説明

スライド標本用染色装置

【課題】複数の染色用バスケットに搭載されたスライドガラスに貼着された染色用試料を均一性良く多数染色処理をする装置を提供すること。
【解決手段】複数のバスケットをセット可能なバスケット載置台を用いる。バスケット載置台は上下に移動できるようになっていて、セットされた複数のバスケットは同時に上下に移動可能である。バスケット載置台の下方には薬液容器載置基台があり、この薬液容器載置基台にはバスケット載置台にセットされた複数のバスケットに対応した薬液容器が配置されている。スライドガラスを搭載したバスケットがセットされたバスケット載置台が下がると、バスケット載置台にセットされたバスケットは対応する薬液容器に入り、スライドガラスに貼着された試料が染色液容器内の薬液に浸漬する。試料が浸漬した状態でバスケット載置台が上下振動し染色処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織標本、細胞診標本等のスライド標本の染色工程において用いる染色装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病医院等に於いて、患部から切除した試料を顕微鏡により観察し、病気の診断をする事が広く行なわれている。この様な顕微鏡観察による病気の診断を容易に行なえる様にする為、スライドガラスに貼着した試料を染色する事が行なわれており、この染色作業を自動的に行なう自動染色装置も種々提供されている。
【0003】
図10は、この様な自動染色装置の一例を示している。(たとえば、特許文献1)基台(薬液容器収納ケース)101には、染色処理に必要な薬液を貯溜した、上方が開口した薬液容器102を載置する。薬液容器102の上方には、基台101の横方向(図10のa方向)に亙る水平移動自在な第一の移動部材103と、この第一の移動部材103に沿う移動自在とする事により、基台101の縦方向(図10のb方向)に亙る水平移動自在な第二の移動部材104と、この第二の移動部材104の鉛直方向に沿い移動自在とする事により、昇降自在な吊下腕105とから成る三次元駆動装置を設けている。
【0004】
この吊下腕105は、染色籠(バスケット)106を係脱自在である。即ち、バスケット106は、スライドガラス収納部107と、把手108とを有しており、吊下腕105の鉤部109は、この把手108に係合自在である。そして、吊下腕105が把手108を係合した状態で、この吊下腕105を下降させる事により、バスケット106を上記薬液容器102内に浸漬自在である。
【0005】
上述した様な自動染色装置を用いて試料の染色処理を行なう場合、先ず、染色すべき試料(染色用試料)を貼着したスライドガラスを1枚〜複数枚収納したバスケット106を、吊下腕105に係合させる。次いで、上記三次元駆動装置を駆動すれば、この三次元駆動装置を構成する第一、第二の移動部材103、104、並びに吊下腕105が、図示しない制御器からの信号に基づいて移動し、上記バスケット106を、所定の順番に従って所定の時間ずつ薬液容器102内の薬液に浸漬する。この様な作業を所定回数繰り返す事により、試料が染色される。
【0006】
更に、上述した様な自動染色装置を用いて、複数のバスケット106を並行して処理し、より多くの試料を染色する、多重染色処理も考えられている。
【0007】
即ち、試料を貼着したスライドガラスを収納したバスケット106は、所定の時間薬液内に浸漬しておくが、この浸漬中、吊下腕105がこのバスケット106との係合を外し、別のバスケット106と係合してこの別のバスケット106を所定の薬液容器102内に入れる。そして、同じく吊下腕105との係合を外し、この別のバスケット106を所定時間だけ薬液に浸漬する。同様の作業を複数のバスケット106についても行ない、所定時間の浸漬を終えたバスケット106があれば、吊下腕105がこのバスケット106と係合し、次の薬液容器102に運ぶ。
この様な動作を繰り返す事により、複数のバスケット106を並行して処理出来る為、前述した通常の処理に比べ、より多くの試料を短時間の内に染色出来る。この様な多重染色処理は、上記制御器に予め処理手順を記憶させる事で可能である。
【特許文献1】実開平5−66543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したような染色装置は以下のような問題点がある。スライドガラスに貼着した試料を染色するには薬液内に一定時間浸漬する必要があるが、スライドガラスを静止した状態で浸漬するだけでは、スライドガラス近傍に存在する薬液だけが試料に接触するだけで、新鮮な薬液が充分に供給されない。このため染色を完全に行うためには、浸漬時間を長くしたり、或いは頻繁に薬液を入れ替えて常に新鮮な薬液にしておいたりしなければならなかった。このことは、染色装置の処理能力を低下させたり、或いは処理コストを増大させたりする。さらに、試料を長く浸漬するだけでは、試料に接触する薬液が変化したりよどんできたりするため、試料の染色むらなど染色状態における品質劣化も生じていた。
【0009】
上記問題点をこのような染色装置を用いて解決するには、吊下腕105にバスケットを系合し吊下げた状態で薬液容器内にバスケットを浸漬しながら吊下腕105を細かく上下に昇降(振動)させて、試料に接触する薬液を変化させることが考えられる。しかし、この場合処理できるバスケットは1個だけであり、処理能力を増大させることはできない。また、処理能力を増大させるために、複数の移動部材103および104を搭載することも考えられるが、移動部材の費用が効果となったり装置が大型化したりするため、染色処理費用が増大してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は複数のバスケット(染色用籠)をセット可能なバスケット載置台を用いる。バスケット載置台は上下に移動(昇降または振動)できるようになっていて、セットされた複数のバスケットは同時に上下に移動可能である。バスケット載置台の所定の場所にバスケット移動装置(移動機構)を用いてバスケットを載置する。バスケット載置台の下方には薬液容器載置基台が設置されていて、この載置基台にはバスケット載置台にセットされた複数のバスケットに対応した薬液容器が配置されている。薬液容器は上方が開口して染色処理に必要な薬液を貯留している。バスケットには縦方向に溝が形成されていて、試料を貼着したスライドガラスがその溝に入りバスケットに固定できるようになっている。またその溝は1つ以上存在し、バスケットに1枚以上のスライドガラスが搭載できるようになっている。スライドガラスを搭載したバスケットがセットされたバスケット載置台が下がると、バスケット載置台にセットされた複数のバスケットは対応する各薬液容器に入り、スライドガラスに貼着された試料が薬液容器内の薬液に浸漬する。試料が浸漬した状態でバスケット載置台が上下移動(振動)を繰り返す。一定頻度の上下振動を行い染色処理を終了した後に、バスケット載置台を上げバスケットを薬液容器から引き上げる。異なる薬液容器をセットしても良く、次の薬液処理が必要であれば、バスケット載置台の中でバスケットを移動させて所定の薬液容器の場所にセットする。同様のことを繰り返し2回目の薬液処理を行う。すべての薬液処理を終了し、染色処理を終了したバスケットは、バスケット載置台から取り外して所定の場所に置く。
【発明の効果】
【0011】
バスケット載置台にセットされたバスケットは、薬液に浸漬しながらバスケット載置台の上下振動に合わせて上下振動するので、バスケットに搭載されたスライドガラスも上下振動しスライドガラスに貼着された試料は薬液に対して動的に接触している。この結果、染色ムラ等の染色の品質劣化が発生しなくなる。染色処理された複数の試料の品質ばらつきも小さくなる。また、染色処理をしているときに、バスケット移動装置を自由に使用できるので、染色処理とバスケットの移動を同時並行して行うこともでき、処理能力を高めることができる。バスケット載置台にはバスケット移動装置1台だけで複数のバスケットをセットできるので、単純な装置でしかも安価に試料の染色の多数処理も可能となる。多数のバスケットを載置できるようにすることも容易にできる。さらに、複数のバスケット移動装置も配置できるので、染色処理能力を増大させることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜3は本発明の染色装置111の1例を示す図で、図1は染色装置111の正面図、図2は染色装置111の側面図、図3は染色装置111の上面図である。染色装置111は、薬液容器129、薬液容器129等を載せる薬液容器載置基台116、薬液容器載置基台116を支える載置基台支持柱118、載置基台支持柱118を固定し染色装置全体を載せる染色装置基台117から構成され、さらに染色用籠(バスケット)128を搭載して薬液容器内でバスケット128を昇降させる昇降機構134、バスケット128を移動させるバスケット移動機構135、薬液処理前後のバスケット128を収納するバスケット収納容器132、薬液容器載置基台116に付いている昇降機構134の昇降ロッド115を通す(昇降)ロッドガイド119などを備える。
【0013】
薬液容器129は図1〜3に示すように直方体形状の容器であり、薬液容器129内にはスライドガラスに貼着した試料の染色用薬液が入っている。薬液容器129には試料を貼着したスライドガラスを搭載したバスケット128が浸漬される。薬液容器129は薬液容器載置基台116の上に置かれる。薬液容器載置基台116は載置基台支持柱118に支持されて染色装置基台117に固定されているので、薬液容器129も通常は動かないようになっている。固定治具を用いて薬液容器129を薬液容器載置基台116に完全に固定しても良い。薬液容器内の薬液は、染色処理によりまたは経時変化などにより劣化したり消費したりするので、時々交換や注ぎ足しをする必要がある。そこで、薬液容器129は取り出しできるようになっている。容易に取り出しができるように薬液容器129の側面に把手などを取り付けても良い。或いは、薬液容器129を動かさずに、薬液容器129にチューブなどを入れて薬液を出し入れしたり、或いは循環させたりしても良い。図1〜3においては、薬液容器129は8台搭載されている(図1において、紙面の左右方向(X方向)に4台、紙面に垂直方向(Y方向)に2台、合わせて4x2=8台)が、装置を大きくしたり、バスケットを小型化したりして、もっと多数の薬液容器を搭載するようにすれば染色処理能力が大きくなる。或いは、余り処理能力が必要でなければ、1つのバスケット容器が入る薬液容器1台だけ搭載される小型の装置でも良い。また、1つのバスケットが入る薬液容器として図示しているが、複数のバスケットが入るような薬液容器としても良い。
【0014】
図1に示すように、本発明の染色装置111には、バスケット移動機構135が備えられている。バスケット移動機構135は、バスケットを係合し吊下げる鉤部136、鉤部136を支持する吊下げ板137、吊下げ板137を支える上下移動台138、上下移動台138を支え上下させるスクリューシャフト139、スクリューシャフト139を支え左右(X方向)に移動するX方向移動台140、X方向移動レール141などから構成される。吊下げ板137は、上下移動台138上で図1の紙面に対して垂直方向(Y方向)に移動できるようになっている。スクリューシャフト139はスクリュー状にネジが切られ回転して上下移動台138を上下方向(Z方向)に移動させる。X方向移動レール141は、図3に示すように染色装置111のX方向全体にわたって配置されている。図3に示すように、Y方向はバスケット128の長手方向になり、この実施例ではY方向に2台の薬液容器129が配置されていて、染色装置のY方向全体にわたって吊下げ板137および鉤部136が移動できるようになっている。また、上下移動台138がスクリューシャフト139をZ方向に移動して鉤部136に吊下げられたバスケットを上下に移動させることができる。
【0015】
以上のようにバスケット移動機構135によって、バスケット搬送装置(または、バスケット移動装置で、バスケットを係合し吊下げる鉤部136、鉤部136を支持する吊下げ板137、吊下げ板137を支える上下移動台138、上下移動台138を支え上下させるスクリューシャフト139、スクリューシャフト139を支え左右(X方向)に移動するX方向移動台140などから構成される)は染色装置全体を移動することができるので、所定の位置に配置された薬液容器に対応する(バスケット載置台フレーム112に取り付けられた)係止め腕受け部114の所までバスケット128を移動させて、所定の係止め腕受け部114にバスケットの係止め腕130を係合させることができる。
【0016】
薬液容器載置基台116の上には薬液容器129が配置されて、その上方にはバスケット載置台フレーム112がある。バスケット載置台フレーム112は2本で1組になっていて、この2本のバスケット載置台フレーム112(112−1、112−2)は、バスケットの長さ(バスケットの係止め腕も含めた)にほぼ等しい幅で互いに平行に配置され、2本の昇降ロッド上部支持フレーム113(113−1、113−2)に固定されている。図1〜3に示す本実施例では、薬液容器129が(Y方向に)2列配置されているので、それに対応してもう1組の2本のバスケット載置台フレーム112(112−3、112−4)が、同じくバスケットの長さにほぼ等しい幅で互いに平行に配置され、2本の昇降ロッド上部支持フレーム113(113−1、113−2)に固定されている。2本の昇降ロッド上部支持フレーム113も互いに平行に配置されていて、その幅は図1〜3に示すように薬液容器幅と薬液容器の個数に依存する。以上のように、バスケット載置台フレーム112と昇降ロッド上部支持フレーム113で矩形形状のバスケット載置台を形成している。
【0017】
2本のバスケット載置台フレーム112には、係止め腕受け部(バスケット受け部)114が1対ずつ取り付けられている。係止め腕受け部114は、鉤状または「し」の字状などの形状でその先端は(U字状またはV字状などの)溝を有していて、この溝にバスケット128の両側に取り付けられている係止め腕130が係合する。バスケット128の係止め腕130はバスケット搬送装置(移動装置)の鉤部136にも係合しているので、搬送装置の鉤部136から係止め腕受け部114へのバスケット128の移動において、搬送装置の鉤部136と係止め腕受け部114が干渉しないように、1対の係止め腕受け部114の距離や搬送装置の2つの鉤部136の距離や係止め腕130の長さを調整する必要がある。また、係止め腕受け部に係合し吊下げられたバスケット128は上下に移動または振動するので、バスケット128が落下しないためにほぼ水平な状態に保持されるように、係止め腕受け部の溝のサイズなども調整する必要がある。係止め腕受け部114に係合し吊下げられたバスケット128が正確に薬液容器129に入るように、バスケット載置台フレーム112において係止め腕受け部114の位置を調整して取り付ける。複数のバスケットが載置されるバスケット載置台フレーム112の場合は、バスケット載置台フレーム112に載置される複数のバスケットの高さが同程度になるようにし、複数のバスケットに搭載される複数のスライドガラスが等しく薬液に浸漬されるようにする。このようにして、スライドガラスに貼着した試料の染色状態がばらつきのないようにすることができる。
【0018】
薬液処理前後のバスケットは、薬液処理部(薬液容器が配置されている所)の手前にあるバスケット置き容器(バスケット置場)132に置かれる。実施例の図1〜3においては、バスケット置き容器132は1台だけであるが、処理能力向上などのために複数台設置しても良い。バスケット移動機構135により、バスケット置き容器132にあるバスケット128を係止め腕受け部114に運んだり、係止め腕受け部114にあるバスケット128をバスケット置き容器132に運んだりする。或いは、1つの係止め腕受け部114(たとえば、114−1)にあるバスケット128を別の係止め腕受け部114(たとえば、114−3)に運んだりする。尚、バスケットの移動を手で行うこともできる。
【0019】
本発明で重要な点は、バスケット載置台フレーム112が上下に振動または昇降できるようになっていることである。すなわち、バスケット載置台フレーム112を昇降または振動させる昇降機構が備えられている。この昇降機構によりバスケット載置台フレーム112が上下に振動または昇降するので、バスケット載置台フレーム112の係止め腕受け部114に置かれたバスケットが薬液容器内の薬液の中で上下に振動または昇降するようにできる。その結果、バスケットに搭載されたスライドガラスに貼付された試料に薬液が動的に接触するので、試料の染色品質を極めて良好にすることができ、また染色処理も速くすることができる。尚、バスケット載置台フレーム112は上下に昇降しても、薬液載置基台は動かないので当然薬液容器も動かない。
【0020】
バスケット移動装置によりバスケット載置台フレーム112にセットされたバスケット128は、セットされた時にバスケット128の1部が薬液容器129内に入った状態になっても良い。この場合試料の1部または全部が薬液に接触しても問題がない場合は、バスケットがセットされたときに薬液容器129内に貯留した薬液中に試料の1部または全部が浸漬しても良い。しかし、試料の1部または全部が薬液に接触して問題がある場合は、薬液容器129内に入っている薬液の量を調整して、バスケットがセットされたときに試料が薬液に接触しないようにする必要がある。
【0021】
図1〜3に示す本実施例における昇降機構は、昇降ロッド上部支持フレーム113、昇降ロッド115、昇降ロッド下部支持フレーム120、アーム121、アーム軸123、アーム軸側歯車126、(チェーン)ベルト124、モーター側歯車127、モーター回転シャフト142、モーター125などから構成される。2本の昇降ロッド上部支持フレーム113(113−1、113−2)はバスケット載置台フレーム112と直角方向に固定される。従って、2本の昇降ロッド上部支持フレーム113の上下運動と連動して、バスケット載置台フレーム112も上下運動する。2本の昇降ロッド支持フレーム113と外側の2本のバスケット載置台フレーム112(112−1、112−4)は矩形状に固定され(これらをまとめて、「バスケット載置台」と呼ぶ)、図3から分かるようにこれらのフレームで囲まれた内側は中空になっているので、バスケット搬送機構を用いて、その上部からバスケット載置台フレーム112の係止め腕受け部114にバスケット128を載せることができる。2本の昇降ロッド上部支持フレーム113の両端部の下側に4本の柱状の昇降ロッド115(115−1〜115−4)が垂直に(かつ鉛直下方に)取り付けられている。薬液容器載置基台116には内側に貫通孔を有する柱状のロッドガイド119が4か所に取り付けられていて、昇降ロッド115はこのロッドガイド119の貫通孔を通って、さらに薬液容器載置基台116を貫通して、薬液容器載置基台116と染色装置基台117の空間にある昇降ロッド下部支持フレーム120に固定されている。昇降ロッド115は、ベアリング等によりロッドガイド119の貫通孔や薬液容器載置基台116の貫通孔をなめらかに移動できるようになっている。昇降ロッド115が上下に移動(振動)しても、染色装置基台117や薬液容器載置基台116は当然動かない。昇降ロッド下部支持フレーム120は2本存在する。(120−1、120−2)
【0022】
バスケット128の係止め腕部130は係り止め腕受け部114に載っている状態で薬液容器129にバスケット128が入り、薬液容器129内に入っている薬液にバスケット128に搭載されたスライドガラスが浸漬され、スライドガラスに貼着した試料が染色される。スライドガラスが薬液に浸漬した状態で、バスケット載置台フレーム112を昇降ロッド115により上下に振動させる。この結果、貼着した試料に接触する薬液も振動し、新鮮な薬液が試料表面に供給され染色ムラがなくなり、貼着した試料の染色状態が均質な状態となる。バスケット載置台フレーム112の上下に移動する距離を変化させて、試料を薬液から完全に引き上げその後で再度薬液に浸漬するという方法を取ることも容易に可能である。また、振幅や振動数を変化させて移動スピードを変えることも容易である。これらバスケット載置台の移動条件を最適化することにより、試料の染色状態を最良にすることができる。
【0023】
2本の昇降ロッド下部支持フレーム120は2本の昇降ロッド上部支持フレーム113と平行になっていて、それぞれ昇降ロッド115の下端と上端に固定されている。従って、これらは矩形状に構成されている。2本の昇降ロッド下部支持フレーム120(120−1、120−2)の中央部分には図2に示されるようにカムフロア122を持っていてアーム121に連結している。アーム121はアーム軸123と連結している。アーム軸123は1本の柱状の回転軸であり、その両端で2つのアーム121(121−1、121−2)に固定されている。アーム軸123が回転するとそれに従って2つのアーム121が同じ方向に同じだけ回転する。アーム121が連結するカムフロア122も動き、2本の昇降ロッド下部支持フレーム120は上下に同じ距離だけ移動する。
【0024】
従って、これらの2本の昇降ロッド下部支持フレーム120の上下移動に連動して4本の昇降ロッド115が上下に移動する。この4本の昇降ロッド115は同時に同じ距離だけ上下移動するので、この運動に連動して2本の昇降ロッド上部支持フレーム113が上下移動する。4本のバスケット載置台112(112−1〜112−4)は2本の昇降ロッド上部支持フレーム113に固定されているので、2本の昇降ロッド上部支持フレーム113の上下移動に連動して、4本のバスケット載置台112(112−1〜112−4)が上下に運動する。(移動または昇降と言っても良い。さらに、単位時間に上下運動を繰り返せば、振動と言うこともできる。)
【0025】
以上のようにカムフロア機構を用いてバスケット載置台112を上下に移動させることができる。この移動距離はアーム121の長さ(正確には、アーム軸123とアーム121が固定される支点からカムフロア122までの距離や、アーム軸123の回転角度によって決まる。アーム軸を回転させれば最大距離の上下移動をさせることができ、アーム軸を180度以下の角度で繰り返し回転・反転を行えば、その角度によって上下の移動距離を変えることができる。尚、アーム121やアーム軸123はアーム基台131に取り付けられていて、アーム軸123はアーム基台のベアリング等により自由に回転できるようになっている。アーム基台131は染色装置117に固定されている。
【0026】
図1および2に示すように、アーム軸123にはアーム軸側歯車126が取り付けられている。また、モーター125は染色装置基台117に設置され、モーター出力はモーター回転シャフト142に伝達し、モーター回転シャフト142に取り付けられたモーター側歯車127を回転・反転させる。また、モーター側歯車127とアーム軸側歯車126はチェーンベルト124で連結されていて、モーターの回転・反転運動はチェーンベルト124を通じてアーム軸123に伝わる。このようにして、モーター125の動力により、アーム121が回転・反転し、それに連動して昇降ロッド115が上下に昇降または振動し、さらにそれに連動してバスケット載置台フレーム112が上下に昇降または振動する。この結果、バスケット載置台フレーム112に取り付けられた係止め腕受け部114に係合し吊下げられたバスケット128が上下に昇降または振動する。複数の係止め腕受け部114に係合した複数のバスケット128(図1〜3においては、128−1〜128−8の8台)が同時に上下に薬液容器129(図1〜3においては、129−1〜129−8の8台)に入っている薬液中で昇降または振動し、バスケット128に搭載されたスライドガラスに貼着した試料を良好に染色する。
【0027】
図4および図5は、本発明の染色装置の本質的な部分である昇降機構の説明図である。図1〜3は平面的な図であったが、図4および図5は斜視図で立体的に示しており、しかも昇降機構を良く把握できるように、バスケット、薬液容器、薬液容器載置基台、バスケット移動機構などは示していない。また、バスケット載置台は1組のみ記載されている。図4はバスケット載置台が下がった状態を示す模式図で、図5はバスケット載置台が上がった状態を示す模式図である。
【0028】
図4に示すように、バスケット載置台フレーム311は平行な2本の柱状のフレームからなり、バスケット載置台フレーム311(311−1、311−2)の内側に係止め腕受け部314が組になって取り付けられている。図4においては、4組の係止め腕受け部314を示している。係止め腕受け部314は鉤状になっていて、係止め腕受け部314の鉤状の先端部分にはU字状またはV字状の溝331がついている。1組の係止め腕受け部314(たとえば、314−1−1と314−1−2、314−2−1と314−2−2、314−3−1と314−3−2、または314−4−1と314−4−2)の溝331は互いに対面していて、バスケットの両側についている係止め腕がこの溝331に入り込み係合する。また、バスケットが係合し吊下げられたときに、バスケットが傾かないように溝331が形成されている。複数組の係止め腕受け部314に係合し吊下げられた複数のバスケットはほぼ同じ高さを保つように設計されている。
【0029】
昇降ロッド上部支持フレーム312は平行な2本の柱状のフレーム(312−1、312−2)からなり、平行な2本のバスケット載置台フレーム311(311−1、311−2)の両端はそれぞれ2本の昇降ロッド上部支持フレーム312(312−1、312−2)に直角に固定されている。従って、2本のバスケット載置台フレーム311と2本の昇降ロッド上部支持フレーム312の枠は矩形状になっている。
【0030】
昇降ロッド上部支持フレーム312の両端には、柱状の昇降ロッド313の上端が直角に連結固定されている。図4においては、昇降ロッド313は4本示されている(313−1〜313−4)が、各昇降ロッド上部支持フレーム312の中央付近にさらに各1本ずつ設けて良いし、図1〜3に示すような2列にバスケット載置台フレームが存在する場合にはさらに多くの昇降ロッドを連結させても良い。図1〜3に示すように、実際の染色装置においては、昇降ロッドは昇降ロッドガイドや薬液容器載置基台を貫通していく場合もあるが、図4(や図5)においては、上述したようにこれらを省略している。昇降ロッド313の下端は昇降ロッド下部支持フレーム315の両端に直角に連結固定している。従って、2本の昇降ロッド313(313−1と313−2、または3123−3と313−4)は1本の昇降ロッド上部支持フレーム312(312−1、または312−2)および1本の昇降ロッド下部支持フレーム315(315−1、または315−2)とで矩形状の枠を形成している。
【0031】
昇降ロッド下部支持フレーム315(315−1、315−2)には長穴状のカム溝320(320−1、320−2)があいていて、このカム溝320にカムフロア319(319−1、319−2)が取り付けられている。カムフロア319はアーム318(318−1、318−2)に連結しアーム318の動きと連動する。アーム318はアーム軸321と連結固定されていて、アーム軸が回転または反転するとそれに連動して回転または反転する。アーム軸はアーム基台317(317−1、317−2)の貫通孔を貫通してアーム基台に支えられている。アーム基台317の貫通孔にはベアリング機構などによりアーム軸が自由に回転・反転できる。アーム基台317は染色装置基台316に固定されていて、全体の昇降機構を支えている。アーム軸321にはアーム軸側歯車324が取り付けられている。また染色装置基台316にはモーター322が取り付けられていて、モーターの運動はモーター回転シャフト326を通してモーター側歯車323に伝わる。モーター側歯車323とアーム軸側歯車324はチェーンベルト324でつながっていて、モーターの回転・反転運動は、チェーンベルト324の回転・反転運動となり、さらにアーム軸321の回転・反転運動となる。
【0032】
このアーム軸321の回転・反転運動がそのままアーム318の回転・反転運動となる。このアーム318の回転・反転によりカムフロア319はカム溝320を移動し、この移動に伴い昇降ロッド下部支持フレーム315が上下に移動していく。この結果、バスケット載置基台311が上下移動する。
【0033】
図5は、最も上部へ昇降機構が移動した状態を模式的に示した斜視図である。アーム318が鉛直上方へ回転したときに昇降機構が最上部へくる。従って、アームの長さによって、上下移動距離が決まる。また、アームの回転角度によっても上下移動距離が決まる。アームを180度以上回転させれば、アームの長さだけで決まる最上部から最下部まで昇降機構が上下に移動する。180度以下で回転・反転を行えば、アームの長さと回転角度によって決まる距離だけ上下に昇降機構が移動する。従って、モーターの回転・反転運動をコントロールすることによって上下移動距離を制御でき、さらにモーターの回転・反転サイクルにより、上下移動の頻度(昇降回数や振動速度)を制御できる。
【0034】
バスケットに搭載されたスライドガラスに貼着した試料を染色液に浸漬した後で、どの程度染色液の中で動かしたら良いか(振幅、振動数、振動回数など)の最適値を決定することも本発明の染色装置を用いると容易に見つけ出すことができる。すなわち、モーターの条件(回転・反転角度、回転速度、回転・反転数など)を自由に設定できるので、簡単に実験できる。さらに本発明の染色装置を用いるとその最適値で多数の試料を再現性良く染色処理することも容易である。すなわち、最適条件でモーターを動かせば良い。
【0035】
図1〜図3においては、8個のバスケットをバスケット載置台にセットしそれに対応する8台の薬液容器を設置して、同時に8個のバスケットに搭載された試料を染色することができる染色装置を示してきたが、処理能力に合わせて装置を小型化してより少量のバスケットを処理できるようにすることもできる。たとえば、1個のバスケットだけを搭載できる染色装置としても良い。逆にバスケット載置台にもっと多数のバスケットを搭載できるように装置を大型化しても良い。処理能力に合わせてバスケット移動装置を増やしても良い。これらによりさらに処理能力を高めることができる。
【0036】
複数の薬液容器を用いる染色装置においては、これらの容器に同じ薬液を用いて同じ処理を行うこともできる(A方法)し、或いは、これらの容器に異なる薬液を用いて異なる処理を行うこともできる(B方法)。或いは、1つの薬液収納容器に薬液を入れて染色を行い、別の薬液収納容器に洗浄水を入れて試料を洗浄することもできる(C方法)。
【0037】
A方法の場合、薬液処理を終了した両方のバスケットをバスケット移動装置で持ち上げて次の工程(バスケット置場や別の染色装置)へ移動させる。すなわち、バスケット載置台を持ち上げ複数の薬液容器から各バスケットを引き上げる。次にバスケット移動装置でバスケットを持ち上げて次の工程へ移動させる。移動先はバスケット置場や別の染色装置のバスケット載置台における係り止め腕受け部である。この後で、バスケット移動装置を移動させて、別のバスケットを持ち上げて次の工程へ移動させる。移動先はバスケット置場や次の染色装置のバスケット載置台における係り止め腕受け部である。
【0038】
B方法の場合、1つの試料において異なる薬液で続けて処理する必要があるとき、バスケット載置台を持ち上げ複数の薬液容器から各バスケットを引き上げる。次にバスケット移動装置で異なる薬液の両方での処理を終えたバスケットを持ち上げて次の工程へ移動させる。移動先はバスケット置場や次の染色装置のバスケット載置台における係り止め腕受け部である。この後で、バスケット移動装置を移動させて、別のバスケットを持ち上げて、次の薬液処理場所である別の薬液容器の場所にある係り止め腕受け部にバスケットを載せる。次にバスケット移動装置使って、他のバスケット(たとえば、染色処理前の)を運び、薬液容器の場所にある係り止め腕受け部にバスケットを載せる。次にバスケット載置台を下げて、複数のバスケットを薬液容器に浸漬する。
【0039】
C方法の場合、B方法と同様に、順次バスケットを移動させて、バスケットを薬液容器および洗浄水容器に浸漬する。すなわち、薬液容器で染色処理を行ったバスケットを薬液容器(この場合は、洗浄水が入っている)で洗浄する。
【0040】
図6は、本発明の染色装置の応用形態を示す図である。2は染色処理前のバスケット置場、3は1番目の薬液処理部、5は2番目の薬液処理部、7は3番目の薬液処理部である。薬液処理部とは、染色用の薬液容器があり、その容器内の薬液にバスケット(染色用籠)に搭載されたスライドガラスに貼着された染色用試料を浸漬して染色処理を行う場所であり、本発明の染色装置本体(バスケット移動機構およびバスケット置場を持たないもの)が配置される。1番目の薬液処理部3と2番目の薬液処理部5の間に1番目の薬液処理部3において薬液処理を完了したバスケットを置くバスケット置場4があり、2番目の薬液処理部5と3番目の薬液処理部7の間に2番目の薬液処理部5において薬液処理を完了したバスケットを置くバスケット置場6がある。すべての薬液処理を終了したバスケットを置く場所はバスケット置場8である。9は(バスケット移動装置)搬送路であり、各バスケット置場や各薬液処理部のバスケットを移動する通路であり、ここに自動のバスケット移動装置が配置される。図1に示す構成は1例であり、他の構成も考えられる。たとえば、必要に応じて薬液処理部やバスケット置場を増減したりする。このような増減は、本発明の染色装置においては極めて容易に展開できる。
【0041】
図6による染色処理の方法をさらに説明する。染色前(または染色途中)の試料を貼着したスライドガラスを収納したバスケットはバスケット置場1に置かれていて、バスケット移動装置により持ち上げられる。バスケット移動装置は(前後または左右)搬送路9を移動し、1番目の薬液処理部2において、バスケット載置台にバスケットをセットする。1つのバスケットだけで良いときには、これで吊り下げ台を下げて1番目の薬液処理部2にある薬液容器に入れる。複数のバスケットを処理するときには、バスケット載置台にバスケットを複数セットする。1番目の薬液処理部ではバスケット載置台が上下運動を繰り返して試料の染色処理を行う。1番目の薬液処理を終了したバスケットを搭載したバスケット載置台は薬液からバスケットを引き上げる。その後で、バスケット移動装置によりバスケットをバスケット載置台から引き上げ、次工程へ持っていく。1番目の薬液処理部で染色処理を行っている間に、バスケット移動装置は別の薬液処理部にバスケットを運ぶこともできる。染色処理能力とバスケット移動装置の処理能力が合わないときには、バスケット処理装置を増やしたりすることもできる。
【0042】
図7は、本発明に用いられるバスケット11の1例を示す図である。バスケット11は、略直方体形状のスライドガラス収納部12、スライドガラス収納部12の短辺側のX方向側面部13、スライドガラス収納部12の長編側のY方向側面部18およびX方向側面部の上部に付設したY方向に伸びた係り止め腕部14からなる。係り止め腕部14には後述するバスケット移動装置の吊下げ腕の鉤部が係りバスケット11を持ち上げ下げし、または移動できるようになっている。また、その吊下げ腕の鉤部からバスケットがずり落ちないように、係り止め腕部14には係り止め突起16が付いている。スライドガラス収納部12の前後側面部にはスライドガラスガイド15がついていて、スライドガラスガイド15に沿ってスライドガラス17が挿入される。スライドガラスガイド15は、たとえばスライドガラス収納部12の前後側面に設けた突起やスライドガラス収納部12の前後側面に設けた溝である。
【0043】
スライドガラス17には染色用試料が貼着されている。このスライドガラスガイド15により挿入されたスライドガラス17はXおよびY方向に動かないように固定される。また、バスケット載置台が上下に振動し、それに従いバスケットが上下に動いても、スライドガラス17は試料上下方向にはその自重により動かない。バスケット載置台およびバスケットが上下方向に速く振動してスライドガラス17が上下やXまたはY方向に動いて問題を生じるときには、スライドガラス17をスライドガラス収納部12に収納した後でストッパー(押え治具)などにより固定しても良い。スライドガラス収納部12には1つまたは複数の(2つ以上の)スライドガラスガイド15が形成されていて、1つまたは複数の(2つ以上の)スライドガラス17を収納できるようになっている。バスケット11の下部19は染色液や洗浄水などが入りやすいように外側から中空になっている。バスケット11は、係止め腕部14が係合されて、吊下げられて薬液容器に入っている染色液に浸漬されるので、バスケット11の下部が中空になっていることにより、常に新鮮な薬液をバスケット内のスライドガラスに貼着した試料に供給できる。また、バスケットは吊下げられた状態で上下に振動するので、その振動中により新鮮な薬液も供給される。
【0044】
図8は図1に示すバスケット移動機構135を模式的に示す斜視図である。166は鉤部で先端部が鉤状になっていてこの鉤部166にバスケットの係止め腕部が係合しバスケットが吊下げられる。167は吊下げ板で鉤部166が固定されている。吊下げ板167は、(吊下げ板)上下(Z方向)移動台168に取り付けられていて、図8に示すように、(吊下げ板)上下(Z方向)移動台168上でY方向へも移動できるようになっている。(吊下げ板)上下(Z方向)移動台168は、スクリューシャフト169に連結していて、スクリューシャフト169の回転運動により上下(Z方向)に移動できる。スクリューシャフト169は(吊下げ板)X方向移動台170に固定している。(吊下げ板)X方向移動台170は、(吊下げ板)X方向移動レール171に取り付けられていて、X方向へ移動できるようになっている。以上説明したバスケット移動機構により、鉤部166に係合したバスケットを染色装置の所望の場所に移動できる。バスケット移動機構はマニュアルで動かしても良いし、自動で動かしても良い。自動の場合はコンピューター制御しても良い。尚、(吊下げ板)上下(Z方向)移動台168は支柱172および173に支えられていて、この支柱172および173は(吊下げ板)X方向移動台170に固定されている。また、スクリューシャフト169の回転運動により、(吊下げ板)上下(Z方向)移動台168がZ方向へ移動するときに、(吊下げ板)上下(Z方向)移動台168はベアリング機構などを用いて支柱172および173をなめらかに移動できるようになっている。
【0045】
薬液容器に入れられた薬液は染色処理を行うにつれて劣化する。また経時変化により薬液も劣化する。劣化した薬液は薬液容器を取り出すことにより容易に交換することができる。薬液容器の取り出しはマニュアルで行うこともできるし、機械化することもできる。薬液容器は1個のバスケットに対して、その1個分のバスケットが入る大きさとなっているので、取扱いが容易である。もちろん、支障がなければ、複数個のバスケットが入る大きさの薬液容器とすることもできる。
【0046】
さらに、薬液容器にドレインを設けて薬液容器を動かさずにドレインから薬液を排出することもできる。この場合は、薬液を排出した後でドレインを閉じて薬液容器の上部からチューブ等を用いて薬液を注入することにより薬液容器を動かさずに新しい薬液を薬液容器に入れることができる。
【0047】
昇降機構に関しては図1〜5に示した以外の方法を用いることもできる。たとえば、昇降ロッドの上下移動をエアーシンダーを用いて行っても良い。カムフロアを使用せずに上下に単純に振動させる台の上に昇降ロッドを置いて上下振動させても良い。或いは、バスケット載置台を上方から支えて上下振動させても良く、この場合は昇降ロッドは不要となる。もちろん、他の種々の上下移動機構を使用することもできる。
【0048】
図9は、本発明の応用である薬液処理部を1つ持つ染色装置81を示す。薬液処理部88には本発明の染色装置本体89が入っている。バスケット置場82に染色処理前の試料を貼着したスライドガラスを搭載したバスケット83を置き、(前後)搬送路87を動いてきた吊下げ腕85を有する(バスケット)移動柱84が所定の場所にきて、吊下げ腕85の鉤部86でバスケット83を持ち上げる。(吊下げ腕85はd方向に移動する。)その後で、移動柱84を(前後)搬送路87に沿って動かし、所定の場所で、吊下げ腕の鉤部86に吊下げたバスケット83を下げて、染色装置本体89に設置されたバスケット載置台にバスケット83をセットする。(移動柱84は搬送路87をc方向に移動する。)その後染色処理を終えた試料を貼着したスライドガラスを搭載したバスケット83を吊下げ腕の鉤部86で持ち上げ、(バスケット)移動柱84を(前後)搬送路87に沿って移動させて、所定の場所において、吊下げ腕の鉤部86に吊下げたバスケット83を下げて、バスケット置場89にバスケット83を置く。以上のようにして、本発明の染色装置を用いて、スライドガラスに貼着した試料を染色することができる。図8に示す染色装置は薬液容器およびバスケットが1列に配置されているものであるが、吊下げ腕85や鉤部87はe方向に移動する機構を備えても良い。これによりバスケット83のバランスを正確に取って鉤部86をバスケット83に係合することもできる。
【0049】
これまで説明した本発明の染色処理装置は、鉄系金属(ステンレス系金属を含む)やアルミニウム系金属等の金属製、プラスチック製、木製あるいはこれらを組み合わせた材料で構成される。装置の強度、耐久性、重量、大きさ、コストなどに応じて最適な材料を用いることができる。また、これまで各部分で説明してきた内容は、相互に矛盾がない限り、他の部分においても適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、スライドガラスに貼着した試料を染色して評価する医療産業および生物化学産業において、利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の染色装置の正面図である。
【図2】本発明の染色装置の側面図である。
【図3】本発明の染色装置の上面図である。
【図4】本発明の染色装置に用いる昇降機構を説明する斜視図である。
【図5】本発明の染色装置に用いる昇降機構を説明する斜視図である。
【図6】本発明の染色装置の応用形態を示す図である。
【図7】本発明に用いられるバスケット11を示す図である。
【図8】図1に示すバスケット移動機構を模式的に示す斜視図である。
【図9】本発明の応用である薬液処理部を1つ持つ染色装置を示す図である。
【図10】従来の染色装置を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 染色装置構成、
2 バスケット置場、
3 薬液処理部、
4 バスケット置場、
5 薬液処理部、
6 バスケット置場、
7 薬液処理部、
8 バスケット置場、
9 バスケット移動装置搬送路、
11 バスケット、
12 スライドガラス収納部、
13 X方向側面部側腕部、
14 係り止め腕部、
15 スライドガラスガイド、
16 係り止め突起、
17 スライドガラス、
18 X方向側面部側腕部、
19 バスケットの下部、
81 染色装置、
82 バスケット置場、
83 バスケット、
84 移動柱、
85 吊下げ腕、
86 鉤部、
87 バスケット移動装置搬送路、
88 薬液処理部、
89 バスケット置場、
90 染色装置本体、
101 基台、
102 薬液容器、
103 移動部材、
104 移動部材、
105 吊下腕、
106 バスケット、
107 スライドガラス収納部、
108 把手、
109 鉤部、
111 染色装置、
112 バスケット載置台フレーム、
113 昇降ロッド上部支持フレーム、
114 係止め腕受け部、
115 昇降ロッド、
116 薬液容器載置基台、
117 染色装置基台、
118 薬液容器載置基台支持柱、
119 ロッドガイド、
120 昇降ロッド下部支持フレーム、
121 アーム、
122 カムフロア、
123 アーム軸、
124 チェーンベルト、
125 モーター、
126 アーム軸側歯車、
127 モーター側歯車、
128 バスケット、
129 薬液容器、
130 係止め腕部、
131 アーム基台、
132 バスケット収納容器、
134 昇降機構、
135 バスケット移動機構、
136 鉤部、
137 吊下げ板、
138 上下移動台、
139 スクリューシャフト、
140 X方向移動台、
141 X方向移動レール、
142 モーター回転シャフト、
166 鉤部、
167 吊下げ板、
168 上下移動台、
169 スクリューシャフト、
170 X方向移動台、
171 X方向移動レール、
172 支柱、
173 支柱、
311 バスケット載置台フレーム、
312 昇降ロッド上部支持フレーム、
313 昇降ロッド、
314 係止め腕受け部、
315 昇降ロッド下部支持フレーム、
316 染色装置基台、
317 アーム基台、
318 アーム、
319 カムフロア、
320 カム溝、
321 アーム軸、
322 モーター、
323 モーター側歯車、
324 アーム軸側歯車、
325 チェーンベルト、
326 モーター回転シャフト、
331 溝、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色用試料を貼着した1つ以上のスライドガラスを収納する染色用バスケットを1つ以上搭載可能なバスケット載置台および前記バスケット載置台に搭載されたバスケットに対応した染色用薬液容器を1つ以上有する染色装置であって、前記バスケット載置台を降下させることにより前記バスケット載置台に搭載されたバスケットが対応する前記薬液容器に入り、前記スライドガラスに貼着された染色用試料が前記薬液容器内の薬液に浸漬し染色処理されることを特徴とする、染色装置。
【請求項2】
前記バスケット載置台は上下に振動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の染色装置。
【請求項3】
前記バスケットが薬液容器内の薬液に浸漬した状態で、前記バスケット載置台が上下に振動することにより前記試料も振動し染色処理されることを特徴とする、請求項2に記載の染色装置。
【請求項4】
前記バスケットを移載するバスケット移動装置およびバスケット置場をさらに有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの項に記載の染色装置。
【請求項5】
前記バスケット置場に置かれたバスケットが前記バスケット移動装置を用いて移動し、前記バスケット載置台の所定場所に前記バスケットを載置することを特徴とする、請求項4に記載の染色装置。
【請求項6】
前記バスケット載置台は略矩形形状の外枠(フレーム)からなり、前記フレームの1組の対辺に1つ以上のバスケット受け部を持ち、前記バスケットは前記バスケット受け部に載置されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかの項に記載の染色装置。
【請求項7】
前記バスケット載置台の略矩形形状の外枠(フレーム)部に前記バスケット載置台を支持する柱状の昇降ロッドを備えていて、前記昇降ロッドを上下振動させることにより前記バスケット載置台を上下振動させることを特徴とする、請求項6に記載の染色装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−293983(P2009−293983A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145719(P2008−145719)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(390000941)有限会社タバタエンジニアリング (1)
【Fターム(参考)】