説明

スラットコンベヤ

【課題】物品の乗り移りに際して、物品が上下動しないスラットコンベヤを提供する。
【解決手段】左右一対の無端状のチェーン体9,9間に所定ピッチ置きで且つ搬送方向と直交する方向で配置されて物品Wの搬送経路を形成する複数のスラット体10とを有し、各スラット体を、その断面において、物品を載置し得る水平載置部31と、この水平載置部の搬送方向における前後側縁からそれぞれ下方に垂下される垂下側縁部32とを有する形状となし、スラット体がスプロケット8の回転により復路側から往路側に移動する際に、チェーン体に支持されたスラット体における水平載置部から垂下側縁部への接続部分Cが、スプロケットの回転軸心Dから水平載置部の載置面の延長線と垂下側縁部の外端面との交点Pまでの距離Rを半径とする円弧軌跡Mよりも内側に位置するように、当該接続部分を傾斜部36にしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば仕分け設備に設けられるスラットコンベヤに関し、特にスラット体の断面形状に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物品を所定の搬送経路に沿って搬送するとともに、その途中で、搬送経路とは異なる分岐経路に分岐し得る搬送コンベヤを有する仕分け設備があり、またこの搬送コンベヤとして、スラットコンベヤが用いられるとともに、各スラット体には、搬送経路と直交する横方向でスライド自在な物品の横押し体(シューともいう)がそれぞれ設けられて、その下面に設けられたガイドローラを介して当該横押し体がスライドされて物品が仕分けられていた。
【0003】
ところで、図9に示すように、この種のスラット体51の断面形状においては、物品を載置する水平載置部52と、この水平載置部52の両側縁から下方に且つ内側に少し傾斜された垂下側縁部53と、その中間部から垂下された脚板部54とが設けられていた。
【0004】
そして、特に、水平載置部52と垂下側縁部53との交差角は、90度に近い鋭角にされており、またそのコーナ部についても、極力、尖り状にされていた(例えば、特許文献1参照)。言い換えれば、水平載置部52における物品の載置面52aと、垂下側縁部53における外側面(外端面)53aとの交差角は鋭角となるようにされていた。
【特許文献1】特開平11−157643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したスラットコンベヤの構成によると、図10に示すように、チェーン体61により連結されたスラット体51が復路側から往路側に移動する部分では、スプロケット62の回転により、スラット体51が円弧の軌跡を描いて移動することになるが、このとき、その断面形状における水平載置部52と垂下側縁部53とのコーナ部分の前端部および後端部、すなわち尖端部が、物品を搬送する搬送面Sから上方に突出することになる。
【0006】
このため、スプロケット62に対向して配置された物品ガイド体63から搬送面Sに送り込まれる物品Wが上下動することになり、スラット体51への物品Wの乗り移りがスムースに行われない惧れがあった。
【0007】
そこで、本発明は、物品の乗り移りに際して、物品が上下動しないスラットコンベヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係るスラットコンベヤは、フレーム体の前後端部の左右にそれぞれ設けられた前後のスプロケット同士に巻回された左右一対の無端状のチェーン体と、これら両チェーン体同士間に、所定ピッチ置きで且つ搬送方向と直交する方向で配置されて物品の搬送経路を形成する複数のスラット体とを有するスラットコンベヤであって、
上記各スラット体を、その断面において、少なくとも、物品を載置し得る水平載置部と、この水平載置部の搬送方向における前後側縁からそれぞれ下方に垂下される垂下側縁部とを有する形状となし、
且つこの水平載置部と垂下側縁部との接続部分を、外側にいくに従って下位となるような傾斜部または円弧状部に形成したものである。
【0009】
また、請求項2に係るスラットコンベヤは、フレーム体の前後端部の左右にそれぞれ設けられた前後のスプロケット同士に巻回された左右一対の無端状のチェーン体と、これら両チェーン体同士間に、所定ピッチ置きで且つ搬送方向と直交する方向で配置されて物品の搬送経路を形成する複数のスラット体とを有するスラットコンベヤであって、
上記各スラット体を、その断面において、少なくとも、物品を載置し得る水平載置部と、この水平載置部の搬送方向における前後側縁からそれぞれ下方に垂下される垂下側縁部とを有する形状となし、
且つ上記スラット体がスプロケットの回転により復路側から往路側に移動する際に、チェーン体に支持されたスラット体における水平載置部から垂下側縁部への接続部分が、スプロケットの回転軸心から水平載置部の載置面の延長線と垂下側縁部の外端面との交点までの距離を半径とする円弧軌跡よりも内側に位置するように、当該接続部分を傾斜または円弧状に形成したものである。
【0010】
さらに、請求項3に係るスラットコンベヤは、請求項1または2に記載のスラットコンベヤにおける各スラット体に、搬送方向と直交する方向で移動自在に案内されて物品に横方向の力を付与し得る横押し体を具備したものである。
【発明の効果】
【0011】
上記スラットコンベヤの構成によると、スラット体の垂下側縁部の外周面を、スプロケットの回転軸心を中心とした水平載置部の載置面の延長線と垂下側縁部の外端面との交点までの距離を半径とする円弧軌跡よりも内側に位置するようにしたので、スラット体は、その搬送面よりも上方に突出することがなくなり、したがって搬送面上に送り込まれる物品はスラット体に乗り上げることがないので、物品をスラット体上にスムースに乗り移らせることができる。すなわち、衝撃に弱い物品であっても、ダメージが生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係るスラットコンベヤを、図1〜図8に基づき説明する。
なお、本実施の形態においては、物品の仕分け設備に設けられるスラットコンベヤとして説明する。
【0013】
このスラットコンベヤは、図1および図2に示すように、左右の側板1と前後の連結板2とにより直方体形状に形成されたフレーム体3と、このフレーム体3の前端部(搬送方向の下手側である)に配置された駆動軸4および後端部(搬送方向の上手側である)に配置された従動軸5と、同じく、フレーム体3側に設けられて駆動軸4を回転させる駆動装置(例えば電動機)6と、上記駆動軸4の左右の両端部に設けられた一対の駆動側スプロケット7と、上記従動軸5の左右の両端部に設けられた一対の従動側スプロケット8と、左右位置における駆動側スプロケット7と従動側スプロケット8とに亘って無端状に巻回された左右一対の駆動用チェーン体9と、これら左右のチェーン体9,9同士間にその搬送方向Aと直交する幅方向(横方向ともいう)Bで且つ所定ピッチでもって多数取り付けられた棒状のスラット体10と、これら各スラット体10にその軸心方向(コンベヤの幅方向)でスライド自在(移動自在)に設けられた物品Wの横押し体(シューともいう)11とから構成されている。なお、上記各スラット体10は、当然に、チェーン体9に沿ってすなわち無端状に連結されて、これらスラット体10により物品の搬送経路(搬送方向と同じAで示す)が構成されている。
【0014】
ここで、スラット体10を搬送経路Aに沿って案内する案内機構を概略的に説明しておく。
すなわち、図3〜図6に示すように、スラット体10の両端部には、サイドブラケット13が補強板14および取付ねじ15を介して取り付けられるとともに、このサイドブラケット13の前後部はチェーン体9側のリンク9a,9a同士の連結ピン12に支持されている。なお、1つのサイドブラケット13は、前後一対のリンク9a,9aに連結されている。すなわち、サイドブラケット13の前端側は前方のリンク9aの前側の連結ピン12に支持されるとともにサイドブラケット13の後端側は後方のリンク9aの後側の連結ピン12に支持されている。
【0015】
また、スラット体10は、搬送経路Aに沿う方向で無端状に連結されるとともに、搬送を行う往路側の上部位置を案内する上部ガイド体16と、復路側の下部位置を案内する下部ガイド体17とがそれぞれフレーム体3に設けられている。
【0016】
上記上部ガイド体16は、フレーム体3の側板1にボルト18により固定された支持部材19と、この支持部材19にボルト20および取付部材21を介して取り付けられてチェーン体9の下面を案内し得るガイドレール22とから構成されており、また下部ガイド体17は、同じく、フレーム体3の側板1にボルト18により固定された支持部材19と、この支持部材19にボルト20′を介して取り付けられてチェーン体9の下面を案内し得るガイドレール22′とから構成されている。なお、チェーン体9の上面を下方に案内するためのチェーン用の押さえ体23が設けられており、この押さえ体23も、側板1にボルト24により固定された支持部材25,25′と、この支持部材25,25′にボルト26を介して取り付けられてチェーン体9の上面に当接して上方への跳ね上がりを防止するための押さえレール27とから構成されている。
【0017】
次に、本発明の要旨であるスラット体10の断面形状について説明する。
このスラット体10は、図6および図7に示すように、その断面形状において、中央部が物品を載置し得る平面にされた水平載置部31にされるとともにその前縁側および後縁側が下方に且つ外側に膨出するように湾曲された垂下側縁部32にされており、このスラット体10の水平載置部31の裏面側には、横押し体11のガイド部分(後述する被ガイド部に相当する)を配置するための案内空間部33が形成されている。また、上記垂下側縁部32については、中央に空洞部34が形成されるとともに、その内側壁部が脚部35にされている。この脚部35にはねじ穴35aが形成されており、サイドブラケット13を取り付けるための取付ねじ15がこのねじ穴35aに螺合される。なお、垂下側縁部32の空洞部34の下部(図7の斜線で示す)を切り欠いて開放させてもよい。
【0018】
さらに、図7および図8に示すように、上記スラット体10がスプロケット7,8の回転により復路側から往路側に移動する際に、サイドブラケット13を介してチェーン体9に支持されたスラット体10における水平載置部31と垂下側縁部32との接続部分Cが、スラット体10の物品Wの搬送姿勢(往路側での姿勢、例えば水平姿勢である)におけるスプロケット軸心Dから水平載置部31の載置面31aの延長線と垂下側縁部32の外端面(垂下側縁部の最外端部における載置面と直交する平面であり、載置面に対する垂下面ともいえる)との交点Pまでの距離Rを半径とする円弧軌跡Mよりも内側に位置するように、当該接続部分Cは外側に行くにしたがって下位となるように傾斜されている。すなわち、傾斜部36が設けられている。
【0019】
なお、横押し体11は、図4〜図6に示すように、スラット体10に案内される本体部41と物品を案内するガイド部42とから構成されている。上記本体部41は、上記スラット体10に外嵌し得る形状にされるとともに中央にその案内空間部33に挿入し得る被ガイド部43が形成されており、またこの被ガイド部43の下面には、フレーム体3側に設けられたガイドレール44に案内されて当該横押し体11をその幅方向で移動させるためのガイドローラ45が設けられている。また、上記ガイド部42は本体部41にねじ部材46により固定されるとともに、例えば搬送方向Aに対して所定角度θ例えば45度でもって傾斜されて物品Wを搬送方向Aと直交する幅方向Bに移動させ得るガイド面42aが形成されている。
【0020】
上記スラットコンベヤにおいて、スプロケット7,8の回転により、チェーン体9を介してスラット体10が搬送方向Aで移動されている状態において、その後端側(搬送方向上手側)に配置された物品ガイド体47を介して物品Wが搬送経路A上に送り込まれる(案内される)とともに、所定位置で横押し体11により、物品Wが分岐コンベヤ48上に分岐されて仕分けが行われる。
【0021】
ところで、従動側スプロケット8により、スラット体10が下方から上方に移動されるが、このとき、スラット体10の垂下側縁部32と水平載置部31との接続部分Cが傾斜部36にされており、すなわちこの傾斜部36は水平載置部31の載置面31aの延長線と垂下側縁部32の外端面(具体的に説明すれば、外端部分に接するとともに載置面に直交する仮想平面であり、載置面に対しては垂下面ということもできる)との交点Pが描く円弧軌跡Mよりも内側に位置されているため、スラット体10はその搬送姿勢における載置面31aである搬送面よりも上方に突出することはなく、したがって物品ガイド体47から送り込まれる物品Wは、スラット体10に乗り上げるようなことがないので、物品Wをスラット体10上にスムースに乗り移らせることができる。すなわち、たとえ物品が衝撃に弱いものであっても、ダメージの発生を防止し得る。
【0022】
ところで、上記実施の形態においては、スラット体10の水平載置部31と垂下側縁部32との接続部分Cを傾斜部36としたが、例えば水平載置部31の載置面31aの延長線と垂下側縁部32の外端面との交点Pが描く円弧軌跡Mよりも内側に位置する円弧状に形成した円弧状部であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係るスラットコンベヤの概略平面図である。
【図2】同スラットコンベヤの概略側面図である。
【図3】同スラットコンベヤの概略断面図である。
【図4】同スラットコンベヤの要部断面図である。
【図5】同スラットコンベヤの要部平面図である。
【図6】図3のE−E断面図である。
【図7】同スラットコンベヤにおけるスラット体の断面図である。
【図8】同スラットコンベヤにおける作用を説明する要部側面図である。
【図9】従来例に係るスラットコンベヤの断面図である。
【図10】従来例に係るスラットコンベヤの作用を説明する要部側面図である。
【符号の説明】
【0024】
A 搬送方向,搬送経路
B 幅方向
3 フレーム体
7 駆動側スプロケット
8 従動側スプロケット
9 チェーン体
10 スラット体
11 横押し体
13 サイドブラケット
31 水平載置部
31a 載置面
32 垂下側縁部
36 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム体の前後端部の左右にそれぞれ設けられた前後のスプロケット同士に巻回された左右一対の無端状のチェーン体と、これら両チェーン体同士間に、所定ピッチ置きで且つ搬送方向と直交する方向で配置されて物品の搬送経路を形成する複数のスラット体とを有するスラットコンベヤであって、
上記各スラット体を、その断面において、少なくとも、物品を載置し得る水平載置部と、この水平載置部の搬送方向における前後側縁からそれぞれ下方に垂下される垂下側縁部とを有する形状となし、
且つこの水平載置部と垂下側縁部との接続部分を、外側にいくに従って下位となるような傾斜部または円弧状部に形成したことを特徴とするスラットコンベヤ。
【請求項2】
フレーム体の前後端部の左右にそれぞれ設けられた前後のスプロケット同士に巻回された左右一対の無端状のチェーン体と、これら両チェーン体同士間に、所定ピッチ置きで且つ搬送方向と直交する方向で配置されて物品の搬送経路を形成する複数のスラット体とを有するスラットコンベヤであって、
上記各スラット体を、その断面において、少なくとも、物品を載置し得る水平載置部と、この水平載置部の搬送方向における前後側縁からそれぞれ下方に垂下される垂下側縁部とを有する形状となし、
且つ上記スラット体がスプロケットの回転により復路側から往路側に移動する際に、チェーン体に支持されたスラット体における水平載置部から垂下側縁部への接続部分が、スプロケットの回転軸心から水平載置部の載置面の延長線と垂下側縁部の外端面との交点までの距離を半径とする円弧軌跡よりも内側に位置するように、当該接続部分を傾斜または円弧状に形成したことを特徴とするスラットコンベヤ。
【請求項3】
各スラット体に、搬送方向と直交する方向で移動自在に案内されて物品に横方向の力を付与し得る横押し体を具備したことを特徴とする請求項1または2に記載のスラットコンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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