説明

スリットノズルおよび基板処理装置

【課題】気泡を含む液体が基板などの対象物に供給されることを抑制または防止できるスリットノズルおよびこれを備えた基板処理装置を提供すること。
【解決手段】スリットノズル11は、長手方向X1に延びるスリット状の吐出口54が形成された吐出部45と、吐出口54に供給される液体が流通する液体流路55が形成された供給部43と、液体流路55を上流側と下流側とに仕切っており、上流側と下流側とを接続する複数の第1接続路64が形成された第1拡散板47とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スリット状の吐出口から液体を吐出するスリットノズル、および基板を処理する基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板を処理する基板処理装置が用いられる。基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置は、たとえば、円形基板を水平に支持する基板支持部材と、基板支持部材の上面に薬液を供給するスリットノズルとを備えている。スリットノズルは、水平な長手方向に延びるスリット状の吐出口を有している。吐出口から薬液が下方に吐出されると、長手方向に延びる帯状の液膜が形成される。スリットノズルは、液膜の下縁が基板の直径を含む領域に接するように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−206486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スリットノズルには、ポンプなどの液体供給装置によって薬液が供給される。スリットノズルに供給される薬液には、気泡が含まれている場合がある。また、スリットノズル内で気泡が発生する場合がある。しかしながら、気泡を含む薬液が基板に供給されると、処理の均一性が低下してしまう。
そこで、この発明の目的は、気泡を含む液体が基板などの対象物に供給されることを抑制または防止できるスリットノズルおよびこれを備えた基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、スリット状の吐出口(54)から液体を吐出するスリットノズルであって、前記吐出口が形成された吐出部(45)と、前記吐出口に供給される液体が流通する液体流路(55)が形成された供給部(43)と、前記液体流路を上流側と下流側とに仕切っており、前記上流側と前記下流側とを接続する複数の第1接続路(64)が形成された第1拡散部(47)とを含む、スリットノズル(11)である。
【0006】
この構成によれば、液体流路から吐出口に供給された液体が、スリット状の吐出口から吐出される。液体流路が第1拡散部によって上流側と下流側とに仕切られているから、第1拡散部より上流側の領域に供給された液体は、第1拡散部によって堰き止められて、この領域に貯留される。これにより、液体が第1拡散部の全域に行き渡る。すなわち、液体が第1拡散部の全域に拡散する。そして、第1拡散部の全域に拡散した液体は、第1拡散部に形成された複数の第1接続路を通って第1拡散部より下流側の領域に移動する。このとき、液体は、一部の第1接続路だけを通過するのではなく、全ての第1接続路または殆ど全ての第1接続路を通過する。これにより、第1拡散部より下流側の領域に液体が均一に供給される。したがって、第1拡散部より下流側の領域で液体の均一な流れが形成され、この領域での液体の滞留が抑制または防止される。そのため、液体に含まれる気泡や、第1拡散部より下流側の領域で発生した気泡は、スリットノズルに液体が供給される初期の段階で、液体と共に吐出口から速やかに排出される。よって、初期の段階より後に、気泡を含む液体が対象物に供給されることを抑制または防止できる。また、予め気泡を排出すれば、気泡を含む液体が対象物に供給されることを確実に抑制または防止できる。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記第1拡散部よりも下流側で前記液体流路を上流側と下流側とに仕切っており、前記上流側と前記下流側とを接続する複数の第2接続路(65)が形成された第2拡散部(48)をさらに含む、請求項1に記載のスリットノズルである。
この構成によれば、第1拡散部よりも下流側の領域が、第2拡散部によって上流側と下流側とに仕切られているので、第1拡散部より下流側の領域に移動した液体は、第2拡散部によって堰き止められて、第1拡散部と第2拡散部との間の領域に貯留される。これにより、液体が第2拡散部の全域に拡散する。そして、第2拡散部の全域に拡散した液体は、第2拡散部に形成された複数の第2接続路を通って第2拡散部より下流側の領域に移動する。このように、液体流路に供給された液体が第1拡散部および第2拡散部によって複数回拡散されるので、第2拡散部より下流側の領域に液体が均一に供給される。さらに、液体流路に供給された液体が複数の第1接続路および複数の第2接続路によって複数回整流されるので、第2拡散部より下流側の領域により均一な液体の流れが形成される。したがって、第2拡散部より下流側の領域から気泡を確実に排出できる。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記複数の第2接続路の流路面積は、前記複数の第1接続路の流路面積よりも小さい、請求項2に記載のスリットノズルである。
複数の第1接続路の流路面積は、吐出口からの液体の吐出方向に直交する平面で複数の第1接続路を切断した断面の面積である。複数の第2接続路についても同様である。第1接続路および第2接続路の流路面積が、液体の流通方向に沿って変化している場合には、複数の第2接続路の最小流路面積が、複数の第1接続路の最小流路面積よりも小さい。
【0009】
この構成によれば、下流側の拡散部(第2拡散部)に形成された複数の第2接続路の流路面積が、上流側の拡散部(第1拡散部)に形成された複数の第1接続路の流路面積よりも小さい。したがって、十分な量の液体が複数の第2接続路に供給される。そのため、全ての第2接続路または殆ど全ての第2接続路を液体が通過し、第2拡散部より下流側の領域に液体が均一に供給される。これにより、第2拡散部より下流側の領域に均一な液体の流れが形成される。したがって、第2拡散部より下流側の領域から気泡を確実に排出できる。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記液体流路は、前記第1拡散部より上流側に配置された上流部(U1)と、前記第1拡散部と前記第2拡散部との間に配置されており、前記上流部より体積が小さい中流部(M1)と、前記第2拡散部より下流側に配置されており、前記中流部よりも体積が小さい下流部(D1)とを含む、請求項2または3に記載のスリットノズルである。
【0011】
この構成によれば、液体流路が、第1拡散部および第2拡散部によって3つの領域(上流部、中流部、および下流部)に区画されている。上流部の体積は、中流部の体積より大きく、中流部の体積は、下流部の体積より大きい。したがって、十分な量の液体が中流部に供給され、さらに十分な量の液体が下流部に供給される。これにより、第1拡散部より下流側の領域(中流部および下流部)が、液体で満たされる。そのため、全ての空気または殆ど全ての空気が、第1拡散部より下流側の領域から排出され、この領域での気泡の発生が抑制または防止される。
【0012】
請求項5記載の発明は、前記液体流路は、前記第1拡散部より上流側に配置されたバッファ空間(56)と、前記第1拡散部より下流側に配置されており、前記バッファ空間に接続された複数の分岐路(57)と、各分岐路に接続されており、前記第2拡散部によって仕切られた集合路(58)とを含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載のスリットノズルである。
【0013】
この構成によれば、バッファ空間に供給された液体が、第1拡散部を通過した後、複数の分岐路を通って集合路に集合する。そして、集合路に集合した液体は、第2拡散部を通過した後、吐出口から吐出される。第1拡散部より下流側の領域が分岐しており、流路面積の小さい複数の分岐路によって構成されているから、各分岐路の全域に液体の流れを形成できる。これにより、第2拡散部より下流側の領域から気泡を確実に排出できる。
【0014】
請求項6記載の発明は、前記液体流路は、前記第1拡散部より上流側に配置されたバッファ空間を含み、前記供給部は、前記バッファ空間に液体を供給する流入口(62)が開口しており、前記バッファ空間を区画する内面(60)を含み、前記バッファ空間は、前記流入口より上方の上方空間(63)を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスリットノズルである。
【0015】
この構成によれば、第1拡散部より上流側に配置されたバッファ空間に液体を供給する流入口が、このバッファ空間を区画する供給部の内面で開口している。バッファ空間は、流入口より上方の上方空間を含む。流入口からバッファ空間に供給された液体に気泡が含まれていたとしても、この気泡は、浮力によって上方空間に移動し、上方空間に溜まる。同様に、バッファ空間で気泡が発生したとしても、この気泡は、上方空間に溜まる。したがって、気泡を含む液体が第1拡散部より下流側の領域に供給されることを抑制または防止できる。これにより、気泡を含む液体が吐出口から吐出されることを抑制または防止できる。
【0016】
請求項7記載の発明は、請求項1〜請求項6に記載のスリットノズルと、前記スリットノズルに処理液を供給する処理液配管(13)と、基板(W)を保持する基板保持手段(C1)と、前記スリットノズルおよび前記基板保持手段に保持されている基板の少なくとも一方を移動させて、前記スリットノズルと前記基板とを相対移動させる相対移動手段(14)とを含む、基板処理装置(1)である。
【0017】
この構成によれば、処理液配管からスリットノズルに供給された処理液が吐出口から吐出される。これにより、基板保持手段に保持されている基板に処理液が供給される。相対移動手段は、スリットノズルおよび基板保持手段に保持されている基板の少なくとも一方を移動させることにより、スリットノズルと基板とを相対移動させる。これにより、処理液の供給位置が基板を走査し、基板の広範囲に処理液が供給される。さらに、スリットノズルは、気泡を含む処理液が基板に供給されることを抑制または防止できるので、処理の均一性を向上させることができる。
【0018】
前記相対移動手段は、基板を移動させる基板移動手段であってもよいし、スリットノズルを移動させるノズル移動手段であってもよいし、基板およびスリットノズルを移動させる基板・ノズル移動手段であってもよい。
なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る薬液ノズルの模式的な斜視図である。
【図3】図4に示すIII−III線に沿う薬液ノズルの模式的な断面図である。
【図4】図3に示すIV−IV線に沿う薬液ノズルの模式的な断面図である。
【図5A】本発明の一実施形態に係るガイドの模式的な斜視図である。
【図5B】ガイドを含む図3の一部を拡大した模式的な断面図である。
【図6A】薬液ノズルから基板に薬液が供給されている状態を上から見た模式図である。
【図6B】薬液ノズルから基板に薬液が供給されている状態を水平方向から見た模式図である。
【図7A】薬液ノズルから基板への薬液の供給状態について説明するための模式的な拡大図である。
【図7B】薬液ノズルから基板への薬液の供給状態について説明するための模式的な拡大図である。
【図8A】未処理の基板が処理室に搬入されてから処理済みの基板が処理室から搬出されるまでに行われる工程を示す図解的な断面図である。
【図8B】図6Aの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図8C】図6Bの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図8D】図6Cの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図8E】図6Dの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図8F】図6Eの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図8G】図6Fの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図9A】本発明の一実施形態に係る薬液ノズルの第1変形例を示す図解的な断面図である。
【図9B】本発明の一実施形態に係る薬液ノズルの第2変形例を示す図解的な断面図である。
【図9C】本発明の一実施形態に係る薬液ノズルの第3変形例を示す図解的な断面図である。
【図9D】本発明の一実施形態に係る薬液ノズルの第4変形例を示す図解的な断面図である。
【図9E】本発明の一実施形態に係る薬液ノズルの第5変形例を示す図解的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
以下に説明する基板処理装置は、半導体ウエハなどの円板状の基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置である。基板処理装置は、洗浄装置、エッチング装置、レジスト塗布装置、および現像装置のいずれであってもよく、基板に対するその他の処理を行う装置であってもよい。
【0021】
以下の実施形態に係る基板処理装置は、デバイス形成面である表面とは反対側の裏面をエッチングすることにより、シリコンウエハをシンニングする(薄くする)エッチング装置である。このエッチング装置によって処理される基板は、たとえば、シリコンウエハと支持基板とを貼り合わせた貼合せ基板である。貼合せ基板は、シリコンウエハと、接着剤によってシリコンウエハのデバイス形成面(表面)に貼り付けられた支持基板とによって構成されている。支持基板は、たとえば、ガラス基板からなり、シリコンウエハと実質的に同等の半径を有する円形基板である。支持基板を用いることによって、シリコンウエハの変形および破損を抑制または防止しながら、その吸着保持および搬送を行うことができる。シリコンウエハの薄型化のために用いられるエッチング液は、たとえば、フッ硝酸(フッ酸硝酸混合液)であってもよいし、バッファードフッ酸であってもよい。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す模式図である。
基板処理装置1は、基板Wを水平に保持するセンターチャック2を含む。後述するように、センターチャック2は、上面処理位置と受渡位置との間で移動可能である。図1では、センターチャック2が上面処理位置に位置している状態が示されている。以下では、センターチャック2が上面処理位置に位置している状態について説明する。
【0023】
基板処理装置1は、センターチャック2に保持されている基板Wに処理液を供給する処理液供給ユニット3と、センターチャック2の周囲に配置されたリング4と、センターチャック2の周囲でリング4を水平に支持するベース5と、基板Wを収容する処理室6を形成する隔壁(図示せず)とを含む。さらに、基板処理装置1は、センターチャック2に基板Wを吸着させる吸引ユニット7と、センターチャック2に保持されている基板Wを昇降させるチャック昇降ユニット8と、センターチャック2に保持されている基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させる回転ユニット9と、基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する制御装置10とを含む。基板Wを水平に保持して回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャックC1(基板保持手段)は、センターチャック2、ベース5、リング4、および回転ユニット9によって構成されている。
【0024】
処理液供給ユニット3は、基板Wの上面に薬液を供給する薬液ノズル11を含む。薬液ノズル11は、水平な長手方向X1に延びるスリット状の吐出口54(図2参照)を有するスリットノズルである。薬液ノズル11は、薬液バルブ12が介装された薬液配管13(処理液配管)に接続されている。さらに、薬液ノズル11は、薬液ノズル11を水平方向および鉛直方向に移動させるノズル移動ユニット14(相対移動手段)に接続されている。ノズル移動ユニット14は、薬液ノズル11が基板W上を通過するように、長手方向X1に直交する水平な直交方向Y1に薬液ノズル11を移動させる構成であってもよいし、薬液ノズル11が基板W上を通過するように、円弧状の軌跡に沿って薬液ノズル11を水平に移動させる構成であってもよい。図示はしないが、ノズル移動ユニット14は、たとえば、モータと、モータの動力を薬液ノズル11に伝達する伝達機構とを含む。
【0025】
処理液供給ユニット3は、さらに、基板Wの上面にリンス液を供給する上面リンス液ノズル15と、基板Wの下面周縁部にリンス液を供給する下面リンス液ノズル16とを含む。上面リンス液ノズル15は、上面リンス液バルブ17が介装された上面リンス液配管18に接続されている。さらに、上面リンス液ノズル15は、上面リンス液ノズル15を水平方向および鉛直方向に移動させるノズル移動ユニット(図示せず)に接続されている。同様に、下面リンス液ノズル16は、下面リンス液バルブ19が介装された下面リンス液配管20に接続されている。さらに、下面リンス液ノズル16は、下面リンス液ノズル16を水平方向および鉛直方向に移動させるノズル移動ユニット(図示せず)に接続されている。上面リンス液ノズル15および下面リンス液ノズル16は、たとえば、連続流の状態でリンス液を吐出するストレートノズルである。上面リンス液ノズル15は、下向きにリンス液を吐出し、下面リンス液ノズル16は、上向きにリンス液を吐出する。
【0026】
センターチャック2は、水平に配置された円板状の吸着ヘッド21と、吸着ヘッド21の中央部から下方に延びる筒状の吸着軸22とを含む。吸着ヘッド21の外径は、基板Wの直径よりも小さい。基板Wの下面中央部は、吸着ヘッド21の上面によって支持されている。センターチャック2の内部(吸着ヘッド21および吸着軸22の内部)には、吸着ヘッド21の上面中央部から下方に延びる吸引路23が形成されており、吸着ヘッド21の上面には、吸引路23に連通する吸引溝24が形成されている。吸引溝24は、吸引路23の上端を同心円状に取り囲む複数の環状溝と、吸引路23の上端から放射状に延びる複数の放射溝とを含む。図1では、複数の環状溝だけが図示されている。吸引ユニット7は、吸引路23に接続されている。吸引ユニット7の吸引力は、吸引路23を介して吸引溝24に伝達される。吸着ヘッド21によって基板Wが支持されている状態で、吸引路23が吸引ユニット7によって吸引されると、基板Wは、吸引ユニット7からの吸引力によって吸着ヘッド21に吸引される。これにより、基板Wが水平に保持される。
【0027】
ベース5は、水平に配置された円板状のベースプレート25と、ベースプレート25の中央部から下方に延びる筒状のベースシャフト26とを含む。ベースプレート25およびベースシャフト26の内部には、ベースプレート25の上面中央部から下方に延びる挿入孔27が形成されている。吸着ヘッド21は、ベースプレート25の上方に配置されており、吸着軸22は、挿入孔27に挿入されている。ベース5の内周面(挿入孔27の内周面)と吸着軸22の外周面は、上下方向に延びる筒状の気体供給路28を形成している。気体供給路28の上端は、ベースプレート25の上面と吸着ヘッド21の下面との間の平面視円形の空間に連なっている。気体供給路28の下端は、気体バルブ29が介装された気体配管30に接続されている。気体供給源からの気体は、気体配管30を介して気体供給路28に供給される。気体供給路28に供給される気体は、たとえば、窒素ガスなどの不活性ガスであってもよいし、清浄空気などのその他の気体であってもよい。
【0028】
ベース5は、吸着軸22の外周面に取り付けられた複数のキー31と、ベース5の内周面に設けられた複数のキー溝との係合によって、センターチャック2に連結されている。センターチャック2およびベース5は、キー31に限らず、スプラインによって連結されていてもよい。キー31およびキー溝は、上下方向に延びている。センターチャック2およびベース5は、キー31およびキー溝の係合によって同軸的に連結されている。また、図示はしないが、ベース5は、回転軸線A1まわりに回転可能に保持されている。センターチャック2およびベース5が上下方向に延びるキー31によって連結されており、ベース5が回転可能であるから、センターチャック2およびベース5は、上下に相対移動可能であり、回転軸線A1まわりに一体回転可能である。
【0029】
ベースプレート25は、センターチャック2を支持するチャック支持部32と、センターチャック2を取り囲む環状の外壁33と、外壁33に設けられた環状のシール保持凹部34と、リング4を支持する環状のリング支持部35とを含む。チャック支持部32は、吸着ヘッド21と概ね同じ大きさの外径を有する円板状の部分である。外壁33、シール保持凹部34、およびリング支持部35は、チャック支持部32を同心円状に取り囲んでいる。チャック支持部32の上面は、吸着ヘッド21の下面に対向している。チャック支持部32は、チャック支持部32の上面から上方に突出する堰き止め突起36を含む。堰き止め突起36は、ベースプレート25と同心で、全周に亘って連続した環状の部分である。堰き止め突起36は、吸着ヘッド21の下面に設けられた嵌合溝に嵌合している。また、堰き止め突起36の外側には、堰き止め突起36を取り囲むチャック用シール37が配置されている。チャック用シール37は、吸着ヘッド21に保持されており、堰き止め突起36の外側でチャック支持部32の上面に押し付けられている。これにより、チャック支持部32の上面と吸着ヘッド21の下面との隙間がシールされている。吸着ヘッド21は、チャック用シール37を介してベースプレート25に支持されている。
【0030】
外壁33は、ベースプレート25と同心で、全周に亘って連続した環状の部分である。外壁33は、チャック支持部32と共に、吸着ヘッド21を収容する平面視円形の収容凹部38を形成している。外壁33は、基板Wの下面に対向する環状の対向面39を含み、リング4は、対向面39より外側に配置された環状面40を含む。リング4は、複数のボルト41によってベース5に連結されている。対向面39および環状面40は、同心円状に配置されており、シール保持凹部34は、対向面39および環状面40の間に配置されている。対向面39は、外壁33の上面の一部であり、環状面40は、リング4の上面である。対向面39および環状面40は、互いに異なる高さに配置された上向きの水平面である。すなわち、対向面39は、センターチャック2の上面と概ね同じ高さに配置されている。環状面40は、対向面39の外側で対向面39より上方に配置されている。環状面40は、センターチャック2に保持されている基板Wの上面を含む水平面に沿って配置されており、基板Wの上面と概ね同じ高さに配置されている。環状面40は、基板Wの上面と同じ高さに配置されていてもよいし、基板Wの上面よりやや上側または下側に配置されていてもよい。環状面40の内周縁は、径方向の微小隙間(たとえば、数mm以下の隙間)を介して基板Wを取り囲んでおり、基板Wの周端面に近接している。
【0031】
外壁33に設けられたシール保持凹部34は、対向面39および環状面40より下方に凹んでいる。シール保持凹部34は、基板用シール42を保持している。基板用シール42は、全周に亘って連続した環状の弾性体である。基板用シール42は、たとえば、リップ付きのパッキンである。基板用シール42の上面は、センターチャック2に保持されている基板Wの下面周縁部に押し付けられている。これにより、基板Wの下面周縁部とベース5との間の隙間がシールされている。基板用シール42が基板Wに押し付けられている状態では、基板用シール42の上面の外周縁と基板Wの下面の外周縁とが一致している。さらに、基板用シール42の上面は、弾性変形による復元力によって、基板Wの下面周縁部に密着している。これにより、基板Wの下面周縁部が基板用シール42によって保護されており、基板Wの下面周縁部に対する処理液の接触が防止されている。
【0032】
チャック昇降ユニット8は、センターチャック2(吸着軸22)に連結されている。前述のように、センターチャック2およびベース5は、キー31によって上下方向に相対移動可能に連結されている。したがって、チャック昇降ユニット8の駆動力が、センターチャック2に入力されると、センターチャック2は、ベース5およびリング4に対して昇降する。チャック昇降ユニット8は、上面処理位置(下位置)と、上面処理位置の上方の下面処理位置(中間位置)と、さらに上方の受渡位置(上位置)との間でセンターチャック2を昇降させる。上面処理位置および下面処理位置は、それぞれ、基板Wの上面および下面の処理が行われる位置であり、受渡位置は、基板Wを搬送する搬送ロボットR(図8A参照)とセンターチャック2との間で基板Wの受け渡しが行われる位置である。上面処理位置では、基板Wの下面が基板用シール42に接触しており、下面処理位置では、基板Wの下面が基板用シール42から離れている(図8A参照)。また、受渡位置では、センターチャック2(吸着ヘッド21)が、リング4より上方に位置している(図8G参照)。
【0033】
また、回転ユニット9は、ベース5に連結されている。前述のように、センターチャック2およびベース5は、キー31によって一体回転可能に連結されており、ベース5およびリング4は、ボルト41によって一体回転可能に連結されている。キー31およびキー溝は、上下方向に延びており、センターチャック2が上面処理位置(下位置)と受渡位置(上位置)との間のいずれの高さに位置している状態でも噛み合っている。したがって、回転ユニット9の駆動力が、ベース5に入力されると、この駆動力が、ベース5からセンターチャック2およびリング4に伝達され、センターチャック2、ベース5、およびリング4が、回転軸線A1まわりに一体回転する。これにより、センターチャック2に保持されている基板Wが回転軸線A1まわりに回転する。
【0034】
図2は、薬液ノズル11の模式的な斜視図である。図2では、後述するボルト51およびボルト52の図示が省略されている。以下では、薬液ノズル11の概略構成について説明する。
薬液ノズル11は、長手方向X1に延びる直方体状の本体43(供給部)と、パッキン44を介して本体43の下面に取り付けられた吐出部材45(吐出部)と、吐出部材45に取り付けられた一対のガイド46(ガイド部)とを含む。パッキン44、吐出部材45、およびガイド46は、本体43の下方に配置されている。吐出部材45は、長手方向X1に延びる長方形状のプレートである。吐出部材45は、長手方向X1に延びるスリット状の吐出口54を形成している。パッキン44は、本体43と吐出部材45とによって上下に挟まれており、本体43および吐出部材45に密着している。これにより、本体43および吐出部材45の間の隙間がシールされている。一方のガイド46は、長手方向X1に関する吐出部材45の一端部に取り付けられており、他方のガイド46は、長手方向X1に関する吐出部材45の他端部に取り付けられている。したがって、一対のガイド46は、長手方向X1に間隔を空けて対向している。
【0035】
2本の薬液配管13は、本体43に取り付けられている。ポンプ(図示せず)によって送られる薬液は、2本の薬液配管13を介して本体43に供給される。そして、薬液配管13から本体43に供給された薬液は、本体43から吐出部材45に供給され、吐出口54から下方に吐出される。前述のように、吐出口54は、長手方向X1に延びるスリット状である。したがって、吐出口54から薬液が吐出されると、吐出口54の長さとほぼ同じ幅(長手方向X1への長さ)を有する帯状の液膜が形成される。一方のガイド46は、吐出口54の一端部の近傍に配置されており、他方のガイド46は、吐出口54の他端部の近傍に配置されている。したがって、吐出口54から吐出された薬液によって形成された液膜の両端は、それぞれ、一対のガイド46によって案内される。
【0036】
図3は、図4に示すIII−III線に沿う薬液ノズル11の模式的な断面図である。図4は、図3に示すIV−IV線に沿う薬液ノズル11の模式的な断面図である。図3に示す薬液ノズル11の断面は、鉛直面で薬液ノズル11を切断したときに現れる断面ではなく、薬液ノズル11内での薬液の流通方向に沿う面(図4に示すIII−III線に沿う折れ曲がった面)で薬液ノズル11を切断したときに現れる断面である。
【0037】
図3に示すように、薬液ノズル11は、本体43の内部に配置された第1拡散板47(第1拡散部)および第2拡散板48(第2拡散部)をさらに含む。本体43は、中空であり、上下に分割されている。本体43は、上下に組み合わされた上部材49および下部材50を含む。上部材49および下部材50は、いずれも長手方向X1に延びる直方体状である。第1拡散板47および第2拡散板48は、下部材50の内部に配置されている。吐出部材45は、パッキン44および吐出部材45を上下に貫通する複数のボルト51によって下部材50に取り付けられている。同様に、ガイド46は、パッキン44および吐出部材45を上下に貫通する複数のボルト52(図4参照)によって下部材50に取り付けられている。したがって、パッキン44、吐出部材45、およびガイド46は、取り外し可能に本体43に取り付けられている。
【0038】
薬液ノズル11において薬液に接する部分、すなわち、本体43、パッキン44、吐出部材45、ガイド46、第1拡散板47、および第2拡散板48は、合成樹脂などの耐薬性を有する耐薬性材料によって形成されている。耐薬性材料は、たとえば、ポリ塩化ビニル(Poly Vinyl Chloride)および炭化ケイ素(Silicon Carbide)のうちの少なくとも一つを含む材料であってもよい。本体43およびガイド46は、たとえば、ポリ塩化ビニルによって形成されている。吐出部材45は、たとえば、炭化ケイ素によって形成されている。ポリ塩化ビニルは、耐薬性材料であると共に、水との接触角が基板Wよりも大きい疎水性材料でもある。したがって、本体43およびガイド46は、耐薬性を有する疎水性の表面を有している。本体43およびガイド46の表面と水との接触角は、たとえば、70度より大きい。
【0039】
薬液ノズル11は、薬液配管13から供給される薬液が流入する2つの流入孔53と、流入孔53に供給された薬液を吐出する前述の吐出口54と、流入孔53と吐出口54とを接続する薬液流路55(液体流路)とを含む。流入孔53は、本体43によって形成されており、吐出口54は、吐出部材45によって形成されている。また、薬液流路55は、本体43、パッキン44、吐出部材45、第1拡散板47、および第2拡散板48によって形成されている。薬液流路55は、第1拡散板47および第2拡散板48によって、薬液の流通方向に直交する方向に仕切られている。第1拡散板47より上流側の領域は、薬液流路55の上流部U1であり、第1拡散板47と第2拡散板48との間の領域は、薬液流路55の中流部M1である。また、第2拡散板48より下流側の領域は、薬液流路55の下流部D1である。
【0040】
図4に示すように、薬液流路55は、流入孔53に接続されたバッファ空間56と、バッファ空間56に接続された2つの分岐路57と、各分岐路57に接続された集合路58とを含む。バッファ空間56の体積は、分岐路57および集合路58の総体積よりも大きい。第1拡散板47は、バッファ空間56と分岐路57との間を仕切っており、第2拡散板48は、集合路58を仕切っている。集合路58は、分岐路57の下流端から本体43の下面に至る流路と、パッキン44を上下に貫通する長孔と、吐出部材45を上下に貫通するスリット59とを含む。スリット59は、長手方向X1に延びる隙間である。長手方向X1へのスリット59の長さは、吐出部材45より短い。また、スリット59の幅(直交方向Y1への長さ)は、たとえば、60〜80μmである。スリット59の上端は、吐出部材45の上面で開口しており、吐出口54に相当するスリット59の下端は、吐出部材45の下面で開口している。
【0041】
バッファ空間56は、長手方向X1に連続した空間である。図3に示すように、バッファ空間56の上部は、上部材49の内面に設けられた2つの斜面60(内面)によって区画されている。バッファ空間56の上部は、上の凸の山形である。バッファ空間56は、バッファ空間56の頂部61を通り、長手方向X1に直交する鉛直面に関して対称である。2つの流入孔53は、バッファ空間56の上方に配置されている。流入孔53は、鉛直方向に延びる柱状の空間である。流入孔53の上端は、本体43の上面で開口しており、流入口62に相当する流入孔53の下端は、上部材49の内面で開口している。すなわち、2つの流入口62は、それぞれ、2つの斜面60で開口している。2つの流入口62は、長手方向X1に関してバッファ空間56の頂部61の両側に配置されている。流入口62は、バッファ空間56の頂部61より下方に配置されている。したがって、バッファ空間56は、流入口62より上方に位置する上方空間63を含む。
【0042】
図4に示すように、バッファ空間56より下流側の領域、すなわち、分岐路57および集合路58は、Y字状の断面を有している。具体的には、分岐路57および集合路58は、長手方向X1に連続した帯状の空間である。長手方向X1への分岐路57の長さは、長手方向X1への集合路58の長さと等しい。さらに、長手方向X1への分岐路57および集合路58の長さは、長手方向X1へのバッファ空間56の下端の長さと等しい。図4に示すように、集合路58は、鉛直方向に延びる直線状の空間であり、分岐路57は、鉛直方向に対して傾いた方向に延びる直線状の空間である。2つの分岐路57は、集合路58より上方に配置されている。各分岐路57の下流端は、共通の位置で集合路58に接続されている。したがって、分岐路57および集合路58は、Y字状に配置されている。
【0043】
また、図4に示すように、第1拡散板47は、上向きに開いた長手方向X1に延びるトレー状のプレートである。第1拡散板47は、薬液の流通方向に第1拡散板47を貫通する複数の第1接続路64を含む。同様に、第2拡散板48は、上向きに開いた長手方向X1に延びるトレー状のプレートであり、薬液の流通方向に第2拡散板48を貫通する複数の第2接続路65を含む。第1拡散板47および第2拡散板48は、上下に間隔を空けて平行に配置されている。直交方向Y1への第1拡散板47の長さは、直交方向Y1への第2拡散板48の長さより長い。また、図3に示すように、長手方向X1への第1拡散板47の長さは、長手方向X1への第2拡散板48の長さと等しい。バッファ空間56と分岐路57とは、複数の第1接続路64によって接続されており、分岐路57と集合路58とは、複数の第2接続路65によって接続されている。
【0044】
図4に示すように、第1拡散板47に設けられた複数の第1接続路64は、互いに平行な2つの列L1を構成している。図3に示すように、各列L1は、長手方向X1に間隔を空けて配列された複数の第1接続路64によって構成されている。図4に示すように、一方の列L1を構成する複数の第1接続路64は、一方の分岐路57の上流端に沿って配置されており、他方の列L1を構成する複数の第1接続路64は、他方の分岐路57の上流端に沿って配置されている。図3に示すように、列L1の両端に配置された2つの第1接続路64は、それぞれ、長手方向X1に関する分岐路57の一端部および他端部の上方に配置されている。同様に、第2拡散板48に設けられた複数の第2接続路65は、1つの列L2を構成している。列L2は、長手方向X1に間隔を空けて配列された複数の第2接続路65によって構成されている。図3に示すように、列L2の両端に配置された2つの第2接続路65は、それぞれ、長手方向X1に関する集合路58の一端部および他端部の上方に配置されている。列L2を構成する第2接続路65の数は、列L1を構成する第1接続路64の数よりも多い。したがって、長手方向X1に隣接する2つの第2接続路65の間隔は、長手方向X1に隣接する2つの第1接続路64の間隔よりも狭い。
【0045】
複数の第1接続路64の流路面積は、複数の第2接続路65の流路面積よりも大きい。すなわち、第1拡散板47の流路面積は、第2拡散板48の流路面積よりも大きい。また、2つの流入口62の流路面積(開口面積)は、第1拡散板47の流路面積よりも大きく、第2拡散板48の流路面積は、吐出口54の流路面積(開口面積)よりも大きい。したがって、流入口62、第1拡散板47、第2拡散板48、および吐出口54の流路面積は、この順番で段階的に減少している。また、図4に示すように、第1拡散板47より上流側の上流部U1の体積は、第1拡散板47と第2拡散板48との間の中流部M1の体積より大きく、中流部M1の体積は、第2拡散板48より下流側の下流部D1の体積よりも大きい。したがって、上流部U1、中流部M1、および下流部D1の体積は、この順番で減少している。
【0046】
図3を見ると分かるように、流入孔53に供給された薬液は、流入口62からバッファ空間56に下向きに吐出される。バッファ空間56と分岐路57との間が第1拡散板47によって仕切られているから、流入口62から薬液が吐出されると、バッファ空間56に薬液が貯留される。これにより、第1拡散板47の全域に薬液が行き渡り、均一な流量で薬液が各第1接続路64を通過する。そのため、各分岐路57に薬液が均一に供給される。さらに、流入口62より上方に位置する上方空間63がバッファ空間56に設けられているから、流入孔53に供給された薬液に気泡が含まれていたとしても、この気泡は、浮力によって上方空間63に移動して、上方空間63に溜まる。同様に、バッファ空間56で気泡が発生したとしても、この気泡は、上方空間63に溜まる。したがって、気泡を含む薬液が各分岐路57に供給されることを抑制または防止できる。
【0047】
また、図4を見ると分かるように、各分岐路57に供給された薬液は、集合路58で集合した後、集合路58を仕切る第2拡散板48の全域に行き渡る。これにより、均一な流量で薬液が各第2接続路65を通過する。そして、第2接続路65を通過した薬液は、吐出口54から下方に吐出される。薬液が各第1接続路64を通過すると、第1拡散板47と第2拡散板48との間の中流部M1の全域に薬液が行き渡り、中流部M1が薬液で満たされる。これにより、中流部M1の全域に薬液の流れが形成される。同様に、薬液が各第2接続路65を通過すると、第2拡散板48より下流側の下流部D1が薬液で満たされ、下流部D1の全域に薬液の流れが形成される。したがって、薬液ノズル11に薬液が供給される初期の段階で中流部M1および下流部D1に気泡が存在していたとしても、この気泡は、薬液と共に吐出口54から速やかに排出される。
【0048】
このように、第1拡散板47より下流側の領域に存在する気泡が初期の段階で排出されるから、気泡を含む薬液が基板Wに供給されることを抑制または防止できる。さらに、気泡を溜める上方空間63がバッファ空間56に設けられているから、気泡を含む薬液が各分岐路57に供給され、吐出口54から吐出されることを抑制または防止できる。これにより、薬液処理の均一性を向上させることができる。しかも、薬液流路55の流路面積が、下流に近づくに従って段階的に減少しているので、中流部M1および下流部D1の全域が薬液によって満たされ、均一な薬液の流れが中流部M1および下流部D1に形成される。そのため、吐出口54の全域に均一な流量で薬液が供給され、吐出口54の全域から均一な流量で薬液が吐出される。これにより、処理の均一性をさらに向上させることができる。
【0049】
図5Aは、ガイド46の模式的な斜視図である。図5Bは、ガイド46を含む図3の一部を拡大した模式的な断面図である。
図5Aに示すように、ガイド46は、ガイド46の内面に相当するたとえばT字状のガイド面66を含む。一対のガイド面66は、長手方向X1に間隔を空けて対向している(図3参照)。図5Bに示すように、ガイド面66は、吐出口54の長手方向X1の端54aよりも内側に配置されている。ガイド面66は、吐出口54からの薬液の吐出方向Z1(長手方向X1および直交方向Y1に直交する方向)に沿う平面である。
【0050】
図5Aに示すように、ガイド46には、ガイド46の上部を上下に貫通する2つの取付孔67と、ガイド46の上面から下方に凹む凹部68とが形成されている。凹部68は、直交方向Y1に関して2つの取付孔67の間に配置されている。2つのボルト52(図4参照)は、それぞれ、2つの取付孔67に取り付けられる。凹部68は、ガイド面66から外側(他方のガイド46とは反対側)に凹んでいる。したがって、凹部68は、ガイド面66で開口している。凹部68の開口部の幅W1(直交方向Y1への長さ)は、吐出口54の幅(直交方向Y1への長さ)よりも大きい(図4参照)。
【0051】
図5Bに示すように、凹部68の外端68aは、吐出口54の端54aよりも外側に配置されている。吐出口54の端54aは、凹部68の上方に配置されている。したがって、凹部68の一部は、吐出口54と上下に重なり合っており、凹部68は、吐出口54と連続している。そのため、吐出口54から薬液が吐出されると、吐出口54から凹部68に薬液が直接供給され、凹部68に薬液が貯留される。
【0052】
また、図5Aに示すように、ガイド面66には、吐出方向Z1に延びるガイド溝69が形成されている。ガイド溝69は、ガイド面66から外側に凹んでいる。長手方向X1へのガイド溝69の深さは、長手方向X1への凹部68の深さよりも小さい。また、ガイド溝69の幅(直交方向Y1への長さ)は、凹部68の開口部の幅W1よりも小さい。ガイド溝69の体積は、凹部68の体積よりも小さい。ガイド溝69の上端は、凹部68の底面で開口しており、ガイド溝69の下端は、ガイド46の下面で開口している。したがって、ガイド溝69は、凹部68に連続している。凹部68に貯留されている薬液は、凹部68からガイド溝69に移動し、ガイド溝69に沿って下方に流れる。さらに、凹部68に貯留されている薬液は、凹部68からガイド溝69の両側の部分(ガイド面66の一部)に移動し、ガイド面66に沿って下方に流れる。
【0053】
図6Aは、薬液ノズル11から基板Wに薬液が供給されている状態を上から見た模式図である。図6Bは、薬液ノズル11から基板Wに薬液が供給されている状態を水平方向から見た模式図である。図6Bは、図6Aに示す矢印VIBから薬液ノズル11等を見た図である。また、図7Aおよび図7Bは、薬液ノズル11から基板Wへの薬液の供給状態について説明するための模式的な拡大図である。図7Aは、ガイド46が薬液ノズル11に取り付けられている状態を示しており、図7Bは、ガイド46が薬液ノズル11から取り外されている状態を示している。
【0054】
図6Aに示すように、基板処理装置1は、スピンチャックC1の側方に配置された待機ポット70をさらに含む。待機ポット70は、上向きに開いた箱形の部材である。待機ホットは、処理室6内に配置されている。薬液ノズル11は、待機位置に相当する待機ポット70の上方に配置されている。制御装置10(図1参照)は、薬液ノズル11から基板Wに薬液を供給させる前に、薬液ノズル11の内部に残留している薬液を排出するプリディスペンス工程(排出工程)を行う。具体的には、制御装置10は、薬液ノズル11が待機位置に位置している状態で、薬液バルブ12(図1参照)を開いて、吐出口54から待機ポット70に向けて薬液を吐出させる。これにより、薬液ノズル11の内部に残留している古い薬液が、薬液ノズル11から排出され、新しい薬液に置換される。さらに、薬液流路55(中流部M1および下流部D1)に気泡が存在している場合には、この気泡は、薬液と共に吐出口54から速やかに排出される。このようにして、プリディスペンス工程が行われる。
【0055】
図6Aにおいて矢印で示すように、制御装置10は、プリディスペンス工程が所定時間に亘って行われた後、ノズル移動ユニット14を制御することにより、薬液ノズル11を基板Wの上方に移動させる。待機位置から基板W上への薬液ノズル11の移動は、薬液ノズル11からの薬液の吐出が継続されている状態で行われてもよいし、薬液ノズル11からの薬液の吐出が停止された状態で行われてもよい。図6Bに示すように、制御装置10は、ノズル移動ユニット14を制御することにより、一対のガイド46が基板Wの両側に配置され、各ガイド46の下端が基板Wより下方に配置される位置に薬液ノズル11を移動させる。この状態で、制御装置10は、薬液ノズル11から基板Wに向けて薬液を吐出させる。これにより、基板Wの直径よりも大きい幅を有する帯状の液膜が形成され、この液膜の下縁が基板Wの上面に接する。
【0056】
図7Aに示すように、ガイド46の凹部68が吐出口54の端部の近傍に配置されているので、吐出口54から吐出された薬液が凹部68に確実に供給される。凹部68に供給された薬液は、ガイド面66に沿って下方に流れる。したがって、ガイド面66に薬液が保持されている状態が維持される。特に、ガイド面66にガイド溝69が形成されているので、ガイド面66に沿って流れる薬液がガイド溝69に集まる。さらに、ガイド溝69が凹部68に繋がっているので、凹部68内の薬液がガイド溝69に確実に供給される。そのため、ガイド溝69の内部に薬液が確実に保持される。しかも、ガイド溝69の体積よりも大量の薬液が凹部68に貯留されるので、たとえば薬液ノズル11に薬液を送るポンプ(図示せず)の脈動によって、凹部68への薬液の供給が一時的に途絶えたとしても、凹部68に貯留されている薬液がガイド面66およびガイド溝69に供給される。そのため、ガイド面66およびガイド溝69に薬液が保持されている状態が確実に維持される。
【0057】
このように、吐出口54から薬液が吐出されている間、ガイド面66およびガイド溝69に薬液が保持されている状態が確実に維持される。吐出口54から吐出された薬液によって形成された液膜の端は、ガイド46に保持されている薬液に引き寄せられ、この薬液に繋がる。したがって、一対のガイド46の間で液膜が連続している状態が維持される。図6Bに示すように、制御装置10は、基板Wが一対のガイド46の間に位置している状態で、薬液ノズル11から薬液を吐出させる。したがって、薬液の液膜が、基板Wの直径を含む領域の全体に接する。その一方で、図7Bに示すように、ガイド46が無い場合には、薬液ノズル11内の液圧が変化したときに、液膜の端が内側に移動し、液膜の幅が基板Wの直径より短くなる。そのため、基板Wの上面周縁部への薬液の供給が一時的に途絶え、処理の均一性が低下してしまう。したがって、一対のガイド46を設けることにより、処理の均一性を向上させることができる。
【0058】
図8A〜図8Gは、未処理の基板Wが処理室6に搬入されてから処理済みの基板Wが処理室6から搬出されるまでの一連の動作の一例を示す図解的な断面図である。以下では、シリコンウエハの裏面に薬液としてのエッチング液を供給することにより、シリコンウエハの裏面をエッチングするシンニング工程、およびこれに関連する工程について説明する。また、以下では、図1を参照する。図8A〜図8Gについては適宜参照する。
【0059】
最初に、基板Wを処理室6に搬入する基板搬入工程が行われる。具体的には、制御装置10は、各ノズル11、15、16がセンターチャック2の上方から退避している状態で、チャック昇降ユニット8によってセンターチャック2を中間位置(下面処理位置)まで上昇させる。この状態で、制御装置10は、搬送ロボットRのハンドHによって未処理の基板Wを処理室6内に搬入させる。続いて、制御装置10は、シリコンウエハの裏面を上に向けた状態で、搬送ロボットRによって基板Wをセンターチャック2の上方に移動させる。そして、図8Aに示すように、制御装置10は、チャック昇降ユニット8によってセンターチャック2を上位置(受渡位置)まで上昇させる。搬送ロボットRのハンドHに支持されている基板Wは、センターチャック2が上位置に移動する過程で、センターチャック2によって受け取られ、吸着ヘッド21によって支持される。制御装置10は、基板Wがセンターチャック2によって受け取られた後、搬送ロボットRを処理室6から退避させる。
【0060】
搬送ロボットRが処理室6から退避した後、制御装置10は、吸引ユニット7によって基板Wの下面を吸着ヘッド21の上面に吸着させる。これにより、基板Wが水平な姿勢で保持される。この状態で、制御装置10は、チャック昇降ユニット8によってセンターチャック2を上位置から下位置まで下降させる。基板用シール42は、センターチャック2が下位置に移動する過程で、基板Wの下面周縁部に接触し下方に圧縮される。これにより、基板用シール42が弾性変形し、基板Wの下面周縁部に密着する。そのため、基板Wの下面周縁部とベース5との間が密閉される。さらに、基板Wの下面周縁部の全域が基板用シール42によって保護される。同様に、チャック用シール37は、センターチャック2が下位置に移動する過程で、ベース5の上面(チャック支持部32の上面)に接触し下方に圧縮される。これにより、チャック用シール37が弾性変形し、ベース5に密着する。そのため、吸着ヘッド21とベース5との間が密閉される。
【0061】
センターチャック2が下位置に達した後、制御装置10は、回転ユニット9によってスピンチャックC1(リング4、センターチャック2、およびベース5)を回転軸線A1まわりに低速(たとえば、10rpm)で等速回転させる。これにより、基板Wが回転軸線A1まわりに低速で回転する。また、センターチャック2が下位置に達した後、制御装置10は、気体バルブ29を開いて、気体の一例である窒素ガスを気体供給路28に供給させる。気体供給路28は、吸着ヘッド21の下面とベース5の上面(チャック支持部32の上面)との間の隙間に連通している。さらに、吸着ヘッド21の下面とベース5の上面の間の隙間は、チャック用シール37によって封止されている。したがって、気体供給路28に窒素ガスが供給されると、吸着ヘッド21の下面とベース5の上面の間の気圧が高まり、チャック用シール37の内側の空間が正圧に保たれる。そのため、外壁33の内周面と吸着ヘッド21の外周面との間を通ってチャック用シール37に達した処理液がチャック用シール37の内側に移動することを確実に防止できる。気体供給路28への窒素ガスの供給は、後述する2回目のスピンドライ工程が終了するまで継続される。
【0062】
次に、エッチング液の一例であるフッ硝酸を基板Wの上面に供給する薬液処理工程(シンニング工程)が行われる。具体的には、制御装置10は、前述のプリディスペンス工程を行った後、ノズル移動ユニット14によって薬液ノズル11を基板Wの上方に移動させる。その後、制御装置10は、基板Wを薬液処理速度(たとえば、10rpm)で等速回転させながら、薬液バルブ12を開いて、薬液ノズル11からフッ硝酸を吐出させる。これにより、図8Bに示すように、回転状態の基板Wの上面にフッ硝酸が供給される。制御装置10は、薬液ノズル11からフッ硝酸を吐出させながら、ノズル移動ユニット14によって、直交方向Y1に薬液ノズル11を往復移動させる(図8Cにおいて一点鎖線で示す位置と二点鎖線で示す位置を参照)。したがって、フッ硝酸の着液位置が基板Wの上面全域を走査し、基板Wの上面全域にフッ硝酸が供給される。これにより、回転状態の基板Wの上面全域にフッ硝酸が供給され、基板Wの上面全域を覆うフッ硝酸の液膜が形成される。制御装置10は、基板Wへのフッ硝酸の供給が所定時間に亘って行われた後、薬液バルブ12を閉じて、薬液ノズル11からのフッ硝酸の吐出を停止させる。その後、制御装置10は、ノズル移動ユニット14によって基板Wの上方から薬液ノズル11を退避させる。
【0063】
回転状態の基板Wに供給されたフッ硝酸は、遠心力によって外方に流れる。前述のように、基板Wの回転速度が低速であるので、基板Wの上面中央部でのフッ硝酸の流速と、基板Wの上面周縁部でのフッ硝酸の流速との差が小さい。そのため、基板Wへのフッ硝酸の供給状態が均一化される。さらに、内周縁が基板Wの周端面に近接した状態でリング4の環状面40が基板Wの周囲を水平に取り囲んでいるので、図8Bに示すように、基板Wの上面周縁部から環状面40まで連続するフッ硝酸の液膜が形成される。したがって、基板Wの上面周縁部から環状面40にフッ硝酸がスムーズに流れる。そのため、基板Wを低速で回転させたとしても、外方に向かうフッ硝酸の流れが基板Wの上面周縁部で滞り、他の領域よりも厚い液膜が基板Wの上面周縁部に形成されることを抑制または防止できる。これにより、基板Wへのフッ硝酸の供給状態をさらに均一化できる。そのため、基板Wの上面をフッ硝酸によって均一に処理できる。
【0064】
次に、リンス液の一例である純水(脱イオン水)を基板Wの上面に供給する上面リンス工程が行われる。具体的には、制御装置10は、ノズル移動ユニット(図示せず)によって上面リンス液ノズル15を基板Wの上方に移動させる。その後、制御装置10は、基板Wを上面リンス速度(たとえば、10rpm)で等速回転させながら、上面リンス液バルブ17を開いて、上面リンス液ノズル15から純水を吐出させる。これにより、図8Cに示すように、回転状態の基板Wの上面に純水が供給される。したがって、基板W上のフッ硝酸が純水によって置換される。さらに、基板Wに供給された純水が環状面40と基板Wとの間の微小隙間を跨いで基板W上からリング4上に流れ、環状面40上のフッ硝酸が純水によって置換される。そのため、基板Wの中心から環状面40まで連続したほぼ円形の純水の液膜が形成され、この純水の液膜によって基板Wの上面および環状面40が覆われる。制御装置10は、基板Wへの純水の供給が所定時間に亘って行われた後、上面リンス液バルブ17を閉じて、上面リンス液ノズル15からの純水の吐出を停止させる。その後、制御装置10は、ノズル移動ユニットによって基板Wの上方から上面リンス液ノズル15を退避させる。
【0065】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥工程(1回目のスピンドライ工程)が行われる。具体的には、制御装置10は、センターチャック2を下位置に位置させた状態で、回転ユニット9によってスピンチャックC1の回転を加速させて、基板Wの回転速度を第1乾燥速度(3000rpm〜4000rpm程度)まで上昇させる。これにより、図8Dに示すように、基板Wに付着している純水に大きな遠心力が作用し、基板Wに付着している純水が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから純水が除去され、基板Wが乾燥する。そして、乾燥工程が所定時間にわたって行われた後は、制御装置10は、回転ユニット9を制御することにより、スピンチャックC1による基板Wの回転を停止させる。
【0066】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの下面周縁部に供給する下面リンス工程が行われる。具体的には、制御装置10は、チャック昇降ユニット8によって、センターチャック2を中間位置に上昇させる。さらに、制御装置10は、ノズル移動ユニット(図示せず)によって下面リンス液ノズル16を基板Wの近傍の所定位置に移動させる。その後、制御装置10は、回転ユニット9によってスピンチャックC1を下面リンス速度(たとえば、200rpm)で等速回転させる。この状態で、制御装置10は、下面リンス液バルブ19を開いて、下面リンス液ノズル16から純水を吐出させる。これにより、図8Eに示すように、回転状態の基板Wの下面周縁部に純水が供給される。さらに、基板Wの下面周縁部に供給された純水は、基板Wの下面周縁部から基板Wの周端面および上面周縁部にまで回り込み、それらの部分に供給される。このようにして、基板Wの周縁部に純水が供給され、基板Wの周縁部に付着している液体や異物が洗い流される。制御装置10は、基板Wへの純水の供給が所定時間に亘って行われた後、下面リンス液バルブ19を閉じて、下面リンス液ノズル16からの純水の吐出を停止させる。その後、制御装置10は、ノズル移動ユニットによって基板Wの近傍から下面リンス液ノズル16を退避させる。
【0067】
下面リンス工程において基板Wの下面周縁部に供給された純水は、基板Wの下面周縁部に沿って回転方向に移動しつつ、基板Wの下面周縁部から側方に飛散する。したがって、下面リンス液ノズル16から基板Wに供給された純水は、基板Wの回転半径内方には殆ど向かわない。しかも、センターチャック2が中間位置に位置しているので、チャック用シール37は、ベース5から離れている。したがって、気体吐出口に相当する気体供給路28の上端から上方に吐出された窒素ガスは、吸着ヘッド21の下面とベース5の上面との間を外方に流れ、外方に向かう気流を形成する。そのため、回転半径内方に液滴が向かうことを確実に抑制または防止できる。さらに、ベース5の上面に沿って液滴が内方に移動したとしても、この液滴は、ベース5の上面に設けられた堰き止め突起36によって堰き止められる。したがって、ベースシャフト26内への液体の進入が確実に抑制または防止される。
【0068】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥工程(2回目のスピンドライ工程)が行われる。具体的には、制御装置10は、センターチャック2を中間位置に位置させた状態で、回転ユニット9によってスピンチャックC1の回転を加速させて、基板Wの回転速度を第2乾燥速度(3000rpm〜4000rpm程度)まで上昇させる。これにより、図8Fに示すように、基板Wに付着している純水に大きな遠心力が作用し、基板Wに付着している純水が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから純水が除去され、基板Wが乾燥する。そして、乾燥工程が所定時間にわたって行われた後は、制御装置10は、回転ユニット9を制御することにより、スピンチャックC1による基板Wの回転を停止させる。さらに、制御装置10は、気体バルブ29を閉じて、気体供給路28への窒素ガスの供給を停止させる。
【0069】
次に、基板Wを処理室6から搬出する基板搬出工程が行われる。具体的には、制御装置10は、各ノズル11、15、16がセンターチャック2の上方から退避している状態で、チャック昇降ユニット8によって、センターチャック2を上位置まで上昇させる。その後、制御装置10は、吸引ユニット7を制御することにより、吸着ヘッド21による基板Wの吸着を解除させる。続いて、図8Gに示すように、制御装置10は、搬送ロボットRのハンドHを処理室6内に進入させて、ハンドHを基板Wの下面周縁部の下方に位置させる。この状態で、制御装置10は、チャック昇降ユニット8によって、センターチャック2を中間位置まで下降させる。これにより、処理済みの基板Wが搬送ロボットRによって受け取られる。制御装置10は、搬送ロボットRによって基板Wが受け取られた後、搬送ロボットRを処理室6から退避させて、基板Wを処理室6から搬出させる。
【0070】
以上のように本実施形態では、薬液流路55で薬液を拡散させる第1拡散板47および第2拡散板48が、薬液ノズル11に設けられており、気泡を溜める上方空間63が、第1拡散板47より上流側の領域に設けられている。第1拡散板47より上流側の領域に存在する気泡は、上方空間63に集まり、第1拡散板47より下流側の領域への移動が抑制または防止される。したがって、第1拡散板47より下流側の領域に気泡を含む薬液が供給されることを抑制または防止できる。そのため、気泡を含む薬液が基板Wに供給されることを抑制または防止できる。さらに、薬液の均一な流れが、第1拡散板47および第2拡散板48によって、第1拡散板47より下流側の領域に形成されるので、この領域に存在する気泡は、薬液ノズル11に薬液が供給される初期の段階で、薬液と共に吐出口54から速やかに排出される。よって、初期の段階より後に、気泡を含む薬液が基板Wに供給されることを抑制または防止できる。また、プリディスペンス工程などを行って予め気泡を排出すれば、気泡を含む薬液が基板Wに供給されることを確実に抑制または防止できる。これにより、処理の均一性を向上させることができる。
【0071】
この発明の実施形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の実施形態では、中流部M1が、2つの分岐路57と集合路58とによって構成されている場合について説明した。しかし、中流部M1の構成は、これに限られない。
【0072】
具体的には、図9Aに示すように、中流部M1は、分岐していなくてもよい。また、図9Bに示すように、中流部M1は、3つ以上の分岐路57を有していてもよい。また、図9Cに示すように、分岐路57および集合路58は、分岐路57および集合路58よりも流路面積が大きい第2バッファ空間71に接続されていてもよい。また、図9Dに示すように、中流部M1は、曲線状に延びる複数の分岐路57を有していてもよい。また、図9Eに示すように、中流部M1は、曲線状に延びる複数の分岐路57と、下流に向かうに従って流路面積が減少する集合部58とを有していてもよい。また、図示はしないが、複数の分岐路57は、共通の位置に限らず、複数の位置で集合路58に接続されていてもよい。
【0073】
また、前述の実施形態では、一対のガイド面66の間隔が吐出口54の長さより小さく、一対のガイド面66が、吐出口54の長手方向X1の両端54aよりも内側に配置されている場合について説明した。しかし、長手方向X1への一対のガイド面66の間隔は、長手方向X1への吐出口54の長さと等しくてもよいし、大きくてもよい。一対のガイド面66の間隔が吐出口54の長さと等しい場合、長手方向X1へのガイド面66の位置は、吐出口54の端54a(図5B参照)と一致していてもよい。また、一対のガイド面66の間隔が吐出口54の長さより大きい場合、一対のガイド面66は、吐出口54の長手方向X1の両端54aよりも外側に配置されていてもよい。
【0074】
また、前述の実施形態では、凹部68の一部と吐出口54とが重なっている場合について説明した。すなわち、凹部68の一部が、吐出口54の端54a(図5B参照)より内側に配置されている場合について説明した。しかし、凹部68全体が、吐出口54の端54aより内側または外側に配置されていてもよい。
また、前述の実施形態では、凹部68が吐出口54に連続しており、ガイド溝69が凹部68に連続している場合について説明した。しかし、凹部68は、吐出口54に連続していなくてもよい。同様に、ガイド溝69は、凹部68に連続していなくてもよい。
【0075】
また、前述の実施形態では、本体43、吐出部材45、ガイド46、第1拡散板47、および第2拡散板48が、それぞれ別々の部材であり、ボルト等によって結合されている場合について説明した。しかし、本体43、吐出部材45、ガイド46、第1拡散板47、および第2拡散板48のうちの少なくとも2つが一体であってもよい。
また、前述の実施形態では、2つの拡散板(第1拡散板47および第2拡散板48)が、薬液ノズル11の内部に配置されている場合について説明した。しかし、第1拡散板47および第2拡散板48の一方が省略されてもよいし、薬液流路55を仕切る3つ以上の拡散板が、薬液ノズル11の内部に配置されていてもよい。
【0076】
また、前述の実施形態では、吐出口54が、基板Wよりも長い場合について説明した。しかし、長手方向X1への吐出口54の長さは、基板Wと等しくてもよいし、基板Wより小さくてもよい。
また、前述の実施形態では、基板処理装置1が、円板状の基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1は、液晶表示装置用基板などの多角形の基板を処理する装置であってもよい。
【0077】
また、前述の実施形態では、スリットノズル(薬液ノズル11)が、基板の処理に用いられる場合について説明したが、スリットノズルは、基板の処理以外の用途に用いられてもよい。また、スリットノズルに供給される液体は、薬液に限らず、純水などのリンス液であってもよいし、その他の液体であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 :基板処理装置
11 :薬液ノズル(スリットノズル)
13 :薬液配管(処理液配管)
14 :ノズル移動ユニット(相対移動手段)
43 :本体(供給部)
45 :吐出部材(吐出部)
46 :ガイド(ガイド部)
47 :第1拡散板(第1拡散部)
48 :第2拡散板(第2拡散部)
54 :吐出口
55 :薬液流路(液体流路)
56 :バッファ空間
57 :分岐路
58 :集合路
60 :斜面(内面)
62 :流入口
63 :上方空間
64 :第1接続路
65 :第2接続路
66 :ガイド面
68 :凹部
69 :ガイド溝
C1 :スピンチャック(基板保持手段)
D1 :下流部
M1 :中流部
U1 :上流部
W :基板
X1 :長手方向
Z1 :吐出方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリット状の吐出口から液体を吐出するスリットノズルであって、
前記吐出口が形成された吐出部と、
前記吐出口に供給される液体が流通する液体流路が形成された供給部と、
前記液体流路を上流側と下流側とに仕切っており、前記上流側と前記下流側とを接続する複数の第1接続路が形成された第1拡散部とを含む、スリットノズル。
【請求項2】
前記第1拡散部よりも下流側で前記液体流路を上流側と下流側とに仕切っており、前記上流側と前記下流側とを接続する複数の第2接続路が形成された第2拡散部をさらに含む、請求項1に記載のスリットノズル。
【請求項3】
前記複数の第2接続路の流路面積は、前記複数の第1接続路の流路面積よりも小さい、請求項2に記載のスリットノズル。
【請求項4】
前記液体流路は、前記第1拡散部より上流側に配置された上流部と、前記第1拡散部と前記第2拡散部との間に配置されており、前記上流部より体積が小さい中流部と、前記第2拡散部より下流側に配置されており、前記中流部よりも体積が小さい下流部とを含む、請求項2または3に記載のスリットノズル。
【請求項5】
前記液体流路は、前記第1拡散部より上流側に配置されたバッファ空間と、前記第1拡散部より下流側に配置されており、前記バッファ空間に接続された複数の分岐路と、各分岐路に接続されており、前記第2拡散部によって仕切られた集合路とを含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載のスリットノズル。
【請求項6】
前記液体流路は、前記第1拡散部より上流側に配置されたバッファ空間を含み、
前記供給部は、前記バッファ空間に液体を供給する流入口が開口しており、前記バッファ空間を区画する内面を含み、
前記バッファ空間は、前記流入口より上方の上方空間を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスリットノズル。
【請求項7】
請求項1〜請求項6に記載のスリットノズルと、
前記スリットノズルに処理液を供給する処理液配管と、
基板を保持する基板保持手段と、
前記スリットノズルおよび前記基板保持手段に保持されている基板の少なくとも一方を移動させて、前記スリットノズルと前記基板とを相対移動させる相対移動手段とを含む、基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【公開番号】特開2013−74127(P2013−74127A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212230(P2011−212230)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】