説明

スラグ排出システムおよびスラグ排出方法

【課題】 転炉へのスラグの残留を抑制しつつ白カワのロスを抑制することができるスラグ排出システムおよびスラグ排出方法を提供する。
【解決手段】 スラグ排出システムは、銅製錬工程で用いる転炉を傾転させる傾転装置と、転炉から排出される流体の温度を8μm〜14μmの波長範囲で検出する赤外線カメラと、赤外線カメラの検出温度に応じて傾転装置による転炉の傾きを制御する制御部と、を備える。スラグ排出方法は、銅製錬工程で用いる転炉を傾転させる傾転ステップと、転炉から排出される流体の温度を8μm〜14μmの波長範囲で赤外線カメラを用いて検出する温度検出ステップと、赤外線カメラの検出温度に応じて傾転装置による転炉の傾きを制御する制御ステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅製錬に適用されるスラグ排出システムおよびスラグ排出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な銅製錬においては、溶鉱炉において銅精鉱から溶融マットおよび溶融スラグが生成される。溶融マットと溶融スラグとは、比重差を利用して分離される。溶融マットは、さらに転炉に導入される。転炉においては、造カン期に銅分約60wt%〜65wt%のマットから、銅分約78〜80wt%の白カワとスラグとに分離される。
【0003】
造カン期に生成されたスラグの比重は、白カワの比重よりも小さい。それにより、転炉においては、スラグは分離して白カワ上に浮き上がる。したがって、転炉を傾転させることによって、スラグを転炉外に排出することができる。この場合、スラグの排出途中で白カワがスラグに巻き込まれて排出されることがある。
【0004】
スラグ中への白カワ流出を抑えるには、例えば、スラグの排出中にサンプリングを行い、サンプルの色、つや等に応じて、白カワの排出を確認することができる。あるいは、白カワが多めに排出されるまでスラグを流し、レードル内で静置してスラグと白カワとに分離し、スラグのみをレードルから排出して白カワを転炉に戻してもよい。
【0005】
また、特許文献1には、赤外線サーモグラフィを用いて粗鋼とスラグとを判別する技術が開示されている。この技術を用いてスラグと白カワとを判別する方法も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−197738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、サンプリングの結果に応じて転炉からのスラグの排出を停止させる場合、作業者によって排出停止時期にばらつきが生じる。スラグが十分に排出されなければ、炉内に残ったスラグが引き続き行われる造銅期において過酸化されてマグネタイトが生成するおそれがある。一方、白カワが多めに排出されると、白カワのロスが生じてしまう。この場合、このスラグから銅分を回収する選鉱工程への負荷が高くなり、経済的ロスが発生する。また、特許文献1の技術では、白カワとスラグとの放射率が近いため、判別が困難であった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、転炉へのスラグの残留を抑制しつつ白カワのロスを抑制することができるスラグ排出システムおよびスラグ排出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るスラグ排出システムは、銅製錬工程で用いる転炉を傾転させる傾転装置と、転炉から排出される流体の見かけの温度を8μm〜14μmの波長範囲で検出する赤外線カメラと、赤外線カメラの検出温度に応じて傾転装置による転炉の傾きを制御する制御部と、を備えることを特徴とするものである。本発明に係るスラグ排出システムにおいては、8μm〜14μmの波長範囲で検出する赤外線カメラを用いることから、白カワおよびスラグの検出温度に差が生じる。この検出温度に応じて転炉の傾きを制御することができることから、転炉へのスラグの残留を抑制しつつ白カワのロスを抑制することができる。
【0010】
制御部は、赤外線カメラが検出する領域の平均温度以上の温度に応じて傾転装置による転炉の傾きを制御してもよい。この場合、白カワの流出検出精度が向上する。
【0011】
制御部は、赤外線カメラが検出する最大温度が所定値以下になった場合に、転炉からの流体の排出が停止するように、転炉の傾きを制御してもよい。制御部は、赤外線カメラが検出する最大温度が所定値を挟んで所定回数上下した場合に、転炉からの流体の排出が停止するように、転炉の傾きを制御してもよい。制御部は、赤外線カメラが検出する最大温度が所定値以下になって所定時間経過した場合に、転炉からの流体の排出が停止するように、転炉の傾きを制御してもよい。
【0012】
制御部は、所定温度を、赤外線カメラで設定する放射率に応じて適宜変更してもよい。制御部は、赤外線カメラが検出する領域の平均温度の積分値が所定値以上になった場合に、転炉からの流体の排出が停止するように、転炉の傾きを制御してもよい。赤外線カメラは、転炉から排出され落下する流体の転炉側表面の見かけ温度を検出してもよい。
【0013】
本発明に係るスラグ排出方法は、銅製錬工程で用いる転炉を傾転させる傾転ステップと、転炉から排出される流体の見かけの温度を8μm〜14μmの波長範囲で赤外線カメラを用いて検出する温度検出ステップと、赤外線カメラの検出温度に応じて傾転装置による転炉の傾きを制御する制御ステップと、を含むことを特徴とするものである。本発明に係るスラグ排出方法においては、8μm〜14μmの波長範囲で検出する赤外線カメラを用いることから、白カワおよびスラグの検出温度に差が生じる。この検出温度に応じて転炉の傾きを制御することができることから、転炉へのスラグの残留を抑制しつつ白カワのロスを抑制することができる。
【0014】
制御ステップは、赤外線カメラが検出する領域の平均温度以上の温度に応じて傾転装置による転炉の傾きを制御するステップであってもよい。この場合、白カワの流出検出精度が向上する。
【0015】
制御ステップは、赤外線カメラが検出する最大温度が所定値以下になった場合に、転炉からの流体の排出が停止するように、転炉の傾きを制御するステップであってもよい。制御ステップは、赤外線カメラが検出する最大温度が所定値を挟んで所定回数上下した場合に、転炉からの流体の排出が停止するように、転炉の傾きを制御するステップであってもよい。制御ステップは、赤外線カメラが検出する最大温度が所定値以下になって所定時間経過した場合に、転炉からの流体の排出が停止するように、転炉の傾きを制御するステップであってもよい。
【0016】
制御ステップにおいて、所定温度を、赤外線カメラで設定する放射率に応じて適宜変更してもよい。制御ステップは、赤外線カメラが検出する領域の平均温度の積分値が所定値以上になった場合に、転炉からの流体の排出が停止するように、転炉の傾きを制御するステップであってもよい。温度検出ステップは、転炉から排出され落下する流体の転炉側表面の見かけ温度を検出するステップであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、転炉へのスラグの残留を抑制しつつ白カワのロスを抑制することができるスラグ排出システムおよびスラグ排出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態に係るスラグ排出システムの全体構成を示す図である。
【図2】転炉を傾転後の時間と赤外線カメラの検出温度との関係を示す図である。
【図3】スラグ排出制御を実現するためのフローチャートの一例を示す図である。
【図4】スラグ排出制御を実現するためのフローチャートの他の例を示す図である。
【図5】スラグ排出制御を実現するためのフローチャートの他の例を示す図である。
【図6】スラグ排出制御を実現するためのフローチャートの他の例を示す図である。
【図7】転炉から排出される流体のサンプル中の銅品位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。
【0020】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係るスラグ排出システム100の全体構成を示す図である。図1に示すように、スラグ排出システム100は、転炉200の傾転装置10、赤外線カメラ20、モニタ30、および制御部40を備える。スラグ排出システム100は、赤外線カメラ20を用いたサーモグラフィによって、転炉へのスラグの残留を抑制しつつ白カワのロスを抑制することができるスラグ排出方法を実現する。
【0021】
傾転装置10は、転炉200を傾転させる装置である。赤外線カメラ20は、転炉200からレードル300に排出される流体の見かけの温度を検出するためのセンサである。赤外線カメラ20は、傾転した転炉200の開口部とレードル300との間の温度を検出可能に配置される。
【0022】
モニタ30は、赤外線カメラ20の検出結果を熱画像として表示する表示装置である。制御部40は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)等から構成され、赤外線カメラ20の検出結果に応じて傾転装置10を制御する。
【0023】
続いて、スラグ排出システム100の動作の概要について説明する。まず、銅製錬工程において、転炉200には、自溶炉等から溶融マットが導入される。溶融マットは、主としてCuS・FeSを含む。この溶融マットから、造カン期および造銅期を経て粗銅を得ることができる。造カン期においては、溶融マットは、酸化によって、主としてCuSを含む白カワ50と、主としてFeO・SiOを含むスラグ60と、に分離する。白カワ50の比重はスラグ60の比重よりも大きいことから、転炉200においては白カワ50の上にスラグ60が浮いている。
【0024】
造カン期において溶融マットが白カワ50とスラグ60とに分離した際に、制御部40は、傾転装置10を制御して転炉200を傾転させる。それにより、転炉200の開口からレードル300に転炉200内の流体が排出される。この排出流体は、主としてスラグ60を含んでいる。しかしながら、転炉200内のスラグ60の量が少なくなると、排出流体に白カワ50が含まれるようになる。
【0025】
ここで、赤外線カメラ20が検出する赤外線エネルギーWは、下記式(1)で表わすことができる。
W=σ・ε・T (1)
σ:定数
ε:測定対象の物体固有の放射率
T:絶対温度
【0026】
したがって、赤外線カメラ20は、測定対象の放射率に応じて温度を検出する。それにより、測定対象ごとに放射率が異なると、赤外線カメラ20の測定対象ごとに異なる温度を検出する。
【0027】
転炉200内の白カワ50およびスラグ60の温度は、同等である。しかしながら、白カワ50の放射率とスラグ60の放射率とが異なることから、白カワ50およびスラグ60の温度が同等であっても、白カワ50に対する検出温度およびスラグ60に対する検出温度に差異が生じる。したがって、赤外線カメラ20の検出温度を監視することによって、転炉200からの流体に白カワ50が含まれるか否かを判定することができる。
【0028】
なお、特許文献1で用いられている赤外線カメラの検出波長領域では、白カワ50およびスラグ60の放射率が近くなる。したがって、白カワ50およびスラグ60の温度に差異を見出しにくい。そこで、本実施形態においては、長波長領域(8μm〜14μm)の波長を検出可能な赤外線カメラを用いる。また、赤外線カメラ20の検出放射率を0.75に設定することによって、白カワ50とスラグ60との検出温度差を大きくすることができる。
【0029】
制御部40は、赤外線カメラ20の検出温度に応じて、傾転装置10を制御して、転炉200の傾きを元に戻す。この場合、スラグ排出の終了時期に対する判断のばらつきを抑制することができる。また、サンプリング等を行う必要がないため、遠隔地からスラグ排出作業を行うことができる。それにより、作業者の負担が軽減される。また、白カワ50の必要以上の排出を抑制することができる。それにより、スラグから銅分を回収する選鉱工程の負荷を下げ、また、その銅分の回収率を上げることができる。また、転炉200へのスラグ60の残留を抑制することができる。この場合、造銅期においてスラグ60の過酸化によるマグネタイトの生成を抑制することができる。それにより、炉内熔体の粘性上昇が抑制される。その結果、吹錬のための送風を十分に行うことができる。
【0030】
以下、転炉200の傾きを元に戻す時期の詳細について説明する。図2は、転炉200を傾転後の時間と赤外線カメラ20の検出温度との関係を示す図である。図2において、横軸が転炉200を傾転させた後の経過時間を示し、縦軸が赤外線カメラ20の検出温度を示す。図2において、実線は赤外線カメラ20が検出する最大温度であり、破線は赤外線カメラ20が検出する領域の平均温度である。
【0031】
図2に示すように、転炉200の傾転直後においては、赤外線カメラ20が検出する領域の平均温度が高くなっている。これは、排出される流体量が多く、赤外線カメラ20の検出範囲に占める流体の割合が大きいからであると考えられる。また、転炉200の傾転直後においては、赤外線カメラ20が検出する最大温度は1000℃程度まで上昇している。これは、白カワ50がほとんど排出されていないためであると考えられる。その後、赤外線カメラ20が検出する領域の平均温度が低下している。これは、転炉200の傾転後、排出される流体量が低下するに伴って、赤外線カメラ20の検出範囲に占める流体の割合が低下するからであると考えられる。
【0032】
なお、図2においては、赤外線カメラ20が検出する最大温度がパルス的に低下している箇所がある。これは、転炉200から排出される流体に白カワ50が一時的に巻き込まれ、赤外線カメラ50に対して手前側に出てきたからであると考えられる。
【0033】
その後、赤外線カメラ20が検出する最大温度は、徐々に低下し、800℃あたりで急激に低下する。これは、スラグ排出が終了して白カワ50の排出が開始されるからであると考えられる。以上のことから、赤外線カメラ20が検出する最大温度が所定値を下回った時点(図2では800℃を下回った時点)で、転炉200の傾きを元に戻すことが好ましい。
【0034】
そこで、本実施形態においては、制御部40は、赤外線カメラ20が検出する最大温度が800℃を下回った時点で、転炉200の傾きが元に戻るように傾転装置10を制御する。それにより、白カワ50のロスを抑制することができる。
【0035】
図3は、スラグ排出制御を実現するためのフローチャートの一例を示す図である。図3に示すように、制御部40は、造カン期に転炉200が傾転するように傾転装置10を制御する(ステップS1)。次に、制御部40は、赤外線カメラ20の検出結果を取得する(ステップS2)。次いで、制御部40は、赤外線カメラ20が検出する最大温度が所定値(例えば、800℃)以下であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0036】
ステップS3において赤外線カメラ20が検出する最大温度が所定値以下であると判定されなかった場合、制御部40は、ステップS2から再度実行する。ステップS3において赤外線カメラ20が検出する最大温度が所定値以下であると判定された場合、制御部40は、転炉200の傾きが元に戻るように、傾転装置10を制御する(ステップS4)。その後、制御部40は、フローチャートの実行を終了する。図3のフローチャートによれば、白カワ50のロスを抑制することができる。
【0037】
なお、赤外線カメラ20が検出する最大温度が800℃を下回っても、スラグ排出が終了していない場合がある。一時的に白カワ50が排出されることがあるからである。そこで、赤外線カメラ20が検出する最大温度が所定を挟んで所定回数上下した場合に、転炉200の傾きを元に戻してもよい。図4に、この場合のフローチャートの一例を示す。
【0038】
図4のフローチャートにおいては、制御部40は、赤外線カメラ20が検出する最大温度が所定値(例えば、800℃)を挟んで所定回数(例えば3回)上下したか否かを判定する(ステップS13)。ステップS11、S12およびS14は、それぞれ図3のステップS1、S2およびS4と同様の処理を示す。
【0039】
また、赤外線カメラ20が検出する最大温度が所定値以下になった後に所定時間経過した場合に、転炉200の傾きを元に戻してもよい。図5に、この場合のフローチャートの一例を示す。図5のフローチャートにおいては、制御部40は、赤外線カメラ20が検出する最大温度が所定値(例えば、800℃)以下になった後に所定時間(例えば2分)経過したか否かを判定する(ステップS23)。ステップS21、S22およびS24は、それぞれ図3のステップS1、S2およびS4と同様の処理を示す。
【0040】
なお、白カワ50の流出により赤外線カメラ20が検出する最大温度が800℃を下回ってからの積分値を求め、その積算値から白カワ50の過剰流出がないと判断される時期に排出を停止してもよい。
【0041】
また、本実施形態に係るスラグ排出システム100を利用するにあたって、発生するスラグの量に応じたスラグ排出を行うことが好ましい。なぜならば、発生するスラグ量によって、スラグ排出の時間及び白カワが流出し始める時間が異なるためである。そのためには、あらかじめ得られた平均温度のグラフを積分し、その面積値と実際に排出されたスラグ量とから相関をとっておき、実操業に適用する際に、造カン期に装入したマット量、マット品位、冷材量、および珪酸鉱量から理論的に生成すると考えられるスラグ量を算出し、算出された量に応じて先に求めた相関に基づくように排出を行うことがよいと考えられる。
【0042】
図6に、この場合のフローチャートの一例を示す。図6のフローチャートにおいては、制御部40は、赤外線カメラ20が検出する領域の平均温度が所定値(あらかじめ実験等によって求めた値)以上になったか否かを判定する(ステップS33)。ステップS31、S32およびS34は、それぞれ図3のステップS1、S2およびS4と同様の処理を示す。
【0043】
なお、図3〜図6のフローチャートでは赤外線カメラ20が検出する最大温度を判定パラメータとして用いているが、それに限られない。例えば、最大温度の代わりに、赤外線カメラ20が検出する領域の平均温度以上の温度を判定パラメータとして用いてもよい。また、赤外線カメラ20が検出する最大温度のしきい値を800℃としているが、それに限られない。このしきい値は、赤外線カメラ20で設定する放射率に応じて適宜変更することができる。
【0044】
また、本実施形態においては、赤外線カメラ20の検出結果に応じて制御部40が傾転装置10を自動で制御しているが、それに限られない。例えば、モニタ30に表示された熱画像を監視している作業員が、傾転装置10を手動で制御してもよい。
【0045】
また、赤外線カメラ20の位置は特に限定されるものではないが、赤外線カメラ20は、転炉200からレードル300に対して落下する流体の転炉200側表面の見かけ温度を検出可能に配置されることが好ましい。転炉200において白カワ50がスラグ60よりも下側に位置することから、白カワ50は、流体に巻き込まれて落下する場合に、流体の転炉200側を流動するからである。したがって、白カワ50の排出の検出精度が向上する。
【0046】
また、造カン期途中で一度所定量のスラグを排出した後に再度所定量のマットを転炉に装入する操業方法においては、転炉の造カン期が複数に分割されている。この場合、いずれの造カン期においても本実施形態に係るスラグ排出システム100を適用することができる。ただし、前段の造カン期ではスラグ排出の際に転炉内に多少スラグが残留してもよいため、後段の造カン期に本実施形態に係るスラグ排出システム100を適用することがより好ましい。
【実施例】
【0047】
転炉200を傾転させてから赤外線カメラ20が検出する温度を測定した。また、転炉200から排出される流体からサンプリングし、サンプル中の銅品位を測定した。図7(a)および図7(b)において、横軸は転炉200の傾転後の経過時間を示し、左側の縦軸は赤外線カメラ20が検出する温度を示し、右側の縦軸は銅品位(wt%)を示す。
【0048】
図7(a)に示すように、赤外線カメラ20が検出する最大温度が800℃を挟んで数回上下した辺りから、サンプル中の銅品位(wt%)が上昇した。この結果から、赤外線カメラ20が検出する最大温度が所定値を挟んで所定回数上下した時点を、スラグ排出を終了としてもよいことが確認された。
【0049】
図7(b)に示すように、赤外線カメラ20が検出する最大温度が800℃を下回ってから数分後にサンプル中の銅品位(wt%)が上昇した。この結果から、赤外線カメラ20が検出する最大温度が所定値以下になってから所定時間経過した時点を、スラグ排出を終了としてもよいことが確認された。
【0050】
なお、複数の作業者がサンプリング結果に応じてスラグ排出終了時期を判断した場合、排出されたスラグ中の銅品位が5.4wt%〜28wt%と大きくばらついた。これに対して、上記実施例の方法でスラグ排出を終了させた場合、排出されたスラグ中の銅品位を14wt%〜19wt%となり、ばらつきが抑制された。
【符号の説明】
【0051】
10 傾転装置
20 赤外線カメラ
30 モニタ
40 制御部
100 スラグ排出システム
200 転炉
300 レードル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅製錬工程で用いる転炉を傾転させる傾転装置と、
転炉から排出される流体の見かけの温度を、8μm〜14μmの波長範囲で検出する赤外線カメラと、
前記赤外線カメラの検出温度に応じて、前記傾転装置による前記転炉の傾きを制御する制御部と、を備えることを特徴とするスラグ排出システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記赤外線カメラが検出する領域の平均温度以上の温度に応じて前記傾転装置による前記転炉の傾きを制御することを特徴とする請求項1記載のスラグ排出システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記赤外線カメラが検出する最大温度が所定値以下になった場合に、前記転炉からの前記流体の排出が停止するように、前記転炉の傾きを制御することを特徴とする請求項1または2記載のスラグ排出システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記赤外線カメラが検出する最大温度が所定値を挟んで所定回数上下した場合に、前記転炉からの前記流体の排出が停止するように、前記転炉の傾きを制御することを特徴とする請求項1または2記載のスラグ排出システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記赤外線カメラが検出する最大温度が所定値以下になって所定時間経過した場合に、前記転炉からの前記流体の排出が停止するように、前記転炉の傾きを制御することを特徴とする請求項1または2記載のスラグ排出システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記所定温度を、前記赤外線カメラで設定する放射率に応じて適宜変更することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のスラグ排出システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記赤外線カメラが検出する領域の平均温度の積分値が所定値以上になった場合に、前記転炉からの前記流体の排出が停止するように、前記転炉の傾きを制御することを特徴とする請求項1記載のスラグ排出システム。
【請求項8】
前記赤外線カメラは、前記転炉から排出され落下する流体の転炉側表面の見かけ温度を検出することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のスラグ排出システム。
【請求項9】
銅製錬工程で用いる転炉を傾転させる傾転ステップと、
転炉から排出される流体の見かけの温度を、8μm〜14μmの波長範囲で赤外線カメラを用いて検出する温度検出ステップと、
前記赤外線カメラの検出温度に応じて、前記傾転装置による前記転炉の傾きを制御する制御ステップと、を含むことを特徴とするスラグ排出方法。
【請求項10】
前記制御ステップは、前記赤外線カメラが検出する領域の平均温度以上の温度に応じて前記傾転装置による前記転炉の傾きを制御するステップであることを特徴とする請求項9記載のスラグ排出方法。
【請求項11】
前記制御ステップは、前記赤外線カメラが検出する最大温度が所定値以下になった場合に、前記転炉からの前記流体の排出が停止するように、前記転炉の傾きを制御するステップであることを特徴とする請求項9または10記載のスラグ排出方法。
【請求項12】
前記制御ステップは、前記赤外線カメラが検出する最大温度が所定値を挟んで所定回数上下した場合に、前記転炉からの前記流体の排出が停止するように、前記転炉の傾きを制御するステップであることを特徴とする請求項9または10記載のスラグ排出方法。
【請求項13】
前記制御ステップは、前記赤外線カメラが検出する最大温度が所定値以下になって所定時間経過した場合に、前記転炉からの前記流体の排出が停止するように、前記転炉の傾きを制御するステップであることを特徴とする請求項9または10記載のスラグ排出方法。
【請求項14】
前記制御ステップにおいて、前記所定温度を、前記赤外線カメラで設定する放射率に応じて適宜変更することを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載のスラグ排出方法。
【請求項15】
前記制御ステップは、前記赤外線カメラが検出する領域の平均温度の積分値が所定値以上になった場合に、前記転炉からの前記流体の排出が停止するように、前記転炉の傾きを制御するステップであることを特徴とする請求項9記載のスラグ排出方法。
【請求項16】
前記温度検出ステップは、前記転炉から排出され落下する流体の転炉側表面の見かけ温度を検出するステップであることを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載のスラグ排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−236743(P2010−236743A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84330(P2009−84330)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(500483219)パンパシフィック・カッパー株式会社 (109)
【Fターム(参考)】