説明

スラッジ除去方法

【課題】PCB混入絶縁油中の水分を除去する減圧蒸留槽内に析出するスラッジの実用的な除去方法を提供する。
【解決手段】PCB混入絶縁油を被処理油とし、被処理油を金属ナトリウムを用いて無害化するに先立ち行う、被処理油に含まれる水分を除去する減圧蒸留槽内に析出するスラッジの除去方法であって、スラッジは、油酸化変質物を含むPCB混入絶縁油から水分を除去するとき析出する水溶性のスラッジであり、水で該スラッジを溶解除去する。このとき被処理油を洗浄液とし、被処理油に含まれる水を洗浄剤として使用することが可能であり、これにより簡単にスラッジを溶解除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCB混入絶縁油中の水分を除去する減圧蒸留槽内に析出するスラッジの除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、不燃性で化学安定性及び電気絶縁性に優れるため、従来、電気機器の絶縁油などとして使用されていたが、その有害性から現在では使用が禁止され、保管されているPCB及びPCBを含有する廃油などについても、平成13年に制定された「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)」により、平成28年7月までに処理を完了することが義務付けられている。
【0003】
PCBの脱塩素化技術は、これまでに多くの方法が提案されており、幾つかの方法は実用化されている。金属ナトリウムとPCBとを反応させPCBを脱塩素化させる方法は、PCB混入絶縁油の無害化処理に使用され、処理プラントも稼働中である。金属ナトリウムとPCBとを反応させるとPCBが脱塩素化され、ビフェニル、塩化ナトリウム、ビフェニルが重合したビフェニル重合物、水酸化ナトリウムが生成するが、この生成物に関しては幾つかの問題が指摘され、これに対する対策案が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
またPCB混入絶縁油に水あるいは不純物が含まれていると処理設備、処理プロセスに悪影響を及ぼす。例えば、PCB混入絶縁油を抜き出した後に柱上変圧器を破砕しこれを真空加熱し回収される留出液には水溶性の有機酸が含まれ、これが配管を腐食させることがある。これについては本願出願人が有機酸を除去する装置を開発し既に特許出願中である(特願2008−318114)。またPCB汚染物を真空加熱し回収される回収物には、PCBを含む炭化水素系油状物の他、熱分解生成物である木酢液、タール状物質が含まれ、これらがPCBの分解処理に悪影響を及ぼすとし、PCBの分解処理に先立ち、蒸留操作により低沸点熱分解生成物を除去し、さらに吸着剤を使用しタール状物質を吸着除去する技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−319415号公報
【特許文献2】特開2004−174294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
またPCB微量混入絶縁油を抜き出した後に柱上変圧器を破砕しこれを真空加熱し回収される留出液とPCB微量混入絶縁油との混合物を被処理油とする場合、次のような問題が発生する。PCB微量混入絶縁油を金属ナトリウムで無害化する処理プロセスでは、PCBと金属ナトリウムとを反応させるに先立ち、減圧蒸留槽で被処理油中の水分が減圧蒸留により除去される。このとき減圧蒸留槽内にタール状のスラッジが析出し、減圧蒸留槽内に付着又は底部に堆積する。このスラッジは運転を重ねる毎に蓄積し、減圧蒸留槽と反応槽とを結ぶ管路内に設置されているストレーナを閉塞させてしまう。PCB混入絶縁油の無害化処理を安定して行うためには、減圧蒸留槽内に析出するスラッジを除去することが必要である。
【0007】
本発明の目的は、PCB混入絶縁油中の水分を除去する減圧蒸留槽内に析出するスラッジの実用的な除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、減圧蒸留槽内に析出するスラッジは、被処理油に含まれる水溶性の油酸化変質物が水分が除去されることで析出し、この析出した油酸化変質物が時間経過と共に凝集、成長し、スラッジとなって減圧蒸留槽内に析出することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、PCB混入絶縁油を被処理油とし、被処理油を金属ナトリウムを用いて無害化するに先立ち行う、被処理油に含まれる水分を除去する減圧蒸留槽内に析出するスラッジの除去方法であって、スラッジは、油酸化変質物を含むPCB混入絶縁油から水分を除去するとき析出する水溶性のスラッジであり、水で該スラッジを溶解除去することを特徴とするスラッジ除去方法である。
【0010】
また本発明において、水を含む前記被処理油を洗浄液とし、前記減圧蒸留槽に洗浄液を張り込み、該洗浄液に含まれる水で前記スラッジを溶解除去することを特徴とする。
【0011】
また本発明において、前記減圧蒸留槽は、水分が除去された被処理油を金属ナトリウムで無害化する反応槽を備えるPCB混入絶縁油無害化処理装置の減圧蒸留槽であり、スラッジを前記洗浄液に溶解させた後、該洗浄液を減圧蒸留し水分を除去し、水分を除去した洗浄液を直ちに前記反応槽に送り、該洗浄液を金属ナトリウムで無害化することを特徴とする。
【0012】
また本発明において、前記油酸化変質物は、C=O結合及びC−O結合を含むことを特徴とする。
【0013】
また本発明において、前記油酸化変質物は、PCB混入絶縁油を抜き取った後の柱上変圧器を破砕し、該破砕物を真空加熱し回収される紙木類乾留物を含む留出液に含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るスラッジ除去方法は、PCB混入絶縁油を被処理油とし、被処理油を金属ナトリウムを用いて無害化するに先立ち行う、被処理油に含まれる水分を除去する減圧蒸留槽内に析出するスラッジを水で溶解除去する方法であり、簡単に実施することができかつ実用的である。特にスラッジの溶解除去に洗浄液として水を含む被処理油を利用可能であり、さらにスラッジを溶解させた洗浄液から水を減圧蒸留により除去した後、これを直ちに反応槽に送りPCBを無害化させることもできるので、通常の処理プロセスで洗浄液を処理可能であり実用的である。PCB無害化処理において本発明に係るスラッジ除去方法を用い定期的にスラッジ除去を行えば、従来見られたスラッジによるトラブルを回避することが可能であり、PCB混入絶縁油の無害化処理を安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るスラッジ除去方法を適用するPCB混入絶縁油無害化処理装置1のプロセスフロー図である。
【図2】紙木類乾留物を含む絶縁油と紙木類乾留物を含まない絶縁油をフーリエ変換赤外分光法FTIRで分析した結果を示す図である。
【図3】本発明に係るスラッジ除去方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るスラッジ除去方法は、PCB混入絶縁油を被処理油とし、被処理油を金属ナトリウムを用いて無害化するに先立ち行う、被処理油に含まれる水分を除去する減圧蒸留槽内に析出するスラッジの除去方法であって、スラッジは、油酸化変質物を含むPCB混入絶縁油から水分を除去するとき析出する水溶性のスラッジであり、水で該スラッジを溶解除去することを特徴とする。本発明に係るスラッジ除去方法は、図1に示すPCB混入絶縁油無害化処理装置1に適用することができる。
【0017】
まずPCB混入絶縁油無害化処理装置1の処理プロセスと減圧蒸留槽内に析出するスラッジについて説明する。PCB混入絶縁油無害化処理装置1は、SPプロセス(soduim pulverulent dispersion)法を用いてPCB混入絶縁油を無害化する装置であり、金属ナトリウムとPCBとを反応させPCBを脱塩素化する。
【0018】
PCB混入絶縁油無害化処理装置1は、被処理油を貯留する貯留タンク13、被処理油に含まれる水を除去する減圧蒸留槽15、PCBを金属ナトリウムと反応させ脱塩素化する反応槽17、PCBの脱塩素化を確認するための分解確認槽19、処理済油に含まれる残存金属ナトリウムを水和させ、さらに中和する抽出中和槽21、処理済油と水とを分離する油水分離槽23、水を回収する洗浄水再生設備25を備える。
【0019】
被処理油は、柱上変圧器から抜き出されたPCB微量混入絶縁油、又は柱上変圧器から抜き出されたPCB微量混入絶縁油とPCB微量混入絶縁油を抜き出した後の柱上変圧器を破砕しこれを真空加熱し回収される留出液との混合物であり、これらは貯留タンク13に貯留された後、減圧蒸留槽15に送られる。
【0020】
減圧蒸留槽15は、ジャケット付き攪拌槽であり、ジャケットに加熱した熱媒を供給することで被処理油を加熱する。また減圧蒸留槽15は、槽内を減圧し被処理油に含まれる水を蒸発させ凝縮し回収する減圧装置(図示を省略)を備え、貯留タンク13から送られた被処理油は、ここで90℃程度に加熱、0.0142Mpa程度に減圧され、被処理油に含まれる水が除去される。減圧蒸留槽15で水分が除去された被処理油は、送液ポンプ14で反応槽17に送られる。なお、減圧蒸留槽15と反応槽17とを結ぶ管路16の途中には、ストレーナ18が設けられている。
【0021】
反応槽17は、ジャケット付き攪拌槽であり、ここで減圧蒸留槽15で水分が除去された被処理油に金属ナトリウムが添加される。金属ナトリウムは、絶縁油中に金属ナトリウムの微粒子を分散させた金属ナトリウム分散体(SD:soduim dispersion)として反応槽17に添加される。被処理油と金属ナトリウムとは、攪拌されながらジャケットに供給される加熱した熱媒により90℃程度まで加熱され、PCBは金属ナトリウムと反応し脱塩素化し、被処理油は無害化される。なお、金属ナトリウム分散体を添加し所定の時間経過後に、反応促進剤として所定量の水が添加される。反応槽17の気相部には窒素ガスが供給されている。
【0022】
反応槽17でPCBが脱塩素化された被処理油(処理済油)は、分解確認槽19に送られ、サンプリングライン20を介してサンプリングされ、処理済油中のPCB濃度が所定の濃度以下になっているか確認される。ここでPCBが所定濃度以下に達していないことが確認されると、処理済液を反応槽17に返送し再度、PCBの脱塩素化を行う。処理済油は、PCB濃度が所定の濃度以下であることが確認されると冷却され、その後に抽出中和槽21に送られる。
【0023】
分解確認槽19から送られる処理済油は、抽出中和槽21で多量の水と混合され、処理済油中に残存する金属ナトリウムが水和される。さらに金属ナトリウムが水和され生成した水酸化ナトリウムを中和させるための炭酸ガスが吹き込まれ所定のpHに調整された後、油水分離槽23に送られる。
【0024】
油水分離槽23に送られる多量の水を含む処理済油は、油水分離槽23で静置され比重差により油相31と水相33とに分離される。上層の油相31は、処理済油タンク35に送られ貯留される。一方、下層の水相33は、水を回収する洗浄水再生設備25に送られる。
【0025】
洗浄水再生設備25は、乾燥機37を備え、水を蒸発させ回収すると共に水に含まれる塩化ナトリウム等を蒸発乾固させる。油水分離槽23から送られる水は静置分離水受槽39に一度、貯留された後、乾燥機37に送られ加熱される。蒸発した水は、凝縮器41で凝縮し凝縮水槽43に貯留される。この水は抽出中和槽21に送られ、金属ナトリウムを水和させるための水として使用される。一方、水に溶解していた塩化ナトリウム等は乾燥汚泥として回収される。このようにPCB混入絶縁油無害化処理装置1は、水を系外に排出しないクローズドシステムとなっている。
【0026】
PCB微量混入絶縁油を抜き出した後の柱上変圧器を破砕しこれを真空加熱し回収される留出液が含まれるPCB微量混入絶縁油を被処理油とする場合、被処理油には、C=O結合及びC−O結合を含む油酸化変質物が含まれる。C=O結合及びC−O結合を含む油酸化変質物が含まれる理由は、次の通りである。絶縁油を抜き出した後の柱上変圧器には、PCB微量混入絶縁油が付着しているためこれを回収する目的で絶縁油を抜き出した後の柱上変圧器は、破砕機で破砕され真空加熱炉で真空加熱される。このとき柱上変圧器には、紙、木が含まれているため、これら乾留物が留出液に含まれる。図2は、紙木類乾留物を含む絶縁油と紙木類乾留物を含まない絶縁油をフーリエ変換赤外分光法FTIRで分析した結果を示す図である。紙木類乾留物を含む絶縁油にはC=Oのピーク1750cm−1が強く表れている。C=O結合を含む油酸化変質物としては、カルボン酸、エステル、アルデヒド、ケトンがある。
【0027】
PCB微量混入絶縁油を抜き出した後の柱上変圧器を破砕しこれを真空加熱し回収される留出液が含まれるPCB微量混入絶縁油からなる被処理油には、C=O結合及びC−O結合を含む油酸化変質物の他、通常、0.5重量%程度、最大5重量%程度の水が含まれ、水溶性の油酸化変質物は、水に溶解した状態で被処理油中に存在する。このような被処理油を減圧蒸留すると水が除去され、水に溶解していた水溶性の油酸化変質物が析出する。この水溶性の油酸化変質物は、極性を有するため油酸化変質物同士が凝集、成長しスラッジとなる。このスラッジは粘性を有するタール状のスラッジであり、減圧蒸留槽15の壁面に付着、又は底部に堆積する。減圧蒸留槽15の壁面に付着、又は底部に堆積するスラッジは、運転を重なる毎に蓄積し、減圧蒸留槽15と反応槽17を結ぶ管路16の途中に設けられたストレーナ18を閉塞させる。
【0028】
次に上記減圧蒸留槽15内に析出するスラッジの除去方法について説明する。
図3は、スラッジ除去方法の手順を示すフローチャートである。本スラッジ除去方法は、大略的には被処理油に含まれる水を洗浄剤(溶媒)とし、被処理油を洗浄液としスラッジの付着した減圧蒸留槽15に張り込み、スラッジを溶解除去する方法である。
【0029】
まずスラッジが付着又は堆積した減圧蒸留槽15に、洗浄液として貯留タンク13から被処理油を張り込む(ステップS1)。被処理油には通常、0.5重量%程度、最大5重量%程度の水が含まれるため、この被処理油に含まれる水分を利用してスラッジを溶解除去させる。よって被処理油に全く水が含まれていないか、非常に少量の場合には、別途、水を添加する必要がある。スラッジは、減圧蒸留槽15の底部に付着又は堆積するため減圧蒸留槽15への被処理油の張り込み量は、PCBの無害化処理を行うときの張り込み量と同等かそれ以下でよい。
【0030】
次に洗浄液を攪拌しながら50℃程度に加温しスラッジを溶解させる(ステップS2)。これにより減圧蒸留槽15に付着又は堆積するスラッジを溶解除去することができる。後述の実施例では、約24時間溶解(洗浄)操作を行ったが、これは反応槽17の洗浄と合わせて行ったためであり、減圧蒸留槽15を単独で洗浄するときは、洗浄時間は短縮可能である。スラッジの堆積状態に応じて、溶解(洗浄)時間を適宜設定可能なことは言うまでもない。また後述の実施例ではPCB混入絶縁油無害化処理装置1のシステム上、減圧蒸留槽15を減圧状態とし洗浄を行ったが、大気圧下で洗浄可能なことは言うまでもない。
【0031】
減圧蒸留槽15からスラッジが溶解した洗浄液を抜き出せば、減圧蒸留槽15のスラッジ除去は終了する。ここではさらにスラッジが溶解した洗浄液の処理要領を示す。大略的には、減圧蒸留槽15内のスラッジが溶解した洗浄液を、通常の被処理油を無害化するときと同様の手順で処理する。減圧蒸留槽15内のスラッジが溶解した洗浄液を攪拌しながら90℃程度まで加温し、減圧蒸留槽15を減圧し、水分を除去する(ステップS3)。この要領は、通常の被処理油を無害化するときの要領と変わるところはない。次に水分を除去した洗浄液を直ちに反応槽17に移送し(ステップS4)、通常の被処理油を無害化するときと同じ要領で金属ナトリウムを用いて無害化する(ステップS5)。ここで重要なことは、減圧蒸留槽15を減圧し、洗浄液から水分を除去したら、できるだけ短時間のうちに洗浄液を反応槽17に移送することである。
【0032】
スラッジが溶解した洗浄液では、スラッジは洗浄液に含まれる水に溶解している。この状態から水を除去すると、水に溶解している水溶性の油酸化変質物が析出する。この状態で長時間経過すると、析出した油酸化変質物が凝集、成長しスラッジとなるため、析出した油酸化変質物が凝集、成長しスラッジとなる前に反応槽17に移送する。洗浄液から水を除去することで水に溶解している水溶性の油酸化変質物が析出しても、この油酸化変質物が凝集、成長しスラッジとなる前に反応槽17に移送すれば、減圧蒸留槽15に付着、堆積することはない。
【0033】
反応槽17に送られた油酸化変質物は、金属ナトリウムと反応するので反応槽17でスラッジとして析出することはない。油酸化変質物を含むPCB微量混入絶縁油と金属ナトリウム、反応促進剤である水との代表的な反応は、次式で示される。
【化1】

【0034】
反応槽17で処理した洗浄液は、通常の被処理油の無害化処理と同様の手順で後処理する(ステップS6)。
【0035】
上記実施形態で示すスラッジの除去方法は、被処理油である水を含むPCB混入絶縁油を洗浄液として使用するので、洗浄後の洗浄液を通常の被処理油の処理と同じ要領で処理することができ、減圧蒸留槽に付着又は析出するスラッジを簡単に除去することができる。なお、スラッジの除去は、水を洗浄剤(溶媒)とし水に溶解させることで除去するものであるから、被処理油に代え、水のみを減圧蒸留槽15に投入しスラッジを溶解除去してもよい。さらに洗浄後の洗浄液は、場合によっては、貯留タンク13に戻してもよい。水に溶解したスラッジは、スラッジとなって析出することはない。但し、後処理等を考えれば、被処理油である水を含むPCB混入絶縁油を洗浄液として使用し、洗浄後の洗浄液を通常の被処理油の処理と同じ要領で処理することが好ましい。また送液ポンプ16の吐出側と減圧蒸留槽15とを結ぶ返送ラインを設ければ、減圧蒸留槽15の洗浄と併せて、ストレーナ18の洗浄も行うことができる。
【実施例】
【0036】
図1に示すPCB混入絶縁油無害化処理装置1の減圧蒸留槽15に付着、堆積したスラッジを次の要領で洗浄した。
PCB微量混入絶縁油を抜き出した後の柱上変圧器を破砕しこれを真空加熱し回収された留出液が含まれるPCB微量混入絶縁油を被処理油とし、PCB混入絶縁油無害化処理装置1を約2月間運転した後の減圧蒸留槽15を対象とした。減圧蒸留槽15の内部を覗き窓から観察すると、減圧蒸留槽15の底部に黒褐色のスラッジが付着していた。
【0037】
この減圧蒸留槽15(内容積約3000L)に、貯留タンク13から被処理済油1500Lを送り込んだ。被処理油は、PCB微量混入絶縁油を抜き出した後の柱上変圧器を破砕しこれを真空加熱し回収される留出液が含まれるPCB微量混入絶縁油であり水が含まれている。被処理油を攪拌しながら50℃まで加温し、約24時間この状態を保持した。このとき減圧蒸留槽15内を減圧状態としたが、水は蒸発させなかった。その後、攪拌しながら90℃まで加温し、水を蒸発、除去した。
【0038】
その後、直ちにこの被処理油を反応槽17に送った。被処理油を抜き出した後の減圧蒸留槽15内を視認した結果、内部は非常にきれいであり、スラッジは完全に除去されていた。反応槽17に送った被処理油は、金属ナトリウムを加え、通常の被処理油と同様の操作でPCBを無害化させた。その後も、通常の被処理油と同様の操作で処理した。
【符号の説明】
【0039】
1 PCB混入絶縁油無害化処理装置
13 貯留タンク
14 送液ポンプ
15 減圧蒸留槽
16 管路
17 反応槽
18 ストレーナ
19 分解確認槽
20 サンプリングライン
21 抽出中和槽
23 油水分離槽
25 洗浄水再生設備
27 攪拌翼
29 攪拌軸
31 油相
33 水相
35 処理済油タンク
37 乾燥機
39 静置分離水受槽
41 凝縮器
43 凝縮水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCB混入絶縁油を被処理油とし、被処理油を金属ナトリウムを用いて無害化するに先立ち行う、被処理油に含まれる水分を除去する減圧蒸留槽内に析出するスラッジの除去方法であって、
スラッジは、油酸化変質物を含むPCB混入絶縁油から水分を除去するとき析出する水溶性のスラッジであり、水で該スラッジを溶解除去することを特徴とするスラッジ除去方法。
【請求項2】
水を含む前記被処理油を洗浄液とし、前記減圧蒸留槽に洗浄液を張り込み、該洗浄液に含まれる水で前記スラッジを溶解除去することを特徴とする請求項1に記載のスラッジ除去方法。
【請求項3】
前記減圧蒸留槽は、水分が除去された被処理油を金属ナトリウムで無害化する反応槽を備えるPCB混入絶縁油無害化処理装置の減圧蒸留槽であり、
スラッジを前記洗浄液に溶解させた後、該洗浄液を減圧蒸留し水分を除去し、水分を除去した洗浄液を直ちに前記反応槽に送り、該洗浄液を金属ナトリウムで無害化することを特徴とする請求項2に記載のスラッジ除去方法。
【請求項4】
前記油酸化変質物は、C=O結合及びC−O結合を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載のスラッジ除去方法。
【請求項5】
前記油酸化変質物は、PCB混入絶縁油を抜き取った後の柱上変圧器を破砕し、該破砕物を真空加熱し回収される紙木類乾留物を含む留出液に含まれることを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載のスラッジ除去方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−255011(P2011−255011A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132512(P2010−132512)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】