説明

スラリー乾燥機

【課題】含水率が均一なスラリー乾燥物を効率良く製造し易いスラリー乾燥機を提供する。
【解決手段】円板3を駆動回転自在な駆動装置と、円板を加熱可能な加熱装置13とを設けてあると共に、円板の板面に原料スラリーを吹き付け塗布可能なスラリー吹き付け具6と、円板の板面に付着しているスラリー乾燥物を掻き取るスクレーパ9とを、円板の回転方向に間隔を隔てて配設してあるスラリー乾燥機であって、円板に塗布された原料スラリーに接触させてその塗布厚さを均す均し面を備えた均し具8と、均し具に洗浄水を吹き付けて、その均し面を洗浄可能な洗浄具18とを設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板を駆動回転自在な駆動装置と、前記円板加熱可能な加熱装置とを設けてあると共に、前記円板の板面に原料スラリーを吹き付け塗布可能なスラリー吹き付け具と、前記円板の板面に付着しているスラリー乾燥物を掻き取るスクレーパとを、前記円板の回転方向に間隔を隔てて配設してあるスラリー乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記スラリー乾燥機は、スラリー吹き付け具で円板の板面に吹き付け塗布した原料スラリーを、スクレーパによる掻き取り位置に移動するまでの間に加熱乾燥できるように、スラリー吹き付け具とスクレーパとを円板の回転方向に間隔を隔てて配設してあり、円板のスラリー乾燥物を掻き取った後の板面に原料スラリーを吹き付け塗布できるので、スラリー乾燥物を連続的に製造できるが、従来、原料スラリーの塗布厚さは、スラリー吹き付け具によるスラリー吹き付け量に依存している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−220371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、原料スラリーの塗布厚さにばらつきが生じ易く、その結果、スクレーパによる掻き取り位置に移動するまでの間に原料スラリーを均一に乾燥させ難くなって、含水率が均一なスラリー乾燥物を製造し難い欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、含水率が均一なスラリー乾燥物を効率良く製造し易いスラリー乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、円板を駆動回転自在な駆動装置と、前記円板を加熱可能な加熱装置とを設けてあると共に、前記円板の板面に原料スラリーを吹き付け塗布可能なスラリー吹き付け具と、前記円板の板面に付着しているスラリー乾燥物を掻き取るスクレーパとを、前記円板の回転方向に間隔を隔てて配設してあるスラリー乾燥機であって、
前記円板に塗布された原料スラリーに接触させてその塗布厚さを均す均し面を備えた均し具と、前記均し具に洗浄水を吹き付けて、その均し面を洗浄可能な洗浄具とを設けてある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
円板に塗布された原料スラリーに接触してその塗布厚さを均す均し面を備えた均し具を設けてあるので、原料スラリーの塗布厚さを均一化し易い。
しかしながら、均し面に付着した原料スラリーが乾燥して、比較的硬くなった原料スラリーがこびりついている均し面を原料スラリーに接触させると、かえって、塗布厚さにばらつきが生じるおそれがある。
そこで、原料スラリーが均し面にこびりつかないように、均し具に洗浄水を吹き付けて、その均し面を洗浄可能な洗浄具を設けてあるので、均し具をスラリー乾燥機から取り外して洗浄するためにスラリー乾燥機の運転を停止するような手間を掛けることなく、原料スラリーの塗布厚さを長期に亘って均一化し易くなり、含水率が均一なスラリー乾燥物を能率良く製造し易い。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記スラリー吹き付け具に供給する原料スラリーを貯留するスラリータンクと、前記均し具に吹き付けた洗浄水を前記スラリータンクに回収する回収装置とを設けてある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
均し具に吹き付けた洗浄水には、均し面に付着していた原料スラリーが混じっており、スラリー吹き付け具に供給する原料スラリーを貯留するスラリータンクにその洗浄水を回収することができるので、均し面に付着していたスラリーを原料スラリーとして有効利用することができる。
また、スラリー吹き付け具で円板の板面に原料スラリーを吹き付け塗布しながら、均し具に洗浄水を吹き付けて、その均し面を洗浄した結果、板面に塗布してある原料スラリーが洗浄水で流れ落ちても、その流れ落ちたスラリーを洗浄水と共に、スラリータンクに回収することができるので、スラリー吹き付け具による原料スラリーの吹き付けを特に停止することなく、均し面を洗浄することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1,図2は、ウイスキー製造の際に生じる酵母が懸濁した原料スラリーを加熱乾燥させて、スラリー乾燥物としての乾燥酵母を製造するための本発明によるスラリー乾燥機を示している。
【0010】
前記スラリー乾燥機は、揺動開閉自在なカバー板1a,1b,1cを備えたケーシング2の内側に駆動回転自在な複数の円板3を設けてある乾燥機本体Aと、図外のスラリー貯留槽からポンプを用いて供給された原料スラリーを乾燥機本体Aの下側で貯留するスラリータンクBとを設置してあり、ケーシング2の下部に形成したスラリーホッパー4をスラリータンクBの底部近くに連通してある。
【0011】
前記乾燥機本体Aには、各円板3の表裏の板面5毎に、板面5に原料スラリーを吹き付け塗布可能なスラリー吹き付け具6と、板面5に塗布された原料スラリーに接触させてその塗布厚さを均す均し面7を備えた鋼製丸棒で構成してある均し具8と、板面5に付着しているスラリー乾燥物をフレーク状に掻き取る鋼(硬質金属)製のスクレーパ9とを、円板3の図中の矢印で示す回転方向に間隔を隔てて順に配設してある。
【0012】
前記均し具8は、図3に示すように、円板3の板面5との間に隙間ができるように配設してあると共に、隣り合う円板3の間に位置するものどうしを、バネ31を内部に装着してあって弾性的に伸縮可能な接続部材30で互いに接続してある。
【0013】
前記複数の円板3どうしは、略一定間隔を隔てて、回転軸部材10で同芯状に一体に連結して、駆動装置としての電動モータ11で横軸芯X周りで駆動回転自在に支持してあり、各円板3をその内部に円形中空部を同芯状に形成してある中空円板で構成するとともに、回転軸部材10を各円板3の中空部に連通する中空部12を同芯状に形成してある中空軸で構成してある。
【0014】
そして、回転軸部材10の端部の夫々に給気ダクト14aと排気ダクト14bとを連設して、ボイラーから供給された高温の水蒸気を、給気ダクト14aから回転軸部材10の中空部12に通して、各円板3の中空部に供給することにより、各円板3を加熱して、それらの円板3の板面5に塗布してある原料スラリーを加熱乾燥可能な加熱装置13を設けてある。
【0015】
前記スラリー吹き付け具6の夫々は、多数の吹き出し孔を管壁に備えた筒状に形成してヘッダ15に接続してあり、スラリータンクBから循環ポンプ16でヘッダ15に供給された原料スラリーを円板3の板面5に吹き付けることができるように設けてある。
尚、板面5に吹き付けた原料スラリーのうちの余剰スラリーは、スラリーホッパー4を介して、スラリータンクBに回収できるように構成してある。
【0016】
また、各円板3の板面5に洗浄水(温水)を吹き付けてその板面5を洗浄する円板洗浄用ノズル17と、各均し具8に洗浄水(温水)を吹き付けてその均し面7を洗浄可能な洗浄具としての均し具洗浄用ノズル18とを設けてあり、板面5に吹き付けた洗浄水と均し具8に吹き付けた洗浄水とを、スラリーホッパー4を介して、スラリータンクBに回収する洗浄水回収装置19を構成してある。
【0017】
前記スクレーパ9は、図4に示すように、一側縁に沿って刃部20を形成してある帯板材で構成してあり、他側縁側を形成する基部を互いにボルト固定してある補強用の一対の板状金具21で挟み込むとともに、スクレーパ支持部材22をケーシング2側に固定して、隣り合う円板3間に配設してある二枚のスクレーパ9の夫々を、板状金具21を介して、共通のスクレーパ支持部材22に支持してある。
【0018】
前記スクレーパ支持部材22には、各スクレーパ9を挟み込んでいる板状金具21のうちの一方の下端角部の夫々を受け止めるV字状の二つの受け面23を形成してあるとともに、各スクレーパ9の刃部20を円板3の板面5に対して弾性的に圧接させる弾性圧接具24を設けてある。
【0019】
前記弾性圧接具24は、スクレーパ支持部材22に立設してある軸部材25に、スクレーパ9の背面側から刃部20を円板3の板面5に対して押し付けるための押え板26を挿通すると共に、その押え板26をスクレーパ9の背面側に押圧する圧縮コイルバネ27を軸部材25に抜け止め状態で挿通して、各スクレーパ9の刃部20を圧縮コイルバネ27の弾性力で円板3の板面5に対して弾性的に圧接させることができるように構成してある。
【0020】
前記スクレーパ9の夫々で掻き取ったスラリー乾燥物は、ケーシング2の下部に形成した乾燥物ホッパー28からスクリュー搬送装置29に落下させて、機外に連続的に搬出できるように構成してある。
【0021】
〔その他の実施形態〕
1.本発明によるスラリー乾燥機は、縦軸周りで駆動回転自在な円板を設けてあっても良い。
2.本発明によるスラリー乾燥機は、円板に塗布した原料スラリーを円板の外側から加熱して乾燥可能な加熱装置を設けてあっても良い。
3.本発明によるスラリー乾燥機は、各種食品の残滓が懸濁した原料スラリーや汚泥が懸濁した原料スラリーを乾燥するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】スラリー乾燥機の内部を示す正面図
【図2】スラリー乾燥機の内部を示す側面図
【図3】要部の平面図
【図4】要部の一部断面図
【符号の説明】
【0023】
3 円板
5 板面
6 スラリー吹き付け具
7 均し面
8 均し具
9 スクレーパ
11 駆動装置
13 加熱装置
18 洗浄具
19 回収装置
B スラリータンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板を駆動回転自在な駆動装置と、前記円板を加熱可能な加熱装置とを設けてあると共に、
前記円板の板面に原料スラリーを吹き付け塗布可能なスラリー吹き付け具と、前記円板の板面に付着しているスラリー乾燥物を掻き取るスクレーパとを、前記円板の回転方向に間隔を隔てて配設してあるスラリー乾燥機であって、
前記円板に塗布された原料スラリーに接触させてその塗布厚さを均す均し面を備えた均し具と、
前記均し具に洗浄水を吹き付けて、その均し面を洗浄可能な洗浄具とを設けてあるスラリー乾燥機。
【請求項2】
前記スラリー吹き付け具に供給する原料スラリーを貯留するスラリータンクと、前記均し具に吹き付けた洗浄水を前記スラリータンクに回収する回収装置とを設けてある請求項1記載のスラリー乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−241234(P2008−241234A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2007−280420(P2007−280420)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】