説明

スラッシュキルト用のカッターナイフ

【課題】 種々の全幅寸法のガイド部材の交換作業が容易であって、使い勝手が良く、寿命の長い、スラッシュキルト用のカッターナイフを提供する。
【解決手段】 細長いブレード50をスライド自在に収容したカッターナイフ本体20の先端に、カッターナイフ本体の長手軸Bに対して、鋭角を為して使用者側に延在するガイド部材保持台30を設ける。このガイド部材保持台30に対して、細長いガイド部材60をスライド式に着脱可能に取り付ける。ブレード50は、長手方向に一定間隔で平行に形成された複数の折溝52を有していて、カッターナイフ本体20は、ガイド部材保持台30よりも基端側の位置にブレードのエッジ51を使用者側に露出させる切欠き部25を備える。ガイド部材保持台の端面にはブレード50の通過を許容するスリットが形成されていて、当該端面は、ブレードに形成された折溝52と整合する方向に延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラッシュキルト用のカッターナイフに関する。
【背景技術】
【0002】
ポーチやカバン等の縫製に使用する素材として、スラッシュキルト布と呼ばれる装飾布が知られている。スラッシュキルト布は、図1に示したように、複数の布地を重ね合わせた上で、互いに平行な複数の縫目6に沿って縫い合わせた後、最下層の布地5のみを残して、その上側に存在する複数層の上布5aを前記複数の縫目6間の領域において切断(図1中の矢印A参照)して構成される。このようにして構成されるスラッシュキルト布は、重厚感のある独特の風合い、あるいは美観を有する。
【0003】
上記スラッシュキルト布を作製するのに使用するカッターナイフとして、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に開示されたカッターナイフは、切断作業時に切断方向を案内するガイド部材が、カッターナイフ本体と一体化しているか、あるいはネジ止めされているため、ガイド部材の交換が不可能であるか、または交換作業が繁雑となる。
【0004】
スラッシュキルト布の作製において、切断される上布5aに適度な緊張を与えて切断作業を円滑にするためには、ガイド部材の全幅寸法が縫目6間のピッチ寸法とほぼ等しいことが好ましい。一方、縫目6間のピッチ寸法には種々のものが存在するので、ガイド部材は、種々の全幅寸法のものを簡単に交換して使用できることが好ましい。
【0005】
すなわち、特許文献1に開示されたカッターナイフでは、ガイド部材の交換が不可能であるか(一体形成されている場合)、または交換可能であっても、その交換作業が繁雑である(ネジ止めされている場合)ため、種々のピッチ寸法のスラッシュキルト布に対して汎用的に使用するには不便である。
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3048727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、種々の全幅寸法のガイド部材の交換作業が容易であるとともに、使い勝手が良くて、寿命の長い、スラッシュキルト用のカッターナイフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカッターナイフは、「スライダに連結した細長いブレードを、スライド自在に収容したカッターナイフ本体」と「カッターナイフ本体の先端に設けられていて、カッターナイフ本体の長手軸に対して、鋭角を為して使用者側に延在するガイド部材保持台」と「ガイド部材保持台に対して、スライド式に着脱可能に取り付けられる細長いガイド部材」とを備えている。
ブレードは、長手方向に一定間隔で平行に形成された複数の折溝を有する。カッターナイフ本体は、ガイド部材保持台よりも基端側の位置にブレードのエッジを使用者側に露出させる切欠き部を備える。
ガイド部材保持台の端面には、ブレードの通過を許容するスリットが形成されていて、当該端面は、ブレードに形成された折溝と整合する方向に延在している。
【発明の効果】
【0009】
上記構成を備えた本発明のカッターナイフにおいては、ガイド部材保持台に対してガイド部材がスライド式に着脱可能に取り付けられるため、ガイド部材の交換作業が容易である。したがって、縫目間のピッチ寸法が異なる種々のスラッシュキルト布を作製するに当たって、全幅寸法の異なる複数のガイド部材を適宜選択的に取り付けて、汎用的に使用するのに好都合である。
また、切断作業に供されるブレードエッジが使用者側を向いた引き手式タイプのカッターナイフであるため、多様かつ安全性の高い切断作業を実現できる。
さらには、長手方向に一定間隔で平行に形成された複数の折溝を有する折れ刃式のブレードを採用しているため、切れ味が劣化した場合にブレード先端部分を順次折り取っていくことで、切れ味を回復させることができ、結果として、寿命の長いカッターナイフとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して、以下に詳細に説明する。
【0011】
≪全体構成≫
まず、本発明の一実施形態に係るカッターナイフ10の大略的な全体構成を説明する。図2は、カッターナイフ10を示す分解斜視図である。カッターナイフ10の本体20は、長手方向にスライド溝21を有していて、スライダ40に連結されたブレード50をスライド可能に受け入れる。ブレード50は、連結孔55をスライダ40側の連結突起45に係合させることで、スライダ40と連結される。
カッターナイフ本体20の先端には、ガイド部材保持台30が一体形成されている。ガイド部材保持台30は、カッターナイフ本体20の長手軸Bに対して、鋭角を為して使用者側に延在している。このガイド部材保持台30には、細長いガイド部材60がスライド可能に取り付けられる。
スライダ40およびブレード50をカッターナイフ本体20のスライド溝21に収容した後、カッターナイフ本体20の基端側を閉じるようにクリップ70が取り付けられる。
【0012】
次に、カッターナイフ10の重要な特徴および使用方法を説明する。
【0013】
≪引き手式タイプであること≫
本発明のカッターナイフは、使用者がこれを握って手前に引きながら切断作業を行う引き手式タイプである。
このため、カッターナイフ本体20の先端に設けたガイド部材保持台30は、カッターナイフ本体20の長手軸Bに対して、鋭角(すなわち、90°よりも小さい角度)を為して使用者側に延在していて、ここにガイド部材がスライド式に固定される。そして、ガイド部材保持台30よりも基端側の位置において、カッターナイフ本体20は、ブレード50のエッジ51を使用者側に露出させる切欠き部25を備える。
スラッシュキルト布の作製時における上布切断工程においては、例えば図3に示したように、布地を作業台上に置いて上布5aの切断を行うことが代表的であるが、カッターナイフ10を引き手式タイプに構成した場合には、そのような作業台上での切断を行えることは勿論、それ以外にも、例えば、図4に示したように布地の一端を片手で持ち上げて、下方に向かって切り下ろす等、多様な方法で切断を行うことができる。このような切断作業は、押し手式(前方に向かってカッターナイフを押しながら、切断作業を行うもの)のカッターナイフでは不可能である。
さらに、作業台の上で上布切断工程を行う場合であっても、カッターナイフを手前に引き込みながら切断を行う引き手式タイプの方が、不用意に前方に存在する器物等を倒してしまったりすることもなく、安全性が高い。
【0014】
≪ガイド部材保持台30の構成≫
カッターナイフ本体20の先端に設けたガイド部材保持台30は、カッターナイフ本体20の長手軸Bに対して、鋭角を為して使用者側に延在していて、ここにガイド部材60がスライド式に固定される。
図5に示した例では、ガイド部材保持台30には、その延在方向に沿ってレール状のスライド係合部31が形成されている。一方、ガイド部材60にも、その長手方向に沿って係合溝61が形成されている。スライド係合部31に係合溝61をスライド係合させることによって、ガイド部材60をガイド部材保持台30に装着することができる。スライド係合部31の幅寸法を係合溝61の幅寸法よりも若干大きく設定しておくことにより、両者は一定の強度で摩擦係合する。他の例として、凹凸を利用したスナップ係合を採用することも可能であるが、摩擦係合を利用する方が構造がシンプルで製造コストを低減できるというメリットがある。
【0015】
なお、ガイド部材60は、上布5aの切断時にスラッシュキルト布の縫目6と縫目6との間に入り込んで、カッターナイフ10の進行を案内するものである(図1および図3参照)が、このとき、切断される上布5aに適度な緊張を与えて切断作業を円滑に行うためには、ガイド部材60の全幅寸法が縫目6と縫目6との間のピッチ寸法にほぼ等しいことが必要である。そして、縫目間のピッチ寸法には種々のものが存在するので、多様なスラッシュキルト布の作製に対して1つのカッターナイフを汎用的に使用するためには、種々の全幅寸法のガイド部材60を用意しておき、各ガイド部材60を適宜選択して使用することが好ましい。
このため、ガイド部材60を簡単に交換できる本発明のカッターナイフは極めて有利である。また、1つのカッターナイフに対して、全幅寸法の異なる複数種類の交換用ガイド部材(図示せず)を組み合わせてセットで提供すれば、ユーザにとっても便利である。
【0016】
複数種類の交換用ガイド部材を組み合わせて提供する場合、カッターナイフ本体20に交換用ガイド部材を収納しておく収納部(図示せず)を設けることが好ましい。このような収納部の具体的な形態は、どのようなものであってもよいが、例えば、カッターナイフ本体20を肉厚に構成して、当該肉厚部に収納部屋を設け、クリップ70を外したときに挿入口が外部に露出するような構成が考えられる。
【0017】
≪折れ刃式ブレードの採用≫
本発明のカッターナイフにおいては、複数の折溝52を備えた折れ刃式のブレード50を採用している。ブレード50の切れ味が劣化した場合には、折溝52においてブレード50を折ることで、新しいブレード部分を切断作業に供することができるので、カッターナイフの寿命が非常に長い。
【0018】
ガイド部材保持台30からガイド部材60を外した場合に、外部に露出する当該ガイド部材保持台30の端面30aにはスリットが形成されている。スライダ40を操作することで、図6に示したように、ブレード50の先端部50aをスリットを通して外部に露出させることができる。図6において、スリット自体は現れていないが、ブレード先端部50aは当該スリットを通して外部に露出している。
【0019】
ガイド部材保持台30の端面30aは、ブレード50に形成された折溝52と整合する方向に延在している。すなわち、ブレード50をカッターナイフ本体20に装着した状態では、端面30aと折溝52とが平行となる。図6においては、端面30aと最も先端側の折溝52aとが重なった状態となっている。このような状態で、ブレード先端に外力を加えることで、折溝52aに沿ってブレード50を折ることが容易になる。
ブレード50の先端を折り取った後、再びブレード50をカッターナイフ本体20内に戻して、ガイド部材60を装着すれば、未使用の新しいブレード部分が切欠き部25内に位置するので、切れ味が回復する。
【0020】
ブレード50の先端の折取り作業を容易にするために、クリップ70に刃折り部71を設けることが好ましい。例えば、図7に示したように、クリップ70の端部に、ブレードと係合可能なスリット状の溝71を設ける。図7において、突出部75は、図2において、カッターナイフ本体20の基端側と係合する部分である。
このような刃折り部71をクリップ70に設ければ、図8に示したように、刃折り部71をブレード50の先端と係合させて、矢印C方向に外力を加えることで、先端部分の折取り作業を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】スラッシュキルト布を説明する要部斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係るカッターナイフの分解斜視図。
【図3】作業台上での上布切断工程を示す図。
【図4】布地を片手で持ち上げた状態での上布切断工程を示す図。
【図5】ガイド部材の取付方法を説明する説明図。
【図6】ブレード先端部を外部に露出させた状態の説明図。
【図7】クリップを示す斜視図。
【図8】ブレードの折取方法を説明する説明図。
【符号の説明】
【0022】
5 最下層の布地
5a 上布(複数層)
6 縫目
10 カッターナイフ
20 カッターナイフ本体
21 スライド溝
25 切欠部
30 ガイド部材保持台
31 スライド係合部
40 スライダ
45 連結突起
50 ブレード
51 エッジ
52 折溝
55 連結孔
60 ガイド部材
61 係合溝
70 クリップ
71 刃折り部(溝)
75 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライダ(40)に連結した細長いブレード(50)を、スライド自在に収容したカッターナイフ本体(20)と、
カッターナイフ本体(20)の先端に設けられていて、カッターナイフ本体の長手軸(B)に対して、鋭角を為して使用者側に延在するガイド部材保持台(30)と、
ガイド部材保持台(30)に対して、スライド式に着脱可能に取り付けられる細長いガイド部材(60)と、を備えたカッターナイフであって、
ブレード(50)は、長手方向に一定間隔で平行に形成された複数の折溝(52)を有し、
カッターナイフ本体(20)は、ガイド部材保持台(30)よりも基端側の位置にブレードのエッジ(51)を使用者側に露出させる切欠き部(25)を備え、
ガイド部材保持台の端面(30a)にはブレード(50)の通過を許容するスリットが形成されていて、当該端面(30a)は、ブレードに形成された折溝(52)と整合する方向に延在していることを特徴とする、カッターナイフ。
【請求項2】
上記ガイド部材保持台(30)はレール状のスライド係合部(31)を備えていて、上記ガイド部材(60)は、その係合溝(61)をガイド部材保持台(30)のスライド係合部(31)に摩擦係合させることで、ガイド部材保持台(30)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1記載のカッターナイフ。
【請求項3】
上記カッターナイフ本体(20)の基端側にクリップ(70)が着脱可能に取り付けられていて、当該クリップ(70)は、上記ガイド部材保持台の端面(30a)に形成されたスリットを通過して露出したブレード部分に係合する刃折り部(71)を備えていることを特徴とする、請求項1記載のカッターナイフ。
【請求項4】
上記ガイド部材(60)とは全幅寸法の異なる他の交換用ガイド部材を備えることを特徴とする、請求項1記載のカッターナイフ。
【請求項5】
上記カッターナイフ本体(20)は、交換用ガイド部材を収納する収納部を備えていることを特徴とする、請求項4記載のカッターナイフ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−136395(P2006−136395A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326595(P2004−326595)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(390024132)オルファ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】