説明

スラリー配管監視装置およびスラリー搬送設備

【課題】液体と固体とが混濁したスラリーを圧送するスラリー配管内の状態を監視すること。
【解決手段】液体と固体とが混濁したスラリー105を圧送するスラリー配管262の所定位置に、スラリー配管262内の通路の変形を検出する検出手段1を設け、当該検出手段1の検出レベルの増減に応じてスラリー配管262内の状態を検知する。このため、スラリーを圧送するスラリー配管262内の状態を監視することで、スラリー配管262が閉塞したり、亀裂が生じたりする以前に、スラリー配管262の清掃や補修を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体と固体とが混濁したスラリーを圧送するスラリー配管内の状態を監視するスラリー配管監視装置、および当該スラリー配管監視装置が適用されるスラリー搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や製鉄所などのプラントでは、排ガスまたは製品を精製する際に発生する固体状の排出物(スラグ)が高温であるため、水で冷却して系外へ排出するスラグ排出システムが設けられている。このスラグ排出システムでは、排出物と冷却水とが混濁されたスラリーは、配管(スラリー配管)内を介し、排出物と冷却水とを分離する分離部に圧送される。
【0003】
しかし、スラリー配管にスラリーを圧送中、何らかの要因で圧力が低下すると、スラリー配管内で水と排出物とが分離して排出物が堆積し、この堆積した排出物によってスラリー配管が閉塞するおそれがある。スラリー配管に閉塞が生じると、これを除去するために設備を停止しなければならないことにもなる。
【0004】
なお、スラリーを圧送するスラリー配管ではないが、特許文献1には、石炭ガス化炉において、スラグホッパ下部のスラグクラッシャー部を効果的に作動させて、スラグクラッシャー部の耐久性と消費電力の低減を図るため、スラグクラッシャー部に、超音波送受波器を水平に複数個並設し、超音波送受波器の受波信号の状態からスラグクラッシャー部の網棚上に堆積するスラグの堆積状況を検知するスラグ監視装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3868153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、液体と固体とが混濁したスラリーを圧送するスラリー配管内の状態を監視することのできるスラリー配管監視装置およびスラリー搬送設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明のスラリー配管監視装置は、液体と固体とが混濁したスラリーを圧送するスラリー配管の所定位置に、前記スラリー配管内の通路の変形を検出する検出手段を設け、当該検出手段の検出レベルの増減に応じて前記スラリー配管内の状態を検知することを特徴とする。
【0008】
このスラリー配管監視装置によれば、スラリーを圧送するスラリー配管内の状態を監視することができる。このため、スラリー配管が閉塞したり、亀裂が生じたりする以前に、スラリー配管の清掃や補修を行うことが可能になる。
【0009】
また、本発明のスラリー配管監視装置は、前記検出手段が、前記スラリー配管内の加速度または前記スラリー配管の歪みを検出することを特徴とする。
【0010】
このスラリー配管監視装置によれば、スラリー配管の内部で生じる加速度またはスラリー配管の歪みを検出するには、受信が1箇所でよいので、配置の制限が少なく、かつ配線数が少ないため構成が簡素化できる。しかも、スラリー配管の内部で生じる加速度またはスラリー配管の歪みを検出するには、受信が1箇所でよいので、スラリー配管の大径化の影響が少なく適用可能である。
【0011】
上述の目的を達成するために、本発明のスラリー搬送設備は、液体と固体とが混濁したスラリーをスラリー配管に圧送するスラリー搬送設備において、前記スラリー配管に、上記のいずれか一つに記載のスラリー配管監視装置を適用することを特徴とする。
【0012】
このスラリー搬送設備によれば、スラリーを圧送するスラリー配管内の状態を監視することで、スラリー配管が閉塞したり、亀裂が生じたりする以前に、スラリー配管の清掃や補修を行うことができる。すなわち、スラリー配管が閉塞したり、亀裂が生じたりした場合には、スラリー搬送設備や、当該スラリー搬送設備が適用された設備を停止しなければならないことがあるが、そのような事態を回避し、当該設備での影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液体と固体とが混濁したスラリーを圧送するスラリー配管内の状態を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るスラリー配管監視装置が適用される一例であるスラグ排出システムの概略図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係るスラリー配管監視装置の概略図である。
【図3】図3は、検出手段による検出状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
図1は、本実施の形態に係るスラリー配管監視装置が適用される一例であるスラグ排出システムの概略図である。本実施の形態のスラグ排出システム20は、石炭ガス化複合発電プラントに用いられ、ガス化炉30の底部において燃焼物質をガス化した際に生成される溶融スラグ101を排出するものである。ガス化炉30は、石炭などの燃焼物質をガス化し、生成したガスを燃焼炉などに供給する。そして、ガス化炉30の底部では、燃焼物質がガス化される過程で溶融スラグ101が生成される。
【0017】
スラグ排出システム20は、ガス化炉30の底部に、溶融スラグ101を落下させるスラグホール21と、スラグホール21から落下した溶融スラグ101を貯留するスラグホッパ22とを有する。スラグホッパ22は、鉛直方向下側に向かうに従って径が小さくなる漏斗形状に形成され、上側の大径開口部がガス化炉30の底部に配置されると共に、ガス化炉30の底部に貯留されたスラグ冷却水(冷却水)102に浸されている。また、スラグホッパ22は、下側の小径開口部がガス化炉30の外側に配置されている。スラグホッパ22の小径開口部は、開閉弁23により開閉可能に設けられている。
【0018】
スラグ排出システム20は、ガス化炉30で生成された溶融スラグ101を、スラグホール21からスラグ冷却水102中に落下させる。スラグ冷却水102中に落下した溶融スラグ101は、急冷されて数ミリから数十ミリ程度のガラス状の水砕スラグ(スラグ)103の粒子となる。そして、この水砕スラグ103を、スラグホッパ22において、鉛直方向下側に移動させることで、当該スラグホッパ22の下側の1箇所に収集させる。また、開閉弁23は、開閉を切り換えることで、スラグホッパ22に収集されている水砕スラグ103の排出の開始、停止を切り換える。なお、開閉弁23から排出される水砕スラグ103は、スラグ冷却水102を含む流体である。
【0019】
また、スラグ排出システム20は、スラグロックホッパ24と、スラグ溜25と、スラリー搬送部26と、スラグ貯蔵タンク27とを有する。
【0020】
スラグロックホッパ24は、水砕スラグ103を一時的に貯留する貯留部であり、開閉弁23の直下に配置されている。スラグロックホッパ24は、開閉弁23から排出された水砕スラグ103を一時的に貯留し、その後、開閉弁24aを介してスラグ溜25に定期的に供給する。
【0021】
スラグ溜25は、スラグ溜タンク25aと、モータMで駆動するスラグコンベア25bとを有している。スラグ溜タンク25aは、スラグロックホッパ24から排出された水砕スラグ103を水(スラグ冷却水102)と共に溜めるものである。スラグコンベア25bは、その一部がスラグ溜タンク25a内に配置されており、スラグ溜タンク25a中に落下された水砕スラグ103を水(スラグ冷却水102)と共に所定量ずつ移動させて、スラリー搬送部26に排出する。
【0022】
スラリー搬送部26は、スラグ溜25から排出された水砕スラグ103をスラリー状としてスラグ貯蔵タンク27に搬送するものであり、スラリータンク261と、スラリー配管262と、スラリーポンプ263とを有する。スラリータンク261は、スラグ溜25から排出された水砕スラグ103と、スラリー水104とを貯留するタンクである。スラリータンク261は、スラリー水104に水砕スラグ103を分散させた状態で貯留している。スラリー配管262は、スラリータンク261と、スラグ貯蔵タンク27とを接続する配管である。また、スラリーポンプ263は、スラリー配管262に配置され、スラリータンク261内の水砕スラグ103がスラリー水104で水分散されたスラリー105を、スラグ貯蔵タンク27に向けてスラリー配管262に圧送させる。このように、スラリー搬送部26は、スラリータンク261内のスラリー水104に分散された水砕スラグ103をスラリー105にし、スラリーポンプ263によりスラリー配管262を通じてスラグ貯蔵タンク27まで圧送する。
【0023】
また、スラリー搬送部26は、液位調整手段264を有している。液位調整手段264は、貯水槽264aと、供給配管264bと、給水ポンプ264cと、循環配管264dと、オーバーフロー管264eと、開閉弁264fと、レベル計264gと、液面制御部264hとを有する。
【0024】
貯水槽264aは、スラリー水104を貯留するタンクである。供給配管264bは、貯水槽264aとスラリータンク261とを接続する配管である。給水ポンプ264cは、供給配管264bに配置され、貯水槽264aに貯留されているスラリー水104を、スラリータンク261に向けて供給配管264bに圧送させる。循環配管264dは、供給配管264bの給水ポンプ264cよりもスラリータンク261側の部分と、貯水槽264aとを接続する配管である。オーバーフロー管264eは、スラリータンク261の所定の液位の壁面と、貯水槽264aとを接続する配管である。このオーバーフロー管264eは、スラリータンク261への接続位置に対してスラリータンク261の液位が越えたら、スラリータンク261内のスラリー水104が貯水槽264aへ流れ込む態様で配置されている。開閉弁264fは、供給配管264bの循環配管264dが設けられている部分よりもスラリータンク261側に配置されており、供給配管264bの管路の開閉を切り換える。レベル計264gは、スラリータンク261のスラリー水104の液位を検出するセンサである。液面制御部264hは、レベル計264gで検出した液位に基づいて、開閉弁264fの開閉動作を制御することで、貯水槽264aに貯留されているスラリー水104をスラリータンク261に供給するか否かを切り換える。
【0025】
このスラリー搬送部26の液位調整手段264は、レベル計264gで検出した液位が規定より低下した場合、開閉弁264fが開状態となることで、供給配管264bを流れるスラリー水104がスラリータンク261に供給される。一方、液位調整手段264は、レベル計264gで検出した液位が規定より上昇した場合、開閉弁264fが閉状態となることで、供給配管264bを流れるスラリー水104がスラリータンク261に供給されない。なお、開閉弁264fが閉状態のときは、給水ポンプ264cにより供給配管264bを流れているスラリー水104は、循環配管264dにより貯水槽264aに戻される。これにより、給水ポンプ264cを常に駆動させた状態とすることができ、応答性が高い制御が可能となる。
【0026】
スラグ貯蔵タンク27は、スラリー搬送部26のスラリー配管262を通じて圧送されたスラリー105を貯蔵するタンクである。スラグ貯蔵タンク27は、本体271と、フィルタ272とを有する。本体271は、中空の塔、本実施の形態では、水平断面が四角形となる角筒形状であり、鉛直方向下側に、径が徐々に小さくなる端部が設けられている。フィルタ272は、水砕スラグ103は通過させず、スラリー水104は通過させる部材であり、本体271の側面(壁面)に鉛直方向で複数配置され、かつ本体271の側面(壁面)の径が徐々に小さくなる部分に配置されている。スラグ貯蔵タンク27は、以上のような構成であり、スラリー搬送部26からスラリー105が供給されると、フィルタ272からスラリー水104のみを排出して排出水106とする一方、本体271の下側の端部に水砕スラグ103を貯蔵する。
【0027】
また、スラグ貯蔵タンク27は、本体271の側面(壁面)に複数配置されたフィルタ272の下側、および本体271の側面(壁面)の径が徐々に小さくなる部分に配置されたフィルタ272の下側に、水受部273a,273bを有する。この水受部273a,273bは、回収管274を介してスラリータンク261に接続されている。水受部273a,273bは、フィルタ272によって分離・排出される排出水106を回収する。そして、回収管274は、水受部273a,273bに回収された排出水106を、スラリータンク261に流す。
【0028】
また、スラグ貯蔵タンク27は、径が徐々に小さくなった下端に、排出口275を有している。排出口275は、スラグ貯蔵タンク27に貯蔵されている水砕スラグ103の排出の実行、停止を制御する。排出口275から排出された水砕スラグ103は、直下に待機している搬送車両40に排出される。なお、搬送車両40は、スラグ排出システム20から排出された水砕スラグ103を所定の位置まで運ぶ車両である。搬送車両40としては、トラックを用いることができる。なお、本実施の形態では、水砕スラグ103を搬送車両40に排出する構成としたが、これに限定されず、種々の対象に排出することができる。
【0029】
スラグ排出システム20は、以上のような構成であり、ガス化炉30の底部で生成された溶融スラグ101をスラグ冷却水102で冷却することで水砕スラグ103としてスラグホッパ22で回収する。そして、スラグ排出システム20は、スラグホッパ22の下端の開閉弁23から排出された水砕スラグ103をスラグ冷却水102と共にスラグロックホッパ24に一時的に貯留する。さらに、スラグ排出システム20は、スラグロックホッパ24に貯留した水砕スラグ103をスラグ溜25のスラグ溜タンク25aに所定時間毎に所定量落下させ、スラグ溜タンク25aに設置したスラグコンベア25bでスラリータンク261に搬送する。また、スラグ排出システム20は、スラリータンク261に貯留された水砕スラグ103をスラリー水104によりスラリー105とし、スラリー配管262とスラリーポンプ263とによりスラグ貯蔵タンク27に圧送する。また、スラグ排出システム20は、スラグ貯蔵タンク27に水砕スラグ103と共に圧送されたスラリー水104を、フィルタ272から排出し、水受部273a,273bで排出水106として回収する。水受部273a,273bで回収された排出水106は、回収管274を介してスラリータンク261に流され、再度スラリー水104として再利用される。また、液位調整手段264は、スラリータンク261の液位を一定範囲に維持する。
【0030】
このようなスラグ排出システム20において、スラリー配管262にスラリー105を圧送中、例えば、スラリーポンプ263でのシール部の破損や、インペラの一部破損などの機械的要因、またはスラリーポンプ263のモータに供給される電圧が低下してモータ回転数が低下するなどの電気的要因によって圧力が低下する場合がある。このような場合、スラリー配管262内でスラリー105がスラリー水104と水砕スラグ103とに分離して水砕スラグ103が堆積し、この堆積した水砕スラグ103によってスラリー配管262が閉塞するおそれがある。スラリー配管262に閉塞が生じると、これを除去するためにスラグ排出システム20を停止することとなり、場合によってはスラグ排出システム20が設けられたガス化炉30(石炭ガス化複合発電設備)を停止しなければならないことにもなる。
【0031】
このため、本実施の形態では、スラリー配管262の所定位置において、当該スラリー配管262内の状態を検知するスラリー配管監視装置を設置している。
【0032】
図2は、本実施の形態に係るスラリー配管監視装置の概略図であり、図3は、検出手段による検出状態を示す概略図である。
【0033】
図2に示すように、スラリー配管監視装置は、検出手段1を有する。検出手段1は、スラリー配管262内の通路の変形を検出するものである。
【0034】
検出手段1は、スラリー配管262内の加速度(単位時間当たりの速度変化量)を検出するものである。検出手段1は、機械式、光学式、半導体式がある。機械式の検出手段1は、例えば、ばねの変位から加速度を計測したり、ばねが振動する際の周波数の変化から加速度を計測したりする。また、機械式の検出手段1は、振動によるスラリー配管262の歪みに伴う金属歪みゲージの変形に基づき、電気抵抗の変化から加速度を測定する。光学式の検出手段1は、振動によるスラリー配管262の歪みに伴う光ファイバの長さおよび屈折率の変化に基づき、光ファイバ中を伝搬するレーザ光の位相変化から加速度を測定する。半導体式の検出手段1は、振動によるスラリー配管262の歪みに伴うコンデンサの位置変化に基づいて静電容量の変化から加速度を測定するものや、振動によるスラリー配管262の歪みに基づくピエゾ抵抗素子の電気抵抗の変化から加速度を測定するものや、振動によるスラリー配管262の歪みに基づく圧電素子の電荷の変化から加速度を測定するものがある。
【0035】
また、半導体式の検出手段1として、アコースティックエミッションを検出するものもある。アコースティックエミッション(Acoustic Emission:AE)は、材料の亀裂の発生や進展などの破壊に伴って発生する弾性波(振動、音波)である。そして、アコースティックエミッションを検出する検出手段1は、アコースティックエミッションによる圧電素子の電荷の変化から加速度を測定する。
【0036】
なお、検出手段1は、加速度を検出する以外に、上述した振動によるスラリー配管262の歪み自体を検出してもよい。
【0037】
ここで、スラリー配管262の所定位置とは、スラリー105を圧送するスラリー配管262内の圧力が低下した場合に、スラリー水104から分離した水砕スラグ103が重力によりスラリー配管262内で堆積し易いと想定される部分を言い、例えば、図2に示すように、スラリー配管262が水平に配置された部分や、スラリー配管262が曲がっている部分(特に上方に曲がっている部分)などがある。また、スラリー配管262が曲がっている部分は、スラリー水104から分離した水砕スラグ103が内壁面に衝突するので、スラリー配管262の歪みやアコースティックエミッションを検出するうえで好ましい。
【0038】
また、スラリー配管監視装置は、図2に示すように、監視部2と表示部3とを有する。監視部2は、検出手段1で検出した加速度(歪み)を入力する。また、監視部2は、スラリー配管262にスラリー105が圧送されている通常時(水砕スラグ103が堆積していない状態)での加速度(歪み)のデータが予め記憶されている。そして、監視部2は、記憶している加速度(歪み)のレベルと、検出手段1から入力した加速度(歪み)のレベルとを比較し、相互の加速度(歪み)に差がある場合、この差に応じてスラリー配管262内の状態を判定する。また、監視部2は、スラリー配管262内の状態の判定結果を表示部3に表示する。
【0039】
監視部2におけるスラリー配管262内の状態の判定について説明する。例えば、図3(a)は、スラリー配管262にスラリー105が圧送されている通常時を示す。また、図3(b)は、水砕スラグ103(一点鎖線で示す)が堆積している状態を示す。また、図3(c)は、スラリー配管262の内壁面が削れた状態を示す。そして、図3(a)〜図3(c)において、検出手段1に入力される振動を破線で示す。そして、図3(b)に示すように、堆積した水砕スラグ103を通過して検出手段1が検出する振動は、図3(a)の通常時と比較して伝搬する距離が長くなるため通常時に対して加速度(歪み)減となる。また、図3(c)に示すように、内壁面が削れたスラリー配管262を通過して検出手段1が検出する振動は、図3(a)の通常時と比較して伝搬する距離が短くなるため通常時に対して加速度(歪み)増となる。すなわち、監視部2は、通常時の加速度(歪み)を基準とし、基準の加速度(歪み)と入力した加速度(歪み)とを比較する。そして、監視部2は、基準の加速度(歪み)未満の加速度(歪み)の場合に加速度(歪み)減と判断し、何らかの異物が振動の伝搬に影響を与えている、すなわち水砕スラグ103が堆積していると判定する。一方、監視部2は、基準の加速度(歪み)を超える加速度(歪み)の場合に加速度(歪み)増と判断し、振動の伝搬に影響を与えるものが減少した、すなわち水砕スラグ103がスラリー配管262の内壁面に接触した摩擦によって当該内壁面が削れたと判定する。
【0040】
なお、監視部2は、上記加速度(歪み)増減の度合い、すなわち加速度(歪み)の増減値が、スラリー配管262の状態(スラリー配管262の外径寸法および内径寸法)に合わせたデータとして予め記憶されていることにより、加速度(歪み)の増減の度合いに応じ、水砕スラグ103の堆積度合いや、スラリー配管262の壁厚の減少度合いを判定することが可能である。
【0041】
表示部3は、判定結果を、文字、記号、色など、オペレータが見て識別できる情報として表示するものである。なお、図には明示しないが、表示部3に加え、アラームや音声により判定結果を知らせる報知部を設けてもよい。
【0042】
このように、本実施の形態のスラリー配管監視装置は、スラリー水(液体)104と水砕スラグ(固体)103とが混濁したスラリー105を圧送するスラリー配管262の所定位置に、スラリー配管262内の通路の変形を検出する検出手段1を設け、当該検出手段1の検出レベルの増減に応じてスラリー配管262内の状態を検知する。
【0043】
このスラリー配管監視装置によれば、スラリー105を圧送するスラリー配管262内の状態を監視することが可能である。このため、スラリー配管262が閉塞したり、亀裂が生じたりする以前に、スラリー配管262の清掃や補修を行うことが可能になる。すなわち、スラリー配管262が閉塞したり、亀裂が生じたりした場合には、このスラリー配管監視装置が適用されたシステム(例えば、上述したスラグ排出システム)を停止しなければならないことがあるが、そのような事態を回避し、当該システムへの影響を低減することが可能になる。
【0044】
また、本実施の形態のスラリー配管監視装置は、検出手段1が、スラリー配管262内の加速度またはスラリー配管262の歪みを検出する。
【0045】
上述した従来の監視装置では、超音波送波器と超音波受波器とを1組で備えて超音波の送受波をしなければならず、送受波のための配置に制限があり、かつ配線数が多く複雑な構成である。この点、このスラリー配管監視装置によれば、スラリー配管262の内部で生じる加速度またはスラリー配管262の歪みを検出するには、受信が1箇所でよいので、配置の制限が少なくなり、かつ配線数が少ないため構成が簡素化できる。しかも、スラリー配管262が大径化した場合に、超音波は伝搬に限界があるが、スラリー配管262の内部で生じる加速度またはスラリー配管262の歪みを検出する場合は、受信が1箇所でよいので、スラリー配管262の大径化の影響が少なく適用可能である。
【0046】
ところで、上述したスラリー配管監視装置においては、液体と固体とが混濁するスラリーをスラリー配管に圧送するスラリー搬送設備(例えば、図1に示すスラリー搬送部26)に適用される。また、上述したスラリー配管監視装置が適用されるスラリー搬送設備は、上述したスラリー搬送部26に限らず、例えば、火力発電所においてボイラから排出される石炭灰、ボトムアッシュ、またはフライアッシュが液体に混濁したスラリーを搬送するスラリー搬送設備や、工事現場において土砂が液体に混濁したスラリーを搬送するスラリー搬送設備や、下水処理時において汚泥が液体に混濁したスラリーを搬送するスラリー搬送設備がある。
【0047】
このように、液体と固体とが混濁したスラリーをスラリー配管262に圧送するスラリー搬送設備において、スラリー配管262に、上述したスラリー配管監視装置を適用する。
【0048】
このスラリー搬送設備によれば、スラリー105を圧送するスラリー配管262内の状態を監視することで、スラリー配管262が閉塞したり、亀裂が生じたりする以前に、スラリー配管262の清掃や補修を行うことが可能になる。すなわち、スラリー配管262が閉塞したり、亀裂が生じたりした場合には、スラリー搬送設備や、当該スラリー搬送設備が適用された設備を停止しなければならないことがあるが、そのような事態を回避し、当該設備での影響を低減することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明に係るスラリー配管監視装置およびスラリー搬送設備は、液体と固体とが混濁したスラリーを圧送するスラリー配管内の状態を監視することに適している。
【符号の説明】
【0050】
1 検出手段
2 監視部
3 表示部
26 スラリー搬送部(スラリー搬送設備)
261 スラリータンク
262 スラリー配管
263 スラリーポンプ
103 水砕スラグ
105 スラリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と固体とが混濁したスラリーを圧送するスラリー配管の所定位置に、前記スラリー配管内の通路の変形を検出する検出手段を設け、当該検出手段の検出レベルの増減に応じて前記スラリー配管内の状態を検知することを特徴とするスラリー配管監視装置。
【請求項2】
前記検出手段が、前記スラリー配管内の加速度または前記スラリー配管の歪みを検出することを特徴とする請求項1に記載のスラリー配管監視装置。
【請求項3】
液体と固体とが混濁したスラリーをスラリー配管に圧送するスラリー搬送設備において、
前記スラリー配管に、請求項1または2に記載のスラリー配管監視装置を適用することを特徴とするスラリー搬送設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−106839(P2012−106839A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257292(P2010−257292)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)