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スライム剥離方法
説明

スライム剥離方法

【課題】スライムの剥離効果に優れ、かつ、安全性が高いスライム剥離方法を提供すること。
【解決手段】被処理水中に、(A)アンモニアおよび/またはアンモニウム塩と(C)次亜塩素酸の反応によって得られるモノクロラミン性結合塩素を存在させる第一段階の後に、(B)スルファミン酸および/またはスルファミン酸塩と(C)次亜塩素酸の反応によって得られるジクロラミン性結合塩素を存在させる第二段階を行う、二段階で処理するスライム剥離方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却水系、紙パルプ製造プロセスの各種水系、鉄鋼製造プロセスの各種水系、集塵水系、排水系統、切削油などの金属加工処理水系などの各種水系において、スライムの剥離効果に優れ、しかも安全性が高いスライム剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水系、紙パルプ製造工程や鉄鋼製造工程などの各種プロセス水系、切削油水系などの水系では、細菌類、真菌類、藻類などから構成されるスライムが系内に発生し、伝熱効率の低下、配管の閉塞、金属材質の腐食などの微生物障害を引き起こす。このような微生物障害を回避する方法として、付着したスライムを剥離洗浄するスライム剥離剤、あるいは殺菌や殺藻やスライムの付着を防止するためのスライムコントロール剤などが使用されている。スライムコントロール剤は主に水中の微生物の生育を抑制することにより微生物の付着を低減させるものであり、菌の酵素反応の阻害や細胞膜の変性などにより菌を死滅させたり、菌の増殖を抑制する。一方、スライム剥離剤は主に細胞外に生成される多糖類に由来する粘性物質の粘性を低下させることにより、細菌の集合体を分散させスライムを剥離する。このようにそれぞれの作用が異なるため、スライムコントロール剤として有効な薬剤であってもスライム剥離剤としては有効とはいえない。
【0003】
従来、水系で発生する微生物由来のスライムを剥離するための洗浄剤として次亜ハロゲン酸生成化合物、過酸化水素やヒドラジンが知られている。次亜ハロゲン酸生成化合物はスライム剥離効果が認められる濃度で使用すると、熱交換器や配管などの金属材質に対する腐食が顕著である。過酸化水素は金属に対する腐食性は低いが、スライム剥離効果を発揮するためには高濃度の添加が必要であり、経済的でない。ヒドラジンは有毒であり発癌性の疑いがあるため、環境上の問題や安全性の面から使用されない傾向にある。
【0004】
特許文献1には、塩素系酸化剤と、スルファミン酸および/またはその塩を含有するスライム剥離剤が開示されている。この方法は、塩素系酸化剤とスルファミン酸が反応して生成するクロロスルファミン酸が効果を発現するものであるが、モノクロラミンや次亜塩素酸と比較すると酸化力が弱く、スライムの剥離効果も十分ではない。
【0005】
特許文献2には、次亜塩素酸ナトリウムと硫酸アンモニアとを残留塩素(Cl)に対するアンモニウムイオンのモル比が1:1.2〜1.8で混合した混合液を用いることを特徴とする微生物の生育を抑制する方法が示されているが、一旦付着したスライムを剥離する方法は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−267811号公報
【特許文献2】特開2008−221152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は上記の問題点を克服することであり、具体的にはスライムの剥離効果に優れ、かつ安全性が高いスライム剥離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、被処理水中に、(A)アンモニアおよび/またはアンモニウム塩と(B)スルファミン酸および/またはスルファミン酸塩と(C)次亜塩素酸の反応によって得られるモノクロラミン性結合塩素とジクロラミン性結合塩素を存在させて処理するスライム剥離方法であれば、比較的低い添加量で効果的にスライムを剥離でき、また、ヒドラジンを用いないので取り扱い上の安全性が高いことを既に見出している。
【0009】
本発明者らは、このスライム剥離方法におけるモノクロラミン性結合塩素とジクロラミン性結合塩素の作用を更に検討したところ、モノクロラミン性結合塩素が主にスライム層の表層部を殺菌剥離し、ジクロラミン性結合塩素が主にスライム層の底層部に浸透して剥離分散していることを見出し、両方の特徴を最大限に生かすスライム剥離方法として本発明に到達した。
【0010】
すなわち請求項1に係る発明は、被処理水中に、(A)アンモニアおよび/またはアンモニウム塩と(C)次亜塩素酸の反応によって得られるモノクロラミン性結合塩素を存在させる第一段階の後に、(B)スルファミン酸および/またはスルファミン酸塩と(C)次亜塩素酸の反応によって得られるジクロラミン性結合塩素を存在させる第二段階を行う、二段階で処理するスライム剥離方法である。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記の第一段階において、被処理水に対する(A)アンモニアおよび/またはアンモニウム塩と(C)次亜塩素酸の添加比率が、(C)次亜塩素酸のCl換算のモル濃度に対する(A)アンモニアおよび/またはアンモニウム塩のモル濃度の比として0.6〜1.5であり、かつ、前記第一段階の処理期間中の被処理水中のモノクロラミン性結合塩素濃度をCl換算で15〜300mg/Lの範囲に維持するように前記(A)、(C)の各成分を被処理水に添加し、続いて、前記の第二段階において、被処理水に対する(B)スルファミン酸および/またはスルファミン酸塩と(C)次亜塩素酸の添加比率が、(C)次亜塩素酸のCl換算のモル濃度に対する(B)スルファミン酸および/またはスルファミン酸塩のモル濃度の比として0.6〜1.5であり、かつ、前記第二段階の処理期間中の被処理水中のジクロラミン性結合塩素濃度をCl換算で15〜300mg/Lの範囲に維持するように前記(B)、(C)の各成分を被処理水に添加する、請求項1記載のスライム剥離方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスライム剥離方法を冷却水系、冷温水系、チラー水、紙パルプ製造プロセスの各種水系、鉄鋼製造プロセスの各種水系、集塵水系、排水系統、逆浸透装置、水泳プール、貯水槽、浴槽、切削油などの金属加工処理水系などの各種水系に適用することにより、各種微生物によって生成されたスライムを効果的に剥離することができる。また、使用する薬剤は取り扱い上の安全性が高いという効果もある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の(A)アンモニアおよび/またはアンモニウム塩(「(A)成分」と称する)は、アンモニア、アンモニア水、アンモニウム塩として市販されているものがそのまま使用できる。アンモニウム塩の種類は特に限定されないが、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウムなどの水溶性塩類が使用される。
【0014】
本発明の(B)スルファミン酸および/またはスルファミン酸塩(「(B)成分」と称する)は市販されているのがそのまま使用できる。スルファミン酸塩の種類は特に限定されないが、例えばスルファミン酸ナトリウム、スルファミン酸カリウム、スルファミン酸リチウム、スルファミン酸カルシウム、スルファミン酸マグネシウム、スルファミン酸亜鉛、スルファミン酸アンモニウムなどの水溶性塩類が使用される。
【0015】
本発明の(C)次亜塩素酸(「(C)成分」と称する)は水中で溶解して次亜塩素酸を生成する化合物が用いられるが、例えば次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウムなどの次亜塩素酸塩、液化塩素、ブロモクロロジメチルヒダントイン、ジクロロジメチルヒダントインなどのハロゲン化ジメチルヒダントイン化合物類やトリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸、クロロイソシアヌル酸やそれらの塩類などが挙げられるが、好ましくは次亜塩素酸塩と液化塩素である。前記次亜塩素酸塩の形態としては、水溶性および経済性などの観点からナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩が好適である。また、次亜塩素酸は塩化物イオンを含む水溶液を電気分解して得ることもできる。
【0016】
本発明において、これらの次亜塩素酸を生成する化合物は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。次亜塩素酸を生成する化合物は、安価で取り扱いが容易であり、水に速やかに溶解して次亜塩素酸を速やかに生成する化合物が好ましく、この点で次亜塩素酸ナトリウムが最適である。次亜塩素酸ナトリウムは、有効塩素がCl換算で12%以上の市販品が使用できる。
【0017】
本発明のスライム剥離方法の第一段階では、(A)アンモニアおよび/またはアンモニウム塩と(C)次亜塩素酸が反応して主にモノクロラミン性結合塩素が生成(反応1)し、その他に遊離塩素やジクロラミン性結合塩素も少量生成する。次いで、第二段階では、(B)スルファミン酸および/またはスルファミン酸塩と(C)次亜塩素酸が反応して主にジクロラミン性結合塩素が生成(反応2)し、その他に遊離塩素やモノクロラミン性結合塩素も少量生成する。
【0018】
1モルのアンモニアと1モルの次亜塩素酸を反応させる反応1では、下記式のように1モルのモノクロラミン性結合塩素(NHCl)が生成する。
Cl+HO=HClO+HCl
NH+HClO=NHCl+H
【0019】
また、1モルのスルファミン酸と1モルの次亜塩素酸を反応させる反応2では、ほぼ1モルのジクロラミン性結合塩素が生成するが、ここで生成するジクロラミン性結合塩素の形態はジクロラミンではなく、主にN−モノクロロスルファミン酸(HOS−NHCl)であると推定される。
HOS−NH+HClO=HOS−NHCl+H
このことはN−モノクロロスルファミン酸はジクロラミンと同程度の酸化力を有することを意味する。
【0020】
すなわち、本発明のスライム剥離方法では、第一段階で上記の反応1を進行させることにより、モノクロラミン性結合塩素が生成し、続く第二段階で反応2を進行させることにより、ジクロラミン性結合塩素が生成することにより、2種の異なった作用を有する結合塩素の相乗効果によって優れたスライム剥離効果を発現すると考えられる。
【0021】
本発明のスライム剥離方法の第一段階において、(A)アンモニアおよび/またはアンモニウム塩と(C)次亜塩素酸を被処理水に添加する方法、及び第二段階において、(B)スルファミン酸および/またはスルファミン酸塩と(C)次亜塩素酸を被処理水に添加する方法に特に制限はなく、(A)アンモニアおよび/またはアンモニウム塩と(C)次亜塩素酸、あるいは、(B)スルファミン酸および/またはスルファミン酸塩と(C)次亜塩素酸を、被処理水にそれぞれ別個に添加しても良いが、次亜塩素酸がアンモニアやスルファミン酸と反応する前に光や熱などにより分解したり、被処理水中の有機物や還元性物質と反応してしまい目的とする反応生成物が効率よく得られなくなるのを防止するために、好ましくは希釈水の入った容器に次亜塩素酸を生成する化合物を加えて撹拌し、次いでアンモニアおよび/またはアンモニウム塩、あるいは、スルファミン酸および/またはスルファミン酸塩を加えて撹拌して調製した混合溶液を被処理水に添加する。このとき、この混合溶液中における次亜塩素酸の濃度はCl換算で0.005〜3%の範囲になるように配合することが好ましく、次亜塩素酸濃度がこの範囲を超えると目的の反応生成物を効率よく生成することができず、十分な剥離効果が得られない。
【0022】
また、上記の混合溶液で用いられる希釈水は、有機物、還元性物質、及び無機イオンの含有量が少ない清水が好ましく、工業用水、水道水、井水、軟化水、脱イオン水などが使用できる。
【0023】
また、本発明のスライム剥離方法の第一段階において、前記の添加順序を逆にして(C)次亜塩素酸を生成する化合物を(A)アンモニアおよび/またはアンモニウム塩の後で加えると、局所的に高濃度となった次亜塩素酸が(A)アンモニアと反応してモノクロラミン性結合塩素以外に不安定なジクロラミンが生成し、モノクロラミン性結合塩素の収率が20%ほど低下するため好ましくない。
【0024】
本発明のスライム剥離方法の第一段階における、(C)次亜塩素酸のCl換算のモル濃度に対する(A)アンモニアおよび/またはアンモニウム塩のモル濃度の比、及び第二段階における、(C)次亜塩素酸のCl換算のモル濃度に対する(B)スルファミン酸および/またはスルファミン酸塩のモル濃度の比は、共に通常0.6〜1.5の範囲であり、好ましくは0.8〜1.2である。上記の、希釈水の入った容器に次亜塩素酸を生成する化合物を加えて撹拌し、次いでアンモニアおよび/またはアンモニウム塩、あるいは、スルファミン酸および/またはスルファミン酸塩を加えて撹拌して調製する混合溶液においても、このモル濃度比の範囲で調製する。
【0025】
上記のモル濃度比が0.6未満では、本発明のスライム剥離方法の第一段階、第二段階のいずれにおいても、未反応の次亜塩素酸が被処理水系に供給され、被処理水系における腐食性が増す。一方、この比が1.5を超えると、第一段階においては、未反応のアンモニアが被処理水系に供給され、被処理水系に存在する銅合金などの金属の腐食が発生し易くなり、また、第二段階においては、被処理水系に供給された未反応のスルファミン酸がスライム剥離に関与せず、スルファミン酸が高価なため、非経済的となる。
【0026】
本発明のスライム剥離方法の第一段階では、例えば、前記のように、次亜塩素酸を生成する化合物を水で希釈し、そこに、アンモニアおよび/またはアンモニウム塩を加えて撹拌して調製した混合溶液を被処理水系に添加すればよいが、調製後の混合溶液を5分間以内に被処理水系に速やかに添加することが重要である。これは、アンモニアと次亜塩素酸との反応により生成するモノクロラミン性結合塩素の貯蔵安定性が劣るためである。
【0027】
一方、本発明のスライム剥離方法の第二段階で用いる、スルファミン酸と次亜塩素酸との反応により生成するN−モノクロロスルファミン酸はアルカリ性であれば貯蔵安定性が良いので、例えば、スルファミン酸と次亜塩素酸塩とアルカリ金属水酸化物の混合水溶液を保存しておくことが可能である。
【0028】
本発明のスライム剥離方法の第一段階では、被処理水中におけるモノクロラミン性結合塩素濃度がCl換算で通常1〜1000mg/Lになるように添加されるが、好ましくは15〜300mg/L、より好ましくは15〜200mg/Lの範囲であり、第二段階では、被処理水中におけるジクロラミン性結合塩素濃度がCl換算で通常1〜1000mg/Lになるように添加されるが、好ましくは15〜300mg/L、より好ましくは15〜200mg/Lの範囲である。
【0029】
本発明のスライム剥離方法において、第一段階処理期間中の被処理水中のモノクロラミン性結合塩素濃度をCl換算で例えば15〜300mg/Lの範囲に維持するためには、第一段階処理期間中に被処理水中のモノクロラミン性結合塩素濃度を測定し、その結果に基づいて、適宜、(A)と(C)の各成分、又は上記記載の(A)成分と(C)成分の混合溶液を被処理水系に添加すればよいが、該混合溶液を被処理水系に添加することが簡便で好ましい。
【0030】
また、第二段階処理期間中の被処理水中のジクロラミン性結合塩素濃度をCl換算で例えば15〜300mg/Lの範囲に維持するためには、第二段階処理期間中に被処理水中のジクロラミン性結合塩素濃度を測定し、その結果に基づいて、適宜、(B)と(C)の各成分、又は上記記載の(B)成分と(C)成分の混合溶液を被処理水系に添加すればよいが、該混合溶液を被処理水系に添加することが簡便で好ましい。
【0031】
第一段階処理期間中の被処理水中のモノクロラミン性結合塩素濃度、又は第二段階処理期間中の被処理水中のジクロラミン性結合塩素濃度がCl換算で15mg/Lを下回ると、スライム剥離効果が低下し、それ以上のスライム剥離が進行しなくなる可能性があり、また、第一段階処理期間中の被処理水中のモノクロラミン性結合塩素濃度、又は第二段階処理期間中の被処理水中のジクロラミン性結合塩素濃度がCl換算で300mg/Lを上回る場合は、スライム剥離効果は十分発揮されるが、適用する薬剤量の増加に見合うスライム剥離効果の上昇が認められず、費用に見合う効果が期待できない可能性がある。
【0032】
剥離処理期間中の被処理水中のモノクロラミン性結合塩素濃度やジクロラミン性結合塩素濃度の測定は、JIS K0101「工業用水試験方法」などに記載されているジエチル−p―フェニレンジアミン(DPD)比色法、DPD−第一硫酸鉄滴定法などで測定できるが、濃度測定法の具体例を以下に示す。
【0033】
(残留塩素測定方法)
N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩の1.0gとエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物の1.0gとリン酸一水素カリウムの38.2gとリン酸二水素カリウムの59.8gを乳鉢で混合してDPD希釈粉末とする。
(1)200mLトールビーカーに0.5gのDPD希釈粉末を加える。
(2)100mLの試験水を加え、攪拌してDPD希釈粉末を溶解させる。
(3)速やかに2.82mM硫酸第一鉄溶液で滴定する。赤色が無色になった点を終点とする。このときの滴定量をA(mL)する。
(4)更に0.5%ヨウ化カリウム溶液0.1mLを加えて、速やかに2.82mM硫酸第一鉄溶液で滴定し、赤色が無色になった点を終点とする。このときの滴定量をB(mL)する。
(5)更にヨウ化カリウム1gを加えて溶かし、約2分間静置して赤に発色させる。速やかに2.82mM硫酸第一鉄溶液で滴定し、赤色が無色になった点を終点とする。このときの滴定量をC(mL)する。
(6)次式により各成分の濃度が示される。
遊離残留塩素(mgCl/L)=A
モノクロラミン性結合塩素(mgCl/L)=B
ジクロラミン性結合塩素(mgCl/L)=C
【0034】
本発明のスライム剥離方法を、例えば、冷却水系に適用する場合は、該水系のブローを閉止した上で、循環水中に、適宜、(A)と(C)の各成分、又は上記記載の(A)成分と(C)成分の混合溶液を被処理水系に所定量添加してスライム剥離処理を開始する。このとき、可能な限り該水系の熱負荷を下げ、できれば、熱負荷なしとすることが望ましいが、熱負荷が掛かった状態であっても本スライム剥離方法は適用できる。ただし、熱負荷が掛かった状態では、次第に水系の濃縮度が上昇するため、濃縮度の管理範囲を越える場合は、適宜、間欠ブローを実施し、それに伴って第一段階では低下する(A)、(C)の各成分を、第二段階では低下する(B)、(C)の各成分を、循環水中のモノクロラミン性結合塩素濃度やジクロラミン性結合塩素濃度の測定結果に基づいて、適宜、追加添加する。この場合、上記記載の混合溶液を追加添加することが簡便で好ましい。
【0035】
本発明のスライム剥離方法における剥離処理期間は、対象となる水系や、そのスライム付着状況によって異なるが、第一段階が、通常は30分以上、好ましくは1時間以上であり、第二段階が、通常は2時間以上、好ましくは6時間以上である。第一段階と第二段階の合計処理時間の上限は特に無いが、通常48時間以内である。
【0036】
本発明のスライム剥離方法を適用する被処理水系のpHは特に制限はないが、通常pH5〜11の範囲である。本発明のスライム剥離方法を適用する被処理水系の水温は特に制限はなく、通常は0〜80℃の範囲であるが、十分なスライム剥離効果を得るためには50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましい。
【0037】
本発明のスライム剥離方法では、各種の好気性バクテリア、嫌気性バクテリア、黴、酵母、大腸菌などの微生物や貝類、原生動物、藻類などの系内に付着している微生物や水棲生物を剥離除去できるだけでなく、殺菌・殺藻・殺黴・殺貝作用などにより微生物や水棲生物を殺滅することもできる。また、レジオネラ属菌の剥離や殺菌に対しても有効である。
【0038】
本発明のスライム剥離方法は、炭素鋼、鋳鉄、オーステナイト系やフェライト系やマルテンサイト系の各種のステンレス鋼、純銅、及び、りん脱酸銅、アルミニウム黄銅、アドミラルティ黄銅、キュプロニッケルなどの各種の銅合金、更に各種のアルミニウム合金などの金属材質に対して適用可能である。
【0039】
本発明のスライム剥離方法では、本発明の効果を減じない範囲で、腐食抑制剤、他のスライムコントロール剤やスライム剥離剤、スケール抑制剤、分散剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤などを同時に用いてもよい。
【0040】
本発明のスライム剥離方法は、被処理水系の金属材質に対する腐食性が小さいが、腐食防止剤と併用することにより腐食をさらに低減することができる。例えば、被処理水系に銅系材質がある場合、腐食抑制剤としてベンゾトリアゾールおよびその誘導体の添加が好ましい。ベンゾトリアゾールおよびその誘導体は、1,2,3−ベンゾトリアゾールや置換−1,2,3−ベンゾトリアゾール(置換基としてアルキル基、カルボキシル基、塩素、臭素、水酸基、ニトロ基、スルホン酸基、ホスホン酸基から選択される1種以上)などであり、これらの2種以上組み合わせて使用してもよい。また、被処理水系に鉄系材質がある場合、腐食抑制剤として有機ホスホン酸、ホスフィノポリカルボン酸、ホスホノカルボン酸、リン酸、重合リン酸塩、亜鉛塩、モリブデン酸塩、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸などを併用するのが好ましい。
【0041】
本発明のスライム剥離方法では、スライムコントロール剤として公知の化合物を併用してもよい。このようなスライムコントロール剤の例として、2−メチルイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−クロロイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−5−クロロイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4,5−ジクロロイソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3(2H)イソチアゾリン等のイソチアゾリン化合物;2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド等の有機ブロム化合物;メチレンビスチオシアネート、ビス−(1,4−ジブロムアセトキシ)−2−ブテン、ベンジルブロムアセテート、ソジウムブロマイド、α−ブロモシンナムアルデヒド、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)亜鉛、2−(4−チアゾリル)ベンツイミダゾール、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、ビス(トリクロルメチル)スルホン、ジチオカーバメート、3,5−ジメチルテトラヒドロ−1,3,5,2H−チアジアジン−2−チオン、ブロム酢酸エチルチオフェニルエステル、α−クロルベンゾアルドキシムアセテート、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、3−ヨード−2−プロペニルブチルカルバメート、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、及びp−クロル−m−キシレノールなどが挙げられる。
【0042】
本発明のスライム剥離方法では、スライム剥離剤として公知の化合物と併用してもよい。このようなスライム剥離剤の例として、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩などのアニオン性界面活性剤、ポリエチレングルコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー、ポリアルキレングルコールアルキルフェニルエーテル、ポリアルキレングルコールアルキルエーテルなどのノニオン性界面活性剤、アルキレンポリグルコシド、高級不飽和脂肪族ジメチルアミド、酵素などが挙げられる。
【0043】
本発明のスライム剥離方法では、スライムの粘性により抱き込まれた無機粒子が再分散されるため、これらの無機粒子の再沈着を防止するための分散剤やキレート剤の添加が好ましい、
【0044】
このような分散剤の例として、モノエチレン性不飽和スルホン酸とモノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体、あるいはモノエチレン性不飽和スルホン酸とモノエチレン性不飽和カルボン酸と他の共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体との共重合体などが挙げられる。ここで、モノエチレン性不飽和カルボン酸として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの1種以上が用いられる。他の共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルアルキルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド;エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ヘキセン、2−エチルヘキセン、ペンテン、イソペンテン、オクテン、イソオクテンなどの炭素数2〜8のオレフィン;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルアルキルエーテル;マレイン酸アルキルエステルなどがあげられ、その1種または2種以上が用いられる。分散剤の好ましい例は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸と(メタ)アクリル酸の共重合体、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸と(メタ)アクリル酸の共重合体、共役ジエンスルホン化物と(メタ)アクリル酸の共重合体などである。分散剤の分子量は、平均分子量として1,000〜100,000が好ましいが、より好ましくは4,000〜20,000である。
【0045】
また、前記のキレート剤の好ましい例として、エチレンジアミン四酢酸塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩、トリエチレンテトラミン六酢酸塩、1,3−プロパンジアミン四酢酸塩、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸塩、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸塩、ジヒドロキシエチルグリシン、グルコン酸塩、ヘプトグルコン酸塩、N,N−ジカルボキシメチルグルタミン酸塩、2−ヒドロキシエチリデン−2,2−ジホスホン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸などが挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
80冷凍トン、保有水量3mの実機冷却塔における実施例である。冷却塔入口・出口の循環水の温度はそれぞれ37℃と32℃であった。実機冷却塔に付着していたスライムの一定量(1.2g)を200メッシュのナイロン製ネットに入れたものを3個用意して冷却塔の水槽に設置した。ブローダウンを停止後、60Lポリ容器に水45Lと12%(Cl換算)次亜塩素酸ナトリウムの2.5Kgを加えた溶液に25%アンモニアの0.28Kgを速やかに溶解混合してモノクロラミン性結合塩素溶液を調製し、直ちに水槽に添加した。この時の、(C)次亜塩素酸のCl換算のモル濃度に対する(A)アンモニアのモル濃度の比は、0.97であった。モノクロラミン性結合塩素溶液を添加して1.2時間後にジクロラミン性結合塩素溶液を添加した。ここでジクロラミン性結合塩素溶液は、20Lポリ容器に水10Lと12%(Cl換算)次亜塩素酸ナトリウムの0.75Kgを加えた溶液にスルファミン酸ナトリウムの0.15Kgを速やかに溶解混合して調製した。この時の、(C)次亜塩素酸のCl換算のモル濃度に対する(B)スルファミン酸ナトリウムのモル濃度の比は、1.2であった。モノクロラミン性結合塩素とジクロラミン性結合塩素の測定結果を表1に示す。
【0048】
モノクロラミン性結合塩素溶液を添加して第一段階の剥離処理を開始した後、経過時間1.2時間の第一段階終了時に1個のナイロン製ネットを取り出しスライムの重量を測定したところ、スライム減少率は70%であった。ジクロラミン性結合塩素溶液を添加して第二段階の剥離処理を開始した後、経過時間6時間と24時間(第二段階終了時であって剥離処理終了時)にナイロン製ネットを取り出しスライムの重量を測定したところ、スライム減少率はそれぞれ85%と95%であった。
【0049】
ここで、スライム重量の減少は、ナイロン製ネット内のスライム塊が200メッシュを通過するほどに細かく崩され分散し、微細化したスライムがネット内から抜け出たことを示しており、特に粘着性の低下や分散によるスライム剥離の指標であり、減少率が大きいほど、スライム剥離効果が高いと判断できる。尚、スライム減少率は剥離処理開始前のスライム重量(1.2g)に対する、処理後の減少したスライム重量の割合である。
【0050】
【表1】

【0051】
(比較例1)
実施例1において、ジクロラミン性結合塩素を添加せず、全剥離処理時間の24時間をモノクロラミン性結合塩素だけで処理した。その他の条件は実施例1と同じであった。
【0052】
モノクロラミン性結合塩素溶液を添加して経過時間1.2時間、6時間、及び24時間(剥離処理終了時)に各1個のナイロン製ネットを取り出しスライムの重量を測定したところ、スライム減少率はそれぞれ68%、70%、及び73%であった。
【0053】
(比較例2)
実施例1において、モノクロラミン性結合塩素を添加せず、全剥離処理時間の24時間をジクロラミン性結合塩素だけで処理した。その他の条件は実施例1と同じであった。
【0054】
ジクロラミン性結合塩素溶液を添加して経過時間1.2時間、6時間、及び24時間(剥離処理終了時)に各1個のナイロン製ネットを取り出しスライムの重量を測定したところ、スライム減少率はそれぞれ46%、52%、及び58%であった。
【0055】
(比較例3)
実施例1の第一段階において、モノクロラミン性結合塩素の替わりにジクロラミン性結合塩素を添加し、第二段階において、ジクロラミン性結合塩素の替わりにモノクロラミン性結合塩素を添加した。その他の条件は実施例1と同じであった。
【0056】
ジクロラミン性結合塩素溶液を添加して第一段階の剥離処理を開始した後、経過時間1.2時間の第一段階終了時に1個のナイロン製ネットを取り出しスライムの重量を測定したところ、スライム減少率は45%であった。モノクロラミン性結合塩素溶液を添加して第二段階の剥離処理を開始した後、経過時間6時間と24時間(第二段階終了時であって剥離処理終了時)にナイロン製ネットを取り出しスライムの重量を測定したところ、スライム減少率はそれぞれ57%と68%であった。
【0057】
実施例1と比較例1〜3の結果から、モノクロラミン性結合塩素単独、ジクロラミン性結合塩素単独、及び、ジクロラミン性結合塩素処理後にモノクロラミン性結合塩素処理を行う方法では、十分なスライム剥離効果が得られず、本発明の、被処理水中に、(A)アンモニアおよび/またはアンモニウム塩と(C)次亜塩素酸の反応によって得られるモノクロラミン性結合塩素を存在させる第一段階の後に、(B)スルファミン酸および/またはスルファミン酸塩と(C)次亜塩素酸の反応によって得られるジクロラミン性結合塩素を存在させる第二段階を行う順序のスライム剥離方法のみが、優れたスライム剥離効果を示すことが明らかになった。また、ヒドラジンを用いない本発明のスライム剥離方法は安全性が高い。
【産業上の利用可能性】
【0058】
冷却水系、紙パルプ製造プロセスの各種水系、鉄鋼製造プロセスの各種水系、集塵水系、排水系統、切削油などの金属加工処理水系などの各種水系おいて、安全性が高く、かつ、効率的に、系内に付着しているスライムを剥離することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に、(A)アンモニアおよび/またはアンモニウム塩と(C)次亜塩素酸の反応によって得られるモノクロラミン性結合塩素を存在させる第一段階の後に、(B)スルファミン酸および/またはスルファミン酸塩と(C)次亜塩素酸の反応によって得られるジクロラミン性結合塩素を存在させる第二段階を行う、二段階で処理するスライム剥離方法。
【請求項2】
前記の第一段階において、被処理水に対する(A)アンモニアおよび/またはアンモニウム塩と(C)次亜塩素酸の添加比率が、(C)次亜塩素酸のCl換算のモル濃度に対する(A)アンモニアおよび/またはアンモニウム塩のモル濃度の比として0.6〜1.5であり、かつ、前記第一段階の処理期間中の被処理水中のモノクロラミン性結合塩素濃度をCl換算で15〜300mg/Lの範囲に維持するように前記(A)、(C)の各成分を被処理水に添加し、続いて、前記の第二段階において、被処理水に対する(B)スルファミン酸および/またはスルファミン酸塩と(C)次亜塩素酸の添加比率が、(C)次亜塩素酸のCl換算のモル濃度に対する(B)スルファミン酸および/またはスルファミン酸塩のモル濃度の比として0.6〜1.5であり、かつ、前記第二段階の処理期間中の被処理水中のジクロラミン性結合塩素濃度をCl換算で15〜300mg/Lの範囲に維持するように前記(B)、(C)の各成分を被処理水に添加する、請求項1記載のスライム剥離方法。



【公開番号】特開2013−22541(P2013−22541A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161416(P2011−161416)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000234166)伯東株式会社 (135)
【Fターム(参考)】