材と第2部材との間に付勢手段を介在させたものが開発されつつある。
例えば、特許文献1には、コンソールボックスにおけるアームレストのスライド構造として、スライダ(第1部材)の幅方向(横方向)両側部分を、車体側(ボックス本体側)に取付けられた一対のサイドレール(第2部材)によりスライド可能に支持すると共に、各サイドレールとスライダの幅方向各側部との間に付勢手段をそれぞれ介在させたものが開示されている。これによれば、スライダの幅方向におけるがたつきを抑制でき、安定した使用感を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−254881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1におけるスライド構造においては、スライダ(第1部材)の幅方向におけるがたつきを抑制できるものの、スライダの板面に対向する方向(上下方向)のがたつきについては考慮されておらず、その方向におけるがたつきを抑制することができない。このため、スライダの板面に対向する方向のがたつきについても抑制するとすれば、その専用の付勢手段が新たに必要となり、部品点数が増加することになる。
【0005】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、部品点数を増加させることなく、第1部材の幅方向及び第1部材の板面に対向する方向におけるがたつきを抑制できるスライド構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため本発明(請求項1に係る発明)にあっては、
一定幅を維持する第1部材と、該第1部材の幅方向両側部分を少なくとも包被する第2部材とが、相対的にスライド可能に組み付けられ、前記第1部材と前記第2部材との間に付勢手段が介在されているスライド構造において、
前記第1部材、前記第2部材の少なくとも一方の部材に、該第1部材と該第2部材とが摺動する部分において、前記第1部材の幅方向に対して傾斜する傾斜面が設けられ、
前記第1部材、前記第2部材の他方の部材のうち、前記一方の部材の傾斜面に対向する部分と該傾斜面との間に前記付勢手段が介在されて、該対向する部分と該傾斜面とが離間する方向に付勢されている構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2以下の記載の通りとなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明(請求項1の発明)によれば、第1部材、第2部材の少なくとも一方の部材の傾斜面に基づき、付勢手段の付勢力を第1部材の幅方向の分力と、第1部材の板面に対向する方向の分力とに分けることができ、その各分力を第1、第2部材間で作用させることができる。このため、第1部材の板面に対向する方向のがたつき抑制用の付勢手段を新たに設けなくても(部品点数を増加させなくても)、上記両分力により、第1部材の幅方向だけでなく、第1部材の板面が対向する方向においても、がたつきが生じることを抑制できる。
【0008】
請求項2の発明によれば、傾斜面の角度が第1部材の幅方向に対して略45°に設定されていることから、付勢手段の付勢力を第1部材の幅方向の分力と、第1部材の板面に対向する方向の分力とに均等に分けることができ、第1部材の幅方向及び第1部材の板面に対向する方向におけるがたつきを効果的に抑制できる。
【0009】
請求項3の発明によれば、付勢手段が第1、第2部材の少なくともいずれか一方に着脱可能に設けられていることから、付勢力の異なる付勢手段に適宜、取り替えることができ、付勢力の調整を容易に行うことができる。
【0010】
請求項4の発明によれば、付勢手段が、第1、第2部材のすくなくともいずれか一方に変位動可能に支持される押圧片と、押圧片を相手方部材に向けて付勢するスプリングと、を備えていることから、押圧片とスプリングとを用いることにより付勢力を発生させ、具体的に、第1部材の幅方向及び第1部材の板面に対向する方向におけるがたつきを抑制できる。
【0011】
請求項5の発明によれば、付勢手段が、第1、第2部材の少なくともいずれか一方に一体的に設けられた撓み片であることから、管理部品点数を少なくすることができることになり、管理負担を軽減できる。
【0012】
請求項6の発明によれば、コンソールボックスにおけるボックス本体と該ボックス本体の上側においてアームレストをなす蓋体との間に介在させて用いられることから、スライドするアームレストにおいて好ましいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るコンソールボックスにおける蓋体のスライドを示す説明図。
【図2】実施形態に係るコンソールボックスにおいて、蓋体が非突出状態にあるときにおける状態を示す拡大縦断面図。
【図3】実施形態に係るコンソールボックスにおいて、蓋体が突出状態にあるときにおける状態を示す拡大縦断面図。
【図4】実施形態に係るベース体を示す斜視図。
【図5】実施形態に係るベース体を示す平面図。
【図6】実施形態に係る蓋体を裏面側から見た状態を示す斜視図。
【図7】スライド本体にベース体がスライド可能に嵌合された状態を示す断面図。
【図8】図7のX8−X8線断面図。
【図9】ベース体における凹所に対する押圧片、コイルスプリングの取付けを説明する説明図。
【図10】実施形態に係るスライド本体を示す平面図。
【図11】実施形態に係る係合片の昇降動を説明する説明図。
【図12】実施形態に係る係合片と各位置決め凹所との関係を示す説明図。
【図13】他の実施形態に係る付勢構造(撓み片)を示す斜視図。
【図14】図13のX14−X14線断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付した図面を参照しつつ説明する。
図1〜図3において、符号1は、前後方向(図1中、左右方向)に延びるコンソールボックスで、コンソールボックス1は、ボックス本体2と、ボックス本体2上に配置される蓋体(リッド)3とを備えている。
【0015】
前記ボックス本体2は、図1〜図3に示すように、自動車内のフロアに固定されるものであり、そのボックス本体2は、シフトレバー4の後方側に配置されている。このボックス本体2内には収納部5が形成されており、その収納部5には外部上方に向って開放された開口6が形成され、その開口6を通じて収納部5内に対して小物等の出し入れを行うことができることになっている。
【0016】
このボックス本体2には、その上部において上壁部として構成すべく、ベース体7(第1部材)が備えられている。ベース体7は、前記収納部5の開口6に対応して長尺な板体として形成されており、その後部(図2,図3中、右側)には支持部7aが設けられ、その前部(図2,図3中、左側)には操作レバー9が取付けられている。支持部7aは、ボックス本体2の後部に回動可能に支持されており、ベース体7は、その支持部7aの回動により、収納部5の開口6を開閉(起倒動)できることになっている。この場合、支持部7aとボックス本体2との間には、図示を略すばねが介在されており、そのばねにより、ベース体7は開方向に付勢されている。操作レバー9は、ベース体7の前部下面に回動可能に支持されている。操作レバー9は、ボックス本体2に形成される係止孔10に係止させるための係止爪部11と、乗員が開閉操作するためのレバー部12とを備えており、係止爪部11が係止孔10に係止されているときには、ベース体7は、収納部5の開口6を塞いだ状態に維持され、レバー部12を上側に持ち上げるように回動させて係止爪部11をボックス本体2の係止孔10から退出させたときには、ベース体7は、図示を略すばねの付勢力により後方に向けて起立され、収納部5の開口6は開かれる。
【0017】
このベース体7は、図2〜図5に示すように、内部空間を有する扁平な構造体とされており、その上面部13には、その幅方向(図5中、上下方向)中央部において、その前部から前後方向中央部分当たりまでの間において平坦面14が確保されている。このベース体7の平坦面14には、第1位置決め凹所15と第2位置決め凹所16とが前後方向に離間された状態で形成されている。第1位置決め凹所15は、第2位置決め凹所16よりも後方側に位置され、第2位置決め凹所16は、ベース体7の前部よりもやや後方側に位置されている。この第1,第2位置決め凹所15,16内の底面上には、本実施形態においては、スポンジ材50がそれぞれ配置されている。
【0018】
また、ベース体7の平坦面14には、図2〜図5に示すように、その前部よりも多少、後方側において、片持ち片部51が形成されている。この片持ち片部51は、前後方向に延びる一対のスリット17と、その一対のスリット17の前端側をつなぐスリット18とをベース体7に形成することにより、平面視コ字状に形成されており、その片持ち片部51は、一対のスリット17の後端側を基準として、ベース体7の厚み方向に撓むことができることになっている。この片持ち片部51の先端部(前端部)の上面は、それよりも後方側部分に対して多少、下方側に段差をもって引っ込むように形成されており、この片持ち片部51の先端部形状に基づき、前記第2位置決め凹所16が構成されている。
【0019】
このベース体7には、図4、図5、図7、図9に示すように、その幅方向両側部において、スライド構造の一方のスライド構造部の構成部分として、スライド案内面(傾斜面)60がそれぞれ形成されている。この各スライド案内面60は、ベース体7の前端からその長手方向後方に向けて延びており、その各スライド案内面60は、ベース体7の幅方向外方に向かうに従って該ベース体7の下面側に近づくように傾斜される傾斜面とされている。本実施形態においては、このスライド案内面60は、ベース体7の平坦面14(水平面)に対して略45°に設定されている。
【0020】
この各スライド案内面60には、図4、図5、図7、図9に示すように、凹所61がそれぞれ形成されている。凹所61は、本実施形態においては、各スライド案内面60につき、ベース体7の前後方向(長手方向)に間隔をあけて2個所形成されており、その各凹所61は、ベース体7の幅方向長さよりも前後方向の長さが多少、長くされている。この各凹所61の底部(内底面)61aは、スライド案内面60の垂直方向に一定深さだけ内方側に引っ込んでおり、その底部60aの傾きは、スライド案内面60と同じ傾き(水平面に対して略45°)に設定されている。
【0021】
この各凹所61内には、図7、図8、図9に示すように、付勢構造(付勢手段)62がそれぞれ収納されている。各付勢構造62は、本実施形態においては、ガイド孔63と、一対の係止孔64と、樹脂製の押圧片65と、コイルスプリング66と、を備えている。ガイド孔63は、凹所底部61aにベース体7の前後方向中央部において形成されており、一対の係止孔64は、同じく凹所底部61aにベース体7の前後方向両側において形成されている。
押圧片65は、板状(帯板状)の当接板部67と、一対の係止脚部68と、ガイド軸部69と、を一体的に有している。当接板部67は、凹所61に対応させて、帯板状に形成され、その当接板部67は、その長手方向をベース体7の前後方向に向けた状態で凹所61開口を覆っている。
一対の係止脚部68は、当接板部67の長手方向両側から垂下して凹所61内に入り込んでおり、その一対の係止脚部68の爪部68aは、凹所底部61aの一対の係止孔64に着脱可能に係止されている。これにより、押圧片65が凹所61内から脱離することが規制されると共に、係止孔64(周縁部)と係止脚部68の爪部68aとの係止関係(当接関係)により規制を受けない範囲で(係止孔64を係止脚部68が摺動できる範囲で)、押圧片65は、凹所61内外をスライド案内面60に対して垂直方向に変位動可能となっている。また、押圧片65は、樹脂製であることに基づき、各係止脚部68が撓み可能となっており、これに基づき、所定以上の引き抜き力を押圧片65に付与すれば、各係止脚部68の爪部68aが係止孔64の周縁部から外れ、押圧片65を引き抜くことができることになっている。
ガイド軸部69は、当接板部67の裏面にその当接板部67の長手方向中央部に設けられ、そのガイド軸部69は、当接板部67の裏面から遠のく方向に延ばされている。このガイド軸部69は、前記ガイド孔63に摺動可能に挿通されており、このガイド軸部69とガイド孔63のガイド作用により、押圧片65(当接板部67)は、凹所61内外を円滑に変位動することになる。本実施形態においては、ガイド軸部69として、頭部69aを有するピン69が用いられている。このため、そのピン69の湾曲面状の頭部69aが当接板部67の表面に突出した状態で位置されることになっている。
コイルスプリング66は、その内部にガイド軸部69が挿入された状態で、当接板部67と凹所底部61aとの間に配設されている。このコイルスプリング66は、当接板部67に対して、凹所底部61aから離間する方向の付勢力を与えるものであり、このコイルスプリング66の付勢力により、当接板部67に外力が作用しないときには、係止脚部68の爪部68aは係止孔64の周縁部に係止された状態となり、そのときには、その当接板部67の表面は、頭部69aと共に、スライド案内面60より若干、外方に位置されることになっている。
【0022】
この他に、ベース体7には、図4、図5に示すように、蓋体3に連係されてその蓋体3を前方に付勢するためのばね材20、蓋体3のスライドに対して抵抗力を付与するためのピニオン21(回転ダンパ)が設けられている。尚、図4においては、後述の係合片29が、位置決め凹所の一つとしての第1位置決め凹所15内に進入した状態を示している。
【0023】
前記蓋体3は、図2,図3に示すように、前記ベース体7に対してスライド可能に保持されている。蓋体3は、スライド構造の他方のスライド構造部の構成部分をなすスライド本体(第2部材)22と、カバー体23とを備えており、スライド本体22は、その上面がカバー体23により被われている。
【0024】
スライド本体22は、ベース体7に対応して長尺な略板体として形成されており、そのスライド本体22の幅方向両側には垂下壁部24がそれぞれ設けられている。その各垂下壁部24の内面にはガイド部25が前後方向(長手方向)に延びるようにしてそれぞれ設けられており、その各ガイド部25は、図6、図7に示すように、スライド本体22の幅方向外方に向かうに従ってそのスライド本体22の下面に近づくように傾斜されるスライド傾斜面(傾斜面)70と、そのスライド傾斜面70の下部に連続してスライド本体22の幅方向内方に張り出すスライド支持面71と、を構成している。尚、本実施形態においては、スライド傾斜面70とスライド支持面71との間に起立内面72が介在されている。このようなスライド本体22は、ベース体7上において、その内部にベース体7を取り囲むように配置されており、これに伴い、各スライド傾斜面70は各スライダ案内面60に対向して配置され、各スライド支持面71上にベース体の幅方向外側の下面が支持される。これにより、スライド本体22は、ベース体7のスライド案内面60、スライド傾斜面70等の案内作用に基づき、ベース本体7に対して前後方向にスライドすることになる(スライド構造)。
【0025】
この場合、図7、図8に示すように、各スライド傾斜面70が当接板部67表面の頭部69aに当接して、当接板部67を、コイルスプリング66に抗して凹所61内側に引っ込ませることになる。このため、コイルスプリング66の反発力が、スライド傾斜面70に付勢力として垂直に作用することになり、その付勢力は、上向きの分力と幅方向外向きの分力としてスライド傾斜面70に作用する。この結果、スライド本体22は、位置決め時は勿論、スライド時においても、上下方向及びその幅方向においてがたつくことが抑えられることになる。
図7中、符号52は、ベース体7上に配置される前記ピニオン21に噛合するラックである。
【0026】
このスライド本体22には、図2,図3,図10,図11に示すように、案内凹所26が形成されている。この案内凹所26は、スライド本体22を下方側に膨出させることにより形成されており、その案内凹所26は、スライド本体22の前端から後方に延びてスライド本体22の延び方向略中央までに至っている。この案内凹所26の底部には、その後端側において、その幅方向に延びるようにして長孔27(図11参照)が形成されており、その長孔27を前後方向に跨ぐようにして案内箱28が設けられ、その案内箱28内に係合片29が配設されている。係合片29は、図11,図12に示すように、係合片本体部30と、その係合片本体部30の両側壁部を兼ねて上方に突出する一対のガイド板部31と、係合片本体部30の中央部から、前記ガイド板部31同様、上方に突出してその外周にコイルスプリング66を装着するばね装着ピン部33と、係合片本体部30の各ガイド板部31から側方に突出される一対の昇降用ガイド軸部34とを備えている。案内箱28は、その下部に開口を有しており、その案内箱28内は、その下部開口を介して長孔27に臨んでいる(案内箱28の下部開口も符号27を用いる)。また、案内箱28は、その両側壁部28aが長孔27の長手方向内方側に位置されている。各側壁部28aには、切り欠き35が上下方向に延びるようにしてそれぞれ形成されており、その各切り欠き35の下端側切り欠き端は、案内凹所26底部における長孔27に開口されている。これにより、係合片29は、スライド本体22の下面側から長孔27を介して案内箱28内に収納され、その係合片29の各昇降用ガイド軸部34は、長孔27を通過した後、案内箱28の切り欠き35から外方に突出されることになっている。また、案内箱28の上壁部28bには、一対のガイド板部31、ばね装着ピン部33が貫通できる貫通孔36,37がそれぞれ形成されており、一対のガイド板部31、ばね装着ピン部33がその各貫通孔36,37を貫通して変位動することにより、係合片29は、上下方向に変位動可能となり、これに伴い、係合片本体部30の下端部が案内凹所26底部下面(スライド本体22下面)から下方に突出した状態、その突出状態から案内箱28内に退出した状態をとり得るようになっている。
【0027】
また、案内凹所26内には、図2,図3,図10,図11に示すように、長尺な移動体38が摺動可能に収納されている。この移動体38は、案内箱28とスライド本体22の前部との間に亘って延びており、その後端部には、昇降機構39が形成され、その前端部には、係止片操作手段としての操作ボタン40が取付けられている。昇降機構39は、案内箱28の側壁部28aを挟みつつ前記長孔29を横切る一対の脚部41を有しており、その各脚部41にはガイド面42がそれぞれ形成されている。この両ガイド面42は、移動体38の前端部側に向うに従って高くなるように傾斜されており、この両ガイド面42は、係止片の一対の昇降用ガイド軸部34を受け止めると共に、その傾斜したガイド面42の前後動に基づき一対の昇降用ガイド軸部34を昇降動させる機能を有している。この場合、ばね装着ピン部33のコイルスプリング32が係合片本体部30と案内箱28の上壁部28bとの間に介在されており、このコイルスプリング32の付勢力により、係合片29は、各昇降用ガイド軸部34が各ガイド面42に押し付けられる方向に付勢されている。また、この移動体38には、図10に示すように、延び方向内方側において、幅広のスリット43が前後方向に延びるように形成され、その幅広スリット43は、案内凹所26底部に臨んでいる。その案内凹所26底部には、スリット43内において、ばね受け44とストッパ45とが立設されている一方、移動体38には、ばね受け44とストッパ45との間に区画壁46が設けられている。その区画壁46にはばね装着ピン47がばね受け44に向けて突出されると共にそのばね装着ピン47にコイルスプリング48が装着されており、そのコイルスプリング6648の付勢力により、移動体38は、その区画壁46がストッパ45に当接する方向に付勢されている。これにより、区画壁46がストッパ45に当接しているときには、移動体38は最も前方位置に位置することになり、このとき、前記一対の昇降用ガイド軸部34が位置(当接)している前記一対のガイド面42の高さは、最も低い状態となり、係合片29における係合片本体部30の下端部は、スライド本体22の下面から下方に突出する状態となる。一方、操作ボタン40を押したときには、移動体38が後方に移動して一対のガイド面42も後退することになり、その各ガイド面42により、昇降用ガイド軸部34は上方に持ち上げられることになり、これに伴い、係合片本体部30の下端部は、前記突出状態から案内箱28(案内凹所26)内に退出することになる。
【0028】
前記係合片29は、スライド本体22のスライドに伴うその移動領域が、前記第1位置決め凹所15と前記第2位置決め凹所16とに対して臨むように配置されている。これにより、操作ボタン40の非操作時状態において、係合片本体部30の下端部が第1位置決め凹所15内に臨んだ位置に位置されたときには、係合片本体部30の下端部が第1位置決め凹所15内に進入され、係合片本体部30の下端部と第1位置決め凹所15の内壁(前後壁)との係合関係により、蓋体3はベース体7と略全体的に重なった状態で保持される(図2の状態)。一方、係合片本体部30の下端部が第2位置決め凹所16内に臨んだ位置に位置されたときには、図12に示すように、係合片本体部30の下端部が第2位置決め凹所16内に進入され、係合片本体部30の下端部と第2位置決め凹所16の内壁(前後壁)との係合関係により、蓋体3はベース体7から突出した状態で保持される(図3の状態)。
【0029】
したがって、このようなコンソールボックス1においては、係合片本体部30の下端部が第1位置決め凹所15内に進入しているときには、蓋体3は、ベース体7に対して略全体的に重なった状態で位置決めされ、係合片本体部30の下端部が第2位置決め凹所16内に突出しているときには、ベース体7よりも前方に突出する突出状態で位置決めされ、それらの各状態は、操作ボタン40を押すことにより係合片29を各位置決め凹所15(16)内から退出させない限り保持され、蓋体3は、高い位置決め保持状態をもって保持される。これに対して、蓋体3の位置調整に関しては、操作ボタン40を押すことにより係合片29が進入状態の位置決め凹所(第1又は第2位置決め凹所16)から退出することになり、その状態を維持しつつ、スライド力を蓋体3に付与すれば、蓋体3は、ベース体7に対してスムーズにスライドすることになる。このため、蓋体3の係合片29を別の位置決め凹所(第2又は第1位置決め凹所15)に移動させてそこでの位置決めを簡単に行うことができる。
【0030】
また、スライド本体22の垂下壁部24の内面のスライド傾斜面70と、ベース体7の幅方向両側にスライド案内面60との間に押圧片65(付勢構造62)が介在されて、押圧片65(当接板部67)が、コイルスプリング66に抗して凹所内側に引っ込むことになることから、コイルスプリング66の反発力が、スライド傾斜面70に付勢力として垂直に作用することになり、その付勢力は、上向きの分力と幅方向外向きの分力として作用する。このため、蓋体3(スライド本体22)は、上下方向におけるがたつき抑制用の付勢構造6及びその幅方向におけるがたつき抑制用の付勢構造の両方を設けずに、付勢構造62だけで、位置決め時は勿論、スライド時においても、上下方向及びその幅方向においてがたつきを抑えることができる。
【0031】
特に本実施形態においては、スライド傾斜面70及びスライド案内面60が水平面に対して略45°に設定されていることから、スライド本体22に、上下方向及びその幅方向両側外方に均等に付勢力が作用することになり、蓋体3のがたつきを確実且つ効果的に抑制できる。
しかも、スライド傾斜面70に付勢力が付与されるに際して、湾曲面上の頭部69aがスライド傾斜面70が当接されることになり、当接板部67全体がスライド傾斜面70に当接する場合よりも、摺動抵抗を少なくすることができる。このため、がたつきの抑制を図りつつ、乗員の操作性が低下することを抑制できる。
【0032】
また、作業者が押圧片65に引き抜き力を付与し、係止脚部68の爪部と係止孔64周縁部との係止を解除すれば、押圧片65を凹所61から取り外すことができる。このため、コイルスプリング66をばね係数の異なるものに簡単に取り替えることができ、これに伴い、押圧片65による付勢力を簡単に調整できる。
【0033】
図13,図14は他の実施形態を示す。この他の実施形態において、前記実施形態と同一構成要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0034】
この他の実施形態は、付勢構造62として、片持ち状の撓み片73を用いた内容を示している。
すなわち、各スライド案内面60に片持ち状の撓み片73が一体的にそれぞれ設けられており、スライド本体22における幅方向両側のガイド部25がベース体7の両側部にスライド可能に嵌合されたときに、撓み片73は、スライド本体22のスライド傾斜面70と当接して撓められ、反発付勢力が発生する。この付勢力が、前記実施形態同様、スライド本体22(スライド傾斜面70)に作用することになり、蓋体3(スライド本体22)は、上下方向及びその幅方向にがたつくことが抑制される。
【0035】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次のような態様を包含する。
(1)スライド案内面60又はスライド傾斜面70の一方のみを傾斜面とすること。
のみを傾斜面
(2)付勢構造62を、スライド本体22側に設けること。
(3)頭部69aに代えて、押圧片65を構成する当接板部67の表面を湾曲させて、その湾曲した当接板部67をスライド傾斜面70に当接すること。
(4)本発明に係るスライド構造をコンソールボックス以外のものに適用すること。
【0036】
本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【符号の説明】
【0037】
1:コンソールボックス
3:蓋体
7:ベース体(第1部材)
22:スライド本体(第2部材)
60:スライド案内面(傾斜面)
62:付勢構造(付勢手段)
65:押圧片(付勢手段)
66:コイルスプリング(付勢手段)
70:スライド傾斜面(傾斜面)
73:撓み片(付勢手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定幅を維持する第1部材と、該第1部材の幅方向両側部分を少なくとも包被する第2部材とが、相対的にスライド可能に組み付けられ、前記第1部材と前記第2部材との間に付勢手段が介在されているスライド構造において、
前記第1部材、前記第2部材の少なくとも一方の部材に、該第1部材と該第2部材とが摺動する部分において、前記第1部材の幅方向に対して傾斜する傾斜面が設けられ、
前記第1部材、前記第2部材の他方の部材のうち、前記一方の部材の傾斜面に対向する部分と該傾斜面との間に前記付勢手段が介在されて、該対向する部分と該傾斜面とが離間する方向に付勢されている、
ことを特徴とするスライド構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記傾斜面の角度が、前記第1部材の幅方向に対して略45°に設定されている、
ことを特徴とするスライド構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記付勢手段が、前記第1、第2部材の少なくともいずれか一方に着脱可能に設けられている、
ことを特徴とするスライド構造。
【請求項4】
請求項3において、
前記付勢手段が、前記第1、第2部材のすくなくともいずれか一方に変位動可能に支持される押圧片と、該押圧片を相手方部材に向けて付勢するスプリングと、を備えている、
ことを特徴とするスライド構造。
【請求項5】
請求項1又は2において、
前記付勢手段が、前記第1、第2部材の少なくともいずれか一方に一体的に設けられた撓み片である、
ことを特徴とするスライド構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
コンソールボックスにおけるボックス本体と該ボックス本体の上側においてアームレストをなす蓋体との間に介在させて用いられる、
ことを特徴とするスライド構造。
【請求項1】
一定幅を維持する第1部材と、該第1部材の幅方向両側部分を少なくとも包被する第2部材とが、相対的にスライド可能に組み付けられ、前記第1部材と前記第2部材との間に付勢手段が介在されているスライド構造において、
前記第1部材、前記第2部材の少なくとも一方の部材に、該第1部材と該第2部材とが摺動する部分において、前記第1部材の幅方向に対して傾斜する傾斜面が設けられ、
前記第1部材、前記第2部材の他方の部材のうち、前記一方の部材の傾斜面に対向する部分と該傾斜面との間に前記付勢手段が介在されて、該対向する部分と該傾斜面とが離間する方向に付勢されている、
ことを特徴とするスライド構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記傾斜面の角度が、前記第1部材の幅方向に対して略45°に設定されている、
ことを特徴とするスライド構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記付勢手段が、前記第1、第2部材の少なくともいずれか一方に着脱可能に設けられている、
ことを特徴とするスライド構造。
【請求項4】
請求項3において、
前記付勢手段が、前記第1、第2部材のすくなくともいずれか一方に変位動可能に支持される押圧片と、該押圧片を相手方部材に向けて付勢するスプリングと、を備えている、
ことを特徴とするスライド構造。
【請求項5】
請求項1又は2において、
前記付勢手段が、前記第1、第2部材の少なくともいずれか一方に一体的に設けられた撓み片である、
ことを特徴とするスライド構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
コンソールボックスにおけるボックス本体と該ボックス本体の上側においてアームレストをなす蓋体との間に介在させて用いられる、
ことを特徴とするスライド構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−1261(P2013−1261A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134905(P2011−134905)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
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