説明

スラッシュ窒素の製造方法及びその装置

低温容器内に液体窒素を充填し、該容器内に容器内空間よりも高い圧力の液体ヘリウムや低温のヘリウムガス等の冷媒液或いはガスを噴出して液体窒素を吸い出すエジェクターを配置し、前記冷媒によって吸い出され冷媒と共に噴出される液体窒素は該冷媒によって冷却され微粒の固体窒素となって落下し、容器内空間のガスは該空間を常に大気圧以上に保つよう容器外に排出されるスラッシュ窒素の製造方法を提供する。さらに本願は液体窒素の温度付近、若しくは液体窒素と固体窒素が共存する温度付近で超伝導状態を示す物質を用いた超伝導物体の冷却方法において、断熱容器中に保有されたスラッシュ窒素中に、該物体を浸漬して、該物体をスラッシュ窒素と接触させ冷却することを特徴とする超伝導物体の冷却方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、液体窒素と粒子状固体窒素との混合物のスラリ、いわゆるスラッシュ窒素の製造方法、製造装置、その簡易な固体濃度の測定方法、及びスラッシュ窒素を用いた冷却方法に関する。
【背景技術】
液体窒素は従来から冷媒として多用されている。これを固体窒素と液体窒素がシャーベット状に混合したスラッシュ窒素にして冷媒として利用すると、密度及び単位重量当たりの寒冷保有量が増大するので、より効果的な冷媒とすることができるが、現在、均一で微細な固体窒素からなるスラッシュ窒素を経済的に製造する方法は確立されていない。
スラッシュ窒素は固体窒素の融解潜熱を利用するため液体窒素に比較して熱負荷吸収能力に優れ、高温超伝導(HTC)送電ケーブルの冷却や、HTC機器(マグネット、限流器、変圧器)の冷却等に効果的に使用することができる。一方、液体水素と固体水素がシャーベット状に混合したスラッシュ水素は、密度、寒冷保有量が通常の液体水素よりも増大する特徴を活かして将来の航空、宇宙機器の燃料として注目され、その製造方法や装置が開発されている。
スラッシュ水素の製造方法としては、(1)スプレー法、(2)冷凍−融解法、(3)ヘリウム冷凍法がある。(1)のスプレー法は、低温容器(クライオスタット)内をあらかじめ50mmHg以下の圧力に減圧し、該容器内に液体水素を噴霧すると、液滴は蒸発潜熱を奪われて温度が低下し固体水素となるものである。(2)の冷凍−融解法は、液体水素を充填した低温容器内を真空ポンプで減圧していくと、液体水素の液面から水素が蒸発し、蒸発潜熱を奪われて表面に固体水素が生成される。この固体水素を機械的に砕いてスラッシュ水素を得るものである。(3)のヘリウム冷凍法は、低温容器内に液体水素を充填してその中に熱交換器を設置し、該熱交換器に18〜13K以下の温度のヘリウムガスを供給して液体水素を冷却して熱交換器の表面で固化させ、該固化した水素を機械的に削ぎ落としてスラッシュ水素を得るものである(特開平6−241647号参照)。
また、減圧した低温容器内に液体水素を噴出して固体水素を生成させ、容器内に液体水素を供給して容器内に配設された攪拌器で攪拌、混合してスラッシュ水素を製造する方法が特開平8−285420号公報に開示されている。さらに、液体ヘリウムを充填した低温容器の底部から水素ガスを吹き込み、水素ガスは液体ヘリウム内を上昇する間に液体ヘリウムにより冷却されて固化し、液体ヘリウムは蒸発するが、この気化したヘリウムを排出しつつ水素ガスの供給を続けると容器内はほとんど固体水素で満たされる。そこに液体水素を容器に充填してスラッシュ水素を製造する方法も特開平8−283001号公報に開示されている。この方法によれば、容器内を常に大気圧以上の圧力に保つことができるので、外部から空気が混入することがなく、また得られるスラッシュ水素中の固体水素は液体ヘリウムによる急冷のために均一で微細な粒子からなるとしている。
特開平6−281321号では、低温容器(クライオスタット)内の液化水素中で、液化ヘリウムの冷熱を用いて冷却した固体表面上で液化水素を凝固するとともに、掻き取ってスラッシュ水素を製造する方法および装置で、過冷却した液体水素を低温容器内に吹き込むことにより、連続して大量のスラッシュ水素を製造する技術を開示している。
上記方法において、液体水素の代わりに液体窒素を用いればスラッシュ窒素を得ることができるのであるが、それぞれ次のような問題点がある。即ち、(1)のスプレー法では、減圧された低温容器内に液体水素(スラッシュ窒素を製造する場合は液体窒素)を噴出するため、容器内に外部から空気が混入する恐れがある。(2)の冷凍−融解法では、液体水素(窒素)が充填されている低温容器内を減圧するため、容器内に外部から空気が混入する恐れがあることの他に、固体水素の粒子が不均一で大きいという欠点がある。(3)のヘリウム冷凍法では、固体水素(窒素)の粒子が不均一で大きいという欠点とともに、特殊な熱交換器を必要とするという問題がある。
また、特開平8−285420号の場合も減圧された冷却容器内に液体水素を噴出するので、外部から空気が混入する恐れがある。大気圧における液体ヘリウムの沸点は4.22K、固体水素の融点は13.83Kであり、前記特開平8−283001号の方法で微細な固体水素の粒子を得るために液体ヘリウムに浸漬された水素ガス噴出ノズルの噴口径を小さくすると、前記固体水素の融点よりも低温になったノズルの噴口が固体水素で閉塞される恐れがある。そして、固体窒素の融点は63.17Kと固体水素のそれに比べてはるかに高いので、固体窒素製造にこの方式を適用すると、ノズル径や窒素ガスの流量を相当に大きくしなければノズル閉塞が起こり、安定的に微細粒子の固体窒素を製造することはできない。
前記いずれの従来技術も水素を対象としており、しかも、対象物質以外の冷媒(ヘリウム)を用いている。例えば、この技術をスラッシュ窒素の製法に応用するとしても、冷媒として使用したヘリウムを再凝縮して繰り返し利用するとすれば、液化機が必要でありかつその温度は窒素や水素の液化より低温が必要であるなど、設備が大型化し、高コストとなる不利がある。
また、スラッシュ窒素生成中の固体窒素濃度の計測はこれまで適当な方法がなかった。すなわち、スラッシュ窒素が流れているならば、質量流量計により計測可能であるが、流動中しか計測できず、流動手段が必要で、しかも極低温中で使用するため断熱などの装備が加わり、高コストになる。さらにヘリウム液化機中に窒素が混入するため当該液化機の長期運転が困難となったり高性能の分離機が必要となる.
一方、超伝導物質を用いた超伝導コイル、超伝導ケーブルなどを超伝導状態で動作させるためには、その超伝導物質の臨界温度より低い温度に保つ必要があるので、従来は液体ヘリウム(沸点温度4.2K)に浸漬して、冷却した(例えば特開平6−77541号公報、特開平9−283321号公報参照)。ところが、超伝導物質の研究開発が進展するにつれ、臨界温度の高い物質が発見され、利用されるようになり、冷却温度が上昇した。いわゆる高温超伝導出現により、高価な液体ヘリウムに変わって、液体窒素(沸点温度77K)を用いることも可能となり、超伝導の実用化に極めて有利になった。
これら、超伝導機器を液体窒素に浸漬して冷却するときの液体窒素の使用においても、交流損による発熱や外部の熱侵入などにより、液体窒素中に気泡が生じると、絶縁特性など劣化するので、様々な工夫がなされている。例えば、液体窒素を沸点以下に冷却して用いたり、加圧して沸点を上げたり、あるいは両方法を組み合わせたりしている。しかし、融点63Kの液体窒素を固化させずに冷却できるのは、せいぜい65Kが限度であり、沸騰直前の上限は75K程であるから、液体窒素の顕熱で冷却可能な温度範囲は10Kの変化分だけである。液体窒素の比熱は2kJ/kgだから、顕熱分で可能な単位液体窒素質量当たりの熱容量は20kJ/kgしかない。更に、当然のことながら、超伝導体の冷却は液体窒素の沸点付近の温度より、凝固点付近の低温のほうが特性は安定して高いのが通常である。
即ち、液体窒素を液体状態でその顕熱を利用して冷却可能な温度範囲は狭く、熱容量が小さいので、冷却(除熱)には大量の液体窒素を必要とし、超伝導体装置の寸法が大きくなる。また、この方法では、例えば冷却温度が沸点付近まで上がれば、その超伝導体の性能の限界がその温度で限定される。
【発明の開示】
本発明は上記従来の技術の問題点に鑑みなされたもので、高価な冷媒や付帯機器を必要としない、スラッシュ窒素としては新規で、簡易な製造方法、装置及びその固体濃度の測定方法の提供を目的とする。更に本発明は、液体窒素の若しくは固体窒素と液体窒素が共存する温度付近で超伝導状態を示す物質を用いた超伝導物体の冷却を低温で、少量の冷却媒体で効率よく行う方法及び装置の提供を目的とする。
上記問題点を解決するために、本発明は、低温容器内に液体窒素を充填し、該容器内に容器内空間よりも高い圧力の液体ヘリウムや低温のヘリウムガス等の冷媒液或はガスを噴出して液体窒素を吸い出すエジェクターを配置し、前記冷媒によって吸い出され冷媒とともに噴出される液体窒素は該冷媒によって冷却され微粒の固体窒素となって落下し、容器内空間のガスは該空間を常に大気圧以上に保つように容器外に排出されることを特徴とするスラッシュ窒素の製造方法を提案する。
かかる発明によれば、常に大気圧よりも若干高い圧力に保たれたヘリウム等の冷媒ガス雰囲気中で液体ヘリウムや低温ヘリウムガス等の冷媒を作動流体とするエジェクターによって液体窒素が吸い出されて前記冷媒ガス雰囲気中に噴出され、噴出する液体窒素はエジェクターのディフューザ部及びディフューザを出た後で作動流体である冷媒液或はガスと衝突混合し冷却されて固化されるので、粒径が小さく比較的均一な固体窒素が生成される。該固体窒素は前記雰囲気ガスよりも比重が大きいので重力によって容器の下方に落下して液体窒素に混合し、スラッシュ窒素が生成される。前記作動流体が冷媒液の場合は、該冷媒液が容器内で窒素から熱を奪って気化する。容器内の下方に充填されている液体窒素の温度は容器内の雰囲気温度よりも高いので液体窒素は蒸発し、雰囲気ガスは冷媒ガスと窒素ガスの混合ガスとなるが、該ガスは容器内が常に大気圧以上の一定圧力に保たれるように排出される。したがって、容器内に外部から空気が混入することがない。該排出された混合ガスは冷媒と窒素に分離して再使用することができる。なお冷媒としては、ヘリウムのほかに水素やネオンなどが考えられる。
本発明においては、前記エジェクターへ供給する作動流体である冷媒の圧力を変えることによって固体窒素の粒径を制御することができる。該圧力を大きくすると冷媒がエジェクターのノズルから噴出する速度が大きくなり、吸い出された液体窒素はより微細化され、粒径が小さい固体窒素を生成させることができる。さらに、ノズル径を変更し、それに組み合わせれば幅広い粒径制御が可能となる。
また、前記エジェクターのディフューザ部に前記固体窒素が凍結するのを防止するために該ディフューザ部を加熱するとよい。大気圧における窒素の融点は63.17Kであり、ヘリウム等の冷媒の沸点に比べると大幅に高く(大気圧におけるHe、H2、Neの沸点はそれぞれ約4.22K、20.28K、27.09K)、ディフューザ部に固体窒素が凝固、付着してディフューザの通路を狭め或は閉塞することがあるので、必要に応じてディフューザ部を加熱するのがよい。
さらに、2個の前記エジェクターを対向して配置し、それぞれのディフューザから噴出するジェット流を衝突させることにより生成される前記固体窒素の微粒化を図ることもよい。ディフューザから噴出する冷媒と液体窒素が混合したジェット流を衝突させることにより、生成される固体窒素を単一ジェット流の場合よりも微粒化することができる。
更に本発明の別の側面としてのスラッシュ窒素の製造装置は、液体窒素を充填することのできる低温容器と、該容器内に配置されたエジェクターと、容器内空間の排気手段とを備えてなり、前記エジェクターの作動流体口には、該容器外部に通ずるエジェクター作動流体供給ラインが接続され、前記エジェクターの吸引流体口には、該容器内底部付近まで到達する液体窒素吸い込み管が接続されており、所定量の液体窒素が貯留され、前記排気手段により大気圧より若干高い所定圧力に保持された、前記低温容器内に容器内空間よりも高い圧力の液体ヘリウムや低温のヘリウムガス等の冷媒液或はガスを前記エジェクター作動流体供給ラインによりエジェクターへ供給して噴出することにより、貯留されている液体窒素を液体窒素吸い込み管を介して吸いだし、前記冷媒とともに噴出して冷却固化して、微粒の固体窒素として前記貯留液体窒素中に落下せしむることを特徴とする。
更に本発明のスラッシュ窒素の製造装置は、エジェクターへの冷媒の供給圧力を変える圧力調整手段を前記エジェクター作動流体供給ライン側に有していることを特徴とする。
更に本発明のスラッシュ窒素の製造装置は、前記エジェクターのディフューザ部に前記固体窒素が凍結するのを防止するための加熱手段を備えていることを特徴とする。
更に本発明のスラッシュ窒素の製造装置は、2個の前記エジェクターを対向して配置し、それぞれのディフューザから噴出するジェット流を衝突させることによって生成される前記固体窒素の微粒化を図ることを特徴とする。
更に本発明のスラッシュ窒素の製造措置は、前記貯留液体窒素表面が冷媒液又はガスにより凍結され固体窒素が前記貯留液体窒素中に落下することが阻害されないための攪拌手段を備えていることを特徴とする。
更に本発明のスラッシュ窒素の製造措置は、前記貯留液体窒素中に落下した固体窒素の沈殿を防ぎ、均一化するための攪拌手段を備えていることを特徴とする。
また、本発明のスラッシュ窒素の製造方法は、断熱容器中の液体窒素の気相部を減圧にし、液相部の窒素を蒸発させて、温度を低下させることにより、窒素の三重点に到達せしめ、三重点温度を維持して固体窒素を生成するとともに、内容物を攪拌することにより生成した固体窒素をスラッシュ化することを特徴とする。
更に、本発明のスラッシュ窒素の製造方法は、内容物の攪拌を液面部と底部と別々に行うことを特徴とする。
断熱容器中の液体窒素は蒸発潜熱(199.1kJ/kg)を奪われて、液表面で凝固(凝固潜熱25.73kJ/kg)し、薄皮上に堆積していく。このままでは液体と混合しないので液表面近くに例えば攪拌翼を設けて攪拌し、液面を乱して、析出した固体窒素を砕いて液体窒素より密度の大きい固体窒素を液中に沈降させる。固体窒素が沈降して液面が更新され、更に液面からの蒸発が進行し、固体窒素が継続して生成する。
沈降した固体窒素は容器底に設けた例えば大型攪拌翼により混合される。このとき粒子の大きい固体窒素は流体の運動と他の固体窒素の衝突を繰り返すことで次第に細粒化され、液体と固体が均一にまじりあったスラリ状の流体となる(スラッシュ化)。
更に本発明の別の側面としてのスラッシュ窒素の製造装置は、液体窒素の充填された断熱容器と、該容器の内部を減圧にするために該容器の上部に接続した減圧手段と、内容物を攪拌可能な攪拌手段と、温度検知手段とを有して成り、前記減圧手段によって容器中の液体窒素を蒸発させて温度をさげ、三重点に到達せしめて固体窒素を生成し、生成した固体窒素を前記攪拌手段で攪拌することによりスラッシュ化することを特徴とする。
更に、本発明のスラッシュ窒素の製造装置は、液体窒素の充填された断熱容器と、該容器の内部を減圧にするために該容器の上部に接続した減圧手段と、内容物を攪拌可能な攪拌手段と、目視用窓とを有して成り、前記減圧手段によって容器中の液体窒素を蒸発させて温度をさげ、三重点に到達せしめて固体窒素を生成し、生成した固体窒素を前記攪拌手段で攪拌することによりスラッシュ化することを特徴とする。
更に、本発明のスラッシュ窒素の製造装置は、前記攪拌手段が液面部攪拌手段と底部攪拌手段とよりなることを特徴とする。
更に本発明の別の側面としてのスラッシュ窒素濃度の簡易測定方法は前記のスラッシュ窒素の製造方法により製造したスラッシュ窒素の濃度を測定する際に、三重点到達時の容積と運転終了時の容積とを計測して、スラッシュ窒素の濃度を求めることを特徴とする。
三重点における液体の密度は868.4kg/m、固体の密度は946kg/mであることから、三重点到達時の液体窒素の容積とスラッシュ窒素生成後のスラリの容積を測定すれば、スラッシュ窒素生成後の固体窒素濃度をもとめることができる。
前記容積の測定は、前記断熱容器に液面計を取り付けて、該時点のそのレベルの高さを測定すれば、測定値と容器断面積とから最も簡便に求めるができる。
更に、本発明は、液体窒素の温度付近、若しくは液体窒素と固体窒素が共存する温度付近で超伝導状態を示す物質を用いた超伝導物体の冷却方法において、断熱容器中に保有されたスラッシュ窒素中に、該物体を浸漬して、該物体をスラッシュ窒素と接触させ冷却することを特徴とする。
スラッシュ窒素は固体窒素と液体窒素のスラリー状混合物なので、冷却用冷媒として使用するときは、固体窒素の融点付近の温度を呈しており、しかも流体のため、物体表面上に濡れ、狭い隙間にも浸透するので、熱伝導性が良好であるとともに、固体窒素の融解潜熱25kJ/kgを冷却に利用できる。そのため、単位質量当たりで比べれば液体窒素の持つ顕熱の12.5倍以上の冷却効果があり、固体窒素の存在する限り、63°K付近以上に冷媒の温度は上昇せず、浸漬した超伝導物体の温度を低温に保つことができる。
更に、送液停止時においても固体潜熱によりある程度の時間は超電導物体の温度を低温に保つことができ、系統の信頼性が向上する。
更に、本発明の超伝導物体の冷却方法は、前記容器中に保有されたスラッシュ窒素を攪拌するとともに、該スラッシュ窒素中に前記物体を浸漬することを特徴とする。固体窒素は液体窒素より比重が大きいため、スラッシュ窒素中の、固体窒素粒子は沈降する傾向にあるので、攪拌することによりスラリの粒子濃度を均一化し、且つ被冷却物体の伝熱境膜を強制的に更新する効果を持たせるのが好ましい。
更に、本発明の超伝導物体の冷却方法は、液体窒素の温度付近、若しくは液体窒素と固体窒素が共存する温度付近で超伝導状態を示す物質を用いた物体の冷却方法において、断熱管中にスラッシュ窒素を流し、該流動するスラッシュ窒素中に前記物体を置いて、物体をスラッシュ窒素と接触させ冷却することを特徴とする。
この方法は、例えば超伝導ケーブルなど、長尺の物体を冷却するのに有効で、流動することにより攪拌効果も合わせてあり、スラリ中粒子の沈降防止、伝熱境膜強制更新の作用を有するので、好ましい方法である。
更に、本発明の他の側面では、液体窒素の温度付近、若しくは液体窒素と固体窒素が共存する温度付近で超伝導状態を示す物質を用いた超伝導物体の冷却装置において、断熱容器と、該容器中に保有されたスラッシュ窒素と、該スラッシュ窒素中に物体を浸漬するための、出し入れ口とを備えたことを特徴とする。
このバッチ式冷却装置の場合、新しい固体窒素濃度の高いスラッシュ窒素を新たに導入可能な導入口と、被冷却物体に潜熱を与えて液化することにより、固体窒素濃度の低くなったスラッシュ窒素若しくは液体窒素を抜き出す排出口を更に備え、適時に断熱容器内部のスラリ若しくは液体を更新することも可能である。また、一定速度で新スラッシュ窒素を導入し、同一速度で内部のスラッシュ窒素を抜き出して、バランスさせ、連続的に一定冷却効果を維持することもできる。
更に、前記冷却装置をスラッシュ窒素製造装置に接続し、前記冷却装置排出口から抜き出した固体窒素濃度の低くなったスラッシュ窒素若しくは液体窒素の固体窒素濃度を高めて、前記導入口を介して前記冷却装置に戻入することにより、冷却能力を一定に維持することもできる。
更に、本発明の超伝導物体の冷却装置は、更に容器中に保有されたスラッシュ窒素を攪拌するための攪拌機を備えたことを特徴とする。
更に本発明は、液体窒素の温度付近、若しくは液体窒素と固体窒素が共存する温度付近で超伝導状態を示す物質を用いた超伝導物体の冷却装置において、冷却目的物体を収納可能な断熱管と、スラッシュ窒素を当該管中に流動させる流動手段と、当該管内に前記物体を出し入れする出し入れ口と、少なくとも管内を流動するに足るスラッシュ窒素とを有し、流動するスラッシュ窒素中に前記物体を置いて、物体をスラッシュ窒素と接触冷却可能であることを特徴とする。
前記流動手段は、管の上流端若しくは上流部分と下流端もしくは下流部分を例えばポンプのような液体駆動手段を接続して、循環流を形成させるものであってもよい。また、上流端若しくは上流部分に例えばポンプのような液体駆動手段を接続して、スラッシュ窒素を圧送し、下流端もしくは下流部分から排出させて、管内を流動させてもよい。また後者の場合の液体駆動手段は、管体より高所に設けた、タンクより重力によって流下させるものであってもよい。
また、前記循環流を形成させる構成の場合、循環経路のどこかに固体濃度の高い新規スラッシュ窒素を導入できる導入口を設け、導入口より下流の別のどこかに固体濃度の低いスラッシュ窒素若しくは液体窒素の排出口を設け、新規スラッシュ窒素の導入と固体濃度の低いスラッシュ窒素若しくは液体窒素の抜き出しをバランスさせて行い、冷却能力を一定に維持することもできる。更に前記導入口と排出口とをスラッシュ窒素製造装置に接続して前記冷却装置排出口から抜き出した固体窒素濃度の低くなったスラッシュ窒素若しくは液体窒素の固体窒素濃度を高めて、前記導入口を介して前記冷却装置に戻入することにより、冷却能力を一定に維持することもできる。
以上説明したように、本発明の効果を纏めると、次のように表すことができる。
エジェクターを用いる本発明は、低温容器内において大気圧或はそれよりも若干高い圧力下で固体窒素或はスラッシュ窒素を製造することができるので、製造中に容器内に外部から空気が混入する恐れがない。
また、エジェクターによって液体窒素と冷媒が激しく混合されながら液体窒素が冷却されて固体窒素が生成されるので、微細で均一な粒径の固体窒素が生成される。
また、エジェクターの駆動流体である冷媒の供給圧力及び/又はノズル径を変えることによって、生成される固体窒素の粒径を変えることができる。
さらに、エジェクターのディフューザ部を加熱することにより、ディフューザ部に固体窒素が凝固、付着して通路を狭めたり、閉塞することがないようにすることができる。
2個のエジェクターを対向して配置することにより、エジェクターのディフューザ部からの噴流を衝突させて、生成される固体窒素の粒径をより微細化することができる。
更に液体窒素表面を攪拌することで、冷媒との接触による同表面の凍結を防ぐことができる。
更に蒸発によるスラッシュ窒素の製造、及びスラッシュ窒素中の固体窒素の濃度測定に関わる、本発明の効果は、以下のようにまとめることができる。
他の冷媒を使わず、従って該冷媒の再圧縮装置などの大型設備を必要としないで、液体窒素より更に冷熱源として強力なスラッシュ窒素の製造をすることができる。
液体窒素、スラッシュ窒素の容積測定によって、特別な装置を必要とせずに、固体窒素の濃度を測定できる。
また、スラッシュ窒素による冷却に関わる、本発明の効果は、スラッシュ窒素を使用することにより、冷却温度を固体窒素の凝固点(63K)付近まで低下できる。よって、液体ヘリウムより安価で、超伝導物質の選択範囲が液体窒素による場合より広がる、若しくは超伝導動作を安定に保つことができる。
また、スラッシュ窒素をスラリ状で使用するので、細部への流動性がよく、表面濡れ性もよいので、伝熱特性を良好に保つことができる。
更に、スラッシュ窒素を使用することにより、固体窒素の融解潜熱を利用でき、液体窒素の顕熱による場合の単位質量あたり12.5倍の冷却効果がある。従って、液体窒素で冷却する場合より、少量の冷媒で可能であり、装置を小型に構成できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、低温容器内に配置されるエジェクターの断面図である。
第2図は、エジェクターが配置された低温容器の配管を示す図である。
第3図は、エジェクターが2個対向して配置された場合を示す図である。
第4図は、第3図におけるエジェクターの2個のノズルが下方に傾斜して配置された場合を示す図である。
第5図は、本発明の実施例2の装置の略図である。
第6図は、本発明の実施例1の装置の略図である。
第7図は、本発明の実施例2の装置の略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を例示的に説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構造部品の寸法、材質、形状、相対位置などは特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
第1図は低温容器内に配置されるエジェクターの断面図である。同図においてエジェクター1はノズル2とディフューザ部3aを有する外筒3からなる。ノズル2は外筒3の内部空間4に突出しており、矢線Aで示すように冷媒液或はガスが供給され、該冷媒がノズル噴口2aから外筒3の前記空間4から延びたディフューザ部3aに向かって噴出される。ノズル噴口2aからの冷媒の噴出流によって低温容器に充填されている液体窒素が外筒3の吸込口3bから矢線Bで示すように空間4に吸い込まれ、冷媒流とともにディフューザ部3aを通って矢線Cで示すように低温容器の空間に噴出される。ディフューザ部3aの外側には該部に固体窒素が凝固、付着するのを防止するためにヒータ5が配設されている。
第2図は前記エジェクターが配置された低温容器の配管を示す図であり、第3図は前記エジェクターが2個対向して配置された場合を示す。第4図は第3図における2個のノズルが下方に傾斜して配置された場合を示す。第2図乃至第4図において、同じ構成には同一の符号が付してある。
第2図において、低温容器10内には液体窒素11が充填されている。該液体窒素11は弁を具備した液体窒素供給ライン13により供給される。低温容器10内に配置された前記エジェクター1のノズル2に、バルブを具備したエジェクター作動流体供給ライン14を介して液体ヘリウム或は低温のヘリウムガス等の冷媒が供給される。冷媒としては、ヘリウムの他にネオン、水素などを用いることができる。低温容器10内の液体窒素上部の空間12には真空ポンプ16と弁を具備した排気ライン15と、空間12を大気圧よりも若干高い圧力に保つための、弁を具備した排気ライン17が開口している。液体窒素にはエジェクター1の吸込口3bに連結する液体窒素吸込管18の下部が浸漬されている。
低温容器に液体窒素を充填して密閉し、真空ポンプ16と弁を具備した排気ライン15を介して容器内を減圧すると、液体窒素は蒸発し、蒸発潜熱のために液体窒素の温度は低下する。液体窒素の温度が大気圧における融点、つまり固体化する温度よりも若干高い65K付近になったところで液体ヘリウム或は低温ヘリウムガス等の冷媒を供給し、容器内を大気圧或はそれよりも若干高い圧力にする。冷媒の供給はエジェクター作動流体供給ライン14及びエジェクター1を介して行うことができる。引き続き容器内の圧力よりも高い圧力で冷媒をエジェクター1に供給すると、該ノズル2の噴口2aから噴出される冷媒噴流により液体窒素11が前記吸込管18を介してエジェクター1の吸込口3bに吸い出され、液体窒素は冷媒とともにディフューザ部3aを通って空間12に噴出される。液体窒素は該ディフューザ部3aにおいて及び該ディフューザ部を出た後に冷媒と激しく衝突混合し冷却されて微細で比較的均一な粒径の固体窒素となる。該固体窒素は空間12を満たす冷媒ガスよりも比重が大幅に大きく、重力により下方に落下する。作動流体である冷媒の供給により容器内の冷媒ガス量が増大して圧力が上昇するので、この圧力を大気圧よりも若干高い圧力に保つように空間12のガスは排気ライン17を介して常に排気される。
低温の冷媒が液体窒素層11の上面に触れると液面が凍結し、該固体窒素が下部の液体窒素と混合できなくなる可能性がある。そこで、攪拌モーター20は液体窒素層11内の液面近傍に設置され、液面を常に動揺させることで液面の凍結を防ぐ。液体窒素層11下部に設けた攪拌モーター21は固体と液体の窒素を均一に混合しスラッシュ化するためのものである。
或は、前記真空ポンプ16と弁を具備した排気ライン15を介して容器内を真空にした後に液体ヘリウム或は低温ヘリウムガス等の冷媒をエジェクター作動流体供給ライン14を介して充填し、ついで液体窒素供給ライン13を介して液体窒素を充填してもよい。液体窒素が充填された状態で容器圧力が大気圧或はそれよりも若干高い圧力となるように充填する。液体ヘリウム等の冷媒液は直ちに蒸発して空間12を占め、液体窒素は低温容器10の下部に溜まる。ついで、前述の場合と同様にエジェクター作動流体供給ライン14を介して低温容器10内の圧力よりも高い圧力でエジェクター1のノズル2に冷媒を供給する。
容器10内の液体窒素の温度は、空間12のガスの温度よりも高く、液体窒素層11の表面から窒素が一部蒸発し、空間12のガスは冷媒ガスに窒素ガスが混入したものとなる。前記排気ライン17を介して排出されたガスは、冷媒と窒素に分離して再度使用することができる。この様な作動を継続すると、容器10の下部には液体窒素と固体窒素が混合したスラッシュ窒素が溜まり、ついには固体窒素のみが堆積することになる。適切な時期に弁を具備した排出ライン19を介してスラッシュ窒素を排出すればよい。液体窒素の供給流量と固体窒素の生成量をバランスさせれば、スラッシュ窒素を連続的に製造することができる。吸込管18の下端には固体窒素を吸込まないようにストレーナ18aが設けられている。なお、第2図においてはエジェクターは1個配置されているが、複数個配置してもよいことはもちろんである。
第3図は、エジェクター1、1’が低温容器10内に2個対向して配置された場合を例示したもので、エジェクター1、1’にはその作動ガスである冷媒がエジェクター作動流体供給ライン14の下流で分岐して供給され、それぞれの吸込管18、18’の下端にはストレーナ18a、18a’が設けられて液体窒素11に浸漬されている。両エジェクターのディフューザ部3a、3a’が対向していて、ディフューザ部からの噴流C、C’が衝突することにより、生成される固体窒素の微細化を図ったものであり、その他の作用については上記第2図の場合と同じである。
第4図は、第3図におけるエジェクター1、1’を下方に傾斜して配置した場合を示し、これにより、生成された固体窒素が下方へ落下し易くなる。
以上、本発明の方法によりスラッシュ窒素を製造する場合について説明したが、本発明の方法はスラッシュ水素の製造にも適用できるものである。
【実施例2】
第5図は本発明の実施例2のスラッシュ窒素の装置である。図において、104は断熱容器、102は断熱容器内に保留されている液体窒素、109は気相部を減圧する真空ポンプ(減圧手段)、108は三重点を検知しうる温度計(温度検知手段)、107は現時点容積を求めうる液面計、103は表面に凝固した板状固体窒素を破砕しうる液面部攪拌翼(液面部攪拌手段)、105は沈降した固体窒素を更に細粒としうる底部攪拌翼(底部攪拌手段)である。
断熱容器104内に液体窒素102を蓄え、真空ポンプ109にて容器内気相部を減圧する。減圧が進行すると液体窒素が蒸発し、潜熱により液体窒素の温度は漸次低下する。
減圧を続け、内容物が窒素の三重点に到達すれば固体窒素が生成し始める。三重点への到達は窓106から内部を観察するか、温度計108で温度計が63.1K以下に下がらなくなったことで確認する。三重点到達時は真空ポンプ109を停止して液面計107でレベルを計測する。その後真空ポンプ109を運転し、両攪拌翼103、105も回転する。
減圧により固体窒素は液体窒素表面全体に薄く生成する。そのまま放置すると固体窒素は真空ポンプ109の吸引口のある上方に吸い上げられて液体から離れ、その空間に次の固体窒素が生成する。攪拌翼103は液面近くに設置され、その運転により液面を撹乱することにより生成した固体窒素101を液体中に沈降させる。固体窒素101は液体窒素より密度が大きいので、そのままでは底に堆積するが、攪拌翼105は沈降する固体窒素101と細粒化し液体窒素102を混合し、スラリ状のスラッシュ窒素を得ることができる。
【実施例3】
次にスラッシュ窒素濃度を測定する例を述べる。今、窒素の蒸発潜熱をH(kJ/kg)、窒素の凝固潜熱をH(kJ/kg)、液体窒素の密度をM(kg/m)、固体窒素の密度をM(kg/m)、三重点到達時の窒素容積をV(m)、スラッシュ窒素製造後の窒素容積をV(m)、蒸発した窒素容積の液体窒素換算値をX(m)、凝固した固体窒素の容積をX(m)、断熱容器内への熱の浸入量をQ(kW)、スラッシュ窒素製造に要した時間T(s)とすれば、
エネルギ保存則より、
×M×X=H×M×X+Q×T (1)
質量保存則より、
×M=(V−X)×M+X×M+X×M (2)
上記(1)、(2)の連立方程式よりXとXを求め、次式に代入してスラッシュ窒素濃度(IPF)を求める。
IPF=X×M/((V−X)×M+X×M
なお、容器への熱浸入量Qは事前に液体窒素の蒸発熱量を計測しておくことにより可能であるが、蒸発した窒素中に占める割合は小さいため省略可能である。
【実施例4】
第6図は本発明の実施例1の装置の略図である。第6図において、201は断熱容器、204は固体窒素の細かな粒子、203は液体窒素、202は204と203の混合物のスラリであるスラッシュ窒素、205は超伝導物体、206は前記容器に設けられた出し入れ口である。
断熱容器201に超伝導コイル(超伝導物体205)を出し入れ口206より、スラッシュ窒素202を満たし、出し入れ口206を蓋で塞いで、超伝導コイル205を冷却し、超伝導臨界温度以下に保った。
【実施例5】
第7図は本発明の実施例2の装置の略図である。第7図において、207は断熱管、204は固体窒素の細かな粒子、203は液体窒素、202は204と203の混合物のスラリであるスラッシュ窒素、205′は超伝導物体、206A、206Bは前記管に設けられた出し入れ口である。
断熱管207に長尺ものの超伝導物体205′である超伝導ケーブルを出し入れ口206Aより挿入し、不図示の導入口より不図示の流動手段によりスラッシュ窒素202を圧送し、不図示の排出口から排出して、管内をスラッシュ窒素を流動させ、超伝導ケーブルを冷却し、超伝導臨界温度以下に保った。
【産業上の利用可能性】
本発明の方法で製造したスラッシュ窒素は、各種産業における冷熱源として利用でき、可搬性、簡便性、低温性など優れた利点を有するので今後の利用増大が期待される。
更に、本発明の超伝導物体の冷却技術は、液体窒素より低い温度で、冷却可能な体積効率のよい冷却方法であるので、小型の冷却装置で、低温度を維持できる。よって、高温超伝導物体を冷却するのに適しており、超伝導技術の実用化に貢献できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温容器内に液体窒素を充填し、該容器内に容器内空間よりも高い圧力の液体ヘリウムや低温のヘリウムガス等の冷媒液或はガスを噴出して液体窒素を吸い出すエジェクターを配置し、前記冷媒によって吸い出され冷媒とともに噴出される液体窒素は該冷媒によって冷却され微粒の固体窒素となって落下し、容器内空間のガスは該空間を常に大気圧以上に保つように容器外に排出されることを特徴とするスラッシュ窒素の製造方法。
【請求項2】
前記エジェクターへの前記冷媒の供給圧力及び/又はノズル径を変えることによって前記固体窒素の粒径を制御することを特徴とする請求の範囲第1項記載のスラッシュ窒素の製造方法。
【請求項3】
前記エジェクターのディフューザ部に前記固体窒素が凍結するのを防止するために該ディフューザ部を加熱することを特徴とする請求の範囲第1項記載のスラッシュ窒素の製造方法。
【請求項4】
2個の前記エジェクターを対向して配置し、それぞれのディフューザから噴出するジェット流を衝突させることによって生成される前記固体窒素の微粒化を図ることを特徴とする請求の範囲第1項記載のスラッシュ窒素の製造方法。
【請求項5】
前記エジェクターの作動流体である冷媒はヘリウム、水素、或はネオンであり、好ましくはヘリウムであることを特徴とする請求の範囲第1項記載のスラッシュ窒素の製造方法。
【請求項6】
前記低温容器内液体窒素表面を攪拌し凍結を防止することを特徴とする請求の範囲第1項記載のスラッシュ窒素の製造方法。
【請求項7】
液体窒素を充填することのできる低温容器と、該容器内に配置されたエジェクターと、容器内空間の排気手段とを備えてなり、前記エジェクターの作動流体口には、該容器外部に通ずるエジェクター作動流体供給ラインが接続され、前記エジェクターの吸引流体口には、該容器内底部付近まで到達する液体窒素吸い込み管が接続されており、所定量の液体窒素が貯留され、前記排気手段により大気圧より若干高い所定圧力に保持された、前記低温容器内に容器内空間よりも高い圧力の液体ヘリウムや低温のヘリウムガス等の冷媒液或はガスを前記エジェクター作動流体供給ラインによりエジェクターへ供給して噴出することにより、貯留されている液体窒素を液体窒素吸い込み管を介して吸いだし、前記冷媒とともに噴出して冷却固化して、微粒の固体窒素として前記貯留液体窒素中に落下せしむることを特徴とするスラッシュ窒素の製造装置。
【請求項8】
エジェクターへの冷媒の供給圧力を変える圧力調整手段を前記エジェクタ作動流体供給ライン側に有していることを特徴とする請求の範囲第6項記載のスラッシュ窒素の製造装置。
【請求項9】
前記エジェクターのディフューザ部に前記固体窒素が凍結するのを防止するための加熱手段を備えていることを特徴とする請求の範囲第6項記載のスラッシュ窒素の製造装置。
【請求項10】
2個の前記エジェクターを対向して配置し、それぞれのディフューザから噴出するジェット流を衝突させることによって生成される前記固体窒素の微粒化を図ることを特徴とする請求の範囲第6項記載のスラッシュ窒素の製造装置。
【請求項11】
前記貯留液体窒素の表面を攪拌可能な攪拌羽根を備えた攪拌機を有し、表面を攪拌して凍結を防止することを特徴とする請求の範囲第6項記載のスラッシュ窒素の製造装置。
【請求項12】
断熱容器中の液体窒素の気相部を減圧にし、液相部の窒素を蒸発させて、温度を低下させることにより、窒素の三重点に到達せしめ、三重点温度を維持して固体窒素を生成するとともに、前記断熱容器中の内容物を攪拌することにより生成した固体窒素をスラッシュ化することを特徴とするスラッシュ窒素の製造方法。
【請求項13】
前記内容物の攪拌を前記液体窒素の液面部と前記断熱容器の底部と別々に行うことを特徴とする請求の範囲第10項記載のスラッシュ窒素の製造方法。
【請求項14】
液体窒素の充填された断熱容器と、該容器の内部を減圧にするために該容器の上部に接続した減圧手段と、前記断熱容器中の内容物を攪拌可能な攪拌手段と、温度検知手段とを有して成り、前記減圧手段によって容器中の液体窒素を蒸発させて温度を下げ、三重点に到達せしめて固体窒素を生成し、生成した固体窒素を前記攪拌手段で攪拌することによりスラッシュ化することを特徴とするスラッシュ窒素の製造装置。
【請求項15】
液体窒素の充填された断熱容器と、該容器の内部を減圧にするために該容器の上部に接続した減圧手段と、前記断熱容器中の内容物を攪拌可能な攪拌手段と、目視用窓とを有して成り、前記減圧手段によって容器中の液体窒素を蒸発させて温度を下げ、三重点に到達せしめて固体窒素を生成し、生成した固体窒素を前記攪拌手段で攪拌することによりスラッシュ化することを特徴とするスラッシュ窒素の製造装置。
【請求項16】
前記攪拌手段が前記液体窒素の液面部攪拌手段と前記断熱容器の底部攪拌手段とからなることを特徴とする請求の範囲第12項若しくは第13項記載のスラッシュ窒素の製造装置。
【請求項17】
請求の範囲第10項記載のスラッシュ窒素の製造方法により製造したスラッシュ窒素の濃度を測定する際に、三重点到達時のスラッシュ窒素の容積と運転終了時のスラッシュ窒素の容積とを計測して、スラッシュ窒素の濃度を求めることを特徴とするスラッシュ窒素濃度の簡易測定方法。
【請求項18】
前記スラッシュ窒素の容積の測定を、前記断熱容器に備えた液面計によって行うことを特徴とする請求の範囲第15項記載のスラッシュ窒素濃度の簡易測定方法。
【請求項19】
液体窒素の温度付近、若しくは液体窒素と固体窒素が共存する温度付近で超伝導状態を示す物質を用いた超伝導物体の冷却方法において、断熱容器中に保有されたスラッシュ窒素中に、該物体を浸漬して、該物体をスラッシュ窒素と接触させ冷却することを特徴とする超伝導物体の冷却方法。
【請求項20】
前記容器中に保有されたスラッシュ窒素を攪拌するとともに、該スラッシュ窒素中に前記物体を浸漬することを特徴とする請求の範囲第17項記載の超伝導物体の冷却方法。
【請求項21】
液体窒素の温度付近、若しくは液体窒素と固体窒素が共存する温度付近で超伝導状態を示す物質を用いた超伝導物体の冷却方法において、断熱された管中にスラッシュ窒素を流し、該流動するスラッシュ窒素中に前記物体を置いて、前記物体をスラッシュ窒素と接触させ冷却することを特徴とする超伝導物体の冷却方法。
【請求項22】
液体窒素の温度付近、若しくは液体窒素と固体窒素が共存する温度付近で超伝導状態を示す物質を用いた超伝導物体の冷却装置において、断熱容器と、該容器中に保有されたスラッシュ窒素と、該スラッシュ窒素中に前記物体を浸漬するための出し入れ口とを備えたことを特徴とする超伝導物体の冷却装置。
【請求項23】
更に容器中に保有されたスラッシュ窒素を攪拌するための攪拌機を備えたことを特徴とする請求の範囲第20項記載の超伝導物体の冷却装置。
【請求項24】
液体窒素の温度付近、若しくは液体窒素と固体窒素が共存する温度付近で超伝導状態を示す物質を用いた超伝導物体の冷却装置において、冷却目的物体を収納可能な断熱された管と、スラッシュ窒素を当該管中に流動させる流動手段と、当該管内に前記物体を出し入れする出し入れ口と、少なくとも管内を流動するに足るスラッシュ窒素とを有し、流動するスラッシュ窒素中に物体を置いて、物体をスラッシュ窒素と接触冷却可能であることを特徴とする超伝導物体の冷却装置。

【国際公開番号】WO2004/080892
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503459(P2005−503459)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000809
【国際出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)