説明

スリットノズル

【課題】 長手プレートの幅方向で小型化し、長手方向で均一な膜状のスプレーを生成し得るスリットノズルの提供。
【解決手段】 面接合させた2枚の長手プレート間の、小型化した幅方向の流体流路の供給口からスリット状オリフィスまでの間に、バランス流路と共に、それぞれ形状と容量の異なる3種のチャンバーを連続させて設けることにより、本発明のスリットノズルは流体の安定流をオリフィスから噴出させ、長手方向に均一な膜状スプレーを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、面接合させた2枚の長手プレート間に形成したスリット状のオリフィスからプレートの長手方向に沿って流体を膜状にスプレーするスリットノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の均一な膜状のスプレーを生成するスリットノズルは、例えば下記の特許文献1が示すように構成され、液晶基板やプリント基板等の製造工程において、ワークの洗浄処理、薬剤塗布処理や乾燥処理等に使用されるが、特許文献1のものは長手プレートの長手方向に直交する幅方向の一端の流体供給口から幅方向他端の噴射口までの距離が比較的に大きく、更にワーク表面に対し噴射する流体を斜めに傾けるために、噴射口から更に斜めに延びる延設部を一方のプレートに設けるので、スリットノズルの幅寸法はかなり大きくなる。そのため上記の各種処理を行う装置が提供しうる狭い取付け場所に取付け、使用することが困難、あるいは不可能であった。また、特許文献1のスリットノズルはプレートの幅方向の流体流路に1個の長大なチャンバーを備えるのみで、幅寸法を減じたときに十分な流体の安定性と均一性は得られなくなり、更に、プレートの長手方向において噴射膜に不均一性が生じても、これを調整する手段をもたない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−1145
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、したがって、狭い取付けスペースにも取り付けが可能となるようにスリットノズルを幅寸法において小型化し、しかも長手方向において均一な膜状のスプレーを生成し得るものがないことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、2枚の長手プレートを外周固定ネジにより面接合させて形成したスリット状オリフィスから流体をプレートの長手方向に沿って膜状にスプレーするスリットノズルにおいて、スリットノズルは、狭い取付けスペースが許容する幅寸法のプレート間の流体流路に、プレートの幅方向において、第1チャンバー、バランス流路、第2チャンバー、内部オリフィス、第3チャンバーおよびスリット状のオリフィスが設けられ、第2チャンバーは第1チャンバーより断面において幅広に形成され、内部オリフィスはバランス流路よりも流路が狭く設けられ、第3チャンバーは断面を円形とすることを特徴とする。
本発明のスリットノズルは、更に、2枚のプレートの間にオリフィス幅相当のシムを挟持し、バランス流路に対応する位置でプレートの長手方向に交互に押しネジおよび引きネジを配置し、これらネジの押し引きによってオリフィス幅の微調整を可能とすることを特徴とする。
本発明のスリットノズルは、また、2枚のプレートが外周固定ネジで直接接合され、スリット状のオリフィスはプレートの接合面に所定のオリフィス幅を持って設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のスリットノズルによれば、減少された幅寸法のプレートの減少された流路長の中に、バランス流路と共に、それぞれ形状と容量を異ならせた3個のチャンバーを設けたので、供給された流体は安定化され、均一化されて噴出される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は本発明によるスリットノズルの、図3(b)に示す側面図のC−C線に沿う、つまり流体の供給口の位置におけるやや拡大した横断面図で、実施例1及び2に共通する。
【図2】図2(a)は本発明による実施例1のスリットノズルの、図3(b)のA−A線、つまり押しネジの位置における横断面図である。図2(b)は実施例1のスリットノズルの図3(b)のB−B線、つまり引きネジの位置における横断面図である。
【図3】図3(a)は本発明によるスリットノズルの上面図である。図3(b)は本発明によるスリットノズルの側面図である。
【図4】図4は本発明による実施例2のスリットノズルの図2(a)に類似する、押しネジに替えてオリフィス固定ネジの位置における横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
狭い取付けスペースに対する取付けを可能とするため、2枚の面接合プレートの幅方向において小型化し、長手方向において均一な膜状のスプレーを生成し得るスリットノズルを提供するという本発明の目的を、減少された幅方向の流体流路に、バランス流路とともに、3個の形状と容量の異なるチャンバーを設けることにより実現した。実施例1においてはこの構成にオリフィス幅の調整機能を加え、実施例2ではオリフィス幅を固定化する。
【実施例1】
【0009】
図1〜図3は実施例1及び2に共通する基本的構造を有するスリットノズルを示し、特に実施例1としてオリフィスの幅を調整可能とする機能を備える。
【0010】
図1〜図3について基本的構造を述べれば、2枚の長手の本体プレート1および2はスリットすなわちオリフィスの幅に相当する厚さの薄板でなるシム3を挟持して、プレート1、2の幅方向の一方の側(ここでは外周とする)近くに挿通した外周固定ネジ4により互いに緊締される。プレート2は外周寄りの位置を貫通する流体の供給口10を有し、これに対向する面と位置に本体プレート1は第1チャンバー11を備える。本体プレート1は同じ対向面に、第1チャンバー11の下流側、つまりスリットノズルの噴射口の側、に続くバランス流路12と、第2チャンバー13と、内部オリフィス14と、第3チャンバー15と、スリット状のオリフィス16(噴射口)とを備える。
【0011】
バランス流路12は、供給口10から第1チャンバー11に流入した流体を安定状態で第2チャンバー13に送り込むため、バランス流路幅がオリフィス16の幅の2〜10倍の範囲となる様に調整、設計される。
【0012】
第2チャンバー13は本体プレート1の対向面の凹所とこれに対向する本体プレート2の対向面に設けた凹所とでなり、これらの凹所の幅(プレートの厚さ方向)の合計は第1チャンバー11の幅より大きくなる様にし、それによって中央部に近いバランス流路から真下に流れる流体流が広がりをもった旋回流となって、チャンバー内の流体を安定化する。これは構造面から自然で癖のない流れを生成するためであり、スリットノズルの幅方向寸法を減じる一方で、必要なチャンバー容積を確保する方策である。
【0013】
第3チャンバー15は断面を小径の円形とする。それによって、小径ではあっても、中央部に対称な流れの、安定した旋回流を生じさせることができ、半円形のチャンバーと同等以上の流れを保ち、オリフィスに安定した流体流を送出し、均一な噴霧を実現する。円形のチャンバーとすることによってチャンバー容積比率は半円形とした場合のチャンバー容積の約30%減とすることができる。
【0014】
オリフィス幅の調整機能について述べれば、本実施例1のスリットノズルは、図3(b)に示すように、本体プレート2は本体プレート1のバランス流路12に対応する線に沿ってプレートの長手方向において交互に、押しネジ5(図2(a))と引きネジ7(図2(b))をほぼ等間隔で多数配列する。押しネジ5は先端が本体プレート1のバランス流路12の壁面に当接し、回動されてバランス流路幅を押し広げ、ナット6で固定される。引きネジ7はバランス流路12の位置においてワッシャー8を介して両本体プレート1、2を貫通し、本体プレート1の外面にナット9で設定され、引きネジ7を回動してナット9を介して本体プレート1を本体プレート2に引き寄せてバランス流路幅を狭め、その回動位置にナット9で固定される。
【実施例2】
【0015】
図4は本発明による実施例2のスリットノズルを示し、オリフィス幅の調整機能を持たないいわば調整レス型、つまり固定オリフィスのスリットノズルとして、本体プレート1および2の間に、オリフィス幅を決めるシムは挟持されず、代わりに例えば本体プレート2の接合面に所定幅のオリフィス16が切削加工で設けられている。流体の供給口10(図示しない)、第1チャンバー11、バランス流路12、第2チャンバー13、内部オリフィス14および第3チャンバー15からなる流体流路が、実施例1と同様に形成される。また、本体プレート1および2は、実施例1の外周固定ネジ4に加えて、実施例1の引きネジ7用の両プレート貫通孔にオリフィス固定ネジ17を螺通して締結する。
【産業上の利用可能性】
【0016】
プレートの長手方向に直交する幅方向において小型化を図ったスリットノズルの、幅方向の流体流路に3種類のチャンバーを設けて流体流を安定化したので、幅方向において狭い取付けスペースへの適合と、長手方向において精密に均一な膜状のスプレーの生成とを求められる液晶基板やプリント基板等の精密製造工程におけるワークの洗浄、薬剤塗布、乾燥等の処理のためのスリットノズルとして利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0017】
1 本体プレート
2 本体プレート
3 シム
4 外周固定ネジ
5 押しネジ
6 ナット
7 引きネジ
8 ワッシャー
9 ナット
10 供給口
11 第1チャンバー
12 バランス流路
13 第2チャンバー
14 内部オリフィス
15 第3チャンバー
16 オリフィス
17 オリフィス固定ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の長手プレートを外周固定ネジにより面接合させて形成したスリット状オリフィスから流体をプレートの長手方向に沿って膜状にスプレーするスリットノズルにおいて、
狭い取付けスペースが許容する幅寸法のプレート間の流体流路に、プレートの幅方向において、第1チャンバー、バランス流路、第2チャンバー、内部オリフィス、第3チャンバーおよびスリット状のオリフィスが設けられ、第2チャンバーは第1チャンバーより断面において幅広に形成され、内部オリフィスはバランス流路よりも流路が狭く設けられ、第3チャンバーは断面を円形とすることを特徴とするスリットノズル。
【請求項2】
2枚のプレートの間にオリフィス幅相当のシムを挟持し、バランス流路に対応する位置でプレートの長手方向に交互に押しネジおよび引きネジを配置し、これらネジの押し引きによってオリフィス幅の微調整を可能とすることを特徴とする、請求項1記載のスリットノズル。
【請求項3】
2枚のプレートが外周固定ネジで直接接合され、スリット状のオリフィスはプレートの接合面に所定のオリフィス幅を持って設けられることを特徴とする、請求項1記載のスリットノズル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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