説明

スラットコンベヤ

【課題】ピットを設けなくとも低床構造に構成することが出来るスラットコンベヤを提案する。
【解決手段】無端状経路の左右両外側には駆動チエン8とスラット板姿勢規制用ガイド手段12が設けられ、各スラット板5は、左右一対の駆動チエン8及び左右一対のスラット板姿勢規制用ガイド手段12の間に配置されると共に、その左右両側辺の移動方向の中間位置がその外側に位置する駆動チエン8に互いに同心状の支軸15によりシーソー運動自在に軸支され、各スラット板5の左右両側辺には、スラット板姿勢規制用ガイド手段12と係合するガイドローラー16,17が軸支され、スラット板姿勢規制用ガイド手段12は、上側搬送経路部1と下側戻り経路部2を移動する各スラット板5を正立姿勢に規制する主ガイドレール部18と、両端Uターン経路部3,4を移動する各スラット板5を正立姿勢のまま平行移動させるターン用ガイドレール部19とを備えた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上側搬送経路部と下側戻り経路部及び当該上下両経路部を接続する両端Uターン経路部によって構成された無端状経路を無端状に連結された多数のスラット板が循環移動するように構成したスラットコンベヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のようなスラットコンベヤは、例えば特許文献1に記載されるように、上側搬送経路部と下側戻り経路部の一方から他方へ移動するスラット板は、両端Uターン経路部の周囲を回動して上下反転するように構成されるものである。このようなスラットコンベヤでは、スラット板のサイズにもよるが、例えば自動車組立てラインに利用されるような大型のスラットコンベヤでは、両端Uターン経路部全体の高さが非常に高くなり、平坦な床面上に設置したのでは、上側搬送経路部の床面上高さが非常に高くなって、架台を含む設備全体のコストが非常に高くつくばかりでなく、安全性の面でも問題がある。勿論、嵩高くなる両端Uターン経路部の下半部が床面に形成したピット内に収容されるように構成することにより上側搬送経路部の床面上高さを下げる工夫も実践されているが、ピットの形成に多大のコストが掛かり、レイアウトの変更も容易でなくなる。
【0003】
一方、特許文献2に記載されるチエンコンベヤのように、スラットコンベヤのスラット板を大型化したような被搬送物支持台を、側搬送経路部と下側戻り経路部及び当該上下両経路部を接続する両端Uターン経路部によって構成された無端状経路において、正立姿勢のまま平行移動させるように構成したコンベヤが知られている。この特許文献2に記載されるチエンコンベヤの構成をスラットコンベヤに採り入れて、無端状経路の両端Uターン経路部において各スラット板が正立姿勢を保って平行移動するように構成することにより、大型のスラット板を使用するスラットコンベヤであっても、両端Uターン経路部の高さを低くすることが可能になり、従来のスラットコンベヤの問題点を解決出来ると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−192115号公報
【特許文献2】米国特許第4067437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献2に記載される構成では、左右一対の駆動チエンと被搬送物支持台(スラット板)との連結位置を移動方向前後にずらして、無端状経路の両端Uターン経路部において被搬送物支持台の前後二か所を左右の駆動チエンで各別に駆動して平行移動させるのであるから、左右一対の駆動チエンを左右対称に並設出来る従来のスラットコンベヤと比較して駆動系の設置が容易でなくなり、コストアップの原因になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできるスラットコンベヤを提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係るスラットコンベヤは、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、上側搬送経路部(1)と下側戻り経路部(2)及び当該上下両経路部(1,2)を接続する両端Uターン経路部(3,4)によって構成された無端状経路を無端状に連結された多数のスラット板(5)が循環移動するように構成したスラットコンベヤにおいて、前記無端状経路の左右両外側には、当該無端状経路に沿って回動する駆動チエン(8,9)とスラット板姿勢規制用ガイド手段(12)が設けられ、各スラット板(5)は、左右一対の前記駆動チエン(8,9)及び左右一対の前記スラット板姿勢規制用ガイド手段(12)の間に配置されると共に、その左右両側辺の移動方向の中間位置がその外側に位置する前記駆動チエン(8,9)に互いに同心状の支軸(15)によりシーソー運動自在に軸支され、各スラット板(5)の左右両側辺には、左右一対の前記スラット板姿勢規制用ガイド手段(12)と係合するガイドローラー(16,17)が軸支され、左右一対の前記スラット板姿勢規制用ガイド手段(12)は、上側搬送経路部(1)と下側戻り経路部(2)を移動する各スラット板(5)を正立姿勢に規制する主ガイドレール部(18)と、両端Uターン経路部(3,4)を移動する各スラット板(5)を正立姿勢のまま平行移動させるターン用ガイドレール部(19)とを備えた構成になっている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の本発明の構成によれば、各スラット板を正立姿勢のまま両端Uターン経路部の中心の周りで平行移動させるものであるから、大型サイズのスラット板であっても、両端Uターン経路部の高さを低くすることが出来、床面にピットを形成しなくとも低床構造のスラットコンベヤを構成することが出来る。しかも、各スラット板の左右両側辺を各別に駆動する左右一対の駆動チエンと左右一対のスラット板姿勢規制用ガイド手段とは、夫々前後方向に位置をずらすことなく左右対称に設けることが出来るので、左右非対称に設けなければならない場合と比較して容易且つ安価に実施することが出来る。
【0008】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、各スラット板両側辺の前記ガイドローラー(16,17)は、各スラット板両側辺の前記支軸(15)に対して移動方向の前後両側に軸支し、前記スラット板姿勢規制用ガイド手段(12)の主ガイドレール部(18)は、前後両側の前記ガイドローラー(16,17)の下側にのみ架設されたレール部材(18a,18b)で構成し、前記スラット板姿勢規制用ガイド手段(12)のターン用ガイドレール部(19)は、前後両側の前記ガイドローラー(16,17)の内、Uターン経路部(3,4)での前記支軸(15)の回動経路の外側に位置するガイドローラー(16/17)を内外両側から挟む内外一対の湾曲レール部材(19a,19b)から構成することが出来る。この構成によれば、前記ガイドローラーを各スラット板両側辺の前記支軸に対して移動方向の前後何れか片側にのみ軸支する場合よりも、無端状経路の上側搬送経路部と下側戻り経路部に架設されるスラット板姿勢規制用ガイド手段の主ガイドレール部の構成が簡単になると共に、両端Uターン経路部に架設されるターン用ガイドレール部を、スラット板と駆動チエンとの連結支軸の回動経路と干渉の恐れがない外側に架設することが出来るので、実施が容易である。
【0009】
又、請求項3に記載のように、前記両端Uターン経路部(3,4)において左右一対の前記駆動チエン(8,9)を掛張する歯輪(10a〜11b)は、この両端Uターン経路部(3,4)を正立姿勢のまま平行移動する各スラット板(5)の回動軌跡と前記歯輪(10a〜11b)の軸心位置とが側面視で重なるほどの小径のものとして、超低床構造のスラットコンベヤを構成することが出来る。この場合、両端Uターン経路部(3,4)において前記駆動チエン(8,9)を掛張する左右一対の歯輪(10a,10b/11a,11b)をモーター駆動する場合、当該左右一対の歯輪(10a,10b/11a,11b)を同心状の伝動軸で直接連動連結することが出来ないので、スラット板(5)の回動軌跡を避けた位置に伝動軸を配置し、この伝動軸と両歯輪(10a,10b/11a,11b)とを夫々連動連結しなければならず、両歯輪間の伝動手段の構成が複雑になる。しかしながら、請求項4に記載のように、左右一対の前記駆動チエン(8,9)を、前記上側搬送経路部(1)と下側戻り経路部(2)の内、少なくとも一方の長さ方向の中間位置に設けられた駆動用歯輪(28)に係合させるように構成すれば、各駆動チエン(8,9)の駆動用歯輪(28)を前記上側搬送経路部(1)と下側戻り経路部(2)の間の空間を横断する伝動軸(36)で直接連動連結させることが出来、上記のような問題点を解消できる。換言すれば、超低床構造のスラットコンベヤを安価に実施することが出来る。
【0010】
スラットコンベヤは、その上側搬送経路部のみが被搬送物の搬送に使用されるものであって、自動車組立てラインでは、被搬送物としての自動車を自走により、スラットコンベヤ上に進入させると共にスラットコンベヤ上から退出させる場合がある。このようにスラットコンベヤの上側搬送経路部の両端部において自動車などの移動可能な被搬送物を乗り降りさせる場合には、請求項5に記載のように、上側搬送経路部(1)の端部(被搬送物の乗り降りが行われる両端又は一端)に、前記スラット板姿勢規制用ガイド手段(12)の主ガイドレール部(18)にスラット板(5)側のガイドローラー(16,17)が完全に支持されていない状態のスラット板(5)の上を覆うように、当該上側搬送経路部(1)との間で被搬送物が乗り移り可能な固定床板(6/7)を架設しておくのが望ましい。この構成によれば、前記スラット板姿勢規制用ガイド手段の主ガイドレール部にスラット板側のガイドローラーが完全に支持されていない不安定な状態のスラット板の上を被搬送物が乗り移りすることに起因する危険を未然に回避出来る。
【0011】
上記請求項5に記載の構成を採用する場合、請求項6に記載のように、前記固定床板(6/7)で覆われる上側搬送経路部(1)の端部は、Uターン経路部(3,4)側ほど下がるように傾斜させ、前記固定床板(6/7)は、ほぼ水平に架設するのが望ましい。この構成によれば、上側搬送経路部と固定床板とをほぼ水平に連続させることが出来、被搬送物の乗り移りを安全且つ容易に行わせることが出来る。
【0012】
更に、本発明のスラットコンベヤでは、スラット板は無端状経路の全域において正立姿勢を保って移動するのであるから、請求項7に記載のように、前記スラット板に、前記上側搬送経路部(1)で搬送される被搬送物を支持する被搬送物支持具(33a〜33d)が起伏自在に取り付けられた荷支持用スラット板(5a,5b)を設け、この荷支持用スラット板(5a,5b)が前記下側戻り経路部(2)を正立姿勢で移動するとき、倒伏姿勢に切り換えられた前記被搬送物支持具(33a〜33d)が当該荷支持用スラット板(5a,5b)の上に支持されるように構成することが出来る。換言すれば、上側搬送経路部と下側戻り経路部との間に起立姿勢の被搬送物支持具が移動する空間を確保する必要がなく、コンベヤ全体の機高を低くすることが出来、しかも下側戻り経路部を移動するスラット板に対して被搬送物支持具を倒伏姿勢に保持させる特別な手段も不要であり、安価に実施することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1Aは、本発明の第1実施例にかかるスラットコンベヤ全体の一部切欠き概略側面図、図1Bは、同スラットコンベヤ両端部分を示す拡大概略側面図である。
【図2】図2は、同スラットコンベヤ全体の一部切欠き平面図である。
【図3】図3は、同スラットコンベヤの一部切欠き縦断正面図である。
【図4】図4は、図3の一部分の拡大図である。
【図5】図5は、同スラットコンベヤの駆動用歯輪の位置での一部切欠き縦断正面図である。
【図6】図6は、図5の一部分の拡大図である。
【図7】図7Aは、同スラットコンベヤ一端部のスラット板姿勢規制用ガイド手段と1つのスラット板を示す側面図、図7Bは、同スラットコンベヤ一端部の駆動チエンとその駆動部を示す一部縦断側面図である。
【図8】図8は、同スラットコンベヤ一端部の片側を示す一部切欠き平面図である。
【図9】図9は、同スラットコンベヤの両端部の変形例を示す概略側面図である。
【図10】図10は、別の実施例にかかるスラットコンベヤの要部を示す概略側面図である。
【図11】図11は、図10の平面図である。
【図12】図12は、図10の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のスラットコンベヤの第1実施例を図1〜図8に基づいて説明すると、このスラットコンベヤは、互いに平行で水平の上側搬送経路部1と下側戻り経路部2、及び両端のUターン経路部3,4から成る無端状経路を、互いに隣接する多数のスラット板5が回動するものであって、上側搬送経路部1の始端部上には、この上側搬送経路部1上に被搬送物である自動車Wが自走により進入するための進入路面を形成する進入側固定床板6が架設され、上側搬送経路部1の終端部上には、この上側搬送経路部1上から自動車Wが自走により退出するための退出路面を形成する退出側固定床板7が架設されている。進入側固定床板6は、上側搬送経路部1側の後半部が下り勾配に傾斜し、退出側固定床板7は、上側搬送経路部1側の前半部が上り勾配に傾斜している。
【0015】
上側搬送経路部1、下側戻り経路部2、及び両端のUターン経路部3,4から成る無端状経路の左右両側には、当該無端状経路に沿ってスラット板5を互いに連結回動させるための駆動チエン8,9が、両端のUターン経路部3,4の左右両側に互いに同心状に軸支された案内歯輪10a,10b及び11a,11b間に、左右対称に掛張されている。そして前記無端状経路の左右両側には、スラット板5の姿勢を常に水平の正立姿勢に保持するためのスラット板姿勢規制用ガイド手段12と、駆動チエン8,9を駆動する二組の駆動手段13,14が配設されている。
【0016】
各スラット板5は、平面形状が無端状経路の巾方向に細長い矩形状で、側面形状が上広がりの逆台形状のものであって、その無端状経路の巾方向の両逆台形端部には、駆動チエン8,9との連結用支軸15と前後一対のガイドローラー16,17が取り付けられている。左右一対の連結用支軸15は、スラット板5の逆台形端部の移動方向長さの中央位置で厚さ方向の中間高さにおいて互いに同心状に突設され、前後一対のガイドローラー16,17は、スラット板5の逆台形端部の移動方向長さの前後両端位置で前記連結用支軸15と同一高さにおいて、連結用支軸15に対して前後対称に、そしてスラット板5の左右両側で左右対を成すガイドローラー16,16及び17,17が互いに同心状に位置するように軸支されている。而して各スラット板5は、両端の連結用支軸15により左右一対の駆動チエン8,9に等間隔おきに連結され、左右一対の駆動チエン8,9間で前記連結用支軸15を支点にシーソー運動自在に支持され、各ガイドローラー16,17は、平面視において、スラット板5の両端とその外側の駆動チエン8,9との間に位置するように構成されている。尚、各スラット板5の連結用支軸15は、駆動チエン8,9のチエンリンク連結用支軸を兼用させることが出来る。
【0017】
スラット板姿勢規制用ガイド手段12は、上側搬送経路部1と下側戻り経路部2を移動する各スラット板5を正立姿勢に規制する主ガイドレール部18と、両端Uターン経路部3,4を回動する各スラット板5を正立姿勢のまま平行移動させるターン用ガイドレール部19とを備えている。主ガイドレール部18は、上側搬送経路部1と下側戻り経路部2を移動する各スラット板5の前後一対のガイドローラー16,17を介して当該各スラット板5を水平に移動自在に支持する直線状水平レール部材18a,18bから構成され、ターン用ガイドレール部19は、両端Uターン経路部3,4の中心(各案内歯輪10a〜11bの軸心)に対して外側(上下両経路部1,2のある側とは反対側)を回動するガイドローラー、即ち、始端側のUターン経路部3ではガイドローラー16、終端側のUターン経路部4ではガイドローラー17、を内外両側から挟むように配設された内外一対の半円弧形の湾曲レール部材19a,19bから構成されている。
【0018】
内外一対の湾曲レール部材19a,19bの内、外側の湾曲レール部材19bは、主ガイドレール部18を構成する直線状水平レール部材18a,18bの内、下側戻り経路部2に沿って配設された直線状水平レール部材18bの両端と接続させることが出来る。勿論、両端のターン用ガイドレール部19の内外一対の湾曲レール部材19a,19bの内、内側の湾曲レール部材19aと、主ガイドレール部18を構成する直線状水平レール部材18a,18bの内、上側搬送経路部1に沿って配設された直線状水平レール部材18aの両端との間には、スラット板5の前後一対のガイドローラー16,17の内、ターン用ガイドレール部19に案内されない側のガイドローラーと連結用支軸15とが通過するための必要な空間が確保されている。
【0019】
尚、図3〜図6に示すように、無端状経路の左右両側には、上側搬送経路部1と下側戻り経路部2との中間高さにおいて、これら上下両経路部に沿って左右一対の水平フレーム20が架設され、この水平フレーム20の上にスラット板姿勢規制用ガイド手段12の主ガイドレール部18を構成する上側の直線状水平レール部材18aが敷設されている。前記水平フレーム20は、その長さ方向の複数か所が支持フレーム21を介して据付け基板22に支持され、この各据付け基板22上に、主ガイドレール部18を構成する下側の直線状水平レール部材18bが敷設されている。支持フレーム21上には、駆動チエン8,9のカバープレート23が取り付けられているが、このカバープレート23の内側辺が、上側の直線状水平レール部材18a上を転動移動する各スラット板5のガイドローラー16,17の浮き上がりを防止し、前記水平フレーム20の下側内側辺が、下側の直線状水平レール部材18b上を転動移動する各スラット板5のガイドローラー16,17の浮き上がりを防止している。又、左右一対の水平フレーム20どうしは、当該水平フレーム20の長さ方向適当間隔おきの位置において、上側搬送経路部1と下側戻り経路部2との間を水平に横断する連結フレーム24によって互いに連結一体化されている。駆動チエン8,9を掛張する各案内歯輪10a〜11bは、これら各案内歯輪に近い位置にある据付け基板22上に設置された軸受けを介して軸支されている。
【0020】
尚、スラット板姿勢規制用ガイド手段12のターン用ガイドレール部19を構成する湾曲レール部材19a,19bは、図7A及び図8に仮想線で示すように、これら湾曲レール部材19a,19bの外側で床面上に設置された専用の支持フレーム25に取り付けることが出来る。又、水平フレーム20の上には、駆動チエン8,9の上側搬送経路部1に沿って移動する上側直線経路部を支持案内するチエンガイドレール26が敷設され、各据付け基板22上には、駆動チエン8,9の下側戻り経路部2に沿って移動する下側直線経路部を支持案内するチエンガイドレール27が敷設されているが、当該駆動チエン8,9の上下各直線経路部は、当該駆動チエン8,9に連結用支軸15を介して等間隔おきに連結された各スラット板5が、そのガイドローラー16,17を介してスラット板姿勢規制用ガイド手段12の主ガイドレール部18の直線状水平レール部材18a,18bに水平移動自在に支持されているので、前記チエンガイドレール26,27は省くことも出来る。
【0021】
二組の駆動手段13,14は同一構造のものであって、駆動手段13は、上側搬送経路部1のUターン経路部3に近い終端近傍位置に配設された左右一対の駆動ユニット13a,13bから構成され、駆動手段14は、下側戻り経路部2のUターン経路部4に近い終端近傍位置に配設された左右一対の駆動ユニット14a,14bから構成されている。駆動手段13を具体的に説明すると、図5〜図8に示すように、駆動ユニット14aは、駆動チエン8の上側搬送経路部1に沿う部分に下側から係合する駆動用歯輪28と、当該駆動用歯輪28を回転駆動する減速機付きモーター29、及び駆動用歯輪28から駆動チエン8が上側に逃げるのを防止するチエン浮上り防止用ガイドレール30から構成されている。このチエン浮上り防止用ガイドレール30は、駆動チエン8を覆う前記カバープレート23の下側に取り付けられ、駆動用歯輪28と駆動チエン8との係合領域に重なる中央部分の下側面には、駆動チエン8のリンク結合軸に遊嵌されたローラー8aが、回動する駆動用歯輪28の歯と固定されているチエン浮上り防止用ガイドレール30の下側面の両方に摺接するのを防止するための切欠き凹部30aが形成されている。勿論、この切欠き凹部30aを設ける代わりに、チエン浮上り防止用ガイドレール30を、前記切欠き凹部30aに相当する領域だけ前後に離間させて付設した前後2つのレール部材から構成しても良い。又、駆動チエン8を支持案内するチエンガイドレール26も、チエン浮上り防止用ガイドレール30が配設された領域を避けるように前後に分断されている。
【0022】
反対側の駆動チエン9を駆動する駆動ユニット13bは、上記の駆動ユニット13aと全く同一構造のものを左右対称に配設したものであるから、図示されている対応部分に同一符号を付して説明は省略する。又、下側戻り経路部2において駆動チエン8,9を駆動する駆動手段14の左右一対の駆動ユニット14a,14bも、上記駆動ユニット13a,13bと同様に、駆動用歯輪31と当該駆動用歯輪31を回転駆動する減速機付きモーター32を夫々備えたものであり、その駆動用歯輪31が下側戻り経路部2の駆動チエン8,9に対して上側から係合するように配設している。従って、この駆動ユニット14a,14bでは、駆動チエン8,9が駆動用歯輪31から下方に逃げるのを既設のチエンガイドレール27が防止することになるので、図示していないが、駆動用歯輪31と駆動チエン8,9との係合領域に重なる部分の上側面には、駆動チエン8,9のリンク結合軸に遊嵌されたローラー8a,9aが駆動用歯輪31の歯とチエンガイドレール27の上側面の両方に摺接するのを防止するための切欠き凹部を形成するか又は、チエンガイドレール27を前後に分断させることになる。
【0023】
上記構成のスラットコンベヤによれば、駆動手段13,14の各駆動ユニット13a〜14bにおける減速機付きモーター29,32を稼働させ、夫々の駆動用歯輪28,31を同一速度で所定の方向に回転駆動して、左右一対の駆動チエン8,9を正転回動させることにより、当該駆動チエン8,9に同心状の連結用支軸15を介して左右両端が連結されている各スラット板5が無端状経路を正転回動し、上側搬送経路部1において各スラット板5がUターン経路部4に向かって連続移動する。而して、上側搬送経路部1と下側戻り経路部2を移動する各スラット板5は、その左右両端の前後一対のガイドローラー16,17が、スラット板姿勢規制用ガイド手段12の主ガイドレール部18における上下各直線状水平レール部材18a,18b上を転動することにより、水平正立姿勢を保って移動する。又、両端のUターン経路部3,4を回動する各スラット板5は、これらUターン経路部3,4の外側を回動するガイドローラー16又は17が、スラット板姿勢規制用ガイド手段12のターン用ガイドレール部19における湾曲レール部材19a,19b間を移動することにより、スラット板5が連結用支軸15の周りで上下に揺動することが実質的に防止され、水平正立姿勢を保って平行移動する。
【0024】
従って、上側搬送経路部1では、連続移動する各スラット板5によって、当該上側搬送経路部1の全長にわたって連続し且つ進入側固定床板6側から退出側固定床板7側に向かって移動する水平搬送面が形成されるので、進入側固定床板6上を経由させて被搬送物である自動車Wを自走により上側搬送経路部1の前記水平搬送面上に移載することにより、移動するスラット板5上に支持された自動車Wを退出側固定床板7に向かって一定速度で搬送することが出来、作業者は、自動車Wの周囲の各スラット板5で形成された前記水平搬送面上に立って、当該自動車Wに対する所要の作業を実行することが出来る。所要の作業が済んだ自動車Wが上側搬送経路部1の終端近くに達したならば、当該自動車Wを自走により上側搬送経路部1の前記水平搬送面上から退出側固定床板7上を経由させて退出させることが出来る。
【0025】
被搬送物が自走出来る自動車Wでない場合には、適当な移載手段を利用して当該被搬送物を上側搬送経路部1の始端近くにおいて前記水平搬送面上に移載し、所要の作業が済んだ被搬送物が上側搬送経路部1の終端近くに達したならば、適当な移載手段を利用して当該被搬送物を上側搬送経路部1の前記水平搬送面上から搬出すれば良い。この場合は、進入側固定床板6や退出側固定床板7は被搬送物の出し入れに使用されないが、これら進入側固定床板6及び退出側固定床板7で覆われた上側搬送経路部1の始端部領域及び終端部領域、即ち、スラット板5の全てのガイドローラー16,17がスラット板姿勢規制用ガイド手段12の主ガイドレール部18における上側の直線状水平レール部材18aに完全に支持されない領域を除く、上側搬送経路部1の搬送に利用出来る領域の範囲内で、被搬送物の移載作業を行わなければならない。
【0026】
尚、図示の実施例では、各駆動手段13,14に、左右一対の駆動用歯輪28,31を各別に駆動する2台の減速機付きモーター29,32を設けたが、左右一対の駆動用歯輪28,31を互いに同心状に配置するときは、上側搬送経路部1と下側戻り経路部2の間を、水平フレーム20を貫通して横断する伝動軸により左右一対の駆動用歯輪28,31を互いに連動連結することにより、各駆動手段13,14の左右一対の駆動用歯輪28,31を1台の減速機付きモーター29,32で連動駆動させることも出来る。更に、上側搬送経路部1の全長が短い場合や搬送負荷が小さい場合、或いは使用する減速機付きモーターの駆動力を大きくすることが可能な場合には、駆動手段13,14の内の何れか一方を無くすことも可能である。又、逆に上側搬送経路部1の全長が長い場合や搬送負荷が大きい場合、或いは使用する減速機付きモーター夫々の駆動力を小さくしたい場合には、上側搬送経路部1や下側戻り経路部2の経路長さ方向複数箇所に駆動手段13,14を配設することが出来る。
【0027】
又、上記のように進入側固定床板6や退出側固定床板7を併設する場合、図9に示すように、上側搬送経路部1の始端部領域及び終端部領域、具体的には前記のように、スラット板5の全てのガイドローラー16,17がスラット板姿勢規制用ガイド手段12の主ガイドレール部18における上側の直線状水平レール部材18aに完全に支持されない領域を、両端のUターン経路部3,4側ほど下がるように傾斜させることにより、これら領域の上側に進入側固定床板6及び退出側固定床板7をほぼ水平に架設することが出来る。
【0028】
又、スラット板5の上に直接被搬送物を載置しないで、図10〜図12に示すように、特定のスラット板5の上に被搬送物支持手段33を設けることが出来る。図示例の被搬送物支持手段33は、1つの被搬送物(自動車W)を周辺4か所で支持するための4つの夫々起伏自在な被搬送物支持具33a〜33dから成るものであって、左右対を成す被搬送物支持具33a,33bと被搬送物支持具33c,33dは、搬送方向に所要間隔を隔てて位置する2つの荷支持用スラット板5a,5bの表面上に突設された左右一対の軸受け部材34に、起立姿勢と当該起立姿勢から互いに接近する内側方向に倒れてスラット板5a,5bの表面で支持される倒伏姿勢との間でのみ起伏自在に、前後搬送方向と平行な支軸35により軸支されている。尚、各被搬送物支持具33a〜33dは、起立姿勢を重力で保持できるように、起立姿勢にあるときに支軸35が内側に離れて位置すると共に下端がスラット板5の表面に当接するように構成されているが、別に各被搬送物支持具33a〜33dを起立姿勢にロックするロック手段を併設しても良い。
【0029】
この起伏自在な被搬送物支持具33a〜33dを備えたスラットコンベヤでは、当該被搬送物支持具33a〜33dを備えた荷支持用スラット板5a,5bが下側戻り経路部2からUターン経路部3を経由して上側搬送経路部1に進入したとき、手作業又は機械的手段により倒伏姿勢から起立姿勢に切り換え、被搬送物(自動車W)をこれら起立姿勢の4つの被搬送物支持具33a〜33d上に、適当な移載手段により載置することにより、上側搬送経路部1上で搬送することが出来る。そして上側搬送経路部1の終端手前で被搬送物(自動車W)を適当な移載手段により搬出した後、起立姿勢の各被搬送物支持具33a〜33dを手作業又は機械的手段により倒伏姿勢に切り換える。而して、倒伏姿勢の各被搬送物支持具33a〜33dを備えた荷支持用スラット板5a,5bは、上下反転することなく正立姿勢のままUターン経路部4から下側戻り経路部2に移行し、この下側戻り経路部2を、上側に倒伏姿勢の各被搬送物支持具33a〜33dを支持した荷支持用スラット板5a,5bが他のスラット板5と共に水平移動することになる。従って、上側搬送経路部1と下側戻り経路部2との間に倒伏姿勢の各被搬送物支持具33a〜33dが移動できる空間を確保するだけで、各被搬送物支持具33a〜33dを倒伏姿勢でロックするロック手段を省くことが出来る。
【0030】
尚、この図10〜図12に示す実施例では、上側搬送経路部1側の駆動手段13は、その左右一対の駆動用歯輪28の軸心高さを、下側戻り経路部2を移動する荷支持用スラット板5a,5b上の倒伏姿勢の被搬送物支持具33a〜33dの移動経路より上方に位置させることが出来るので、当該左右一対の駆動用歯輪28を、下側戻り経路部2上の倒伏姿勢の被搬送物支持具33a〜33dの移動経路と上側搬送経路部1との間の空間を横断する伝動軸36により連動連結し、一方の駆動ユニット13aが備える1台の減速機付きモーター29により両駆動ユニット13a,13bの駆動用歯輪28を駆動するように構成している。下側戻り経路部2側の前記駆動手段14は、その駆動用歯輪31の軸心高さが、下側戻り経路部2を移動する荷支持用スラット板5a,5b上の倒伏姿勢の被搬送物支持具33a〜33dの移動経路より上方に位置させることが出来ないので、先の実施例のように左右一対の駆動用歯輪31を2台の減速機付きモーター32により各別に駆動するように構成するか又は、前記伝動軸36と同一高さに横断支承させた伝動軸と両駆動ユニット14a,14bの駆動用歯輪31とをチエンや歯車など適当な伝動手段で連動連結した上で、一方の駆動ユニット14a又は14bが備える1台の減速機付きモーター32により両駆動ユニット14a,14bの駆動用歯輪31を駆動するように構成すれば良い。
【0031】
又、本発明のスラットコンベヤでは、各スラット板5の搬送方向の長さは特に限定されない。即ち、支持搬送する1つの被搬送物が占める領域内の搬送方向のスラット板5の数は特に限定されない。例えば、各スラット板5の搬送方向長さを長くして、1つのスラット板5上で1つの被搬送物を支持するように構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のスラットコンベヤは、一定直線搬送経路において搬送する自動車(又はその車体)の周囲に当該自動車(又はその車体)と一体に移動する連続作業床面が必要な自動車組立てラインにおいて活用出来る。
【符号の説明】
【0033】
1 上側搬送経路部
2 下側戻り経路部
3,4 Uターン経路部
5 スラット板
5a,5b 荷支持用スラット板
6 進入側固定床板
7 退出側固定床板
8,9 駆動チエン
10a〜11b 案内歯輪
12 スラット板姿勢規制用ガイド手段
13,14 駆動手段
15 連結用支軸
16,17 ガイドローラー
18 主ガイドレール部
18a,18b 直線状水平レール部材
19 ターン用ガイドレール部
19a,19b 湾曲レール部材
26,27 チエンガイドレール
28,31 駆動用歯輪
29,32 減速機付きモーター
30 チエン浮上り防止用ガイドレール
30a 切欠き凹部
33 被搬送物支持手段
33a〜33d 起伏自在な被搬送物支持具
36 伝動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側搬送経路部と下側戻り経路部及び当該上下両経路部を接続する両端Uターン経路部によって構成された無端状経路を無端状に連結された多数のスラット板が循環移動するように構成したスラットコンベヤにおいて、前記無端状経路の左右両外側には、当該無端状経路に沿って回動する駆動チエンとスラット板姿勢規制用ガイド手段が設けられ、各スラット板は、左右一対の前記駆動チエン及び左右一対の前記スラット板姿勢規制用ガイド手段の間に配置されると共に、その左右両側辺の移動方向の中間位置がその外側に位置する前記駆動チエンに互いに同心状の支軸によりシーソー運動自在に軸支され、各スラット板の左右両側辺には、左右一対の前記スラット板姿勢規制用ガイド手段と係合するガイドローラーが軸支され、左右一対の前記スラット板姿勢規制用ガイド手段は、上側搬送経路部と下側戻り経路部を移動する各スラット板を正立姿勢に規制する主ガイドレール部と、両端Uターン経路部を移動する各スラット板を正立姿勢のまま平行移動させるターン用ガイドレール部とを備えている、スラットコンベヤ。
【請求項2】
各スラット板両側辺の前記ガイドローラーは、各スラット板両側辺の前記支軸に対して移動方向の前後両側に軸支され、前記スラット板姿勢規制用ガイド手段の主ガイドレール部は、前後両側の前記ガイドローラーの下側にのみ架設されたレール部材で構成され、前記スラット板姿勢規制用ガイド手段のターン用ガイドレール部は、前後両側の前記ガイドローラーの内、Uターン経路部での前記支軸の回動経路の外側に位置するガイドローラーを内外両側から挟む内外一対の湾曲レール部材から構成されている、請求項1に記載のスラットコンベヤ。
【請求項3】
前記両端Uターン経路部において左右一対の前記駆動チエンを掛張する歯輪は、この両端Uターン経路部を正立姿勢のまま平行移動する各スラット板の回動軌跡と前記歯輪の軸心位置とが側面視で重なるほどの小径のものである、請求項1又は2に記載のスラットコンベヤ。
【請求項4】
左右一対の前記駆動チエンは、前記上側搬送経路部と下側戻り経路部の内、少なくとも一方の長さ方向の中間位置に設けられた駆動用歯輪と係合している、請求項1〜3の何れか1項に記載のスラットコンベヤ。
【請求項5】
前記上側搬送経路部の端部には、前記スラット板姿勢規制用ガイド手段の主ガイドレール部から前記ガイドローラーが外れたスラット板の上を覆うように、当該上側搬送経路部との間で被搬送物が乗り移る固定床板が架設されている、請求項1〜4の何れか1項に記載のスラットコンベヤ。
【請求項6】
前記固定床板で覆われる上側搬送経路部の端部は、Uターン経路部側ほど下がるように傾斜し、前記固定床板は、ほぼ水平に架設されている、請求項5に記載のスラットコンベヤ。
【請求項7】
前記スラット板には、前記上側搬送経路部で搬送される被搬送物を支持する被搬送物支持具が起伏自在に取り付けられた荷支持用スラット板が設けられ、この荷支持用スラット板が前記下側戻り経路部を正立姿勢で移動するとき、倒伏姿勢に切り換えられた前記被搬送物支持具が当該荷支持用スラット板の上に支持されている、請求項1〜4の何れか1項に記載のスラットコンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−171772(P2012−171772A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38037(P2011−38037)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】